説明

冷凍サイクル用配管継手

【課題】組付け時間が少なくて済む、バックアップリングの誤組付けを防止可能な冷凍サイクル用配管継手を提供する。
【解決手段】互いに連結される第1部材8および第2部材9を備え、前記第1部材と第2部材との連結部からの流体の漏れを防止する密封装置7wであって、前記第1部材の装着部81に装着され、前記第1部材および前記第2部材の被シール面間をシールするゴム材質のシール部材50bと、前記第1部材の前記装着部に装着され、前記シール部材よりも前記流体が透過しにくい材質から形成され、全周方向に連続した、前記シール部材を支持するバックアップリング50aと、を有し、前記シール部材50bとバックアップリング50aが一体化されていることを特徴とする、密封装置7w。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルの冷媒流路の接続に使用される冷凍サイクル用配管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脱フロン化の流れを受けて二酸化炭素(CO)を冷媒とした冷凍サイクルの開発が進められている。このCOを冷媒としたシステムにおいても従来のシステムと同様に、各冷凍機器間を接続するために配管が用いられ、配管と冷凍機器との接続、もしくは配管同士の接続に配管継手(ジョイント)が用いられている。従来の冷凍サイクル装置に用いる配管接続用ジョイントとして、本出願人も先に特許文献1、2に示されるものを出願している。
【0003】
ここで、図4〜6は、特許文献1に開示された従来の冷凍サイクル用配管継手7の説明図である。図4は、従来のバックアップリングの組付けにおける正規組付け状態と誤組付け状態とを示す説明図である。図5は、冷凍サイクル用配管継手の接続状態を示す断面図である。図6は、従来の密封装置の各部品の組付け順序図である。
【0004】
この配管継手7は、図5、6に示すように、雄側継手8と雌側継手9とより成り、基本的にはOリング11とバックアップリング10を用いた円筒シール構造となっている。図6に示すように、雄側継手8には円筒状の(本体側の一部はテーパ面)嵌合凸部81が形成されると共に、その嵌合凸部81に装着部81bが設けられ、この装着部81bにOリング11が嵌められて装着される。
【0005】
また、CO冷媒は作動圧力が高いため、Oリング11のせり上がりによる噛み込みを防止するため、装着されたOリング11の受圧面とは逆側に隣り合わせてバックアップリング10が装着されている。バックアップリング10は一般的にOリング11に比べ弾性の小さい樹脂等の材質で形成されている。
【0006】
バックアップリング10は、切れ目(スリット)からのCO冷媒の通過を防止するため、径方向に切れ目のないエンドレスタイプのバックアップリング10が採用されている。さらに、雄側継手8の嵌合凸部81の先端側に、キャップ12を着脱可能に装着している。
【0007】
バックアップリング10は、材質もナイロン樹脂などのように冷媒透過性の低い材質のものを用いている。バックアップリング10の内周は、嵌合凸部81先端方向に(受圧側に)内径が狭まるテーパ形状となっている。これにより、ガス圧を受けたOリング11によりバックアップリング10が、雄側継手8本体側へ押されることによって、嵌合凸部81のテーパ面と、バックアップリング10の内周側のテーパ面とが圧着シールされる。すなわち、COガスが外部に漏れにくい形状となっている。この構造および詳細は、特許文献2に開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2005−042815号公報
【特許文献2】特願2003−29196号公報
【0009】
キャップ12は、Oリング11の隣であり嵌合凸部81の最先端側に設けられている。すなわち、キャップ12を最先端側に装着することにより、Oリング11およびバックアップリング10が脱落するのを防止することができる。また、キャップ12を嵌合凸部81に着脱可能としたことにより、Oリング11およびバックアップリング10の交換が可能となっている。キャップ12は、冷凍サイクル運転中は配管継手に固定されて動かないようにし、配管継手を外した際は、手によって外すことができるような設計となっている。
【0010】
次に、バックアップリング10、Oリング11、キャップ12の組付け方法を図6により説明する。図6(a)は、雄側継手8に対する組付けを説明する図であり、図6(b)は、組付け後の図である。バックアップリング10、Oリング11、キャップ12は、左記順序で、雄側継手8の嵌合凸部81の先端側から順に挿入される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記のような配管継手構造を使用する場合、前記各部品(バックアップリング10、他)を誤組付けする可能性があった。すなわち、バックアップリング10を嵌合凸部81の先端側から組付ける際、バックアップリング10が、正規面側からでは無く、反転した面側(表裏が逆になって)から組付けられる可能性があった。正規組付け状態は、図4(a)に示す状態であるが、このような誤組付けをした場合、図4(b)のような状態となり、キャップ12が正規に組付かない状態となり、再度これらの部品を分解して組み直す必要が生じ、生産性の低下につながっていた。
【0012】
また、キャップ12が正規に組付かない状態となるため、作業者が、誤組付け状態と認識せず強くキャップ12を押し込み、バックアップリング10を変形させた状態で、(すなわち不良品として)出荷される恐れもあった。さらには、これら3種類の部品を組付けるため、組付け時間がかかることも問題であった。
【0013】
本発明は、この従来の問題点に鑑みて成されたものであり、その目的は、組付け時間が少なくて済む、バックアップリングの誤組付けを防止可能な冷凍サイクル用配管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載の密封装置を提供する。
請求項1に記載の発明によれば、シール部材とバックアップリングが一体化されていることを特徴とする、密封装置が提供される。これにより、組付け部品点数が3点から2点に減少し、組付け時間を低減できる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、一体化は、機械的接合、接着剤接合、2層成形、2色成形のいずれかの方式により形成される。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、バックアップリングの装着側内面が、その内径がガスの加圧側に向かって漸次減少するテーパ面となっている密封装置が提供される。これにより、請求項1に記載の発明と併せて、バックアップリングの誤組付けを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は、従来例の冷凍サイクルRの模式図であると同時に、本発明の実施形態においても同一の冷凍サイクルRに基づくものである。図2は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル用配管継手の断面図である。
冷凍サイクルRは冷媒圧縮機1、冷媒凝縮器2、膨脹弁3、冷媒蒸発器4、アキュームレータ5などの各冷凍機器を環状に接続して構成された周知のものであり、具体的にはこれら冷凍機器の間を配管継手7を有する冷媒配管6で接続している。ちなみに、図1中の2aは冷媒凝縮器2に熱交換用の空気を供給する送風機であり、4aは冷媒蒸発器4に熱交換用の空気を供給する送風機である。
【0018】
本発明の実施形態における冷凍サイクル用配管継手7w(以下、配管継手7wと言う)の接続状態は、従来例と同じである(図5参照)。配管継手7wは雄側継手8と雌側継手9とより成り、両継手8、9とも円筒状の冷媒配管6と接続ブロックとをろう付けして構成している。
【0019】
ここで、冷媒配管6は通常、アルミニウム・銅・真鍮・スレンレス・鉄などの金属材料より成り、本実施例では外周側にろう材としての皮材A4004をクラッドしたアルミニウムのA3000番台を使用している。また、接続ブロックも冷媒配管6と同様の材料より成り、本実施例ではアルミニウムのA7000番台を使用している。
【0020】
そして、配管挿入孔82には、冷媒配管6が挿入されて、ろう付けによって接合されている。ボルト孔83は、雄側継手8の端部を貫通して設けられており、接続時にボルト13が挿通される。(図5参照)
【0021】
また、配管継手7を流通する流体は、CO冷媒である。本発明は作動圧力が高く、透過係数も大きいCO冷媒を用いた冷凍サイクルの冷媒流路を接続する配管継手部に用いて好適である。
【0022】
図2の(a)は本発明の実施形態に係る冷凍サイクル用配管継手7wの断面図であり、(b)は(a)中C部の拡大図である。図2に示すように、雄側継手8は、一端側(図2右側)に形成された嵌合凸部81と、他端側(図2左側)に形成された配管挿入孔82と、嵌合凸部81と配管挿入孔82とを連通する連通孔と、ボルト孔83とを有する。嵌合凸部81は円筒状に形成されており、その外周には、シール部材としてのOリング50bと、受圧部材としてのバックアップリング50aとの一体化された部材50が装着されている(図2(b)、図3参照)。
【0023】
ここで、Oリング50bはドーナツ状のリング形状であり、断面は円形形状である。そして、Oリング11はゴム等の弾力性のある材料より成り、本実施例ではIIRゴムを使用している。また、バックアップリング50aは、径方向に切れ目のないエンドレスタイプのものを用いており、材質もナイロン樹脂などのように冷媒透過性の低い材質のものを用いている。バックアップリング50aの内周は、嵌合凸部81先端方向に(冷媒ガス加圧方向に)内径が狭まるテーパ形状となっており、COガスが外部に漏れにくい形状となっている。この構造は、特許文献2に開示されている。
【0024】
そして、雄側継手8の嵌合凸部81の先端側に、キャップ12を着脱可能に設けている。これに伴い、雌側継手9の嵌合凹部91は、嵌合凸部81、バックアップリング10、Oリング11、およびキャップ12を嵌入する円筒状としている。このキャップ12は、雌側継手9よりも柔らかい材質で形成されたものであり、本実施例ではPBT(ポリ・ブタジエン・テレフタレート)を用いている。
【0025】
図3は、図2(b)のX部を拡大した図であり、シール部材としてのOリング50bと、受圧部材としてのバックアップリング50aとを、各種接合方法により一体化した部材50、51、52を示している。図3(a)は、機械的接合方法を、(b)は、接着剤による接合方法を、(c)は、2色成形または2層成形による接合方法を示している。
【0026】
図3(a)に示すように、機械的接合による形式は、バックアップリング部50aのOリング部50bに対向する面に実質上の蟻溝50cを形成し、この蟻溝50c内に溶融したOリング材を流入成形するものである。これにより、バックアップリング部50aとOリング部50bとが、蟻溝50c内で機械的に係合された状態となり、実質上一体化される。
【0027】
図3(b)に示すように、接着剤接合による形式は、バックアップリング部51aのOリング部51bに対向する面に接着剤51cを塗布し、Oリング部51bを接着させるものである。
【0028】
図3(c)に示すように、2色成形または2層成形接合による形式は、成形金型のバックアップリング部52aに対応する雌形部に溶融したバックアップリング材を流入成形し、Oリング部52bに対応する雌形部に溶融したOリング材を流入成形して一体化するものである。バックアップリング部52aとOリング部52bとの界面52cは、両方の材料が互いに密着噛合している。
【0029】
こうして、Oリングとバックアップリングを一体化することにより、組付け時間が少なくて済む、バックアップリングの誤組付けを防止可能な冷凍サイクル用配管継手を提供することが可能となる。
【0030】
(他の実施形態)
なお、前述の実施形態では、バックアップリングの内周がテーパ形状の例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、従来の矩形のバックアップリングにおいても、Oリングとの一体化により組付け性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】冷凍サイクルRの模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る冷凍サイクル用配管継手の断面図である。
【図3】本発明に係る密封装置の各種接合方法により一体化されたバックアップリングとOリングの断面図である。
【図4】従来のバックアップリングの組付けにおける正規組付け状態と誤組付け状態とを示す説明図である。
【図5】冷凍サイクル用配管継手の接続状態を示す断面図である。
【図6】従来の密封装置の各部品の組付け順序図である。
【符号の説明】
【0032】
7 従来の密封装置
7w 本発明に係る密封装置
8 第1部材
9 第2部材
10 バックアップリング
11 Oリング
12 キャップ
50 バックアップリングとOリングを一体化したもの

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を流体が流通し、互いに連結される第1部材(8)および第2部材(9)を備え、前記第1部材と第2部材との連結部からの前記流体の漏れを防止する密封装置(7w)であって、
前記第1部材の装着部(81)に装着され、前記第1部材および前記第2部材の被シール面間をシールするゴム材質のシール部材(50b)と、
前記第1部材の前記装着部に装着され、前記シール部材よりも前記流体が透過しにくい材質から形成され、全周方向に連続した、前記シール部材を支持するバックアップリング(50a)と、を有し、
前記シール部材(50b)とバックアップリング(50a)が一体化されていることを特徴とする、密封装置(7w)。
【請求項2】
前記一体化は、機械的接合(50)、接着剤接合(51)、2層成形(52)、2色成形(52)のいずれかの方式により形成されることを特徴とする、請求項1に記載の密封装置(7w)。
【請求項3】
前記流体は加圧されたガスであり、前記バックアップリング(50a)の装着側内面が、その内径が前記ガスの加圧側に向かって漸次減少するテーパ面となっていることを特徴とする、請求項1または2に記載の密封装置(7w)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−146937(P2007−146937A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340754(P2005−340754)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】