説明

冷凍サイクル装置

【課題】利用側熱交換器および補助加熱手段にて熱交換対象流体を加熱可能に構成された冷凍サイクル装置のエネルギ消費量を低減させる
【解決手段】ガスインジェクションサイクルを構成するヒートポンプサイクル10の室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に補助加熱手段としてのPTCヒータ50を配置し、送風空気の温度を目標温度まで昇温させることができなくなった際に、PTCヒータ50に通電して室内凝縮器12へ流入する送風空気を加熱する。これにより、室内凝縮器12における冷媒凝縮温度を上昇させるとともに、圧縮機11の高段側圧縮行程における圧縮仕事量を増大させて、室内凝縮器12にて発揮される加熱能力を増大させることができるので、PTCヒータ50の消費する電力(電気エネルギ)を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを用いた冷凍サイクル装置に関するもので、車両用の冷凍サイクル装置に適用して有効である。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを用いて車室内へ送風される送風空気を加熱して車室内の暖房を行う車両用空調装置が開示されている。より具体的には、この特許文献1の車両用空調装置では、冷凍サイクルの圧縮機から吐出された高圧冷媒と熱交換対象流体である送風空気とを利用側熱交換器にて熱交換させて送風空気を加熱している。
【0003】
さらに、この車両用空調装置は、利用側熱交換器の送風空気流れ方向下流側に配置されて、利用側熱交換器にて発揮される送風空気の加熱能力を補う補助加熱手段としての電気ヒータを備えている。そして、最大暖房時等のように利用側熱交換器の加熱能力だけでは送風空気を乗員の所望の温度まで上昇させることができない場合に、電気ヒータに通電して送風空気を加熱することによって乗員の暖房感の悪化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−190574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の車両用空調装置のように、補助加熱手段である電気ヒータを備える構成では、最大暖房時等のような電気ヒータの作動時に、電気ヒータが大きな電力を消費してしまうことがある。従って、最大暖房時等に、送風空気を乗員の所望の温度まで上昇させる適切な暖房を実現するためのエネルギ消費量が多くなってしまう。
【0006】
つまり、熱交換対象流体を加熱する蒸気圧縮式の冷凍サイクルの加熱能力を補うために補助加熱手段を設ける構成では、熱交換対象流体を所望の温度まで昇温させるために消費されるエネルギ量が大きくなってしまうという問題がある。
【0007】
さらに、このような補助加熱手段としては、予め利用側熱交換器の加熱能力が最も不足する運転条件を想定し、この運転条件でも充分に利用側熱交換器の加熱能力を補うことのできる高い加熱能力のものを採用しておく必要がある。このため、補助加熱手段の大型化等を招き、延いては、冷凍サイクル装置全体としての大型化や製造コストの増加を招く原因にもなる。
【0008】
上記点に鑑み、本発明は、利用側熱交換器および補助加熱手段にて熱交換対象流体を加熱可能に構成された冷凍サイクル装置のエネルギ消費量を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、吸入ポート(11a)から吸入した低圧冷媒を圧縮して吐出ポート(11c)から高圧冷媒を吐出するとともに、サイクル内の中間圧冷媒を流入させて圧縮過程の冷媒に合流させる中間圧ポート(11b)を有する圧縮機(11)と、吐出ポート(11c)から吐出された高圧冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させて、熱交換対象流体を加熱する利用側熱交換器(12)と、利用側熱交換器(12)から流出した高圧冷媒のうち中間圧状態まで減圧された気相の中間圧冷媒を中間圧ポート(11b)に導く中間圧冷媒導入通路(15)と、利用側熱交換器(12)から流出した高圧冷媒のうち低圧状態まで減圧された低圧冷媒を蒸発させて、吸入ポート(11a)側へ流出させる蒸発器(20)と、熱交換対象流体を加熱する補助加熱手段(50、60)とを備え、補助加熱手段(50、60)は、熱交換対象流体を利用側熱交換器(12)よりも先に加熱するか、もしくは熱交換対象流体を利用側熱交換器(12)と同時に加熱するように構成されている冷凍サイクル装置を特徴とする。
【0010】
これによれば、補助加熱手段(50、60)が、熱交換対象流体を利用側熱交換器(12)よりも先に加熱するか、もしくは熱交換対象流体を利用側熱交換器(12)と同時に加熱する。その結果、従来技術の如く、利用側熱交換器(12)にて加熱された後の熱交換対象流体を補助加熱手段にてさらに加熱する構成よりも、熱交換対象流体を目標温度まで昇温させる際の補助加熱手段(50、60)のエネルギ消費量を低減できる。
【0011】
その理由は、補助加熱手段(50、60)にて利用側熱交換器(12)へ流入する熱交換対象流体の温度を上昇させて利用側熱交換器(12)における冷媒の放熱量を減少させることができるので、冷凍サイクルのサイクルバランスを、利用側熱交換器(12)内の冷媒圧力が上昇するようにバランスさせることができるからである。
【0012】
これにより、圧縮機(11)吐出冷媒の温度を上昇させて、利用側熱交換器(12)を流通する冷媒の温度と利用側熱交換器(12)へ流入する熱交換対象流体との温度差を拡大できる。さらに、圧縮機(11)の中間圧ポート(11b)から吐出ポート(11c)へ至る範囲の圧縮行程の圧縮仕事量を増加させることができ、利用側熱交換器(12)における出入口間エンタルピ差を増大させることができる。
【0013】
従って、従来技術に対して、利用側熱交換器(12)における加熱能力を増加させることができ、補助加熱手段(50、60)の加熱能力を低下させても、熱交換対象流体を目標温度まで昇温させることができる。その結果、補助加熱手段(50、60)として従来技術よりも低い加熱能力を発揮するものを採用することができ、利用側熱交換器(12)および補助加熱手段(50、60)にて熱交換対象流体を加熱可能に構成された冷凍サイクル装置のエネルギ消費量を低減させることができる。
【0014】
次に、請求項2に記載の発明では、吸入ポート(11a)から吸入した低圧冷媒を圧縮して吐出ポート(11c)から高圧冷媒を吐出するとともに、サイクル内の中間圧冷媒を流入させて圧縮過程の冷媒に合流させる中間圧ポート(11b)を有する圧縮機(11)と、吐出ポート(11c)から吐出された高圧冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させて、熱交換対象流体を加熱する利用側熱交換器(12)と、利用側熱交換器(12)から流出した高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧させる高段側減圧手段(13)と、高段側減圧手段(13)にて減圧された中間圧冷媒の気液を分離し、分離された気相冷媒を中間圧ポート(11b)側へ流出させる気液分離手段(14)と、気液分離手段(14)にて分離された液相冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる低段側減圧手段(17)と、低段側減圧手段(17)にて減圧された低圧冷媒を蒸発させて、吸入ポート(11a)側へ流出させる蒸発器(20)と、熱交換対象流体を加熱する補助加熱手段(50、60)とを備え、補助加熱手段(50、60)は、熱交換対象流体を利用側熱交換器(12)よりも先に加熱するか、もしくは熱交換対象流体を利用側熱交換器(12)と同時に加熱するように構成されている冷凍サイクル装置を特徴とする。
【0015】
これによれば、高段側減圧手段(13)と気液分離手段(14)と低段側減圧手段(17)とを組み合わせた2段膨張型のガスインジェクションサイクルを構成する冷凍サイクル装置において、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0016】
次に、請求項3に記載の発明では、吸入ポート(11a)から吸入した低圧冷媒を圧縮して吐出ポート(11c)から高圧冷媒を吐出するとともに、サイクル内の中間圧冷媒を流入させて圧縮過程の冷媒に合流させる中間圧ポート(11b)を有する圧縮機(11)と、吐出ポート(11c)から吐出された高圧冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させて、熱交換対象流体を加熱する利用側熱交換器(12)と、利用側熱交換器(12)から流出した高圧冷媒の冷媒通路を複数に分岐する冷媒分岐部(70)と、冷媒分岐部(70)により分岐された一方の冷媒通路(71)に設けられ、利用側熱交換器(12)出口側の高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧させる第1減圧手段(72)と、冷媒分岐部(70)により分岐された他方の冷媒通路(73)を通過する利用側熱交換器(12)出口側の高圧冷媒と、第1減圧手段(72)により減圧された中間圧冷媒との間で熱交換を行うとともに、熱交換を終えた中間圧冷媒を中間圧ポート(11b)側へ流出させる内部熱交換器(74)と、内部熱交換器(74)での熱交換を終えた高圧冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる第2減圧手段(75)と、第2減圧手段(75)にて減圧された低圧冷媒を蒸発させて、吸入ポート(11a)側へ流出させる蒸発器(20)と、熱交換対象流体を加熱する補助加熱手段(50、60)とを備え、補助加熱手段(50、60)は、熱交換対象流体を利用側熱交換器(12)よりも先に加熱するか、もしくは熱交換対象流体を利用側熱交換器(12)と同時に加熱するように構成されている冷凍サイクル装置を特徴とする。
【0017】
これによれば、内部熱交換方式のガスインジェクションサイクルを構成する冷凍サイクル装置において、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置において、具体的には、補助加熱手段(50、60)は、利用側熱交換器(12)よりも熱交換対象流体の上流側部位に配置され、熱交換対象流体を利用側熱交換器(12)よりも先に加熱するようになっている構成とすればよい。
【0019】
また、請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置において、具体的には、補助加熱手段(50、60)は、熱交換対象流体の流れに対して利用側熱交換器(12)と並列に配置されて利用側熱交換器(12)と一体に構成され、これにより、補助加熱手段(50、60)と利用側熱交換器(12)が熱交換対象流体を同時に加熱するようになっていてもよい。
【0020】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置において、仮に、補助加熱手段(50、60)を利用側熱交換器(12)にて加熱された後の熱交換対象流体を加熱するように配置した状態で、利用側熱交換器(12)および補助加熱手段(50、60)の双方の加熱能力によって熱交換対象流体を目標温度まで昇温させる際に、補助加熱手段(50、60)に要求される最大加熱能力を基準加熱能力としたときに、補助加熱手段(50、60)として、基準加熱能力よりも低い加熱能力を発揮するものが採用されていることを特徴とする。
【0021】
これによれば、補助加熱手段(50、60)として、基準加熱能力よりも低い加熱能力を発揮するものを採用しているので、従来技術に対して、補助加熱手段(50、60)のエネルギ消費量を確実に低減できる。さらに、補助加熱手段(50、60)自体の小型化を図ることができる。延いては、冷凍サイクル装置全体としての小型化および製造コストの低減を図ることもできる。
【0022】
請求項7に記載の発明では、補助加熱手段(50、60)における熱交換対象流体の加熱能力を調整する加熱能力調整手段(40a、62)を備え、加熱能力調整手段(40a、62)は、利用側熱交換器(12)における冷媒圧力(Pd)が目標高圧(TPd)となるように補助加熱手段(50、60)の加熱能力を調整することを特徴とする。
【0023】
これによれば、利用側熱交換器(12)における冷媒圧力が目標高圧(TPd)となるように加熱能力調整手段(40a、62)が補助加熱手段(50、60)の加熱能力を調整するので、熱交換対象流体の目標温度に応じて目標高圧(TPd)を設定することで、熱交換対象流体を容易に目標温度まで昇温させることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明のように、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置において、補助加熱手段として、具体的には電力を供給されることによって発熱する電気ヒータ(50)を採用してもよい。なお、補助加熱手段が電気ヒータ(50)である場合、「低い加熱能力を発揮するもの」には、例えば、所定の電圧を印加した際の発熱量(ワット数)が小さい電気ヒータ等が含まれる。
【0025】
さらに、請求項9に記載の発明のように、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置において、補助加熱手段として、具体的には外部熱源を冷却する熱媒体を熱源として熱交換対象流体を加熱する補助加熱用熱交換器(60)を採用してもよい。補助加熱手段が補助加熱用熱交換器(60)である場合、「低い加熱能力を発揮するもの」には、例えば、熱交換面積の小さい補助加熱用熱交換器等が含まれる。
【0026】
請求項10に記載の発明のように、請求項7に記載の冷凍サイクル装置において、補助加熱手段は、具体的には電力を供給されることによって発熱する電気ヒータ(50)であり、加熱能力調整手段(40a、62)は、電気ヒータ(50)へ供給する電力量を調整することによって、電気ヒータ(50)の加熱能力を調整するようになっていてもよい。
【0027】
さらに、請求項11に記載の発明のように、請求項7に記載の冷凍サイクル装置において、補助加熱手段は、具体的には外部熱源を冷却する熱媒体を熱源として熱交換対象流体を加熱する補助加熱用熱交換器(60)であり、加熱能力調整手段(40a、62)は、補助加熱用熱交換器(60)へ流入する熱媒体の流量を調整することによって、補助加熱用熱交換器(60)の加熱能力を調整するようになっていてもよい。
【0028】
請求項12に記載の発明では、請求項7、10,11のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置において、加熱能力調整手段(40a、62)は、熱交換対象流体の加熱能力向上のための冷凍サイクル側での能力向上制御が最大となっている状態で、熱交換対象流体の加熱能力不足が判定されたときに、補助加熱手段(50、60)を作動させることを特徴とする。
【0029】
これによれば、補助加熱手段(50、60)の作動を必要最小限に抑止できる。
【0030】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態のヒートポンプサイクルの冷房運転モード時の冷媒流路を示す全体構成図である。
【図2】第1実施形態のヒートポンプサイクルの暖房運転モード時の冷媒流路を示す全体構成図である。
【図3】(a)は、第1実施形態の気液分離器の外観斜視図であり、(b)は、上面図である。
【図4】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の暖房運転モード時における制御処理を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の暖房運転モード時のサブクール制御時おける制御処理を示すフローチャートである。
【図7】第1実施形態の暖房運転モード時の乾き度制御時における制御処理を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態の暖房運転モード時のPTCヒータ制御時における制御処理を示すフローチャートである。
【図9】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図10】第1実施形態のヒートポンプサイクルの暖房運転モード時における冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図11】比較例の冷凍サイクルの暖房運転モード時における冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図12】第2実施形態のヒートポンプサイクルの暖房運転モード時の冷媒流路を示す全体構成図である。
【図13】第3実施形態の暖房運転モード時のPTCヒータ制御時における制御処理を示すフローチャートである。
【図14】第4実施形態のヒートポンプサイクルの暖房運転モード時の冷媒流路を示す全体構成図である。
【図15】第4実施形態のヒートポンプサイクルの暖房運転モード時における冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図16】第5実施形態のヒートポンプサイクルの暖房運転モード時の冷媒流路を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(第1実施形態)
図1〜図10により、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、本発明の冷凍サイクル装置を走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車の車両用空調装置1に適用している。この冷凍サイクル装置は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を冷却あるいは加熱する機能を果たす。従って、本実施形態の熱交換対象流体は送風空気である。
【0033】
さらに、冷凍サイクル装置は、ヒートポンプサイクル(蒸気圧縮式の冷凍サイクル)10を備えており、ヒートポンプサイクル10は、図1の全体構成図に示すように、車室内を冷房する冷房運転モード(送風空気を冷却する冷却運転モード)あるいは車室内を除湿しながら暖房する除湿暖房運転モード(除湿運転モード)の冷媒回路、および、図2の全体構成図に示すように、車室内を暖房する暖房運転モード(送風空気を加熱する加熱運転モード)の冷媒回路を切替可能に構成されている。
【0034】
また、このヒートポンプサイクル10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力Pdが冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、HFO系冷媒(例えば、R1234yf)等を採用してもよい。さらに、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0035】
ヒートポンプサイクル10の構成機器のうち、圧縮機11は、車両のボンネット内に配置され、ヒートポンプサイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。この圧縮機11は、その外殻を形成するハウジングの内部に、固定容量型の圧縮機構からなる低段側圧縮機構と高段側圧縮機構との2つの圧縮機構、および、双方の圧縮機構を回転駆動する電動モータを収容して構成された二段昇圧式の電動圧縮機である。
【0036】
圧縮機11のハウジングには、ハウジングの外部から低段側圧縮機構へ低圧冷媒を吸入させる吸入ポート11a、ハウジングの外部からハウジングの内部へ中間圧冷媒を流入させて低圧から高圧への圧縮過程の冷媒に合流させる中間圧ポート11b、および、高段側圧縮機構から吐出された高圧冷媒をハウジングの外部へ吐出させる吐出ポート11cが設けられている。
【0037】
より具体的には、中間圧ポート11bは、低段側圧縮機構の冷媒吐出口側(すなわち、高段側圧縮機構の冷媒吸入口側)に接続されている。また、低段側圧縮機構および高段側圧縮機は、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構、ローリングピストン型圧縮機構等の各種形式のものを採用することができる。
【0038】
電動モータは、後述する空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、本実施形態では、電動モータが圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
【0039】
なお、本実施形態では、2つの圧縮機構を1つのハウジング内に収容した圧縮機11を採用しているが、圧縮機の形式はこれに限定されない。つまり、中間圧ポート11bから中間圧冷媒を流入させて低圧から高圧への圧縮過程の冷媒に合流させることが可能であれば、ハウジングの内部に、1つの固定容量型の圧縮機構およびこの圧縮機構を回転駆動する電動モータを収容して構成された電動圧縮機であってもよい。
【0040】
さらに、2つの圧縮機を直列に接続して、低段側に配置される低段側圧縮機の吸入口を吸入ポート11aとし、高段側に配置される高段側圧縮機の吐出口を吐出ポート11cとし、低段側圧縮機の吐出口と高段側圧縮機との吸入口とを接続する接続部に中間圧ポート11bを設け、低段側圧縮機と高段側圧縮機との2つの圧縮機によって、1つの二段昇圧式の圧縮機11を構成してもよい。
【0041】
圧縮機11の吐出ポート11cには、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、後述する車両用空調装置1の室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置され、圧縮機11(具体的には、高段側圧縮機構)から吐出された高温高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能し、後述する室内蒸発器23を通過した送風空気を加熱する利用側熱交換器である。
【0042】
室内凝縮器12の冷媒出口側には、室内凝縮器12から流出した高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧させる高段側減圧手段としての高段側膨張弁13の入口側が接続されている。この高段側膨張弁13は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
【0043】
より具体的には、高段側膨張弁13では、冷媒を減圧させる絞り状態となると、絞り通路面積が相当直径φ0.5〜φ3mmとなる範囲で絞り開度を変化させる。さらに、絞り開度を全開とすると、絞り通路面積を相当直径φ10mm程度確保して、冷媒減圧作用を発揮させないようにすることもできる。なお、高段側膨張弁13は、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0044】
高段側膨張弁13の出口側には、室内凝縮器12から流出して高段側膨張弁13にて減圧された中間圧冷媒の気液を分離する気液分離手段としての気液分離器14の冷媒流入ポート14bが接続されている。この気液分離器14は、遠心力の作用によって冷媒の気液を分離する遠心分離方式のものである。
【0045】
気液分離器14の詳細構成については、図3を用いて説明する。なお、図3(a)は、気液分離器14の模式的な外観斜視図であり、図3(b)は、気液分離器14の上方側から見た上面図である。また、図3における上下の各矢印は、気液分離器14を車両用空調装置1に搭載した状態における上下の各方向を示している。
【0046】
本実施形態の気液分離器14は、上下方向に延びる略中空有底円筒状(断面円形状)の本体部14a、中間圧冷媒を流入させる冷媒流入口14eが形成された冷媒流入ポート14b、分離された気相冷媒を流出させる気相冷媒流出口14fが形成された気相冷媒流出ポート14c、および、分離された液相冷媒を流出させる液相冷媒流出口14gが形成された液相冷媒流出ポート14d等を有して構成されている。
【0047】
本体部14aの直径は、各流入出ポート14b〜14dに接続される冷媒配管の直径に対して、1.5倍以上、3倍以下程度の径に設定されており、気液分離器14全体としての小型化を図っている。
【0048】
より詳細には、本実施形態の気液分離器14(具体的には、本体部14a)の内容積は、サイクルに封入される冷媒量を液相に換算した際の封入冷媒体積から、サイクルが最大能力を発揮するために必要な冷媒量を液相に換算した際の必要最大冷媒体積を減算した余剰冷媒体積よりも小さく設定されている。このため、本実施形態の気液分離器14の内容積は、サイクルに負荷変動が生じてサイクルを循環する冷媒循環流量が変動しても、実質的に余剰冷媒を溜めることができない程度の容積になっている。
【0049】
冷媒流入ポート14bは、本体部14aの円筒状側面に接続されており、図3(b)に示すように、気液分離器14を上方側から見たときに、本体部14aの断面円形状の外周の接線方向に延びる冷媒配管によって構成されている。さらに、冷媒流入口14eは、冷媒流入ポート14bのうち本体部14aの反対側端部に形成されている。なお、冷媒流入ポート14aは、必ずしも水平方向に延びている必要はなく、上下方向の成分を有して延びていてもよい。
【0050】
気相冷媒流出ポート14cは、本体部14aの軸方向上側端面(上面)に接続されており、本体部14aの内外に亘って本体部14aと同軸上に延びる冷媒配管によって構成されている。さらに、気相冷媒流出口14fは、気相冷媒流出ポート14cの上方側端部に形成され、一方、下方側端部は、冷媒流入ポート14bと本体部14aとの接続部よりも下方側に位置付けられている。
【0051】
液相冷媒流出ポート14dは、本体部14aの軸方向下側端面(底面)に接続されており、本体部14aから下方側へ向かって、本体部14aと同軸上に延びる冷媒配管によって構成されている。さらに、液相冷媒流出口14gは、液相冷媒流出ポート14dの下方側端部に形成されている。
【0052】
従って、冷媒流入ポート14aの冷媒流入口14eから流入した冷媒は、本体部14aの円筒状内壁面に沿って旋回して流れ、この旋回流によって生じる遠心力の作用によって冷媒の気液が分離される。さらに、分離された液相冷媒が、重力の作用によって本体部14aの下方側に落下する。
【0053】
そして、分離されて下方側に落下した液相冷媒は液相冷媒流出ポート14dの液相冷媒流出口14gから流出し、分離された気相冷媒は気相冷媒流出ポート14cの気相冷媒流出口14fから流出する。なお、図3では、本体部14aの軸方向下側端面(底面)を円板状に形成した例を図示しているが、本体部14aの下方側部位を下側に向かって徐々に縮径するテーパ形状に形成し、このテーパ形状の最下位部に液相冷媒流出ポート14dを接続してもよい。
【0054】
また、気液分離器14の気相冷媒流出ポート14cには、図1、図2に示すように、中間圧冷媒導入通路15を介して、圧縮機11の中間圧ポート11bが接続されている。この中間圧冷媒導入通路15には、中間圧側開閉弁16aが配置されている。この中間圧側開閉弁16aは中間圧冷媒導入通路15を開閉する電磁弁であり、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0055】
なお、中間圧側開閉弁16aは、中間圧冷媒導入通路15を開いた際に気液分離器14の気相冷媒出口から圧縮機11の中間圧ポート11b側へ冷媒が流れることのみを許容する逆止弁としての機能を兼ね備えている。これにより、中間圧側開閉弁16aが中間圧冷媒導入通路15を開いた際に、圧縮機11側から気液分離器14へ冷媒が逆流することが防止される。
【0056】
さらに、中間圧側開閉弁16aは、中間圧冷媒導入通路15を開閉することによって、サイクル構成(冷媒流路)を切り替える機能を果たす。従って、本実施形態の中間圧側開閉弁16aは、サイクルを循環する冷媒の冷媒流路を切り替える冷媒流路切替手段を構成している。
【0057】
一方、気液分離器14の液相冷媒流出ポート14dには、気液分離器14にて分離された液相冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる低段側減圧手段(第2減圧手段)としての低段側固定絞り17の入口側が接続され、低段側固定絞り17の出口側には、室外熱交換器20の冷媒入口側が接続されている。この低段側固定絞り17としては、絞り開度が固定されたノズル、オリフィスを採用できる。
【0058】
ノズル、オリフィス等の固定絞りでは、絞り通路面積が急縮小あるいは急拡大するので、上流側と下流側との圧力差(出入口間差圧)の変化に伴って、固定絞りを通過する冷媒の流量および低段側固定絞り17上流側冷媒の乾き度を自己調整(バランス)することができる。
【0059】
具体的には、圧力差が比較的大きい場合には、サイクルを循環させる必要のある必要循環冷媒流量が減少するに伴って、固定絞り上流側冷媒の乾き度が大きくなるようにバランスする。一方、圧力差が比較的小さい場合には、必要循環冷媒流量が増加するに伴って、固定絞り上流側冷媒の乾き度が小さくなるようにバランスする。
【0060】
ところが、低段側固定絞り17上流側冷媒の乾き度が大きくなってしまうと、室外熱交換器20が冷媒に吸熱作用を発揮させる蒸発器として機能する際に、室外熱交換器20における冷媒の吸熱量(冷凍能力)が減ってサイクルの成績係数(COP)が悪化してしまう。
【0061】
そこで、本実施形態では、暖房運転モード時にサイクルの負荷変動によって必要循環冷媒流量が変化しても、低段側固定絞り17上流側冷媒の乾き度Xが0.1以下となる低段側固定絞り17を採用し、COPの悪化を抑制している。つまり、本実施形態の低段側固定絞り17では、ヒートポンプサイクル10に負荷変動が生じた際に想定される範囲で、冷媒循環流量および低段側固定絞り17の出入口間差圧が変化しても、低段側固定絞り17上流側冷媒の乾き度Xが0.1以下に調整される。
【0062】
さらに、気液分離器14の液相冷媒流出ポート14dには、気液分離器14にて分離された液相冷媒を低段側固定絞り17を迂回させて室外熱交換器20側へ導く固定絞り迂回用通路18が接続されている。この固定絞り迂回用通路18には、固定絞り迂回用通路18を開閉する低圧側開閉弁16bが配置されている。低圧側開閉弁16bの基本的構成は、中間圧側開閉弁16aと同等であり、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その開閉作動が制御される電磁弁である。
【0063】
また、冷媒が低圧側開閉弁16bを通過する際に生じる圧力損失は、低段側固定絞り17を通過する際に生じる圧力損失に対して極めて小さい。従って、室内凝縮器12から流出した冷媒は、低圧側開閉弁16bが開いている場合には固定絞り迂回用通路18側を介して室外熱交換器20へ流入し、低圧側開閉弁16bが閉じている場合には低段側固定絞り17を介して室外熱交換器20へ流入する。
【0064】
これにより、低圧側開閉弁16bは、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路を切り替えることができる。従って、本実施形態の低圧側開閉弁16bは、上述の中間圧側開閉弁16aとともに冷媒流路切替手段を構成している。
【0065】
なお、このような冷媒流路切替手段としては、気液分離器14の液相冷媒流出ポート14d出口側と低段側固定絞り17入口側とを接続する冷媒回路および液相冷媒流出ポート14d出口側と固定絞り迂回用通路18入口側とを接続する冷媒回路を切り替える電気式の三方弁等を採用してもよい。
【0066】
室外熱交換器20は、ボンネット内に配置されて、内部を流通する冷媒と送風ファン21から送風された外気とを熱交換させるものである。この室外熱交換器20は、少なくとも暖房運転モード時には、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器として機能し、冷房運転モード時等には、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能する熱交換器である。
【0067】
室外熱交換器20の冷媒出口側には、第3減圧手段としての冷房用膨張弁22の冷媒入口側が接続されている。冷房用膨張弁22は、冷房運転モード時等に室外熱交換器20から流出し、室内蒸発器23へ流入する冷媒を減圧させるものである。この冷房用膨張弁22の基本的構成は、高段側膨張弁13と同様であり、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0068】
冷房用膨張弁22の出口側には、室内蒸発器23の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器23は、室内空調ユニット30の空調ケース31内のうち、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に配置され、冷房運転モード時、除湿暖房運転モード等にその内部を流通する冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることにより送風空気を冷却する蒸発器である。
【0069】
室内蒸発器23の出口側には、アキュムレータ24の入口側が接続されている。アキュムレータ24は、その内部に流入した冷媒の気液を分離して余剰冷媒を蓄える低圧側気液分離器である。さらに、アキュムレータ24の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入ポート11aが接続されている。従って、室内蒸発器23は、圧縮機11の吸入ポート11a側へ流出させるように接続されている。
【0070】
さらに、室外熱交換器20の冷媒出口側には、室外熱交換器20から流出した冷媒を冷房用膨張弁22および室内蒸発器23を迂回させてアキュムレータ24の入口側へ導く膨張弁迂回用通路25が接続されている。この膨張弁迂回用通路25には、膨張弁迂回用通路25を開閉する冷房用開閉弁16cが配置されている。
【0071】
冷房用開閉弁16cの基本的構成は、低圧側開閉弁16bと同様であり、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その開閉作動が制御される。また、冷媒が冷房用開閉弁16cを通過する際に生じる圧力損失は、冷房用膨張弁22を通過する際に生じる圧力損失に対して極めて小さい。
【0072】
従って、室外熱交換器20から流出した冷媒は、冷房用開閉弁16cが開いている場合には膨張弁迂回用通路25を介してアキュムレータ24へ流入する。この際、冷房用膨張弁22の絞り開度を全閉としてもよい。
【0073】
また、冷房用開閉弁16cが閉じている場合には冷房用膨張弁22を介して室内蒸発器23へ流入する。これにより、冷房用開閉弁16cは、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路を切り替えることができる。従って、本実施形態の冷房用開閉弁16cは、中間圧側開閉弁16aおよび低圧側開閉弁16bとともに冷媒流路切替手段を構成している。
【0074】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、室内空調ユニット30の外殻を形成するとともに、その内部に車室内に送風される送風空気の空気通路を形成する空調ケース31を有している。そして、この空気通路に送風機32、前述の室内凝縮器12、室内蒸発器23等が収容されている。
【0075】
空調ケース31の空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。この内外気切替装置33は、空調ケース31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を連続的に変化させるものである。
【0076】
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置40から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0077】
送風機32の空気流れ下流側には、室内蒸発器23、PTCヒータ50および室内凝縮器12が、送風空気の流れに対して、室内蒸発器23→PTCヒータ50→室内凝縮器12の順に配置されている。換言すると、室内蒸発器23は、PTCヒータ50に対して送風空気流れ上流側に配置され、PTCヒータ50は、室内凝縮器12に対して送風空気流れ上流側に配置されている。
【0078】
PTCヒータ50は、室内凝縮器12の送風空気の加熱能力を補うために送風空気を加熱する補助加熱手段である。より具体的には、PTCヒータ50は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に空調制御装置40から電力が供給されることによって発熱して、室内凝縮器12へ流入する送風空気を加熱する電気ヒータである。また、PTCヒータ50は、供給される電力の増加に伴ってその発熱量を増加させる。
【0079】
さらに、本実施形態の空調制御装置40では、PTCヒータ50の稼働状態として、12Vの電圧で電力を供給して高い発熱量を出力させるHi稼働モードと、6Vの電圧で電力を供給して低い発熱量を出力させるLo稼働モードと、電力を供給しないOFFモードを切り替えることができる。
【0080】
ここで、本実施形態にて採用されているPTCヒータ50の加熱能力について説明する。まず、本発明者らは、仮に、室内凝縮器12にて加熱された後の送風空気をPTCヒータにて加熱するように配置した際に、すなわち、本実施形態とは逆にPTCヒータを室内凝縮器12に対して送風空気流れ下流側に配置した際に、PTCヒータと室内凝縮器12との双方の加熱能力によって送風空気を目標温度まで上昇させる場合について検討した。
【0081】
本発明者らの検討によれば、この場合には、室内凝縮器12における送風空気の加熱能力が最も小さくなったときにPTCヒータに要求される最大加熱能力は約2kWとなった。つまり、この場合には、例えば12Vの定格電圧を印加した際に、2kWの発熱量(ワット数)となるPTCヒータを採用する必要がある。なお、以下の説明ではこの最大加熱能力を基準加熱能力と記載する。
【0082】
これに対して、本実施形態では、PCTヒータ50として、基準加熱能力よりも低い加熱能力を発揮するもの、具体的には、12Vの定格電圧を印加した際に、基準加熱能力の2分の1以下となる約800Wの発熱量となるものを採用している。
【0083】
また、ケーシング31内には、室内蒸発器23通過後の送風空気を、室内凝縮器12およびPTCヒータを迂回して流すバイパス通路35が設けられており、室内蒸発器23の空気流れ下流側であって、かつ、室内凝縮器12の空気流れ上流側には、エアミックスドア34が配置されている。
【0084】
本実施形態のエアミックスドア34は、室内蒸発器23通過後の送風空気のうち、PTCヒータ50および室内凝縮器12側を通過する送風空気の風量とバイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整することによって、室内凝縮器12へ流入する送風空気の流量(風量)を調整する流量調整手段であり、室内凝縮器12の熱交換能力を調整する機能を果たす。
【0085】
また、室内凝縮器12およびバイパス通路35の空気流れ下流側には、室内凝縮器12にて冷媒と熱交換して加熱された送風空気とバイパス通路35を通過して加熱されていない送風空気が合流する合流空間36が設けられている。この合流空間36は、加熱された送風空気(温風)と加熱されていない送風空気(冷風)とを混合させるエアミックスチャンバを構成する。
【0086】
ケーシング31の空気流れ最下流部には、合流空間36にて合流した送風空気を、冷却対象空間である車室内へ吹き出す開口穴が配置されている。具体的には、この開口穴としては、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ開口穴37a、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス開口穴37b、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット開口穴37cが設けられている。
【0087】
従って、エアミックスドア34が、室内凝縮器12を通過させる風量とバイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整することによって、合流空間36内の送風空気の温度が調整される。なお、エアミックスドア34は、空調制御装置40から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0088】
さらに、デフロスタ開口穴37a、フェイス開口穴37bおよびフット開口穴37cの空気流れ上流側には、それぞれ、デフロスタ開口穴37aの開口面積を調整するデフロスタドア38a、フェイス開口穴37bの開口面積を調整するフェイスドア38b、フット開口穴37cの開口面積を調整するフットドア38cが配置されている。
【0089】
これらのデフロスタドア38a、フェイスドア38bおよびフットドア38cは、各開口穴37a〜37cを開閉して、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、空調制御装置40から出力される制御信号によってその作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0090】
また、デフロスタ開口穴37a、フェイス開口穴37bおよびフット開口穴37cの空気流れ下流側は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口に接続されている。
【0091】
なお、吹出口モードとしては、フェイス開口穴37bを全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス開口穴37bとフット開口穴37cの両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット開口穴37cを全開するとともにデフロスタ開口穴37aを小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出すフットモード等がある。
【0092】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置40は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種空調制御機器(圧縮機11、冷媒流路切替手段16a〜16c、送風機32、PTCヒータ50等)の作動を制御する。
【0093】
また、空調制御装置40の入力側には、車室内温度を検出する内気センサ、外気温を検出する外気センサ、車室内の日射量を検出する日射センサ、室内蒸発器23からの吹出空気温度(蒸発器温度)を検出する蒸発器温度センサ、圧縮機11から吐出された高圧冷媒圧力を検出する吐出圧センサ、室内凝縮器12から流出した冷媒の温度を検出する凝縮器温度センサ、圧縮機11へ吸入される吸入冷媒圧力を検出する吸入圧センサ等の種々の空調制御用のセンサ群41が接続されている。
【0094】
さらに、空調制御装置40の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ、冷房運転モード、除湿暖房運転モードおよび暖房運転モードを選択するモード選択スイッチ等が設けられている。
【0095】
また、空調制御装置40には、図示しないバッテリ(定格電圧12V)が接続されており、このバッテリから空調制御装置40に電力が供給されるとともに、さらに、空調制御装置40は、バッテリから供給された電力を変圧してPTCヒータ50等の各種空調制御機器へ供給することもできる。
【0096】
なお、空調制御装置40は、その出力側に接続された各種空調制御機器の作動を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段等を構成している。
【0097】
例えば、本実施形態では、圧縮機11の電動モータの作動を制御する構成が吐出能力制御手段を構成し、冷媒流路切替手段16a〜16cの作動を制御する構成が冷媒流路制御手段を構成し、さらに、PTCヒータ50へ供給する電力量を調整してPTCヒータ50の加熱能力を調整する構成が加熱能力制御手段(加熱能力調整手段)40aを構成している。もちろん、吐出能力制御手段、冷媒流路制御手段および加熱能力制御手段40a等を空調制御装置40に対して別体の制御装置によって構成してもよい。
【0098】
次に、図4〜図9を用いて、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。図4は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両用空調装置1の作動スイッチが投入(ON)されるとスタートする。なお、各図面のフローチャートにおける各制御ステップは、空調制御装置40が有する各種の機能実現手段を構成している。
【0099】
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および、上述した各種電動アクチュエータの初期位置合わせ等のイニシャライズ(初期化処理)が行われてステップS2へ進む。このステップS1の初期化処理では、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。
【0100】
ステップS2では、車室内温度設定スイッチによって設定された車室内の設定温度Tset、モード選択スイッチによって選択された運転モード等の操作パネルの操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述の空調制御用のセンサ群41の検出信号を読み込んでステップS4へ進む。
【0101】
ステップS4では、各種吹出口から車室内へ吹き出される送風空気の目標吹出温度(目標温度)TAOを算出してステップS5へ進む。具体的には、ステップS4では、本実施形態の目標吹出温度TAOは、車室内設定温度Tset、内気センサによって検出された車室内温度(内気温)Tr、外気センサによって検出された外気温Tam、日射センサによって検出された日射量Tsを用いて算出される。
【0102】
ステップS5では、送風機32の送風能力(送風量)を決定してステップS6へ進む。具体的には、ステップS5では、ステップS4にて決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、送風機32の風量(具体的には、電動モータに印加するブロワモータ電圧)を決定する。
【0103】
より詳細には、本実施形態では、TAOの極低温域および極高温域でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少させて、送風機32の風量を減少させる。
【0104】
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少させて、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値にして送風機32の風量を最小値にする。
【0105】
ステップS6では、操作パネルのモード選択スイッチの操作信号に基づいて、運転モードを決定する。そして、モード選択スイッチによって冷房運転モードが選択されている際にはステップS7へ進み、除湿暖房運転モードが選択されている際にはステップS8へ進み、さらに、暖房運転モードが選択されている際にはステップS9へ進み、各運転モードの制御処理が実行される。
【0106】
ステップS7〜S9では、各運転モードに応じた制御処理が実行されて、ステップS10へ進む。これらのステップS7〜S9の制御処理の詳細内容については後述する。
【0107】
ステップS10では、吸込口モード、すなわち内外気切替装置33の切替状態が決定されてステップS11へ進む。ステップS10では、TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して吸込口モードを決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。
【0108】
ステップS11では、吹出口モードが決定されてステップS12へ進む。ステップS11では、TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して吹出口モードを決定する。本実施形態では、TAOが高温域から低温域へと下降するに伴って、吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
【0109】
ステップS12では、上述のステップS6〜S11にて決定された制御状態が得られるように、空調制御装置40から出力側に接続された各種制御対象機器に対して、制御信号および制御電圧が出力される。続くステップS13では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。
【0110】
以上の如く、図4に示すメインルーチンでは、検出信号および操作信号の読み込み→各制御対象機器の制御状態の決定→各制御対象機器に対する制御信号および制御電圧の出力を繰り返し、このメインルーチンは、車両用空調装置1の作動停止が要求される(例えば、作動スイッチがOFFされる)まで実行される。次に、ステップS7〜S9にて実行される各運転モードの詳細について説明する。
【0111】
(a)冷房運転モード
まず、ステップS7にて実行される冷房運転モードについて説明する。冷房運転モードでは、空調制御装置40が、高段側膨張弁13を全開状態とし、冷房用膨張弁22を減圧作用を発揮する絞り状態とし、さらに、中間圧側開閉弁16aを閉弁状態とし、低圧側開閉弁16bを開弁状態とし、冷房用開閉弁16cを閉弁状態とする。
【0112】
これにより、図4のステップS12にて、各制御対象機器に制御信号あるいは制御電圧が出力されると、ヒートポンプサイクル10は、図1の実線矢印に示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。この冷媒流路の構成で、制御ステップS4で算出された目標吹出温度TAOおよびセンサ群の検出信号に基づいて、空調制御装置40の出力側に接続された各種空調制御機器の作動状態を決定する。
【0113】
例えば、圧縮機11の回転数Nc(すなわち圧縮機11の電動モータに出力される制御信号)については、次のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、室内蒸発器23の目標蒸発器吹出温度TEOを決定する。この目標蒸発器吹出温度TEOは、室内蒸発器23の着霜を防止するため、着霜温度(0℃)よりも高い所定温度(本実施形態では、1℃)以上となるように決定される。
【0114】
そして、この目標蒸発器吹出温度TEOと蒸発器温度センサによって検出された室内蒸発器23からの吹出空気温度との偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて室内蒸発器23からの吹出空気温度が目標蒸発器吹出温度TEOに近づくように、圧縮機11の回転数Ncが決定される。
【0115】
また、冷房用膨張弁22へ出力される制御信号については、冷房用膨張弁22へ流入する冷媒の過冷却度が、COPを略最大値に近づくように予め決定された目標過冷却度に近づくように決定される。また、エアミックスドア34のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア34が室内凝縮器12の空気通路を閉塞し、室内蒸発器23通過後の送風空気の全流量がバイパス通路35を通過するように決定される。
【0116】
そして、上記の如く決定された制御信号等を各種空調制御機器へ出力する。その後、図4のステップS6にて運転モードが除湿暖房運転モードあるいは暖房運転モードに切り替えられるまで、あるいは、操作パネルの操作信号等によって車両用空調装置1の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各種空調制御機器の作動状態決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。
【0117】
従って、冷房運転モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒が室内凝縮器12へ流入する。この際、エアミックスドア34が室内凝縮器12の空気通路を閉塞しているので、室内凝縮器12へ流入した冷媒は殆ど送風空気へ放熱することなく、室内凝縮器12から流出していく。
【0118】
室内凝縮器12から流出した高圧冷媒は、高段側膨張弁13→気液分離器14→低圧側開閉弁16bの順に流れて室外熱交換器20へ流入する。より詳細には、室内凝縮器12から流出した高圧冷媒は、高段側膨張弁13が全開状態となっているので、高段側膨張弁13にて殆ど減圧されることなく流出し、気液分離器14の冷媒流入ポート14aから気液分離器14内へ流入する。
【0119】
ここで、室内凝縮器12では、冷媒は殆ど送風空気へ放熱することがないので、気液分離器14へ流入する冷媒は気相状態となる。従って、気液分離器14では冷媒の気液が分離されることなく、気相冷媒が液相冷媒流出ポート14dから流出していく。さらに、中間圧側開閉弁16aが閉弁状態となっているので、気相冷媒流出ポート14cから気相冷媒が流出することはない。
【0120】
液相冷媒流出ポート14dから流出した高圧の気相冷媒は、低圧側開閉弁16bが開弁状態となっているので、低段側固定絞り17側へ流入することなく固定絞り迂回用通路18を介して室外熱交換器20へ流入する。室外熱交換器20へ流入した高圧冷媒は、送風ファン21から送風された外気と熱交換して放熱し、凝縮する。
【0121】
室外熱交換器20から流出した冷媒は、冷房用開閉弁16cが閉弁状態となっているので、絞り状態となっている冷房用膨張弁22へ流入して低圧冷媒となるまで、等エンタルピ的に減圧膨脹される。そして、冷房用膨張弁22にて減圧された低圧冷媒は、室内蒸発器23へ流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、送風空気が冷却される。
【0122】
室内蒸発器23から流出した冷媒は、アキュムレータ24へ流入して気液分離される。そして、分離された気相冷媒が圧縮機11の吸入ポート11aから吸入されて低段側圧縮機構→高段側圧縮機構の順に再び圧縮される。以上の如く、冷房運転モードでは、エアミックスドア34にて室内凝縮器12の空気通路を閉塞しているので、室内蒸発器23にて冷却された送風空気を冷却状態のまま車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の冷房を実現することができる。
【0123】
(b)除湿暖房運転モード
次に、ステップS8にて実行される除湿暖房運転モードについて説明する。除湿暖房運転モードでは、高段側膨張弁13を全開状態あるいは絞り状態とし、冷房用膨張弁22を全開状態あるいは絞り状態とし、さらに、中間圧側開閉弁16aを閉弁状態とし、低圧側開閉弁16bを開弁状態とし、冷房用開閉弁16cを閉弁状態とする。これにより、ヒートポンプサイクル10は、冷房運転モードと同様の図1の実線矢印に示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。
【0124】
また、エアミックスドア34のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア34がバイパス通路35を閉塞する最小開度となり、室内蒸発器23通過後の送風空気の全流量が室内凝縮器12を通過するように決定される。
【0125】
また、圧縮機11の回転数Ncについては、圧縮機11の吐出ポート11cから高段側膨張弁13の入口側へ至るヒートポンプサイクル10の高圧側冷媒圧力Pdが、フィードバック制御手法等によって目標高圧TPdに近づくように決定される。この目標高圧Tdは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、車室内へ吹き出される送風空気が目標吹出温度TAOとなるように決定される。
【0126】
さらに、本実施形態の除湿暖房モードでは、設定温度と外気温との温度差に応じて、高段側膨張弁13および冷房用膨張弁22の絞り開度を変化させている。具体的には、前述した目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1除湿暖房モードから第4除湿暖房モードの4段階の除湿暖房モードを実行する。
【0127】
(b)−1:第1除湿暖房モード
第1除湿暖房モードでは、高段側膨張弁13を全開状態とし、冷房用膨張弁22を絞り状態とする。このため、サイクル構成(冷媒流路)については、冷房運転モードと全く同様となるものの、エアミックスドア34が室内凝縮器12の空気通路を全開する最小開度となっている。
【0128】
従って、第1除湿暖房モードでは、圧縮機11の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒は、室内凝縮器12へ流入して、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気と熱交換して放熱し、凝縮する。これにより、送風空気が加熱される。
【0129】
室内凝縮器12から流出した冷媒は、冷房運転モードと同様に、高段側膨張弁13→気液分離器14→低圧側開閉弁16bの順に流れて室外熱交換器20へ流入する。そして、室外熱交換器20へ流入した高圧冷媒は、送風ファン21から送風された外気と熱交換してさらに放熱し、凝縮する。以降の作動は冷房運転モードと同様である。
【0130】
以上の如く、第1除湿暖房モード時には、室内蒸発器23にて冷却され除湿された送風空気を、室内凝縮器12にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0131】
(b)−2:第2除湿暖房モード
次に、第1除湿暖房モードの実行中に、目標吹出温度TAOが予め定めた第1基準温度よりも高くなった際には、第2除湿暖房モードが実行される。第2除湿暖房モードでは、高段側膨張弁13を絞り状態とし、冷房用膨張弁22の絞り開度を第1除湿暖房モードよりも増加させた絞り状態とする。
【0132】
従って、第2除湿暖房モードでは、圧縮機11の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒は、第1除湿暖房モードと同様に、室内凝縮器12へ流入して、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気と熱交換して放熱する。これにより、送風空気が加熱される。
【0133】
室内凝縮器12から流出した冷媒は、絞り状態となっている高段側膨張弁13によって中間圧冷媒となるまで等エンタルピ的に減圧される。高段側膨張弁13にて減圧された中間圧冷媒は、気液分離器14→低圧側開閉弁16bの順に流れて室外熱交換器20へ流入する。そして、室外熱交換器20へ流入した中間圧冷媒は、送風ファン21から送風された外気と熱交換して放熱する。以降の作動は冷房運転モードと同様である。
【0134】
以上の如く、第2除湿暖房モードでは、第1除湿暖房モード時と同様に、室内蒸発器23にて冷却され除湿された送風空気を、室内凝縮器12にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0135】
この際、第2除湿暖房モードでは、高段側膨張弁13を絞り状態としているので、第1除湿暖房モードに対して、室外熱交換器20を流通する冷媒の温度を低下させることができる。従って、室外熱交換器20における冷媒の温度と外気温との温度差を縮小して、室外熱交換器20における冷媒の放熱量を低減できる。
【0136】
その結果、室内凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させることができ、第1除湿暖房モードよりも室内凝縮器12における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
【0137】
(b)−3:第3除湿暖房モード
次に、第2除湿暖房モードの実行中に、目標吹出温度TAOが予め定めた第2基準温度よりも高くなった際には、第3除湿暖房モードが実行される。第3除湿暖房モードでは、高段側膨張弁13の絞り開度を第2除湿暖房モードよりも縮小させた絞り状態とし、冷房用膨張弁22の絞り開度を第2除湿暖房モードよりも増加させる。
【0138】
従って、第3除湿暖房モードでは、圧縮機11の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒は、第1、第2除湿暖房モードと同様に、室内凝縮器12へ流入して、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気と熱交換して放熱する。これにより、送風空気が加熱される。
【0139】
室内凝縮器12から流出した冷媒は、絞り状態となっている高段側膨張弁13によって外気温よりも温度の低い中間圧冷媒となるまで等エンタルピ的に減圧される。高段側膨張弁13にて減圧された中間圧冷媒は、気液分離器14→低圧側開閉弁16bの順に流れて室外熱交換器20へ流入する。
【0140】
そして、室外熱交換器20へ流入した中間圧冷媒は、送風ファン21から送風された外気と熱交換して吸熱し、蒸発する。さらに、室外熱交換器20から流出した冷媒は、冷房用膨張弁22にて等エンタルピ的に減圧されて、室内蒸発器23へ流入する。以降の作動は冷房運転モードと同様である。
【0141】
以上の如く、第3除湿暖房モードでは、第1、第2除湿暖房モード時と同様に、室内蒸発器23にて冷却され除湿された送風空気を、室内凝縮器12にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0142】
この際、第3除湿暖房モードでは、高段側膨張弁13の絞り開度を縮小させることによって、室外熱交換器20を蒸発器として作用させているので、第2除湿暖房モードに対して、冷媒が外気から吸熱する吸熱量を増加させ、室内凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させることができる。その結果、第2除湿暖房モードよりも室内凝縮器12における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
【0143】
(b)−4:第4除湿暖房モード
次に、第3除湿暖房モードの実行中に、目標吹出温度TAOが予め定めた第3基準温度よりも高くなった際には、第4除湿暖房モードが実行される。第4除湿暖房モードでは、高段側膨張弁13の絞り開度を第3除湿暖房モードよりも縮小させた絞り状態とし、冷房用膨張弁22を全開状態とする。
【0144】
従って、第4除湿暖房モードでは、圧縮機11の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒は、第1、第2除湿暖房モードと同様に、室内凝縮器12へ流入して、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気と熱交換して放熱する。これにより、送風空気が加熱される。
【0145】
室内凝縮器12から流出した冷媒は、絞り状態となっている高段側膨張弁13によって外気温よりも温度の低い低圧冷媒となるまで等エンタルピ的に減圧される。高段側膨張弁13にて減圧された低圧冷媒は、気液分離器14→低圧側開閉弁16bの順に流れて室外熱交換器20へ流入する。
【0146】
そして、室外熱交換器20へ流入した低圧冷媒は、送風ファン21から送風された外気と熱交換して吸熱し、蒸発する。さらに、室外熱交換器20から流出した冷媒は、冷房用膨張弁22が全開状態となっているので、減圧されることなく室内蒸発器23へ流入する。以降の作動は冷房運転モードと同様である。
【0147】
以上の如く、第4除湿暖房モードでは、第1〜第3除湿暖房モード時と同様に、室内蒸発器23にて冷却され除湿された送風空気を、室内凝縮器12にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0148】
この際、第4除湿暖房モードでは、第3除湿暖房モードと同様に、室外熱交換器20を蒸発器として作用させるとともに、第3除湿暖房モードよりも高段側膨張弁13の絞り開度を縮小させているので、室外熱交換器20における冷媒蒸発温度を低下させることができる。
【0149】
従って、第3除湿暖房モードに対して、室外熱交換器20における冷媒の温度と外気温との温度差を拡大させて、室外熱交換器20にて冷媒が外気から吸熱する吸熱量を増加させることができる。その結果、第3除湿暖房モードよりも室内凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させることができ、室内凝縮器12における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
【0150】
(c)暖房運転モード
次に、ステップS9にて実行される暖房運転モードの詳細を、図5〜図8を用いて説明する。なお、図5〜図8は、暖房運転モード時に実行される制御フローを示すフローチャートである。まず、図5のステップS91では、暖房運転モードにおける各膨張弁13、22、エアミックスドア34、冷媒流路切替手段16a〜16c等の制御状態を決定する。
【0151】
具体的には、高段側膨張弁13を冷媒を減圧させる絞り状態とし、冷房用膨張弁22を全閉状態とし、エアミックスドア34の開度がバイパス通路35を閉塞させる最小開度となるようにエアミックスドア34用のサーボモータの制御状態を決定し、さらに、中間圧側開閉弁16aを開弁状態とし、低圧側開閉弁16bを閉弁状態とし、冷房用開閉弁16cを開弁状態とする。
【0152】
これにより、図4のステップS12にて、各制御対象機器に制御信号あるいは制御電圧が出力されると、ヒートポンプサイクル10は、図2の実線矢印に示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられることになる。
【0153】
より詳細には、ヒートポンプサイクル10が、低段側圧縮機構および高段側圧縮機構の2つの圧縮機構にて冷媒を多段階に昇圧して、サイクルの中間圧冷媒を低段側圧縮機構から吐出された冷媒と合流させて高段側圧縮機構へ吸入させる、いわゆるガスインジェクションサイクル(エコノマイザ式冷凍サイクル)に切り替えられる。
【0154】
続くステップS92では、圧縮機11の吐出ポート11cから高段側膨張弁13の入口側へ至るヒートポンプサイクル10の高圧側冷媒圧力Pdの目標高圧TPdを決定し、ステップS93へ進む。この目標高圧TPdは、図4のステップS4にて決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、送風空気が目標吹出温度TAOとなるように決定される。
【0155】
ステップS93では、現在の圧縮機11の回転数Ncが圧縮機11の耐久性から予め決定される最大回転数Ncmaxまで上昇しているか否か、すなわち、Nc=Ncmaxとなっているか否かが判定される。ステップS93にて、Nc=Ncmaxとなっていない場合には、ステップS94へ進み、サブクール制御が実行される。一方、Nc=Ncmaxとなっている場合には、ステップS95へ進む。
【0156】
ここで、ステップS94にて実行されるサブクール制御について、図6のフローチャートを用いて説明する。このサブクール制御は、ステップS93にて、Nc=Ncmaxとなっていない場合、すなわち、圧縮機11の冷媒吐出能力を現在の能力よりも増加させることができる場合に実行される制御である。
【0157】
まず、図6のステップS941では、室内凝縮器12流出冷媒の目標過冷却度TSCを決定して、ステップS942へ進む。具体的には、この目標過冷却度TSCは、室内凝縮器12流出冷媒の温度および圧力に基づいて、サイクル効率(COP)が最大となるように決定される。
【0158】
ステップS942では、室内凝縮器12流出冷媒の温度および圧力に基づいて算出される現在の室内凝縮器12流出冷媒の過冷却度SCが目標過冷却度TSCより低くなっているか否かが判定される。ステップS942にて、現在の過冷却度SCが目標過冷却度TSCより低くなっている場合は、ステップS944へ進み、現在の過冷却度SCが目標過冷却度TSCより低くなっていない場合には、ステップS943へ進む。
【0159】
ここで、本実施形態の過冷却度SCは、現在の液相冷媒の温度と同一の圧力の飽和液状態の冷媒との温度差の絶対値で定義される。従って、過冷却度SCの上昇に伴って、実際の液相冷媒の温度は低下することになる。そして、ステップS943では、高段側膨張弁13の弁開度を現在の弁開度に対して、予め定めた所定開度分だけ増加させてステップS98へ戻る。この高段側膨張弁13の弁開度増加により高圧冷媒の圧力が低下することで室内凝縮器12流出冷媒の過冷却度SCが低下して目標過冷却度TSCに近づく。
【0160】
ステップS944では、高段側膨張弁13の現在の弁開度が、最小弁開度よりも大きくなっているか否かを判定する。ステップS944にて、高段側膨張弁13の現在の弁開度が、最小弁開度よりも大きくなっている場合には、ステップS945へ進み、高段側膨張弁13の弁開度を現在の弁開度に対して予め定めた所定開度分だけ減少させて、ステップS98へ戻る。この高段側膨張弁13の弁開度減少により高圧冷媒の圧力が上昇することで室内凝縮器12流出冷媒の過冷却度SCが上昇して、目標過冷却度TSCに近づく。
【0161】
一方、ステップS944にて、高段側膨張弁13の現在の弁開度が、最小弁開度よりも大きくなっていない(すなわち、現在の弁開度が、最小弁開度になっている)場合には、現在の値よりも弁開度を減少させることはできないので、現在の弁開度が維持されて、ステップS98へ戻る。
【0162】
つまり、ステップS94にて実行されるサブクール制御では、圧縮機11の冷媒吐出能力を現在の能力よりも増加させることができる場合に、高段側膨張弁13の弁開度を調整して過冷却度SCを目標過冷却度TSCに近づけることによって、サイクル効率を最大に近づける制御を行っている。
【0163】
次に、図5のステップS95では、高段側膨張弁13の現在の弁開度が、最大弁開度(全開状態)よりも小さくなっているか否かを判定する。ステップS95にて、高段側膨張弁13の現在の弁開度が、最大弁開度よりも小さくなっている場合には、ステップS96へ進み、乾き度制御を実行し、最大弁開度よりも小さくなっていない(すなわち、現在の弁開度が、最大弁開度になっている)場合には、ステップS97へ進み、PTCヒータ制御を実行する。
【0164】
ステップS96にて実行される乾き度制御については、図7のフローチャートを用いて説明する。この乾き度制御は、高段側膨張弁13の弁開度を現在の開度よりも増加させることによって、室内凝縮器12流出冷媒を気液二相状態とすることができる場合に実行される制御である。つまり、上述した従来技術の能力不足時に実行される制御に対応している。
【0165】
まず、ステップS961では、現在の高圧側冷媒圧力PdがステップS92にて決定された目標高圧TPdより低くなっているか否かが判定される。ステップS961にて、現在の高圧側冷媒圧力Pdが目標高圧TPdより低くなっていると判定された場合には、ステップS962へ進み、現在の高圧側冷媒圧力Pdが目標高圧TPdより低くなっていない(すなわち、現在の高圧側冷媒圧力Pdが目標高圧TPd以上となっている)と判定された場合には、ステップS964へ進む。
【0166】
ステップS962では、高段側膨張弁13の現在の弁開度が、最大弁開度(全開状態)よりも小さくなっているか否かを判定する。ステップS962にて、高段側膨張弁13の現在の弁開度が、最大弁開度よりも小さくなっていると判定された場合には、ステップS963へ進み、高段側膨張弁13の弁開度を現在の弁開度に対して、予め定めた所定開度分だけ増加させてステップS98へ戻る。この高段側膨張弁13の弁開度増加により
一方、ステップS962にて、高段側膨張弁13の現在の弁開度が、最大弁開度よりも小さくなっていない(すなわち、現在の弁開度が、最大弁開度になっている)と判定された場合には、現在の値よりも弁開度を増加させることはできないので、現在の弁開度が維持されて、ステップS98へ戻る。
【0167】
また、ステップS964では、高段側膨張弁13の現在の弁開度が、最小弁開度よりも大きくなっているか否かを判定する。ステップS964にて、高段側膨張弁13の現在の弁開度が、最小弁開度よりも大きくなっている場合には、ステップS965へ進み、高段側膨張弁13の弁開度を現在の弁開度に対して、予め定めた所定開度分だけ減少させてステップS98へ戻る。
【0168】
一方、ステップS964にて、高段側膨張弁13の現在の弁開度が、最小弁開度よりも大きくなっていない(すなわち、現在の弁開度が、最小弁開度になっている)場合には、現在の値よりも弁開度を減少させることはできないので、現在の弁開度が維持されて、ステップS98へ戻る。
【0169】
つまり、ステップS96にて実行される乾き度制御では、圧縮機11の冷媒吐出能力を現在の能力よりも増加させることができない場合に、高段側膨張弁13の弁開度を増加させることで、気液分離器14から圧縮機11の中間圧ポート11bへ流入させる冷媒流量(ガスインジェクション量)を増加させる。これにより、圧縮機11の圧縮仕事量を増加させるとともに室内凝縮器12流出冷媒の乾き度を増加させ、送風空気を目標吹出温度TAOまで上昇させている。
【0170】
次に、図5のステップS97にて実行されるPTCヒータ制御(PTCヒータ50の能力制御)については、図8のフローチャートを用いて説明する。このPTCヒータ制御は、ヒートポンプサイクル側での加熱能力向上のための能力制御が最大となっている場合に実行される。具体的には、圧縮機11の回転数Ncが最大回転数Ncmaxとなっており、かつ、高段側膨張弁13の現在の弁開度が、最大弁開度となっている場合には、圧縮機11の回転数制御および高段側膨張弁13の弁開度制御により送風空気を目標吹出温度TAOまで上昇させることができないので、図8に示すPTCヒータ制御が実行される。
【0171】
まず、ステップS971では、現在の高圧側冷媒圧力PdがステップS92にて決定された目標高圧TPdより高くなっているか否かが判定される。ステップS971にて、現在の高圧側冷媒圧力Pdが目標高圧TPdより高くなっていると判定された場合には、ステップS972へ進み、現在の高圧側冷媒圧力Pdが目標高圧TPdより高くなっていないと判定された場合には、ステップS975へ進む。
【0172】
ステップS971にて、現在の高圧側冷媒圧力Pdが目標高圧TPdより高くなっていると判定された場合は、室内凝縮器12における加熱能力だけで、送風空気を目標吹出温度TAOまで昇温させることができる状態である。そこで、ステップS972では、現在のPTCヒータ50の稼働状態を判定して、PTCヒータ50による送風空気の加熱量を減少させる。
【0173】
具体的には、ステップS972にて、PTCヒータ50の稼働状態がHi稼働モードであると判定された場合には、ステップS973にてLo稼働モードへ切り替えてステップS98へ戻る。また、PTCヒータ50の稼働状態がLo稼働モードであると判定された場合は、ステップS974にてOFFモードへ切り替えてステップS98へ戻る。さらに、PTCヒータ50の稼働状態がOFFモードであると判定された場合は、OFFモードを維持してステップS98へ戻る。
【0174】
一方、ステップS971にて、現在の高圧側冷媒圧力Pdが目標高圧TPdより高くなっていないと判定された場合は、室内凝縮器12における加熱能力だけでは、送風空気を目標吹出温度TAOまで昇温させることができない状態である。そこで、ステップS975では、現在のPTCヒータ50の稼働状態を判定して、PTCヒータ50による加熱量を増加させる。
【0175】
具体的には、ステップS975にて、PTCヒータ50の稼働状態がHi稼働モードであると判定された場合には、Hi稼働モードを維持してステップS98へ戻る。また、PTCヒータ50の稼働状態がLo稼働モードであると判定された場合は、ステップS976にてHi稼働モードへ切り替えてステップS98へ戻る。さらに、PTCヒータ50の稼働状態がOFFモードであると判定された場合は、ステップS977にてLo稼働モードへ切り替えてステップS98へ戻る。
【0176】
そして、図5のステップS98では、高圧側冷媒圧力Pdが目標高圧TPdに近づくように、フィードバック制御手法によって圧縮機11の回転数Ncが決定される。圧縮機11の回転数Ncの決定については、図9のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS981では、現在の高圧側冷媒圧力PdがステップS92にて決定された目標高圧TPdより低くなっているか否かが判定される。
【0177】
ステップS981にて、現在の高圧側冷媒圧力Pdが目標高圧TPdより低くなっていると判定された場合には、ステップS982へ進み、現在の圧縮機11の回転数Ncが最大回転数Ncmaxより低くなっているか否かが判定される。ステップS982にて、現在の圧縮機11の回転数Ncが最大回転数Ncmaxより低くなっていると判定された際には、ステップS983へ進み、圧縮機11の回転数Ncを予め定めた所定回転数分だけ増加させて図4のステップS10へ戻る。
【0178】
一方、ステップS982にて、現在の圧縮機11の回転数Ncが最大回転数Ncmaxより低くなっていない(すなわち、現在の圧縮機11の回転数Ncが最大回転数Ncmaxになっている)と判定された際には、現在の値よりも圧縮機11の回転数Ncを増加させることはできないので、現在の回転数Ncが維持されて図4のステップS10へ戻る。
【0179】
また、ステップS981にて、現在の高圧側冷媒圧力Pdが目標高圧TPdより低くなっていないと判定された場合には、ステップS984へ進み、圧縮機11の回転数Ncを予め定めた所定回転数分だけ減少させて図4のステップS10へ戻る。
【0180】
暖房運転モードでは、以上の如く制御フローが実行されるので、ヒートポンプサイクル10では、図10のモリエル線図に示すように冷媒の状態が変化する。なお、図10では、サブクール制御時の冷媒の状態の変化を太実線で示し、サブクール制御時から乾き度制御へ移行した際の冷媒の状態の変化を太破線で示し、さらに、乾き度制御からPTCヒータ制御へ移行した際の冷媒の状態の変化を太一点鎖線で示している。
【0181】
まず、暖房運転モード時に制御ステップS94(図6)で説明したサブクール制御が実行されると、圧縮機11の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒(図10のa点)が室内凝縮器12へ流入する。室内凝縮器12へ流入した冷媒は、送風機32から送風されて室内蒸発器23を通過した送風空気と熱交換して放熱し、凝縮する(図10のa点→b点)。これにより、送風空気が加熱される。
【0182】
室内凝縮器12から流出した冷媒は、絞り状態となっている高段側膨張弁13にて中間圧冷媒となるまで等エンタルピ的に減圧膨脹される(図10のb点→c1点)。そして、高段側膨張弁13にて減圧された中間圧冷媒は、気液分離器14にて気液分離される(図10のc1点→c2点、c1点→c3点)。
【0183】
気液分離器14にて分離された中間圧の気相冷媒は、中間圧側開閉弁16aが開弁状態となっているので、中間圧冷媒導入通路15を介して、圧縮機11の中間圧ポート11bへ流入し(図10のc2点→a2点)、低段側圧縮機構吐出冷媒(図10のa1点)と合流して、高段側圧縮機構へ吸入される。
【0184】
一方、気液分離器14にて分離された中間圧の液相冷媒は、低圧側開閉弁16bが閉弁状態となっているので、低段側固定絞り17へ流入して低圧冷媒となるまで等エンタルピ的に減圧膨脹される(図10のc3点→c4点)。低段側固定絞り17から流出した低圧冷媒は、室外熱交換器20へ流入して、送風ファン21から送風された外気と熱交換して吸熱し、蒸発する(図10のc4点→d点)。
【0185】
室外熱交換器20から流出した冷媒は、冷房用開閉弁16cが開弁状態となっているので、膨張弁迂回用通路25を介して、アキュムレータ24へ流入して気液分離される。そして、分離された気相冷媒が圧縮機11の吸入ポート11a(図10のe点)から吸入されて再び圧縮される。一方、分離された液相冷媒はサイクルが要求されている冷凍能力を発揮するために必要としていない余剰冷媒としてアキュムレータ24内に蓄えられる。
【0186】
なお、図10においてd点とe点が異なっている理由は、アキュムレータ24から圧縮機11の吸入ポート11aへ至る冷媒配管を流通する気相冷媒には圧力損失が生じるからである。従って、理想的なサイクルでは、d点とe点が一致していることが望ましい。このことは、他の運転状態においても同様である。
【0187】
従って、暖房運転モード時のサブクール制御では、室内凝縮器12にて圧縮機11から吐出された高温高圧冷媒の有する熱を送風空気に放熱させて、加熱された室内送風空気を車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の暖房を実現することができる。この際、サブクール制御では、図6で説明したように高段側膨張弁13の弁開度調整によって室内凝縮器12流出冷媒(図10のb点)の過冷却度SCが目標過冷却度TSCに近づくように制御して、サイクル効率を最大に近づけることができる。
【0188】
さらに、サブクール制御時に、圧縮機11の回転数Ncを最大回転数Ncmaxとなるまで増加させても、室内凝縮器12にて、車室内へ吹き出される送風空気の温度を目標吹出温度TAOまで上昇させる加熱能力を発揮できない際には、サブクール制御から制御ステップS96(図7)で説明した乾き度制御へ移行する。
【0189】
乾き度制御へ移行すると、図10の太破線に示すように冷媒の状態が変化する。なお、図10では、乾き度制御時の冷媒の状態の符号として、サブクール制御と同様の状態の冷媒の符号に「’」をつけて示している。
【0190】
この乾き度制御では、高段側膨張弁13の弁開度を増加させて、室内凝縮器12流出冷媒の乾き度を増加させるので、室内凝縮器12流出冷媒の状態が図10のb’点へ変化する。さらに、圧縮機11の中間圧ポート11bから流入する冷媒圧力(図10のc2’点他)および圧縮機11の吐出ポート11cから吐出される冷媒圧力(図10のa’点他)が、サブクール制御時に対して上昇する。
【0191】
従って、サブクール制御時に対して、圧縮機11吐出冷媒の温度を上昇させて、室内凝縮器12を流通する高圧冷媒の温度と室内凝縮器12へ流入する送風空気との温度差を拡大できるとともに、圧縮機11の中間圧ポート11bから流入させる気相冷媒流量(ガスインジェクション量)を増加させることができる。その結果、乾き度制御時には、サブクール制御時に対して、室内凝縮器12における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
【0192】
ところで、乾き度制御では、上記の如く、室内凝縮器12における加熱能力を向上増加させることが期待できるものの、サブクール制御時に対して、室内凝縮器12における出入口間エンタルピ差が低下してしまうので(図10のa点とb点とのエンタルピ差→a’点とb’点とのエンタルピ差)、高段側膨張弁13の開度が一定の値よりも増加すると、加熱能力を増加させることができなくなってしまうことがある。
【0193】
そこで、本実施形態では、乾き度制御時に、高段側膨張弁13の弁開度を最大弁開度となるまで増加させても、室内凝縮器12にて、車室内へ吹き出される送風空気の温度を目標吹出温度TAOまで上昇させる加熱能力を発揮できない際、すなわち、乾き度制御時に車室内へ吹き出される送風空気の温度が目標吹出温度TAO以下となった際に、乾き度制御から制御ステップS97(図8)で説明したPTCヒータ制御へ移行する。
【0194】
PTCヒータ制御へ移行すると、図10の太一点鎖線に示すように冷媒の状態が変化する。なお、図10では、サブクール制御と同様の状態の冷媒の符号に「’’」をつけて示している。
【0195】
このPTCヒータ制御では、PTCヒータ50へ印加する電圧を増加させてPTCヒータ50の加熱能力を増加させる。これにより、サブクール制御および乾き度制御時に対して、室内凝縮器12へ流入する送風空気の温度が上昇し、室内凝縮器12にて送風空気が吸熱する吸熱量、すなわち、室内凝縮器12にて冷媒が送風空気に放熱する放熱量が一時的に減少する。
【0196】
このため、実質的に室内凝縮器12の熱交換能力が低下して、ヒートポンプサイクル10のサイクルバランスが、室内凝縮器12内の冷媒圧力が上昇するようにバランスする(図10のa’’点、b’’点)。従って、圧縮機11吐出冷媒の温度が上昇し、室内凝縮器12を流通する冷媒の温度と室内凝縮器12へ流入する送風空気の温度差を拡大できる。
【0197】
さらに、圧縮機11の高段側圧縮機構における圧縮行程(すなわち、図10のa2’点→a’’点で示す、中間圧ポート11bから吐出ポート11cへ至る範囲の圧縮行程)の圧縮仕事量を増加させることができ、乾き度制御に対して、室内凝縮器12における出入口間エンタルピ差を増大させることができる(図10のΔic2’→Δic2’’)。その結果、PTCヒータ制御時には、乾き度制御時に対して、室内凝縮器12における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
【0198】
本実施形態の車両用空調装置1は、上記の如く、車室内の冷房、除湿暖房および暖房を実現することができ、除湿暖房運転モードおよび暖房運転モードでは、要求される送風空気の加熱能力に応じて、送風空気を効率的かつ効果的に加熱することができる。
【0199】
さらに、本実施形態では、補助加熱手段であるPTCヒータ50を室内凝縮器12の空気流れ上流側に配置しているので、PTCヒータ50は、送風空気を室内凝縮器12よりも先に加熱する。このため、PTCヒータ制御時に室内凝縮器12における送風空気の加熱能力を向上させることができる。これにより、室内凝縮器12にて加熱された後の送風空気をPTCヒータ50にて加熱する構成よりも、PTCヒータ50の消費電力量を縮小できる。
【0200】
より具体的には、従来技術のように、室内凝縮器12にて加熱された後の送風空気をPTCヒータ50にて加熱する構成では、定格電圧を印加した際に2kWの発熱量(基準加熱能力)となるものを採用しなければならない。これに対して、本実施形態では、定格電圧を印加した際に800W程度の発熱量となるものを採用することができる。従って、PTCヒータ50の消費電力量を縮小できる。
【0201】
さらに、PTCヒータ50として、基準加熱能力よりも低い加熱能力を発揮するものを採用できるので、PTCヒータ50自体の小型化、PTCヒータ50と空調制御装置40とを接続するハーネス(電力線)の細径化等により、車両用空調装置1(冷凍サイクル装置)全体としての小型化および製造コストの低減を図ることができる。
【0202】
また、本実施形態では、図8の制御ステップS97にて説明したように、PTCヒータ制御時に、高圧側冷媒圧力Pd(室内凝縮器12における冷媒圧力)が目標高圧TPdとなるように、加熱能力制御手段40aがPTCヒータ50の加熱能力を調整している。従って、送風空気の目標吹出温度TAOに基づいて目標高圧TPdを設定することで、送風空気を容易に、かつ、不必要なエネルギ消費を抑制しながら目標吹出温度TAOまで昇温させることができる。
【0203】
ここで、本実施形態では、ヒートポンプサイクル10として、運転モードに応じて種々のサイクル構成を切替可能なものを採用した例を説明したが、本実施形態の暖房運転モード時における室内凝縮器12の加熱能力向上効果は、少なくとも暖房運転モード時に、本実施形態のヒートポンプサイクル10のようにガスインジェクションサイクルが構成されることで確実に得ることができる。
【0204】
このことを、圧縮機、放熱器(本実施形態の室内凝縮器12に対応)、膨張弁、蒸発器(本実施形態の室外熱交換器20に対応)を環状に接続して構成された通常の蒸気圧縮式の冷凍サイクルと、この放熱器の送風空気流れ上流側に配置されて放熱器へ流入する送風空気を加熱するPTCヒータとを備える比較例の車両用空調装置と比較して説明する。
【0205】
図11は、この比較例の車両用空調装置に適用された冷凍サイクルにおける冷媒の状態の変化を示すモリエル線図である。この図11では、PTCヒータへ電力を供給することなく上述のサブクール制御と同様に放熱器流出冷媒の過冷却度が目標過冷却度に近づくように制御した際の冷媒の状態の変化を太実線で示し、PTCヒータへ電力を供給して同様のサブクール制御を行った際の冷媒の状態の変化を太破線で示している。また、図11では、図10と同等の冷媒の状態を同一の符号を用いて表している。
【0206】
図11から明らかなように、PTCヒータに電力を供給することによって、高圧側冷媒圧力Pdが上昇し、圧縮機の圧縮行程の圧縮仕事量を増加させることができるものの(図11のΔic→Δic’)、室外熱交換器20における出入口間エンタルピ差(室外熱交換器20の吸熱量)が低減してしまう(図11のΔie→Δie’)。その結果、室内凝縮器12における送風空気の加熱能力が減少してしまうこともある。
【0207】
これに対して、本実施形態では、少なくとも暖房運転モード時にガスインジェクションサイクルが構成されるので、補助加熱手段(PTCヒータ50)を室内凝縮器12にて高圧冷媒と熱交換する送風空気を加熱するように配置することによる室内凝縮器12の加熱能力向上効果を確実に得ることができる。
【0208】
(第2実施形態)
第1実施形態では、補助加熱手段としてPTCヒータ50を採用した例を説明したが、本実施形態では、図12の全体構成図に示すように、PTCヒータ50を廃止して、図示しない走行用電動モータおよび走行用電動モータに電力を供給するインバータを冷却する冷却水(熱媒体)を熱源として送風空気を加熱する補助加熱用熱交換器60を採用した例を説明する。
【0209】
なお、図12では、ヒートポンプサイクル10が暖房運転モードの冷媒回路に切り替えられた状態を示している。さらに、図12では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。
【0210】
補助加熱用熱交換器60は、外部熱源である走行用電動モータおよびインバータを冷却する冷却水を循環させる冷却水回路61に配置されており、内部を流通する冷却水と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器で構成されている。
【0211】
さらに、この補助加熱用熱交換器60としては、第1実施形態と同様に基準加熱能力よりも低い加熱能力を発揮するものが採用されている。なお、本実施形態における基準加熱能力とは、仮に、室内凝縮器12にて加熱された後の送風空気を補助加熱用熱交換器60にて加熱するように配置した際に、補助加熱用熱交換器60と室内凝縮器12との双方の加熱能力によって送風空気を目標温度まで上昇させるために必要な最大加熱能力である。
【0212】
具体的には、本実施形態では、基準加熱能力より低い加熱能力を発揮する補助加熱用熱交換器60として、冷却水と送風空気とを熱交換させる熱交換コア部における熱交換面積が、基準加熱能力を発揮するために必要な熱交換面積よりも小さいものを採用している。
【0213】
また、冷却水回路61には、補助加熱用熱交換器60へ流入する冷却水の流量を調整する流量調整弁62が配置されている。この流量調整弁62は、冷却水通路の通路面積を変化させる弁体と、この弁体を変位させて冷却水通路の通路断面積を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の開度調整弁であり、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0214】
そして、空調制御装置40が流量調整弁62の作動を制御することによって、補助加熱用熱交換器60へ流入する冷却水の流量が調整され、これにより、補助加熱用熱交換器60における送風空気の加熱能力が調整される。従って、本実施形態の流量調整弁62は、加熱能力調整手段を構成している。
【0215】
さらに、本実施形態の空調制御装置40では、流量調整弁62の制御状態として、その冷却水通路を全開として補助加熱用熱交換器60に高い加熱能力を発揮させるHi稼働モードと、冷却水通路の通路面積を中開度として補助加熱用熱交換器60に低い加熱能力を発揮させるLo稼働モードと、冷却水通路を全閉として補助加熱用熱交換器60に加熱能力を発揮させないOFFモードを切り替えることができる。
【0216】
そして、図5のステップS97にて、第1実施形態のPTCヒータ50の稼働状態の切替と同様に、流量調整弁62の作動状態を切り替える。その他の構成および作動は、第1実施形態と全く同様である。
【0217】
従って、本実施形態の車両用空調装置1(冷凍サイクル装置)によれば、第1実施形態と同様に、室内凝縮器12における送風空気の加熱能力を向上させることができる。その結果、暖房運転モード時の補助加熱手段におけるエネルギ消費量を低減できるとともに、車両用空調装置1全体としての小型化および製造コストの低減を図ることができる。
【0218】
(第3実施形態)
第1実施形態では、空調制御装置40がPTCヒータ50へ供給する電力(具体的には、電圧)を調整することで、PTCヒータ50の稼働状態をHi稼働モード、Lo稼働モードおよびOFFモードに切り替える例を説明したが、本実施形態では、PTCヒータ50として、複数本のPTCヒータを一体化したものを採用している。
【0219】
具体的には、本実施形態のPTCヒータ50は、3本のPTCヒータを一体化することによって構成されており、通電するPTCヒータの本数を変化させることによって、PTCヒータ50全体としての加熱能力が制御される。
【0220】
換言すると、通電するPTCヒータの本数を変化させることによって、PTCヒータ50へ供給される電力量が調整される。さらに、本実施形態のPTCヒータ50おいても、3本のPTCヒータの全てに通電した際に、基準加熱能力よりも低い加熱能力を発揮するものが採用されている。
【0221】
そして、第1実施形態の図8で説明したステップS97を図13に示すように変更して、ステップS971にて現在の高圧側冷媒圧力Pdが目標高圧TPdより低くなっていると判定された場合には、ステップS972’へ進み、通電するPTCヒータの本数を増加させる。但し、ステップS972’にて通電するPTCヒータの本数が既に3本となっている場合は、通電するPTCヒータの本数は3本に維持される。
【0222】
逆に、ステップS971にて現在の高圧側冷媒圧力Pdが目標高圧TPdより低くなっていないと判定された場合には、ステップS975’へ進み、通電するPTCヒータの本数を減少させる。但し、ステップS975’にて通電するPTCヒータの本数が既に0本となっている場合、すなわちPTCヒータ50に通電されていない場合は、PTCヒータ50に通電しない状態が維持される。
【0223】
その他の構成および作動は、第1実施形態と全く同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1(冷凍サイクル装置)においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、通電するPTCヒータの本数を変化させることによってPTCヒータ50全体の加熱能力を多段階(本実施形態では、3段階)に変化させることができるので、より一層、暖房運転モード時の補助加熱手段におけるエネルギ消費量を低減できる。
【0224】
(第4実施形態)
上述の第1〜3実施形態では、高段側膨張弁13と、低段側固定絞り17と、高段側膨張弁13にて減圧された中間圧冷媒の気液を分離し、分離された気相冷媒を中間圧ポート11b側へ流出させる気液分離器14とを備えた2段膨張型のガスインジェクションサイクルを構成しているが、本第4実施形態は、内部熱交換方式のガスインジェクションサイクルを構成するものであって、上記した高段側膨張弁13、低段側固定絞り17及び中間圧冷媒の気液分離器14を設けていない。
【0225】
第4実施形態を図14に基づいて具体的に説明すると、第4実施形態では、室内凝縮器12の冷媒出口側に、室内凝縮器12から流出した高圧冷媒の冷媒通路を複数に分岐する冷媒分岐部70を設け、この冷媒分岐部70により分岐された一方の冷媒通路71に第1減圧手段として温度式膨張弁72を設けている。この温度式膨張弁72は、室内凝縮器12出口側の高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧するものである。
【0226】
そして、冷媒分岐部70により分岐された他方の冷媒通路73を通過する室内凝縮器12出口側の高圧冷媒と、温度式膨張弁72により減圧された中間圧冷媒との間で熱交換を行う内部熱交換器74が設けられている。この内部熱交換器74には、冷媒通路73を通過する高圧冷媒が流れる高圧冷媒通路部74aと、温度式膨張弁72により減圧された中間圧冷媒が流れる中間圧冷媒通路部74bとが形成されている。
【0227】
内部熱交換器74においては、高圧冷媒通路部74aの温度が高い高圧冷媒によって中間圧冷媒通路部74bの温度が低い中間圧冷媒が加熱されることで、中間圧冷媒が蒸発して気相冷媒となる。
【0228】
上記中間圧冷媒通路部74bの冷媒出口側は中間圧冷媒導入通路15により圧縮機11の中間圧ポート11bに接続されている。そして、中間圧冷媒導入通路15には温度式膨張弁72の感温部72aが配置され、この感温部72aにより感知される中間圧冷媒の温度に応じた圧力と中間圧冷媒の圧力とに基づいて温度式膨張弁72の弁体が変位し、これにより、温度式膨張弁72の弁開度は中間圧冷媒通路部74bから流出する中間圧冷媒が所定の過熱度を持つように自動的に調整される。
【0229】
内部熱交換器74の中間圧冷媒通路部74bにおいて蒸発した気相の中間圧冷媒は中間圧冷媒導入通路15を通過して中間圧ポート11bに導入される。
【0230】
内部熱交換器74の高圧冷媒通路部74aの出口側には、第2減圧手段として電気的に弁体の開度が調整可能な電気式膨張弁75が設けられ、この電気式膨張弁75の出口側は室外熱交換器20の冷媒入口側に接続されている。この電気式膨張弁75は、第1実施形態にて説明した高段側膨張弁13と同様の構成でよい。
【0231】
第4実施形態の他の構成は第1実施形態と同じであるので、図14には第1実施形態と同一または均等部分に同一符号を付して、この同一または均等部分の説明を省略する。
【0232】
なお、図14では、空調制御用センサ群41のうち、特に、室内凝縮器12出口側の高圧冷媒温度を検出する冷媒温度センサ41aと、室内凝縮器12出口側の高圧冷媒圧力を検出する冷媒圧力センサ41bとを室内凝縮器12出口側の高圧冷媒通路部に配置した状態を図示している。
【0233】
第4実施形態では、上記両センサ41a、41bの検出信号に基づいて室内凝縮器12出口側の高圧冷媒の状態(具体的には冷媒過冷却度又は冷媒乾き度)を判定し、この高圧冷媒の状態に応じて電気式膨張弁75の弁開度が調整される。
【0234】
第4実施形態による内部熱交換方式のガスインジェクションサイクルにおける暖房運転モードでは、圧縮機11の回転数Ncが最大回転数Ncmaxに上昇するまでは電気式膨張弁75の弁開度制御により図5〜図7において前述した過冷却度制御または乾き度制御を行い、そして、圧縮機11の回転数Ncが最大回転数Ncmaxに上昇してサイクル側の能力向上制御が最大となっている状態で、暖房能力不足の状態を判定すると、PTCヒータ50を作動させる。
【0235】
暖房運転モード時にPTCヒータ50が作動することで、室内空調ユニット30では室内送風空気がPTCヒータ50によってまず最初に加熱され、その後に室内送風空気が室内凝縮器12により加熱される。
【0236】
これにより、PTCヒータ50の作動時には、室内凝縮器12に当たる空気温度がPTCヒータ50の停止時よりも上昇するので、高圧冷媒の圧力及び冷媒凝縮温度がPTCヒータ50の停止時よりも上昇するようにサイクルバランスが行われる。そして、高圧冷媒の圧力上昇によって、圧縮機11の圧縮仕事量が増大するので、室内凝縮器12による加熱能力を増大できる。
【0237】
図15は、第4実施形態による暖房運転モード時のサイクル挙動を示すもので、図15の実線はPTCヒータ50を停止状態とした場合のサイクル挙動を示し、1点鎖線はPTCヒータ50を作動状態とした場合のサイクル挙動を示している。
【0238】
図15において、図10と同一符号は図10と同一部位における冷媒状態を示す。図15の符号f、f’’は冷媒分岐部70における冷媒状態を示し、符号gは温度式膨張弁72の出口部、すなわち、内部熱交換器74の中間圧冷媒通路部74bの入口部の冷媒状態を示している。
【0239】
そして、符号h、h’’は内部熱交換器74の高圧冷媒通路部74aの出口部、すなわち、電気式膨張弁75の入口部の冷媒状態を示し、符号cは電気式膨張弁75の出口部、すなわち、室外熱交換器20の入口部の冷媒状態を示している。符号f、f’’→符号h、h’’間のエンタルピ減少と、符号g→符号a2間のエンタルピ増大は内部熱交換器74における内部熱交換に基づくものである。
【0240】
第4実施形態においても、PTCヒータ50を作動状態とすることにより圧縮機11の高段側圧縮機構における圧縮仕事量を、PTCヒータ50の停止状態に比較して、増大することができ(図15のΔic2→Δic2’’)、室内凝縮器12による加熱能力を増大できる。
【0241】
なお、第4実施形態では、補助加熱手段として電気ヒータ、具体的にはPTCヒータ50を用いる例について説明したが、第4実施形態においても、補助加熱手段として図12の第2実施形態にて説明した補助加熱用熱交換器60を用いることができる。
【0242】
(第5実施形態)
上述の第1〜4実施形態では、いずれも、補助加熱手段をなすPTCヒータ50、あるいは補助加熱用熱交換器60を室内凝縮器12の空気流れ上流側に配置する例について説明したが、第5実施形態では、補助加熱手段をなすPTCヒータ50を空気流れに対して室内凝縮器12と並列に配置する。
【0243】
具体的には、第5実施形態では図16に示すように室内凝縮器12の高圧冷媒が流れる熱交換部を空気流れと直交する方向に複数の熱交換部12a、12b、12cに分割し、この複数の熱交換部12a、12b、12cの間にPTCヒータ50、50を配置することで、室内凝縮器12の複数の熱交換部12a、12b、12cとPTCヒータ50、50とを空気流れに対して並列に配置している。
【0244】
そして、複数の熱交換部12a、12b、12cはそれぞれ、フィンと高圧冷媒が流れるチューブにより構成され、この複数の熱交換部12a、12b、12cの間にPTCヒータ50、50を配置した状態で、適宜の締め付け手段等により複数の熱交換部12a、12b、12cとPTCヒータ50、50は一体構造に組み付けられる。従って、第5実施形態による室内凝縮器12は、PTCヒータ50、50を一体化した熱交換器構造となっている。
【0245】
このように、第5実施形態による室内凝縮器12においては、複数の熱交換部12a、12b、12cとPTCヒータ50、50とが空気流れに対して並列に配置されているので、PTCヒータ50、50の作動時には複数の熱交換部12a、12b、12cとPTCヒータ50、50とが空気流れを同時に加熱することになる。
【0246】
その際、室内凝縮器12は、高圧冷媒が流れる複数の熱交換部12a、12b、12cとPTCヒータ50、50とを交互に並列配置した一体化構造となっているので、複数の熱交換部12a、12b、12cに当たる空気温度が、PTCヒータ50、50を設けない場合に比較してPTCヒータ50、50の加熱作用の影響で上昇する。これにより、高圧冷媒の圧力及び冷媒凝縮温度が上昇して、前述した圧縮機11の圧縮仕事量増大による室内凝縮器12の加熱能力の増大を実現できる。
【0247】
なお、第5実施形態では、補助加熱手段として電気ヒータ、具体的にはPTCヒータ50を用いる例について説明したが、第5実施形態においても、補助加熱手段として図12の第2実施形態にて説明した補助加熱用熱交換器60を用いることができる。すなわち、室内凝縮器12として、高圧冷媒が流れる複数の熱交換部12a、12b、12cと、外部熱源冷却用の熱媒体が流れる補助加熱用熱交換器60とを交互に並列配置して一体化した熱交換器構造を採用してもよい。
【0248】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0249】
(1)上述の実施形態では、本発明の冷凍サイクル装置を電気自動車用の車両用空調装置1に適用した例を説明したが、本発明の冷凍サイクル装置は、例えば、エンジン(内燃機関)および走行用電動モータから走行用の駆動力を得るハイブリッド車両のように、エンジン廃熱が暖房用熱源として不充分となることのある車両に適用して有効である。
【0250】
さらに、本発明の冷凍サイクル装置は、例えば、据置型空調装置、冷温保存庫、液体加熱装置等に適用してもよい。液体加熱装置に適用する場合は、利用側熱交換器として液体−冷媒熱交換器を採用し、流量調整手段として液体−冷媒熱交換器へ流入する液体流量を調整する液体ポンプあるいは流量調整弁を採用してもよい。
【0251】
(2)上述の実施形態では、外部熱源として走行用電動モータおよびインバータを採用し、これらを冷却する冷却水(熱媒体)を補助加熱用熱交換器の熱源とした例を説明したが、外部熱源および熱媒体はこれに限定されいない。例えば、本発明の冷凍サイクル装置を上述のハイブリッド車両の車両用空調装置に適用する場合には、外部熱源としてエンジンを採用して、熱媒体としてエンジン冷却水を採用してもよい。
【0252】
さらに、本発明の冷凍サイクル装置を据置型空調装置、冷温保存庫、液体加熱装置等の据置型の装置に適用する場合も、外部熱源として圧縮機駆動用のエンジンを採用してもよいし、その他の外部熱源を採用してもよい。
【0253】
(3)上述の第1、第2実施形態では、補助加熱手段(PTCヒータ50、補助加熱用熱交換器60)の加熱能力をHi稼働モード、Lo稼働モードおよびOFFモードに段階的に切り替えた例を説明し、第3実施形態では、多段階に切り替えた例を説明したが、補助加熱手段の加熱能力の調整はこれに限定されない。例えば、目標高圧TPdから高圧側冷媒圧力Pdを減算した差の拡大に伴って、補助加熱手段の加熱能力を連続的に徐々に増加させるようにしてもよい。
【0254】
(4)上述の第2実施形態では、基準加熱能力よりも低い加熱能力を発揮する補助加熱用熱交換器60として、基準加熱能力を発揮できるものよりも熱交換面積の小さいものを採用した例を説明したが、補助加熱用熱交換器60は、これに限定されない。例えば、タンクアンドチューブ型の熱交換器のチューブ本数や熱交換促進用のフィン数を低減させてもよいし、熱交換効率を低下させてもよい。また、別の形式の熱交換器を採用してもよい。
【0255】
(5)上述の実施形態では、図4の制御ステップS6にて、モード選択スイッチに応じて、冷房運転モード、除湿暖房運転モードおよび暖房運転モードを決定した例を説明したが、各運転モードの決定はこれに限定されない。例えば、外気温に対して設定温度が低い場合に冷房運転モードを実行することを決定し、外気温に対して設定温度が高い場合に暖房運転モードを実行するように決定してもよい。
【0256】
(6)上述の実施形態では、低段側減圧手段(第2減圧手段)としての低段側固定絞り17の流量特性を適切に設定することによって、暖房運転モード時に、室外熱交換器20へ流入する冷媒の乾き度Xを0.1以下としているが、低段側減圧手段(第2減圧手段)は、固定絞りに限定されない。
【0257】
つまり、低段側減圧手段として、高段側膨張弁13と同様の構成の可変絞り機構を採用してもよい。この場合は、空調制御装置40が、室外熱交換器20へ流入する冷媒の温度および圧力等に基づいて、室外熱交換器20へ流入する冷媒の乾き度Xを検出し、この検出値が0.1以下となるように、低段側減圧手段を構成する可変絞り機構の開度を制御すればよい。
【0258】
(7)上述の実施形態では、除湿暖房運転モード時に目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1除湿暖房モードから第4除湿暖房モードへ段階的に切り替える例を説明したが、第1除湿暖房モードから第4除湿暖房モードへの切り替えはこれに限定されない。例えば、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1除湿暖房モードから第4除湿暖房モードへ連続的に切り替えるようにしてもよい。
【0259】
すなわち、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、高段側膨張弁13を絞り開度を縮小させ、さらに、冷房用膨張弁22の絞り開度を増加させればよい。このように高段側膨張弁13および冷房用膨張弁22の絞り開度を変化させることによって、室外熱交換器20における冷媒の圧力(温度)が調整されるので、室外熱交換器20を自動的に、放熱器として作用させる状態から蒸発器として作用させる状態へ切り替えることができる。
【符号の説明】
【0260】
11 圧縮機
11a 吸入ポート
11b 中間圧ポート
11c 吐出ポート
12 室内凝縮器(利用側熱交換器)
13 高段側膨張弁
14 気液分離器
17 低段側固定絞り
20 室外熱交換器
40a 加熱能力調整手段(加熱能力調整手段)
50 PTCヒータ(補助加熱手段)
60 補助加熱用熱交換器(補助加熱手段)
62 流量調整弁(加熱能力調整手段)
74 内部熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入ポート(11a)から吸入した低圧冷媒を圧縮して吐出ポート(11c)から高圧冷媒を吐出するとともに、サイクル内の中間圧冷媒を流入させて圧縮過程の冷媒に合流させる中間圧ポート(11b)を有する圧縮機(11)と、
前記吐出ポート(11c)から吐出された高圧冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させて、前記熱交換対象流体を加熱する利用側熱交換器(12)と、
前記利用側熱交換器(12)から流出した高圧冷媒のうち中間圧状態まで減圧された気相の中間圧冷媒を前記中間圧ポート(11b)に導く中間圧冷媒導入通路(15)と、
前記利用側熱交換器(12)から流出した高圧冷媒のうち低圧状態まで減圧された低圧冷媒を蒸発させて、前記吸入ポート(11a)側へ流出させる蒸発器(20)と、
前記熱交換対象流体を加熱する補助加熱手段(50、60)とを備え、
前記補助加熱手段(50、60)は、前記熱交換対象流体を前記利用側熱交換器(12)よりも先に加熱するか、もしくは前記熱交換対象流体を前記利用側熱交換器(12)と同時に加熱するように構成されていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
吸入ポート(11a)から吸入した低圧冷媒を圧縮して吐出ポート(11c)から高圧冷媒を吐出するとともに、サイクル内の中間圧冷媒を流入させて圧縮過程の冷媒に合流させる中間圧ポート(11b)を有する圧縮機(11)と、
前記吐出ポート(11c)から吐出された高圧冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させて、前記熱交換対象流体を加熱する利用側熱交換器(12)と、
前記利用側熱交換器(12)から流出した高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧させる高段側減圧手段(13)と、
前記高段側減圧手段(13)にて減圧された中間圧冷媒の気液を分離し、分離された気相冷媒を前記中間圧ポート(11b)側へ流出させる気液分離手段(14)と、
前記気液分離手段(14)にて分離された液相冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる低段側減圧手段(17)と、
前記低段側減圧手段(17)にて減圧された低圧冷媒を蒸発させて、前記吸入ポート(11a)側へ流出させる蒸発器(20)と、
前記熱交換対象流体を加熱する補助加熱手段(50、60)とを備え、
前記補助加熱手段(50、60)は、前記熱交換対象流体を前記利用側熱交換器(12)よりも先に加熱するか、もしくは前記熱交換対象流体を前記利用側熱交換器(12)と同時に加熱するように構成されていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項3】
吸入ポート(11a)から吸入した低圧冷媒を圧縮して吐出ポート(11c)から高圧冷媒を吐出するとともに、サイクル内の中間圧冷媒を流入させて圧縮過程の冷媒に合流させる中間圧ポート(11b)を有する圧縮機(11)と、
前記吐出ポート(11c)から吐出された高圧冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させて、前記熱交換対象流体を加熱する利用側熱交換器(12)と、
前記利用側熱交換器(12)から流出した高圧冷媒の冷媒通路を複数に分岐する冷媒分岐部(70)と、
前記冷媒分岐部(70)により分岐された一方の冷媒通路(71)に設けられ、前記利用側熱交換器(12)出口側の高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧させる第1減圧手段(72)と、
前記冷媒分岐部(70)により分岐された他方の冷媒通路(73)を通過する前記利用側熱交換器(12)出口側の高圧冷媒と、前記第1減圧手段(72)により減圧された中間圧冷媒との間で熱交換を行うとともに、前記熱交換を終えた前記中間圧冷媒を前記中間圧ポート(11b)側へ流出させる内部熱交換器(74)と、
前記内部熱交換器(74)での熱交換を終えた前記高圧冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる第2減圧手段(75)と、
前記第2減圧手段(75)にて減圧された低圧冷媒を蒸発させて、前記吸入ポート(11a)側へ流出させる蒸発器(20)と、
前記熱交換対象流体を加熱する補助加熱手段(50、60)とを備え、
前記補助加熱手段(50、60)は、前記熱交換対象流体を前記利用側熱交換器(12)よりも先に加熱するか、もしくは前記熱交換対象流体を前記利用側熱交換器(12)と同時に加熱するように構成されていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記補助加熱手段(50、60)は、前記利用側熱交換器(12)よりも前記熱交換対象流体の上流側部位に配置され、前記熱交換対象流体を前記利用側熱交換器(12)よりも先に加熱することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記補助加熱手段(50、60)は、前記熱交換対象流体の流れに対して前記利用側熱交換器(12)と並列に配置されて前記利用側熱交換器(12)と一体に構成され、これにより、前記補助加熱手段(50、60)と前記利用側熱交換器(12)が前記熱交換対象流体を同時に加熱することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
仮に、前記補助加熱手段(50、60)を前記利用側熱交換器(12)にて加熱された後の前記熱交換対象流体を加熱するように配置した状態で、前記利用側熱交換器(12)および前記補助加熱手段(50、60)の双方の加熱能力によって前記熱交換対象流体を目標温度まで昇温させる際に、前記補助加熱手段(50、60)に要求される最大加熱能力を基準加熱能力としたときに、
前記補助加熱手段(50、60)として、前記基準加熱能力よりも低い加熱能力を発揮するものが採用されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記補助加熱手段(50、60)における前記熱交換対象流体の加熱能力を調整する加熱能力調整手段(40a、62)を備え、
前記加熱能力調整手段(40a、62)は、前記利用側熱交換器(12)における冷媒圧力(Pd)が目標高圧(TPd)となるように前記補助加熱手段(50、60)の加熱能力を調整することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記補助加熱手段は、電力を供給されることによって発熱する電気ヒータ(50)であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記補助加熱手段は、外部熱源を冷却する熱媒体を熱源として前記熱交換対象流体を加熱する補助加熱用熱交換器(60)であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記補助加熱手段は、電力を供給されることによって発熱する電気ヒータ(50)であり、
前記加熱能力調整手段(40a)は、前記電気ヒータ(50)へ供給する電力量を調整することによって、前記電気ヒータ(50)の加熱能力を調整することを特徴とする請求項7に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項11】
前記補助加熱手段は、外部熱源を冷却する熱媒体を熱源として前記熱交換対象流体を加熱する補助加熱用熱交換器(60)であり、
前記加熱能力調整手段(62)は、前記補助加熱用熱交換器(60)へ流入する熱媒体の流量を調整することによって、前記補助加熱用熱交換器(60)の加熱能力を調整することを特徴とすることを特徴とする請求項7に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項12】
前記加熱能力調整手段(40a、62)は、前記熱交換対象流体の加熱能力向上のための冷凍サイクル側での能力向上制御が最大となっている状態で、前記熱交換対象流体の加熱能力不足が判定されたときに、前記補助加熱手段(50、60)を作動させることを特徴とする請求項7、10、11のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−68407(P2013−68407A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−169404(P2012−169404)
【出願日】平成24年7月31日(2012.7.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】