説明

冷凍タマネギの製造方法

【課題】本発明は、カット処理した生タマネギから冷凍タマネギを得る製造方法であって、食感を良好にし、衛生的なタマネギを得、かつ、省エネルギを図ることができる冷凍タマネギの製造方法を提供する。
【解決手段】カット処理した生タマネギを冷凍処理する方法であって、生タマネギを温度50〜65℃の温水を用いて5〜20分間浸漬処理する温水処理した後、直ちに温度−20〜−40℃の冷気を用いて急速冷凍処理を施すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炒め物、揚げ物、煮込み、カレー、シチュー、スープ、ハンバーグなどの調理食品として好適に使用できる冷凍タマネギの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タマネギは、調理食品として、きわめて用途がひろく、とくに西洋料理の場合は、副材料として欠かせぬものである。ハンバーグ、コロッケ、オムレツには、みじん切りにして加え、スープ、シチューには、みじん切りをよく炒めて使い、料理の味と香りに奥行きをもたらすものである。
【0003】
我が国におけるタマネギの収穫は、春から夏にかけて兵庫、佐賀、愛知、香川の地方で採れ、秋から冬にかけては北海道で採れる。タマネギは貯蔵性の高い食品ではあるが、収穫時期、収穫場所に偏りがあるため、一般に乾燥処理又は凍結処理を施して保存される。
【0004】
この中で、冷凍タマネギを解凍して料理に使用した場合に、新鮮なタマネギと同様の優れた食感を有する冷凍タマネギの製造方法が先行技術として開示されている(文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−147892公報(〔0005〜0007〕)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記先行技術は、ブランチング処理、次いで乾燥処理した後、凍結処理を施して冷凍タマネギを得る製造方法であって、新鮮なタマネギと同様の優れた食感が得られる技術でよい方法であるが、品質上、また近年の地球環境の保存を目指した省エネルギの観点で、さらに改良すべき問題があった。
【0007】
本発明は、これらの問題を解決したものであって、カット処理した生タマネギから冷凍タマネギを得る製造方法であって、食感を良好にし、衛生的なタマネギを得、かつ、省エネルギを図ることができる冷凍タマネギの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る冷凍タマネギの製造方法は、カット処理した生タマネギを冷凍処理する方法であって、生タマネギを温水処理した後、直ちに急速冷凍処理を施すことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る冷凍タマネギの製造方法は、請求項1に記載の冷凍タマネギの製造方法において、前記温水処理が、温度50〜65℃の温水を用いて5〜20分間浸漬処理することを特徴とする。
【0010】
これらの構成により、カット処理、いわゆるみじん切り又はスライスした生タマネギを食感や香味などの風味を損なわないで、冷凍処理して冷凍タマネギを製造することにより、調理食品として使用し易く、かつ、保存や使用に好適な形状を有し、しかも、貯蔵しても風味等を損なうことがない冷凍タマネギを得るものである。
【0011】
また、従前のブランチング処理(温度90〜110℃、処理時間が数分間)よりも、低温で長時間にわたり温水に浸漬した後、直ちに冷凍処理を施すことにより、本冷凍タマネギを調理に使用した場合に、組織がしっかりして、煮崩れがし難いものが得られる。
【0012】
また、温水処理したタマネギを、そのまま予備冷却無しで、直ちに熱いままの状態で、温度−20〜−40℃の冷気で急速凍結することにより、凍結前後の温度差が大きく、また、潜熱の発散が促進されるので、凍結に要する時間を短縮することができる。
【0013】
また、従来の方法であれば、タマネギをブランチングした後、水や空気等で予め冷却する過程において、細菌による二次汚染が問題になるが、本発明方法では、温水処理後直ちに熱い状態で急速凍結するので、細菌による二次汚染が皆無であり、解凍後もタマネギの保存性が良好になる。
【0014】
請求項3に係る冷凍タマネギの製造方法は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の冷凍タマネギの製造方法において、前記急速冷凍処理が、温度−20〜−40℃の循環冷気を用いてタマネギを冷凍処理し、かつ、処理後の冷気中に含まれる凍結水分を除去して、冷気を循環使用することを特徴とする。
【0015】
本構成は、カット処理した生タマネギを温水処理後に直ちに急速冷凍処理するにときに、冷媒を用いた熱交換器で熱交換して冷気を温度−20〜−40℃に維持する。温度処理後のタマネギに前記冷気を吹き付け又は通過させて冷凍処理を行う際に、冷凍処理後の冷気には凍結水分を含んでおり、これを循環使用すると熱交換器の管壁及びフィンに水分が凍結付着を惹起して熱交換性能を悪化させる。この性能劣化を防止するために、熱交換器の入口側で、これらの凍結水分をフィルタ等で捕捉除去して、熱効率よく冷気を冷却して循環させるものである。この構成により、循環冷気の冷却能力が効率よく発揮でき、また循環風量も確保できるので、タマネギの冷凍作業を能率よく実施することができる。また、熱交換器の熱交換効率を良好に維持できるから、冷凍エネルギが節約され、省エネルギに貢献できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る請求項1,2,3に記載の冷凍タマネギの製造方法によれば、得られた冷凍タマネギを調理食品として料理に用いた場合に、タマネギの組織がしっかりして、煮崩れしがたいもので、風味のある料理を得ることができる。
【0017】
本発明の製造方法によれば、温水処理後、直ちに冷凍処理を行うので、凍結時間を短縮することが可能で、処理能力を向上させることができる。また、細菌による二次汚染がないので、調理食品として衛生的であり、保存性も良好である。また、循環冷気中の凍結水分を除去することで、冷気の冷却維持が効率よく行え、かつ循環冷気量も低下しないから、冷凍作業を能率よく実施できるし、無駄な冷凍エネルギを使わず、省エネルギに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施するための形態に係る冷凍タマネギの製造方法を示すフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係わる冷凍タマネギの製造方法を実施するための形態について図1のフローシートを用いて説明する。図1に示すように、生タマネギを水洗して清浄化した後、カット処理を行って生タマネギを数mm前後サイズのみじん切り、5〜20mmサイズのカット或いはスライス状にする。次いで、カット処理した生タマネギを温度50〜60℃の温水に5〜20分間浸漬して温水処理を行う。次いで、温水処理が終了したタマネギを熱いままの状態で直ちに温度−20〜−40℃の循環冷気を用いて冷凍処理を行い、冷凍タマネギを製造する。冷凍タマネギは袋詰め又はコンテナに詰められ、調理に供するまで冷凍保存される。一方、循環冷気は、冷凍機からの冷媒を熱交換器を介して冷気を温度範囲−20〜−40℃にある設定温度に冷却維持しながら、送風装置により循環送風され、冷凍処理部で温水処理後のタマネギを冷凍する。冷凍処理部からの排冷気は、タマネギの水分及び付着水分の蒸発に由来する凍結水分を含んでいるので、この水分を熱交換器入口側のフィルタで捕捉除去する。
【0020】
前記温水処理は、冷凍タマネギを保存するときに、生タマネギの組織の中で酵素が働き、栄養成分が消費され、水分も蒸散していく。これらを防止するために、前記酵素を失活させるのと、タマネギの組織の褐変やビタミン類の破壊を防止するために、また微生物の殺菌のために行う。また、通常のブランチングが、温度90〜110℃の湯又は蒸気を数分間生タマネギを浸漬又は暴露させて、タマネギの品温が60〜90℃に上昇するのに比べ、本発明の温水処理は、より温度が低くて処理時間を長くすることによりタマネギの品温が40〜60℃に抑えられるのと、直ちに冷凍処理することと相まって、冷凍タマネギを調理食品として使用した場合に、組織がしっかりして、煮崩れがし難いものが得られて、好適である。また、冷凍タマネギの解凍は、短時間に最大氷結結晶生成帯を通過させる急速解凍する方法で、加熱解凍や電子レンジ解凍が好適である。
【0021】
前記冷凍処理は、温水処理されたカット処理タマネギをそのまま予備冷却無しで、熱いままの状態で直ちに、温度−20〜−40℃の冷気に接触させて冷凍する。これにより、従来の方法のタマネギをブランチングした後、水や空気等で予備冷却する過程において、細菌による二次汚染が懸念されるのに対し、前記方法では、細菌による二次汚染がなく、解凍後もタマネギが衛生的であり、保存性も良好になる。また、凍結前後の温度差が大きく、潜熱の発散が促進されるので凍結に要する時間を短縮することができる。
【0022】
また、本発明に係る冷凍法は、タマネギの代表的氷結温度である−1〜−3℃の最大氷結晶生成帯を短時間(20分位)で通過する急速冷凍法で行い、タマネギの組織が破壊されないで、調理食品として良質な冷凍タマネギを得ることができる。前記冷気によるタマネギの急速冷凍法は、パンチングメタル又金網上に載置した温水処理後のタマネギに冷気を通過又は吹付けて、連続又はバッチ式で冷凍処理するのがよい。冷気の温度−20〜−40℃の範囲では、低い冷凍温度の方が品質を良好に保持できる期間は長い。また、冷気の温度が−20℃より高ければ、冷凍タマネギの組織が所望の性状が得られないことが多く、−40℃より低ければ、冷凍に要するエネルギが過大になって、省エネルギに適さない。
【0023】
前記冷凍処理を行う際に、冷凍処理後の冷気には凍結水分を含むために、冷気を循環使用すると、熱交換器の冷媒管の壁及びフィンに水分が凍結付着を惹起して冷媒管と冷気の熱交換を悪化させ、冷気を冷却する能力が劣る。この冷却性能の劣化防止をするために熱交換器の前で、凍結水分をフィルタ等で捕捉除去して、熱効率よく冷気を循環させるものである。前記フィルタは、凍結水分粒子を捕捉する金属製又は高分子樹脂製フィルタエレメントを用い、前記フィルタエレメントは連続式又は間欠的に供給できるものが使われる。この構成により、循環冷気の冷却能力の維持が効率よく行え、また循環風量も確保できるので、タマネギの冷凍作業を能率よく実施することができると共に、熱交換器の熱効率を良好に維持できるから、冷凍エネルギが節約され、省エネルギに貢献できる。
【0024】
本発明方法によれば、カット処理、いわゆるスライス又はみじん切りした生タマネギを食感や香味などの風味を損なわないで、冷凍処理して冷凍タマネギを製造することができ、調理食品として使用し易く、かつ、保存や使用に好適な形状を有し、しかも、貯蔵しても、しっかりした組織を持ち、甘味や香りなどの風味を損なうことがない冷凍タマネギを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
野菜類の冷凍調理食品分野で広く利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カット処理した生タマネギを冷凍処理する方法であって、生タマネギを温水処理した後、直ちに急速冷凍処理を施すことを特徴とする冷凍タマネギの製造方法。
【請求項2】
前記温水処理が、温度50〜65℃の温水を用いて5〜20分間浸漬処理することを特徴とする請求項1に記載の冷凍タマネギの製造方法。
【請求項3】
前記急速冷凍処理が、温度−20〜−40℃の循環冷気を用いてタマネギを冷凍処理し、かつ、処理後の冷気中に含まれる凍結水分を除去して、冷気を循環使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍タマネギの製造方法。

【図1】
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