説明

冷凍大根おろし添加剤及びそれを添加して製造した大根おろし

【課題】冷凍大根おろし添加剤を提供する。
【解決手段】食物繊維及びカルシウム塩を主成分として含む、冷凍大根おろし添加剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍大根おろし添加剤に関する。
【0002】
より詳細には、冷凍処理した大根おろしの離水を抑制することで、解凍後であっても食感等の品質に優れた大根おろしを提供するための冷凍大根おろし添加剤である。
【背景技術】
【0003】
大根おろしは、揚げ物や焼き魚等の料理の添え物として、日本人に昔より広く好まれている。また、最近ではシラスと大根おろしの和え物や、大根おろしを配合したドレッシングやポン酢等の液体調味料も普及している。
【0004】
大根おろしは、摺りおろし直後が最も美味しく、風味も良いのは言うまでもない。
【0005】
しかしながら、近年の学生の一人暮らし・単身赴任の増加・女性の社会進出・高齢化社会等による食のライフスタイルの変化により、各人が大根をおろして食することは、時間的な負担が大きい。また、スーパーやコンビニ等の中食産業では、大根おろしを添えている弁当や惣菜が販売されている。さらに、レストラン等の外食産業でも大根おろしを利用しているが、食品工場やセントラルキッチンで随時、大根おろしを摺っていては時間的にも、経済的にも負担が大きくなる。
【0006】
このため、家庭用だけでなく業務用にも使用しやすいように、長期間の保存が可能な冷凍大根おろしの需要が拡大している。冷凍大根おろしの場合は、原料が安価な時に大量生産出来るので、季節によって価格変動のある生大根の場合と異なり、消費者に安価な値段で提供出来るという利点もある。
【0007】
冷凍大根おろしは、自然解凍または水冷解凍により、そのままの状態で食べたり、料理の供え物としたり、調味料の原料として利用可能となる。
【0008】
しかしながら、冷凍大根おろしを解凍すると、組織内からの水分の離水が起こり、歩留まりが低下するだけでなく、ボリューム感がなくなり、ボソボソとした食感になってしまう。また、この離水の悪影響により、大根本来の風味も流出してしまう。さらには、解凍後に弁当等の添え物とする場合には、この離水による水分が、他の料理の風味にも悪影響を与えてしまう等、様々な問題点があった。
【0009】
そこで、冷凍大根おろしの解凍による離水を抑制するために、従来から、種々の添加物、特に食品多糖類の大根おろしへの配合が検討されている。
【0010】
例えば、特許文献1は、解凍しても離水が起きにくく、優れた食感を得ることを目的として、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を大根おろしに添加して冷凍するという技術を開示している。
【0011】
また、CMCとは別の食品多糖類、例えば、ジェランガム、グアーガム、キサンタンガム等の配合によっても、ある程度の離水防止効果が得られることが知られている。
【特許文献1】特開2002−34445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記特許文献1に開示されたようにCMCを添加した場合であっても、ジェランガム、グアーガムやキサンタンガム等、別の食品多糖類を配合した場合であっても、食品多糖類の単独使用では、離水防止効果が十分ではない。そのため、大根おろしに対するこれらの添加量を増やさなければならず、結果として、風味に悪影響を与えたり、水溶性の食品多糖類の場合は、その粘性により違和感のある食感を引き起こしてしまう。このような現状の下、冷凍処理した大根おろしの離水を十分に抑制できるとともに、解凍後も風味や食感が良好となるような冷凍大根おろし添加剤の開発が強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らが上記課題を解決するために鋭意検討した結果、大根おろしに食物繊維及びカルシウム塩を併用すると、食品多糖類等の食物繊維単独での使用時に比べて、冷凍処理した大根おろしの離水が顕著に抑制できるとともに、解凍後も風味や食感の良好さを維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、食物繊維及びカルシウム塩を主成分として含む、冷凍大根おろし添加剤を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記冷凍大根おろし添加剤を含む冷凍大根おろしを提供する。
【発明の効果】
【0016】
摺りおろした大根おろしに本発明の冷凍大根おろし添加剤を添加してから冷凍することにより、大根おろしの離水が従来よりも顕著に抑制される。
【0017】
かかる離水の抑制により、解凍後の大根おろしはボリューム感に優れ、大根本来の旨み・辛味・香りや食感を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の冷凍大根おろし添加剤は、食物繊維及びカルシウム塩を主成分として含むことを特徴とする。なお、本発明における冷凍大根おろしとは、前記冷凍大根おろし添加剤を添加後に冷凍処理した大根おろしを意味する。また、本発明における冷凍大根おろし添加剤とは、上記した本発明の冷凍大根おろしを得るために用いられる添加剤を意味する。さらに、前記主成分とは主要な有効成分を意味する。
【0019】
食品多糖類等の食物繊維を大根おろしに単独で添加しても、その後冷凍処理した大根おろしは品質面で実用上の使用に問題があった。かような問題に対して本発明者らが鋭意検討した結果、食物繊維をカルシウム塩と併用すると、食物繊維を単独で使用した場合に比べて、冷凍処理した大根おろしの離水抑制効果が顕著に高くなり、風味及び食感の良好さの点で実用上問題なく使用可能となることを見出したのである。その理由やメカニズムは現在のところ不明であるが、これまでの試験結果などから以下のように推測される。すなわち、カルシウムイオン存在下では食物繊維の分子の立体構造が変化する傾向にあり、これにより、食物繊維の保水力が飛躍的に高くなると考えられ、また、カルシウムイオンが、大根の細胞壁の構成成分であるペクチン質と架橋結合し、大根の組織強度が有意に大きくなるため、離水が抑制されて解凍後の大根おろしのボリューム感を維持することができると考えられる。
【0020】
本発明の冷凍大根おろし添加剤に配合する食物繊維は、植物または海藻由来の食物繊維(高分子多糖類)であればよく、水溶性・不溶性のいずれの食物繊維を用いてもよいが、好ましくは不溶性の食物繊維である。前記食物繊維は一種単独からなっても、二種以上の混合物からなってもよい。植物の例として、以下に限定されることはないが、小麦、ライ麦、米、とうもろこし及びそば等の穀類、大豆、あずき及びエンドウ等の豆類、コンニャクイモ、ヤマノイモ及びサトイモ等のイモ類、エノキ及びシイタケ等のキノコ類、ゴボウ等の野菜類、リンゴ、葡萄及び柑橘類等の果物類、並びにパルプ類などが挙げられる。柑橘類としては、オレンジ、グレープフルーツ、レモン等が挙げられ、これら柑橘類由来の食物繊維はシトラスファイバーと総称されている。なお、パルプとは、ビート(甜菜)、木材、綿、または麻などを、化学的あるいは機械的に処理することによってセルロース繊維を高純度にしたものであるが、かようなパルプ由来の食物繊維(セルロース)も本発明において使用可能である。高純度に精製したパルプを原料にして製造される食品用のセルロースとしては、粉末セルロース、結晶セルロース(微結晶セルロース)、及び微小繊維状セルロースがある。ここで、粉末セルロースとはパルプを酸分解などにより細分化したものである。また、結晶セルロース(微結晶セルロース)とは、パルプを酸分解し、非結晶領域を除去して、純粋な一定の重合度の結晶部分だけを取り出して精製、乾燥したものである。また、微小繊維状セルロースは、超高圧ホモジナイザー処理などによって、パルプに強力な機械的せん断力を加えて微小繊維状(ミクロフィブリル化)にしたものであり、元の1本のセルロース鎖が数万本に引き裂かれたものである。また、海藻類の例として、以下に限定されることはないが、テングサ、海苔、昆布、ひじき、もずく、ワカメ等が挙げられる。好ましくは、生産量が多く大量に安定して供給されており、入手しやすいという理由から、小麦、大豆、パルプ、リンゴ及びオレンジから選択される一種以上に由来する食物繊維である。
【0021】
上記した小麦由来の食物繊維は、小麦粉精製時に出て来る外皮を原料として精製分離した結果得られるものであり、その平均繊維長は30〜300μmであることが好ましい。上記した大豆由来の食物繊維は、大豆から油脂、タンパク質等を分離し、残存した繊維質を水分10%以下まで乾燥し、粉砕したものであり、その平均粒子径は50〜150μmであることが好ましい。上記したパルプ由来の食物繊維の平均繊維長または平均粒子径については、粉末セルロースの場合には10〜100μm(平均繊維長)であることが好ましく、微結晶セルロースの場合には10〜100μm(平均粒子径)であることが好ましく、微小繊維状セルロースの場合には0.01〜0.1μm(平均繊維長)であることが好ましい。上記したリンゴ由来及びオレンジ由来の食物繊維は、いずれも果実の絞り粕を原料として、絞り粕を乾燥後、粉砕処理して粉末化したものであり、その平均繊維長は0.01〜100μmであることが好ましい。
【0022】
本発明の冷凍大根おろし添加剤に配合するカルシウム塩の例として、以下に限定されることはないが、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、L−グルタミン酸カルシウム、乳酸カルシウム及びグルコン酸カルシウムが挙げられ、なかでも乳酸カルシウム及びグルコン酸カルシウムが好ましい。なぜなら、他のカルシウム塩と比較して、乳酸カルシウムやグルコン酸カルシウムは、水への溶解性が高いとともに、においや苦味が弱く、添加量を多くしても大根おろしの味に悪影響を与えることがほとんどないからである。このように、乳酸カルシウム及びグルコン酸カルシウムは、上記した理由から、大根おろしに限らず食品全般での利用に適している。
【0023】
本発明の冷凍大根おろし添加剤中の、前記食物繊維と前記カルシウム塩との混合比(質量比)は、好ましくは30:70〜90:10、より好ましくは35:65〜80:20、さらに好ましくは40:60〜70:30、最も好ましくは45:55〜55:45である。食物繊維の配合量が上記した好ましい範囲を下回ると、冷凍処理した大根おろしの離水を効果的に防止するために、冷凍大根おろし添加剤を大根おろしへ多量に添加せざるをえなくなり、実用性がなくなってしまう。また、カルシウム塩の配合量が上記した好ましい範囲を下回ると、食物繊維との併用効果が発揮できない可能性が高い。
【0024】
さらに、前記冷凍大根おろし添加剤の主成分である前記食物繊維及び前記カルシウム塩が、本発明の冷凍大根おろし添加剤中に合計で、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは30〜90質量%、さらに好ましくは40〜80質量%含まれる。上記範囲内にある場合、本発明の冷凍大根おろし添加剤は大根おろしの冷凍による離水を抑制し、おろしたての大根の品質を維持することができる。
【0025】
上記した食物繊維及びカルシウム塩は前記冷凍大根おろし添加剤の主成分であるが、一方で前記冷凍大根おろし添加剤は他の成分を含んでもよい。ただし、他の成分の合計の配合量は、上記した前記食物繊維及び前記カルシウム塩の合計の配合量の範囲と整合させるため、本発明の冷凍大根おろし添加剤中に合計で、好ましくは0〜80質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは20〜60質量%である。以下、使用可能な他の成分について説明する。
【0026】
本発明の冷凍大根おろし添加剤の効果を損なわない範囲で、離水抑制効果を補うために、保水作用を有する糖質及びそれら糖質を加工したものを前記冷凍大根おろし添加剤において配合してもよい。
【0027】
また、冷凍処理した大根おろしの変色防止のために、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、フィチン酸等の酸化防止剤を配合してもよい。さらに、冷凍処理した大根おろしの日持ち向上のために、酢酸ナトリウム、グリシン、ポリリジン、プロタミン等の静菌効果を有する成分を配合してもよく、またpH調整剤として乳酸、グルコン酸、アジピン酸、イタコン酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、リン酸、酒石酸、およびそれらのナトリウム塩等を配合してもよい。さらには、冷凍処理した大根おろしの味質の改善のために、旨みを有するアラニン、L−グルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸類を配合してもよい。なお、本発明の冷凍大根おろし添加剤は、大根おろしの離水を抑制するという効果を奏するため、離水に伴う変色、品質の劣化を有意に低減させることができる。そのため、上記した変色や品質の劣化を防止する成分を添加しなくてもよく、仮に添加するとしても、添加量を従来と比較して有意に少なくすることができるという利点がある。
【0028】
本発明の冷凍大根おろし添加剤の製造については、各配合原料が均一になるまで十分に混合すればよい。また、冷凍大根おろし添加剤の形態は、粉末状、液状、ペースト状のいずれであってもよい。
【0029】
本発明の冷凍大根おろし添加剤を大根おろしに用いた場合、上記のような効果を奏し、極めて有用である。一方で、前記冷凍大根おろし添加剤は、食品一般に生じうる離水を抑制することができるため、離水の起こりやすい他の食品にも好適に用いることができる。前記離水の起こりやすい食品の例として、おろし食品が挙げられ、具体的には、大根おろしの他に、おろしわさび、おろしにんにく、おろし生姜、及びおろし玉葱等が挙げられる。
【0030】
本発明の冷凍大根おろし添加剤の大根おろしへの使用方法については、生の大根を摺り、この摺りおろした直後の大根おろしに本発明の冷凍大根おろし添加剤を添加し混合すればよい。大根の種類としては、特に限定されることはないが、青首大根等のような特に水の流出が多い大根ほど、本発明の冷凍大根おろし添加剤は顕著な効果を発揮しうる。
【0031】
また、本発明の冷凍大根おろしは、前記冷凍大根おろし添加剤を含むことを特徴とする。前記冷凍大根おろし添加剤の大根おろしへの添加量は、冷凍前の大根おろし(冷凍大根おろし添加剤を添加する際の大根おろし)の質量に対して、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.2〜2質量%、さらに好ましくは0.4〜1質量%である。添加量が0.01質量%未満の場合、冷凍処理した大根おろしの離水を十分に防止することができず、10質量%を超えると、風味や食感に悪影響を与えてしまうからである。ここで、前記冷凍前の大根おろしの固形分率は、10〜90質量%であることが好ましく、15〜85質量%であることがより好ましく、20〜80質量%であることがさらに好ましい。ここで、前記固形分率とは、大根おろしの水(遊離の水、表面の水、組織内部の水など、全ての水)以外の固形分(単位:質量%)を意味する。大根おろし中の全水分含量(質量%)は、例えば、赤外線水分計(LP−16 メトラー社)を用いて大根おろしを乾燥(110℃、2時間)することにより測定できる。したがって、固形分率は下記の式で表される。
【0032】
【数1】

【0033】
また、前記冷凍前の大根おろしの固形分率が上記範囲内でない場合や、特定の固形分率に調節する必要のある場合には、適宜、水切りによって調整することが可能である。前記水切りは摺りおろし直後の大根おろしをザルに2分間自然放置することにより行う。具体的な水切りの方法や条件については、後述の実施例と同様であってもよい。
【0034】
冷凍大根おろし添加剤を混合した大根おろしを容器又は袋に充填した後、−18℃以下、より好ましくは−25℃以下で冷凍保存することができる。
【0035】
また、冷凍処理した大根おろしの離水の程度を示す、冷凍大根おろしの質量歩留まりは、好ましくは80〜85%、より好ましくは85〜90%、さらに好ましくは90〜95%である。上記範囲内の場合、冷凍処理した大根おろしの離水は顕著に抑制され、従来と比較して顕著に品質を向上させることができる。後述の実施例において、かかる効果を具体的に検証している。なお、本願明細書における質量歩留まりの計算方法は以下の通りである。
【0036】
【数2】

【0037】
上記式において、「A」は解凍後で水切り前の大根おろしの全質量であり、「B」は解凍後で水切り後の大根おろしの全質量である。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明の技術的範囲を制限するものではない。
【0039】
実施例1〜14、比較例1〜9
<冷凍前の大根おろしの調製>
まず、青首大根16本を洗浄し、皮を剥いだ後、厚さ3〜4cm程度に輪切りした。この輪切りした生大根(質量:約800g/本)を摺りおろした。続いて、摺った後の大根おろしと摺り水とを混合し、ザルに載せ、2分間自然放置しながら水切りした。ここで、水切りに使用したザルについて説明すると、形は半球形、網のサイズは1mm×1mm、内径は22cm、高さは8cmである。ザルへは青首大根1本ごとに投入し、投入量(質量)は800gとし、水切り後の大根おろし(冷凍前の大根おろし)の質量は約450gであった。続いて、この水切り後の大根おろし(16本分)を均一に混合した後、14等分した。なお、均一に混合した際の冷凍前の大根おろしの固形分率は20質量%であった。
【0040】
<冷凍大根おろし添加剤の調製、及び冷凍前の大根おろしへの添加剤の添加>
表1及び表2に示す組成で調製した冷凍大根おろし添加剤を、かかる水切り後の大根おろしの質量に対して0.5質量%添加し、混合した。なお、実施例1〜14では、いずれも本発明の冷凍大根おろし添加剤を使用したのに対し、比較例1では全く添加剤を使用せず、比較例2〜9では食物繊維かカルシウム塩のいずれか一方のみを使用した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
小麦由来の食物繊維(小麦ファイバー)として商品名「ビタセルWF600」(平均繊維長80μm)を、大豆由来の食物繊維として商品名「ファイブラリッチFN−100」(平均粒子径140〜150μm)を、パルプ由来の食物繊維(微結晶セルロース)として商品名「ヘヴァテン101」(平均粒子径50μm)を、リンゴ由来の食物繊維として商品名「OVITACEL(登録商標)AF400」を、オレンジ由来の食物繊維として商品名「シトリーファイ100FG」をそれぞれ使用した。
【0044】
また、乳酸カルシウムは(株)武蔵野化学研究所製であり、グルコン酸カルシウム及び塩化カルシウムは市販のものを使用した。
【0045】
<冷凍処理>
冷凍大根おろし添加剤を混合した後の大根おろしを、チャック付きポリ袋「ラミジップクリア」(株式会社生産日本社製、ポリエチレン製の二層フィルム、透湿度:11.0〜13.0g/日)に入れて、−25℃の冷凍庫に1週間保存した。1週間後、水冷により解凍したのち、大根おろしを、ザルに2分間自然放置することにより水切りを行った。
【0046】
かかる実験結果より、解凍後で水切り前の大根おろしの質量(A)と解凍後で水切り後の大根おろしの質量(B)とを測定し、上述の式により質量歩留まりを計算した。
【0047】
<官能評価の方法と評価基準>
水切り後の大根おろしの風味及び食感に関する官能検査を行った。これらの結果を表3及び表4に示す。なお、官能検査は以下の条件・方法で実施した。
【0048】
15人の評価者に、実施例1〜14及び比較例1〜9で得られた各大根おろしを、摺りおろし直後の大根おろし(添加剤は無添加であり、摺りおろし後に、ザルに2分間自然放置することにより水切りを行ったもの)と、風味及び食感の点で比較させることにより官能評価を行った。評価基準については、摺りおろし直後の大根おろしを基準として、実施例1〜8及び比較例1〜6の解凍後の各大根おろしの風味及び食感が、「同等である」または「より悪い」の二者択一形式で質問し、「同等である」と回答した人数によって、以下のように判断した。
13〜15人:非常に良好、10〜12人:良好、7〜9人:やや良好、4〜6人:やや悪い、1〜3人:悪い、0人:非常に悪い。
【0049】
なお、評価者は、「風味」の項目については、大根の旨み・辛味・香りにより判断し、「食感」の項目については、ボリューム感(同等の場合はシャキシャキ感、悪い場合はボソボソ感など)により判断した。
【0050】
表3及び表4を見ると、本発明の冷凍大根おろし添加剤(実施例1〜14)を使用することにより、冷凍大根おろしの質量歩留まりがいずれも80%超(特に、実施例1〜4、12及び14では90%超)と高く、離水の抑制効果が比較例1〜9よりも有意に高いことを見出した。また、離水が抑制されていることに起因して、大根の風味(旨み・苦み・香り等)及び食感が冷凍前と比べてほとんど変化しておらず、ボリューム感もあり、冷凍前の大根おろしとほぼ同等の食感を保持していることも見出した。
【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0053】
冷凍食品の分野で好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物繊維及びカルシウム塩を主成分として含む、冷凍大根おろし添加剤。
【請求項2】
前記食物繊維が植物または海藻類に由来し、前記カルシウム塩が塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、L−グルタミン酸カルシウム、乳酸カルシウム及びグルコン酸カルシウムからなる群から選択される一種以上である、請求項1に記載の冷凍大根おろし添加剤。
【請求項3】
前記食物繊維と前記カルシウム塩との混合比(質量比)が30:70〜90:10であり、前記食物繊維及び前記カルシウム塩を合計で20〜100質量%含む、請求項1または2に記載の冷凍大根おろし添加剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷凍大根おろし添加剤を含む、冷凍大根おろし。
【請求項5】
前記冷凍大根おろし添加剤を、冷凍前の大根おろしの質量に対して0.01〜10質量%含む、請求項4に記載の冷凍大根おろし。

【公開番号】特開2009−148197(P2009−148197A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329016(P2007−329016)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(500343050)有限会社粉川 (1)
【出願人】(390022301)株式会社武蔵野化学研究所 (63)
【Fターム(参考)】