説明

冷凍食品の解凍ボード

【課題】従来、冷凍食品の解凍中に溶け出た血や水が、その食材に長く触れないよう工夫された解凍ボードは無いに等しかった。溶け出た血や水に長時間触れていた食材は、味、色、臭いが変化する鮮度落ちを呈するが、提供する解凍ボードにより、そうした鮮度落ちを最小限に抑制することが目的である。
【解決手段】傾斜姿勢を保つ解凍ボードの落差を利用して、食材と溶け出た血や水を素早く切り離すことが可能な構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解凍中における冷凍食品の鮮度落ちを防止する解凍ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品は、袋入のまま、又は袋から取り出し、常温や冷蔵庫内で解凍されるのが一般的であり長時間を要することが多い。従って、溶け出た血や水に食材が触れている時間も長くなり、味、色、臭いなどが変化する鮮度落ちの原因となっていた。
【0003】
従来、溶け出た血や水と食材とが長時間に渡って触れ合わないよう工夫された解凍ボードは無いに等しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷凍食品の解凍に際し、溶け出た血や水に起因する食材の鮮度落ちが最小限に抑制されることを目指す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決するため本発明による冷凍食品の解凍ボードは、解凍ボードの一端に適当な容量を有するプール(2)を設け、前記プールの向こう正面に柵a(4)を備え、前記プールの両サイドにそれぞれ柵b(5)を備え、
ボード表面(6)の縦方向に適当な長さを有する複数本のレール(3)を設け、
ボード裏面(7)に取り付けられた取り付け棒(8)に回動可能で適当な高さを有する脚(9)が枢着されている。
【0006】
上記冷凍食品とは、「袋入りのままの冷凍食品」と「袋から出した冷凍食品」の両者を指して云う。
【0007】
上記プールとは、解凍ボード上に置かれた冷凍食材から溶け出る血や水を溜め込むための器部分を云う。その形状はボードの一端をU字状に構成するのが好ましく、ボード部分と一体成形されたなら血や水の流れ落ちが促進される。
【0008】
上記U字状のプール(2)は両サイドを柵b(5)によりそれぞれ閉塞されており、前記U字状プールの向こう正面の壁はそのまま適当な高さに伸びて柵a(4)を形成している。
【0009】
ボード表面(6)の縦方向に複数本のレール(3)を設けた。
【0010】
上記レールは、適当な高さと長さを有する棒状凸部分を云うが、特に棒状には限定されない。例えば、適当な高さと直径に形成された円錐状の突起でもよく、その場合の個数や配置も任意であり、冷凍食品とボード表面(6)とが直接触れ合わず、溶け出た血や水の流れ落ちを阻害するものでなければどのような形状でもよい。
【0011】
上記レール(3)は適当な高さと長さを有する三角柱であり、底辺はボード表面に固定されている。その断面は正三角形でも直角三角形でもよく、また、レール(3)を三角柱とするのは冷凍食品と触れ合う面積が最小となり、冷凍食品と外気の触れ合う面積が最大となるからである。
【0012】
また、ボード裏面(7)の適当な位置に設けられた取り付け棒(8)に回動可能で適当な高さの脚(9)を枢着し平面上で傾斜姿勢を保つように構成されている。その際、プール(2)部分が傾斜の下側に位置する必要がある。
【0013】
上記脚(9)は、棒状のみに限定されず板状やワイヤー状の素材で任意形状を象るものでもよい。また、上記平面とは、テーブルやシステムキッチンのトップ、冷蔵庫内に設けられている仕切り棚の上などを指し、本発明の解凍ボード(1)が置かれる場所をいう。
【0014】
本発明の解凍ボード(1)は回動する脚(9)を除いて一体成形されることが好ましく、熱伝導性の良い素材を使用することにより解凍時間の短縮が図れる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による冷凍食品の解凍ボードは平面上で傾斜姿勢を保つよう構成されており、生ずる落差によって溶け出た血や水がプールへと流れ落ちる。従って、溶け出た血や水と触れたままになることに起因する食材の鮮度落ちが最小限に抑制されるという効果を奏する。
【0016】
レールが冷凍食品とボード表面との密着を防止し、周囲の空気に触れる表面積が多くなり解凍が促進されるという効果を奏する。
【0017】
冷凍食品とボード表面との間にレールの高さ分の空間が生じ、溶け出た血や水が最短の時間で冷凍食品から分離し、食材周囲での液体の渋滞解消という効果をも奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の最良な実施の形態を図1〜面4に基づいて説明する。
【0019】
図中、符号1は、本発明による冷凍食品の解凍ボードの構成を全体的に示したものである。図1は、解凍ボード(1)の一端にプール(2)を設け、前記プールの両端は柵b(5)によりそれぞれ閉塞され、前記プール(2)の向こう正面の壁はそのまま適当な高さまで伸びて柵a(4)を構成し、
ボード表面(6)に複数本のレール(3)を設け、
ボード裏面(7)に回動可能な脚(9)を枢着するための取り付け棒(8)が設けられている。
【0020】
本発明の解凍ボード(1)による解凍には以下の二つの方法が考えられる。
(a)図3に示すように、袋入りのままの冷凍食品(14)を解凍する
(b)図4に示すように、袋から出した冷凍食品(12)を解凍する
であり、前記(b)の解凍は冷凍食品をボード表面(6)に乗せるだけでよく、前記(a)の解凍には次のような前処理を施す必要がある。
(A)プール(2)側寄りの袋の一辺の数カ所に適当な寸法のV字型カット(13)を入れる
(B)ボード表面(6)側と向き合う袋面に数カ所の切れ目を入れる
以上の前処理により、溶け出た血や水を袋内から素早く排出することができる。
【0021】
プール(2)は、ボード表面(6)に置かれた冷凍食品から溶け出た血や水が流れ込むためのU字状の器であり、その両サイドは柵b(5)で閉塞され、U字状の器部分はそのまま適当な高さに伸びて柵a(4)となり、冷凍食品のボード表面(6)からの滑り落ちを防止する。氷結している冷凍食品は滑りやすく、ボード自体も傾斜姿勢を有するため必須の構成要素となる。また、前記プールの容量は解凍後の移動に際して溜められた血や水がこぼれないように余裕のある大きさであることが望ましい。
【0022】
プール(2)の形状はボード表面(6)をそのまま延長してU字状に形成することが適切と思われるが、特にU字状には限定されず、血や水が効率よく流れ落ち、液漏れが防止されるならどのような形状であってもよい。例えば、高さの低い中空状の円柱型プールの、上部円周の一部が解凍ボード(1)の一端と連なる構成でもよい。しかしながら、本発明の解凍ボード(1)が冷蔵庫内でも使用されることを考慮して可能な限りコンパクトである必要がある。
【0023】
ボード表面(6)は冷凍食品に多く見られる方形状に呼応した形状であるが、これだけに限定されない。しかしながら、冷蔵庫内でも使用されることを思えば方形状は妥当といえる。また、ボード表面(6)の横断面形状は直線状であることのみに限定されず、例えば、緩やかに円弧を描く下弦状でもよく、両サイドに適宜な形状のフェンスが設けられたものでもよい。
【0024】
ボード表面(6)に設けられた複数本のレール(3)は、乗せられた冷凍食品とボード表面(6)との間に適当な空間を生み出し、
(イ)乗せられた冷凍食品とボード表面(6)とが密着することを防止する
(ロ)外気と触れる冷凍食品の表面積が増大して解凍効率が向上する
(ハ)溶け出た血や水が、最短の時間で食材から分離落下する
などの効果を得ることができる。従って、ボード表面(6)に複数本のレール(3)を設けることは必須である
【0025】
上記レール(3)は適当な高さを有する三角柱であり、断面は二等辺でその底辺部がボード表面(6)に固定されている。代替えとして上記(イ)〜(ハ)の効果を満たすなら適当な高さに形成された円錐形などの凸状部を複数個配置してもよい。但し、その個数や配置状況が液体の流れ落ちを阻害しないことが条件となる。また、レール(3)とボード表面(6)は一体成形するとよい。
【0026】
図1に示すように、取り付け棒(8)はボード裏面(7)の他端寄り(器部分と逆方向)に設置し、図2に示すように、取り付け棒(8)の両サイドに備えられた凹部(10)に、脚(9)の両先端部分である凸部(11)を回動可能に枢着する。解凍ボード(1)の収納に際して脚(9)をプール(2)方向へ折り込むことが可能な構成である。
【0027】
解凍ボード(1)が平面上に置かれたとき好適な傾斜姿勢を呈するよう、脚(9)も好適な高さである必要があるが、溶け出た血や水がその場に長く留まることが出来ない適当な傾斜角を呈する高さであればよい。
【0028】
上記適当な傾斜姿勢から生ずる落差によって、溶け出た血や水がプール(2)へと流れ落ちる。以上のように、解凍時に溶け出る血や水を食材から素早く遠ざけることが可能なのは、本発明の解凍ボード(1)が落差を生ずる構成を有しているからである。
【0029】
本発明の解凍ボード(1)は防錆性、耐冷性を有する素材で一体成形されることが望ましい。例えば、成樹脂、硬質に加工されたゴム、金属、鉄金属など考えられるが、解凍効率を高めるため熱伝導に優れた素材を選択する必要がある。
【0030】
解凍ボード(1)全体の色彩は特に限定されないばかりではなく、ボード表面(6)にイラストなどをプリントすることも考えられる。加えて、解凍ボード全体に抗菌処理を施すことが好ましい。
【0031】
「実施形態の効果」
本発明は、解凍中に溶け出る血や水と食材との切り離しが課題であり、味、色、臭いなどの変化する鮮度落ち防止が目標である。その解決策は、傾斜によって生じる落差を最大限に利用し、食材から溶け出た血や水を素早くプール部分へと落とし込むことであり、本発明の解凍ボードにより課題目標は達成された、という効果を奏する。
【0032】
「実施形態の補足」
本発明による冷凍食品の解凍ボードは、多量の水分などを含んだまま冷凍加工された食材の解凍に適している。例えば、肉類、内臓を抜いて水洗いされた頭付きの魚、熱処理の直後に冷凍された蟹、エビなどの甲殻類である。従って、白身魚の切り身、餃子、シュウマイなどの解凍には不適であり、解凍中に血や水が溶け出る食材用のキッチンツールと云える。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の解凍ボードを示す全体斜視図である。
【図2】脚部分の部分的分解斜視図である。
【図3】冷凍食品袋を乗せた実施例の斜視図である。
【図4】包装されていない冷凍食品を乗せた実施例の斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 :解凍ボード
2 :プール
3 :レール
4 :柵a
5 :柵b
6 :ボードの表面
7 :ボードの裏面
8 :取り付け棒
9 :脚
10:凹部
11:凸部
12:冷凍食品
13:V字形カット
14:冷凍食品袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に適当な容量のプール(2)が設けられていることを特徴とする冷凍食品の解凍ボード。
【請求項2】
ボード表面(6)の縦方向に適当な長さを有する複数本のレール(3)が設けられていることを特徴とする請求項1載の冷凍食品の解凍ボード。
【請求項3】
ボード裏面(7)に回動可能で適当な高さを有する脚(9)を枢着し、平面上で傾斜姿勢を保つように構成されている請求項1、2に記載の冷凍食品の解凍ボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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