説明

冷却ユニット、冷却構造及び冷却システムの構築方法

【課題】冷媒を用いた冷却ユニットを用いて電子装置ラックの冷却を容易に実現する。
【解決手段】熱源より発生する熱気をラックから排出させる、複数のファンが配列されたファンユニットと、ファンの回転によってラックから排出される熱気を除熱する、冷媒を案内するパイプが配列されたラジエターユニットと、ファンユニットとラジエターユニットを一体的に構成した冷却パネルを立位状態で支持する支持部を有する冷却ユニットと、電子装置ラックの排気側にラジエターユニット側を面して冷却ユニットを立位状態に配置し、冷却ユニットの一側と電子装置ラックの一側とを接続する風洞体とを有し、風洞体内を通して電子装置ラックから排出される熱気を冷却ユニットに導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ユニット、冷却構造及び冷却システムの構築方法に係り、特に、冷媒を用いてコンピュータ等の電子装置のラックを冷却する冷却用パネル、その冷却パネルを用いた電子装置ラックの冷却構造、及び冷却パネルを用いた冷却システムの構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーバラックの冷却に関して、例えば、特許文献1には、空調ユニットから送風される冷気をラックの下部の給気口に供給し、この冷気でラック内の機器を冷却すると共に、機器によって暖められた、ラックの上部の排気口から排出される空気を、空調ユニットに戻して循環させる、ラックの冷却構造が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、クーラーユニットから交換パネルを介して、サーバラック内の前面上部に着脱自在に設置されたダウンフローユニットに冷気を供給し、このダウンフローユニットにより冷気を下方に強制的に吹き込んで電子機器を冷却し、かつクーラーユニットの廃熱を、室外排気用ダクトを介して室外に排気するようにしたサーバラックの冷却装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−63755号公報
【特許文献2】特開2006−93388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献の技術は、いずれもラック内の機器に冷気を吹き付けて冷却するものであり、ラック内で熱くなった空気(熱気)の処置が重要となる。特許文献1の技術は、ラック内に発熱した空気を、空調ユニットを経由して循環させているが、サーバ及び空調ユニットから放出された廃熱により部屋の温度が上昇する。そこで、部屋の温度の上昇を抑えるために、部屋用のクーラーを十分に稼動させる必要がある。この冷却の仕方では、ラックの冷却効率は良くないし、全体的に電力消費が増加することは否めない。
特許文献2の技術は、ラック内の熱気を、室外排気用ダクトを用いて室外に排気しているので、部屋の温度上昇を抑えることができる。
【0006】
然しながら、上記特許文献に記載のいずれの技術も、ラック内の熱くなった機器に冷気を吹き付けて冷却する形式なので、冷却効率は依然として良くない。また、上記いずれの技術も、サーバラック内に冷気又は熱気或いは排気を案内するために、サーバラック内の構造を大幅に設計変更したり、更にはラック内部の電子機器の配置や実装構造を変更しなければならない。そのための費用が増加する。
【0007】
更に、このような設計変更を伴うために、これら従来の冷却方式を採用したサーバラックは、新機種からしか適用できず、既に顧客先に設置されたサーバラックに適用するのは困難である。従って、旧機種を使用している顧客は依然として、サーバ室を冷却するような従来の冷客方式を使用せざるを得ない。
【0008】
本発明の目的は、冷媒を用いた冷却ユニットを用いて電子装置ラックの冷却を容易に実現する、冷却ユニット、冷却構造及び冷却システムの構築方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、大きさの異なる電子装置ラックにも柔軟に対応することが可能な冷却ユニットを用いた冷却構造を実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る冷却ユニットは、好ましくは、熱源を含む電子装置ラックを冷却する冷却ユニットであって、該熱源より発生する熱気を該ラックから排出させる、複数のファンが配列されたファンユニットと、該ファンの回転によって該ラックから排出される熱気を除熱する、冷媒を案内するパイプが配列されたラジエターユニットと、該ファンユニットと該ラジエターユニットを一体的に構成した構造体を立位状態で支持する支持部と、を有することを特徴とする冷却ユニットである。
好ましい例では、前記支持部は、該構造体を支持する支持脚と、該支持脚の下側に取り付けられたキャスタを備えて構成される。
【0010】
本発明に係る電子装置ラックの冷却構造は、好ましくは、熱源を含む電子装置ラックを冷却する冷却構造であって、該熱源より発生する熱気を該ラックから排出させる、複数のファンが配列されたファンユニットと、該ファンの回転によって該ラックから排出される熱気を除熱する、冷媒を案内するパイプが配列されたラジエターユニットと、該ファンユニットと該ラジエターユニットを一体的に構成した冷却パネルを立位状態で支持する支持部を有する冷却ユニットと、
電子装置ラックの排気側に該ラジエターユニット側を面して該冷却ユニットを立位状態に配置し、該冷却ユニットの一側と該電子装置ラックの一側とを接続する該風洞体とを有し、
該風洞体内を通して該電子装置ラックから排出される熱気を該冷却ユニットに導くことを特徴とする冷却構造である。
【0011】
好ましい例では、前記風洞体は、少なくとも、該電子装置ラックの排気側に面する第1の枠と、該冷却ユニットの該ラジエターユニット側に面する第2の枠とを有し、該第1の枠及び該第2の枠を、接続手段を介して該電子装置ラックと該冷却ユニットに接続する。
好まくは、前記風洞体は、前記第1の枠と第2の枠の間に蛇腹構造を備え、かつ該風洞体の外装は柔軟性部材で構成される。
また、好ましくは、前記第1の枠及び第2の枠は四辺形であり、該第1の枠の四辺形と該第2の枠の四辺形は同形状である。
また、好ましくは、前記第1の枠及び第2の枠は四辺形であり、該第1の枠の四辺形の大きさは、該電子装置ラックの排気側の大きさに対応した形状である。
【0012】
本発明に係る冷却システムの構築方法は、熱源を含む電子装置ラックを冷却する冷却システムの構築方法であって、該熱源より発生する熱気を該ラックから排出させる、複数のファンが配列されたファンユニットと、該ファンの回転によって該ラックから排出される熱気を除熱する、冷媒を案内するパイプが配列されたラジエターユニットと、該ファンユニットと該ラジエターユニットを一体的に構成した冷却パネルを立位状態で支持する支持部を有する冷却ユニットを、電子装置ラックの排気面側に配置するステップと、
該電子装置ラックから排出される熱気を該冷却ユニットに導く風洞体を、該冷却ユニットの一側と該電子装置ラックの一側に接続するステップと、
冷媒を流通するホースの一端を、前記ラジエターユニットのパイプに取付けるステップと、
該ホースの他端を熱交換器に取付けるステップと、を有することを特徴とする冷却システムの構築方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、冷媒を用いた冷却ユニットを電子装置ラックに配置して、容易にかつ冷却効率を向上させた電子装置ラックの冷却を実現することできる。また、大きさの異なる電子装置にも柔軟に対応することが可能な冷却ユニットによる冷却構造を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施例によるサーバラックの冷却構造を示す分解斜視図。
【図2】一実施例による冷却パネル10の構造を示す分解斜視図。
【図3】一実施例によるラジエターユニット11のパイプ集合体の構造を示す図(裏面側図)。
【図4】一実施例によるラジエターユニット11の構造を示す図(表面側図)。
【図5】一実施例によるラジエターユニット11のパイプ集合体22の部分構成を示す図。
【図6】一実施例によるサーバラックの冷却システムの構成例を示す図。
【図7】他の実施例による冷却パネル10の支持構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。
図1はサーバラックの冷却構造を示す。
サーバラック9の背面(排気面側)に本発明による冷却ユニット1を配置して、サーバラックを冷却する構造が開示される。
サーバラック9は、複数例えば12台(4段3列)のブレードサーバ91を配列して収納する。このサーバラック9は、データセンタ等に設置された通常の構造のものでよい。各ブレードサーバ91はCPUやメモリ、ハードディスク、及び電源や送風ファンの電子部品を収納した電子装置であり、電源やメモリ等が発熱源となる。サーバ室に設置されたサーバラック9は、各ブレードサーバの送風ファンによって、装置の前面又は下側から冷却用の風を内部に導き、内部で発熱した空気(熱気)をその送風ファンの作用によって装置の背面から装置外へ(矢印B方向)排出させる。
【0016】
冷却ユニット1は主として、背面から排出される熱気を除熱するラジエターユニット11と、熱気の排出を強制的に行うための、多数例えば36個(縦横12×3)のファンが配列されたファンユニット13と、これらのラジエターユニット11とファンユニット13を一体的に取付けたフレームユニット12から構成される冷却パネルから構成される。ラジエターユニット11には、冷却のための冷媒例えば水を流通するパイプ221が配列され、そのパイプの一端には冷媒を通すホースが接続される。一方のホースは吸熱前の冷媒をパイプ221内へ送り込み、他のホースは吸熱した冷媒をパイプから排出する方向へ送る。なお、冷却ユニット1の詳細な構成については、図2〜図5を参照して、後述する。
さらに、冷却ユニット1は、冷却パネルを支持する一対の脚14と、脚14に設けられた複数のキャスタ15を備え、冷却ユニット1をサーバラック9の背面に立位状態で配置し、かつ移動し易くする。
【0017】
冷却ユニット1をサーバラック9の背面に適確に接続するために風洞体7が用いられ、その風洞体1内にサーバラックから排出される熱気を流通する。風洞体7は、サーバラック9側の枠71と冷却パネル1側の枠72を備える。枠71,72は四辺形状を成し、その間は蛇腹構造を成している。蛇腹構造を維持するために、枠71,72間には更に1又は複数の枠を備えてもよい。風洞体7の外装は、合成樹脂製の柔軟性部材で構成される。
【0018】
枠71、72を、サーバラック9の背面及び冷却ユニット1に接続するための接続手段として、枠71、72にはマジックファスナー(登録商標)(以下単にファスナーという)73が固定される。一方、サーバラック9の背面及び冷却ユニット1にも、ファスナー73を係合するための他方のファスナー73´が設けられている。なお、サーバラック9の背面に固定されるファスナー73´(図面の影で見えず)は、最初からサーバラックの背面に固定されている必要はない。サーバラック1に対して冷却ユニット1を設置する時に、作業者が、ファスナー73´(裏面が接着面となっている)をサーバラック9の背面に適宜接着すればよい。
【0019】
サーバラック9の背面(排気面)側の形状に合わせて、冷却パネル10を用意できる場合には、枠71と枠72は同形状とするのが好ましい。しかし、風洞体7の枠71と枠72を必ずしも同じ大きさとする必要はない。実際にデータセンタ等で稼動しているサーバのラックは、種々の大きさのものがある。それらサーバラックの大きさに、冷却パネル10の大きさをその都度合わせて製造するのは、製造工数やコストの点から好ましいとは言えない。そこで、大きさの異なる最低限の種類(1種類でもよい)の冷却パネル10を予め用意しておき、種々異なるサーバラック9の背面側の大きさに対応させて、風洞体7の枠71の大きさを変更したものと用意することで、枠71とサーバラック9の背面側とを確実に接続することができる。そのため、既に稼働中のサーバラックの大きさが種々ある場合でも、その度に冷却パネル10の大きさを変更したものを製造する必要はなく、サーバラックの冷却に柔軟かつ容易に対処することができる。
なお、風洞体7それ自体は独立した構造体として用意する必要はない。例えば、予め、枠72側を冷却パネル10側に固定して、冷却パネル10と風洞体7を一体化しておいてもよい。
【0020】
次に、図2〜図5を参照して、冷却ユニット1の構成を詳細に説明する。
ラジエターユニット11とファンユニット13をフレームユニット12に一体的に固定して冷却パネル10が構成される。ここで、図2の右側(サーバラック側)から見た図を表面側図(例えば、図4)と言い、その逆方向から見た図を表面側図と言うことにする。
【0021】
理解の都合上、まずフレームユニット12の構成について説明する。
図2を参照するに、フレームユニット12は、ラジエターユニット11を収容して固定するラジエターユニット収納枠部31と、ファンユニット13を収容して固定するファンフレーム収納枠部32を備えて構成される。
【0022】
ラジエターユニット収納枠部31は、ラジエターユニット11(厚さW1´)を収容するに足りる厚さW1が確保され、ファンフレーム収納枠部32はファンユニット13(厚さW2´)を収容するに足りる厚さW2が確保されている。
ラジエターユニット収納枠部31は、ラジエターユニット11の枠1101,1102に設けられた係合部225と位置合わせするための、例えば4ヶ所に設けた凹部311、及びラジエターユニット11をネジ止めするための4ヶ所に設けられたネジ穴312を備える。ファンフレーム収納枠部32は、ファンユニット13をネジ止めするための、例えば、左右6箇所に設けたネジ取付け部36を備える。
【0023】
次に、ラジエターユニット11の構成について説明する。
図2に示すように、ラジエターユニット11は、サーバラック9側に配置される保護パネル21と、その内側に配置されるパイプ集合体22(図3)が、ラジエターユニット11の枠1101,1102に固定して構成される。
保護パネル21は、パイプ集合体22を保護するものであり、表面に多数のスリットが形成されたアルミニウム製の板である。サーバラック9から排出される熱気は、保護パネル21の多数のスリットを通過してパイプ集合体22へ送られる。
【0024】
図4はパイプ集合体がラジエターユニット11の枠1101,1102に固定された状態を示している。ラジエターユニット11の主な構成は多重に蛇行したパイプの集合体(パイプ集合体)22である。パイプ集合体22は、冷媒を流通する1組の下パイプ221と、下パイプ221に接続され、縦方向に配列された1組の縦パイプ2221、2222と、この縦パイプ2221、2222に接続される上パイプ2231、2232と、縦パイプ2221、2222にそれぞれ接続され、多重に蛇行して横方向に配設された横パイプ224より構成される。
【0025】
下パイプ2211、縦パイプ2221、及び上2231は、吸熱前の冷媒を矢印C1方向へ流す流入側パイプである。下パイプ2212、縦パイプ2222、及び上2232は吸熱後の冷媒を矢印C2方向へ流す流出側パイプである。下パイプ221の他端はホースを介して熱交換器86(図7)に接続される。流出側パイプ2212を戻った、吸熱した冷媒は熱交換器86へ流れて行くことで、冷媒が循環する冷却システムが構築される。
【0026】
パイプ集合体22は、主に横パイプ224の集合構造であり、この横パイプ224の作用によって冷却効果を奏すると言える。横パイプ224は、3つの蛇行を持つ蛇行パイプの構造を1つの組とした、複数の横パイプ組2241,2242〜224nの集合体である。これら複数の横パイプ組2241〜224nを、縦パイプ2221,2222に沿って上から下へ配置して、各横パイプ組のパイプ端を縦パイプに溶接することで、パイプ集合体22の骨格が形成される。
【0027】
ここで、図5を参照して、パイプ集合体22の部分構成である横パイプ組について説明する。
横パイプ組224nは、多数並べられた長形状のフィン231に形成された穴に、複数本のパイプ2240が貫通し、そのパイプ2240のU字型に曲げられた両端は、お互いに隣りどうしが溶接されて、全体として1本の横パイプとして構成されている。パイプ2240の一端22401は縦パイプ2221に接続され、その他端22402は縦パイプ2222に接続される。ここで、多数のフィン231は放熱効果のあるアルミニウム製であり、多数のフィン231の間に形成されるスリット232の間を熱気が通過する。パイプ231を貫通させた、一定間隔で並べられた同じ長形状の多数枚のフィン231は、熱気を所定方向へ案内して流す作用をするだけでなく、パイプ231を頑丈に支持する役目も果たしている。
【0028】
ここで、パイプ集合体22は、これらのパイプ群(縦パイプ222*、上パイプ223*、横パイプ224*)の適当な箇所に、止め金具を固定して枠1101,1102に取り付けられる。
また、他の例として、図5の右端のフィン2311と左端のフィン2312を、枠1101,1102を構成する部材と兼用して構成することもできる。左右端のフィン2311,2312を枠1101,1102として形成することで、全体のパイプ集合体22をより頑丈に構成することができる。なお、図3ではフィン231の図示が省略され、図4では縦方向にフィン231が図示されている。
【0029】
図4に示すように、ラジエターユニット11に配列されたパイプ集合体22のフィン231で仕切られた多数の長方形のスリット232が形成される。多数のフィン231は、ファン43の回転によってサーバラック9から排出される熱気をパイプ集合体22の方向へ強制的に導き、更にパイプ集合体22を通過した熱気をファンユニット13方向へ導く。このように、フィン231及びスリット232によって熱気の流路を形成して、パイプ集合体22内に流通する冷媒による吸熱効率を高めている。
【0030】
下パイプ2211,2212の一端にはそれぞれジョイント部261,262が固定される。ジョイント部261には、熱交換器86(図7)からの冷媒を通すホース81が接続され、他方のジョイント部262には、吸熱した冷媒を熱交換器86へ送るホース82が接続される。ジョイント部261には、ホース81から送られる冷媒の流通を制御する開閉レバー27が設けられる。
ラジエターユニット11は、フレームユニット12のラジエターユニット収納枠部31に収容される程度の縦横長さ及び厚さW1´を持つ。ラジエターユニット11の縁には、例えばその4箇所に、フレームユニット12の凹部311にフックとして引っ掛かる、凸状の係合部225が設けられる。これら係合部225と凹部311が係合して、ラジエターユニット11とフレームユニット12のラジエターユニット収納枠部31が固定される。
【0031】
次に、ファンユニットの構成について説明する。
図2に示すように、ファンユニット13は、縦横36個(12×3)に分けられた、鉄製のファンフレーム41の各枠42に、ファン43が収納して取付けられる。なお、ファンフレーム41は予め縦横18個(6×3)の枠42が形成されたものを、上下2段に接合して構成してもよい。ファンフレーム41の縁には、当該ファンユニット13をフレームユニット12の取付け部36にネジ止めするための、複数のネジ取付け部46が設けられる。ファンフレーム41は、フレームユニット12のファンフレーム収納枠部32に収容される程度の縦横長さ及び厚さW2´を持ち、ネジ取付け部36とネジ取付け部46とがそれぞれネジ止めされる。
これらのファン43の回転によって、サーバラック9の背面から熱気を強制的に排出させる。
なお、各ファン43に電源を供給する電源コードは図には見えないが、これらはファンフレーム41の内側部に埋設されている。
【0032】
図6はサーバラックの冷却システムの構成例を示す。
この例は、サーバ室に設置された複数台のサーバラック9を示している。サーバは稼働中であってよい。作業者によって、2台のサーバラック9の背面側に冷却ユニット1が設置され、風洞体7によってサーバラック9の背面側と冷却ユニット1とが接続される。
サーバ室はフリーアクセス床99を有し、その床99の下に冷媒を流通するホース81,82が配設される。ホース81,82の他端は、ポンプ85を介して、屋外に配置された熱交換器86に接続される。ポンプ85は冷媒を強制的に循環させるために駆動される。
【0033】
ここで、熱交換器86は例えばAC(Air Chiller)方式の熱交換器、又はAW(Air Water)方式の熱交換器である。図示のような、AC方式の熱交換機の場合、冷媒の通るホース81の途中にポンプ85を配置し、そのポンプの作用によって冷媒を強制的に循環させる。AC方式の熱交換器86は屋外に設置され、ファンの回転によって冷媒に含まれる熱を矢印W方向に排出する。AC方式は、強力な冷却効果が期待できるので、複数台のラックを同時に冷却することが可能である。
一方、AW方式の熱交換器は、AC方式よりも冷却能力がやや低下するが、冷却対象のサーバラックが設置されたサーバ室と同じ部屋に熱交換器を設置することが可能である。AW方式は、AC方式に比べて屋外の設備工事が不要のため、システムの導入が比較的容易である。
【0034】
AC方式及びAW方式のいずれも、サーバ室全体を冷却するという従来のサーバラックの冷却に比べて高効率である。そのため、ラック内に電子装置或いは電子部品を高密度に実装することが可能である。また、AC方式及びAW方式のいずれも、共通の冷却ユニット1を使用することが可能である。そのため、当初はAW方式の冷却を採用していたが、その後冷却能力を上げるために、AC方式に変更することが容易である。即ち、熱交換器86をAW方式用からAC方式用のものに変えればよい。
なお、図示の例で、サーバラック9が更に増設された場合には、同様にして、増設されたサーバラックに対して新たな冷却ユニット1を配置して、そのサーバラックにホース81´、82´を接続し、そのホースの他端を共通のホース81,82に接続すればよい。
【0035】
以上説明したように、本実施例によれば、従来から在るサーバラックの排気面側に冷却ユニット1を容易に配置することができ、冷却効率を向上させた冷却システムを構築することが可能となる。その場合、従来のサーバラックの内部に収納されたサーバの実装やレイアウトを変更する必要がないので、サーバを稼動状態にしながら、冷却システムを構築できる。
【0036】
また、サーバラックの大きさや、それに収納されるサーバの台数や容量に応じて発熱量も異なるが、本実施例によれば、サーバラックの大きさに応じて、設置される冷却ユニットの大きさ、または風洞体の枠の大きさを自在の変更することで、容易に対処することができる。また、サーバの発熱量に応じて、ファンユニットのファンの数を変更して調整することが可能である。更に、サーバラック内のサーバの発熱量、或いはサーバ室に設置されるサーバの台数や容量に応じて、AW方式かAC方式の冷却を採用することができる。また、同じ冷却方式でも熱交換器の能力を変更することで、サーバ台数や容量の変更にも対応することができる。
【0037】
[他の実施例、変形例]
本発明は上記実施例に限定されることなく、種々変形して実施し得る。
【0038】
上述の実施例では、冷却パネル10はキャスタ15付きの脚14を有するが、図9に示す例によれば、冷却パネル10を固定した脚14´には、所定の箇所に複数のねじ穴16が形成されている。このねじ穴16にねじを通して、サーバ室の床に、冷却ユニット1を固定するようにしてもよい。
【0039】
風洞体7についても種々の変形例が考えられる。風洞体7の枠71,72を用いれば、冷却パネルと電子装置ラックに接続する作業が比較的容易であろうが、風洞体7の枠71,72は必ずしも必要ない。要するに、風洞体7の両端を、冷却パネルと電子装置ラックにそれぞれ接続できる構造であればよいので、例えば、風洞体7の両端を、ガムテープや接着剤を用いて、冷却パネルと電子装置ラックに接続してもよい。
また、風洞体7の形状は上記した例に限定されない。また必ずしも蛇腹構造を有している必要はない。
【0040】
更に、他の変形例によれば、風洞体7は必ずしも必要ない。例えば、冷却パネル10をサーバラックの背面に密接して設置することが出来れば、風洞体7が無くても、サーバラックから排出される熱気の大部分は、冷却パネルに吸収されていく。しかし、その場合でも冷却パネルとサーバラックの背面の隙間から、外気が冷却パネルに吸引される可能性があるので、結果として冷却効率が低下するか、或いは冷却ファンの駆動電力を上げて冷却効率を維持しなければならない。そのための簡便な手段として、サーバラックとその背面に配置した冷却パネルとの僅かな隙間の外縁をガムテープで貼るか、またはその隙間の外縁にビニールを配設してそのビニールを、ガムテープでサーバラックと冷却パネルに接着することも可能である。
【0041】
また、上記実施例では、ラジエターユニット11とファンユニット13を、フレームユニット12に一体的に取付けた構造体としているが、フレームユニット12は独立して構成されるとは限らない。例えば、ファンユニット13の外枠のファンフレーム41を固定するために構成された構造体、或いは頑丈に構成されたファンフレーム41それ自体、として構成することも可能である。また、ラジエターユニット11を固定する頑丈なフレーム状の構造体があれば、その構造体を上記フレームユニット12として利用してもよい。
また、ファンユニット13におけるファン43の配列数も適宜変更してよい。例えば、大型のサーバラックに対してはファンの数は多く必要となるので、ファンユニット13の形状はより大型になる。
【0042】
また、ファンユニット13に実装されるファンの個数は適宜調整可能である。例えば、図1のサーバラック9の上2段のみに6台(3台×2)のブレードサーバ91が搭載されている場合、ファンユニット13のファン43の数は、ラック9の背面全面に対応させた数である必要はなく、上2段のみに対応させた数で足りる場合もあろう。
【0043】
また、上記実施例は、冷却ユニットを、ブレードサーバを収納したサーバラックに適用したものであるが、他の例によれば、サーバラックに限らず、多数のディスクユニットを収納したディスクアレイ装置や複数の通信機器を収納した通信ラック等、一般に熱源を有する電子機器を収納する電子装置ラックに適用可能である。
また、冷媒は低コストの観点から水冷が望ましいが、それに限らない。
【符号の説明】
【0044】
1:冷却ユニット 10:冷却パネル 11:ラジエターユニット 12:フレームユニット 13:ファンユニット 14:脚 15:キャスタ 21:保護パネル 22:パイプ集合体
7:風洞体 71,72:枠 9:サーバラック 91:ブレードサーバ
31:ラジエターユニット収納枠部 32:ファンフレーム収納枠部
81,82:ホース 85:ポンプ 86:熱交換器 99:床。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源を含む電子装置ラックを冷却する冷却ユニットであって、
該熱源より発生する熱気を該ラックから排出させる、複数のファンが配列されたファンユニットと、該ファンの回転によって該ラックから排出される熱気を除熱する、冷媒を案内するパイプが配列されたラジエターユニットと、該ファンユニットと該ラジエターユニットを一体的に構成した構造体を立位状態で支持する支持部と、を有することを特徴とする冷却ユニット。
【請求項2】
前記支持部は、該構造体を支持する支持脚と、該支持脚の下側に取り付けられたキャスタを備えて構成されることを特徴とする請求項1の冷却ユニット。
【請求項3】
前記支持部は、該構造体を支持する支持脚と、該支持脚を床に固定するねじ穴を備えて構成されることを特徴とする請求項1の冷却ユニット。
【請求項4】
熱源を含む電子装置ラックを冷却する冷却構造であって、
該熱源より発生する熱気を該ラックから排出させる、複数のファンが配列されたファンユニットと、該ファンの回転によって該ラックから排出される熱気を除熱する、冷媒を案内するパイプが配列されたラジエターユニットと、該ファンユニットと該ラジエターユニットを一体的に構成した冷却パネルを立位状態で支持する支持部を有する冷却ユニットと、
電子装置ラックの排気側に該ラジエターユニット側を面して該冷却ユニットを立位状態に配置し、該該冷却ユニットの一側と該電子装置ラックの一側とを接続する該風洞体とを有し、
該風洞体内を通して該電子装置ラックから排出される熱気を該冷却ユニットに導くことを特徴とする冷却構造。
【請求項5】
前記風洞体は、少なくとも、該電子装置ラックの排気側に面する第1の枠と、該冷却ユニットの該ラジエターユニット側に面する第2の枠とを有し、該第1の枠及び該第2の枠を、接続手段を介して該電子装置ラックと該冷却ユニットに接続することを特徴とする請求項4の冷却構造。
【請求項6】
前記風洞体は、前記第1の枠と第2の枠の間に蛇腹構造を備え、かつ該風洞体の外装は柔軟性部材で構成されることを特徴とする請求項4又は5の冷却構造。
【請求項7】
前記第1の枠及び第2の枠は四辺形であり、該第1の枠の四辺形と該第2の枠の四辺形は同形状であることを特徴とする請求項5又は6の冷却構造。
【請求項8】
前記第1の枠及び第2の枠は四辺形であり、該第1の枠の四辺形の大きさは、該電子装置ラックの排気側の大きさに対応した形状であることを特徴とする請求項5又は6の冷却構造。
【請求項9】
前記接続手段はファスナーであり、該電子装置ラックの排気側と該第1の枠とを接続する第1のファスナーと、該冷却ユニットの該ラジエターユニット側と該第2の枠とを接続する第2のファスナーにより構成されることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかの項記載の冷却構造。
【請求項10】
熱源を含む電子装置ラックを冷却する冷却システムの構築方法であって、
該熱源より発生する熱気を該ラックから排出させる、複数のファンが配列されたファンユニットと、該ファンの回転によって該ラックから排出される熱気を除熱する、冷媒を案内するパイプが配列されたラジエターユニットと、該ファンユニットと該ラジエターユニットを一体的に構成した冷却パネルを立位状態で支持する支持部を有する冷却ユニットを、電子装置ラックの排気面側に配置するステップと、
該電子装置ラックから排出される熱気を該冷却ユニットに導く風洞体を、該冷却ユニットの一側と該電子装置ラックの一側に接続するステップと、
冷媒を流通するホースの一端を、前記ラジエターユニットのパイプに取付けるステップと、
該ホースの他端を熱交換器に取付けるステップと、
を有することを特徴とする冷却システムの構築方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate