説明

冷却可能な電極体およびそれを備えた連続式通電加熱装置

【課題】冷却可能な通電加熱用電極体およびそれを備えた連続式通電加熱装置の提供。
【解決手段】複数の電極体および複数のスペーサ管体を有し、それらの内壁が食品材料を流動移送させながら通電加熱するための被加熱流路を形成する加熱ユニットを備える連続式通電加熱装置において、前記複数の電極体が、冷却媒体流路を設けた電極体を含んで構成され、前記被加熱流路の出口端近傍に、被加熱流路の内壁温度を検出する温度センサを設け、該温度センサの測定値に基づき液体冷却媒体による冷却条件を制御することを特徴とする連続式通電加熱装置およびその電極体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却可能な電極体およびそれを備えた連続式通電加熱装置に関するものであり、さらに詳しくは、冷却媒体流路および内蔵温度センサを備えた電極体およびそれを備えた通電加熱装置に関する。本発明の連続式通電加熱装置は、被加熱材に均一に電流を通すことを可能とし、被加熱材料、特に食品材料の特性に応じて適切な加熱処理を施すことを可能とするものであり、加熱技術分野、特に食品加工分野において有用な加熱手段を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
流動性を有する食品材料などを殺菌や調理等のために加熱する方法の一つとして、その食品材料をパイプ内で連続的に流動移送させながら、食品材料の有する電気抵抗を利用して、食品材料に直接通電することにより食品材料自体を発熱させる加熱技術(通電加熱、ジュール加熱)が実用化されている(例えば、特許文献1)。この装置では、食料品輸送管路の上流側から下流側へ向けて所定間隔を置いて少なくとも2以上の部分に、管路の中心軸線に対して同心状となるように、この管路の内面に導電材料からなる環状の電極体を設け、管路の上流側に設置した電極体と下流側に設置した電極体との間で電圧を印加して、その間を移動する流動性食品材料中に電流を流し、ジュール熱を発生させることにより連続的に加熱する。
【0003】
しかしながら、こうした形式の加熱装置においては、均一加熱の点で改善の余地があった。すなわち、管路内を流れる流動性食品材料を加熱する場合、管路の中心軸線位置付近の部分と管路の内周面近くの部分では加熱が不均一になるという問題があった。一般に電流が媒体中を流れるときには、媒体の固有抵抗が均一であれば、電流は最も電気抵抗が小さくなるような経路、すなわち最短距離を流れるのが通常である。そのため、管路内に流動性食品材料を流した状態で、上流側の環状電極体と下流側の環状電極体との間に通電加熱のための電圧を印加すれば、電流は管路の内周面に近い部分を通って流れる傾向を示す。そうすると、食品材料が流れる管路の内面近くの部分では電流密度が大きくなる一方、管路の中心軸線の付近では電流密度が極端に小さくなってしまい、その結果管路の内周面近くでは食品材料が過加熱されやすくなるのに対し、中心軸線の近くでは食品材料が加熱されにくくなる現象が生じやすい。
【0004】
こうした食品材料の均一加熱が困難であるとの問題は、特にマヨネーズや液卵、フルーツソース、ジャム等の粘度の高い食品材料を加熱する場合にその傾向が顕著となる。その原因は、管路内の食品材料に対して電流が不均一に流れることに加え、管路の内面と流動性食品材料との間の粘性抵抗に由来する。特に、粘度の高い流動性食品材料の場合、管路の内面と食品材料との間の粘性抵抗によって、管路の内面近くでは中心軸線位置と比較して流速が極端に小さくなるため、管路の内面近くでは流動性食品材料に電流が流れる時間が極端に長くなってしまい、管路の内面付近では過加熱が一層生じやすくなってしまうのである。
【0005】
さらに、通電加熱においては、流動性食品材料は一般にその温度が高くなるほど電流が流れやすくなることから、管路の内周面近くで過加熱されて温度上昇した食品材料には電流が一層集中して流れ、その結果管路の内周面近くを流れる食品材料は、急激に温度上昇して、中央部付近を流れる食品材料との温度差が大きくなってしまうという問題がある。こうして、食品材料が過加熱された場合、殺菌は充分に行なえても、食品の食感や風味が損なわれたり、変色が生じたり、さらには栄養成分の破壊が生じたりするおそれがあるから、優れた品質の食品を得るためには、過加熱を避ける必要がある。
【0006】
さらに、管路の内周面近くを流れる流動性食品材料が過加熱されれば、食品材料が熱変性による固化や、焦げ付きなどによって管路の内面に固着してしまうというスケーリングの問題がしばしば発生する。その場合には、食品材料の風味が損なわれるばかりでなく、固着部分の炭化などによって局部的に大電流が流れたり、スパークが発生したりして、スペーサ管体が局部的に溶融もしくは損傷したりしてしまったり、通電状態が不安定となって、適切な温度制御が困難となってしまうことがある。特に、マヨネーズ、液卵、あるいは豆乳などの蛋白質を多量に含む流動性食品材料は過加熱によって変性して固化しやすいのでこのような現象の発生が顕著となる。したがって管路の内面への食品材料の固着の防止は重要な解決すべき課題として認識されている。
【0007】
従来、このような食品輸送管の管内表面での過加熱を防止する技術が数多く提案されている。例えば、管路の円周に沿って湾曲しかつ管路の直径方向に対向する一対の電極を対向電極体とし、複数組の対向電極体を管路の長さ方向に間隔を置いて、順次設置角度をずらせながら配設した構成とし、各対向電極を構成している一対の電極間に電圧を印加することによって、管路内を流れる流動性食品材料が複数の対向電極体の電極間を通るうちに全体的に均一に加熱されて流動性食品材料が過加熱されたり、逆に加熱不足となったりすることなく、均一に高温まで加熱することができる連続通電加熱装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
また、通電加熱用電極の間に、管路内を流れる食品材料を管路の横断方向へ撹拌するための撹拌手段を管路内に設けることにより、通電加熱により流動性食品を管路内で連続的に加熱するにあたり、局部的な過加熱や加熱不足が生じることなく食品材料全体を均一に加熱する加熱装置が提案されている(特許文献3参照)。さらに、環状電極体の相互間に電圧を加えて流動性食品材料を連続的に通電加熱する連続通電加熱装置において、環状電極体の内側部分に、静止状態で流動性食品材料の流れ方向を変化させて流動性食品材料に撹拌力を与える静的撹拌体を配置すると共に、静的撹拌体の両側の2つの環状電極体の間に同電位を与えてその2つの環状電極体の間で通電加熱して、過加熱の防止と、静的撹拌体の耐久性を向上させた通電加熱装置が提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、これらの装置では流路内に複雑な構造の電極を多数設置したり、静的撹拌体を設けることで装置がより複雑となることとなり、その製作に高コストを要するばかりか、装置の維持、管理や操業時の清掃にも多くの労力を必要とすることとなった。
【0009】
そこで、出願人は、流動性を有する食品材料を案内する内周面が形成された筒体と、前記内周面に対応した内周面を有し、前記筒体の両端開口部に設けられた環状の電極とにより加熱部材を形成し、前記電極の内部に前記食品材料が当該電極からの伝導熱で加熱されないようにするための冷媒を流通する中空部を形成し、前記加熱部材を一組以上連設してなる流動性を有する食品材料のジュール加熱ユニットを提案した。
【特許文献1】特公平5−33024号公報
【特許文献2】特開2001−169914号公報
【特許文献3】特開平11−89522号公報
【特許文献4】特開2003−339537号公報
【特許文献5】特許第2659313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の通電加熱装置における管路内の均一加熱に関しては、温度ムラによる流路内壁での過加熱によるスケーリングが問題となる。特にタンパク質を含む食品材料の通電加熱においては、食品材料が特定の温度以上となるとタンパク質が熱変性を起こすので、スケーリングが生じやすい。スケーリングは過加熱の原因となるものであり、しかも、スケールの混入による食品材料の品質低下やスパーク発生を招くことなどの問題がある。加熱流路内に撹拌手段を設けても、撹拌手段自体にスケーリングが生じるという課題が依然として存在する。また、加熱流路内のクリーニングを短いタイミングで定期的に行うことにより、スケールの成長を未然に防ぐことができるが、適切なクリーニング時期を把握することは難しく、クリーニングの頻度を増やすことによる生産性低下の問題が新たに生じる。
【0011】
特許文献5に記載のジュール加熱装置においては、電極体を冷却するための冷媒を流通させることが可能である。しかしながら、電極体を含む被加熱流路の内壁部分の温度を正確に計ることは困難であり、食品類の特性に応じた適切な温度制御を行うという点では改良の余地があった。
【0012】
ところで、従来のジュール加熱装置においては、電源ユニット毎に温度制御がなされ、温度センサの設置位置も、加熱装置の下流側の流路に設けられていた。すなわち、上流側の加熱ユニットと下流側の加熱ユニットとで加熱温度ムラが生じていても、加熱温度ムラを無くすための温度制御が適切に行われない場合があった。
しかも、従来、加熱ユニットの出口端近傍に設けられていた温度センサは、流路の中心軸線部分を計測するためのものであり、流路の内壁部分を計測するためのものではなかった。これは、層流が生じる食品材料の場合、流路の中心軸線部分の速度が最も速くなることにより、最も低温となるためである。すなわち、この出口端の温度センサは、殺菌等の加熱処理を施すために最低温度を把握することを目的とするものであり、この計測値に基づき管路の内周壁面の温度を予測することは困難であった。
【0013】
発明者は当初、電極体に温度センサを埋設し、電極体を外部から水などの液体冷却媒体により冷却することを検討した。しかしながら、電極体の内壁の温度上昇が問題となるところ、電極体を外部から冷却する構成においては、外部からの熱伝導により内壁を冷やさなくてはならないことから、冷却能力が低く、また、電極体の内壁の温度を所望の範囲内に制御することが難しかった。
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、被加熱材料が過加熱されることのない連続式通電加熱装置を開発することを目標として鋭意努力を重ねた結果、冷却媒体流路が形成された電極体を備える連続式通電加熱装置において、被加熱流路の内壁の最高温度を正確に計ることを可能とし、これにより冷却媒体流路による電極体の冷却を従来より優れた条件で制御することを可能とした。
【0014】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することができる、冷却可能な通電加熱用電極体およびそれを備えた連続式通電加熱装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
本発明の連続式通電加熱装置は、内壁が加熱流路を形成する通電加熱用電極体であって、電極体の厚さ(T)の半分よりも加熱流路に近い範囲に冷却媒体流路を設けた電極体を備える。この電極体は、前記電極体に設けられた冷却媒体流路が、電極体の厚さ(T)の5%〜25%の範囲の厚さの壁(438)で加熱流路と隔てられていることが好ましい。さらに好ましくは、前記冷却媒体流路の断面が加熱流路の中心軸線に対し同心の環状である。また、その外側面から加熱流路に向かって、電極温度センサを挿通するための穴、電源接続用穴、冷却媒体供給穴および冷却媒体排出穴を設ける構成としてもよい。
【0016】
本発明の連続式通電加熱装置を稼動するにあたっては、被加熱材料の温度管理が重要となるが、適切な温度管理をするためには被加熱流路の出口端近傍に温度センサを設ける必要がある。例えば、電極体間で異なる電圧を供給して加熱するにあたり、同一電圧を使用する電極体のグループ毎に少なくとも最下流の電極体に電極温度センサを設けること、すなわち、電圧の変わり目となる最下流の電極体に電極温度センサを設けることが開示される。
本発明の加熱装置には、10mPa.s以上の粘性を有する材料または熱変性を受けやすい被加熱材料が好適である。また、冷却媒体としては、衛生上、冷却能力、経済性などを勘案すると水を最も好ましい例としてあげることができる。
【0017】
本発明の電極体は、その構造に特徴を有するものであり、内部に被加熱材料が流通する加熱流路を有する通電加熱用電極体において、電極体の本体内部に、その厚さ(T)の半分よりも加熱流路に近い範囲に冷却媒体流路を設け、冷却媒体送給手段により液体冷却媒体を冷却媒体流路に流通可能に構成する。また、冷却媒体流路を電極体の厚さ(T)の5%〜25%の範囲の厚さの壁で加熱流路と隔てることにより、効率よく熱を伝達させる。そして、冷却媒体流路の断面が加熱流路と同心の環状にすることにより、被加熱流路を構成する内壁全体をムラ無く冷却することができる。
このような特徴を有する本発明の電極体では、従来と比べ電極体に流通させる冷媒の流量を従来よりも少なくすることが可能であることから、冷却媒体流路を狭く構成することができる。そして、このような冷却媒体流路を有する電極体では、その側面から被加熱流路に向かって穴を設けることができるので、温度センサを外周面から中心に向かって挿通させることが可能となる。また、同様に電極体の本体に電源接続用穴、冷却媒体供給穴および冷却媒体排出穴を設けることができる。このため加工が容易であり、耐久性およびメンテナンス性も良好である。
【0018】
本発明の連続式通電加熱装置は、被加熱流路の出口端近傍に、好ましくは最も高温となる通電加熱用電極体の下流側近傍に、被加熱流路の内壁温度を検出する温度センサを設け、該温度センサの測定値に基づき液体冷却媒体による冷却条件を制御することを特徴とする。温度センサの配置態様としては、例えば、(A)加熱ユニットの最下流に配置された電極体に埋設すること、(B)被加熱流路と連通する流路を有し、加熱ユニットの最下流に配置される継ぎ手部材(フランジ兼用部材でもよい)を設け、その流路の内壁部分に前記温度センサを配設すること、が開示される。
(A)の態様においては、アース用の電極体に温度センサを設けることが最も好ましい。冷却媒体流路を設けた電極体に温度センサを設けた場合と比べ、冷却媒体の温度に影響されることが無いからである。但し、アース用の電極体を設けない構成をとる場合などには、冷却媒体流路と温度センサを一つの電極体に併設することも可能である(図3および図4参照)。
(B)の態様においては、継ぎ手に形成された流路の内壁部分の温度をピンポイントで計測できるように温度センサを設けることが重要である。一般に、流路の中心軸線部分と比べ内壁部分の温度が高くなる傾向にあるからである。特に層流が生じる粘度の流動性食品材料においてはこの傾向はより促進される。なお、割れの問題や洗浄性の問題があることから、スペーサに温度センサを設けることは避ける。
以上の構成に加え、加熱ユニットの最上流に配置された電極体に埋設された温度センサを設ける構成としてもよい。
【0019】
本発明は、主に層流に起因する熱変性が生じる場合に適用されるが、層流に起因する熱変性が生じ易い被加熱材料とその粘性とには相関関係がある。例えば、食品材料は粘度により以下の3グループに分類することができるが、本発明は、特に第二グループ(中粘度)以上の粘性を有する材料に好適である。但し、第一グループ(低粘度)の中でも、豆乳、卵や、タンパク質含有物質のように極端に熱変性を生じやすいものには、本発明は好適である。
(第一グループ(低粘度、10mPa・s未満))
飲料類(日本茶、果汁、豆乳、トマトジュース等)、タレ・ツユ類(漬け物汁、めんつゆ等)、低粘性ドレッシング類(醤油ベース、ノンオイル系等)、スープ類(コンソメスープ、エキス等)、全卵液卵
(第二グループ(中粘度、10〜10mPa・s))
ソース類(中濃ソース、フルーツソース、パスタソース、マヨネーズ等)、粘性スープ類(コーンスープ、カレーペースト等)、粘性タレ・ツユ類(蒲焼きのタレ、ゴマだれ等)、粘性ドレッシング類(ゴマ、サウザンアイランド等)、チーズ類、加塩液卵
(第三グループ(高粘度、10mPa・sを超える))
海草類(めかぶ、もずく等)、あんこ、味噌類、サラダ類(ポテトサラダ等)、サンドイッチ具材類(卵フィリング等)、フラワーペースト類
【発明の効果】
【0020】
本発明により次のような効果が奏される。
(1)電極体の冷却を効率よく行い、温度制御を適切に行うことにより、目的とする加熱処理に最適な温度で安定した加熱が可能となり被加熱物である食品材料などの品質低下を抑制することができる。
(2)電極体に接触する食品材料などの被加熱材料が加熱流路の内壁(電極体内壁面)にスケールとして付着することがないため通電加熱中のスパークの発生、通電状態の不安定化が防止できる。
(3)スパークなどの発生に伴う、電極体やスペーサなどの劣化が防止できる。
(4)食品材料などの風味や香りや栄養成分が損なわれるなどの熱変性を起こす過加熱の問題を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の最良の形態の一例を具体的に説明する。
最良の形態の本発明は、電極体および絶縁スペーサを有し、該電極体と該スペーサを交互に連結し連通させることにより、内部に被加熱材料が連続して流通する加熱流路を形成する加熱ユニットを複数設け、加熱流路内に被加熱材料を流通させながら電極体間に電力を供給して被加熱材料を通電加熱するジュール加熱装置を含む連続式通電加熱装置であって、通電加熱用電極体には冷却媒体流路が設けられており、アース用電極体には電極温度センサが設けられている。さらに好ましくは、電極温度センサの測定値に応じて、液体冷媒の流量を調整可能な冷却媒体送給手段を設ける。
【0022】
連続式通電加熱装置の全体構成は、例えば、複数の加熱ユニットからなるジュール加熱装置、その下流に接続された撹拌冷却器、温度測定器、コントロールユニット、電源ユニット、および操作パネルを主たる構成要素とする。加熱ユニットは、交互に配置された複数の電極体と複数のスペーサからなり、内部に被加熱材料が連続して流通する加熱流路が形成されている。電極体とスペーサは、プレートおよびフランジとタイロッドにより固定されている。電極体の中空部とスペーサの内周径は同径となっており、食品材料などがスムースに流通できる加熱流路を形成している。
【0023】
複数の加熱ユニットのうち、上流側を予熱用のユニットとし、下流側を加熱用のユニットとしてもよい。この場合、通常、予熱部には高い電圧を印加し、加熱部には低い電圧を印加して発熱量を制御して加熱が行われる。単一の加熱ユニット内の電極体を予熱用、加熱用に区別して使用してもよい。特に高温となる加熱用のユニットには本発明の冷却媒体流路を有する電極体が使用されるが、冷却される電極体の使用個数およびその配設位置などは加熱条件に応じて適宜決定される。例えば、図2に記載の加熱ユニットを一個使用して予熱および加熱を行う場合には、上流から2〜9番目の電極体に本発明の冷却媒体流路を有する電極体を配設するのが好ましい。また、複数の加熱ユニットを使用する場合には、加熱用ユニットを構成するすべてを本発明の冷却媒体流路を有する電極体とすることもできる。
【0024】
1つの加熱ユニット当たりの好ましい昇温幅は一般に10〜15℃である。これは、昇温幅が大きくなるのに伴い、被加熱流路の中心軸線部分および内周面部分の温度差(ΔT)が大きくなるからである。この原因の一つとして、昇温幅を一定以上大きくすると、供給電力量の増加に伴い電極体がより加熱されることが挙げられる。しかし、本発明の電極体のように、冷媒を流通させる冷却媒体流路を有する電極体においては、冷却媒体流路を備えない電極体と比べて昇温幅を比較的高く設定することが可能である。また、本発明では、次に述べるように、加熱ユニット毎に供給電力量の制御を行うことから、昇温幅を大きくした場合でも温度差(ΔT)が大きくなるのを最小限とすることが可能である。
【0025】
図8は、本発明の加熱ユニット毎の測定温度に基づく通電制御手順の一例を示すフローチャートある。以下では層流が生じる場合を前提に電極温度センサの検出温度により加熱ユニット毎の温度検出を説明する。なお、符号は図1および図2の例による。
温度測定器105により電極温度センサ5の温度が検出され(ステップS1)、温度検出時の時刻が記憶されると共にコントロールユニット54に測定情報が送信される(ステップS2)。続いて、コントロールユニット54において、検出温度が基準値以上であるか否かの判定を行う(ステップS3)。検出温度が予め設定された基準値以下である場合には、再びステップS1に戻る。
ステップS3において、検出温度が基準値以上である場合には、検出温度が危険値未満であるか否かの判定を行い(ステップS4)、危険値未満である場合には、クリーニング警報を発する(ステップS5)。スケーリングの発生等により部分的に過加熱が生じ、そのために電極体43の温度が上昇しやすい状態になっていることが想定されるからである。
ステップS4において、検出温度が危険値以上である場合には、電源ユニット56がOFFとされる(ステップS6)。スケーリングが成長状態にあることが想定されるからである。
【0026】
図9は、本発明の出口温度センサ4と電極温度センサ5との温度差に基づく通電制御手順の一例を示すフローチャートある。
温度測定器104により出口温度センサ4の温度が検出され、温度測定器105により電極温度センサ5の温度が検出され(ステップS11)、温度検出時の時刻が記憶されると共にコントロールユニット54に測定情報が送信される(ステップS12)。続いて、コントロールユニット54において、出口温度センサ4と電極温度センサ5の温度差が基準値以上であるか否かの判定を行う(ステップS13)。温度差が予め設定された基準値以下である場合には、再びステップS11に戻る。
ステップS13において、温度差が基準値以上である場合には、検出温度が危険値未満であるか否かの判定を行い(ステップS14)、危険値未満である場合には、クリーニング警報を発する(ステップS15)。スケーリングの発生等により部分的に過加熱が生じ、そのために電極体43の温度が上昇しやすい状態になっていることが想定されるからである。
ステップS14において、検出温度が危険値以上である場合には、電源ユニット56がOFFとされる(ステップS16)。スケーリングが成長し、スパーク等の危険が想定されるからである。
以上の通電制御を行うことにより、スケーリングの発生を防止し、またスケーリングの発生等を原因とするクラック発生の問題を回避することが可能となる。図8および図9では、電源ユニット56をOFFとする制御手法を説明したが、電圧を下げて対応してもよく、また、ジュール加熱後に貯留用タンク等を備える製造ラインにおいては、電力制御と併せて流量の制御を行ってもよい。
【0027】
次に、本発明を実施するための最良の形態の一例を、図1ないし図5を参照しながらさらに詳しく説明する。
図1は、冷却媒体流路を有する電極体を配設したジュール加熱装置13を使用した本発明の通電加熱装置の全体構成の一例を示す図である。本発明の通電加熱装置は、加熱ユニット8からなるジュール加熱装置13、その下流に接続された撹拌冷却器12、温度測定器104、105、コントロールユニット54、電源ユニット56、および操作パネル55を主たる構成要素とする。加熱ユニット8は、交互に配置された複数の電極体43と、複数のスペーサ管体44とからなり、プレート6およびフランジ7a〜7dにより固定されている。電極体43の内径とスペーサ管体44の内径は同径となっており、交互に連結し連通させることにより食品材料などを通電加熱処理する被加熱材料の流路が形成されている。
【0028】
電極体43は、リング状であることが望ましいが、多角形、楕円などその形状には特に制限はない。リング状の電極43はスペーサ管体44に一致した内面形状を有し、スペーサ管体44を交互に配置することにより各電極間を食品が通過する際に電気的回路が構成され通電加熱される(図2参照)。電極体43は、良導電性の材料で構成され、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、または白金、純鉄等の金属を用いることができるが、耐食性等の観点からはチタン、チタン合金、または白金を用いることが好ましい。加熱ユニット8における電極体43のうち、両端の電極体43は漏洩電流阻止のためのアース電極とされ、残りの電極体43は通電加熱用電極とされている。
【0029】
スペーサ管体44は絶縁材料からなり、電極体43と交互に設置されることにより被加熱材料流路となる管路を構成する。スペーサ管体44は、非導電性のプラスチック、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォンなどの樹脂によって作製される。スペーサ管体44の形状は、角形の筒体としてもよく、内周面が円形で外周面が矩形となった筒体を用いてもよくその形状に制限はないが、電極体43の断面形状とスペーサ管体44の断面形状を対応させた形状にすることが必要である。スペーサ管体44と電極体43との接続面間にはシール材を組み込んで被加熱材料流路41の外部に被加熱物が漏出することを防止している。スペーサ管体44の長さが電極間の距離となるが、電極間の距離Lは、電極体43の内径R(被加熱材料流路41の直径)に対する比(L/R)が2倍以上であることが好ましく、さらに好ましくは、4倍以上12倍以下であることにより均一な加熱が促進される。
【0030】
図2は、ジュール加熱装置13を構成する加熱ユニット8の拡大断面図である。加熱ユニット8は、食品材料を案内する加熱流路41が形成された断面円形の通電加熱部42を有している。上述のとおり、通電加熱部42は、複数のリング状の電極体43とこれらの間に配置される複数のスペーサ管体44とにより構成されている。図2に示す如く、通電加熱部42の両端部には流入側と流出側のジョイント部45、46が設けられている。それぞれの電極体43は、被加熱材料の流れる方向に隣り合った電極体43、43間が相互に逆極性となるように電源ユニット56に接続される。なお、加熱ユニット8に設けられる電極体43の数は加熱温度等に応じて任意に設定される設計事項である。例えば、図2における電極体43、43・・・の中で、上流から2〜9番目の電極体には冷却用の冷却媒体流路が設けられている。
【0031】
加熱流路41は傾斜をつけて設置し、食品材料などの被加熱材量を下から上へ送液するようなセッティングを標準とする。これは、加熱流路41内に空間があると電極体間での通電を阻害し食品に与える電気エネルギーが均一にならない状況になってしまうという問題が生じることがあるためである。なお、立ち下げによるエアだまりの問題が無い場合には、例えば平行に設置してもよい。
【0032】
加熱ユニット8は、加熱流路41の出口部分に設けられた出口温度センサ4と、少なくとも1つの電極温度センサ5とを有している。従来は電源ユニット単位で設けていた温度センサを、加熱ユニット毎に、また電極体毎に設けることにより、加熱ユニット単位内での各位置の精密な温度を測定することを可能である。しかしながら、本発明は、特に、電極温度センサ5を特定の電極に設けるものであり、加熱ユニットが複数の場合、例えば、加熱ユニットの数が3つ以上である場合には、特に有利である。流路内でのスケーリングは、食品材料が一定の温度以上になると生じやすいため、複数段の加熱ユニットからなる構成においては、最も高温となる最終段でスケーリングが生じやすいのが通常である。しかし、熱変性が生じ易い食品材料を用いる場合などには、最終段以外の加熱ユニットにもスケーリングが生じる場合があるため、少なくとも最下流の電極体に温度センサを設けることが好ましい。
【0033】
出口温度センサ4と電極温度センサ5のいずれか一方にしかセンサを設けることができない場合には、電極温度センサ5を設ける。出口部分と比べ電極体43の方が高温となるからであり、管路の内周面を構成する電極体43に電極温度センサ5を設けることにより加熱流路41の外周面(通電加熱部42の内周面)の温度を捉えることが可能である。なお、出口温度センサ4および電極温度センサ5は、いずれも熱電対等の公知の温度センサを用いることができる。
【0034】
また、加熱ユニット8では、出口温度センサ4と電極温度センサ5の温度差が所定値以上になっているかの監視が行える。いわゆる層流が生じる非ニュートン性流体(例えば、マヨネーズや液卵、フルーツソース、ジャム等)の場合には、加熱流路41の内周面の温度が中心軸線付近よりも高くなることを考慮した構成である。1つの加熱ユニット8あたりの上昇温度が大きい場合、例えば10℃を越える場合、より具体的には15℃を越える場合には、特に有利な効果を奏する。また、加熱ユニット8相互の温度を比較して加熱状態を判断することができる。出口温度センサ4と電極温度センサ5の温度差が所定値以上になっている加熱ユニット8では、スケーリングが発生していることが考えられるので、クリーニングを促す警報を発するか、電力供給を遮断する制御を行う。
【0035】
また、スケーリング(過加熱)の発生は、同一電圧の電極体の最高温度部分で(別の言い方をすれば電極体間に供給される電圧または電力の変わり目となる部分で)生じやすいという発明者の経験則に照らすと、複数の加熱ユニット8を連結して使用する場合には、電圧の変わり目となる部分に温度センサを設けることが好ましい。例えば、第1の加熱ユニット8に500Vの電力を供給し、第2の加熱ユニット8に400Vの電力を供給し、第3の加熱ユニット8に300Vの電力を供給する場合のように、各加熱ユニット8への供給電圧に差異を設けた場合は、同一電圧を使用する電極のうち、少なくとも最高温となる最下流の電極体には電極温度センサをそれぞれ設けることとする。単一の加熱ユニットを使用し、該ユニット内で電極体に異なる電圧または電力を供給する場合にも同様に、同一電圧を使用する電極のうち、少なくとも最下流の電極体に電極温度センサを設けることが好ましい。電極体の冷却と共に特定の電極体に電極温度センサを設けることにより過加熱の防止がより効果的に実施される。
【0036】
図3および図4には、本発明の電極体43の一例を示す。図3には電極体43の流路の切断面を示す。電極体43には加熱流路41の内面に沿って冷却媒体の流路437が同心状に設けられている。冷却媒体は電極体に設けられた冷却媒体供給口436の一方から供給され、反対側に設けられた冷却媒体排出口436から排出される。電極体43には、さらに、給電用のネジ穴433および温度センサを装着するための穴434が設けられている。冷却媒体の流路437を設け、冷却媒体を流通させることにより、電極体43の温度上昇を抑え、電極内壁表面の食品が過熱されることを防止するものである。冷却媒体流路はできるだけ被加熱材料に近い位置に設置して効率よく被加熱材料を冷却する必要がある。したがって、冷却媒体流路437は、電極体の外周面439と比べ加熱流路41に近い側に設けられることが好ましく、少なくとも電極体43の半径方向の厚さTの半分よりも加熱流路41に近い側の範囲に設けられ、より好ましくは電極体43の厚さTの1/3よりも加熱流路41に近い側の範囲に設けられる。冷却効率を高めるためには、冷却媒体流路と加熱流路を隔てる壁438の厚さは薄くすることが好ましく、その厚さは、電極体43の材質、強度、熱伝導率や、被過熱材量の加熱特性、流動性、流速、冷却媒体の温度などに応じてより適宜決定されるものであるが、電極体43の厚さTの5%から25%までの範囲にあるのが好ましい。例えば、冷却媒体流路437は、電極体の内面から1mmから5mm厚の壁を挟んで設けることが好ましい。
冷却媒体は、冷却性能が高い液体冷却媒体(例えば、水)を用いる。冷却媒体は、ポンプ等の公知の冷却媒体送給手段(図示せず)により冷却媒体流路を流通させる。
【0037】
図4には、冷却媒体の供給口436または排出口436を給電用のネジ433と相対する位置に設けた別の電極体の例が示されている。図4は電極体43を加熱流路41に沿って切断した断面であり、給電用のネジ穴433と、絶縁された電極温度センサ5を装着するための挿入穴434が設けられている。電極体の嵌着部435には、スペーサ管体44がシール部材を介して嵌着される。温度センサは被加熱材料と接する電極体の温度を感知する必要があるため、冷却媒体で冷却された電極体の温度を検知するように冷却媒体の流路に近い位置まで温度センサを挿入できる挿入穴434とすることが好ましい。
図4の構成において、例えば、厚さTは20mmであり、隔壁438の厚さは2mmであり、加熱流路41の直径は23mmである。
【0038】
電極温度センサ5の取り付け位置としては、下流側の方が、被加熱時間が長く高温となることから、少なくとも最下流の加熱部の電極体43に設置して、温度の管理を行うことが例示される。最下流のアース電極に温度センサ5を設けるのが好ましいが、それ以外の電極体に温度センサ5を設けてもよい。被加熱材料によっては、スパークが加熱ユニット8の中流ないしは下流に発生することがあるが、かかる場合にはスパーク発生が想定される箇所に最も近い位置にある電極体43に電極温度センサ5を設けてもよい。
【0039】
電極温度センサ5は、温度測定器105に接続されている。温度測定器105は、検出時刻記憶手段を備えており、検出した電極体43の温度および検出時刻を記憶することができる。温度測定器105は、コントロールユニット54に接続されており、温度測定器105からの信号を受けたコントロールユニット54により電極体43に供給する電力が制御されると共に、冷却媒体の温度および流量も同時に制御され、食品材料など被加熱材料の過加熱の防止が行われる。コントロールユニット54は、電極体43に供給される電力をPID制御する。PID制御における比例動作(P動作)や積分動作(I動作)の値は、オーバーシュートやサイクリングを起こさないように、通電加熱部42の全長や食品材料の流速等に応じて適宜最適に設定する。コントロールユニット54には、表示手段を有する操作パネル55が設けられており、設定値等入力することが可能である。また、コントロールユニット54は、発報手段を有しており、クリーニング警報を発報することが可能である。
本発明における食品の加熱温度および過加熱による焦げ付き、スケールの発生などを制御するには、検知温度に応じて、電力の制御および冷却媒体の制御により行うことができるため、設定条件に応じた精密な制御を可能とする。
【0040】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
本実施例では、水冷電極体を用いた加熱ユニットを使用した連続通電加熱装置を、電極温度が上昇しやすい被加熱材料を用いて運転して電極体の温度を測定した。電極体の冷却の有無による電極体温度の上昇を比較検討した。
図1に準じて装置を構築し試験を行った。予熱部として2本のジュール加熱管(加熱ユニット8)を直列し、その下流に加熱部として1本のジュール加熱管(加熱ユニット8)を接続してジュール加熱装置13とした。ジュール加熱装置の下流にはスタティクミキサーを有する冷却二重管を配置した。
加熱部における電極体の配置は図2に示す通りであり、電極体を冷却流路のある電極体(水冷電極体)とした。また、予熱部における電極体には水冷電極を配設しなかった。
被加熱材料として、粘性の高い粘稠調味液を用い通電加熱を行い、電極体の冷却の有無により電極体の温度がどのように変わるか検討した。また、比較試験として粘性の低い塩水を使用して同様に運転を行い、温度変化を比較した。
試験に使用した機器条件を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
試料(粘稠調味液)の加熱部の入り口温度は66℃、62℃、58℃とし、加熱温度は70℃に設定した。粘稠調味液または塩水の流量は350L/hrまたは175L/hrとし、電極冷却用の媒体は水道水として600L/hrまたは300L/hrとした。試験条件はまとめて表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
試験条件1から13で行った粘稠調味液と塩水の通電加熱の試験結果を表3に示す。この結果より、電極体の冷却を行うことにより、厳しい加熱条件下においても、電極温度の上昇を防ぐことができることを確認した。ジュール加熱装置の出口の配管表面(配管表面は、図2では入り口側から2〜9番面の電極体の部分に該当する。)の温度を測定したところ、流量350L/hr、58℃から70℃に加熱する条件下で、電極体を冷却したときの配管表面温度は75℃以上80℃未満であったのに対し、電極体を冷却しないときの配管表面温度は85℃以上90℃未満まで温度が上昇した。電極体を冷却することで管壁面で、被加熱材料が過温度となり易い箇所の冷却が行われ、通電加熱装置の出口部での温度ばらつきを抑制することができた。
【0046】
表3には、条件1から13で得た試験結果を示す。(なお、電極3、電極4、電極5、電極6、電極7の数字は、図2の構成で入り口側からの順番を意味している。)
表3に示した試験結果により、被加熱材料の粘性の大小、冷却水の流量にかかわらず電極体を水冷することにより電極体の温度を低く、正確に制御することができることが実証された。図5は、表3における電極体の測定温度を試験条件ごとにグラフとして表したものである。このグラフにより電極の冷却を行わなかった条件での電極温度が大幅に上昇していることがより一層明らかである。
なお、条件1から13においては、ジュール出口温度を一定にするというテスト条件を設定し、電圧を制御することにより、ジュール出口温度が一定になるようにした。
【0047】
【表3】

【実施例2】
【0048】
被加熱材料として粘稠調味液を使用し、電極間距離が75mmの通電加熱装置を構築し、350L/hrの流量で、被加熱材料の加熱処理を行った。通電加熱装置は表4に示す部材を使用して構築し、各部の有効長、断面積、容量、流量、通過時間を示す。この通電加熱装置は、表4に記載の各部材を(i)〜(iv)の順序で組み立てることにより構築され、(iii)ジュール加熱部が備える7つの電極体の全てが水冷電極を構成するものである。原料温度58℃、加熱温度70℃とし、この装置を2時間運転したが、電極の温度は32.7℃で一定であり、被加熱材料の過加熱、焦げ付き、スケールの発生は認められなかった。
【0049】
【表4】

【実施例3】
【0050】
被加熱材料として粘稠調味液を使用し、電極間距離が100mmの通電加熱装置を構築し、0.8m/hrの流量で、被加熱材料の加熱処理を行った。通電加熱装置は、ジュール加熱部(1S8セクション)を8本使用し、最下流の2本を水冷電極タイプとした。8本のジュール加熱部(加熱ユニット)間にはスタティックミキサーを配設した。表5に、各部の有効長、断面積、容量、流量、通過時間等のデータを示す。なお、表5中、SPは設定温度を意味し、HDTは実際の温度を意味する。
図6は、各加熱ユニット(ジュール1〜8)における電極温度の変化を示すグラフであり、図7は、各加熱ユニットの出口温度と電極温度を比較したグラフである。本実施例では、原料温度58℃、加熱温度70℃とし、この装置を表5に記載の時間連続運転したが、電極温度の上昇は、最大で62度であり、安定していた。なお、電極温度が最も上昇したのは、5本目、6本目の電極(非水冷タイプ)であった。各加熱ユニット(ジュール1〜8)のジュール出口温度と、ホールド(HDD)出口温度が一致しているのは、スタティックミキサーによる攪拌が充分になされているからであると推測される。
電極冷却水の流量は432L/hrで、戻り温度は入口温度に対して+2℃程度であった(860kcal/hのロス)。
本実施例においても、被加熱材料の過加熱、焦げ付き、スケールの発生は認められなかった。
【0051】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0052】
以上詳述したように、本発明は、複数の電極体および複数の絶縁スペーサを有し、該電極体と該スペーサを交互に連結し連通させることにより、内部に被加熱材料が流通する加熱流路を形成し、加熱流路内に被加熱材料を連続して流通させながら電極体間に電力を供給して被加熱材料を通電加熱する通電加熱装置の電極体に冷却媒体流路および温度検知器が設けられている連続式通電加熱装置に係るものである。本発明は、安定した、正確な温度制御が可能な連続通電加熱装置を提供することを可能としたものであり、粘性の高い流動食品や熱変性が生じやすい食品類、例えば、マヨネーズ、ジャム、液卵などのたんぱく質類を熱処理するために最適な加熱装置を提供するものである。本発明は、微妙な熱管理を必要とする物質の熱処理を簡便に遂行することを可能とするものであり、精密な熱処理により新しい特性を付与した物質を大量に生産し提供することが可能となり、特に食品産業分野で有用な加熱装置および方法として有用な技術を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の連続式通電加熱装置全体の概要構成図である。
【図2】本発明の加熱ユニットの拡大断面図である。
【図3】図2の加熱ユニットの電極体の正面断面図である。
【図4】本発明の別の態様の電極体の側面断面図である。
【図5】実施例1で得た条件ごとの電極体の温度変化である。
【図6】実施例3の各加熱ユニットにおける電極温度の変化を示すグラフである。
【図7】実施例3の各加熱ユニットの出口温度と電極温度を比較したグラフである。
【図8】本発明の加熱ユニット毎の測定温度に基づく通電制御手順の一例を示すフローチャートある。
【図9】本発明の出口温度センサと電極温度センサとの温度差に基づく通電制御手順の一例を示すフローチャートある。
【符号の説明】
【0054】
4 出口温度センサ
5 電極温度センサ
6 プレート
7a、7b、7c、7d フランジ
8 加熱ユニット
11a、11b、11c 被加熱材料の流路
12 撹拌冷却器
21 冷却器
22 撹拌器
13 ジュール加熱装置(連続式通電加熱装置)
41 加熱流路
42 通電加熱部
43 電極体(リング状電極)
44 スペーサ
45、46 ジョイント部
54 コントロールユニット
55 操作パネル
56 電源ユニット
104、105 温度測定器
43 電極体(リング状電極)
433 電源接続用ネジ穴
434 温度測定器挿入穴
435 嵌着部
436 冷却媒体給排出口
437 冷却媒体流路
438 加熱流路と冷却媒体流路との隔壁
439 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極体および複数のスペーサ管体を有し、それらの内壁が食品材料を流動移送させながら通電加熱するための被加熱流路を形成する加熱ユニットを備える連続式通電加熱装置において、
前記複数の電極体が、冷却媒体流路を設けた電極体を含んで構成され、
前記被加熱流路の出口端近傍に、被加熱流路の内壁温度を検出する温度センサを設け、該温度センサの測定値に基づき液体冷却媒体による冷却条件を制御することを特徴とする連続式通電加熱装置。
【請求項2】
前記温度センサが、加熱ユニットの最下流に配置された電極体に埋設される請求項1に記載の連続式通電加熱装置。
【請求項3】
さらに、加熱ユニットの最上流に配置された電極体に埋設された温度センサを備える請求項2に記載の連続式通電加熱装置。
【請求項4】
温度センサが埋設された電極体が、アース用の電極体である請求項2または3に記載の連続式通電加熱装置。
【請求項5】
被加熱流路と連通する流路を有し、加熱ユニットの最下流に配置される継ぎ手部材を設け、その流路の内壁部分に前記温度センサを配設した請求項1に記載の連続式通電加熱装置。
【請求項6】
前記複数の電極体が、その厚さ(T)の半分よりも加熱流路に近い範囲に冷却媒体流路を設けた電極体を含んで構成される請求項1ないし5のいずれかに記載の連続式通電加熱装置。
【請求項7】
前記電極体に設けられた冷却媒体流路が、電極体の厚さ(T)の5%〜25%の範囲の厚さの壁(438)で加熱流路と隔てられている請求項6に記載の連続式通電加熱装置。
【請求項8】
1以上の前記電極温度センサを有する加熱ユニットを複数設け、それぞれの電極温度センサの測定温度に基づいてそれぞれの加熱ユニットに供給する電力の制御を行う請求項1ないし7のいずれかに記載の連続式通電加熱装置。
【請求項9】
前記液体冷却媒体が水である請求項1ないし8のいずれかに記載の連続式通電加熱装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の連続式通電加熱装置で用いられる電極体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−68727(P2010−68727A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237369(P2008−237369)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000136642)株式会社フロンティアエンジニアリング (30)
【Fターム(参考)】