説明

冷却装置およびパワーコンディショナ

【課題】太陽光発電システム用のパワーコンディショナの電子部品を冷却するための冷却装置において、室外空気の温度に拘わらず電子部品を充分に冷却すると共に、電子部品の冷却に要するエネルギを削減する。
【解決手段】冷却装置(25)には、蓄熱器(30)、ヒートシンク(35)、ヒートパイプ(40)、及び断熱ケース(50)が設けられる。蓄熱器(30)は、潜熱蓄熱剤(32)を備え、パワーコンディショナの電子部品(21)に熱的に接続される。ヒートシンク(35)は、蓄熱器(30)の上方に配置される。ヒートパイプ(40)は、下端が蓄熱器(30)に、上端がヒートシンク(35)にそれぞれ熱的に接続される。蓄熱器(30)と電子部品(21)は、断熱ケース(50)に覆われる。昼間に電子部品(21)で発生した熱は、蓄熱器(30)に蓄えられる。蓄熱器(30)に蓄えられた熱は、夜間にヒートパイプ(40)によってヒートシンク(35)へ搬送され、室外空気へ放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システム用のパワーコンディショナに設けられた電子部品の冷却対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、太陽光発電システムには、パワーコンディショナが設けられる。このパワーコンディショナは、スイッチング素子等の電子部品を備え、太陽電池パネルで生じた直流を交流に変換する動作等を行う。
【0003】
パワーコンディショナの動作中には、電子部品が発熱するため、電子部品を何らかの手段で冷却する必要がある。例えば、特許文献1には、パワーコンディショナに放熱用のフィンとフィンへ空気を送るファンとを設け、電子部品を強制対流によって冷却している。
【0004】
また、太陽光発電システム用のパワーコンディショナ以外の機器においても、電子部品を冷却しなければならない場合がある。例えば、特許文献2には、パソコンのCPUを冷却するための放熱システムが開示されている。この放熱システムは、CPUに熱的に接続されたヒートシンク及びファンを有する放熱部と、蓄熱材を有する蓄熱部と、CPUと放熱部の両方を蓄熱部と熱的に接続するヒートパイプとを備えている。通常、この放熱システムでは、CPUで生じた熱が放熱部から放熱される。一方、CPUの発熱量が増えた場合、この放熱システムでは、放熱部から放熱しきれなかった熱がヒートパイプによって蓄熱部へ送られて蓄えられ、その後にCPUの発熱量が減少すると、蓄熱部に蓄えられた熱がヒートパイプによって放熱部へ送られて放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−269692号公報
【特許文献2】特開2000−232286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているようにファンを用いてパワーコンディショナの電子部品を冷却する場合は、ファンを駆動するための電力が必要となる。このため、太陽電池パネルで生じた電力の一部がファンによって消費され、その分だけ太陽光発電システムの出力が減少してしまう。特に、太陽電池パネルは屋根の上に設置されることが多く、日当たりのよい屋根の上の気温は非常に高温(例えば50℃程度)に達する場合がある。このようなパワーコンディショナの周囲の気温が非常に高温となる場合にも電子部品を充分に冷却するには、送風量の大きなファンを用いなければならず、ファンで消費される電力が嵩んでしまう。この問題が生じることは、特許文献2に開示された放熱システムを太陽光発電システムに適用した場合も同様である。
【0007】
また、特許文献2の放熱システムにおいて、ヒートパイプは、実質的に水平に設置されており、蓄熱部から放熱部へ向かってだけでなく、放熱部から蓄熱部へ向かっても熱を搬送できる(特許文献2の図1と段落0013を参照)。このため、特許文献2の放熱システムを太陽光発電システムのパワーコンディショナに適用すると、外気温が非常に高くなった場合には、電子部品だけでなく室外空気と接する放熱部からも熱が蓄熱部へ搬送され、蓄熱部を利用して電子部品を充分に冷却できなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、太陽光発電システム用のパワーコンディショナの電子部品を冷却するための冷却装置において、室外空気の温度に拘わらず電子部品を充分に冷却すると共に、電子部品の冷却に要するエネルギを削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、太陽光発電システム用のパワーコンディショナ(20)に設けられた電子部品(21)を冷却するための冷却装置を対象とする。そして、上記電子部品(21)と熱的に接続されて該電子部品(21)で生じた熱を蓄える蓄熱用部材(30)と、上記蓄熱用部材(30)よりも上方に配置されて室外空気と接触する放熱用部材(35)と、一端が上記蓄熱用部材(30)に、他端が上記放熱用部材(35)にそれぞれ熱的に接続され、内部に密封された作動流体(44)の相変化を利用して熱を搬送するヒートパイプ(40)とを備えるものである。
【0010】
第1の発明において、放熱用部材(35)は、蓄熱用部材(30)よりも上方に配置され、ヒートパイプ(40)を介して蓄熱用部材(30)と熱的に接続されている。ここで、ヒートパイプ(40)では、封入された作動流体(44)が蓄熱用部材(30)から吸熱して蒸発し、上方へ移動してゆく。ガス化した作動流体(44)は、放熱用部材(35)へ放熱して凝縮する。液化した作動流体(44)は、重力によって下方へ流れ落ち、蓄熱用部材(30)から吸熱して再び蒸発する。従って、この発明のヒートパイプ(40)は、実質的には、下方に配置された蓄熱用部材(30)から上方に配置された放熱用部材(35)に向かう方向にだけ熱を搬送し、逆向きには熱を搬送しない。
【0011】
第1の発明において、作動中の電子部品(21)において発生した熱は、蓄熱用部材(30)に蓄えられる。上述したように、この発明のヒートパイプ(40)は、放熱用部材(35)から蓄熱用部材(30)に向かっては実質的に熱を搬送しない。このため、放熱用部材(35)に接する室外空気が蓄熱用部材(30)よりも高温になっている状態でも、蓄熱用部材(30)には、実質的に電子部品(21)で発生した熱だけが蓄えられる。一方、放熱用部材(35)に接する室外空気が蓄熱用部材(30)よりも低温になっている状態では、蓄熱用部材(30)に蓄えられた熱は、ヒートパイプ(40)によって放熱用部材(35)へ搬送されて室外空気へ放出される。夜間には、室外空気の温度が比較的低くなる。また、夜間には、太陽光発電が行われないため、パワーコンディショナ(20)の電子部品(21)は動作を停止している。このため、太陽光発電が行われる昼間に蓄熱用部材(30)に蓄えられた熱は、太陽光発電が行われない夜間に、放熱用部材(35)から室外空気へ放出される。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記放熱用部材(35)では、自然対流によって放熱が行われるものである。
【0013】
第2の発明では、ファン等を用いた放熱用部材(35)への室外空気の強制的な供給は行われない。自然対流によって放熱を行う放熱用部材(35)を用いた場合、室外空気の温度が高い状態では、放熱用部材(35)から室外空気へ放出される熱量が少なくなる。しかし、この発明の冷却装置(25)は蓄熱用部材(30)を備えているため、室外空気の温度が高い状態では、蓄熱用部材(30)を利用した電子部品(21)の冷却が行われる。一方、室外空気の温度が低い状態では、自然対流によって放熱を行う放熱用部材(35)を用いた場合でも、放熱用部材(35)から室外空気へ放出される熱量が充分に確保される。
【0014】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記蓄熱用部材(30)は、凝固点が夜間の室外空気の温度よりも高い潜熱蓄熱剤(32)を備えるものである。
【0015】
第3の発明では、電子部品(21)で発生した熱が蓄熱用部材(30)の潜熱蓄熱剤(32)に蓄えられる。潜熱蓄熱剤(32)は、電子部品(21)で発生した熱を吸収して融解する。潜熱蓄熱剤(32)の凝固点(即ち、融点)は、夜間の室外空気の温度よりも高くなっている。このため、電子部品(21)から吸熱して融解した潜熱蓄熱剤(32)は、夜間になると放熱して凝固する。潜熱蓄熱剤(32)から放出された熱は、ヒートパイプ(40)によって放熱用部材(35)へ搬送され、放熱用部材(35)から室外空気へ放出される。
【0016】
第4の発明は、上記第1〜第3の何れか一つの発明において、上記電子部品(21)及び上記蓄熱用部材(30)を室外空気から断熱する断熱用部材(45)を備えるものである。
【0017】
第4の発明では、断熱用部材(45)によって電子部品(21)と蓄熱用部材(30)とが室外空気から断熱される。このため、室外空気の温度が高くなっている状態でも、電子部品(21)や蓄熱用部材(30)が室外空気によって暖められることはない。
【0018】
第5の発明は、太陽光発電システム用のパワーコンディショナを対象とする。そして、上記第1〜第4の何れか一つの発明の冷却装置(25)を備え、上記パワーコンディショナに設けられた電子部品(21)を上記冷却装置(25)によって冷却するものである。
【0019】
第5の発明では、上記第1〜第4の何れか一つの冷却装置(25)が、太陽光発電システム用のパワーコンディショナ(20)に設けられる。パワーコンディショナ(20)に設けられた電子部品(21)は、冷却装置(25)によって冷却される。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、放熱用部材(35)が蓄熱用部材(30)の上方に配置され、両者がヒートパイプ(40)で熱的に接続されており、ヒートパイプ(40)が実質的に蓄熱用部材(30)から放熱用部材(35)へ向かう方向だけに熱を搬送する。このため、放熱用部材(35)に接する室外空気が蓄熱用部材(30)よりも高温になっている状態でも、蓄熱用部材(30)には、実質的に電子部品(21)で発生した熱だけが蓄えられる。従って、本発明によれば、放熱用部材(35)に接する室外空気が非常に高温となっている状態でも、蓄熱用部材(30)を利用して電子部品(21)を確実に冷却することができる。
【0021】
また、本発明の冷却装置(25)によれば、昼間などの室外空気の温度が高い状態では電子部品(21)で発生した熱を蓄熱用部材(30)に蓄えておき、夜間などの室外空気の温度が低い状態になってから蓄熱用部材(30)の熱を放熱用部材(35)から室外空気へ放出することができる。つまり、室外空気の温度が高い昼間には、放熱用部材(35)から室外空気への放熱を行うことなく、蓄熱用部材(30)を利用した電子部品(21)の冷却を行うことができる。そして、室外空気の温度が低くなり且つ電子部品(21)の動作が停止する夜間に、放熱用部材(35)から室外空気への放熱を行うことができる。
【0022】
このため、室外空気の温度が低い夜間に放熱用部材(35)からの放熱を行う本発明の冷却装置(25)では、仮に放熱用部材(35)へ室外空気をファンによって供給したとしても、ファンの駆動に要する電力等のエネルギは、室外空気の温度が高い昼間に放熱用部材(35)からの放熱を行う場合に比べて少なくて済む。従って、本発明によれば、室外空気の温度に拘わらず電子部品(21)を充分に冷却しつつ、電子部品(21)の冷却に要するエネルギを削減することができる。
【0023】
特に、上記第2の発明では、自然対流によって放熱を行う放熱用部材(35)が用いられており、ファン等を用いた放熱用部材(35)への室外空気の強制的な供給は行われない。従って、この発明によれば、電子部品(21)を冷却するために消費される電力等のエネルギをゼロにすることができる。
【0024】
上記第3の発明において、蓄熱用部材(30)は、潜熱蓄熱剤(32)の固相から液相への相変化を利用して、電子部品(21)で発生した熱を蓄える。一般に、物質の融解熱は、物質の比熱に比べて大きい。従って、この発明によれば、比較的少量の潜熱蓄熱剤(32)によって蓄熱用部材(30)の蓄熱量を確保することができ、蓄熱用部材(30)を小型化することができる。
【0025】
ここで、電子部品(21)と蓄熱用部材(30)とが室外空気から断熱されていない場合は、室外空気の温度が高い状態になると、電子部品(21)が室外空気によって暖められてその温度が上昇したり、蓄熱用部材(30)が室外空気から直接に吸熱して蓄熱用部材(30)が電子部品(21)から吸収する熱量が減少するおそれがある。
【0026】
これに対し、上記第4の発明では、断熱用部材(45)によって電子部品(21)と蓄熱用部材(30)とが室外空気から断熱される。従って、この発明によれば、室外空気の温度が高い状態でも、室外空気からの吸熱に起因する電子部品(21)の温度上昇や蓄熱用部材(30)の吸熱量の減少を抑えることができる。
【0027】
上記第5の発明によれば、上記第1〜第4の何れか一つの冷却装置(25)を備えたパワーコンディショナ(20)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態の太陽光発電システムの概略斜視図である。
【図2】実施形態のパワーコンディショナの概略斜視図である。
【図3】実施形態の冷却装置を正面から見た断面図である。
【図4】実施形態のヒートパイプの断面図である。
【図5】(A)は屋根表面温度および外気温度の一日における変化を示すグラフであり、(B)は電子部品の発熱量および蓄熱器の蓄熱量の一日における変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の太陽光発電システム(10)は、太陽電池パネル(15)と、パワーコンディショナ(20)とを備えている。太陽電池パネル(15)は、建物(90)の屋根に設置された架台(16)に取り付けられている。この架台(16)には、パワーコンディショナ(20)も取り付けられている。つまり、本実施形態のパワーコンディショナ(20)は、屋外に設置されている。
【0031】
パワーコンディショナ(20)では、電子部品(21)が収容箱(22)内に設置されている。また、パワーコンディショナ(20)は、電子部品(21)を冷却するための冷却装置(25)を備えている。図2に示すように、冷却装置(25)のヒートシンク(35)は、収容箱(22)の上面から外部に露出している。
【0032】
パワーコンディショナ(20)は、太陽電池パネル(15)から出力された直流を交流に変換する動作を行う。このため、パワーコンディショナ(20)には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子が電子部品(21)として設けられる。また、パワーコンディショナ(20)は、太陽電池パネル(15)の能力を最大限に引き出すための最大電力追従制御(MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御)も行う。従って、パワーコンディショナ(20)には、制御動作を行うマイコン等も電子部品(21)として設けられている。
【0033】
図3に示すように、パワーコンディショナ(20)に設けられた冷却装置(25)は、蓄熱用部材である蓄熱器(30)と、放熱用部材であるヒートシンク(35)と、ヒートパイプ(40)と、断熱用部材である断熱ケース(50)とを備えている。この冷却装置(25)では、蓄熱器(30)の上方にヒートシンク(35)が配置されている。また、ヒートパイプ(40)は、その軸方向が上下方向となる姿勢で配置されている。
【0034】
蓄熱器(30)は、蓄熱容器(31)を備えている。蓄熱容器(31)は、金属製の密閉容器であって、その内部に潜熱蓄熱剤(32)が封入されている。蓄熱容器(31)では、その上面に円形断面の凹部が形成されており、この凹部にヒートパイプ(40)の下端が挿入されている。つまり、蓄熱器(30)は、ヒートパイプ(40)と熱的に接続されている。また、蓄熱器(30)の蓄熱容器(31)は、その底面が電子部品(21)に接しており、電子部品(21)に対して熱的に接続されている。このように、ヒートパイプ(40)は、蓄熱器(30)とは接触するが、電子部品(21)とは接触しない。
【0035】
詳しくは後述するが、本実施形態の冷却装置(25)では、昼間に電子部品(21)で発生した熱が蓄熱器(30)の潜熱蓄熱剤(32)に蓄えられ、夜間に潜熱蓄熱剤(32)に蓄えられた熱がヒートシンク(35)から室外空気へ放出される。このため、真夏の夜間でも潜熱蓄熱剤(32)の熱を室外空気へ放出できるように、潜熱蓄熱剤(32)として用いられる物質の融点は、年間の日毎の最低気温のうちの最高値よりも更に高い値に設定されるのが望ましい。太陽光発電システム(10)の設置地点が熱帯や寒帯でない限り、通常、潜熱蓄熱剤(32)としては、凝固点(即ち、融点)が30℃以上45℃以下程度の物質を用いるのが望ましい。潜熱蓄熱剤(32)として用いることができる物質としては、リン酸ナトリウム(Na3PO4)、硝酸リチウム(LiNO3)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、塩化カルシウム6水和物(CaCl2・6H2O)が例示される。
【0036】
断熱ケース(50)は、発泡樹脂等の断熱性の高い材料で構成されている。この断熱ケース(50)は、電子部品(21)と蓄熱器(30)の周囲を覆っており、電子部品(21)と蓄熱器(30)を室外空気から断熱する。
【0037】
ヒートシンク(35)は、アルミニウム合金等の熱伝導率の高い金属からなる部材である。このヒートシンク(35)では、厚板状のベース板(36)と、ベース板(36)の上面に突設された板状のフィン(37)とが一体に形成されている。ベース板(36)では、その下面に円形断面の凹部が形成されており、この凹部にヒートパイプ(40)の上端が挿入されている。つまり、ヒートシンク(35)は、ヒートパイプ(40)と熱的に接続されている。このように、本実施形態のヒートシンク(35)は、電子部品(21)とは接触しておらず、ヒートパイプ(40)及び蓄熱器(30)を介して電子部品(21)に熱的に接続されている。
【0038】
図4に示すように、本実施形態のヒートパイプ(40)は、サーモサイフォン式のヒートパイプ(40)である。このヒートパイプ(40)は、密封パイプ(41)を備えている。密封パイプ(41)は、両端が閉塞された円管であって、その内部に作動流体(44)が封入されている。密封パイプ(41)は、蓄熱器(30)の蓄熱容器(31)に挿入された部分が吸熱部(42)を構成し、ヒートシンク(35)のベース板(36)に挿入された部分が放熱部(43)を構成している。
【0039】
このヒートパイプ(40)は、下方の吸熱部(42)から上方の放熱部(43)へ向かってだけ実質的に熱を搬送する。ここでは、ヒートパイプ(40)の熱搬送動作を説明する。
【0040】
先ず、ヒートパイプ(40)は、放熱部(43)が吸熱部(42)よりも低温である場合に、吸熱部(42)から放熱部(43)へ向かって熱を搬送する。具体的に、密封パイプ(41)の内部空間では、その底部に溜まった液状態の作動流体(44)が、吸熱部(42)の内面と接触することにより加熱されて蒸発する。蒸発してガス状態となった作動流体(44)は、上方へ移動してゆく。上昇してきたガス状態の作動流体(44)は、放熱部(43)の内面と接触することにより冷却されて凝縮する。凝縮して液状態となった作動流体(44)は、密封パイプ(41)の内面を伝って下方へ流れ落ちる。そして、密封パイプ(41)の下部に到達した液状態の作動流体(44)は、吸熱部(42)の内面と接触することによって再び蒸発する。ヒートパイプ(40)では、密封パイプ(41)内で作動流体(44)が上述したように循環することによって、吸熱部(42)から放熱部(43)へ向かって熱が搬送される。
【0041】
一方、このヒートパイプ(40)は、放熱部(43)が吸熱部(42)よりも高温である場合には、放熱部(43)から吸熱部(42)への熱の搬送を行わない。つまり、液状態の作動流体(44)は、密封パイプ(41)の底部に溜まっており、密封パイプ(41)の上端寄りに位置する放熱部(43)には存在しない。このため、放熱部(43)の温度が上昇しても、放熱部(43)の近傍に存在するガス状態の作動流体(44)が加熱されるだけであり、液状態の作動流体(44)が放熱部(43)と接触して蒸発することはない。従って、放熱部(43)が吸熱部(42)よりも高温となっている状態では、密封パイプ(41)内における作動流体(44)の上下方向の循環が生じず、放熱部(43)から吸熱部(42)へ向かう熱の移動も生じない。もちろん、密封パイプ(41)の上端部へ侵入した熱の一部は、熱伝導によって密封パイプ(41)の下端部へと移動してゆく。しかし、熱伝導によって移動する熱の量は、極めて僅かである。このため、放熱部(43)が吸熱部(42)よりも高温となっている状態において、ヒートパイプ(40)では、放熱部(43)から吸熱部(42)への熱の搬送が実質的に行われない。
【0042】
−冷却装置の動作−
冷却装置(25)が電子部品(21)を冷却する動作について、図5を参照しながら説明する。図5は、屋根表面温度、外気温度、パワーコンディショナ(20)の電子部品(21)における発熱量、及び冷却装置(25)の蓄熱器(30)の蓄熱量の、夏季の一日における変化を示したグラフである。また、図5に示すのは、蓄熱器(30)の潜熱蓄熱剤(32)の凝固点が35℃である場合の一例である。
【0043】
6時頃になって日射量がある程度に達すると、太陽電池パネル(15)が発電を開始する。太陽電池パネル(15)が発電を開始すると、パワーコンディショナ(20)の電子部品(21)も動作を開始し、電子部品(21)において熱が発生する。電子部品(21)において発生した熱は、蓄熱器(30)へ移動する。
【0044】
朝の早い時間端では、屋根の表面温度が比較的低く、ヒートシンク(35)と接する室外空気(即ち、屋根の表面付近の室外空気)の温度が潜熱蓄熱剤(32)の凝固点よりもある程度以上低い状態となっている。この状態において、ヒートパイプ(40)では、放熱部(43)が吸熱部(42)よりも低温となり、吸熱部(42)から放熱部(43)への熱の搬送が行われる。従って、この状態では、電子部品(21)から蓄熱器(30)への熱の移動と、蓄熱器(30)からヒートシンク(35)への熱の移動とが、同時に並行して行われる。
【0045】
電子部品(21)から蓄熱器(30)へ移動した熱は、ヒートパイプ(40)によってヒートシンク(35)へ搬送され、ヒートシンク(35)のフィン(37)から室外空気へ放出される。本実施形態のパワーコンディショナ(20)には、ヒートシンク(35)のフィン(37)へ室外空気を供給するためのファンが設けられていない。このため、ヒートパイプ(40)によってヒートシンク(35)へ搬送された熱は、実質的に自然対流によって室外空気へ放熱される。
【0046】
ヒートシンク(35)と接する室外空気の温度が次第に上昇すると、それに連れて、蓄熱器(30)からヒートシンク(35)へ移動する熱量が次第に減少する。そして、ヒートシンク(35)と接する室外空気の温度が35℃に達する時刻t1の少し前になると、ヒートパイプ(40)では、吸熱部(42)と放熱部(43)の温度差が殆ど無くなり、吸熱部(42)から放熱部(43)への熱の搬送が停止する。このため、電子部品(21)で発生した熱は、専ら蓄熱器(30)に蓄えられてゆき、蓄熱器(30)からヒートシンク(35)への移動が停止する。この状態では、蓄熱器(30)に設けられた潜熱蓄熱剤(32)が、電子部品(21)で発生した熱によって暖められて融解してゆく。蓄熱器(30)への蓄熱は、ヒートシンク(35)に接する室外空気の温度が再び35℃を下回る時刻t2を少し過ぎるまで継続する。蓄熱器(30)への蓄熱が終了する時刻において、潜熱蓄熱剤(32)は、その全部または大部分が凝固した状態となる。
【0047】
時刻t2に至るまでの間には、ヒートシンク(35)と接する室外空気の温度がかなりの高温(40℃以上)となる場合がある。この場合、ヒートパイプ(40)では、放熱部(43)が吸熱部(42)よりも高温となる。上述したように、ヒートパイプ(40)では、放熱部(43)が吸熱部(42)よりも高温となっても、放熱部(43)から吸熱部(42)へ搬送される熱量は実質的にゼロである。従って、ヒートシンク(35)と接する室外空気の温度がかなりの高温となっている状態においても、蓄熱器(30)には、電子部品(21)で発生した熱だけが蓄えられる。
【0048】
蓄熱器(30)が電子部品(21)で発生した熱を蓄えつつある状態では、潜熱蓄熱剤(32)が次第に融解してゆく。潜熱蓄熱剤(32)が融解しつつある状態において、潜熱蓄熱剤(32)の温度は、その融点に保たれる。このため、電子部品(21)で発生した熱が蓄熱器(30)に蓄えられていっている状態において、蓄熱器(30)と熱的に接続された電子部品(21)の温度は、潜熱蓄熱剤(32)の融点と殆ど同じ値か若干高い程度の値に保たれる。
【0049】
時刻t2を過ぎてヒートシンク(35)と接する室外空気の温度が35℃よりもある程度以上低くなると、ヒートパイプ(40)では、放熱部(43)の温度が吸熱部(42)の温度よりも低くなり、吸熱部(42)から放熱部(43)への熱の搬送が再開される。
【0050】
時刻t2を過ぎると、ヒートパイプ(40)は、蓄熱器(30)に蓄えられた熱を放熱部(43)へ搬送し始める。その後、太陽電池パネル(15)での発電が停止して電子部品(21)での発熱量がゼロになる19時頃までの間は、電子部品(21)から蓄熱器(30)への熱の移動と、蓄熱器(30)からヒートシンク(35)への熱の移動とが、同時に並行して行われる。この時間帯において、蓄熱器(30)の潜熱蓄熱剤(32)は、固相と液相が共存した状態となっており、その温度が融点となっている。従って、この時間帯においても、蓄熱器(30)と熱的に接続された電子部品(21)の温度は、潜熱蓄熱剤(32)の融点と殆ど同じ値か若干高い程度の値に保たれる。
【0051】
電子部品(21)での発熱量がゼロになる19時頃を過ぎると、冷却装置(25)では、専ら蓄熱器(30)からヒートシンク(35)へ熱が移動し、蓄熱器(30)に蓄えられた熱がヒートシンク(35)から室外空気へ放出される。その間、蓄熱器(30)では、潜熱蓄熱剤(32)が放熱して次第に凝固してゆく。蓄熱容器(31)に充填された潜熱蓄熱剤(32)の全てが凝固すると、蓄熱器(30)の蓄熱量がゼロになる。
【0052】
−実施形態の効果−
本実施形態の冷却装置(25)では、ヒートシンク(35)が蓄熱器(30)の上方に配置され、両者がヒートパイプ(40)で熱的に接続されており、ヒートパイプ(40)が実質的に蓄熱器(30)からヒートシンク(35)へ向かう方向だけに熱を搬送する。このため、ヒートシンク(35)に接する室外空気が蓄熱器(30)よりも高温になっている状態でも、蓄熱器(30)には、実質的に電子部品(21)で発生した熱だけが蓄えられる。従って、本実施形態によれば、ヒートシンク(35)に接する室外空気が非常に高温となっている状態でも、蓄熱器(30)を利用して電子部品(21)を確実に冷却することができる。つまり、例えば潜熱蓄熱剤(32)の融点が40℃である場合には、ヒートシンク(35)と接する室外空気の温度が50℃近くに達する真夏の日中でも、電子部品(21)の温度を40℃かそれよりも若干高い程度に保つことができる。
【0053】
また、本実施形態の冷却装置(25)によれば、昼間などの室外空気の温度が高い状態では電子部品(21)で発生した熱を蓄熱器(30)に蓄えておき、夜間などの室外空気の温度が低い状態になってから蓄熱器(30)の熱をヒートシンク(35)から室外空気へ放出することができる。つまり、室外空気の温度が高い昼間には、ヒートシンク(35)から室外空気への放熱を行うことなく、蓄熱器(30)を利用した電子部品(21)の冷却を行うことができる。そして、室外空気の温度が低くなり且つ電子部品(21)の動作が停止する夜間に、ヒートシンク(35)から室外空気への放熱を行うことができる。
【0054】
このように、本実施形態の冷却装置(25)では、自然対流によって放熱を行うヒートシンク(35)を用いているにも拘わらず、昼間に蓄熱器(30)に蓄えた熱を夜間にヒートシンク(35)から室外空気へ放出することによって、電子部品(21)の温度を低く抑えることができる。従って、本実施形態によれば、電力を全く使わずに電子部品(21)を冷却することができ、太陽光発電システム(10)の効率を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、ヒートシンク(35)と接する室外空気がかなりの高温となる夏季においても、電子部品(21)を比較的低温(例えば、50℃程度)に保つことができる。その結果、電子部品(21)の寿命を延ばすことができ、パワーコンディショナ(20)の耐久性を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態の蓄熱器(30)は、潜熱蓄熱剤(32)の固相から液相への相変化を利用して、電子部品(21)で発生した熱を蓄える。一般に、物質の融解熱は、物質の比熱に比べて大きい。従って、本実施形態によれば、比較的少量の潜熱蓄熱剤(32)によって蓄熱器(30)の蓄熱量を確保することができ、蓄熱器(30)を小型化することができる。
【0057】
ここで、電子部品(21)と蓄熱器(30)とが室外空気から断熱されていない場合は、室外空気の温度が高い状態になると、電子部品(21)が室外空気によって暖められてその温度が上昇したり、蓄熱器(30)が室外空気から直接に吸熱して、蓄熱器(30)が電子部品(21)から吸収する熱量が減少するおそれがある。
【0058】
これに対し、本実施形態の冷却装置(25)では、断熱ケース(50)によって電子部品(21)と蓄熱器(30)とが室外空気から断熱される。従って、本実施形態によれば、室外空気の温度が高い状態でも、室外空気からの吸熱に起因する電子部品(21)の温度上昇や蓄熱器(30)が電子部品(21)から吸収する熱量の減少を抑えることができる。
【0059】
−実施形態の変形例−
本実施形態の冷却装置(25)には、ヒートシンク(35)のフィン(37)へ室外空気を供給するためのファンが設けられていてもよい。この場合、ファンは、ヒートシンク(35)と接する室外空気が比較的低温でヒートパイプ(40)が蓄熱器(30)からヒートシンク(35)へ熱を搬送する状態でだけ運転され、ヒートシンク(35)と接する室外空気が比較的高温でヒートパイプ(40)が熱の搬送を停止する状態では運転されない。例えば夜間に低温の室外空気をファンでヒートシンク(35)へ供給する場合は、昼間に高温の室外空気をファンでヒートシンク(35)へ供給する場合に比べ、少ないファン風量で且つ短時間で蓄熱器(30)から室外空気への放熱を完了させることができる。従って、冷却装置(25)にファンを設けた場合でも、従来に比べればファンの消費電力を削減することができ、その結果、太陽光発電システム(10)の効率を従来よりも向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態の冷却装置(25)では、ヒートシンク(35)を、蓄熱器(30)の真上ではなく斜め上方に配置してもよい。
【0061】
また、本実施形態の冷却装置(25)において、ヒートパイプ(40)は、その軸方向が完全に鉛直方向となっている必要はなく、その軸方向が鉛直方向に対して多少傾いていてもよい。
【0062】
また、本実施形態の冷却装置(25)では、サーモサイフォン式のヒートパイプ(40)に代えて、ウィック式のヒートパイプ(40)を用いてもよい。
【0063】
また、本実施形態のパワーコンディショナ(20)は、太陽電池パネル(15)から出力された直流の電圧を変換する動作を行うものであってもよい。太陽光発電システム(10)に複数の太陽電池パネル(15)が設けられている場合において、本変形例のパワーコンディショナ(20)は、各太陽電池パネル(15)の出力電圧を個別に調節する動作を行う。この変形例では、パワーコンディショナ(20)にトランジスタ等のスイッチング素子が電子部品(21)として設けられ、この電子部品(21)が冷却装置(25)によって冷却される。
【0064】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明は、太陽光発電システム用のパワーコンディショナに設けられた電子部品を冷却する冷却装置について有用である。
【符号の説明】
【0066】
10 太陽光発電システム
15 太陽電池パネル
20 パワーコンディショナ
21 電子部品
25 冷却装置
30 蓄熱器(蓄熱用部材)
32 潜熱蓄熱剤
35 ヒートシンク(放熱用部材)
40 ヒートパイプ
44 作動流体
45 断熱ケース(断熱用部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電システム用のパワーコンディショナ(20)に設けられた電子部品(21)を冷却するための冷却装置であって、
上記電子部品(21)と熱的に接続されて該電子部品(21)で生じた熱を蓄える蓄熱用部材(30)と、
上記蓄熱用部材(30)よりも上方に配置されて室外空気と接触する放熱用部材(35)と、
一端が上記蓄熱用部材(30)に、他端が上記放熱用部材(35)にそれぞれ熱的に接続され、内部に密封された作動流体(44)の相変化を利用して熱を搬送するヒートパイプ(40)とを備えている
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記放熱用部材(35)では、自然対流によって放熱が行われる
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記蓄熱用部材(30)は、凝固点が夜間の室外空気の温度よりも高い潜熱蓄熱剤(32)を備えている
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つにおいて、
上記電子部品(21)及び上記蓄熱用部材(30)を室外空気から断熱する断熱用部材(45)を備えている
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項5】
太陽光発電システム用のパワーコンディショナであって、
請求項1乃至4の何れか一つに記載の冷却装置(25)を備え、上記パワーコンディショナに設けられた電子部品(21)を上記冷却装置(25)によって冷却する
ことを特徴とするパワーコンディショナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−79858(P2012−79858A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222542(P2010−222542)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】