説明

冷却装置および圧縮空気除湿装置

【課題】高負荷状態においても圧縮機の焼損を招くことなく動作させて冷却対象体の冷却処理を継続し得る冷却装置を提供する。
【解決手段】コントローラ4が、温度センサ5による検出温度が予め規定された第1の温度に達したときに、配管P2a,P3aを相互に連結して配管P2a内を移動する冷媒の一部を配管P3a内に流入させる配管P4にキャピラリチューブ26と共に配設されている制御弁25bを制御して配管P3aに対する配管P2aからの冷媒の流入量を増加させる第1の処理を実行すると共に、温度センサ5による検出温度が第1の処理の実行中に第1の温度以上の第2の温度に達したときに、凝縮器22において凝縮させた冷媒を蒸発器24aに供給するための配管P2cに配設されている制御弁25aを制御して蒸発器24aに対する冷媒の供給量を減少させる第2の処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルにおける蒸発器で冷却対象体を冷却する冷却装置、およびそのような冷却装置を備えて冷却対象体としての圧縮空気を冷却して水分を結露させることによって除湿する圧縮空気除湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開平5−180517号公報には、加熱ヒータによる加熱処理、および冷凍機(蒸発器)による冷却処理によって試験室内の温度を一定温度に維持する恒温恒湿装置が開示されている。この場合、この種の装置に搭載されている冷凍機(冷凍サイクル)では、例えば、高負荷状態での連続運転に起因して圧縮機が過剰に高温となって焼損するのを回避するために、圧縮機が焼損を招く温度まで温度上昇する前にその動作を停止させる保護機構が設けられている。しかしながら、恒温恒湿装置の使用中に圧縮機が停止させられたときには、試験室内の温度を一定温度に維持することができなくなる。したがって、従来の恒温恒湿装置では、保護機構による圧縮機の動作停止を回避するために、圧縮機から吐出される冷媒の温度(すなわち、圧縮機の温度)が高温となったときに低温の冷媒を圧縮機に供給してその温度を低下させる構成が採用されている。
【0003】
具体的には、従来の恒温恒湿装置における冷凍サイクルは、凝縮器の冷媒吐出口および圧縮機の冷媒吸込口を結ぶバイパス回路と、圧縮機から吐出される冷媒(冷媒ガス)の温度を検出する吐出ガス温度センサ(以下、「温度センサ」ともいう)とを備えている。この恒温恒湿装置では、試験室内の温度を低下させるときに、恒温恒湿装置制御用マイクロコンピュータ(以下、「マイコン」ともいう)の制御に従って圧縮機が冷媒を圧送することにより、減圧装置(キャピラリチューブ)において減圧されることで温度低下させられた冷媒が蒸発器に供給される。この際には、蒸発器内の冷媒と試験室内の空気との間で熱交換が行われることにより、試験室内が冷却される。また、蒸発器において周囲の空気(試験室内の空気)と熱交換させられた冷媒は、圧縮機に吸入されて圧縮された後に、凝縮器において凝縮されることで液化して、減圧装置を介して再び蒸発器に供給される。これにより、試験室内が継続的に冷却される。
【0004】
一方、マイコンは、温度センサによって検出された冷媒の温度と、設定冷媒ガス温度とを比較すると共に、検出された冷媒の温度が設定冷媒ガス温度を大きく超えることのないように、バイパス回路に設けられている電子式比例制御弁を制御して、凝縮器の冷媒吐出口から圧縮機の冷媒吸込口に吸引させる冷媒の量を調整する。この場合、電子式比例制御弁が開口されている状態においては、凝縮器から蒸発器に向かって流動する冷媒の一部がバイパス回路に流れ込み、この冷媒が電子式比例制御弁を通過する際に減圧されることで温度低下させられた状態で圧縮機の冷媒吸込口に吸引される。したがって、必要に応じて電子式比例制御弁の開弁率を大きくしてバイパス回路を通過する冷媒の流量を増加させることにより、冷媒吸込口から吸引された低温の冷媒によって圧縮機が冷却される結果、圧縮機の過剰な温度上昇が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−180517号公報(第3−4頁、第1−4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来の恒温恒湿装置には、以下の解決すべき問題点が存在する。すなわち、従来の恒温恒湿装置では、バイパス回路を介して低温の冷媒を圧縮機に供給することで圧縮機の過剰な温度上昇を回避する構成が採用されている。しかしながら、気温が上昇する夏期等においては、冷却対象体の温度上昇に伴って圧縮機を高負荷状態で運転させる時間が長くなるため、圧縮機の温度が上昇する傾向がある。このような状態では、たとえバイパス回路を介して低温の冷媒を圧縮機に供給したとしても、圧縮機の温度(圧縮機から吐出される冷媒の温度)を好適に低下させるのが困難となり、保護機構が動作して圧縮機が停止させられてしまうおそれがある。
【0007】
また、圧縮空気を冷却して水分を結露させることで除湿する圧縮空気除湿装置や、工作機械等に冷却水を供給する温度調整装置等に従来の恒温恒湿装置における冷凍サイクルの構成を採用する場合には、圧縮空気や冷却水の供給対象である工作機械等が冷凍装置の周囲に設置されている環境下での使用が前提となる。したがって、気温が低下する冬期等であっても、工作機械等からの排熱によって周囲の温度が上昇している過酷な環境下で圧縮空気や冷却水を冷却しなくてはならないため、工作機械等が周囲に設置されていない環境下での使用と比較して、冷凍サイクルを高負荷状態で運転させる時間が長くなり、圧縮機の温度が上昇することとなる。このため、従来の恒温恒湿装置における冷凍サイクルの構成を圧縮空気除湿装置や温度調整装置等に採用した場合には、上記したように従来の恒温恒湿装置を夏期等に使用するときと同様にして、たとえバイパス回路を介して低温の冷媒を圧縮機に供給したとしても、圧縮機の温度(圧縮機から吐出される冷媒の温度)を好適に低下させるのが困難となり、保護機構が動作して圧縮機が停止させられてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、高負荷状態においても圧縮機の焼損を招くことなく動作させて冷却対象体の冷却処理を継続し得る冷却装置および圧縮空気除湿装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく請求項1記載の冷却装置は、圧縮機、凝縮器、第1の膨張弁および蒸発器を有する冷凍サイクルと、前記蒸発器内の冷媒および冷却対象体の間で熱交換させる熱交換器と、前記冷凍サイクルの動作を制御する制御部とを備えた冷却装置であって、前記冷凍サイクルは、前記凝縮器において凝縮させた冷媒を前記蒸発器に供給する第1の冷媒配管と、前記蒸発器において熱交換させられた冷媒を前記圧縮機の冷媒吸入口に案内する第2の冷媒配管と、前記第1の冷媒配管および前記第2の冷媒配管を相互に連結して当該第1の冷媒配管内を移動する前記冷媒の一部を当該第2の冷媒配管内に流入させる第3の冷媒配管と、前記第1の冷媒配管に配設されて前記蒸発器に対する前記冷媒の供給量を制御する第1の制御弁と、前記第3の冷媒配管に配設されて前記第2の冷媒配管に対する前記冷媒の流入量を制御する第2の制御弁と、当該第3の冷媒配管に配設された第2の膨張弁とを備え、前記制御部は、前記冷凍サイクルの高負荷状態に予め対応付けた第1の条件が満たされたときに、前記第2の制御弁を制御して前記第2の冷媒配管に対する前記第1の冷媒配管からの前記冷媒の流入量を増加させる第1の処理を実行すると共に、前記冷凍サイクルの高負荷状態に予め対応付けた第2の条件が前記第1の処理の実行中に満たされたときに、前記第1の制御弁を制御して前記蒸発器に対する前記冷媒の供給量を減少させる第2の処理を実行する。
【0010】
また、請求項2記載の冷却装置は、請求項1記載の冷却装置において、前記冷凍サイクルは、前記第1の冷媒配管における少なくとも前記蒸発器側の部位が複数に分岐されると共に、当該分岐された冷媒配管が当該蒸発器にそれぞれ接続され、かつ当該分岐された冷媒配管毎に前記第1の膨張弁としての第1の機械式膨張弁が配設されると共に、当該分岐された冷媒配管のうちの少なくとも1つの冷媒配管に前記第1の制御弁が配設されて構成されている。
【0011】
また、請求項3記載の冷却装置は、請求項1記載の冷却装置において、前記冷凍サイクルは、前記第1の膨張弁および前記第1の制御弁としての第1の電子膨張弁が前記第1の冷媒配管に配設されて構成されている。
【0012】
さらに、請求項4記載の冷却装置は、請求項1から3のいずれかに記載の冷却装置において、前記冷凍サイクルは、前記第2の膨張弁としての第2の機械式膨張弁が前記第3の冷媒配管に配設されて構成されている。
【0013】
さらに、請求項5記載の冷却装置は、請求項1から3のいずれかに記載の冷却装置において、前記冷凍サイクルは、前記第2の膨張弁および前記第2の制御弁としての第2の電子膨張弁が前記第3の冷媒配管に配設されて構成されている。
【0014】
また、請求項6記載の冷却装置は、請求項1から5のいずれかに記載の冷却装置において、前記圧縮機から吐出される前記冷媒の温度を検出する温度センサを備え、前記制御部は、前記温度センサによって検出された温度が予め規定された第1の温度に達したときに前記第1の条件が満たされたとして前記第1の処理を実行すると共に、当該第1の処理の実行中に当該温度センサによって検出された温度が前記第1の温度以上の予め規定された第2の温度に達したときに前記第2の条件が満たされたとして前記第2の処理を実行する。
【0015】
また、請求項7記載の冷却装置は、請求項1から5のいずれかに記載の冷却装置において、前記圧縮機から吐出される前記冷媒の吐出圧力を検出する圧力センサを備え、前記制御部は、前記圧力センサによって検出された吐出圧力が予め規定された第1の圧力に達したときに前記第1の条件が満たされたとして前記第1の処理を実行すると共に、当該第1の処理の実行中に当該圧力センサによって検出された吐出圧力が前記第1の圧力以上の予め規定された第2の圧力に達したときに前記第2の条件が満たされたとして前記第2の処理を実行する。
【0016】
また、請求項8記載の圧縮空気除湿装置は、請求項1から7のいずれかに記載の冷却装置を備えて、前記熱交換器が、導入口から導入された前記冷却対象体としての圧縮空気を前記蒸発器で冷却して当該圧縮空気内の水分を結露させることによって除湿して排出口から排出可能に構成されている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の冷却装置によれば、第2の制御弁を制御して第2の冷媒配管に対する冷媒の流入量を増加させる第1の処理の実行中に第2の条件が満たされたときに、第1の制御弁を制御して蒸発器に対する冷媒の供給量を減少させる第2の処理を実行することにより、第1の処理を実行しても圧縮機を好適に冷却することができない高負荷状態においても、第2の処理を実行することで、蒸発器から圧縮機に案内される高温の冷媒の量を減少させ、これに伴い、第1の冷媒配管から第3の冷媒配管を介して第2の冷媒配管に流入させる低温の冷媒の量を増加させることができるため、圧縮機に案内される冷媒の温度を十分に低下させることができる結果、圧縮機を好適に冷却することができる。このため、焼損を回避するために圧縮機を停止させずに済む結果、冷却対象体の冷却を継続することができる。
【0018】
請求項2記載の冷却装置によれば、第1の冷媒配管における蒸発器側の部位を分岐させた冷媒配管を蒸発器にそれぞれ接続し、かつ分岐させた冷媒配管毎に第1の膨張弁としての第1の機械式膨張弁を配設すると共に、分岐させた冷媒配管のうちの少なくとも1つの冷媒配管に第1の制御弁を配設したことにより、第1の機械式膨張弁および第1の制御弁の部品コストが、電子膨張弁よりも安価であるため、製造コストの高騰を招くことなく、高負荷状態においても冷却対象体の冷却を継続可能な冷却装置を提供することができる。
【0019】
請求項3記載の冷却装置によれば、第1の膨張弁および第1の制御弁としての第1の電子膨張弁を第1の冷媒配管に配設したことにより、機械式膨張弁と制御弁との組み合わせによって蒸発器に対する冷媒の供給量を変化させる構成とは異なり、第1の電子膨張弁の開口状態を多段階に変化させることで蒸発器に対する冷媒の供給量を多段階に変化させることができるため、蒸発器に対する冷媒の供給量を必要以上に増加させて、蒸発器の周囲に霜付きが生じる事態や、蒸発器の周囲に結露した水分が凍結する事態を招いたり、蒸発器に対する冷媒の供給量を必要以上に減少させて、冷却対象体の冷却効率の低下を招いたりするのを好適に回避することができる。
【0020】
請求項4記載の冷却装置によれば、第2の制御弁を配設した第3の冷媒配管に第2の膨張弁としての第2の機械式膨張弁を配設したことにより、第2の機械式膨張弁および第2の制御弁の部品コストが、電子膨張弁よりも安価であるため、製造コストの高騰を招くことなく、高負荷状態においても冷却対象体の冷却を継続可能な冷却装置を提供することができる。
【0021】
請求項5記載の冷却装置によれば、第2の膨張弁および第2の制御弁としての第2の電子膨張弁を第3の冷媒配管に配設したことにより、機械式膨張弁と制御弁との組み合わせによって第1の冷媒配管から第3の冷媒配管を介して第2の冷媒配管に流入させる冷媒量を変化させる構成とは異なり、第2の電子膨張弁の開口状態を多段階に変化させることで第2の冷媒配管に流入させる冷媒の量を多段階に変化させることができるため、第2の冷媒配管に流入させる冷媒の量を必要以上に増加させて冷却対象体の冷却効率の低下を招いたり、第2の冷媒配管に流入させる冷媒の量を必要以上に減少させることで保護機構が働いて圧縮機の動作停止を招いたりするのを好適に回避することができる。
【0022】
請求項6記載の冷却装置によれば、検出された温度が第1の温度に達したときに第1の処理を実行すると共に、検出された温度が第2の温度に達したときに第2の処理を実行することにより、圧縮機が過剰に温度上昇しているか否かを確実に判別することができるため、圧縮機を冷却する必要がないときに第1の処理や第2の処理を実行することで冷却対象体の冷却効率を不要に低下させたり、圧縮機を冷却する必要が生じているときに第1の処理や第2の処理を実行しないことで保護機構が働いて圧縮機が停止する事態を招いたりするのを確実に回避することができる。
【0023】
請求項7記載の冷却装置によれば、検出された吐出圧力が第1の圧力に達したときに第1の処理を実行すると共に、検出された吐出圧力が第2の圧力に達したときに第2の処理を実行することにより、圧縮機が過剰に温度上昇しているか否かを確実に判別することができるため、圧縮機を冷却する必要がないときに第1の処理や第2の処理を実行することで冷却対象体の冷却効率を不要に低下させたり、圧縮機を冷却する必要が生じているときに第1の処理や第2の処理を実行しないことで保護機構が働いて圧縮機が停止する事態を招いたりするのを確実に回避することができる。
【0024】
請求項8記載の圧縮空気除湿装置によれば、導入口から導入された冷却対象体としての圧縮空気を蒸発器で冷却して圧縮空気内の水分を結露させることによって除湿して排出口から排出可能な熱交換器を備えて構成したことにより、水分を含んだ(除湿を完了していない)圧縮空気が供給対象体に供給される事態を確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る圧縮空気除湿装置1Aの構成を示す構成図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る圧縮空気除湿装置1Bの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、冷却装置および圧縮空気除湿装置の実施の形態について説明する。
【0027】
図1に示す圧縮空気除湿装置1Aは、「冷却装置」の一例であって、図示しないエアーコンプレッサーから圧送される圧縮空気(「冷却対象体」の一例)を冷却することで除湿すると共に、除湿した圧縮空気を工作機械や医療機器などの各種の供給対象体に供給可能に構成されている。この圧縮空気除湿装置1Aは、冷凍サイクル2a、熱交換器3、コントローラ4および温度センサ5を備えて、これらが図示しない筐体内に収容されて構成されている。
【0028】
冷凍サイクル2aは、圧縮機21、凝縮器22、ファン22a、キャピラリチューブ23a,23b,26、蒸発器24aおよび制御弁25a,25bを備えると共に、これらが配管P1,P2a〜P2c,P3a〜P3c,P4によって相互に接続されている。また、本例の圧縮空気除湿装置1Aでは、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検出するために、上記の温度センサ5が配管P1(この例では、圧縮機21における冷媒吐出口の近傍)に配設されている。なお、実際の冷凍サイクル2aには、圧力センサ、アキュムレータおよびストレーナ等が設けられているが、冷凍サイクル2aの構成に関する理解を容易とするために、これらについての図示および説明を省略する。
【0029】
この場合、本例の冷凍サイクル2aでは、配管P2a〜P2cが「第1の冷媒配管」に相当し、配管P3a〜P3cが「第2の冷媒配管」に相当し、配管P4が「第3の冷媒配管」に相当し、配管P2b,P2cが「分岐された冷媒配管」に相当し、かつ、配管P2cが「分岐された冷媒配管のうちの少なくとも1つの冷媒配管」に相当する。また、本例の冷凍サイクル2aでは、キャピラリチューブ23a,23bが「第1の膨張弁としての第1の機械式膨張弁」に相当し、キャピラリチューブ26が「第2の膨張弁としての第2の機械式膨張弁」に相当し、制御弁25aが「第1の制御弁」に相当し、かつ、制御弁25bが「第2の制御弁」に相当する。
【0030】
熱交換器3は、導入口31および排出口32が設けられた箱体内に蒸発器24aが収容されて構成されている。また、熱交換器3における上記の箱体の底部には、圧縮空気を除湿することで生じたドレン水を排水するためのドレン排水口(図示せず)が設けられると共に、このドレン排水口には、ドレントラップや電磁弁等の開閉機構(図示せず)が取り付けられている。この熱交換器3は、エアーコンプレッサーによって圧縮されることで温度上昇した圧縮空気が導入口31から導入されたときに、蒸発器24a内の低温の冷媒と、導入された圧縮空気との間で熱交換させることで、箱体内において圧縮空気を除湿する(冷却することによって圧縮空気中の水分を結露させて排水する)と共に、除湿した圧縮空気を排出口32から排出して供給対象体に供給するように構成されている。
【0031】
コントローラ4は、「制御部」に相当し、圧縮空気除湿装置1Aを総括的に制御する。具体的には、コントローラ4は、圧縮機21を制御して必要量の冷媒を圧縮させると共に、ファン22aを制御して凝縮器22に向けて送風させる。また、コントローラ4は、後述するように、温度センサ5からのセンサ信号に基づいて圧縮機21から吐出される冷媒の温度を特定すると共に特定した温度に応じて制御弁25bを制御することにより、配管P2aから配管P3aへの配管P4を介しての冷媒の流入を許容または規制する。さらに、コントローラ4は、温度センサ5からのセンサ信号に基づいて特定した温度に応じて制御弁25aを制御することにより、蒸発器24aに対する配管P2cを介しての冷媒の供給を許容または規制する。また、コントローラ4は、温度センサ5からのセンサ信号に基づいて特定した温度が予め規定された圧縮機停止温度(一例として、115℃)に達したときに、圧縮機21の焼損を回避するために、圧縮機21の動作を停止させる保護機構として機能する。
【0032】
この圧縮空気除湿装置1Aによって圧縮空気を除湿する際には、コントローラ4が、圧縮機21を制御して冷媒の圧縮を開始させると共に、ファン22aを制御して送風を開始させる。この際に、この圧縮空気除湿装置1Aでは、常態(高負荷状態ではない通常の運転状態)において、制御弁25bが閉塞状態に制御されて配管P2aから配管P3aへの冷媒の流入が規制されると共に、制御弁25aが開放状態に制御されて配管P2cを介しての蒸発器24aへの冷媒の供給が許容されている。したがって、圧縮機21によって圧縮されて凝縮器22において凝縮された(液化された)冷媒は、配管P2aから配管P2b,P2cに流入し、キャピラリチューブ23a,23bを通過する際に減圧されることで温度低下させられて蒸発器24a内に供給される。
【0033】
この状態において、エアーコンプレッサーからの圧縮空気が導入口31から熱交換器3内に導入されると、この圧縮空気は、熱交換器3内において蒸発器24a内の低温の冷媒との間で熱交換させられることで冷却される。この際には、圧縮空気中に含まれている水分が結露水として除去される。また、水分を除去された(乾燥させられた)圧縮空気は、排出口32から排出されて供給対象体に供給され、除去された水分は、前述したドレン排水口から排水される。さらに、蒸発器24aにおいて圧縮空気との間で熱交換させられることで温度上昇した冷媒は、配管P3b,P3cおよび配管P3aを介して圧縮機21に案内されて圧縮機21によって圧縮された後に、凝縮器22において凝縮されることで液化して、配管P2a〜P2c(キャピラリチューブ23a,23b)を介して再び蒸発器24aに供給される。これにより、熱交換器3内に導入される圧縮空気が順次冷却されて除湿される。
【0034】
この場合、例えば、気温が上昇する夏期に圧縮空気を除湿するときや、工作機械等からの排熱によって周囲の空気が温度上昇するような環境下で圧縮空気を除湿するときには、凝縮器22において冷媒を十分に冷却することができないため、圧縮機21を高負荷状態で運転する時間が長くなる。この際には、圧縮されることで生じる冷媒の温度上昇や、圧縮機21自体の作動熱に起因して圧縮機21が温度上昇すると共に、圧縮機21から吐出される冷媒の温度が上昇する。したがって、この圧縮空気除湿装置1Aでは、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を温度センサ5によって検出し、この温度が、予め規定された規定温度(「第1の温度」:一例として、105℃)に達したときに、圧縮機21に案内される冷媒の温度を低下させることで圧縮機21を冷却する「第1の処理」を実行する構成が採用されている。
【0035】
具体的には、コントローラ4は、温度センサ5からのセンサ信号に基づいて圧縮機21から吐出されている温度が上記の規定温度に達したと判別したときに(「冷凍サイクルの高負荷状態に予め対応付けられた第1の条件が満たされたとき」の一例)、制御弁25bを開放状態に制御する。この際には、凝縮器22から蒸発器24aに向かって配管P2a内を流れている冷媒の一部が配管P4内に流入して、この冷媒がキャピラリチューブ26を通過する際に減圧されることで温度低下させられた状態で配管P3a内に流入する。この結果、蒸発器24a内において熱交換器3内の圧縮空気と熱交換させられて温度上昇させられた後に配管P3b,P3cを介して配管P3a内に流入した高温の冷媒と、配管P4から配管P3a内に流入した低温の冷媒とが混合された状態で圧縮機21の冷媒吸入口に案内される。
【0036】
これにより、蒸発器24aから排出された高温の冷媒だけが圧縮機21に案内されていたとき(制御弁25bが閉塞されていたとき)よりも、配管P4から配管P3a内に流入した低温の冷媒の分だけ、圧縮機21に案内される冷媒の温度が低下する結果、圧縮機21が冷却される。したがって、圧縮機21から吐出される冷媒の温度が前述した圧縮機停止温度まで上昇する事態(温度センサ5によって検出される温度が圧縮機停止温度まで上昇する事態)が回避される結果、圧縮機21(冷凍サイクル2a)が停止させられることなく継続的に動作させられて、圧縮空気の除湿処理が続行される。
【0037】
一方、例えば周囲温度が一層高いときには、上記のように制御弁25bを開放状態に制御して配管P4から配管P3a内に低温の冷媒を流入させたとしても、圧縮機21を好適に冷却するのが困難になることがある。したがって、この圧縮空気除湿装置1Aでは、上記の「第1の処理」を実行しているときに、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を温度センサ5によって検出し、この温度が、予め規定された規定温度(「第1の温度以上の第2の温度」:一例として、110℃)に達したときに、蒸発器24aに対する冷媒の供給量を減少させる「第2の処理」を実行する構成が採用されている。
【0038】
具体的には、コントローラ4は、上記の「第1の処理」の実行中に温度センサ5からのセンサ信号に基づいて圧縮機21から吐出されている温度が上記の規定温度に達したと判別したときに(「冷凍サイクルの高負荷状態に予め対応付けられた第2の条件が満たされたとき」の一例)、制御弁25aを閉塞状態に制御する。この際には、凝縮器22から蒸発器24aに向かって冷媒が流れていた配管P2cが遮断されるため、配管P2b(キャピラリチューブ23a)を通過した冷媒だけが蒸発器24aに供給されることとなる。この結果、配管P2b(キャピラリチューブ23a)を通過した冷媒、および配管P2c(キャピラリチューブ23b)を通過した冷媒の双方が蒸発器24aに供給されていたとき(制御弁25aが開放状態に制御されていたとき)よりも、蒸発器24aに対する冷媒の供給量が減少する。
【0039】
したがって、熱交換器3内における圧縮空気の冷却効率(除湿効率)はやや低下するものの、熱交換器3内において圧縮空気と熱交換させられることで温度上昇した高温の冷媒の蒸発器24aからの排出量、すなわち、高温の冷媒の圧縮機21に対する案内量が減少する。また、制御弁25aを閉塞して蒸発器24aへの冷媒の供給量を減少させたことにより、配管P2aから配管P4を介して配管P3a内に流入する低温の冷媒の量が増加する。
【0040】
これにより、配管P4を介して配管P3a内に流入する低温の冷媒の量に対する上記の高温の冷媒の量が減少する結果、配管P3aを介して圧縮機21の冷媒吸入口に案内される冷媒の温度が低下して圧縮機21が冷却される。したがって、圧縮機21から吐出される冷媒の温度が前述した圧縮機停止温度まで上昇する事態(温度センサ5によって検出される温度が圧縮機停止温度まで上昇する事態)が回避される結果、圧縮機21(冷凍サイクル2a)が停止させられることなく継続的に動作させられて、圧縮空気の除湿処理が続行される。
【0041】
なお、配管P2aを配管P2b,P2cの2つに分岐して蒸発器24aに接続すると共に、分岐された配管P2b,P2cの一方(本例では、配管P2c)に「第1の制御弁」としての制御弁25aを配設した本例とは相違するが、本例における配管P2aに相当する「冷媒配管」を3つ以上に分岐して「蒸発器」にそれぞれ接続すると共に、「分岐された各冷媒配管」のうちのいずれか1つを除く「冷媒配管」(「分岐された冷媒配管のうちの少なくとも1つの冷媒配管」の他の一例)に「第1の制御弁」をそれぞれ配設する構成を採用することもできる。このような構成を採用することにより、開放状態に制御する「第1の制御弁」の数を変更することで、「凝縮器」から「蒸発器」への冷媒の流入量を多段階に変化させることができる。
【0042】
このように、この圧縮空気除湿装置1Aによれば、制御弁25bを制御して配管P3aに対する冷媒の流入量を増加させる「第1の処理」の実行中に「第2の条件(この例では、温度センサ5による検出温度が110℃に達したとき)」が満たされたときに、制御弁25aを制御して蒸発器24aに対する冷媒の供給量を減少させる「第2の処理」を実行することにより、「第1の処理」を実行しても圧縮機21を好適に冷却することができない高負荷状態においても、「第2の処理」を実行することで、蒸発器24aから圧縮機21に案内される高温の冷媒の量を減少させ、これに伴い、配管P2aから配管P4を介して配管P3aに流入させる低温の冷媒の量を増加させることができるため、圧縮機21に案内される冷媒の温度を十分に低下させることができる結果、圧縮機21を好適に冷却することができる。このため、焼損を回避するために圧縮機21を停止させずに済む結果、圧縮空気の冷却(除湿)を継続することができる。
【0043】
また、この圧縮空気除湿装置1Aによれば、配管P2aにおける蒸発器24a側の部位を分岐させた配管P2b,P2cを蒸発器24aにそれぞれ接続し、かつ分岐させた配管P2b,P2c毎に「第1の膨張弁」としてのキャピラリチューブ23a,23bを配設すると共に、分岐させた配管P2b,P2cのうちの少なくとも1つ(この例では、配管P2c)に制御弁25aを配設したことにより、キャピラリチューブ23a,23bおよび制御弁25aの部品コストが、「電子膨張弁」よりも安価であるため、製造コストの高騰を招くことなく、高負荷状態においても圧縮空気の冷却(除湿)を継続可能な圧縮空気除湿装置1Aを提供することができる。
【0044】
さらに、この圧縮空気除湿装置1Aによれば、制御弁25bを配設した配管P4に「第2の膨張弁」としてのキャピラリチューブ26(第2の機械式膨張弁)を配設したことにより、キャピラリチューブ26および制御弁25bの部品コストが、「電子膨張弁」よりも安価であるため、製造コストの高騰を招くことなく、高負荷状態においても圧縮空気の冷却(除湿)を継続可能な圧縮空気除湿装置1Aを提供することができる。
【0045】
また、この圧縮空気除湿装置1Aによれば、温度センサ5によって検出された温度が「第1の温度(この例では、105℃)」に達したときに「第1の処理」を実行すると共に、温度センサ5によって検出された温度が「第2の温度(この例では、110℃)」に達したときに「第2の処理」を実行することにより、圧縮機21が過剰に温度上昇しているか否かを確実に判別することができるため、圧縮機21を冷却する必要がないときに「第1の処理」や「第2の処理」を実行することで圧縮空気の冷却効率(除湿効率)を不要に低下させたり、圧縮機21を冷却する必要が生じているときに「第1の処理」や「第2の処理」を実行しないことで保護機構が働いて圧縮機21が停止する事態を招いたりするのを確実に回避することができる。
【0046】
また、この圧縮空気除湿装置1Aによれば、導入口31から導入された「冷却対象体」としての圧縮空気を蒸発器24aで冷却して圧縮空気内の水分を結露させることによって除湿して排出口32から排出可能な熱交換器3を備えて構成したことにより、水分を含んだ(除湿を完了していない)圧縮空気が供給対象体に供給される事態を確実に回避することができる。
【0047】
次に、冷却装置および圧縮空気除湿装置の他の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、上記の圧縮空気除湿装置1Aと同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0048】
図2に示す圧縮空気除湿装置1Bは、「冷却装置」の他の一例であって、前述した圧縮空気除湿装置1Aと同様にして、図示しないエアーコンプレッサーから圧送される圧縮空気(「冷却対象体」の一例)を冷却することで除湿すると共に、除湿した圧縮空気を各種の供給対象体に供給可能に構成されている。この圧縮空気除湿装置1Bは、圧縮空気除湿装置1Aにおける冷凍サイクル2aに代えて冷凍サイクル2bを備えると共に、温度センサ5に代えて圧力センサ6を備えて構成されている。
【0049】
冷凍サイクル2bは、圧縮機21、凝縮器22、ファン22a、電子膨張弁23c,27および蒸発器24bを備えると共に、これらが配管P1〜P4によって相互に接続されている。また、本例の圧縮空気除湿装置1Bでは、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力(吐出圧力)を検出するために、上記の圧力センサ6が配管P1(この例では、圧縮機21における冷媒吐出口の近傍)に配設されている。なお、実際の冷凍サイクル2bには、温度センサ、アキュムレータおよびストレーナ等が設けられているが、冷凍サイクル2bの構成に関する理解を容易とするために、これらについての図示および説明を省略する。
【0050】
この場合、本例の冷凍サイクル2bでは、配管P2が「第1の冷媒配管」に相当し、配管P3が「第2の冷媒配管」に相当し、かつ配管P4が「第3の冷媒配管」に相当する。また、本例の冷凍サイクル2bでは、電子膨張弁23cが「第1の膨張弁および第1の制御弁としての第1の電子膨張弁」に相当し、かつ電子膨張弁27が「第2の膨張弁および第2の制御弁としての第2の電子膨張弁」に相当する。また、本例の圧縮空気除湿装置1Bでは、前述した圧縮空気除湿装置1Aの熱交換器3における蒸発器24aに代えて蒸発器24bが熱交換器3内に収容されている。
【0051】
また、本例のコントローラ4は、後述するように、圧力センサ6からのセンサ信号に基づいて圧縮機21から吐出される冷媒の圧力(吐出圧力)を特定すると共に、特定した圧力に応じて電子膨張弁27を制御することにより、配管P2から配管P3への配管P4を介しての冷媒の流入を増加または減少させる。さらに、本例のコントローラ4は、圧力センサ6からのセンサ信号に基づいて特定した圧力に応じて電子膨張弁23cを制御することにより、蒸発器24bに対する配管P2を介しての冷媒の供給量を増加または減少させる。また、コントローラ4は、圧力センサ6からのセンサ信号に基づいて特定した圧力が予め規定された圧縮機停止圧力(一例として、4.0MPa)に達したときに、圧縮機21の焼損を回避するために、圧縮機21の動作を停止させる保護機構として機能する。
【0052】
この圧縮空気除湿装置1Bによって圧縮空気を除湿する際には、コントローラ4が、圧縮機21を制御して冷媒の圧縮を開始させると共に、ファン22aを制御して送風を開始させる。この際に、この圧縮空気除湿装置1Bでは、常態(高負荷状態ではない通常の運転状態)において、電子膨張弁27が最小開口状態(最も絞った状態、または、閉塞状態)に制御されて配管P2から配管P4を介しての配管P3への冷媒の流入量が十分に減少させられる(または、配管P2から配管P4を介しての配管P3への冷媒の流入が阻止される)と共に、電子膨張弁23cが必要量の冷媒を吐出可能な開口状態に制御されて配管P2を介しての蒸発器24bへの冷媒の供給が許容されている。したがって、圧縮機21によって圧縮されて凝縮器22において凝縮された(液化された)冷媒は、配管P2を移動して電子膨張弁23cを通過する際に減圧されることで温度低下させられて蒸発器24b内に供給される。
【0053】
この状態において、エアーコンプレッサーからの圧縮空気が導入口31から熱交換器3内に導入されることにより、この圧縮空気が蒸発器24bによって冷却されて除湿された後に、排出口32から供給対象体に供給される。また、蒸発器24bにおいて圧縮空気との間で熱交換させられることで温度上昇した冷媒は、配管P3を介して圧縮機21に案内されて圧縮機21によって圧縮された後に、凝縮器22において凝縮されることで液化して、配管P2(電子膨張弁23c)を介して再び蒸発器24bに供給される。これにより、熱交換器3内に導入される圧縮空気が順次冷却されて除湿される。
【0054】
この場合、圧縮機21を高負荷状態で連続運転したときには、圧縮されることで生じる冷媒の温度上昇や、圧縮機21自体の作動熱に起因して圧縮機21が温度上昇すると共に、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力が上昇する。したがって、この圧縮空気除湿装置1Bでは、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力を圧力センサ6によって検出し、この圧力が、予め規定された規定圧力(「第1の圧力」:一例として、3.7MPa)に達したときに、圧縮機21に案内される冷媒の温度を低下させることで圧縮機21を冷却する「第1の処理」を実行する構成が採用されている。
【0055】
具体的には、コントローラ4は、圧力センサ6からのセンサ信号に基づいて圧縮機21から吐出されている圧力が上記の規定圧力に達したと判別したときに(「冷凍サイクルの高負荷状態に予め対応付けられた第1の条件が満たされたとき」の他の一例)、電子膨張弁27を最小開口状態よりも大きな開口状態に制御する。この際には、凝縮器22から蒸発器24bに向かって配管P2内を流れている冷媒の配管P4内への流入量が増加し、この冷媒が電子膨張弁27を通過する際に減圧されることで温度低下させられた状態で配管P3内に流入する。この結果、蒸発器24b内において熱交換器3内の圧縮空気と熱交換させられて温度上昇させられた後に配管P3内に流入した高温の冷媒と、配管P4から配管P3内に流入した低温の冷媒とが混合された状態で圧縮機21の冷媒吸入口に案内される。
【0056】
これにより、主として蒸発器24bから排出された高温の冷媒が圧縮機21に案内されていたとき(電子膨張弁27が最小開口状態に制御されていたとき)よりも、配管P4から配管P3内に流入した低温の冷媒の分だけ、圧縮機21に案内される冷媒の温度が低下する結果、圧縮機21が冷却される。したがって、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力が前述した圧縮機停止圧力まで上昇する事態(圧力センサ6によって検出される圧力が圧縮機停止圧力まで上昇する事態)が回避される結果、圧縮機21(冷凍サイクル2b)が停止させられることなく継続的に動作させられて、圧縮空気の除湿処理が続行される。
【0057】
一方、例えば周囲温度が一層高いときには、上記のように電子膨張弁27を大きな開口状態に制御して配管P4から配管P3内に低温の冷媒を流入させたとしても、圧縮機21を好適に冷却するのが困難になることがある。したがって、この圧縮空気除湿装置1Bでは、上記の「第1の処理」を実行しているときに、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力を圧力センサ6によって検出し、この圧力が、予め規定された規定圧力(「第1の圧力以上の第2の圧力」:一例として、3.9MPa)に達したときに、蒸発器24bに対する冷媒の供給量を減少させる「第2の処理」を実行する構成が採用されている。
【0058】
具体的には、コントローラ4は、上記の「第1の処理」の実行中に圧力センサ6からのセンサ信号に基づいて圧縮機21から吐出されている圧力が上記の規定圧力に達したと判別したときに(「冷凍サイクルの高負荷状態に予め対応付けられた第2の条件が満たされたとき」の他の一例)、電子膨張弁23cを常態よりも小さな開口状態に制御する(電子膨張弁23cを絞る)。この際には、電子膨張弁23cを通過する冷媒の量が減少する結果、蒸発器24bに対する冷媒の供給量が減少する。
【0059】
したがって、熱交換器3内における圧縮空気の冷却効率(除湿効率)はやや低下するものの、熱交換器3内において圧縮空気と熱交換させられることで温度上昇した高温の冷媒の蒸発器24bからの排出量、すなわち、高温の冷媒の圧縮機21に対する案内量が減少する。また、電子膨張弁23cを小さな開口状態に制御して蒸発器24bへの冷媒の供給量を減少させたことにより、配管P2から配管P4を介して配管P3内に流入する低温の冷媒の量が増加する。
【0060】
これにより、配管P4を介して配管P3内に流入する低温の冷媒の量に対する上記の高温の冷媒の量が減少する結果、配管P3を介して圧縮機21の冷媒吸入口に案内される冷媒の温度が低下して圧縮機21が冷却される。したがって、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力が前述した圧縮機停止圧力まで上昇する事態(圧力センサ6によって検出される圧力が圧縮機停止圧力まで上昇する事態)が回避される結果、圧縮機21(冷凍サイクル2b)が停止させられることなく継続的に動作させられて、圧縮空気の除湿処理が続行される。
【0061】
このように、この圧縮空気除湿装置1Bによれば、電子膨張弁27を制御して配管P3に対する冷媒の流入量を増加させる「第1の処理」の実行中に「第2の条件(圧力センサ6による検出圧力が3.9MPaに達したとき)」が満たされたときに、電子膨張弁23cを制御して蒸発器24bに対する冷媒の供給量を減少させる「第2の処理」を実行することにより、「第1の処理」を実行しても圧縮機21を好適に冷却することができない高負荷状態においても、「第2の処理」を実行することで、蒸発器24bから圧縮機21に案内される高温の冷媒の量を減少させ、これに伴い、配管P2から配管P4を介して配管P3に流入させる低温の冷媒の量を増加させることができるため、圧縮機21に案内される冷媒の温度を十分に低下させることができる結果、圧縮機21を好適に冷却することができる。このため、焼損を回避するために圧縮機21を停止させずに済む結果、圧縮空気の冷却(除湿)を継続することができる。
【0062】
また、この圧縮空気除湿装置1Bによれば、「第1の膨張弁」および「第1の制御弁」としての電子膨張弁23cを配管P2に配設したことにより、「機械式膨張弁」と「制御弁」との組み合わせによって蒸発器24bに対する冷媒の供給量を変化させる構成とは異なり、電子膨張弁23cの開口状態を多段階に変化させることで蒸発器24bに対する冷媒の供給量を多段階に変化させることができるため、蒸発器24bに対する冷媒の供給量を必要以上に増加させて、蒸発器24bの周囲に霜付きが生じる事態や、蒸発器24bの周囲に結露した水分が凍結する事態を招いたり、蒸発器24bに対する冷媒の供給量を必要以上に減少させて、圧縮空気の冷却効率(除湿効率)の低下を招いたりするのを好適に回避することができる。
【0063】
さらに、この圧縮空気除湿装置1Bによれば、「第2の膨張弁」および「第2の制御弁」としての電子膨張弁27を配管P4に配設したことにより、「機械式膨張弁」と「制御弁」との組み合わせによって配管P2から配管P4を介して配管P3に流入させる冷媒量を変化させる構成とは異なり、電子膨張弁27の開口状態を多段階に変化させることで配管P3に流入させる冷媒の量を多段階に変化させることができるため、配管P3に流入させる冷媒の量を必要以上に増加させて圧縮空気の冷却効率(除湿効率)の低下を招いたり、配管P3に流入させる冷媒の量を必要以上に減少させることで保護機構が働いて圧縮機21の動作停止を招いたりするのを好適に回避することができる。
【0064】
また、この圧縮空気除湿装置1Bによれば、圧力センサ6によって検出された圧力が「第1の圧力(この例では、3.7MPa)」に達したときに「第1の処理」を実行すると共に、圧力センサ6によって検出された圧力が「第2の圧力(この例では、3.9MPa)」に達したときに「第2の処理」を実行することにより、圧縮機21が過剰に温度上昇しているか否かを確実に判別することができるため、圧縮機21を冷却する必要がないときに「第1の処理」や「第2の処理」を実行することで圧縮空気の冷却効率(除湿効率)を不要に低下させたり、圧縮機21を冷却する必要が生じているときに「第1の処理」や「第2の処理」を実行しないことで保護機構が働いて圧縮機21が停止する事態を招いたりするのを確実に回避することができる。
【0065】
また、この圧縮空気除湿装置1Bによれば、導入口31から導入された「冷却対象体」としての圧縮空気を蒸発器24bで冷却して圧縮空気内の水分を結露させることによって除湿して排出口32から排出可能な熱交換器3を備えて構成したことにより、前述した圧縮空気除湿装置1Aと同様にして、水分を含んだ(除湿を完了していない)圧縮空気が供給対象体に供給される事態を確実に回避することができる。
【0066】
なお、「冷却装置」および「圧縮空気除湿装置」の構成は、上記の圧縮空気除湿装置1A,1Bの構成に限定されるものではない。例えば、圧縮空気除湿装置1Aにおける制御弁25bおよびキャピラリチューブ26に代えて、圧縮空気除湿装置1Bにおける電子膨張弁27を配管P4に配設したり、圧縮空気除湿装置1Bにおける電子膨張弁27に代えて、圧縮空気除湿装置1Aにおける制御弁25bおよびキャピラリチューブ26を配管P4に配設したりすることもできる。また、圧縮空気除湿装置1Aにおける温度センサ5に代えて圧力センサ6を配設したり、圧縮空気除湿装置1Bにおける圧力センサ6に代えて温度センサ5を配設したりすることもできる。このような構成を採用した圧縮空気除湿装置においても、上記の圧縮空気除湿装置1A,1Bと同様の効果を奏することができる。
【0067】
さらに、「冷凍サイクルの高負荷状態に予め対応付けられた第1の条件」や、「冷凍サイクルの高負荷状態に予め対応付けられた第2の条件」は、「圧縮機21から吐出される冷媒の温度が規定温度に達したとき」や、「圧縮機21から吐出される冷媒の圧力(吐出圧力)が規定圧力に達したとき」との上記の例示に限定されない。例えば、「圧縮機21自体の温度が規定温度に達したとき」や、「圧縮機21の周囲の温度(周囲の空気の温度)が規定温度に達したとき」などの各種の条件を「第1の条件」および「第2の条件」とすることができる。
【0068】
加えて、「冷却装置」を圧縮空気除湿装置1A,1Bに適用した例について説明したが、供給対象体に対して予め規定された規定温度に温度調整した液体(水等)や気体(空気等)を供給する「温調装置」などにおいても、その「冷凍サイクル」に上記の圧縮空気除湿装置1A,1Bにおける冷凍サイクル2a,2b等の構成を採用することで、圧縮空気除湿装置1A,1Bと同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0069】
1A,1B 圧縮空気除湿装置
2a,2b 冷凍サイクル
3 熱交換器
4 コントローラ
5 温度センサ
6 圧力センサ
21 圧縮機
22 凝縮器
23a,23b,26 キャピラリチューブ
23c,27 電子膨張弁
24a,24b 蒸発器
25a,25b 制御弁
P1,P2,P2a〜P2c,P3,P3a〜P3c,P4 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、第1の膨張弁および蒸発器を有する冷凍サイクルと、前記蒸発器内の冷媒および冷却対象体の間で熱交換させる熱交換器と、前記冷凍サイクルの動作を制御する制御部とを備えた冷却装置であって、
前記冷凍サイクルは、前記凝縮器において凝縮させた冷媒を前記蒸発器に供給する第1の冷媒配管と、前記蒸発器において熱交換させられた冷媒を前記圧縮機の冷媒吸入口に案内する第2の冷媒配管と、前記第1の冷媒配管および前記第2の冷媒配管を相互に連結して当該第1の冷媒配管内を移動する前記冷媒の一部を当該第2の冷媒配管内に流入させる第3の冷媒配管と、前記第1の冷媒配管に配設されて前記蒸発器に対する前記冷媒の供給量を制御する第1の制御弁と、前記第3の冷媒配管に配設されて前記第2の冷媒配管に対する前記冷媒の流入量を制御する第2の制御弁と、当該第3の冷媒配管に配設された第2の膨張弁とを備え、
前記制御部は、前記冷凍サイクルの高負荷状態に予め対応付けた第1の条件が満たされたときに、前記第2の制御弁を制御して前記第2の冷媒配管に対する前記第1の冷媒配管からの前記冷媒の流入量を増加させる第1の処理を実行すると共に、前記冷凍サイクルの高負荷状態に予め対応付けた第2の条件が前記第1の処理の実行中に満たされたときに、前記第1の制御弁を制御して前記蒸発器に対する前記冷媒の供給量を減少させる第2の処理を実行する冷却装置。
【請求項2】
前記冷凍サイクルは、前記第1の冷媒配管における少なくとも前記蒸発器側の部位が複数に分岐されると共に、当該分岐された冷媒配管が当該蒸発器にそれぞれ接続され、かつ当該分岐された冷媒配管毎に前記第1の膨張弁としての第1の機械式膨張弁が配設されると共に、当該分岐された冷媒配管のうちの少なくとも1つの冷媒配管に前記第1の制御弁が配設されて構成されている請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷凍サイクルは、前記第1の膨張弁および前記第1の制御弁としての第1の電子膨張弁が前記第1の冷媒配管に配設されて構成されている請求項1記載の冷却装置。
【請求項4】
前記冷凍サイクルは、前記第2の膨張弁としての第2の機械式膨張弁が前記第3の冷媒配管に配設されて構成されている請求項1から3のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項5】
前記冷凍サイクルは、前記第2の膨張弁および前記第2の制御弁としての第2の電子膨張弁が前記第3の冷媒配管に配設されて構成されている請求項1から3のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項6】
前記圧縮機から吐出される前記冷媒の温度を検出する温度センサを備え、
前記制御部は、前記温度センサによって検出された温度が予め規定された第1の温度に達したときに前記第1の条件が満たされたとして前記第1の処理を実行すると共に、当該第1の処理の実行中に当該温度センサによって検出された温度が前記第1の温度以上の予め規定された第2の温度に達したときに前記第2の条件が満たされたとして前記第2の処理を実行する請求項1から5のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項7】
前記圧縮機から吐出される前記冷媒の吐出圧力を検出する圧力センサを備え、
前記制御部は、前記圧力センサによって検出された吐出圧力が予め規定された第1の圧力に達したときに前記第1の条件が満たされたとして前記第1の処理を実行すると共に、当該第1の処理の実行中に当該圧力センサによって検出された吐出圧力が前記第1の圧力以上の予め規定された第2の圧力に達したときに前記第2の条件が満たされたとして前記第2の処理を実行する請求項1から5のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の冷却装置を備えて、前記熱交換器が、導入口から導入された前記冷却対象体としての圧縮空気を前記蒸発器で冷却して当該圧縮空気内の水分を結露させることによって除湿して排出口から排出可能に構成されている圧縮空気除湿装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−113462(P2013−113462A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258408(P2011−258408)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】