説明

冷却装置

【課題】蓄電池2の周囲に最適な通気路を形成することにより、少ない排気ファン5で多数の蓄電池2を効果的に冷却することができる蓄電池の冷却装置を提供する。
【解決手段】多数の蓄電池2を支持した蓄電池支持材3を上下に3段配置し、各蓄電池支持材3の下方に吸気口1aに繋がる吸気誘導ダクト7を設けると共に、各吸気誘導ダクト7内の前後に前方ほど開口率の大きい3枚の誘導羽根8を配置し、各蓄電池支持材3の上方から排気口1bに至る排気誘導ダクト9を設け、この排気口1bに排気ファン5を配置した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば配電盤の内部に収納した多数の蓄電池等を冷却するための冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば配電盤には、無停電電源装置等として用いるために、多数の蓄電池を内部に収納する場合がある。また、この蓄電池として、容量密度が高く大電流充放電特性を有する非水電解質二次電池を用いる場合もある。ただし、これらの多数の蓄電池は、充放電時に大量の熱を放出するので、この熱を外部に排出して蓄電池を冷却する必要があり、特に大電流充放電特性を有する非水電解質二次電池を用いる場合には、この蓄電池の放熱量が大きいので、冷却を効果的に行わなければならない。また、高性能な電子演算処理装置等も、同様に効果的な冷却が求められる。
【0003】
図5に屋外に設置する配電盤1の内部に収納した多数の蓄電池2の従来の冷却装置の一例を示す。蓄電池2は、非水電解質二次電池を用いた場合を示す。この蓄電池2は、図示しない枠体によって前後に複数個(図5では6個)、左右に複数列、間隔をあけて蓄電池支持材3に支持されている。配電盤1の内部には、このような蓄電池支持材3が上下に複数段(図5では3段)間隔をあけて配置されている。また、各段の蓄電池支持材3の下方には、当該蓄電池支持材3との間に十分な隙間をあけると共に、下段に別の蓄電池支持材3がある場合には、この下段の蓄電池支持材3の上方にも十分な間隔をあけて、遮蔽板4が配置されている。
【0004】
上記配電盤1には、前方の前面板における内部の各蓄電池支持材3の下方部分にそれぞれ吸気口1aが形成されると共に、上方の天井板における後方部分に排気口1bが形成されている。また、この排気口1bには、排気ファン5が取り付けられて、配電盤1の内部の空気を外部に排出するようになっている。
【0005】
上記各段の蓄電池支持材3の下には、多数の小型の送風ファン6が取り付けられている。これらの送風ファン6は、蓄電池支持材3における各列の蓄電池2の間の隙間の下方にそれぞれ配置され、蓄電池支持材3とその下方の遮蔽板4との間の空気を、この蓄電池支持材3に支持された蓄電池2の間を通して上方に送るようになっている。
【0006】
従って、従来の蓄電池2の冷却装置は、排気ファン5と送風ファン6を作動させることにより、外部の空気を配電盤1の各吸気口1aから内部の各蓄電池支持材3とその下方の遮蔽板4との間に取り込み(矢印A)、この各蓄電池支持材3とその下方の遮蔽板4との間の空気を各蓄電池2の間を通して蓄電池支持材3の上方に送り(矢印B)、これら各蓄電池支持材3の上方の空気を配電盤1の内部後方から上方の排気口1bを通じて外部に排出することができる(矢印C)。そして、このときの各蓄電池支持材3の蓄電池2の間の隙間を流れる冷却風によって、各蓄電池2を冷却することになる。
【0007】
ここで、排気ファン5や送風ファン6は、モータで送風扇を回転させる可動部を有する機器であるため、可動部を持たない機器に比べて故障がある程度多くなり寿命も比較的短くなる。ところが、従来の冷却装置では、送風ファン6が各蓄電池支持材3に蓄電池2の個数に応じて極めて多数取り付けられるので、個々の送風ファン6の故障率はそれほど高くなくても、冷却装置全体の故障率は非常に高くなり、保守作業を頻繁に行う必要があるという問題があった。また、このように極めて多数の送風ファン6が用いられると、これらの送風ファン6の寿命が尽きる前の交換作業を行う際に、作業の手間が非常に大きくなり、保守作業が面倒になるという問題もあった。
【0008】
なお、従来、各蓄電池支持材3の下に多数の送風ファン6を取り付けていたのは、排気ファン5だけを用いたのでは、配電盤1の内部における吸気口1aから排気口1bに至る流体抵抗の最も小さい最短経路(例えば破線矢印D)を空気が流れるので、各蓄電池支持材3に十分な冷却風が流れずに蓄電池2の冷却が不十分になったり、この蓄電池支持材3の一部にのみ冷却風が流れて蓄電池2の温度にばらつきが生じることを防ぐためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、蓄電池等の被冷却物の周囲に最適な通気路を形成することにより、少ない送風機で複数の被冷却物を効果的に冷却することができる冷却装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の冷却装置は、被冷却物を前後に2個以上、左右に1列以上、間隔をあけ、かつ当該間隔を経て上下に通気可能に支持し得る被冷却物支持材を1段又は間隔をあけて上下に2段以上配置し、少なくとも1段の前記被冷却物支持材に、この被冷却物支持材の前方に開口された吸気口からこの被冷却物支持材の下に至る通気路を形成する吸気誘導ダクトを設けると共に、前記吸気誘導ダクト内に、当該被冷却物支持材の下から下方に向けて突出する誘導羽根であって、前方ほど通気路の前後方向の遮蔽面積が小さいものを前後に間隔をあけて2枚以上配置し、前記被冷却物支持材の上方の空間からこの被冷却物支持材の後方に開口された排気口に至る通気路を形成する排気誘導ダクトを設け、前記吸気口又は前記排気口の少なくともいずれか一方に送風機を配置したことを特徴とする。
【0011】
請求項2の冷却装置は、蓄電池を前後に2個以上、左右に1列以上、間隔をあけ、かつ当該間隔を経て上下に通気可能に支持した蓄電池支持材を1段又は間隔をあけて上下に2段以上配置し、少なくとも1段の前記蓄電池支持材に、当該蓄電池支持材の下方の空間を囲んで、この蓄電池支持材の前方下方に開口された吸気口からこの蓄電池支持材の下に至る通気路を形成する吸気誘導ダクトを設けると共に、前記吸気誘導ダクト内に、当該蓄電池支持材の下から下方に向けて突出する誘導羽根であって、前方ほど通気路の前後方向の遮蔽面積が小さいものを前後に間隔を開けて2枚以上配置し、前記蓄電池支持材の上方の空間を囲み、この蓄電池支持材の上方の空間から最上段の蓄電池支持材の後方上方に開口された排気口に至る通気路を形成する排気誘導ダクトを設け、前記吸気口又は前記排気口の少なくともいずれかに送風機を配置したことを特徴とする。
【0012】
請求項3の冷却装置は、前記各誘導羽根が3枚以上配置され、これらの各誘導羽根が、当該被冷却物支持材の下から同じ長さで下方に向けて突出する板材であって、最後方の板材には通気孔が開口されず、他の板材には前方ほど開口率の大きい通気孔が開口されることにより、前方ほど通気路の前後方向の遮蔽面積を小さくしたものであることを特徴とする。
【0013】
請求項4の冷却装置は、前記3枚以上の誘導羽根が、上下の長さが同じで、最後方のものを除き、前方ほど左右の幅が広い矩形の通気孔が同数ずつ開口されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5の冷却装置は、前記被冷却物支持材に、左右の側方又は後方に開口された補助吸気口から当該被冷却物支持材の吸気誘導ダクト内の前方部に通じる通気路を形成する吸気導入パイプを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、送風機を作動させることにより、各被冷却物支持材の前方の吸気口から吸気誘導ダクトに導入した空気が当該被冷却物支持材を下方から上方に通り抜け、排気誘導ダクトを介して被冷却物支持材の後方の排気口から排出されるので、複数の被冷却物を支持する各被冷却物支持材に確実に冷却風を通すことができる。しかも、各吸気誘導ダクトには、前方ほど通気路の前後方向の遮蔽面積が小さい誘導羽根が前後に2枚以上配置されるので、この吸気誘導ダクトを前方から後方に向かって流れる冷却風を前方の誘導羽根から順に適宜量ずつ上方に誘導し、当該被冷却物支持材に支持された前後の複数の被冷却物の各隙間に(場合によっては両端の被冷却物の外側の空間にも)適度に分散させることができる。従って、数の少ない送風機を作動させるだけで、各被冷却物支持材の各被冷却物の周囲に確実に冷却風を流して効果的に冷却することができるので、故障や寿命による交換の保守作業の対象となる送風機の数を大幅に削減することができる。特に、吸気口や排気口に設けた送風機のみで十分な冷却効果が得られので、保守作業もこの送風機に対して行えば良く、作業の手間が軽減できる。
【0016】
請求項2の発明によれば、送風機を作動させることにより、蓄電池支持材の前方下方の吸気口から吸気誘導ダクトに導入した空気が当該蓄電池支持材を下方から上方に通り抜け、排気誘導ダクトを介して最上段の蓄電池支持材の後方上方の排気口から排出されるので、複数の蓄電池を支持する各蓄電池支持材に確実に冷却風を通すことができる。しかも、各吸気誘導ダクトには、前方ほど通気路の前後方向の遮蔽面積が小さい誘導羽根が前後に2枚以上配置されるので、この吸気誘導ダクトを前方から後方に向かって流れる冷却風を前方の誘導羽根から順に適宜量ずつ上方に誘導し、当該蓄電池支持材に支持された前後の複数の蓄電池の各隙間に(場合によっては両端の蓄電池の外側の空間にも)適度に分散させることができる。従って、数の少ない送風機を作動させるだけで、各蓄電池支持材の各蓄電池の周囲に確実に冷却風を流して効果的に冷却することができるので、故障や寿命による交換の保守作業の対象となる送風機の数を大幅に削減することができる。特に、吸気口や排気口に設けた送風機のみで十分な冷却効果が得られので、保守作業もこの送風機に対して行えば良く、作業の手間が軽減できる。
【0017】
請求項3の発明によれば、板材からなる誘導羽根に開口された通気孔の開口率が前方ほど大きくなるので、吸気誘導ダクトを前方から後方に向かって流れる冷却風を前方の誘導羽根から順に最適な量ずつ上方の被冷却物支持材に誘導することが容易に可能になる。
【0018】
請求項4の発明によれば、誘導羽根の通気孔を矩形とし前方ほど幅を広くしているので、この通気孔の開口率を容易に最適に定めることができる。
【0019】
なお、前記各誘導羽根は、下方を斜め前方に向けて水平面に対し53°傾斜させて突出していることが好ましい。このようにすれば、誘導羽根の傾斜角度が最適化されることにより、吸気誘導ダクトを流れる冷却風を効果的に上方に誘導することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、前方の吸気口からだけでなく、側方や後方の補助吸気口から吸気導入パイプを介して吸気誘導ダクトに空気を導入することができるので、被冷却物支持材に通す冷却風を増量してより効果的に冷却することができる。
【0021】
なお、前記蓄電池は、非水電解質二次電池である場合に最も効果的である。他の電池に比べ、非水電解質二次電池は、充放電の際の発熱量が大きいからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の最良の実施形態について図1〜図4を参照して説明する。なお、これらの図においても、図5に示した従来例と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記する。
【0023】
本実施形態は、図1に示すように、屋外に設置する配電盤1の内部に収納した多数の蓄電池2を冷却するための蓄電池の冷却装置について説明する。また、蓄電池2は、非水電解質二次電池を用いた場合を示す。
【0024】
配電盤1は、図2に示すように、蓄電池2や配電用の各種機器を金属板からなる矩形の箱体によって囲んだものである。この配電盤1は、前方の前面板が左右2枚の開き戸になっていて、これら左右2枚の前面板の上下3段にそれぞれ吸気口1aが形成されている。また、後方の背面板にも、上下3段に左右2箇所ずつ補助吸気口1cが形成されている。さらに、上方の天井板の後方部分の左右2箇所には、排気口1bが形成されている。これらの吸気口1aと補助吸気口1cには、開口率10%の網状の通気ギャラリや風雨を避けるための図示しないフードが取り付けられ、排気口1bには、図示しないフードが取り付けられる。
【0025】
上記配電盤1の天井板における左右の排気口1bには、図1に示すように、それぞれ排気ファン5が取り付けられている。排気ファン5は、モータで送風扇を回転させることにより、配電盤1の内部の空気を排気口1bを通して外部に排出する送風機であり、これによって吸気口1aや補助吸気口1cから配電盤1の内部に導入した空気を再び外部に排出することができる。
【0026】
上記配電盤1の内部には、多数の蓄電池2が上下3段の蓄電池支持材3に支持されて収納されている。各段の蓄電池支持材3は、図2に示すように、前後に間隔をあけて並んだ6個の蓄電池2の列を左右に間隔をあけて5列配置して支持したものである。各列の6個の蓄電池2は、図3に示すように、樹脂製の一対のホルダ3aに挟持されて前後に間隔をあけて配置される。また、6個の蓄電池2を挟持する6対のホルダ3aには、スペーサ3bを介して4本の金属シャフト3c(図では2本のみが見える)が貫通され、これらの金属シャフト3cの前後の両端部がそれぞれ蓄電池支持板3dに固着されている。そして、このようにして各列ごとに支持固定された6個の蓄電池2を左右に間隔をあけて5列配置固定することにより各段の蓄電池支持材3が構成される。
【0027】
上記蓄電池支持材3は、図1及び図2に示すように、配電盤1の内部に上下に間隔をあけて3段に配置固定されている。また、これら3段の蓄電池支持材3の前方と配電盤1の前面板との間には少し間隔があき、これら3段の蓄電池支持材3の後方と配電盤1の背面板との間には十分な間隔があいている。そして、各段の蓄電池支持材3の前方下方には、それぞれ配電盤1の前面板の左右一対の吸気口1aが開口するようになっている。
【0028】
上記各段の蓄電池支持材3の下方には、図1に示すように、この下方の空間を囲むような吸気誘導ダクト7がそれぞれ設けられている。吸気誘導ダクト7は、蓄電池支持材3の下方の空間を金属板で囲んだものであり、当該蓄電池支持材3の下方に十分な間隔をあけると共に、下段に別の蓄電池支持材3がある場合には、この下段の蓄電池支持材3の上方にも十分な間隔をあけて配置した底板と、この底板と上方の蓄電池支持材3との間の左右の端と後方の端を塞ぐ側板とからなり、底板は前方ほど下方に少し傾斜している。また、この吸気誘導ダクト7の前方の開口部は、前方下方に引き出されて対応する左右一対の吸気口1aに繋がっている。なお、吸気誘導ダクト7の側板は、配電盤1の左右の側面板で兼用させてもよい。
【0029】
上記各吸気誘導ダクト7内には、当該蓄電池支持材3の下から下方に向けて3枚の誘導羽根8が突出している。各誘導羽根8は、吸気誘導ダクト7の左右の幅(本実施形態の場合には1200mm程度)をほぼ塞ぐような幅広の金属板であり、上端を蓄電池支持材3の下に固定すると共に、下方を斜め前方に向けて水平面に対し53°の角度で傾斜させて取り付けられている。また、各誘導羽根8の下方への突出長さは、3枚とも同一であり、吸気誘導ダクト7の底板よりもある程度上方の位置まで突出するようになっている。
【0030】
これら3枚の誘導羽根8は、蓄電池支持材3の下方で前後に間隔をあけて配置されている。即ち、本実施形態の場合には、蓄電池支持材3における最前列と2番目の蓄電池2の間の下方に前方の誘導羽根8を配置すると共に、3番目と4番目の蓄電池2の間の下方に中央の誘導羽根8を配置し、5番目と最後尾の蓄電池2の間の下方に後方の誘導羽根8を配置している。
【0031】
また、図4に示すように、前方の誘導羽根8には、幅の広い(本実施形態の場合は60mm)矩形の通気孔8aが等間隔で多数開口され、中央の誘導羽根8には、幅の狭い(本実施形態の場合は30mm)矩形の通気孔8aが等間隔で同数開口されている。ただし、後方の誘導羽根8には、通気孔8aは開口されていない。従って、これら3枚の誘導羽根8は、通気孔8aが全く開口していなかったとすると、吸気誘導ダクト7内の通気路の前後方向の遮断面積は同じであるが、実際には通気孔8aを開口面積が前方の誘導羽根8ほど大きくなるように開口しているので、吸気誘導ダクト7内の通気路の前後方向の遮断面積は前方ほど小さくなる。
【0032】
上記配電盤1の内部には、図1に示すように、排気誘導ダクト9が設けられている。排気誘導ダクト9は、各段の蓄電池支持材3の上方の空間と、これらの空間から後方上方の排気口1bに至る通気路の空間を金属板で囲んだものである。即ち、この排気誘導ダクト9は、各段の蓄電池支持材3の上方に十分な間隔をあけて配置した天井板を有する。ただし、当該蓄電池支持材3の上段に別の蓄電池支持材3がある場合には、図1に示したように、この上段の蓄電池支持材3の吸気誘導ダクト7の底板を天井板と兼用することができる。また、この排気誘導ダクト9は、この天井板と下方の蓄電池支持材3との間の左右の端と前方の端を塞ぐ側板を有する。そして、このように天井板と側板で囲まれた各段の蓄電池支持材3の上方の空間の後方の開口部は、共通の上向きのダクト部分に合流することにより、後方上方の排気口1bに繋がるように引き出されている。なお、排気誘導ダクト9の側板も、配電盤1の左右の側面板で兼用させてもよい。
【0033】
上記配電盤1の内部には、各段の蓄電池支持材3ごとに吸気導入パイプ10が設けられている。吸気導入パイプ10は、配電盤1の背面板に開口された当該段の補助吸気口1cから当該段の蓄電池支持材3の吸気誘導ダクト7内の前方部に通じる通気路を形成した円筒状のパイプであり、後方の補助吸気口1cから配電盤1の内部の左右の端部を通して前方に引き出すように敷設されている。なお、本実施形態では、これら各段の吸気導入パイプ10が補助吸気口1cから吸気誘導ダクト7内の前方部にできるだけ短い距離で達するように敷設したが、例えば全ての段の吸気導入パイプ10を一旦配電盤1の下部を通して、補助吸気口1cと吸気誘導ダクト7内の前方部との間を繋ぐようにしても、十分な効果を得ることができる。
【0034】
上記構成の冷却装置によれば、配電盤1の内部に、各段の吸気口1aから吸気誘導ダクト7を介して蓄電池支持材3を上下に通り抜け、排気誘導ダクト9を介し排気口1bに至る水平乃至上向きの通気路が形成される。このため、各蓄電池支持材3の蓄電池2が放熱すれば、自然対流によっても、吸気口1aから排気口1bに至る空気の流れが生じ得る。そして、排気ファン5を作動させれば、配電盤1の前方の吸気口1aから吸気誘導ダクト7に外部の空気が導入され(矢印E)、この空気が冷却風として蓄電池支持材3を上下に通り抜け、排気誘導ダクト9を介し排気口1bから排出される(矢印F)ので、多数の蓄電池2を支持する各蓄電池支持材3に確実に冷却風を通すことができる。
【0035】
また、この際、各段の吸気誘導ダクト7の前方部には、配電盤1の後方の補助吸気口1cからも吸気導入パイプ10を介して外部の空気が導入されるので(矢印G)、この吸気誘導ダクト7に導入される空気量を増加することができ、各蓄電池支持材3に通す冷却風も増量することができる。
【0036】
しかも、各吸気誘導ダクト7には、金属板からなる誘導羽根8が53°の角度で傾斜させて取り付けられているので、吸気誘導ダクト7の前方から後方に向けて流れる冷却風の一部を上向きに誘導し円滑に蓄電池支持材3を上下に通り抜けるようにすることができる。また、3枚の誘導羽根8は、前方ほど開口率の大きい通気孔8aが開口するので、吸気誘導ダクト7を流れる冷却風を前方の誘導羽根8から順に最適量ずつ上方に誘導し、当該蓄電池支持材3に支持された前後6個の蓄電池2の各隙間に均等に分散させることができる。従って、これらの誘導羽根8を用いることにより、各蓄電池支持材3の全ての蓄電池2を円滑かつ均等に冷却することができるようになる。
【0037】
この結果、本実施形態の冷却装置は、配電盤1の天井板の左右の排気口1bに取り付けた2台の排気ファン5を作動させるだけで、各蓄電池支持材3の各蓄電池2の周囲に確実、かつ、均等に冷却風を流して効果的に冷却することができるので、蓄電池支持材3に多数の送風ファンを用いる必要がなくなり、配電盤1の保守作業を大幅に軽減することができる。
【0038】
なお、上記実施形態では、各蓄電池支持材3の蓄電池2の配置を前後に6個、左右に5列としたが、この蓄電池2の前後左右の配置数は、少なくとも前後に2個以上並んでいれば誘導羽根8による効果が得られるので、任意である。また、上記実施形態では、前後に並ぶ蓄電池2をホルダ3aや金属シャフト3c等で支持する場合を示したが、この蓄電池2の支持手段も任意である。例えば、左右に並ぶ蓄電池2をホルダや左右方向の金属シャフト等で支持するようにしてもよいし、前後左右に並ぶ蓄電池2を棚板の上に載置して支持してもよい。ただし、棚板の場合には、上下の通気が可能なように、パンチングボードやメッシュ板を用いたり、そうでなければ蓄電池2を載置した間に通気孔を形成したりする必要がある。さらに、上記実施形態では、蓄電池支持材3を3段配置する場合を示したが、この蓄電池支持材3の段数も任意である。
【0039】
また、上記実施形態では、吸気誘導ダクト7を各蓄電池支持材3に設けた場合を示したが、この吸気誘導ダクト7は、少なくとも1段の蓄電池支持材3に設けられていればよい。
【0040】
また、上記実施形態の吸気誘導ダクト7や排気誘導ダクト9は、金属板で囲んだものである必要はなく、任意の材質の任意の部材で囲んだものであってもよい。さらに、底板又は天井板と側板により通気路の縦断面が矩形となるように囲む必要もなく、この通気路の形状も任意である。さらに、蓄電池支持材3の下方や上方等に通気路が形成されればよいので、配電盤1の側板や他の機器のケースの一部等を利用して囲んだものであってもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、金属板からなる誘導羽根8を53°の角度で傾斜させたが、吸気誘導ダクト7を流れる冷却風を上向きに誘導するためには、誘導羽根8の下方が斜め前方に傾斜している方が好ましいものの、この傾斜角度は必ずしも53°には限定されず、90°の垂直であってもよい。しかも、この誘導羽根8によって上方の蓄電池支持材3に冷却風を最適量誘導するためには、下方が斜め後方の逆方向に傾斜していてもよい場合もあり得る。さらに、この誘導羽根8は、金属板に限定されることもなく、他の材質を用いたり、板材以外のものを用いることもできる。
【0042】
また、上記実施形態では、前方と中央の誘導羽根8に、前方ほど幅の広い矩形の通気孔8aを同数開口する場合を示したが、前方ほど開口率の大きい通気孔8aであれば形状や開口箇所数は任意である。例えば、各誘導羽根8には同じ大きさの円形の通気孔8aを開口し、前方ほどこの通気孔8aの開口箇所数を増やすようにしてもよい。さらに、後方の誘導羽根8にも、開口率が最小の通気孔8aを開口することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、各吸気誘導ダクト7に3枚の誘導羽根8を取り付ける場合を示したが、2枚以上であれば、この誘導羽根8の枚数は任意である。さらに、これらの誘導羽根8は、前方ほど通気路の前後方向の遮蔽面積が小さければよいので、通気孔8aを開口する代わりに、又は、通気孔8aを開口すると共に、各誘導羽根8の上下の長さを前方ほど短くしたり、各誘導羽根8の傾斜角度を変えて下方への突出長さを前方ほど短くすることもできる。さらに、例えば各誘導羽根8を櫛歯状として、各歯の左右の幅や歯の間隔を変えるようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態の吸気口1aが前方の前面板における内部の蓄電池支持材3の下方部分に開口される場合は、冷却効率に優れた通気路となって好ましいが、この蓄電池支持材3の前方であれば、必ずしも前面板に形成されたものでなくてもよく、この蓄電池支持材3より下方の開口に限定されるものでもない。さらに、上記実施形態の排気口1bが上方の天井板の後方部分に開口される場合も、冷却効率に優れた通気路となって好ましいが、蓄電池支持材3の後方であれば、必ずしも天井板の後方部分に形成されたものでなくてもよく、この蓄電池支持材3より上方の開口に限定されるものでもない。
【0045】
また、上記実施形態では、吸気口1aや補助吸気口1cに網状の通気ギャラリを用いる場合を示したが、この通気ギャラリの構成は任意であり、防塵フィルタ等が配置されたものであってもよい。さらに、これらの吸気口1aや補助吸気口1cは、防虫や防塵等の必要がなければ、通気ギャラリを設ける必要もなく、単なる開口部だけであってもよい。さらに、風雨等の侵入の心配がなければフードは不要である。さらに、排気口1bにも、通気ギャラリを取り付けることができ、風雨等の侵入の心配がなければフードは不要である。
【0046】
また、上記実施形態では、円筒状の吸気導入パイプ10を用いる場合を示したが、この形状は任意であり、例えば角ダクト状であってもよい。さらに、この吸気導入パイプ10が外部の空気を導入する補助吸気口1cの配置位置も、配電盤1の背面板に限らず、左右の側面板等に配置することもできる。さらに、吸気口1aから外部の空気を吸気誘導ダクト7に導入するだけで十分な場合には、この吸気導入パイプ10を設ける必要もない。
【0047】
また、上記実施形態で、排気口1bに排気ファン5を配置したが、この排気ファン5は、排気口1bの開口部の内側だけでなく、直ぐ外側であってもよい。例えば排気口1bに通気ギャラリを用いる場合、通常排気ファン5は通気ギャラリの内側に取り付けるが、この通気ギャラリの外側に排気ファン5を取り付けてもよい。さらに、このような排気ファン5に代えて、各吸気口1aに送風機としての吸気ファンを配置してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、蓄電池2が非水電解質二次電池である場合を示したが、この蓄電池2の種類は限定されず、ニッケル水素二次電池等であってもよい。さらに、この蓄電池2は、これら非水電解質二次電池やニッケル水素二次電池等の化学電池に限らず、電力を蓄積して放電することができるものであればよいので、電気二重層キャパシタ等のキャパシタであってもよい。電気二重層キャパシタ等のような化学反応を伴わない蓄電池であっても、充放電電流が大きいためにジュール熱による発熱が大きくなるので、本実施形態のような効果的な冷却を行う冷却装置は必要となる。
【0049】
また、上記実施形態では、配電盤1に収納した蓄電池2の冷却装置について説明したが、他の設備や装置に収納した蓄電池の冷却装置にも同様に本発明は実施可能であり、例えば施設内の一隅に設置する蓄電池の冷却装置にも同様に実施可能である。
【0050】
また、上記実施形態では、蓄電池2の冷却装置について説明したが、蓄電池2に限らず、発熱を伴う高性能な電子演算処理装置等の被冷却物であっても、同様に本実施形態のような冷却装置を適用可能である。蓄電池2以外の被冷却物を用いる場合は、蓄電池支持材3に代えて、同様の構成の被冷却物支持材が用いられる。
【実施例】
【0051】
上記実施形態において、吸気導入パイプ10を設けなかったものを実施例1とし、吸気導入パイプ10を設けたものを実施例2とすると共に、図5に示した配電盤1の蓄電池支持材3の下の多数の送風ファン6を停止させたものを従来例として、冷却効果検証実験を行った結果を表1に示す。なお、ここでは、排気口1bの2台の排気ファン5だけを作動させたものとして解析を行った。また、蓄電池2の発熱量は38W/セルとし、各排気ファン5の開口径はΦ300mmとし、実施例2の吸気導入パイプ10のパイプ径はΦ40mmとした。
【0052】
【表1】

【0053】
この表1から明らかなように、従来例では、各蓄電池支持材3の蓄電池2の最大温度のばらつきが29.9℃にも達し、最も温度上昇の大きい蓄電池2も98.8℃の高い上昇値となった。これに対して、実施例1では、最大温度のばらつきが2.6℃に低減され、最も温度上昇の大きい蓄電池2でも上昇値を67.2℃まで低減できた。また、吸気導入パイプ10を設けた実施例2では、最大温度のばらつきが1.5℃までさらに低減され、最も温度上昇の大きい蓄電池2も上昇値を65.7℃までさらに低減できた。従って、実施例1や実施例2の蓄電池の冷却装置を用いれば、2台の排気ファン5を作動させるだけで、各蓄電池支持材3の蓄電池2を効果的に冷却できることが分かった。
【0054】
なお、実施例1において、誘導羽根8がない場合には、中段最大温度(上昇値)が79.2℃に、通気孔8aのない誘導羽根8を用いた場合には、中段最大温度(上昇値)が76.8℃にまで上昇してしまうことも分かった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであって、蓄電池の冷却装置を収納した配電盤の縦断面側面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すものであって、蓄電池の冷却装置を収納した配電盤の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態を示すものであって、蓄電池支持材の蓄電池の支持構造を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示すものであって、吸気誘導ダクト内の3枚の誘導羽根8を示す斜視図である。
【図5】従来例を示すものであって、蓄電池の冷却装置を収納した配電盤の縦断面側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 配電盤
1a 吸気口
1b 排気口
1c 補助吸気口
2 蓄電池
3 蓄電池支持材
3a ホルダ
3b スペーサ
3c 金属シャフト
3d 蓄電池支持板
4 遮蔽板
5 排気ファン
6 送風ファン
7 吸気誘導ダクト
8 誘導羽根
8a 通気孔
9 排気誘導ダクト
10 吸気導入パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を前後に2個以上、左右に1列以上、間隔をあけ、かつ当該間隔を経て上下に通気可能に支持し得る被冷却物支持材を1段又は間隔をあけて上下に2段以上配置し、
少なくとも1段の前記被冷却物支持材に、この被冷却物支持材の前方に開口された吸気口からこの被冷却物支持材の下に至る通気路を形成する吸気誘導ダクトを設けると共に、
前記吸気誘導ダクト内に、当該被冷却物支持材の下から下方に向けて突出する誘導羽根であって、前方ほど通気路の前後方向の遮蔽面積が小さいものを前後に間隔をあけて2枚以上配置し、
前記被冷却物支持材の上方の空間からこの被冷却物支持材の後方に開口された排気口に至る通気路を形成する排気誘導ダクトを設け、
前記吸気口又は前記排気口の少なくともいずれか一方に送風機を配置したことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
蓄電池を前後に2個以上、左右に1列以上、間隔をあけ、かつ当該間隔を経て上下に通気可能に支持した蓄電池支持材を1段又は間隔をあけて上下に2段以上配置し、
少なくとも1段の前記蓄電池支持材に、当該蓄電池支持材の下方の空間を囲んで、この蓄電池支持材の前方下方に開口された吸気口からこの蓄電池支持材の下に至る通気路を形成する吸気誘導ダクトを設けると共に、
前記吸気誘導ダクト内に、当該蓄電池支持材の下から下方に向けて突出する誘導羽根であって、前方ほど通気路の前後方向の遮蔽面積が小さいものを前後に間隔を開けて2枚以上配置し、
前記蓄電池支持材の上方の空間を囲み、この蓄電池支持材の上方の空間から最上段の蓄電池支持材の後方上方に開口された排気口に至る通気路を形成する排気誘導ダクトを設け、
前記吸気口又は前記排気口の少なくともいずれかに送風機を配置したことを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
前記各誘導羽根が3枚以上配置され、これらの各誘導羽根が、当該被冷却物支持材の下から同じ長さで下方に向けて突出する板材であって、最後方の板材には通気孔が開口されず、他の板材には前方ほど開口率の大きい通気孔が開口されることにより、前方ほど通気路の前後方向の遮蔽面積を小さくしたものであることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記3枚以上の誘導羽根が、上下の長さが同じで、最後方のものを除き、前方ほど左右の幅が広い矩形の通気孔が同数ずつ開口されていることを特徴とする請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記被冷却物支持材に、左右の側方又は後方に開口された補助吸気口から当該被冷却物支持材の吸気誘導ダクト内の前方部に通じる通気路を形成する吸気導入パイプを設けたことを特徴とする請求項1、請求項3又は請求項4に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−225526(P2009−225526A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65897(P2008−65897)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】