説明

冷却装置

【課題】電力を消費することなく、かつ、局舎からの制御無しで筐体内の温度を設定範囲に維持することができる冷却装置を提供する。
【解決手段】液戻り管50には、圧力調整弁60が設けられる。圧力調整弁60は、冷媒の圧力が設定圧力以上になると液戻り管50内の冷媒の流れを許容し、設定圧力未満になると液戻り管50内の冷媒の流れを阻止する。圧力調整弁60は、冷媒の圧力が作用する弁体63を備え、弁体63は冷媒の圧力変化に応じて液戻り管50内で移動することによって、液戻り管50内の冷媒の流れを許容または阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等の発熱機器を収納する筐体内を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱する電子機器、たとえば通信機器を密閉化された筐体内に収容して使用する場合がある。筐体が密閉されているので、筐体内に直接外気を取り入れて、換気することによって通信機器を冷却することができない。
【0003】
そこで特許文献1に記載の冷却装置では、筐体内に通信機器にて加熱された空気から吸熱して冷媒を沸騰させる吸熱器を設置するとともに、吸熱器より上方側に吸熱器にて沸騰蒸発した気相冷媒と筐体外の空気とを熱交換して気相冷媒を冷却凝縮させる放熱器を設置している。したがって吸熱器によって、筐体内を冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−140464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の冷却装置では、外気が低温(たとえば氷点下)で強風の場合には、冷却装置によって筐体内の温度が下がりすぎて、通信機器が停止してしまうおそれがある。
このような筐体内の低温下を防止するため、冷却装置あるいは筐体内にヒータを備えると、コストが増加するという問題がある。また問題を解決するために、特許文献1に記載の電磁式の開閉弁によって、循環する冷媒流量を制御して、外気低温の場合には冷却装置の動作を停止することも考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、温度や湿度を検知するためのセンサ、検知データを判断し冷却装置を制御する信号を出すための回路、電磁弁への動力供給源が局舎側に必要である。このため局舎側の構造が複雑になり、コストが増加する。また停電時のバックアップ電源の容量に限界があり、所定の時間バックアップ運転させるために冷却装置の消費電力削減が求められている。したがって開閉弁を制御するための電力消費も低減することが望ましい。
【0006】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、電力を消費することなく、かつ、局舎からの制御無しで筐体内の温度を設定範囲に維持することができる冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明では、発熱機器(11)を収納する筐体(12)の内部に設けられ、筐体内の空気と内部を流れる冷媒との間で熱交換が行われる室内熱交換器(20)と、
筐体の外部に設けられ、内部を流れる冷媒と外気との間で熱交換が行われる室外熱交換器(30)と、
室内熱交換器で筐体内の空気と熱交換して沸騰した冷媒を、室外熱交換器へ導く蒸気流通管(40)と、
室外熱交換器で外気と熱交換して凝縮した冷媒を、室内熱交換器へ導く液戻り管(50)と、を備え、
冷媒は、室内熱交換器内において沸騰し室外熱交換器内で凝縮することによって室内熱交換器と室外熱交換器との間を循環し、室内熱交換器で吸熱し室外熱交換器で放熱して筐体内を冷却する冷却装置(10)であって、
液戻り管に設けられ、冷媒の圧力が予め設定される設定圧力以上になると液戻り管内の冷媒の流れを許容し、設定圧力未満になると液戻り管内の冷媒の流れを阻止する開閉手段(60)と、を含み、
開閉手段は、冷媒の圧力が作用する作用部(63)を備え、
作用部は、冷媒の圧力変化に応じて移動することによって、液戻り管内の冷媒の流れの許容または阻止することを特徴とする冷却装置である。
【0009】
請求項1に記載の発明に従えば、凝縮した冷媒を室内熱交換器へ導く液戻り管には、開閉手段が設けられる。開閉手段は、冷媒の圧力が設定圧力以上になると液戻り管内の冷媒の流れを許容し、設定圧力未満になると液戻り管内の冷媒の流れを阻止する。外気温が低くなると、冷媒の温度が低下して冷媒の圧力は低くなるので、外気温が低くなり冷媒が設定圧力未満になると冷媒の循環が阻止される。冷媒の循環が阻止されると、冷却装置は冷却機能を発揮しない。したがって外気低温に起因して、筐体内が冷却装置の冷却によって低温になりすぎることを防止することができ、発熱機器が停止することを防止することができる。
【0010】
開閉手段によって冷媒の循環が阻止されているときに、筐体内の温度が発熱機器によって上昇すると、室内熱交換器の温度が上昇し、室内熱交換器内の冷媒も加熱される。冷媒が加熱されると、冷媒の圧力が上昇する。冷媒の圧力が上昇して、開閉手段の設定圧力以上となると、開閉手段によって冷媒の流れが許容される。これによって冷媒が循環するので冷却装置は冷却能力を発揮することができる。
【0011】
このような開閉手段は、冷媒の圧力が作用する作用部を備え、作用部は冷媒の圧力変化に応じて移動することによって、液戻り管内の冷媒の流れを許容または阻止する。したがって開閉手段は、電力をなんら消費することなく、冷媒の圧力変化によって冷媒の流れを許容または阻止することができる。しかも冷媒の圧力変化によって動作タイミングを決定することができるので、開閉手段を制御するためのマイクロコンピュータなども不要である。したがって開閉手段を制御するための電力も不要である。これによって冷却装置は、外部からの電気、信号および動力などの供給が無くても自律で冷媒流量を調整し、筐体内を適切な温度に維持することができる。
【0012】
また請求項2に記載の発明では、液戻り管は、筐体内における空気と内部を流れる冷媒との間で熱交換が行われる熱交換部(51,70A,70B)を有することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明に従えば、熱交換部は、筐体内における空気と内部を流れる冷媒との間で熱交換を行う部分である。熱交換部は、筐体内の温度が上昇すると、上昇した筐体内の空気と熱交換して、冷媒の温度が上昇する。したがって熱交換部によって、筐体内の温度上昇に伴う冷媒の温度上昇がしやすくなる。冷媒の温度が上昇しやすいと、冷媒の圧力が上昇しやすいので、筐体内の温度上昇から開閉手段が冷媒の流れを許容するまでの時間を短くすることができる。換言すると、開閉手段の応答性を向上することができる。これによって筐体内が急に温度上昇した場合にであっても、開閉手段が短時間で冷媒の流れを許容して、冷却装置の冷却能力を発揮することができる。したがって筐体内の短時間の温度上昇を防止することができる。
【0014】
さらに請求項3に記載の発明では、熱交換部(51)は、筐体の内部における引き回しの長さが長くなるように曲がる部分を有することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明に従えば、熱交換部は、筐体の内部における引き回しの長さが長くなるように曲がる部分を有する。これによって熱交換部の筐体の内部における表面積を大きくすることができる。したがって簡単な構成で筐体内の空気と熱交換可能な熱交換部を実現することができる。
【0016】
さらに請求項4に記載の発明では、熱交換部(70A)は、液戻り管における他の部分よりも単位長さ当たりの外表面積が大きいことを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明に従えば、熱交換部は、液戻り管における他の部分よりも単位長さ当たりの外表面積が大きい。したがって筐体内の空気と熱交換可能な領域を大きくすることができる。これによって簡単な構成で筐体内の空気と熱交換可能な熱交換部を実現することができる。
【0018】
さらに請求項5に記載の発明では、熱交換部(70B)は、複数に分岐している部分を有することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明に従えば、熱交換部は、複数に分岐している部分を有する。これによって熱交換の筐体の内部における表面積を大きくすることができる。したがって簡単な構成で筐体内の空気と熱交換可能な熱交換部を実現することができる。
【0020】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態の冷却装置10が搭載された電話基地局90の構成図である。
【図2】圧力調整弁60を示す断面図である。
【図3】内気吹出し温度と外気温度との関係の一例を示すグラフである。
【図4】第2実施形態の一例である熱交換部70Aを示す図である。
【図5】第2実施形態の他の例である熱交換部70Bを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図3を用いて説明する。図1は、第1実施形態の冷却装置10が搭載された電話基地局90の概略構成図である。電話基地局90は、密閉空間を形成する筐体12の内部に通信機器11が収納されて構成される。本実施形態の冷却装置10は、通信機器11が設置される筐体12内を冷却する。電話基地局90は、無線通信のエリアが広範囲になるように、屋外の高所、たとえばビルなどの建物の屋上の床面および建物の外壁に設置される。
【0024】
通信機器11は、内部に作動によって発熱する送受信機やパワーアンプ等の電気機器を備える。このような電気機器は、外部に向けて放熱する発熱機器である。筐体12は、断熱性を有し、具体的には複数のアルミニウム板の間にウレタン発泡断熱材を介在させた部材によって形成された箱体である。また、筐体12の側部には、ドア部13が設けられる。ドア部13は、メンテナンスのため、開閉自在に筐体12に設けられる。
【0025】
冷却装置10は、筐体12内の空気(内気ともいう)から吸熱した冷媒によって熱を運び、この冷媒が筐体12外の空気(外気ともいう)に対して放熱することにより、内気を冷却する装置である。冷却装置10は、筐体12内の空気と冷媒との間で熱交換する室内熱交換器20と、冷媒と外気との間で熱交換する室外熱交換器30とを備えている。室内熱交換器20と室外熱交換器30とは、蒸気流通管40と液戻り管50とによって接続され、内部を冷媒が流通して循環する循環流路中に設置されている。循環流路中の冷媒は、室内熱交換器20と室外熱交換器30との間を循環し、室内熱交換器20で吸熱し室外熱交換器30で放熱して筐体12内の空気を冷却し、通信機器11等の発熱機器を冷却する。室内熱交換器20の内部に封入される冷媒は、例えばHFCを用いる。HFC以外には、低圧封入された水、エチレングリコール水溶液等を用いてもよい。
【0026】
室内熱交換器20は、鉛直方向に対して傾斜した姿勢で筐体12の内部に設けられる。また室外熱交換器30は、鉛直方向に対して傾斜した姿勢で筐体12の外部に設けられる。鉛直方向は、本実施の形態では筐体12が起立する方向と平行である。筐体12が起立する方向は、筐体12を形成する上下方向であり、各熱交換器20,30はこの上下方向側面に対して傾いた状態で設置されている。
【0027】
室内熱交換器20は、内部を流れる冷媒と筐体12内の空気との間で熱交換が行われるコア部21,22を有し、本実施形態ではコア部21,22は空気流れの上流側に位置する上流側コア部21と空気流れの下流側に位置する下流側コア部22とで構成されている。上流側コア部21と下流側コア部22とは、筐体12に対して傾斜する姿勢であり、かつコア部21,22を通過する空気の通過方向に対して重なって配置されている。室内熱交換器20は、筐体12の天井内面12aに装着された室内ケーシング部材14に固定されて、通信機器11上方の所定の設置空間に配置されている。室内熱交換器20の横には、室内熱交換器20のコア部21,22に対して筐体12内の空気を送る室内ファン23が設けられている。
【0028】
室外熱交換器30は、内部を流れる冷媒と筐体12外の外気との間で熱交換が行われるコア部31,32を有し、本実施形態ではコア部31,32は空気流れの上流側に位置する上流側コア部31と空気流れの下流側に位置する下流側コア部32とで構成されている。上流側コア部31と下流側コア部32とは、筐体12に対して傾斜する姿勢であって、さらにコア部31,32を通過する空気の通過方向に対して重なって配置されている。室外熱交換器30は、筐体12の天面12bに装着された室外ケーシング部材15に固定されて所定の設置空間に配置されている。室外熱交換器30の横には、室外熱交換器30のコア部31,32に対して外気を送る室外ファン33が設けられている。
【0029】
冷却装置10は、室内熱交換器20と室内熱交換器20の上方に配置された室外熱交換器30とが蒸気流通管40と液戻り管50とによって接続されることにより、冷媒が各熱交換器20,30の内部を流通し循環するように構成されている。
【0030】
蒸気流通管40は、室内熱交換器20の上流側コア部21および下流側コア部22の各端部に設けられる上部側ヘッダタンク24に接続されるとともに、室外熱交換器30の上流側コア部31および下流側コア部32の各端部に設けられる上部側ヘッダタンク34に接続されて、室内熱交換器20と室外熱交換器30とを連絡する管である。蒸気流通管40は、室内熱交換器20で内気と熱交換して沸騰気化した気化冷媒を室外熱交換器30の上部へ導く管である。
【0031】
液戻り管50は、室外熱交換器30の上流側コア部31および下流側コア部32の各端部に設けられる下部側ヘッダタンク35に接続されるとともに、室内熱交換器20の上流側コア部21および下流側コア部22の各端部に設けられる下部側ヘッダタンク25に接続されて、室内熱交換器20と室外熱交換器30とを連絡する管である。液戻り管50は、室外熱交換器30で液化凝縮した液冷媒を室内熱交換器20の下部へ戻す管である。
【0032】
次に、各熱交換器20,30のヘッダタンク24,25,34,35に関して説明する。室外熱交換器30の下部側ヘッダタンク35は、プレス等で成形された2つの椀状板材を互いに最中合わせに組み立てて一体化した筒状部材で構成される。2つの椀状板材のうち他方の側面(コア部31,32側の側面)には、筒状部材の延びる長手方向に所定の間隔を設けて一列に開口され、コア部31,32を構成するチューブ(図示せず)が挿入可能な開口である複数の挿入穴(図示せず)が形成されている。複数の挿入穴は、コア部31,32に配列されるチューブの数量と同一の数量設けられている。
【0033】
室外熱交換器30の下部側ヘッダタンク35には、長手方向の両端部が必要に応じて蓋部材等により塞がれて、液戻り管50を接続するための穴やチューブの挿入穴等の開口部を除いて閉鎖した所定の空間が形成されている。そして複数の挿入穴に所定本数のチューブを挿入して設置すると、チューブの内部および下部側ヘッダタンク35の内部が連通する通路が形成されるようになる。このように室外熱交換器30の下部側ヘッダタンク35が構成されている。
【0034】
室外熱交換器30の上部側ヘッダタンク34は、蒸気流通管40との接続部を備え、室外熱交換器30の下部側ヘッダタンク35と同様の構成の筒状部材である。室内熱交換器20の上部側ヘッダタンク24は、室外熱交換器30の上部側ヘッダタンク34と同様の構成の筒状部材である。室内熱交換器20の下部側ヘッダタンク25は、液戻り管50との接続部を備え、蒸気流通管40との接続部を備えない点を除いて室内熱交換器20の上部側ヘッダタンク24と同様の構成の筒状部材である。
【0035】
次に、各熱交換器20,30のコア部21,22,31,32に関して説明する。各コア部21,22,31,32は、構成が互いに略等しいので、室外熱交換器30の上流側コア部31に関して説明し、室外熱交換器30の下流側コア部32、室内熱交換器20の上流側コア部21および下流側コア部22に関しての説明を省略する。上流側コア部31は、図示は省略するが、所定の間隔を設けて配列された複数本のチューブと、各チューブ間に介在されたコルゲートタイプのフィンとで構成されている。また、これらのチューブとフィンはコア部31の両側からサイドプレートにより支持されて一体になり、ろう付け接合によって固定されている。
【0036】
フィンが配置されている隣り合うチューブ間は、チューブ内を流れる冷媒と熱交換される空気が通過する通路を構成する。フィンの形状は、たとえば平面部には部分的にプレス加工で切り起こされた複数個の切り起こし部が形成されている。複数個の切り起こし部は、熱交換面積を増加し、伝熱性向上のために、空気通過方向に並ぶように形成されている。冷媒と熱交換される空気は、複数個の切り起こし部によってフィンの平面部に形成された部分を通ってフィンの両面側を蛇行するように流れるため、乱流が形成されて熱交換量が増加することになる。
【0037】
また、室外熱交換器30および室内熱交換器20における上記各部材は、アルミニウム材からなり、表面に施されたろう材を介して上記各部材間をろう付けすることにより一体に接合されている。
【0038】
次に、液戻り管50に設けられる圧力調整弁60に関して図2を用いて説明する。図2は、圧力調整弁60を示す断面図である。圧力調整弁60は、液戻り管50に設けられ、冷媒圧力に応じて液戻り管50内を流れる冷媒量を調節する。圧力調整弁60は、冷媒の圧力が予め設定される設定圧力以上になると液戻り管50内の冷媒の流れを許容し、設定圧力未満になると液戻り管50内の冷媒の流れを阻止する開閉手段である。設定圧力は、たとえば0.17MPaに設定される。液戻り管50における冷媒圧力は、冷媒温度に比例する。したがって冷媒温度が低くなると、冷媒圧力も低くなる。
【0039】
圧力調整弁60は、冷媒の状態変化を動力源として動作する。換言すると、圧力調整弁60は、電力を何ら消費することなく、冷媒の状態変化、たとえば温度変化および圧力変化を動力源として、動作する。圧力調整弁60は、具体的な構成として、室外熱交換器30からの冷媒が流入する入口配管61、室内熱交換器20へ冷媒を流出する出口配管62、冷媒の圧力が作用する弁体63、および弁体63を押圧するスプリング64を含んで構成される。
【0040】
入口配管61は、図2の上下方向に延びる断面円形状の直管である。出口配管62は、図2の左右方向に延びる断面円形状の直管である。入口配管61内には、入口配管61の上下方向を一部閉塞する円板状の閉塞部65が設けられる。閉塞部65には、上下方向に貫通する貫通孔66が形成され、閉塞部65の貫通孔66には、棒状の弁体63が設けられる。また閉塞部65には、上下方向に貫通する導入孔65aが形成される。導入孔65は、冷媒を閉塞部65の上方へ導くための孔である。また入口配管61の内壁には、筒状の当接部68が固定される。当接部68の下面には、閉塞部65の外周部が当接している。
【0041】
弁体63は、円柱状であって、貫通孔66の内壁に沿って上下方向にスライド可能に構成される。弁体63の上方に位置する端部には、スプリング64が当接し、スプリング64が弁体63を下方に押圧している。弁体63の外周面には外方に環状に突出する弁部67が設けられる。弁部67は、スプリング64の押圧力によって当接部68の上面に当接している状態では、導入孔65aを流下する冷媒の出口配管62への流れを阻止する。また弁部67は、弁体63が上方にスライドして当接部68と離間した状態では、導入孔65aを流下する冷媒の出口配管62への流れを許容する。
【0042】
このような弁部67の移動、換言すると弁体63の移動は、冷媒の圧力が弁体63(弁部67)に作用することによって開始される。冷媒の圧力が弁体63に作用すると弁体63は冷媒の圧力によって上方に変位しようとする。しかし弁体63はスプリング64によって下方に押圧されているので、冷媒の圧力がスプリング64の押圧力を上回ったときに、弁体63が上方へスライド変位する。冷媒の圧力が上昇し、スプリング64の押圧力に抗して弁体63が上方へスライド変位すると、当接部68と弁部67とが離間する。これによって入口配管61と出口配管62とが連通し、冷媒が入口配管61から出口配管62へと流下する。したがってスプリング64の押圧力を増減させることによって、圧力調整弁60の設定圧力を変更することができる。たとえばスプリング64の押圧力を大きくすると、設定圧力は大きくなる。
【0043】
また液戻り管50は、筐体12内における空気と内部を流れる冷媒との間で熱交換が行われる熱交換部として機能する延長部51を有する。延長部51は、筐体12内の気温の影響を受けやすいように、筐体12内に位置するように配置される。延長部51は、熱伝導性に優れる材料、たとえばアルミニウム(アルミニウム合金を含む)および銅(銅合金を含む)からなる。延長部51は、液戻り管50を延長した配管によって実現される。したがって延長部51内には、冷媒が流れる。したがって延長部51は、外気と内部を流れる冷媒との間で、管壁を介して熱交換する。
【0044】
このような延長部51は、圧力調整弁60の上方に位置する。したがって延長部51を通過した冷媒が圧力調整弁60に至る。延長部51は、筐体12の内部における引き回しの長さが長くなるように曲がる部分を有する。具体的には、延長部51は、図1に示すようにジグザグに延びるように形成される。換言すると、延長部51は、曲がる部分として鋭角に屈曲する部分を複数有する。これによって延長部51の管長は、圧力調整弁60と室外熱交換器30の下部側ヘッダタンク35とを直線的に結ぶ管長よりも大きくすることができる。したがって内気と熱交換する表面積が多くなるので、内気と延長部51内の冷媒との熱交換量を多くすることができる。
【0045】
次に、冷却装置10の動作に関して説明する。冷媒の蒸発気化および凝縮液化が起こる状態では、冷媒は、室内熱交換器20のチューブ→室内熱交換器20の上部側ヘッダタンク24→蒸気流通管40→室外熱交換器30の上部側ヘッダタンク34→室外熱交換器30のチューブ→室外熱交換器30の下部側ヘッダタンク55→液戻り管50の延長部51→圧力調整弁60→液戻り管50→室内熱交換器20の下部側ヘッダタンク25→室内熱交換器20のチューブの順に流れ、室内熱交換器20と室外熱交換器30との間を循環する。そして、室内熱交換器20のチューブ内で沸騰気化し、室外熱交換器30のチューブ内で凝縮することで、室内熱交換器20が設けられた筐体12内を冷却するようになる。
【0046】
筐体12内の温度が低く、冷媒温度も低くなり、冷媒圧力が圧力調整弁60の設定圧力(たとえば0.17MPa)よりも低い場合には、圧力調整弁60が開かず、冷媒流量がゼロである。圧力調整弁60が閉状態であると冷媒が循環せずに、冷却装置10はいわば動作停止状態にあるので、筐体12内を冷却する動作をしていない。しかし通信機器11は常に動作状態にあるので、通信機器11は発熱している。冷却装置10が動作停止状態であるので筐体12の内気温は、通信機器11によって上昇する。したがって冷却装置10の過冷却による内気温の低下を防ぎ、通信機器11の停止を防ぐことができる。
【0047】
冷却装置10の機能停止状態がしばらく続くと、通信機器11によって筐体12内の温度が上昇する。筐体12内の温度が上昇すると、延長部51において内気と冷媒とが熱交換し、冷媒の温度が上昇する。また室内熱交換器20の温度が上昇するので、室内熱交換器20内の冷媒の温度も上昇する。このような冷媒の温度上昇によって冷媒圧力も上昇し、冷媒圧力が圧力調整弁60の設定圧力を超えると圧力調整弁60が開き、冷媒が流れる。これによって冷却装置10の動作が開始されるので、冷却機能を発揮し、内気温が下がる。このようにして通信機器11の停止を招くような筐体12内の温度の上昇を防ぐことができる。内気温が下がって冷媒圧力が設定値以下になると再び圧力調整弁60が閉じ、冷媒流量がゼロになる。そして内気温度が再び上昇する。圧力調整弁60は、冷媒の圧力に応じて、この挙動を繰り返すことにより、筐体12内の温度を適切な範囲(たとえば摂氏5度以上20度以下)に調整することができる。
【0048】
図3は、内気吹出し温度と外気温度との関係の一例を示すグラフである。内気吹出し温度は、室内ファン23の吹出直後の気温である。図3では、第1実施形態の温度変化を実線で示し、従来技術の圧力調整弁60がない形態の温度変化を破線で示す。
【0049】
従来技術では、圧力調整弁60を備えていないので、図3に示すように外気温と内気温とが比例関係にあり、外気低温時(たとえば5度以下の時)は筐体12内の温度が通信機器11に適切な温度以下(たとえば5度以下)になる可能性がある。
【0050】
これに対して第1実施形態では、圧力調整弁60によって外気温が0度のときに圧力調整弁60の開閉状態が切り替わるように設定圧力が設定されている。外気温が0度未満のときには、圧力調整弁60は閉であり、冷媒が循環しないので、通信機器11の発熱によって内気温が5度以上20度以下の状態が維持されている。また外気温が0度以上になると通信機器11の発熱によって内気温が上昇して20度に近くづくが、圧力調整弁60も0度以上になると開状態になり、冷媒の循環が開始される。これによって図3に示すように、外気温が0度以上のときには冷却装置10は冷却能力を発揮して、内気温が低下し、20度以下の状態を維持することができる。
【0051】
以上説明したように本実施の形態の冷却装置10は、凝縮した冷媒を室内熱交換器20へ導く液戻り管50には、開閉手段として圧力調整弁60が設けられる。圧力調整弁60は、冷媒の圧力が設定圧力以上になると液戻り管50内の冷媒の流れを許容し、設定圧力未満になると液戻り管50内の冷媒の流れを阻止する。外気低温の場合には、冷媒の温度が低下して冷媒の圧力は低くなるので、圧力調整弁60によって冷媒の循環が阻止される。冷媒の循環が阻止されると、冷却装置10は冷却機能を発揮しない。したがって外気低温に起因して、筐体12内が冷却装置10の冷却によって低温になりすぎることを防止することができ、通信機器11が停止することを防止することができる。
【0052】
圧力調整弁60によって冷媒の循環が阻止されているときに、筐体12内の温度が通信機器11の発熱によって上昇すると、室内熱交換器20の温度が上昇し、室内熱交換器20内の冷媒も加熱される。冷媒が加熱されると、冷媒の圧力が上昇する。冷媒の圧力が上昇して、圧力調整弁60の設定圧力以上となると、圧力調整弁60によって冷媒の流れが許容される。これによって冷媒が循環するので冷却装置10は冷却能力を発揮することができる。
【0053】
このような圧力調整弁60は、冷媒の圧力変化を動力源とする。具体的には、圧力調整弁60は、冷媒の圧力が作用する作用部として機能する弁体63を備え、弁体63は冷媒の圧力変化に応じて液戻り管50内で移動することによって、液戻り管50内の冷媒の流れを許容または阻止する。したがって圧力調整弁60は、電力をなんら消費することなく、冷媒の流れを許容または阻止することができる。しかも冷媒の圧力によって動作タイミングを決定することができるので、圧力調整弁60を制御するためのマイクロコンピュータなども不要である。したがって圧力調整弁60を制御するための電力も不要である。これによって冷却装置10は、外部からの電気、信号および動力などの供給無くても自律で冷媒流量を調整し、筐体12内を適切な温度に維持することができる。
【0054】
換言すると、基地局側からの電源・信号・動力の供給無しで冷却性能を調整することができ、電話基地局90全体の製造コストを下げることができる。また圧力調整弁60が冷媒圧力に応じて開閉するため、センサーおよび制御装置等を使う必要がない。さらに圧力調整弁60の構造が簡単なため故障が少なく、信頼性が高い構造を得ることができる。
【0055】
また本実施の形態では、液戻り管50は延長部51を有する。延長部51は、筐体12内における空気と内部を流れる冷媒との間で熱交換を行う部分である。延長部51は、筐体12内の温度が上昇すると、上昇した筐体12内の空気と熱交換して、冷媒の温度が上昇する。したがって延長部51によって、筐体12内の温度上昇に伴う冷媒の温度上昇がしやすくなる。冷媒の温度が上昇しやすいと、冷媒の圧力が上昇しやすいので、筐体12内の温度上昇から圧力調整弁60が冷媒の流れを許容するまでの時間を短くすることができる。換言すると、圧力調整弁60の応答性を向上することができる。これによって筐体12内が急に温度上昇した場合であっても、圧力調整弁60が短時間で冷媒の流れを許容して、冷却装置10の冷却能力を発揮することができる。したがって筐体12内の短時間の温度上昇を防止することができる。
【0056】
また本実施の形態では、延長部51は、筐体12の内部における引き回しの長さが長くなるように曲がる部分を有する。これによって熱交換可能な延長部51の筐体12の内部における表面積を大きくすることができる。したがって簡単な構成で筐体12内の空気と熱交換可能な延長部51を実現することができる。また延長部51は、曲がる部分を有する構成であれば、ジグザグ状に限らず、らせん状であってもよく、直管を直角に折り曲げた形状(クランク状)であってもよい。
【0057】
換言すると、延長部51は、外気低温時に系統内の冷媒圧力を上げるために必要である。延長部51が無い場合は、冷媒気化によってすべて外気側の室外熱交換器30に上がってしまい、かつ、沸騰側の室内熱交換器20に冷媒が無いため、系統内の圧力が上がらず、圧力調整弁60が開かないおそれがある。圧力調整弁60が開かないと、冷媒が循環しないため内気温は上昇を続け、最終的には通信機器11が高温異常になるおそれがある。これに対して液戻り管50に延長部51を設けることによって、延長部51の冷媒の温度が上がって冷媒圧力が上がり、圧力調整弁60を確実に開くことができる。
【0058】
さらに本実施の形態では、冷却装置10において冷媒は室内熱交換器20内において沸騰気化し室外熱交換器30内で凝縮することにより室内熱交換器20と室外熱交換器30との間を循環して、筐体12内を冷却する構成である。この構成によれば、室内熱交換器20および室外熱交換器30を沸騰冷却式の冷却装置10に適用することにより、限られた設置スペースの中で高い冷却能力を確保できる熱交換器を設置できるとともに、冷媒を強制的に循環するための駆動部品を不要にできるため、駆動部品を備える場合に比べてフリーメンテナンスの冷却装置10が得られる。これにより、例えば寒冷地、山中等の環境条件の厳しい場所に設置される電話基地局90にとって有用な冷却装置10を提供できる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、図4および図5を用いて説明する。図4は、第2実施形態の熱交換部70Aの一例を示す図である。図5は、第2実施形態の熱交換部70Aの他の例である熱交換部70Bを示す図である。本実施の形態では、延長部51が前述の第1実施形態と構成が異なる点に特徴を有する。
【0060】
前述の第1実施形態では、熱交換部70Aは配管を引き回す延長部51によって構成されているが、このような構成に限るものではなく、図4に示すように、熱交換部70Aは、液戻り管50における他の部分よりも単位長さ当たりの外表面積が大きいように構成してもよい。具体的には、熱交換部70Aは、液戻り管50の単なる延長ではなく、径の拡大した配管によって構成する。
【0061】
また図5に示すように、熱交換部70Bは、複数に分岐している部分を有するように構成してもよい。具体的には、熱交換部70Bは、液戻り管50の単なる延長ではなく、枝分かれした直管が取り付けられて構成される。
【0062】
このような図4および図5に示す熱交換部70A,70Bの構成によって、筐体12内の空気と熱交換可能な領域を大きくすることができる。したがって簡単な構成で筐体12内の空気と熱交換可能な熱交換部70A,70Bを実現することができる。
【0063】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0064】
前述の第1実施形態では、発熱機器は通信機器11であったが、通信機器11に限るものではなく、他の電子機器であってもよい。また前述の第1実施形態では、室外熱交換器30および室内熱交換器20は、2個のコア部21,22,31,32を重ねるように配置した構成であったが、このような構成に限るものではなく、1個のコア部であってもよく、3個以上のコア部を重ねて配置してもよい。
【0065】
また前述の第1実施形態では、開閉手段は、図2に示す圧力調整弁60であったが、このような圧力調整弁60に限るものではなく、冷媒の圧力変化に感応して作動する作動部を有するような他の構成の圧力調整弁であってもよい。換言すると、開閉手段は、冷媒の圧力変化のみを動力源とする機械式の構成であればよい。前述の第1実施形態の圧力調整弁60においては、たとえばスプリング64に代えて、重りを用いて押圧するような構成であってもい。
【0066】
また前述の第1実施形態および第2実施形態では、延長部51または熱交換部70A,70Bを用いる構成であるが、延長部51および熱交換部70A,70Bは必須構成ではないので、延長部51および熱交換部70A,70Bを含まずに冷却装置10を構成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…冷却装置
11…通信機器(発熱機器)
12…筐体
20…室内熱交換器
30…室外熱交換器
40…蒸気流通管
50…液戻り管
51…延長部
60…圧力調整弁
63…弁体(作用部)
64…スプリング
65…閉塞部
70A,70B…熱交換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱機器(11)を収納する筐体(12)の内部に設けられ、前記筐体内の空気と内部を流れる冷媒との間で熱交換が行われる室内熱交換器(20)と、
前記筐体の外部に設けられ、内部を流れる冷媒と外気との間で熱交換が行われる室外熱交換器(30)と、
前記室内熱交換器で前記筐体内の空気と熱交換して沸騰した冷媒を、前記室外熱交換器へ導く蒸気流通管(40)と、
前記室外熱交換器で前記外気と熱交換して凝縮した冷媒を、前記室内熱交換器へ導く液戻り管(50)と、を備え、
前記冷媒は、前記室内熱交換器内において沸騰し前記室外熱交換器内で凝縮することによって前記室内熱交換器と前記室外熱交換器との間を循環し、前記室内熱交換器で吸熱し前記室外熱交換器で放熱して前記筐体内を冷却する冷却装置(10)であって、
前記液戻り管に設けられ、前記冷媒の圧力が予め設定される設定圧力以上になると前記液戻り管内の冷媒の流れを許容し、前記設定圧力未満になると前記液戻り管内の冷媒の流れを阻止する開閉手段(60)と、を含み、
前記開閉手段は、前記冷媒の圧力が作用する作用部(63)を備え、
前記作用部は、前記冷媒の圧力変化に応じて移動することによって、前記液戻り管内の冷媒の流れの許容または阻止することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記液戻り管は、前記筐体内における空気と内部を流れる冷媒との間で熱交換が行われる熱交換部(51,70A,70B)を有することを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記熱交換部(51)は、前記筐体の内部における引き回しの長さが長くなるように曲がる部分を有することを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記熱交換部(70A)は、前記液戻り管における他の部分よりも単位長さ当たりの外表面積が大きいことを特徴とする請求項2または3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記熱交換部(70B)は、複数に分岐している部分を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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