説明

冷却貯蔵庫

【課題】簡単な構造により完全に分割された形態でかつ独立して温度制御可能な2つの貯蔵室を構成する。
【解決手段】断熱箱体からなる貯蔵庫本体10内が縦向きの熱良導性の仕切板16で仕切られて左右2室の貯蔵室20A,20Bが区画形成される。冷凍回路40は、共通の冷凍装置57に対して、室内用蒸発器50と壁面用蒸発器53とが並列に循環接続され、各蒸発器50,53への冷媒の供給と停止とが独立して制御可能である。第1貯蔵室20Aに設けられた蒸発器室25には、室内用蒸発器50と庫内ファン64が設けられ、第2貯蔵室20Bには、右側と奥側の内壁面70,71の裏側に壁面用蒸発器53が設けられる。第1貯蔵室20Aは冷気の循環により冷却され、第2貯蔵室20Bは、仕切板16と内壁面70,71からの輻射冷熱を受けて自然対流により冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、庫内温度を独立して制御し得る複数の貯蔵室を備えた冷却貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の冷却貯蔵庫の一例として、特許文献1に記載されたような横型の冷凍冷蔵庫が知られている。このものは、断熱箱体からなる貯蔵庫本体内が縦向きの断熱壁で仕切られることにより冷凍室と冷蔵室とに区画形成されるとともに、圧縮機、凝縮器を含む共通の冷凍装置に対し2つの蒸発器が並列配置されて循環接続され、弁装置により各蒸発器への冷媒の供給と停止とを独立して制御可能な冷凍回路が備えられ、各室ごとにいずれ一方の蒸発器と庫内ファンとが配設された構造になり、冷凍室と冷蔵室では、個別の温度センサにより検出された庫内温度と、予め定められた個別の目標温度との比較に基づいて対応する蒸発器への冷媒の供給と停止とが制御され、それぞれの庫内温度が各目標温度に維持されるようになっている。
【0003】
しかしながら上記従来例では、各貯蔵室ごとに、蒸発器に加えて、庫内ファン、冷気循環用ダクト、さらには除霜ヒータ等を装備する必要があって、部品点数が多くなり、また各貯蔵室の仕切りに断熱壁を配していることで、製造コストが高くなる嫌いがあった。また、両貯蔵室とも、冷気が直接に循環流通される直接冷却方式であることから、食材が乾燥し勝ちであった。
また、他の従来例として特許文献2に記載されたものが知られている。これは、蒸発器等を装備するのは冷凍室側に留め、冷蔵室側は、ダンパにより冷凍室内の冷気の供給を制御することで温度制御するようにしている。
【特許文献1】特許第3411182号公報
【特許文献2】特許第3426500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
後者の従来例は、前者と比較すると、構造が比較的簡単となって安価に製造し得るものの、両貯蔵室内の空気が行き来するために食材の匂いが移ったり、浮遊菌等の細菌の感染も懸念される。また、冷蔵室側でも空気の循環があるために食材の乾燥が相変わらず発生する不具合があり、新たな装置の出現が切望されていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、簡単な構造で以て空気流通のない完全に分割された形態でかつ独立して温度制御可能な2つの貯蔵室が形成でき、しかも1室は間接冷却し得る冷却貯蔵庫を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の冷却貯蔵庫は、断熱箱体からなる貯蔵庫本体内には縦向きの熱良導性の仕切板で仕切られることにより左右2室の貯蔵室が区画形成されているとともに、圧縮機、凝縮器を含む冷凍装置に対し、室内用蒸発器と壁面用蒸発器とが並列配置されて循環接続され、弁装置により前記各蒸発器への冷媒の供給と停止とを独立して制御可能な冷凍回路が備えられ、一方の貯蔵室には、前記室内用蒸発器とこの一方の貯蔵室内に循環流を生じさせる庫内ファンが設けられ、他方の貯蔵室には、この他方の貯蔵室の内壁面を構成する内装板の裏側に前記壁面用蒸発器が設けられ、かつ前記各貯蔵室では、それぞれの庫内の目標温度が、他方の貯蔵室の目標温度が一方の貯蔵室の目標温度以上となることを条件に個別に設定可能となっており、前記各貯蔵室では、個別の温度センサにより検出された庫内温度と、対応する前記目標温度との比較に基づいて、対応する前記蒸発器への冷媒の供給と停止とが制御されることにより庫内温度が各目標温度に維持されるようになっているところに特徴を有する。
【0006】
この構成によれば、一方の貯蔵室では、室内用蒸発器に冷媒が流通され、かつ庫内ファンが駆動されることに伴い、室内用蒸発器付近で生成された冷気が循環流通されることで庫内が冷却され、この間、当該一方の貯蔵室の庫内温度と目標温度とが比較されてそれに基づき室内用蒸発器への冷媒の供給と停止とが制御されることにより、庫内が目標温度付近に維持される。
目標温度が一方の貯蔵室のそれ以上である他方の貯蔵室では、壁面用蒸発器に冷媒が流通されることで内壁面が冷却されるとともに、仕切板が一方の貯蔵室内の冷気によって冷却され、庫内はその輻射冷熱を受けて自然対流により冷却され、この間、当該他方の貯蔵室の庫内温度と目標温度とが比較されてそれに基づき壁面用蒸発器への冷媒の供給と停止とが制御されることにより、庫内が目標温度付近に維持される。
【0007】
他方の貯蔵室について、壁面用蒸発器により冷却される内壁面の冷熱と、一方の貯蔵室の冷気で冷却される仕切板の冷熱とを利用して冷却するようにしたから、全体としては簡単な構造で以て、独立して温度制御可能な2つの貯蔵室が形成でき、また、両貯蔵室は互いに空気流通のない完全に分割された形態であるから、食材の匂いが移ったり浮遊菌等の細菌の感染も防止される。しかも他方の貯蔵室は、自然対流で冷却される間接冷却方式であるから、庫内を高湿に保つことができる。
【0008】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記冷凍回路は、前記冷凍装置の出口側に、開閉弁、絞り装置及び前記室内用蒸発器を直列に配した第1冷媒管路と、開閉弁、絞り装置及び前記壁面用蒸発器を直列に配した第2冷媒管路とが並列に接続されて、前記両冷媒管路の合流された出口が前記冷凍装置の入口側に循環接続され、前記各開閉弁の開閉により前記各蒸発器への冷媒の供給と停止とが独立して制御可能となっている。第1冷媒配管と第2冷媒配管とに配された各開閉弁を開閉することにより、室内用蒸発器と壁面用蒸発器への冷媒の供給と停止とが独立して制御できる。
【0009】
(2)前記壁面用蒸発器は、前記他方の貯蔵室の前記内壁面のうち前記仕切板と対向した内壁面を構成する内装板の裏側に配されている。他方の貯蔵室内は、仕切板と、それと対向した内壁面からの輻射冷熱を受けて自然対流により冷却され、すなわち対向した2面から輻射冷熱を受けることで、温度むらが少なくなる。
(3)前記壁面用蒸発器は、前記他方の貯蔵室の前記内壁面のうち、前記仕切板と対向した内壁面を構成する内装板と、奥側の内壁面を構成する内装板の裏側に亘って配されている。冷却される壁面が多くなることで冷却速度が高くなる。
【0010】
(4)前記壁面用蒸発器が、前記内装板における上部側の位置に配されている。自然対流を利用していることで、小容量の蒸発器であっても貯蔵室内を効率良く冷却することができる。
(5)前記壁面用蒸発器が、冷媒が流通する蒸発パイプを所定間隔を開けたジグザグ状に配管して形成されている。冷却壁面と庫内との間に大きな温度差ができると、冷却壁面に結露するおそれがあるが、壁面用蒸発器が蒸発パイプを粗いジグザク状に配管した形状としたことにより冷却壁面が局部的に冷え過ぎることが阻止され、もって冷却壁面に結露することが防がれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な構造で以て空気流通のない完全に分割された形態でかつ独立して温度制御可能な2つの貯蔵室が形成でき、しかも1室は間接冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態を図1ないし図4に基づいて説明する。この実施形態では、横型(テーブル型)冷蔵庫を例示している。
図1ないし図3において、符号10は貯蔵庫本体であって、共にステンレス鋼板からなる外箱11内に間隔を開けて内箱12を嵌合して、同間隔内に発泡ウレタン樹脂等の断熱材13を充填してなる前面開口の断熱箱体により構成されている。
この貯蔵庫本体10は全体として横長形状であって、正面から見た右側の半分弱の領域が、左側の領域と比べて段差状に所定寸法背が高く形成されている。貯蔵庫本体10の前面開口部における上記した段差部分19と対応する位置には、外殻内に断熱材を充填してなる断熱性の仕切柱14が立てられており、前面開口部も段差部分で左右に仕切られている。
【0013】
貯蔵庫本体10内における段差部分19と対応する位置には、縦向きの仕切板16が張られて左右に仕切られている。仕切板16は、ステンレス鋼板等の熱良導性の板材を素材として形成され、全体として、貯蔵庫本体10の背の低い側の天井壁と底壁の間隔に匹敵する縦寸法と、貯蔵庫本体10の奥壁と仕切柱14の内面との間隔に匹敵する横寸法とを持った方形形状をなし、かつ4周縁に取付用のフランジ17が直角曲げされて形成されている。
この仕切板16が、上記のように貯蔵庫本体10内における段差部分19と対応する位置に嵌められ、4周縁のフランジ17が、背の低い側の天井壁の右端部と底壁におけるその直下位置、また仕切柱14の内面と奥壁におけるその後方位置にそれぞれ当てられ、ねじ止めされて固定されている。
【0014】
上記のように仕切板16が張られることにより、仕切板16の左側には、間口が相対的に広くかつ背が相対的に低い前面開口の第1貯蔵室20Aが形成され、一方、同仕切板16の右側には、間口が相対的に狭くかつ背が相対的に高い同じく前面開口の第2貯蔵室20Bが形成されている。
左側の第1貯蔵室20Aは、内部に棚板22が複数段に亘って装着できるようになっているとともに、前面の出入口23には、左側の側縁を中心として揺動開閉可能な断熱扉24が装着されている。また、第1貯蔵室20Aの左側面における奥行方向の中央部には、後記する室内用蒸発器50等が収納される蒸発器室25が張り出し形成されている。
【0015】
一方、右側の第2貯蔵室20Bは、上下2個のドロワ26が収納されるドロワ式となっており、前面開口部における高さ方向の略中央部に断熱性の横枠29が嵌着されることで、上下2個の出入口30が形成されている。ドロワ26は、断熱性の扉27の裏側にホテルパン等を収納可能な枠体部28を設けた構造であって、各ドロワ26は、扉27で出入口30を開閉しつつ、第2貯蔵室20B内に設けられたレール(図示せず)に沿って出し入れ可能に収納されるようになっている。
【0016】
また、貯蔵庫本体10の正面から見た左側部には、後記する冷凍装置57等が出し入れ可能に収納される機械室32が設けられており、貯蔵庫本体10の底面の四隅と、機械室32の底面の前後両縁部にそれぞれ設けられた脚体34によって、貯蔵庫本体10並びに機械室32が支持されている。なお、機械室32から第1貯蔵室20Aにわたる上面と、第2貯蔵室20Bの上面とにそれぞれ天板が張られて、段差状のテーブル35が構成されている。
【0017】
本実施形態に適用される冷凍回路40は、図4に示すようである。すなわち、圧縮機41の出口側に凝縮器ファン43付きの凝縮器42が接続され、その下流側に、ドライヤ44とストレーナ45とが順次に接続されている。ストレーナ45の下流側には、第1冷媒管路46Aと第2冷媒管路46Bとが並列に接続されている。
第1冷媒管路46Aには、開閉弁である第1電磁弁47A、絞り装置である第1キャピラリチューブ48A、室内用蒸発器50及び逆止弁51が直列接続されている。第1キャピラリチューブ48Aと室内用蒸発器50からの出口側管路とが密着されて熱交換部52Aが形成されている。
第2冷媒管路46Bには、開閉弁である第2電磁弁47B、絞り装置である第2キャピラリチューブ48B及び壁面用蒸発器53が直列接続されている。第2キャピラリチューブ48Bと壁面用蒸発器53からの出口側管路とが密着されて熱交換部52Bが形成されている。第1冷媒管路46Aと第2冷媒管路46Bの出口側が合流され、圧縮機41の入口側に還流接続されている。
【0018】
ここで、室内用蒸発器50は、多数枚のフィンが列設されて全体としとブロック状に形成されたフィン群55に対して、冷媒配管の一部として設けられた1本の蒸発パイプ56が、各フィンをジグザク状に貫通しつつ複数段かつ複数列にわたって配管された形状となっている。
一方、壁面用蒸発器53は、詳しくは後記するように、第2貯蔵室20Bにおける右側の内壁面70から奥側の内壁面71に亘るほぼ上半分の領域に沿って装着し得るように、同じく冷媒配管の一部として設けられた1本の蒸発パイプ56が、上下方向において広い間隔を開けてジグザク状に4段に亘って配管され、かつ長さ方向の途中位置が直角曲げされて、全体として平面L形をなすように形成されている。
【0019】
そして、第1電磁弁47Aが開放されると、第1冷媒管路46Aすなわち室内用蒸発器50に冷媒が流通し、同第1電磁弁47Aが閉鎖されると、室内用蒸発器50への冷媒の流通が停止する。一方、第2電磁弁47Bが開放されると、第2冷媒管路46Bすなわち壁面用蒸発器53に冷媒が流通し、同第2電磁弁47Bが閉鎖されると、壁面用蒸発器53への冷媒の流通が停止する。要するところ、各電磁弁47A,47Bの開閉により、室内用蒸発器50と壁面用蒸発器53への冷媒の供給と停止とが、独立して制御されるようになっている。
この冷凍回路40において、圧縮機41、凝縮器42等が冷凍装置57を構成しており、この冷凍装置57に加え、室内用蒸発器50と壁面用蒸発器53とを除く他の構成部品と冷媒配管とが機械室32内に装備され、室内用蒸発器50は第1貯蔵室20Aに、壁面用蒸発器53は第2貯蔵室20Bにそれぞれ装備されている。
【0020】
第1貯蔵室20A側において、蒸発器室25の庫内側開口部にはダクトパネル60が張られており、同ダクトパネル60の下部位置には庫内空気の吸込口61が、上部位置には冷気の吹出口62がそれぞれ形成されている。蒸発器室25の奥壁の中央高さ位置には、上記した室内用蒸発器50が配設されているとともに、この室内用蒸発器50の上部位置で、かつ吹出口62の裏面と対応する位置には、庫内ファン64が配設されている。
庫内ファン64が駆動されると、図2の矢線に示すように、第1貯蔵室20Aの庫内空気が吸込口61から吸い込まれて室内用蒸発器50を下から上へと貫通して流通し、続いて吹出口62から天井壁に沿うように第2貯蔵室20B側に向けて流れたのち、仕切板16に沿うように流下して底壁側に回り込み、再び吸込口61から吸い込まれるといった循環流が生じるようになっている。
なお、蒸発器室25内における吸込口61の裏側の位置には、第1貯蔵室20Aの庫内温度を検知する第1庫内温度センサ65Aが設けられている。また、室内用蒸発器50の下面側には、除霜ヒータ66が装備されている。
【0021】
第2貯蔵室20B側には、壁面用蒸発器53が装着されている。詳細には、第2貯蔵室20Bにおける右側と奥側の内壁面70,71を構成する内箱12の裏面(断熱材13側の面)、特にそのほぼ上半分の領域において、上記したように蒸発パイプ56を4段のジグザグ状に配管してなる平面L形の壁面用蒸発器53が密着して装着されている。この壁面用蒸発器53では、室内用蒸発器50と比べて、蒸発パイプ56がいわゆる粗いジグザグ状に配管されていて、例えば各段の蒸発パイプ56の間隔が、第2貯蔵室20Bの全高の1割強といった大きい寸法となっている。
第2貯蔵室20Bにおける段差部分19を構成する左内側壁72には、その奥行方向のほぼ中央位置において、第2貯蔵室20Bの庫内温度を検出する第2庫内温度センサ65Bが設けられている。
【0022】
また、第1貯蔵室20Aと第2貯蔵室20Bについて、それぞれ個別に庫内の目標温度が設定可能となっている。ただし、第2貯蔵室20Bの目標温度は、第1貯蔵室20Aの目標温度よりも高いか、せいぜい同じ温度のみが設定可能となっている。使用例として、この実施形態では、第1貯蔵室20Aの目標温度が「3℃」、第2貯蔵室20Bの目標温度が「8℃」にそれぞれ設定されている。
【0023】
続いて、本実施形態の作用を説明する。
第1貯蔵室20A側の冷却動作は、庫内ファン64が駆動された状態において、第1電磁弁47Aを開いて室内用蒸発器50に冷媒を流通させ、すなわち室内用蒸発器50を駆動状態とすることで行われる。このとき、第1貯蔵室20Aの庫内空気が吸込口61から蒸発器室25内に吸い込まれて、室内用蒸発器50を下から上に通過する間に熱交換によって冷気が生成され、その冷気が吹出口62から天井壁に沿うように第2貯蔵室20B側(図2の右側)に向けて流れたのち、仕切板16に沿うように流下して底壁側に回り込み、再び吸込口61から吸い込まれるといったように循環流通されることにより、第1貯蔵室20A内が冷却される。
【0024】
この間、第1庫内温度センサ65Aによって第1貯蔵室20Aの庫内温度が検出され、その検出値が、予め設定された第1貯蔵室20Aの目標温度(3℃)よりも低くなると、第1電磁弁47Aが閉じられて室内用蒸発器50への冷媒の供給が停止され、目標温度(3℃)よりも高くなると、室内用蒸発器50への冷媒の供給が再開されることが繰り返され、第1貯蔵室20A内が目標温度(3℃)付近に維持される。
【0025】
第2貯蔵室20B側では、第2電磁弁47Bを開いて壁面用蒸発器53へ冷媒を供給すると、壁面用蒸発器53を構成する蒸発パイプ56内で冷媒が蒸発することに伴う潜熱によって、右側と奥側の内壁面70,71(以下、適宜に冷却壁面という)の主に上半分の領域が冷却される。それとともに、両貯蔵室20A,20Bの間の仕切板16に対して、第1貯蔵室20A側の庫内空気(目標温度の相違によって第2貯蔵室20Bの庫内空気の温度よりも低い)の冷熱が伝達され、すなわち仕切板16が冷却される。その結果、第2貯蔵室20B内では、左側面(仕切板16)並びに右側面と奥面(冷却壁面70,71)の上部領域から輻射冷熱を受け、自然対流によって次第に冷却される。
【0026】
この間、第2庫内温度センサ65Bによって第2貯蔵室20Bの庫内温度が検出され、その検出値が、予め設定された第2貯蔵室20Bの目標温度(8℃)よりも低くなると、第2電磁弁47Bが閉じられて壁面用蒸発器53への冷媒の供給が停止され、目標温度(8℃)よりも高くなると、壁面用蒸発器53への冷媒の供給が再開されることが繰り返され、第2貯蔵室20B内が目標温度(8℃)付近に維持される。
【0027】
このように本実施形態によれば、第2貯蔵室20Bについて、壁面用蒸発器53により冷却される内壁面70,71の冷熱と、第1貯蔵室20Aの冷気で冷却される仕切板16の冷熱とを利用して冷却するようにしたから、全体としては簡単な構造で以て、独立して温度制御可能な2つの貯蔵室20A,20Bを構成することができる。また、両貯蔵室20A,20Bは互いに空気流通のない完全に分割された形態であるから、食材の匂いが移ったり浮遊菌等の細菌の感染も防止することができる。
しかも第2貯蔵室20Bは、自然対流で冷却されるいわゆる間接冷却方式であるから、冷気を強制循環させる方式と違って、内部が高湿に保たれて収納された食材の乾燥を抑制できる。具体的には、乾燥しやすい食材について、ラップで包んだり容器等に入れることなく、冷蔵保存することができる。
【0028】
壁面用蒸発器53を構成する蒸発パイプ56が、少なくとも仕切板16と対向した右側の内壁面70に装着されているから、第2貯蔵室20Bが対向した2面から輻射冷熱を受けることとなって、庫内の温度むらが少なくなる。また、同蒸発パイプ56が、奥側の内壁面71にも装着されていて、いわゆる冷却壁面が多くなることで冷却速度が高くなる。
また、自然対流を利用していることから、蒸発パイプ56の装着を内壁面70,71の上部領域に留めても、十分に第2貯蔵室20B内を冷却でき、言い換えると、壁面用蒸発器53を小容量に留めても効率良く冷却することができる。
【0029】
なお、第2貯蔵室20Bのような間接冷却方式のものでは、内壁面70,71が冷え過ぎて壁面温度と庫内温度との差が大きくなると、内壁面70,71に結露が生じて庫内湿度の低下を招くおそれがある。
その点この実施形態では、第2貯蔵室20Bの目標温度が比較的高いことで、壁面用蒸発器53の蒸発温度をそれほど下げる必要がなくて、冷却壁面70,71の温度が下がり過ぎることがなく、また、壁面用蒸発器53を構成する蒸発パイプ56を粗いジグザク状に配管したことにより、冷却壁面70,71が局部的に冷え過ぎることも阻止される。さらに、第1貯蔵室20Aの目標温度も、第2貯蔵室20Bのそれよりも数度低い程度であることから、仕切板16が冷え過ぎることも規制される。結果、冷却壁面70,71や仕切板16に結露することが防止されて、第2貯蔵室20B内を確実に高湿度に維持することができる。
【0030】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)壁面用蒸発器の装着壁面(冷却壁面)は、仕切板と対向した右側の内壁面だけとしてもよい。また、同装着壁面(冷却壁面)は、天井面を含めて他の面のみとしてもよく、さらに適宜の複数面を設定してもよい。
(2)壁面用蒸発器は、蒸発パイプを横方向にジグザグ状に配管した形状等、他の形状としてもよい。
【0031】
(3)上記実施形態では、室内用蒸発器と壁面用蒸発器への冷媒の供給と停止とを独立して制御する弁装置として、個々に電磁弁を付設したものを例示したが、上記機能を発揮する限り他の形式のものを用いてもよい。
(4)第1貯蔵室と第2貯蔵室の目標温度は、第2貯蔵室の目標温度が第1貯蔵室の目標温度以上である限り、任意に選定することができる。
【0032】
(5)上記実施形態では、第2貯蔵室をドロワ式とした場合を例示したが、棚等が入れられる通常の貯蔵室としてもよい。
(6)本発明は、横型の冷凍冷蔵庫等、要は庫内温度を独立して制御し得る2つの貯蔵室を横方向に並べて備えた冷却貯蔵庫全般に広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る横型冷蔵庫の正面図
【図2】その正面から見た断面図
【図3】その平断面図
【図4】冷凍回路のブロック図
【符号の説明】
【0034】
10…貯蔵庫本体
12…内箱(内装板)
16…仕切板
20A…第1貯蔵室(一方の貯蔵室)
20B…第2貯蔵室(他方の貯蔵室)
25…蒸発器室
40…冷凍回路
41…圧縮機
42…凝縮器
46A…第1冷媒管路
46B…第2冷媒管路
47A,47B…電磁弁(開閉弁;弁装置)
48A,48B…キャピラリチューブ(絞り装置)
50…室内用蒸発器
53…壁面用蒸発器
56…蒸発パイプ
57…冷凍装置
64…庫内ファン
65A,65B…庫内温度センサ
70,71…内壁面(冷却壁面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱箱体からなる貯蔵庫本体内には縦向きの熱良導性の仕切板で仕切られることにより左右2室の貯蔵室が区画形成されているとともに、
圧縮機、凝縮器を含む冷凍装置に対し、室内用蒸発器と壁面用蒸発器とが並列配置されて循環接続され、弁装置により前記各蒸発器への冷媒の供給と停止とを独立して制御可能な冷凍回路が備えられ、
一方の貯蔵室には、前記室内用蒸発器とこの一方の貯蔵室内に循環流を生じさせる庫内ファンが設けられ、他方の貯蔵室には、この他方の貯蔵室の内壁面を構成する内装板の裏側に前記壁面用蒸発器が設けられ、
かつ前記各貯蔵室では、それぞれの庫内の目標温度が、他方の貯蔵室の目標温度が一方の貯蔵室の目標温度以上となることを条件に個別に設定可能となっており、
前記各貯蔵室では、個別の温度センサにより検出された庫内温度と、対応する前記目標温度との比較に基づいて、対応する前記蒸発器への冷媒の供給と停止とが制御されることにより庫内温度が各目標温度に維持されるようになっていることを特徴とする冷却貯蔵庫。
【請求項2】
前記冷凍回路は、前記冷凍装置の出口側に、開閉弁、絞り装置及び前記室内用蒸発器を直列に配した第1冷媒管路と、開閉弁、絞り装置及び前記壁面用蒸発器を直列に配した第2冷媒管路とが並列に接続されて、前記両冷媒管路の合流された出口が前記冷凍装置の入口側に循環接続され、前記各開閉弁の開閉により前記各蒸発器への冷媒の供給と停止とが独立して制御可能となっていることを特徴とする請求項1記載の冷却貯蔵庫。
【請求項3】
前記壁面用蒸発器は、前記他方の貯蔵室の前記内壁面のうち前記仕切板と対向した内壁面を構成する内装板の裏側に配されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の冷却貯蔵庫。
【請求項4】
前記壁面用蒸発器は、前記他方の貯蔵室の前記内壁面のうち、前記仕切板と対向した内壁面を構成する内装板と、奥側の内壁面を構成する内装板の裏側に亘って配されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の冷却貯蔵庫。
【請求項5】
前記壁面用蒸発器が、前記内装板における上部側の位置に配されていることを特徴とする請求項3または請求項4記載の冷却貯蔵庫。
【請求項6】
前記壁面用蒸発器が、冷媒が流通する蒸発パイプを所定間隔を開けたジグザグ状に配管して形成されていることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載の冷却貯蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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