説明

冷媒供給システム

【課題】 試験設備から所望される温度の冷媒を、正確迅速に温度制御をして供給するための冷媒供給システムを提供する。
【解決手段】 試験設備への冷媒を供給する熱源タンク内には、当該熱源タンク内の冷媒を撹拌する撹拌機および冷媒の温度を上昇させることが可能な電熱ヒータを備える。電熱ヒータの近傍には、試験設備への冷媒供給口を備え、電熱ヒータから離れた位置には、熱交換器との連通口を備える。試験設備から所望される温度よりもやや低い温度を確保しておき、電熱ヒータにて微調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工環境装置、例えば給湯・空調の性能試験を実施する際、所望される水温の水を、正確に水温制御をして安定的に供給するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯設備の性能試験などにおいては、試験の内容に応じて、必要とされる水温が異なる。その試験内容に必要とされる水温となる水流は、熱源タンクから供給される。また、熱源タンクに溜められる水は、冷却装置と加温装置とを備え、所望される温度に調整してから、所望される設備に対して提供する。
ここで冷却装置とは、一般的には、タンクとは別に外部に設けられた熱交換器を備えている。
なお、関連する特許として抽出したのは、例えば特許文献1に記載された技術である。
【0003】
【特許文献1】特開2004−232977号
【0004】
特許文献1には、給湯器を構成する構成部品に内在する個体差を考慮し、運転状態の検出精度や制御性能を向上させるための技術が開示されている。より具体的には、以下の通りである。
すなわち、給湯器1の構成部品である入水温度センサ21、流量センサ22、出湯温度センサ23、ガス比例弁34及び燃焼ファン42には、部品情報として実際に使用されているそれぞれの部品に固有の個体特性データが記憶された無線タグ61a、61eがそれぞれ設置されており、コントローラ51には、無線タグ61a、61eに記憶された部品情報を無線により読み取るタグリーダ62が接続されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
試験の精度を高水準に維持するためには、所望される水温およびその水量にかなりの正確さが要求される。
所望される水量の水温と、それを供給する熱源タンクの水温とが異なっている場合には、調整が必要である。所望される水温よりも熱源タンクの水温の方が低い場合には、加温装置の運転制御にて比較的短時間で調整が可能である。
【0006】
しかし、所望される水温よりも熱源タンクの水温の方が高い場合には、短時間での調整が困難であった。冷却には熱交換器が必要であり、冷媒温度を冷却する方向での微調整ができなかったからである。
【0007】
本願発明は、所望される水温の水を、正確に水温制御をして供給するための技術を提供することを、解決課題としている。
請求項1から請求項7に記載の発明の目的は、所定の設備から所望される水温の水を、正確に水温制御をして供給するための冷媒供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1)
請求項1記載の発明は、所定の設備から要求される温度および流量の設備用冷媒を供給するための熱源タンクと、 その熱源タンクに蓄積されている設備用冷媒の温度よりも低い温度の冷媒を蓄積するとともに、その冷媒と熱交換器とを介して熱源タンクへ冷熱を供給可能な冷熱タンクとを備える冷媒供給システムに係る。
そして、熱源タンクには、当該熱源タンク内の設備用冷媒を撹拌する撹拌機と、熱源タンク内の設備用冷媒の温度を上昇させることが可能な電熱ヒータと、その電熱ヒータに近接させた位置において、設備用冷媒を前記所定の設備に供給するための冷媒供給口と、その冷媒供給口から離れた位置において、熱交換器にて冷却された設備用冷媒を熱源タンク内に戻すための冷却冷媒返還口と、を備える。
【0009】
(用語説明)
「所定の設備」とは、たとえば、計測や性能試験に用いる試験室、実験設備などである。
「熱源タンク」は、所定の設備から要求される流量の数倍以上の余裕ある容量を確保できるものを採用している。
「電熱ヒータ」は、電気制御にて冷媒温度を上昇させる場合に、正確で迅速に行える。瞬発性が高く、冷媒温度の微調整をする能力も高い。
【0010】
(作用)
冷熱タンクには、低い温度の冷媒を蓄積する。そして、その冷媒の冷熱を、熱交換器を介して熱源タンクの設備用冷媒に移す。低い温度に冷やされた設備用冷媒は、冷却冷媒返還口から熱源タンク内に戻され、蓄積される。撹拌機は、熱源タンク内の冷媒を、常時あるいは必要に応じて撹拌する。
熱源タンクが確保した冷媒温度が、所定の設備から要求される設備用冷媒の温度よりも低い場合には、電熱ヒータによって冷媒温度を上昇させる。電熱ヒータは、応答性が速く、必要とされる温度への正確さにも優れている。また、この電熱ヒータは、冷媒供給口に近接させた位置に配置されているので、所定の設備へ送る直前での温度調節が可能である。
【0011】
熱源タンクが確保した設備用冷媒の温度が、所定の設備から要求される温度よりも高い場合には、冷熱タンクから熱交換器を介して冷熱の供給を受け、低い温度の設備用冷媒を調達する。熱交換器から戻ってくる設備用冷媒は、冷媒供給口から離れて位置している冷却冷媒返還口から戻ってくるので、電熱ヒータなどによる微調整前の設備用冷媒が冷媒供給口から所定の設備に送られることはない。このため、正確に制御された温度の冷媒を所定の設備に供給することが可能となる。
【0012】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の冷媒供給システムを限定したものである。
すなわち、前記冷却冷媒返還口と前記電熱ヒータとの間には、熱源タンク内の設備用冷媒が完全に自由に撹拌されることを妨げる不完全仕切りを備える。不完全仕切りによって仕切られた電熱ヒータが存在する側を加温領域とするとともに、冷却冷媒返還口が存在する側を冷却領域とし、前記冷媒供給口は、加温領域に位置させたことを特徴とする。
【0013】
(用語説明)
「不完全仕切り」とは、たとえば、当該不完全仕切りの下端が熱源タンクの底面よりも上に位置するように設置されることによって、不完全仕切りの下端と熱源タンクの底面との間に確保された隙間から、加温領域と冷却領域とで設備用冷媒が行き来できるようにしたものである。
【0014】
(作用)
冷媒が調達される冷却冷媒返還口は冷却領域に存在し、電熱ヒータが存在する加温領域とは不完全仕切りによって仕切られているので、冷媒供給口から所定の設備に供給すべき設備用冷媒の温度調整を正確迅速に行うことに寄与する。
【0015】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の冷媒供給システムを限定したものである。
すなわち、所定の設備に対して設備用冷媒を供給するためのポンプは、要求される設備用冷媒の流量に対して数倍以上の能力を備えるとともに、 所定の設備に対して供給するために熱源タンクを一旦出た設備用冷媒のうち、要求以上の流量の冷媒を熱源タンクに戻す返却経路を備え、 その返却経路は冷却領域に連通させるように形成したものである。
【0016】
(用語説明)
「ポンプ」の能力は、所定の設備から要求される流量の数倍、好ましくは10倍程度を確保する。
【0017】
(作用)
ポンプの能力には余裕があるので、所定の設備から要求される流量に対して余裕のある流量を送り込む。要求されている以上の流量の冷媒は、返却経路によって熱源タンクに戻される。戻された設備用冷媒は冷媒供給口からは遠い位置に戻されるので、熱源タンク内が撹拌され、温度の均一化に寄与する。
【0018】
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の冷媒供給システムを限定したものである。
すなわち、前記冷熱タンクに蓄積されている冷媒の温度よりも低い温度の当該冷媒を冷熱タンクに供給するためのブラインチラーユニットを、屋外に備えたことを特徴とする。
【0019】
(用語説明)
「ブラインチラーユニット」とは、一般には、冷媒を所定の温度に 調整する熱源機をいう。
【0020】
(作用)
ブラインチラーユニットを屋外に位置させることにより、気化させた水蒸気を室内から逃がすための設備などを省略でき、設備の簡素化を実現できる。
【0021】
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の冷媒供給システムを限定したものである。
すなわち、所定の設備から要求される設備用冷媒の温度が二種類ある場合において、熱源タンクが供給しない温度の設備用冷媒を供給するための補助熱源タンクを、熱源タンクとは別に備える。
その補助熱源タンク内には、当該補助熱源タンク内の設備用冷媒を撹拌する撹拌機と、 補助熱源タンク内の設備用冷媒の温度を上昇させることが可能な電熱ヒータと、 その電熱ヒータに近接させた位置において、設備用冷媒を前記所定の設備供給するための冷媒供給口と、 その冷媒供給口から離れた位置において、熱交換器にて冷却された設備用冷媒を熱源タンク内に戻すための冷却冷媒返還口と、を備える。
【0022】
(作用)
所定の設備から要求される冷媒温度が二種類ある場合に、熱源タンクとは別に備えられた補助熱源タンクは、熱源タンクが供給しない種類の冷媒を供給する。補助熱源タンク内には、熱源タンクと同様、撹拌機、電熱ヒータ、冷媒供給口、冷却冷媒返還口を備えている。このため、所定の設備に供給すべき設備用冷媒の温度および流量の制御は単純化される。
【0023】
補助熱源タンクは、設備用冷媒の供給能力のバッファとして機能することもできる。すなわち、所定の設備から要求されている冷媒の温度が一種類であるものの、その要求流量が多い場合には、熱源タンクの容量に余裕が無くなる場合がありえる。その場合、補助熱源タンクは、熱源タンクにおける設備用冷媒と同じ温度に制御し、要求される冷媒の供給能力を補助することができる。
【0024】
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の冷媒供給システムを限定したものである。
すなわち、前記冷熱タンクはエチレングリコールを冷媒とし、熱源タンクが所定の設備に供給する設備用冷媒は水であるとしたことを特徴とする。
【0025】
(作用)
冷熱タンクにおける冷媒をエチレングリコールとすることによって、摂氏零度あるいはそれ以下の冷媒を供給できる。
なお、所定の設備から要求される温度よりも熱源タンク内の設備用冷媒の温度が低くなっている場合には、電熱ヒータによって正確迅速に調整することができる。
【0026】
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の冷媒供給システムを限定したものである。
すなわち、前記冷熱タンクにおける熱交換器への冷媒供給口と熱交換器からの冷媒返還口とは離れた位置に配置し、冷媒供給口と冷媒返還口との間には、冷熱タンク内の設備用冷媒が完全に自由に撹拌されることを妨げる不完全仕切りを備える。
また、その不完全仕切りによって仕切られた冷媒供給口側には、冷熱タンク内の設備用冷媒の温度を上昇させることが可能な電熱ヒータを備える。
【0027】
(作用)
冷熱タンクにも、熱源タンクと同様に不完全仕切り、電熱ヒータを備えることで、熱交換器を介しての設備用冷媒の温度制御を正確、迅速に行える。例えば、冷熱タンク内の冷媒温度が、所定の設備から要求されている冷媒温度よりもかなり低い場合には、熱源タンクの設備用冷媒を冷やし過ぎてしまうおそれがある。その場合、冷熱タンク内の冷媒温度を、電熱ヒータにて冷媒の温度を上げてから熱交換器へ供給することができる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1から請求項7に記載の発明によれば、所定の設備から所望される温度の設備用冷媒を、正確に水温制御をして供給するための冷媒供給システムを提供することができた。
熱源タンクの冷媒温度を下げる能力が高く、電熱ヒータを備えていることから、試験室などの所定の設備から要求される冷媒温度の微調整が短時間に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本願発明を実施形態および図面によって、更に詳しく説明する。ここで使用する図面は、図1から図4である。図1および図2は本願発明を単純化したモデル図であり、図3および図4はフローチャートである。
【0030】
(図1)
図1は、試験設備から要求される温度および流量の設備用冷媒を供給するための熱源タンクと、 その熱源タンクに蓄積されている冷媒温度よりも低い温度の当該冷媒を蓄積するとともにその蓄積された冷媒を熱源タンクへ供給可能な冷熱タンクと、 その冷熱タンクに蓄積される冷媒の温度を下げるための空冷式ブラインチラーユニットと、冷熱タンクの冷媒を用いて熱源タンク内の設備用冷媒の温度を下げるための熱交換器と、を備える冷媒供給システムである。
【0031】
熱源タンクおよび冷熱タンクは、所定の設備から要求される流量の数倍以上の余裕ある容量を確保できるものを採用している。具体的には1620リットルの有効容量を備えている。
【0032】
熱源タンク内および冷熱タンク内には、当該タンク内の冷媒を撹拌する撹拌機および冷媒の温度を上昇させることが可能な電熱ヒータを備える。
この電熱ヒータは、電気制御にて冷媒温度を上昇させる場合に、瞬発性が高く、正確で迅速に行える。冷媒温度の微調整も可能である。
この電熱ヒータは、熱源タンクのみならず、冷熱タンクにも備えている。例えば、試験設備から要求される温度が熱源タンクに確保された冷媒の温度より高い場合には、冷熱タンク内の冷媒温度を、この電熱ヒータにて上昇させ、冷熱タンクの冷媒温度を上昇させる。そして、その冷媒を熱交換器を介して熱源タンクの冷媒に伝達し、試験設備から要求される温度の冷媒を熱源タンクに確保することとなる。
【0033】
熱源タンクには、当該熱源タンク内の設備用冷媒を撹拌する撹拌機と、電熱ヒータに近接させた位置に設備用冷媒を試験設備に供給するための冷媒供給口とを備える。また、その冷媒供給口から離れた位置において、熱交換器にて冷却された設備用冷媒を熱源タンク内に戻すための冷却冷媒返還口と、を備える。
更に、熱交換器供給口と電熱ヒータとの間には、熱源タンク内の冷媒が完全に自由に撹拌されることを妨げる不完全な仕切りを備える。この不完全な仕切りによって仕切られた電熱ヒータが存在する側を加温領域とするとともに、冷却冷媒返還口が存在する側を冷却領域とすると、冷媒供給口は、加温領域に位置させることとなる。
【0034】
前記の仕切り(不完全仕切り)は、その下端が熱源タンクの底面よりも上に位置するように設置されることによって、不完全仕切りの下端と熱源タンクの底面との間に確保された隙間から、加温領域と冷却領域とで冷媒が行き来できるように位置している。なお、仕切りの上端は、熱源タンク内の水面よりも上方に位置させている。
また、この仕切りは、冷熱タンクにも同様の構成にて設けられている。
【0035】
要求される冷媒を所定の設備に対して供給するためのポンプ(図1、図2では省略)は、要求される冷媒の流量に対して10倍以上の能力を備える。また、所定の設備に対して供給するために熱源タンクを一旦出た冷媒のうち、要求以上の流量の冷媒を熱源タンクに戻す返却経路(図1,図2では省略)を備え、その返却経路は冷却領域に連通させることとしている。
なお、試験設備にて使用された使用後の冷媒も、熱源タンクの冷却領域に設けられた使用済み冷媒返還口から戻される。
【0036】
ブラインチラーユニットは、空冷式としており、屋外に位置させているので、冷熱タンクの排熱を逃がしやすくしている。
【0037】
冷熱タンクの冷媒は、エチレングリコールとし、熱源タンクの設備用冷媒は水としている。冷熱タンクの冷媒をエチレングリコールとすることによって、試験設備に対しては摂氏零度までの水を供給できる。また、試験設備から要求される冷媒温度よりも熱源タンクの冷媒温度が低くなっている場合には、電熱ヒータによって調整することができる。
【0038】
以下、図1に示す実施形態の作用について説明する。
熱源タンクへ冷熱タンクの冷熱を供給するために備えられた熱交換器によって、両タンクには低い温度の冷媒を蓄積する。そして、試験設備から要求される温度および流量の冷媒は、熱源タンクに確保される。撹拌機は、熱源タンク内の冷媒を、常時あるいは必要に応じて撹拌する。
熱源タンクが確保した冷媒温度が、所定の設備から要求される冷媒の温度よりも高い場合には、熱交換器を介して温度が低下した冷媒を冷却冷媒返還供給口から調達する。熱源タンクが確保した冷媒温度が、試験設備から要求される冷媒の温度よりも低い場合には、電熱ヒータによって冷媒温度を上昇させる。電熱ヒータによる調整であるので、応答性が速い。
【0039】
冷却冷媒返還口は、電熱ヒータからは離れているので、再び冷媒温度を上昇させる必要がある場合にも制御しやすい。通常は、所定の設備から要求される冷媒の温度よりもやや低温となるように熱源タンクの冷媒温度を調整し、必要に応じて電熱ヒータにて加熱して微調整する。試験設備までの流路からの熱取得・熱損失に併せて調整しやすいからである。
【0040】
(図2)
図2に示す実施形態は、熱源タンクと同様に所定の設備に対する冷媒の供給を行える補助熱源タンク(図中では「熱源タンクB」と表示)を、熱源タンクとは別に備えた点が、図1とは異なる。
【0041】
この補助熱源タンク(B)は、熱源タンク(A)に連通することなく、試験設備に連通させている(破線矢印にて図示)。試験設備から要求される冷媒の温度が二種類ある場合に、熱源タンク(A)とは別に備えられた補助熱源タンク(B)は、熱源タンク(A)が供給しない種類の設備用冷媒を供給するのである。
「試験設備から要求される冷媒の温度が二種類ある場合」とは、例えば、冷却のための冷媒と、排熱用の冷媒との二種類が必要となる実験である。
【0042】
この補助熱源タンク(B)は、試験設備から要求されている冷媒の温度が一種類であるものの、その要求流量が多い場合には、冷媒の供給能力のバッファとして機能することもできる。すなわち、所定の設備から要求されている冷媒の流量が多い場合には、熱源タンクの容量に余裕が無くなる場合もあるが、その際に補助熱源タンク(B)は、熱源タンク(A)における設備用冷媒と同じ温度に制御し、要求される冷媒の供給能力を補助するのである。
【0043】
ところで、試験設備から要求される冷媒の温度および流量を提供するために必要な、流量計、水温計、調整弁、ポンプ等を備えている。ポンプの性能は、2〜20立方メートル/hである。
熱源タンクおよび冷熱タンクは、試験設備よりも約8メートル高位に位置しており、その高低差を利用して流量を供給できるので、ポンプの負担を軽減できる。換言すれば、大きな流量を要求された場合においても、ポンプの能力にて対応できる範囲が極めて広くなる。
【0044】
調整弁によって調整されて余剰となった流量については、熱源タンクの冷却領域側に戻す返却経路(図2では省略)を備えている。余剰となった流量を熱源タンクに戻すので、温度調節された冷媒を有効に使用することができる。また、熱源タンクの容量が実質的に大きな容量を確保することとなる。
【0045】
(図3)
図3は、試験種類について特性試験を選択した後の制御フローチャートである。なお図中では、冷熱タンクを「ブラインタンク」と表記している。
まず、熱源を「水熱源」であるか「空気熱源」であるかを選択する。「水熱源」を選択した場合には、次に、試験対象機器が何であるかを選択する。
水冷パッケージエアコン(PAC)、ファンコイルユニット(FCU)・エアハンドリングユニット(AHU)、給湯機の場合には、制御方法を選択する。入口温度および流量の制御なのか、出口温度および入口温度の制御なのか、出口温度および流量の制御なのか、である。
【0046】
制御方法について、3つのパターンがあるのは、以下のような理由である。すなわち、流量の制御は、入口温度計が測定した入口温度、出口温度計が測定した出口温度および流量計が測定した流量という三種類のパラメータのうち少なくとも2つがあれば、試験設備から要求される温度および流量との関係から流量を調整することが可能だからである。
なお、本実施形態では採用していないが、3つのパラメータをすべて取得し、2つのパラメータの組み合わせによってそれぞれ演算して微調整することとしてもよい。
【0047】
入口温度および流量を選択した場合には、流量供給装置を使用するか否かを選択する。使用する場合には、更に、出口温度を制御するか流量を制御するかを選択し、試験条件を設定する。この試験条件とは、定常試験のみならず非定常試験でも可能である。
【0048】
流量供給装置を使用しない場合には、熱源側供給装置を使用し、試験条件を設定する。
制御方法について、出口温度および流量制御を選択した場合にも、出口温度および入口温度を選択した場合にも、熱源側供給装置を使用し、試験条件を設定する。
【0049】
熱源として「空気熱源」を選択した場合には、室内側試験室の制御方法、すなわち温度制御なのか、熱量制御なのかを選択する。その選択の後、試験条件を設定する。この試験条件もまた、定常試験のみならず非定常試験でも可能である。
【0050】
(図4)
図4は、試験種類について能力試験を選択した後の制御フローチャートである。なお図中では、冷熱タンクを「ブラインタンク」と表記している。
試験対象機器についてルームエアコン(RAC)・パッケージエアコン(PAC)を選択した場合には、「水熱源」、「空気熱源」のいずれであっても、室内側試験室、熱源タンク、熱源タンクの運転を開始し、試験モード選択として定常試験を開始する。
【0051】
「空気熱源」において試験対象機器がチリングユニット(CHU)を選択した場合には、室外試験室、ブラインタンク、利用側タンクの運転を開始し、利用側タンクの制御方法を選択する。出口温度および流量の制御なのか、出口温度および入口温度の制御なのか、入口温度および流量の制御なのか、である。その選択が終了すると、試験モード選択として定常試験を開始する。
【0052】
「水熱源」において試験対象機器がチリングユニット(CHU)を選択した場合には、熱源タンクの制御方法または利用タンクの制御方法を選択する。ここにおいても制御方法の選択とは、出口温度および流量の制御なのか、出口温度および入口温度の制御なのか、入口温度および流量の制御なのか、である。その選択が終了すると、試験モード選択として定常試験を開始する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本願発明は、所定の設備から、所定の温度および流量の冷媒供給が求められるような場面において採用される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す概念図である。
【図2】本発明の第二の実施形態を示す概念図である。
【図3】試験種類について特性試験を選択した後の制御フローチャートである。
【図4】試験種類について能力試験を選択した後の制御フローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の設備から要求される温度および流量の設備用冷媒を供給するための熱源タンクと、
その熱源タンクに蓄積されている設備用冷媒の温度よりも低い温度の冷媒を蓄積するとともに、その冷媒と熱交換器とを介して熱源タンクへ冷熱を供給可能な冷熱タンクとを備える冷媒供給システムであって、
熱源タンクには、当該熱源タンク内の設備用冷媒を撹拌する撹拌機と、
熱源タンク内の設備用冷媒の温度を上昇させることが可能な電熱ヒータと、
その電熱ヒータに近接させた位置において、設備用冷媒を前記所定の設備に供給するための冷媒供給口と、
その冷媒供給口から離れた位置において、熱交換器にて冷却された設備用冷媒を熱源タンク内に戻すための冷却冷媒返還口と、を備えたことを特徴とする冷媒供給システム。
【請求項2】
前記冷却冷媒返還口と前記電熱ヒータとの間には、熱源タンク内の設備用冷媒が完全に自由に撹拌されることを妨げる不完全仕切りを備えることによって、不完全仕切りによって仕切られた電熱ヒータが存在する側を加温領域とするとともに、冷却冷媒返還口が存在する側を冷却領域とし、
前記冷媒供給口は、加温領域に位置させたことを特徴とする請求項1に記載の冷媒供給システム。
【請求項3】
所定の設備に対して設備用冷媒を供給するためのポンプは、要求される設備用冷媒の流量に対して数倍以上の能力を備えるとともに、
所定の設備に対して供給するために熱源タンクを一旦出た設備用冷媒のうち、要求以上の流量の冷媒を熱源タンクに戻す返却経路を備え、
その返却経路は冷却領域に連通させるように形成したことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の冷媒供給システム。
【請求項4】
前記冷熱タンクに蓄積されている冷媒の温度よりも低い温度の当該冷媒を冷熱タンクに供給するためのブラインチラーユニットを、屋外に備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の冷媒供給システム。
【請求項5】
所定の設備から要求される設備用冷媒の温度が二種類ある場合において、熱源タンクが供給しない温度の設備用冷媒を供給するための補助熱源タンクを、熱源タンクとは別に備え、
その補助熱源タンク内には、当該補助熱源タンク内の設備用冷媒を撹拌する撹拌機と、
補助熱源タンク内の設備用冷媒の温度を上昇させることが可能な電熱ヒータと、
その電熱ヒータに近接させた位置において、設備用冷媒を前記所定の設備に供給するための冷媒供給口と、
その冷媒供給口から離れた位置において、熱交換器にて冷却された設備用冷媒を熱源タンク内に戻すための冷却冷媒返還口と、を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の冷媒供給システム。
【請求項6】
前記冷熱タンクはエチレングリコールを冷媒とし、熱源タンクが所定の設備に供給する設備用冷媒は水であるとしたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の冷媒供給システム。
【請求項7】
前記冷熱タンクにおける熱交換器への冷媒供給口と熱交換器からの冷媒返還口とは離れた位置に配置し、冷媒供給口と冷媒返還口との間には、冷熱タンク内の設備用冷媒が完全に自由に撹拌されることを妨げる不完全仕切りを備えることによって、不完全仕切りを備え、
その不完全仕切りによって仕切られた冷媒供給口側には、冷熱タンク内の設備用冷媒の温度を上昇させることが可能な電熱ヒータを備えた請求項6に記載の冷媒供給システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−113882(P2007−113882A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308234(P2005−308234)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(392031413)株式会社大西熱学 (3)
【Fターム(参考)】