説明

冷媒回路装置

【課題】冷媒回路における冷媒量が加熱単独運転の必要量に相当するものであっても、消費電力量の低減化を図りながら冷却加熱運転を良好に行うことができる冷媒回路装置を提供すること。
【解決手段】庫内熱交換器24、圧縮機21、庫外熱交換器22を接続した主経路20と、圧縮機21からの冷媒を所定の庫内熱交換器24に供給する高圧冷媒導入経路30と、庫内熱交換器24からの冷媒を加熱側熱交換器42を経て主経路20に戻す戻経路40,50とを備え、第1戻経路40は、第1戻配管41の戻バルブ44よりも上流側で分岐し、その下流側に合流する分岐配管46に配設された可変流量膨張機構47を有し、冷却加熱運転を行う場合に戻バルブ44を閉成させ、加熱側熱交換器42の入口側の冷媒温度が外気温度に等しくなるよう可変流量膨張機構47の開度を調整するコントローラ80を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回路装置に関し、より詳細には、ヒートポンプ機能を有する冷媒回路を備えた冷媒回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプ機能を有する冷媒回路を備えた冷媒回路装置として次のようなものが知られている。すなわち、主経路と、高圧冷媒導入経路と、放熱経路と、戻経路とを有する冷媒回路を備えたものである。
【0003】
主経路は、庫内熱交換器、圧縮機、庫外熱交換器及び膨張機構が冷媒配管で順次接続されて環状に構成されている。庫内熱交換器は、対象となる室の内部に配設されている。圧縮機は、庫内熱交換器を通過した冷媒を吸引し、吸引した冷媒を圧縮して高温高圧の状態にして吐出するものである。庫外熱交換器は、圧縮機で圧縮した冷媒を導入して凝縮させるものである。膨張機構は、庫外熱交換器で凝縮した冷媒を減圧して断熱膨張させるものである。
【0004】
このような主経路においては、圧縮機で圧縮された冷媒が庫外熱交換器で凝縮し、凝縮した冷媒が膨張機構で断熱膨張され、庫内熱交換器で蒸発する。この庫内熱交換器で蒸発した冷媒は、圧縮機により吸引されて再び圧縮されて循環することになる。これにより庫内熱交換器が配設された室の内部空気は冷却されることになる。
【0005】
高圧冷媒導入経路は、圧縮機で圧縮した冷媒を導入し、主経路を構成する庫内熱交換器のうち加熱対象となる室に配設されたものに供給することにより該庫内熱交換器で冷媒を凝縮させるものである。これにより該庫内熱交換器が配設された室の内部空気は加熱されることになる。
【0006】
放熱経路は、庫内熱交換器で凝縮した冷媒を導入して庫外熱交換器に供給するものである。これにより庫外熱交換器では、通過する冷媒が周囲空気と熱交換を行って蒸発することになる。
【0007】
戻経路は、庫外熱交換器で蒸発した冷媒を導入して、圧縮機に送出させる態様で主経路に戻すものである。これにより戻経路を通過した冷媒は、主経路に至り、その後に圧縮機に送出されることになる。
【0008】
このような構成を有する冷媒回路装置においては、該当する室の内部空気の冷却のみを行う場合(冷却単独運転を行う場合)には、主経路のみに冷媒を循環させればよい。その一方、一の室の内部空気を冷却して他の室の内部空気を加熱する場合(冷却加熱運転を行う場合)には、主経路に圧縮機で圧縮した冷媒の一部を循環し、かつ他の一部の冷媒を高圧冷媒導入経路、放熱経路及び戻経路の順に循環させればよい。更に、該当する室の内部空気の加熱のみを行う場合(加熱単独運転を行う場合)には、圧縮機で圧縮した冷媒を、高圧冷媒導入経路、放熱経路及び戻経路の順に通過させて圧縮機に戻すよう循環させればよい(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−304397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、冷却加熱運転を行う場合と加熱単独運転を行う場合とでは、冷媒回路における冷媒が流れる配管内容積が異なるために必要冷媒量が異なる。より詳細には、冷却加熱運転を行う場合の方が、加熱単独運転を行う場合よりも必要冷媒量が大きい。
【0011】
よって、上述した特許文献1に提案されている冷媒回路装置において、冷媒回路における冷媒量を加熱単独運転時の必要量に一致させると、冷却加熱運転時には冷媒量が不足して庫内熱交換器での凝縮温度が低下してしまい、圧縮機の駆動時間の長大化を招来し、消費電力量が増大してしまう。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みて、冷媒回路における冷媒量が加熱単独運転の必要量に相当するものであっても、消費電力量の低減化を図りながら冷却加熱運転を良好に行うことができる冷媒回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る冷媒回路装置は、対象室の内部に配設された庫内熱交換器と、前記庫内熱交換器を通過した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した冷媒を凝縮させる庫外熱交換器とを冷媒配管で順次接続して構成した主経路と、自身に設けられた導入バルブが開成することにより前記圧縮機で圧縮した冷媒を導入し、かつ前記庫内熱交換器のうち加熱対象となる室に配設されたものに供給することにより、該庫内熱交換器で冷媒を凝縮させる高圧冷媒導入経路と、前記庫内熱交換器で凝縮した冷媒を加熱側熱交換器を経て前記主経路の庫内熱交換器の上流側に戻す戻経路と、前記主経路及び前記戻経路の少なくとも一方に設けられ、かつ前記庫外熱交換器で凝縮した冷媒及び前記加熱側熱交換器を通過した冷媒のいずれかを断熱膨張させる膨張機構とを備えた冷媒回路装置において、前記庫内熱交換器から前記加熱側熱交換器に至る配管の途中に配設され、自身が開成する場合には前記庫内熱交換器から前記加熱側熱交換器に冷媒が流れることを許容する一方、自身が閉成する場合には前記庫内熱交換器から前記加熱側熱交換器に冷媒が流れることを規制する戻バルブと、前記戻バルブが閉成する場合に前記庫内熱交換器で凝縮した冷媒を導入し、自身に設けられた流量制御可能な可変流量膨張機構で該冷媒を断熱膨張させて前記加熱側熱交換器に供給する分岐経路と、冷却加熱運転を行う場合において、前記戻バルブを閉成させ、かつ前記加熱側熱交換器の入口側の冷媒温度が外気温度に等しくなるよう前記可変流量膨張機構の開度を調整する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の冷媒回路装置によれば、冷却加熱運転を行う場合において、制御手段が、戻バルブを閉成させ、かつ加熱側熱交換器の入口側の冷媒温度が外気温度に等しくなるよう可変流量膨張機構の開度を調整するので、加熱対象となる室の庫内熱交換器で凝縮した液冷媒を断熱膨張させて気液2相冷媒にすることができる。しかも、加熱側熱交換器の入口における冷媒温度を外気温度に等しくするので、加熱側熱交換器を通過する冷媒(気液2相冷媒)の過熱度を零にすることができる。これにより、可変流量膨張機構から膨張機構に至る経路での冷媒を気液2相の高圧状態にすることができるとともに、加熱側熱交換器での放熱ロスを低減させることができる。このように可変流量膨張機構から膨張機構に至る経路での冷媒を気液2相の高圧状態にすることができるので、冷媒回路に封入された冷媒量が加熱単独運転の必要量に相当するものであっても、冷媒回路の圧縮機から加熱対象となる室の庫内熱交換器に至る冷媒量を十分に確保することができ、該庫内熱交換器での凝縮温度を上昇させることができる。これにより圧縮機の駆動時間を低減させることができる。従って、冷媒回路における冷媒量が加熱単独運転の必要量に相当するものであっても、消費電力量の低減化を図りながら冷却加熱運転を良好に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である冷媒回路装置が適用された自動販売機の内部構造を正面から見た場合を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示した自動販売機の内部構造を示すものであり、右側の商品収容庫の断面側面図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示した自動販売機に適用された冷媒回路装置を概念的に示す概念図である。
【図4】図4は、図3に示した冷媒回路装置において加熱単独運転を行う場合の冷媒の流れを示す概念図である。
【図5】図5は、図3に示した冷媒回路装置において冷却加熱運転(HCC運転)を行う場合の冷媒の流れを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る冷媒回路装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態である冷媒回路装置が適用された自動販売機の内部構造を正面から見た場合を示す断面図である。ここで例示する自動販売機は、本体キャビネット1を備えている。
【0018】
本体キャビネット1は、前面が開口した直方状の形態を成すものである。この本体キャビネット1には、その内部に例えば2つの断熱仕切板2によって仕切られた3つの独立した商品収容庫3が左右に並んだ態様で設けてある。この商品収容庫3は、缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品を所望の温度に維持した状態で収容するためのもので、断熱構造を有している。
【0019】
図2は、図1に示した自動販売機の内部構造を示すものであり、右側の商品収容庫3の断面側面図である。尚、ここでは右側の商品収容庫3(以下、適宜右庫3aとも称する)の内部構造について示すが、中央の商品収容庫3(以下、適宜中庫3bとも称する)及び左側の商品収容庫3(以下、適宜左庫3cとも称する)の内部構造も右庫3aと略同じような構成である。尚、本明細書における右側とは、自動販売機を正面から見た場合の右方を示し、左側とは、自動販売機を正面から見た場合の左方を示す。
【0020】
かかる図2に示すように、本体キャビネット1の前面には、外扉4及び内扉5が設けてある。外扉4は、本体キャビネット1の前面開口を開閉するためのものであり、内扉5は、商品収容庫3の前面を開閉するためのものである。この内扉5は、上下に分割してあり、上側の扉5aは商品を補充する際に開閉するものである。
【0021】
上記商品収容庫3には、商品収納ラック6、搬出機構7及び搬出シュータ8が設けてある。商品収納ラック6は、商品を上下方向に沿って並ぶ態様で収納するためのものである。搬出機構7は、商品収納ラック6の下部に設けてあり、この商品収納ラック6に収納された商品群の最下位にある商品を1つずつ搬出するためのものである。搬出シュータ8は、搬出機構7から搬出された商品を外扉4に設けられた商品取出口4aに導くためのものである。
【0022】
図3は、図1及び図2に示した自動販売機に適用された冷媒回路装置を概念的に示す概念図である。ここで例示する冷媒回路装置は、主経路20、高圧冷媒導入経路30、第1戻経路40及び第2戻経路50を有する冷媒回路10を備えて構成してある。冷媒回路10は、内部に冷媒(例えばR134a)が封入されている。
【0023】
主経路20は、圧縮機21、庫外熱交換器22及び庫内熱交換器24を冷媒配管25にて順次接続して構成してある。
【0024】
圧縮機21は、図2にも示すように機械室9に配設してある。機械室9は、本体キャビネット1の内部であって商品収容庫3と区画され、かつ商品収容庫3の下方側の室である。この圧縮機21は、吸引口を通じて冷媒を吸引し、吸引した冷媒を圧縮して高温高圧の状態(高温高圧冷媒)にして吐出口より吐出するものである。
【0025】
庫外熱交換器22は、図2にも示すように圧縮機21と同様に機械室9に配設してある。この庫外熱交換器22は、圧縮機21で圧縮された冷媒が通過する場合には、該冷媒を凝縮させるものである。
【0026】
この庫外熱交換器22と圧縮機21とを接続する冷媒配管25には、三方弁261が設けてある。かかる三方弁261については後述する。
【0027】
庫内熱交換器24は、複数(図示の例では3つ)設けてあり、各商品収容庫3の内部低域であって、背面ダクトD(図2参照)の前面側に配設してある。これら庫内熱交換器24と庫外熱交換器22とを接続する冷媒配管25は、その途中の第1分岐点P1で分岐して、右庫3aに配設された庫内熱交換器24(以下、右庫内熱交換器24aとも称する)の入口側に、中庫3bに配設された庫内熱交換器24(以下、中庫内熱交換器24bとも称する)の入口側に、左庫3cの内部に配設された庫内熱交換器24(以下、左庫内熱交換器24cとも称する)の入口側にそれぞれ接続してある。
【0028】
また、この冷媒配管25においては、第1分岐点P1から右庫内熱交換器24a、中庫内熱交換器24b及び左庫内熱交換器24cのそれぞれに至る途中に膨張機構231,232,233が設けてある。膨張機構231,232,233は、コントローラ80から与えられる指令に応じて開度を調整することができる流量可変のものであり、全閉状態となることも可能である。かかる膨張機構231,232,233は、通過する冷媒を減圧して断熱膨張させるものである。
【0029】
上記庫内熱交換器24の出口側に接続された冷媒配管25は、途中の第1合流点P2で合流し、アキュムレータ27を介して圧縮機21に接続している。ここでアキュムレータ27は、通過する冷媒が気液混合冷媒である場合に、液相冷媒を貯留して気相冷媒を通過させるためのものである。尚、中庫内熱交換器24b及び左庫内熱交換器24cの出口側から第1合流点P2に至る冷媒配管25の途中には出口側低圧電磁弁262b,262cが配設してある。かかる出口側低圧電磁弁262b,262cは、開閉可能な弁体であり、コントローラ80から開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。
【0030】
このような主経路20において、図3中の符号28は、内部熱交換器である。内部熱交換器28は、高圧冷媒と低圧冷媒との間で熱交換させるものである。
【0031】
高圧冷媒導入経路30は、三方弁261に連結され、その途中で分岐して、一方が中庫内熱交換器24bの入口側の冷媒配管25に、他方が左庫内熱交換器24cの入口側の冷媒配管25にそれぞれ合流する高圧冷媒導入配管31により構成された経路である。この高圧冷媒導入経路30は、圧縮機21で圧縮された冷媒(高圧冷媒)を導入する経路である。
【0032】
ここで三方弁261は、圧縮機21で圧縮した冷媒を庫外熱交換器22へ送出する第1送出状態と、圧縮機21で圧縮した冷媒を高圧冷媒導入経路30へ送出する第2送出状態との間で択一的に切り換え可能な切換バルブである。かかる三方弁261の切換動作は、コントローラ80から与えられる指令に応じて行われる。
【0033】
上記高圧冷媒導入配管31においては、分岐個所の下流側にそれぞれ高圧導入バルブ321,322が設けてある。高圧導入バルブ321,322は、開閉可能な弁体であり、コントローラ80から開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。
【0034】
つまり、中庫内熱交換器24b及び左庫内熱交換器24cは、高圧冷媒導入経路30を通じて圧縮機21で圧縮された冷媒が供給された場合には、通過する冷媒を凝縮させて対象となる商品収容庫3(中庫3b、左庫3c)の内部空気を加熱するものである。
【0035】
第1戻経路40は、中庫内熱交換器24b及び左庫内熱交換器24cの出口側に接続された冷媒配管25のそれぞれの途中で分岐され、第2合流点P3で合流し、庫外熱交換器22に隣接する態様で配設された加熱側熱交換器42の入口側に接続された第1戻配管41により構成された経路である。この第1戻経路40は、中庫内熱交換器24b及び左庫内熱交換器24cの少なくとも一方で凝縮した冷媒を加熱側熱交換器42に供給するためのものである。
【0036】
加熱側熱交換器42は、上記庫外熱交換器22に隣接する態様で配設してあり、自身を通過する冷媒と周囲空気との間で熱交換させて、該冷媒を放熱させるものである。すなわち、第1戻経路40は、庫内熱交換器24で凝縮した冷媒を導入して加熱側熱交換器42に送出し、該加熱側熱交換器42にて該冷媒を放熱させるものである。
【0037】
このような第1戻経路40を構成する第1戻配管41の途中、すなわち中庫内熱交換器24b及び左庫内熱交換器24cの出口側に接続された冷媒配管25との分岐点から第2合流点P3に至る途中に、それぞれ逆止弁431,432が設けてある。
【0038】
そして、上記第1戻経路40には、戻バルブ44及び分岐経路45が配設してある。戻バルブ44は、第1戻配管41の途中に設けてある。かかる戻バルブ44は、開閉可能な弁体であり、コントローラ80から開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。
【0039】
分岐経路45は、第1戻配管41における戻バルブ44よりも上流側の分岐点から分岐し、かつこの第1戻配管41における戻バルブ44よりも下流側の合流点で合流する態様で接続された分岐配管46により構成されるものであり、この分岐配管46には可変流量膨張機構47が配設してある。
【0040】
可変流量膨張機構47は、コントローラ80の開度調整制御部81から与えられる指令に応じて開度を調整することができる流量可変のものであり、全閉状態となることも可能である。かかる可変流量膨張機構47は、通過する冷媒を減圧して断熱膨張させるものである。
【0041】
第2戻経路50は、加熱側熱交換器42の出口側に接続され、かつ主経路20を構成する冷媒配管25、すなわち庫外熱交換器22(図示の例では内部熱交換器28)と第1分岐点P1との間の冷媒配管25の第3合流点P4に接続する第2戻配管51により構成されたものである。この第2戻経路50は、加熱側熱交換器42で放熱した冷媒を導入し、主経路20の庫内熱交換器24の上流側に戻すためのものであり、その途中にキャピラリーチューブ52が配設してある。このキャピラリーチューブ52は、第2戻配管51を通過する冷媒を減圧して断熱膨張させるものである。
【0042】
以上のような構成を有する冷媒回路10においては、上記構成の他に、第1バイパス経路60、第2バイパス経路70、外気温度センサS1及び加熱側熱交換器入口温度センサS2を備えている。
【0043】
第1バイパス経路60は、加熱側熱交換器42からキャピラリーチューブ52に至る第2戻配管51の途中の分岐点から分岐し、内部熱交換器28とアキュムレータ27との間の冷媒配管25の途中の合流点に合流する態様で設けられた第1バイパス配管61により構成してある。このような第1バイパス配管61には、第1バイパスバルブ62が設けてある。第1バイパスバルブ62は、開閉可能な弁体であり、コントローラ80から開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。
【0044】
第2バイパス経路70は、庫外熱交換器22から内部熱交換器28に至る冷媒配管25の途中の分岐点から分岐し、第1合流点P2から内部熱交換器28に至る冷媒配管25の途中の合流点に合流する態様で設けられた第2バイパス配管71により構成してある。このような第2バイパス配管71には、第2バイパスバルブ72が設けてある。第2バイパスバルブ72は、開閉可能な弁体であり、コントローラ80から開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。
【0045】
外気温度センサS1は、上記冷媒回路装置が適用される自動販売機の外部に配設してある。かかる外気温度センサS1は、外気温度を検出するものであり、検出した外気温度は、外気温度信号としてコントローラ80の開度調整制御部81に送出するものである。
【0046】
加熱側熱交換器入口温度センサS2は、加熱側熱交換器42の入口側近傍の第1戻配管41に配設してある。かかる加熱側熱交換器入口温度センサS2は、加熱側熱交換器42に進入する冷媒温度を検出するものであり、検出した冷媒温度は、冷媒温度信号としてコントローラ80の開度調整制御部81に送出するものである。
【0047】
ここでコントローラ80の開度調整制御部81は、可変流量膨張機構47の開度を調整するものであり、より詳細には、冷却加熱運転を行う場合において、外気温度センサS1で検出される外気温度と、加熱側熱交換器入口温度センサS2で検出される冷媒温度とが同一となるよう可変流量膨張機構47の開度を調整するものである。また、開度調整制御部81は、加熱単独運転を行う場合には、加熱側熱交換器入口温度センサS2で検出される冷媒温度が所望の範囲に含まれるよう、可変流量膨張機構47の開度を調整するものである。すなわち、加熱側熱交換器42を通過する冷媒が周囲空気と熱交換器を行って蒸発できる程度に、可変流量膨張機構47の開度を調整するものである。
【0048】
以上のような構成を有する冷媒回路装置は、次のようにして商品収容庫3に収容された商品を冷却、あるいは加熱する。
【0049】
まず、加熱単独運転(ここでは左庫3cのみの内部空気を加熱する運転)を行う場合について説明する。この場合、コントローラ80は、三方弁261を第2送出状態にさせ、膨張機構231,232,233を全閉にして出口側低圧電磁弁262b,262c、高圧導入バルブ321、戻バルブ44及び第2バイパスバルブ72を閉成させ、また高圧導入バルブ322及び第1バイパスバルブ62を開成させる。更に、コントローラ80の開度調整制御部81は、可変流量膨張機構47の開度を所望の大きさに調整する。これにより圧縮機21で圧縮された冷媒は、図4に示すように循環する。
【0050】
すなわち、圧縮機21で圧縮された冷媒は、第2送出状態にある三方弁261を経由して高圧冷媒導入配管31に流入し、該高圧冷媒導入配管31を通過して左庫内熱交換器24cに至る。左庫内熱交換器24cに至った冷媒は、該熱交換器を通過中に、左庫3cの内部空気と熱交換し、該内部空気に放熱して凝縮する。これにより左庫3cの内部空気を加熱する。加熱された内部空気は、庫内送風ファンF1の駆動により、左庫3cのそれぞれの内部を循環し、これにより左庫3cに収容された商品は、循環する内部空気に加熱される。
【0051】
左庫内熱交換器24cで凝縮した冷媒は、第1戻経路40を構成する第1戻配管41を通過して分岐配管46に至る。分岐配管46を通過する冷媒は、可変流量膨張機構47で断熱膨張し、断熱膨張した冷媒は、加熱側熱交換器42に至る。加熱側熱交換器42に至った冷媒は、周囲空気との間で熱交換を行うことで該加熱側熱交換器42を通過中に蒸発する。加熱側熱交換器42で蒸発した冷媒は、第2戻配管51を経由して第1バイパス配管61を通過し、アキュムレータ27を経由して圧縮機21に吸引され、圧縮機21に圧縮されて上述した循環を繰り返す。
【0052】
次に、HCC運転(左庫3cの内部空気を加熱し、かつ右庫3a及び中庫3bの内部空気を冷却する冷却加熱運転)を行う場合について説明する。この場合、コントローラ80は、三方弁261を第2送出状態にさせ、膨張機構233を全閉にして出口側低圧電磁弁262c、高圧導入バルブ321、戻バルブ44、第1バイパスバルブ62及び第2バイパスバルブ72を閉成させ、また膨張機構231,232の開度を所望の大きさにして出口側低圧電磁弁262b及び高圧導入バルブ322を開成させる。更に、コントローラ80の開度調整制御部81は、外気温度センサS1で検出される外気温度と、加熱側熱交換器入口温度センサS2で検出される冷媒温度とが同一となるよう、可変流量膨張機構47の開度を調整する。これにより圧縮機21で圧縮された冷媒は、図5に示すように循環する。
【0053】
すなわち、圧縮機21で圧縮された冷媒は、第2送出状態にある三方弁261を経由して高圧冷媒導入配管31に流入し、該高圧冷媒導入配管31を通過して左庫内熱交換器24cに至る。左庫内熱交換器24cに至った冷媒は、該熱交換器を通過中に、左庫3cの内部空気と熱交換し、該内部空気に放熱して凝縮し、液冷媒となる。これにより左庫3cの内部空気を加熱する。加熱された内部空気は、庫内送風ファンF1の駆動により、左庫3cのそれぞれの内部を循環し、これにより左庫3cに収容された商品は、循環する内部空気に加熱される。
【0054】
左庫内熱交換器24cで凝縮した冷媒(液冷媒)は、第1戻経路40を構成する第1戻配管41を通過して分岐配管46に至る。分岐配管46を通過する冷媒は、可変流量膨張機構47で断熱膨張して気液2相冷媒となり、加熱側熱交換器42に至る。
【0055】
ここで可変流量膨張機構47の開度は、コントローラ80の開度調整制御部81により、外気温度センサS1で検出される外気温度と加熱側熱交換器入口温度センサS2で検出される冷媒温度とが同一となる大きさに調整されていることから、加熱側熱交換器42を通過する冷媒(気液2相冷媒)は外気温度に等しく蒸発等を行わない。つまり、かかる加熱側熱交換器42を通過する冷媒の過熱度は零となる。
【0056】
加熱側熱交換器42を通過した冷媒は、第2戻配管51を通過してキャピラリーチューブ52で断熱膨張して低圧冷媒となって第3合流点P4より主経路20に流入し、開度が所望の大きさに調整された膨張機構231,232を通過する。かかる膨張機構231,232を通過した冷媒は、右庫内熱交換器24a及び中庫内熱交換器24bに至り、これら右庫内熱交換器24a及び中庫内熱交換器24bでそれぞれ蒸発して各商品収容庫3の内部空気から熱を奪い、該内部空気を冷却する。冷却された内部空気は、各庫内送風ファンF1の駆動により各商品収容庫3の内部を循環し、これにより各商品収容庫3(右庫3a及び中庫3b)に収容された商品は冷却される。右庫内熱交換器24a及び中庫内熱交換器24bで蒸発した冷媒は、アキュムレータ27を介して圧縮機21に吸引され、圧縮機21に圧縮されて上述した循環を繰り返す。
【0057】
以上説明したような本実施の形態である冷媒回路装置においては、例えばHCC運転のような冷却加熱運転を行う場合に、コントローラ80の開度調整制御部81が、外気温度センサS1で検出される外気温度と、加熱側熱交換器入口温度センサS2で検出される冷媒温度とが同一となるよう可変流量膨張機構47の開度を調整するので、左庫内熱交換器24cで凝縮した液冷媒を断熱膨張させて気液2相冷媒にすることができる。しかも、加熱側熱交換器42の入口における冷媒温度を外気温度に等しくするので、加熱側熱交換器42を通過する冷媒(気液2相冷媒)の過熱度を零にすることができる。これにより、可変流量膨張機構47からキャピラリーチューブ52に至る経路での冷媒を気液2相の高圧状態にすることができるとともに、加熱側熱交換器42での放熱ロスを低減させることができる。
【0058】
このように可変流量膨張機構47からキャピラリーチューブ52に至る経路での冷媒を気液2相の高圧状態にすることができるので、冷媒回路10に封入された冷媒量が加熱単独運転の必要量に相当するものであっても、冷媒回路10の圧縮機21から加熱対象となる室の庫内熱交換器24(左側庫内熱交換器24)に至る冷媒量を十分に確保することができ、該庫内熱交換器24での凝縮温度を上昇させることができる。これにより圧縮機21の駆動時間を低減させることができる。
【0059】
従って、本実施の形態1である冷媒回路装置によれば、冷媒回路10における冷媒量が加熱単独運転の必要量に相当するものであっても、消費電力量の低減化を図りながら冷却加熱運転を良好に行うことができる。
【0060】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0061】
上述した実施の形態では、第2戻配管51にキャピラリーチューブ52を設けてかかるキャピラリーチューブ52で断熱膨張させていたが、本発明においては、第2戻配管51のキャピラリーチューブ52は必須の構成要素ではなく、各庫内熱交換器24の上流側に設けた膨張機構231,232,233で断熱膨張させるようにしても良い。
【0062】
また、上述した実施の形態では、内部熱交換器28を設けてあったが、本発明では内部熱交換器はなくても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明に係る冷媒回路装置は、例えば缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品を販売する自動販売機に有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 本体キャビネット
10 冷媒回路
20 主経路
21 圧縮機
22 庫外熱交換器
231 膨張機構
232 膨張機構
233 膨張機構
24 庫内熱交換器
24a 右庫内熱交換器
24b 中庫内熱交換器
24c 左庫内熱交換器
25 冷媒配管
261 三方弁
263b 出口側低圧電磁弁
263c 出口側低圧電磁弁
30 高圧冷媒導入経路
31 高圧冷媒導入配管
321 高圧導入バルブ
322 高圧導入バルブ
40 第1戻経路
41 第1戻配管
42 加熱側熱交換器
44 戻バルブ
45 分岐経路
46 分岐配管
47 可変流量膨張機構
50 第2戻経路
51 第2戻配管
52 キャピラリーチューブ
60 第1バイパス経路
61 第1バイパス配管
62 第1バイパスバルブ
70 第2バイパス経路
71 第2バイパス配管
72 第2バイパスバルブ
80 コントローラ
81 開度調整制御部
S1 外気温度センサ
S2 加熱側熱交換器入口温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象室の内部に配設された庫内熱交換器と、前記庫内熱交換器を通過した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した冷媒を凝縮させる庫外熱交換器とを冷媒配管で順次接続して構成した主経路と、
自身に設けられた導入バルブが開成することにより前記圧縮機で圧縮した冷媒を導入し、かつ前記庫内熱交換器のうち加熱対象となる室に配設されたものに供給することにより、該庫内熱交換器で冷媒を凝縮させる高圧冷媒導入経路と、
前記庫内熱交換器で凝縮した冷媒を加熱側熱交換器を経て前記主経路の庫内熱交換器の上流側に戻す戻経路と、
前記主経路及び前記戻経路の少なくとも一方に設けられ、かつ前記庫外熱交換器で凝縮した冷媒及び前記加熱側熱交換器を通過した冷媒のいずれかを断熱膨張させる膨張機構と
を備えた冷媒回路装置において、
前記庫内熱交換器から前記加熱側熱交換器に至る配管の途中に配設され、自身が開成する場合には前記庫内熱交換器から前記加熱側熱交換器に冷媒が流れることを許容する一方、自身が閉成する場合には前記庫内熱交換器から前記加熱側熱交換器に冷媒が流れることを規制する戻バルブと、
前記戻バルブが閉成する場合に前記庫内熱交換器で凝縮した冷媒を導入し、自身に設けられた流量制御可能な可変流量膨張機構で該冷媒を断熱膨張させて前記加熱側熱交換器に供給する分岐経路と、
冷却加熱運転を行う場合において、前記戻バルブを閉成させ、かつ前記加熱側熱交換器の入口側の冷媒温度が外気温度に等しくなるよう前記可変流量膨張機構の開度を調整する制御手段と
を備えたことを特徴とする冷媒回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−2427(P2012−2427A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137569(P2010−137569)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】