説明

冷媒潤滑剤組成物

フルオロアルケン冷媒と共に使用するPAG潤滑剤のベース流体であって、ベース流体は式RX(RO)(RO)を有するPAGを含み、Rは1から10個の炭素原子を有するアルキル基、1から10個の炭素原子を有するアシル基、2から6の原子価を有する脂肪族炭化水素基、及びヘテロ原子が酸素である複素環を有する置換基からなる群から選択され、XはO又はSであり、RはC2のアルキレン基であり、RはC3のアルキレン基であり、RはRと同一又はHであり、x及びyはそれぞれ独立して0又は100以下の整数であり、x+yの合計は約5〜100の範囲の整数である。PAG潤滑剤のベース流体を含む冷媒及び潤滑剤組成物と、ほとんど漏電することなく冷房又は空調システムのモータ内蔵コンプレッサを稼動する方法も同様に提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府に援助された研究又は開発に関する陳述
適用無し
【0002】
本発明は合成冷媒用の潤滑剤に関連している。より具体的には、本発明は、HFO−1234yf冷媒などのフルオロアルケン冷媒と共に使用するのに適した潤滑剤に関連している。さらにより具体的には、本発明は、冷房/空調システムのモータ内蔵型コンプレッサにおける使用に適した潤滑剤に関連している。
【背景技術】
【0003】
自動車の空調システムに利用されている主要な冷媒は、HFCr134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)として知られるハイドロフルオロカーボン(HFC)を含んでいる。ヨーロッパの法律は、年式2011に有効である新たな車両(自動車)の空調システムにおけるHFCr134a冷媒の使用の廃止を義務付けている。この命令により、化学組成物2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンを含む、HFO−1234yfなどのハイドロフルオロオレフィン(HFO)冷媒を含む他の様々な冷媒が、自動車の空調システムに使用されるより環境に優しい冷媒として活発に開発されている。しかし、HFO−1234yfの化学型の冷媒は従来の自動車の空調システムにより使用可能な潤滑剤を必要とする。この種類の冷媒に特異的な性質を有する冷却潤滑剤は、それらが混合される際に、適切な混和性、化学反応、熱及び加水分解に対する安定性、及び適切な圧力、粘度及び動的温度を示さなければならない。
【0004】
車両の燃料の節約を実現するためにハイブリッド及び電動の空調コンプレッサの利用に対する産業界の注目が増加するにつれて、ベルト駆動のコンプレッサ(例えば、ベルト駆動式HFO−1234yfコンプレッサ)用に開発された潤滑剤の技術が、潤滑剤の電気的な性質を熟慮する必要がある電気駆動式のコンプレッサにおける使用に応用されることが更に望まれている。
【0005】
有機ポリアルキレングリコール(PAG)の潤滑剤は、例えばハニーウェル(Honeywell)の米国特許出願第2007/0069175号に教示されるように周知である。米国特許出願第2007/0069175号は、ポリアルキレングリコール(PAG)タイプの有機潤滑剤を含む様々な潤滑剤との様々なフルオロアルケンの混合物を教示している。米国特許出願第2007/0069175号は、潤滑剤の一つの構造型の別のものに対する適合性は教示していない。また、当該開示は、冷房及び空調システムにおける腐食防止、熱安定性、及び向上した潤滑性をもたらすために一般に利用されている添加剤の技術に関して、フルオロアルケンタイプの冷媒のシステム安定性に対する重大な影響、並びに潤滑剤の観点から必要とされる改良に言及していない。
【0006】
冷房/空調システムのモータ内蔵型コンプレッサにおけるPAGタイプの潤滑剤の使用は、出光の特開平04−015295号において言及されている。特開平04−015295号は特定の種類のPAGの精製にアニオン及び/又はカチオン交換樹脂を用いることを開示している。
【0007】
したがって、産業界には、HFO冷媒との使用、特にHFO−1234yfとの使用に適した潤滑剤、並びにモータ内蔵圧縮式冷房/空調システムにおける使用に適した潤滑剤に対する需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願第2007/0069175号明細書
【特許文献2】特開平04−015295号公報
【発明の概要】
【0009】
フルオロアルケン冷媒と使用するポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体であって、ポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体は、式RX(RO)(RO)を有するPAGを含み、Rは、1から10個の炭素原子を有するアルキル基、1から10個の炭素原子を有するアシル基、2から6の原子価を有する脂肪族炭化水素基、及び一つ以上のヘテロ原子が酸素である複素環を含む置換基からなる群から選択され、XはO及びSからなる群から選択され、RはC2のアルキレン基であり、RはC3のアルキレン基であり、RはRと同じ又はHであり、x及びyはそれぞれ独立して0から100の整数であり、x+yの合計は約5から約100の範囲の整数である。ある実施形態においては、xは0であり、ポリアルキレングリコール潤滑剤は、冷房/空調システムにおいてフルオロアルケン冷媒と組み合わせての使用に適していると共に、式RX(RO)を有するPAGを含み、Rは、1から10個の炭素原子を有するアルキル基及び脂肪族炭化水素からなる群から選択され、Xは酸素原子であり、Rは3個の炭素原子を有するアルキレン基からなる群から選択され、Rは1から10個の炭素原子を有するアルキル基及び脂肪族炭化水素からなる群から選択され、yは約5から約100の範囲の整数である。ある実施形態においては、R、R、又はその両方が1から3個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。ポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体は少なくとも30cSt(mm/s)の動粘度を有しても良い。ポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体は少なくとも150の粘度指数を有しても良い。ある実施形態におけるポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体は、モータ内蔵圧縮式の冷房及び空調システムにおいてフルオロアルケン冷媒と組み合わせた使用に適しており、ポリアルキレングリコールに用いられる精製技術により、ポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体は0.03mgKOH/g未満の合計酸価、30ppm未満のカチオン含有率、及び300ppm未満の含水率を示す。そのようなポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体は、モータ内蔵型コンプレッサにおいて漏電がほとんど観察されない、つまり20℃において1×1012Ωcmの最小体積抵抗率を示すために望ましい電気的性質を有しても良い。
【0010】
本明細書において同様に開示されているものは、冷房/空調システムにおいてフルオロアルケン冷媒と共に使用される潤滑剤組成物であり、潤滑剤組成物は少なくとも一つの添加剤及び式RX(RO)を有するPAGを含んでおり、Rは1から10個の炭素原子を含むアルキル基及び脂肪族炭素水素からなる群から選択され、Xは酸素原子であり、Rは3個の炭素原子を含むアルキレン基からなる群から選択され、Rは1から10個の炭素原子を含むアルキル基及び脂肪族炭化水素からなる群から選択され、yは約5から約100の範囲の整数である。ある実施形態において、少なくとも一つの添加剤は、耐磨耗又は極圧添加剤、抗酸化剤、腐食防止剤、及び酸捕捉剤から選択される。ある実施形態における潤滑剤組成物は、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸C7−C9分岐アルキルエステル(benzenpropanoic acid, 3,5-bis(1,1-dimethyl-100%ethyl)-4-hydroxy,C7-C9 branched alkyl esters)、及びN−フェニルベンゼンジアミンと2,4,4−トリメチルペンテンの反応物(benzenamine, N-phecyl, reaction products with 2,4,4-trimethylpentene)からなる群から選択される少なくとも一つの抗酸化剤を含む。ある実施形態における潤滑剤組成物は、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン(N,N-bis(2-ethylhexyl)-4-methyl-1H-benzotriazole-1-methylamine)及びN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン(N,N-bis(2-ethylhexyl)-5-methyl-1H-benzotriazole-1-methylamine)の異性体混合物からなる群から選択される少なくとも一つの腐食防止剤を含む。ある実施形態における潤滑剤組成物は、C11〜14の分岐したアルキルアミン、リン酸モノヘキシル及びリン酸ジヘキシルからなる群から選択される極圧又は耐磨耗添加剤を含む。ある実施形態における潤滑剤組成物は、エポキシ基を有する酸捕捉剤を含む。
【0011】
本明細書において同様に開示されているものは、圧縮式冷房、空調又はヒートポンプシステムに使用される作動流体組成物であり、作動流体組成物は、3又は4個の炭素原子及び少なくとも一つであり2個以下の二重結合を有するフルオロアルケンと、潤滑性を付与するのに有効な量の潤滑剤とを含み、フルオロアルケン及び最大で10重量%の潤滑剤を含む混合物は−60℃から+29.5℃の範囲の全ての温度において一つの液相を維持し、潤滑剤は式RX(RO)を有するPAGを含むポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体を全体的又は部分的に含み、Rは1から10個の炭素原子を含むアルキル基及び脂肪族炭化水素からなる群から選択され、Xは酸素原子であり、Rは3個の炭素原子を含むアルキレン基からなる群から選択され、Rは1から10個の炭素原子を含むアルキル基及び脂肪族炭化水素からなる群から選択され、yは約5から約100の範囲の整数である。ある実施形態における作動流体組成物は、潤滑性を付与するために有効な量の潤滑剤を含み、フルオロアルケンと最大で50重量%の潤滑剤とを含む混合物は−60℃から+29.5℃の範囲における全ての温度において一つの液相を維持する。
【0012】
本明細書において同様に開示されるものは、モータ内蔵圧縮式冷房/空調システムにおいて使用されるポリアルキレングリコールベースの潤滑剤組成物であり、ポリアルキレンベースの潤滑剤組成物は、式RX(RO)(RO)を有するPAGを含むポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体を含み、Rは、1から10個の炭素原子を有するアルキル基、1から10個の炭素原子を有するアシル基、2から6の原子価を有する脂肪族炭化水素基、及び一つ以上のヘテロ原子が酸素である複素環を有する置換基からなる群から選択され、XはO及びSからなる群から選択され、RはC2のアルキレン基であり、RはC3のアルキレン基であり、RはRと同じ又はHであり、x及びyはそれぞれ独立して0から100までの整数であり、x+yの合計は約5から約100の範囲の整数であり、ポリアルキレングリコールが精製されることによって、精製されたポリアルキレングリコールが0.03mgKOH/g未満の合計酸価、30ppm未満のカチオン含有率、及び300ppm未満の含水率を有すると共に、20℃において1×1012Ωcmの最小体積抵抗率を示す、すなわち、潤滑剤がモータ内蔵コンプレッサにおいてほとんど漏電しない。同様に開示されているものは、二酸化炭素(R744)及びフルオロカーボン1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)からなる群から選択される冷媒と、ポリアルキレングリコールベースの潤滑剤組成物とを含む作動組成物である。
【0013】
本明細書において同様に開示されるものは、冷房又は空調システムにおいてフルオロアルケン冷媒との使用に適したポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体であり、ポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体は、1から10個の炭素原子を含む単純なアルコキシ基で終端しているオキシプロピレンのホモポリマーを含む。ある実施形態において、オキシプロピレンのホモポリマーは少なくとも一つのメトキシ基で終端している。ある実施形態においては、オキシプロピレンのホモポリマーの各端がメトキシ基で終端している。ある実施形態においては、1から10個の炭素原子を含む単純なアルコキシ基によって終端しているオキシプロピレンのホモポリマーを含むポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体は、約5から約100のオキシプロピレン単位を含み、少なくとも30cSt(mm/s)の動粘度と少なくとも150の粘度指数とを有する。同様に開示されるものは、モータ内蔵圧縮式冷房又は空調システムにおいてフルオロアルケン冷媒との使用に適した潤滑剤組成物であり、潤滑剤組成物は、1から10個の炭化水素を含む単純なアルコキシ基によって終端しているオキシプロピレンのホモポリマーを含み、約0.03mgKOH/g未満の合計酸価、約30ppm未満のカチオン含有率、及び約300ppm未満の含水率を示す。そのような潤滑剤組成物は、20℃において少なくとも1×1012Ωcmの最小体積抵抗率を示しても良い。
【0014】
本明細書において同様に開示されるものは、冷房/空調システムにおいてフルオロアルケン冷媒と共に使用される潤滑剤組成物であり、潤滑剤組成物は、1から10個の炭素原子を含む単純なアルコキシ基によって終端されているオキシプロピレンのホモポリマーと少なくとも一つの添加剤とを含み、少なくとも一つの添加剤は、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸C7−C9分岐アルキルエステル、N−フェニルベンゼンジアミンと2,4,4−トリメチルペンテンの反応物、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンとN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンとの異性体混合物、C11−14の分岐したアルキルアミン、リン酸モノヘキシル、リン酸ジヘキシル、及びエポキシ基を有する酸捕捉剤からなる群から選択される。
【0015】
本明細書において同様に開示されるものは、圧縮式冷房、空調及びヒートポンプシステムにおいて使用される作動流体組成物であり、3又は4個の炭素原子と少なくとも一つであり2個以下の二重結合を有するフルオロアルケンと、潤滑性を付与するのに有効な量の潤滑剤組成物とを含み、フルオロアルケンと最大で50重量%の潤滑剤組成物とを含む混合物は−60℃から+29.5℃の全ての温度において単一の液相を示し、潤滑剤組成物は、1から10個の炭素原子を有する単純なアルコキシ基によって終端しているオキシプロピレンのホモポリマーを含むポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体を全体的又は部分的に含む。
【0016】
同様に開示されるものは、モータ内蔵圧縮式冷房及び空調システムにおいて二酸化炭素(R744)及びフルオロカーボン1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)からなる群から選択される冷媒と共に使用されるポリアルキレングリコールベースの潤滑剤組成物であり、ポリアルキレングリコールベースの潤滑剤組成物は精製されたポリアルキレングリコールを含み、ポリアルキレングリコールベースの潤滑剤組成物は0.03mgKOH/g未満の合計酸価、約30ppm未満のカチオン含有率、及び約300ppm未満の含水率を示すと共に、20℃において少なくとも1×1012Ωcmの最小体積抵抗率を示す。同様に開示されるものは、ほとんど漏電しない冷房又は空調システムのモータ内蔵コンプレッサを稼動する方法であり、当該方法は、冷媒とポリアルキレングリコールベースの潤滑剤組成物とを含む作動流体組成物を用いてコンプレッサを稼動することを含む。
【0017】
したがって、本明細書に記載されている実施形態は、ある種の従来の潤滑剤に関する様々な短所を解決することを意図する特徴及び利点の組み合わせを有する。上述の様々な特徴は他の特徴と同様に、以下の様々な実施形態の詳細な説明を読み、図を参照し、請求項を検討することにより、当業者に容易に明確になるであろう。
【0018】
本発明の様々な実施形態のより詳細な説明のために、添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本開示の一実施形態におけるPAGベースの潤滑剤の含水率に応じた体積抵抗率(Ωcm)のプロットである。
【図2】図2は本開示の一実施形態におけるPAGベースの潤滑剤の合計酸価に応じた体積抵抗率(Ωcm)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
表記及び命名
異なる記載が無ければ、“ベース流体”、“潤滑剤”、及び“潤滑油”は本明細書中において相互に交換可能に使用される。
【0021】
C1、C2、C3などの語句の使用は、示される数の炭素原子を有する官能基を表すことを意図している。すなわち、C1の官能基は1個の炭素原子を有し、C2の官能基は2個の炭素原子を有し、C3の官能基は3個の炭素原子を有し、他も同様である。
【0022】
表現“冷房/空調”の使用は、“冷房、空調、又はその両方”を意味することを意図している。
【0023】
表現“極圧/耐磨耗添加剤”の使用は、“極圧添加剤、耐磨耗添加剤、極圧及び耐磨耗添加剤として機能する添加剤、又は極圧添加剤及び耐磨耗添加剤の組み合わせ”を意味することを意図している。
【0024】
“作動流体組成物”は、本明細書において“作動流体組成物”と呼ばれることがあっても良い。
【0025】
本明細書において開示されるものは、フルオロアルケン(例えばHFO−1234yf)の冷房及び空調システムでの使用及び/又はモータ内蔵コンプレッサを用いた使用に適した種類のベース流体、ベース流体を含む冷却及び潤滑剤組成物、並びにベース流体を含む潤滑剤及び冷却組成物を調製する方法である。ある実施形態において、ベース流体は、HFO(例えばHFO−1234yf)の冷房及び空調システムにおける使用に所望される性質の最適なバランスを提供するよう設定された添加剤成分と組み合わされる。ある実施形態では、ベース流体は、モータ内蔵型コンプレッサ(例えば自動車の電動コンプレッサ)における潤滑剤の利用に所望される電気的な性質を提供するのに十分な純度を有している。高純度のベース流体はHFO又は別の冷媒と共に使用可能であっても良い。そのような用途の場合、潤滑剤組成物は、潤滑剤がモータ巻線に直接接触する利用態様に必要とされる電気的性質を保持する。
【0026】
ベース流体
本開示のベース流体は、ポリアルキレングリコールを含む。ある実施形態においては、PAGベース流体はモータ内蔵型コンプレッサを用いた使用に適している、又はモータ内蔵型コンプレッサにおける使用に適するように精製されている。ある実施形態では、PAGベース流体は、HFO−1234yf冷媒などのフルオロアルケン冷媒との使用に適している。
【0027】
ある実施形態において、PAGベース流体は式(1)で表される化学式を有するポリアルキレングリコールを含む。
RX(RO)(RO) (1)
ここで、Rは、1から10個の炭素原子を有するアルキル基、1から10個の炭素原子を有するアシル基、2から6の原子価を有する脂肪族炭化水素、及びヘテロ原子が酸素である複素環を有する置換基から選択され、XはO及びSから選択され、RはC2のアルキレン基であり、RはC3のアルキレン基であり、RはRと同じ又はHであり、x及びyはそれぞれ独立して0から100以下の整数であり、x+yの合計は5から100の範囲の整数である。ある実施形態では、XがOである。ある実施形態では、Rの官能基は水素原子、H又はヘテロ原子を含まない。脂肪族炭化水素の官能基は、限定するのではないが、アルカン、アルケン、又はアルキンを含む。好適な脂肪族炭化水素の例には、メチル、ブチル、及びプロピルが含まれる。ある実施形態では、ベース流体はオキシプロピレンのホモポリマーである。
【0028】
ある実施形態においては、ベース流体は、以下において更に説明されるように、HFO冷媒HFO−1234yfと混和性である。そのような実施形態では、ベース流体はジアルコキシで終端したポリアルキレングリコールを含む。ある実施形態においては、一つ以上のアルコキシ終端はメトキシ官能基である。ある実施形態では、両方のアルコキシ終端はメトキシ官能基である。ある実施形態では、ポリアルキレングリコールは直鎖のポリアルキレングリコールである。ある実施形態では、ポリアルキレングリコールはオキシプロピレンのホモポリマーである。オキシプロピレンに加えてオキシエチレンを含むヘテロポリマーは、これらのPAGが他のフルオロアルケンに対して適していたとしても、末端に水酸基を有するポリアルキレン基であるため、HFO−1234yfとの使用にはあまり望ましくない。したがって、ある実施形態においては、いずれのアルコキシ末端基も水酸基ではなく、ポリアルキレングリコールはオキシエチレンを含まない(すなわち、オキシプロピレンを含むヘテロポリマーを含まない)。
【0029】
HFO−1234yfを含むフルオロアルケンとの使用に適したPAG潤滑剤のベース流体は、xが0である式(1)の化学式を有する。そのような実施形態では、ベース流体は式(2)の化学式で表される構造型を有している。
RX(RO) (2)
ある実施形態においては、ベース流体は式(2)で表される化学式を有しており、RはC1からC10のアルキル基及び脂肪族炭化水素基から選択され、XはOであり、RはC3のアルキレン基であり、RはRと同一又は別のC1からC10のアルキル基若しくは脂肪族炭化水素であり、yは5から100の範囲の整数である。ある実施形態においては、RはC1のアルキル基である。ある実施形態では、RはC1のアルキル基であり、RはC1のアルキル基または別のC2からC10のアルキル基もしくは脂肪族炭化水素である。これらの実施形態では、Rの官能基は水素原子、H、又はヘテロ原子を含まない。
【0030】
ある実施形態では、潤滑油のベース流体は、更なる精製工程を経ることによって、潤滑剤が20℃で少なくとも1×1012Ωcmの体積抵抗率を示す。ある実施形態におけるポリアルキレングリコールは、最小レベルの酸又はアルカリ金属触媒のいずれか又は両方を要するように、カチオン及び/又はアニオン交換技術により精製される。ある実施形態のベース流体は、ベース流体の合計酸価が約0.03mgKOH/g未満、約0.02mgKOH/g未満、又は約0.01mgKOH/g未満であるように、提供又は精製される。ある実施形態では、ベース流体は、精製されたベース流体のカチオン含有率が約30ppm未満、約20ppm未満、又は約10ppm未満であるように、提供又は精製される。
【0031】
ポリアルキレングリコールは、従来冷房/空調システムのPAG潤滑剤に利用されていたよりも全体的に低い値まで含水率を低減するために、高度な乾燥技術によって乾燥されても良い。ある実施形態におけるベース流体は、約300ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の含水率で提供される又は当該含水率まで乾燥されているポリアルキレングリコールである。
【0032】
ある実施形態では、潤滑剤ベース流体又は潤滑剤組成物は、40℃で少なくとも30cSt(mm/s)、40℃で少なくとも20cSt(mm/s)、又は40℃で少なくとも10cSt(mm/s)の動粘度、及び又は少なくとも150、少なくとも120、又は少なくとも100の粘度指数を有する。ある実施形態においては、最大で50重量%の濃度で冷媒に添加されると、潤滑剤ベース流体又は潤滑剤組成物は、約−60℃から約30℃の間、約−75℃から約75℃の間、及び/又は約−100℃から約100℃の間で単一の液相を維持する。ある実施形態では、最大で50重量%の濃度でフルオロアルケン冷媒(例えば、HFO−1234yf冷媒)に添加されると、潤滑剤ベース流体又は潤滑剤組成物は、約−40℃及び約10℃の間、約−50℃から約20℃の間、及び/又は−60℃から約30℃の間の温度で単一の液相を維持する。
【0033】
潤滑剤組成物
潤滑油又はベース流体は、極圧添加剤、耐磨耗添加剤、抗酸化剤、及び抗腐食剤、消泡剤、pH調整剤、及び除水剤などの添加剤と組み合わせて使用されても良い。
【0034】
本明細書で開示されるものは、上述のベース流体と一つ以上の添加剤とを含む組成物である。開示されるポリアルキレングリコールのベース流体への特定の添加剤の導入は、冷却、空調及び冷房システムへの追加に一般に関係する冷房及び空調システムにおける潤滑剤の性能の一部も損なうことなく、添加剤の機能に関して性能面の利点を提供することを決定している。ある実施例において、潤滑剤組成物は、一つ以上の添加剤と組み合わされた式(1)又は(2)に記載される潤滑剤のベース流体を含む。ある実施形態では、一つ以上の添加剤はこれ以降において挙げられる官能基から選択される。本明細書において開示される添加剤が開示されるベース流体と共に使用するのに特に望まれるとしても、リストは排他的ではなく、当業者に周知の他の添加剤が代替的に又は追加的に好適なものであっても良い。ベース流体に対する一つ以上の添加剤の適切な選択、組み合わせ、及び/又は濃度は、冷媒の化学的及び/又は熱安定性を損なうことなく、システム内における腐食及び圧力による磨耗に関して、最適なレベルの潤滑剤及び冷却性能を提供する。
【0035】
ある実施形態においては、潤滑剤組成物は、約1.0%から約10.0重量%の添加剤、約2.0重量%から約6.0重量%の添加剤、又は約3.0重量%から約5.0重量%の添加剤を含む。ある実施形態では、冷媒組成物は、約2.5重量%、2.0重量%、1.5重量%、1.0重量%、0.5重量%、又は0.25重量%未満の添加剤を含む。
【0036】
ある実施形態では、潤滑剤組成物は一つ以上の抗酸化剤を含んでいる。ある実施形態では、一つ以上の抗酸化剤は、限定するのではないが、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸分岐アルキルエステル、及びN−フェニルベンゼンジアミンと2,4,4−トリメチルペンテンの反応物を含む、潤滑油組成物に関連する一般的なフェノールタイプ又はアミンタイプの抗酸化剤から選択される。ある実施形態の分岐アルキルエステルは、6個の炭素(C6)から12個の炭素(C12)のエステル、7個の炭素(C7)から12個の炭素(C12)のエステル、又は7個の炭素(C7)から12個の炭素(C12)のエステルを含む。ある実施例においては、当業者に周知なこの種のベース流体における酸化傾向を阻害する相乗的な抗酸化効果を得るために、二つ以上の抗酸化剤がベース流体に用いられても良い。本開示に係る潤滑剤組成物又は冷媒組成物は、約0重量%から約4.0重量%の抗酸化剤、約0.1から約2.0重量%の抗酸化剤、又は約0.2から約0.8重量%の抗酸化剤を含んでも良い。
【0037】
ある実施形態においては、潤滑剤組成物は一つ以上の腐食防止剤を更に含む。ある実施形態においては、一つ以上の腐食防止剤は、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン及びN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンの異性体混合物から選択される。本開示に係る潤滑剤組成物又は冷媒組成物は、約0.01から約1.0重量%の腐食防止剤、約0.01から約0.5重量%の腐食防止剤、又は約0.05から約0.15重量%の腐食防止剤を含んでも良い。
【0038】
ある実施形態においては、潤滑剤組成物は一つ以上の極圧/耐磨耗添加剤を含む。ある実施形態においては、一つ以上の極圧/耐磨耗添加剤は、限定するのではないが、分岐アルキルアミン、リン酸モノヘキシル及びリン酸ジヘキシルからなる群を含む、潤滑油組成物に一般に関連する硫黄及び/又はリン含有タイプから選択される。ある実施形態においては、極圧/耐磨耗添加剤は、5個の炭素(5C)から20個の炭素(20C)の構造(すなわち、5から20個の炭素原子を有する)、10個の炭素(10C)から15個の炭素(15C)の構造、又は11個の炭素(11C)から14個の炭素(14C)の構造を備える分岐アルキルアミンリン酸塩を含む。本開示に係る潤滑剤組成物又は冷媒組成物は、約0.01重量%から約1.0重量%の極圧/耐磨耗添加物、約0.01重量%から約0.5重量%の極圧/耐磨耗添加剤、又は約0.05重量%から約0.15重量%の極圧/耐磨耗添加剤を含んでも良い。
【0039】
上述したように、ある実施形態における潤滑剤組成物は、一つ以上のpH調整剤を更に含む。好適なpH調整剤は、限定するのではないが、エポキシ基を有する調整剤を含む。
【0040】
ポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体に対する添加剤の好適な組み合わせ及び添加量は、添加剤の別の選択において見られるかもしれないシステムの化学的又は熱安定性の悪化を伴うことなく、腐食防止及び潤滑性の向上に関する最適なレベルの添加剤の性能を提供する。
【0041】
冷媒組成物
本明細書において開示されるものは、上述したPAGベースの潤滑剤ベース流体及び冷媒を含む冷媒組成物である。冷媒組成物は、上述の添加剤を一つ以上含むことが好ましい。ある実施形態においては、冷媒組成物はフルオロアルケン冷媒を含む。ある実施形態では、フルオロアルケンは3又は4個の炭素原子と、少なくとも一つであり2個以下の二重結合とを有する。ある実施形態における冷媒組成物は、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、及び1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンから選択される冷媒を含む。ある実施形態では、冷媒組成物はHFO冷媒であるHFO−1234yfを含む。ある実施形態では、本開示の冷媒組成物はHFO−1234yfを含む。ある実施形態では、本開示の冷媒組成物はR744を含む。ある実施形態では、本開示の冷媒組成物はR134aを含む。
【0042】
ある実施形態では、潤滑剤は式(1)で表されるPAGを含み、潤滑剤はモータ内蔵型コンプレッサでほとんど漏電を起こさない。ある実施形態では、潤滑剤は式(2)で表されるPAGを含み、潤滑剤は冷房/空調システムにおいてフルオロアルケン冷媒との使用に適している。ある実施形態では、潤滑剤は式(2)で表されるPAGを含み、潤滑剤は圧縮式冷房、空調及びヒートポンプシステムにおける使用に適している。
【0043】
ある実施形態では、冷媒組成物は約0重量%から約100重量%の潤滑剤ベース流体、約0重量%から約80重量%の潤滑剤ベース流体、又は約0重量%から約50重量%の潤滑剤ベース流体を含む。ある実施形態においては、冷媒組成物は約50重量%、40重量%、30重量%、20重量%、10重量%、又は5重量%未満の潤滑剤ベース流体を含む。ある実施形態においては、冷媒組成物は約0重量%から約10重量%の添加剤、約0重量%から約5重量%の添加剤、又は約0重量%から約2.5重量%の添加剤を含む。ある実施形態においては、冷媒組成物は約2.5重量%、2.0重量%、1.5重量%、1.0重量%、0.5重量%、又は0.25重量%未満の添加剤を含む。
【0044】
潤滑剤を供給する方法
上述したように、本明細書において開示されるものは、ポリアルキレングリコールベースの潤滑剤を調製する方法である。当該方法は、アニオン/カチオン交換処理及び除湿技術によって潤滑剤を精製し、所望の潤滑剤特性を得ることを含む。所望される潤滑剤特性は、合計酸価、含水率、電気抵抗性、及びそれらの組み合わせから選択される一つ以上の性質の所望される値を含む。
【0045】
ある実施形態においては、潤滑油の精製は、20℃において少なくとも1×1012Ωmの体積抵抗率を有する精製潤滑剤を生じる。1×1012Ωcmを超える体積抵抗率も、触媒及び除湿技術の組み合わせによっては実現可能である。具体的には、そのような精製は、イオン交換技術、及び/又は制御された加熱及び減圧法の組み合わせを用いた制御された除湿を含んでも良い。HFO−1234yfとの利用のためにPAG潤滑剤にそのような精製法を適用することは、超純質(すなわち、30ppm未満のカチオン含有率、300ppm未満の含水率、及び/又は0.03mgKOH/g未満の合計酸価)の単一生成物がモータ内蔵及びモータ非内蔵HFO−1234yfの冷房及び空調システムの両方に使用可能に適合できるようにする。さらに、自動車の空調システムに使用するための環境に優しい冷媒として提案されているR134aなどのHFCタイプを含む別の冷媒やR744などの別の冷媒と組み合わせて使用される類似のポリアルキレングリコールにそのような精製法を適用することは、これらの冷房/空調システムのモータ内蔵型コンプレッサでのPAG潤滑剤の利用を可能にするであろう。
【0046】
ある実施形態においては、カチオン及び/又はアニオン交換法によってポリアルキレングリコールのベース流体を精製することは、最小レベルの酸又はアルカリ金属触媒の一方又は両方を提供する。ある実施形態においては、ベース流体の精製は、約0.03mgKOH/g未満、約0.02mgKOH/g未満、又は約0.01mgKOH/g未満の合計酸価を有するベース流体を提供する。ある実施形態においては、方法は、精製されたベース流体のカチオン含有率が約30ppm未満、約20ppm未満、又は約10ppm未満であるようにベース流体を精製することを含む。
【0047】
PAGベースの潤滑剤を精製することは、高度の乾燥法によりベース流体を含むポリアルキレングリコールを乾燥することによって、ベース流体の含水率を冷房/空調システムにおいてPAG潤滑剤に以前利用されていたよりも一般に低い値まで低減することを含む。ある実施形態においては、乾燥することは、乾燥したベース流体の含水率が約300ppm、200ppm、又は100ppm未満であるように潤滑剤から水分を除去することを含む。
【0048】
ある実施形態において、PAGベースの潤滑剤を調製することは、少なくとも30cSt(mm/s)、少なくとも20cSt(mm/s)、又は少なくとも10cSt(mm/s)の動粘度、及び/又は少なくとも150、少なくとも120、又は少なくとも100の粘度指数を有する潤滑剤組成物又は潤滑剤ベース流体を生成することを含む。ある実施形態においては、潤滑剤組成物を調製することは、50、40、30、20、10、又は5重量%未満の濃度で冷媒に添加されると、約−40℃から約10℃、−50℃から約20℃、及び/又は−60℃から30℃の温度で単一の液相を示す潤滑剤を提供することを含む。
【実施例】
【0049】
実施例1.様々な構造のPAGベース流体と比較した1234yf冷媒中における本発明のベース流体の混和性
0から50重量%の潤滑剤の重量%濃度における冷媒HFO−1234fyに対するPAG潤滑剤ベース流体の混和性は、ANSI/SHRAE86−1994標準の“冷却グレードオイルのフロック点の試験方法(Methods of Testing the Floc. Point of Refrigeration Grade Oils)”に基づき決定された。潤滑剤及び冷媒は厚肉のガラス試験管に重力測定法により添加された。そして、試験管は密閉された。溶液温度が室温(20℃)から60℃(冷却サイクル)及び室温から+95℃(加熱サイクル)に徐々に変化されるにつれて、相分離が目視で観察された。相分離が起こる(すなわち、一つの相が二つに分かれる)温度は、冷却サイクル及び加熱サイクルの両方で見られ、与えられた重量%の潤滑剤濃度において最も低い値が分離温度(臨界共溶温度、CST)として記録された。
【0050】
結果は表1に示されている。この結果において、サンプル1は式RX(RO)を有するPAGベース流体であり、RはC3のアルキル基であり、XはOであり、RはC3のアルキレン基であり、RはRと同一であり、yは40℃で46cSt(mm/s)のベース流体の粘度をもたらす整数であった。サンプル2は、式RX(RO)を有するPAGのベース流体であり、RはC4のアルキル基であり、XはOであり、RはC3のアルキレン基であり、RはHであり、yは40℃で46cSt(mm/s)のベース流体の粘度をもたらす整数であった。サンプル3は式RX(RO)を有するPAGのベース流体であり、Rはヘテロ原子が酸素である複素環を有するC14の置換基であり、XはOであり、RはC3のアルキレン基であり、RはC3のアルキル基であり、yは40℃で46cSt(mm/s)のベース流体の粘度をもたらす整数であった。サンプル4は、式RX(RO)(RO)を有するPAGベース流体であって、Rはヘテロ原子が酸素である複素環を有するC14の置換基であり、XはOであり、RはC2のアルキレン基であり、RはC3のアルキレン基であり、RはC3のアルキル基であり、x及びyは(RO)と(RO)の重量%の比率が等しく且つ40℃における46cSt(mm/s)のベース流体の粘度をもたらす整数であった。サンプル5は式RX(RO)(RO)を有するPAGベース流体であり、RはC3のアルキル基であり、XはOであり、RはC2のアルキレン基であり、RはC3のアルキレン基であり、x及びyは(RO)と(RO)との重量%の比率が等しく且つ40℃において46cSt(mm/s)のベース流体粘度をもたらす整数であった。
【0051】
【表1】

【0052】
事前のスクリーニングは、およそ10〜20重量%の潤滑剤でPAGベース流体の一般に最も低い分離温度を示したため、いくつかの(より好適ではない)サンプルに対しては、20.0重量%の潤滑剤における名目の値が比較のために報告される。
【0053】
表1における比較データは、サンプル1の種類の発明に係るPAGベース流体は30.0℃の最小のCSTが0から50.0重量%の潤滑剤濃度の範囲にわたって実現可能であり、この最小値は10.0から20.0重量%の潤滑剤濃度の範囲において一般に観察されることを示す。
【0054】
実施例2.1234yf冷媒中における発明に係るベース流体と添加剤組成物との化学安定性
HFO−1234yfの存在下における潤滑剤サンプルの化学安定性は、ANSI/ASHRAE97−1999標準(冷媒システム内において使用される物質の化学安定性を試験するための密閉ガラス管法)に基づいて試験された。試験条件は、175℃の温度、14日間の試験期間、及び記載された含水率を含んだ。銅、アルミ、及び鋼鉄の金属片が標準法に基づいて試験サンプルに沈められた。
【0055】
実施例2において、サンプル1bは式RX(RO)を有しており、RはC3のアルキル基であり、XはOであり、RはC3のアルキレン基であり、RはRと同一であり、yは40℃で46cSt(mm/s)のベース流体の粘度をもたらす整数であった。サンプル1bは、抗酸化剤である3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸分岐アルキルエステル、及びN−フェニルベンゼンジアミンと2,4,4−トリメチルペンテンの反応物と、腐食防止剤であるN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン及びN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンの異性体混合物と、極圧(EP)/耐磨耗添加剤であるC11〜C14の分岐したアルキルアミン、リン酸モノヘキシル及びリン酸ジヘキシルとを含む。サンプル2bは、式RX(RO)を有し、RはC3のアルキル基であり、XはOであり、RはC3のアルキレン基であり、RはHであり、yは40℃において46cSt(mm/s)のベース流体の粘度をもたらす整数であった。サンプル2bは、抗酸化剤である3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸分岐アルキルエステル、及びN−フェニルベンゼンジアミンと2,4,4−トリメチルペンテンの反応物と、腐食防止剤であるN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン及びN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンの異性体混合物と、EP/耐磨耗添加剤であるC11〜C14の分岐したアルキルアミン、リン酸モノヘキシル及びリン酸ジヘキシルとを含む。サンプル3bは式RX(RO)を有し、Rはヘテロ原子が酸素である複素環を有するC14の置換基であり、XはOであり、RはC3のアルキレン基であり、RはC3のアルキル基であり、yは40℃で46cSt(mm/s)のベース流体の粘度をもたらす整数であった。サンプル3bは、抗酸化剤である3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸分岐アルキルエステル、及びN−フェニルベンゼンジアミンと2,4,4−トリメチルペンテンの反応物と、腐食防止剤であるN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン及びN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンの異性体混合物と、EP/耐磨耗添加剤であるC11〜C14の分岐したアルキルアミン、リン酸モノヘキシル及びリン酸ジヘキシルとを含む。サンプル6は、式RX(RO)を有する比較サンプルであり、RはC3のアルキル基であり、XはOであり、RはC3のアルキレン基であり、RはRと同一であり、yは40℃で46cSt(mm/s)のベース流体の粘度をもたらす整数であった。比較サンプル6は、腐食防止剤又はEP/耐磨耗添加剤に関して阻害しないリン酸トリクレジル抗酸化剤(冷却油用途に用いられる名目上の種類)を含む。サンプル7は式RX(RO)を有し、RはC3のアルキル基であり、XはOであり、RはC3のアルキレン基であり、RはRと同一であり、yは40℃で46cSt(mm/s)のベース流体の粘度をもたらす整数であった。サンプル7は、抗酸化剤である3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸分岐アルキルエステル、及びN−フェニルベンゼンジアミンと2,4,4−トリメチルペンテンの反応物と、腐食防止剤であるN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン及びN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンの異性体混合物と、EP/耐磨耗添加剤であるC11−C14の分岐したアルキルアミン、リン酸モノヘキシル及びリン酸ジヘキシルと、エポキシ型の酸捕捉剤である1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン(1-methyl-4-(2-methyloxiranyl)-7-oxabixyclo[4.1.0] heptane)及びp−tert−ブチルフェニル−1−(2,3−エポキシ)プロピルエーテルを含む。
【0056】
結果は表2に示されている。表2の比較データは、標準状態(175℃、14日、1000ppm含水率)の試験において、(混和性に基づき選択された)発明に係るベース流体との使用が提案された添加剤は、試験片の腐食及び顕著な油の分解が無いことによって証明されるように許容可能なレベルの化学安定性と、許容可能なレベルの試験後の合計酸価及びフッ化物イオンとをもたらすことを示している。
【0057】
サンプル1及び7(発明に係るベース流体の種類と添加物の組み合わせ)の比較は、サンプル7は化学的な不安定性を向上する密閉ガラス管中での部分的な空気の含有を許容するより厳しい試験条件に晒されており、更なる添加剤の最適化によって化学安定性の向上が実現可能であることを示している。
【0058】
【表2】

【0059】
実施例3.PAGベース流体の精製に応じた電気抵抗率
PAGの電気的な性質に影響を与えると考えられる印紙に関連する様々な生成物の性質に対して考察がなされている。ポリオールエステルの一般的な構造(潤滑剤への漏電を考慮する必要がある冷却回路において一般に用いられる種類のMPE、DPE、TMP、PEポリオールタイプ)に関連するPAGの化学構造に適用される理論上の化学原理は、これらの二つの合成潤滑剤の種類の電気抵抗率における違いの固有の原因を特定していない。
【0060】
POE潤滑剤は、残留酸のレベルを(反応終了に必要な場合、)通常は0.01mgKOH/gに下げる、及び含水率のレベルを(冷却回路における化学安定性に必要な場合はASHRAE97試験により規定されるように)一般に50ppmに下げるために歴史的に製造されてきた。
【0061】
PAGの化学構造はそれ自体では実現可能な電気的性質を限定しておらず、PAG生成における最近の進歩及び処理後の技術はハイブリッド/電動コンプレッサに対する需要に応じて電気抵抗性を備えて製造可能になっていることが提唱されている。この低効率の標準は、自動車の空調産業において現在は明確に特定されていないが、1×1012Ωcm程度であると考えられている。
【0062】
電気的性質に潜在的に影響を与えると考えられる主要な質の要素は、含水率、合計酸価、及び残留イオン種(主にK/Na)である。
【0063】
実施例3では、乾燥した中性サンプルを生成するために、サンプルは、窒素のパージ/減圧の適用により30ppm未満に乾燥され、弱い有機酸/アルカリを用いることによって中性化された。残留したNa+及びK+のレベルを決定するために、ICP解析が用いられた。含水率に応じた電気抵抗率を評価するためのサンプルは、商業スケールで採用される最小のTANの仕様に基づき、0.03mgKOH/gの合計酸価で更に標準化された。TANに応じた電気抵抗率を評価するためのサンプルは、PAGタイプの潤滑剤に対して現実的に再現可能な最も乾燥した状態である50ppmの含水率で更に標準化された。
【0064】
比較サンプルの電気抵抗率はIEC247(絶縁液体の関連する誘電率、誘電正接、及び直流抵抗率の測定法)に基づき決定された。行われた全ての作業は、サンプル1のような潤滑剤、すなわち、式RX(RO)を有するPAG潤滑剤であって、RはC3のアルキル基であり、XはOであり、RはC3のアルキレン基であり、RはRと同一であり、yは40℃において46cSt(mm/s)のベース流体粘度をもたらす整数である潤滑剤を用いた。
【0065】
図1は含水率に応じた体積抵抗率(Ωcm)のプロットである。図1において、全てのサンプルの合計酸価は0.03mgKOH/gであり、アルカリ金属イオンの含有率は全てのサンプルにおいて30ppmであった。図2は合計酸価に応じた体積抵抗率(Ωcm)のプロットである。図2において、含水率は全てのサンプルにおいて50ppmであり、アルカリ金属イオンの含有率は全てのサンプルにおいて30ppmであった。
【0066】
20℃における少なくとも1×1012Ωcmの最小体積抵抗率を実現するために、ポリアルキレングリコールベースの潤滑剤組成物が約0.03mgKOH/g未満の合計酸価、約30ppm未満のカチオン含有率、及び約300ppm未満の含水率を示すように、精製処理が採用されることが決定された。
【0067】
本発明の好適な実施形態が示されて説明されたが、本発明の精神及び教示から逸脱することなくそれらの改良が当業者によって行われるであろう。本明細書において説明された実施形態及び提供された実施例は単なる例示であり、限定することを意図していない。本明細書において開示された発明の多くの変更及び改良は可能であると共に本発明の範囲に属する。したがって、保護の範囲は上述の説明によっては限定されず、以下の請求項によってのみ限定されており、その範囲は請求項の対象物の全ての均等物を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロアルケン冷媒と共に使用されるポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体であって、
ポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体は式RX(RO)(RO)を有するPAGを含み、Rは1から10個の炭素原子を有するアルキル基、1から10個の炭素原子を有するアシル基、2から6の原子価を有する脂肪族炭化水素基、及び一つ以上のヘテロ原子が酸素である複素環を有する置換基からなる群から選択され、XはO及びSからなる群から選択され、RはC2のアルキレン基であり、RはC3のアルキレン基であり、RはRと同一又はHであり、x及びyはそれぞれ独立して0から100の整数であり、x+yの合計は約5から約100の範囲の整数であることを特徴とするベース流体。
【請求項2】
xが0である請求項1に記載のポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体であって、
ポリアルキレングリコール潤滑剤は、冷房/空調システムにおいてフルオロアルケン冷媒と組み合わせて使用するのに適しており、且つ式RX(RO)を有するPAGを含み、
Rは1から10個の炭素原子を有するアルキル基及び脂肪族炭化水素からなる群から選択され、Xは酸素原子であり、Rは3個の炭素原子を有するアルキレン基からなる群から選択され、Rは1から10個の炭素原子を有するアルキル基及び脂肪族炭化水素からなる群から選択され、yは約5から約100の範囲の整数であることを特徴とするベース流体。
【請求項3】
R、R、又はその両方が1から3個の炭素原子を有するアルキル基から選択される請求項2に記載のポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体。
【請求項4】
少なくとも30cSt(mm/s)の動粘度を有する請求項2に記載のポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体。
【請求項5】
少なくとも150の粘度指数を有する請求項2に記載のポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体。
【請求項6】
モータ内蔵圧縮式冷房及び空調システムにおいてフルオロアルケン冷媒と組み合わせて使用するための請求項2に記載のポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体であって、
ポリアルキレングリコールに使用される精製技術により、ポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体が、0.03mgKOH/g未満の合計酸価、30ppm未満のカチオン含有率、及び300ppm未満の含水率を示すことを特徴とするベース流体。
【請求項7】
モータ内蔵型コンプレッサにおいてほとんど漏電が起こらず、ポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体が20℃において1×1012Ωcmの最小体積抵抗率を示すことを保証するために望まれる電気的性質を有する請求項6に記載のポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体。
【請求項8】
冷房/空調システムにおいてフルオロアルケン冷媒と組み合わせて使用される潤滑剤組成物であって、請求項2に記載のポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体と少なくとも一つの添加剤とを含むことを特徴とする潤滑剤組成物。
【請求項9】
少なくとも一つの添加剤は、耐磨耗又は極圧添加剤、抗酸化剤、腐食防止剤、及び酸捕捉剤から選択されることを特徴とする請求項8に記載の潤滑剤組成物。
【請求項10】
3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸C7−C9分岐アルキルエステル、及びN−フェニルベンゼンジアミンと2,4,4−トリメチルペンテンの反応物からなる群から選択される少なくとも一つの抗酸化剤を含む請求項9に記載の潤滑剤組成物。
【請求項11】
N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン及びN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンの異性体混合物からなる群から選択される少なくとも一つの腐食防止剤を含む請求項9に記載の潤滑剤組成物。
【請求項12】
C11からC14の分岐したアルキルアミン、リン酸モノヘキシル及びリン酸ジヘキシルからなる群から選択される極圧又は耐磨耗添加剤を含む請求項9に記載の潤滑剤組成物。
【請求項13】
エポキシ基を有する酸捕捉剤を含む請求項9に記載の潤滑剤組成物。
【請求項14】
圧縮式冷房、空調、又はヒートポンプシステムに使用される作動流体組成物であって、
3又は4個の炭素原子及び1又は2個の二重結合を有するフルオロアルケンと、潤滑性を付与するのに有効な量の潤滑剤とを含み、
フルオロアルケン及び最大で10重量%の潤滑剤を含む混合物は、−60℃から+29.5℃の範囲の全ての温度において単一の液相を維持し、
潤滑剤は請求項2に記載のポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体を全体的又は部分的に含むことを特徴とする作動流体組成物。
【請求項15】
フルオロアルケン及び最大で50重量%の潤滑剤を含む混合物が−60℃から+29.5℃の範囲の全ての温度で単一の液相を維持するように潤滑性を付与するのに十分な量の潤滑剤を含む請求項14に記載の作動流体組成物。
【請求項16】
モータ内蔵圧縮式冷房/空調システムにおいて使用されるポリアルキレングリコールベースの潤滑剤組成物であって、
ポリアルキレンベースの潤滑剤組成物は請求項1のポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体を含み、
ポリアルキレングリコールは精製されており、
精製されたポリアルキレングリコールは、0.03mgKOH/g未満の合計酸価、30ppm未満のカチオン含有率、及び300ppm未満の含水率を有し、20℃において1×1012Ωcmの最小体積抵抗率を示すため潤滑剤がモータ内蔵コンプレッサにおいてほとんど漏電しないことを特徴とするポリアルキレングリコールベースの潤滑剤組成物。
【請求項17】
二酸化炭素(R744)及びフルオロカーボンである1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)からなる群から選択される冷媒と、
請求項16に記載のポリアルキレングリコールベースの潤滑剤組成物と
を含む作動組成物。
【請求項18】
冷房又は空調システムにおいてフルオロアルケン冷媒と共に使用されるのに適したポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体であって、
ポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体は1から10個の炭素原子を有する単純なアルコキシ基によって終端しているオキシプロピレンのホモポリマーを含むことを特徴とするポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体。
【請求項19】
オキシプロピレンのホモポリマーは少なくとも一つのメトキシ基で終端されていることを特徴とする請求項18に記載のポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体。
【請求項20】
オキシプロピレンのホモポリマーの各端がメトキシ基で終端されていることを特徴とする請求項19に記載のポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体。
【請求項21】
約5から約100のオキシプロピレン単位を有し、少なくとも30cSt(mm/s)の動粘度と少なくとも150の粘度指数とを有する請求項18に記載のポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体。
【請求項22】
モータ内蔵圧縮式冷房又は空調システムにおいてフルオロアルケン冷媒と共に使用されるのに適した潤滑剤組成物であって、
請求項18に記載のポリアルキレングリコール潤滑剤ベース流体を含み、約0.03mgKOH/g未満の合計酸価、約30ppm未満のカチオン含有率、及び約300ppm未満の含水率を示す潤滑剤組成物。
【請求項23】
20℃において少なくとも1×1012Ωcmの最小体積抵抗率を示す請求項22に記載の潤滑剤組成物。
【請求項24】
冷房/空調システムにおいてフルオロアルケン冷媒と共に使用される潤滑剤組成物であって、
請求項18に記載のポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体と、
3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸C7−C9分岐アルキルエステル、N−フェニルベンゼンジアミン及び2,4,4−トリメチルペンテンの反応物、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン及びN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンの異性体混合物、C11からC14の分岐したアルキルアミン、リン酸モノヘキシル、リン酸ジヘキシル、並びにエポキシ基を有する酸捕捉剤からなる群から選択される少なくとも一つの添加剤と
を含むことを特徴とする潤滑剤組成物。
【請求項25】
圧縮式冷房、空調及びヒートポンプシステムで使用される作動流体組成物であって、
3又は4個の炭素原子及び1又は2個の二重結合を含むフルオロアルケンと、
フルオロアルケン及び最大で50重量%の潤滑剤組成物を含む混合物が−60℃から+29.5℃の全ての温度において単一の液相を維持するように潤滑性を付与するのに十分な量の潤滑剤組成物と、
を含み、潤滑剤組成物は請求項18に記載のポリアルキレングリコール潤滑剤のベース流体を全体的又は部分的に含むことを特徴とする作動流体組成物。
【請求項26】
モータ内蔵圧縮式冷房及び空調システムにおいて、二酸化炭素(R744)とフルオロカーボンである1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)とからなる群から選択される冷媒と共に使用されるポリアルキレングリコールベースの潤滑剤組成物であって、
ポリアルキレングリコールベースの潤滑剤は精製されたポリアルキレングリコールを含み、
ポリアルキレングリコールベースの潤滑剤組成物は、約0.03mgKOH/g未満の合計酸価、約30ppm未満のカチオン含有率、及び約300ppm未満の含水率を示し、20℃において少なくとも1×1012Ωcmの最小体積抵抗率を示すことを特徴とする潤滑剤組成物。
【請求項27】
ほとんど漏電することなく冷房又は空調システムのモータ内蔵コンプレッサを稼動する方法であって、
冷媒と請求項26に記載のポリアルキレングリコールベースの潤滑剤組成物とを含む作動流体組成物を用いてコンプレッサを稼動すること
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−513527(P2012−513527A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543570(P2011−543570)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/067939
【国際公開番号】WO2010/075046
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(508029859)シュリーブ ケミカル プロダクツ インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】