説明

冷媒蒸発器

【課題】 Uターンブロック部の第1タンク部および第2タンク部に接続されている複数の冷媒チューブへの液冷媒の分配を均一化し、熱交換性能を向上させることができる冷媒蒸発器を提供することを目的とする。
【解決手段】 冷媒流通経路を区画する複数のブロックの1つを、冷媒が上タンク4の第1タンク部6および第2タンク部7のいずれか一方に仕切壁4Cに沿う方向から流入し、そこからいずれか他方のタンク部に流通され、第1タンク部6および第2タンク部7の各々から複数の冷媒チューブ2に分配されて流通されるUターンブロック部15とされた冷媒蒸発器1であって、Uターンブロック部15における上タンク4の第1タンク部6と第2タンク部7との間を仕切る仕切壁4Cに、仕切壁4Cの長さ方向に沿って複数個の冷媒分配孔4Mを設け、第1タンク部6と第2タンク部7との間を連通した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル中に設けられる冷媒蒸発器に関し、特に車両用空調装置に適用して好適な冷媒蒸発器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置の冷凍サイクルに用いられる冷媒蒸発器として、冷媒を上下方向に流す冷媒流路を有し、該冷媒流路の外側を流れる空気の流れ方向と直交方向に多数並列に配置されるとともに、空気の流れ方向に沿って前後に複数列に配置された多数の冷媒チューブと、多数の冷媒チューブの上下両端に接続されて空気の流れ方向と直交する方向に配置されるとともに、複数列の冷媒チューブに対応して内部が列方向に仕切壁により第1タンク部と第2タンク部とに仕切られ、冷媒の分配もしくは集合を行う上下一対のタンクとを備え、冷媒入口から流入した冷媒をタンク内の複数箇所に設けられている仕切板により区画される複数のブロックの冷媒チューブ内に順次流通させて空気と熱交換させ、空気を冷却するように構成した冷媒蒸発器が知られている。
【0003】
上記構成を有する冷媒蒸発器において、複数のブロックの1つを、冷媒が上タンクの第1タンク部に仕切壁に沿う方向から流入し、この第1タンク部からサイド冷媒通路を経て第2タンク部に流通され、さらに第1タンク部および第2タンク部のそれぞれから複数の冷媒チューブに分配されて流通されるUターンブロック部としたものが、特許文献1に記載されている。また、特許文献2には、複数の冷媒チューブを流通して上タンクの第2タンク部に集合された冷媒を、そのまま仕切壁を隔てた第1タンク部に流通させるため、仕切壁に複数個の連通孔を穿設したものが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3637314号公報
【特許文献2】特開2001−74388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の冷媒蒸発器では、上方に位置する上タンクのUターンブロック部において、液冷媒が慣性により冷媒流入方向の手前側の冷媒チューブに流れ易く、第1タンク部から第2タンク部に流入した液冷媒をその最奥側まで十分に到達させることができない場合がある。このため、第2タンク部に接続されている複数の冷媒チューブに対する液冷媒の分配が不均一となり、冷媒チューブの外部を流通する空気との熱交換が有効に行われない部分が生じ、熱交換性能が低下するという問題を有している。
【0006】
一方、上記特許文献2に記載の冷媒蒸発器には、第1タンク部と第2タンク部とを仕切る仕切壁に複数個の連通孔を穿設したものが記載されているが、これは、上タンクの第2タンク部に集合された冷媒を、そのまま仕切壁を隔てた第1タンク部に流通させるためのものであって、上タンクのUターンブロック部において、上タンクの第1タンク部に仕切壁に沿う方向から流入された液冷媒を、Uターンブロック部を構成する第1タンク部および第2タンク部の双方に対してその長さ方向の全領域に均等に分配することを示唆するものではない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、Uターンブロック部の第1タンク部および第2タンク部に接続されている複数の冷媒チューブへの液冷媒の分配を均一化し、熱交換性能を向上させることができる冷媒蒸発器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の冷媒蒸発器は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる冷媒蒸発器は、冷媒を上下方向に流す冷媒流路を有し、該冷媒流路の外側を流れる外部流体の流れ方向と直交方向に多数並列に配置されるとともに、前記外部流体の流れ方向に沿って前後に複数列に配置された多数の冷媒チューブと、前記多数の冷媒チューブの上下両端に接続されて前記外部流体の流れ方向と直交する方向に配置されるとともに、前記複数列の冷媒チューブに対応して内部が列方向に仕切壁により第1タンク部と第2タンク部とに仕切られ、冷媒の分配もしくは集合を行う上下一対のタンクとを備え、前記タンクには、冷媒入口と冷媒出口とが設けられ、前記冷媒入口から流入した冷媒が前記タンク内の複数箇所に設けられている仕切板により区画される複数のブロックの前記冷媒チューブ内を順次流通した後、前記冷媒出口から流出される冷媒蒸発器において、前記複数のブロックの1つが、前記冷媒が前記上タンクの前記第1タンク部および前記第2タンク部のいずれか一方に前記仕切壁に沿う方向から流入し、そこから前記いずれか他方のタンク部に流通され、該第1タンク部および第2タンク部の各々から前記複数の冷媒チューブに分配されて流通されるUターンブロック部とされ、該Uターンブロック部において、前記上タンクの前記第1タンク部と前記第2タンク部との間を仕切る前記仕切壁に、該仕切壁の長さ方向に沿って複数個の冷媒分配孔を設け、前記第1タンク部と前記第2タンク部との間を連通したことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、Uターンブロック部において、第1タンク部および第2タンク部のいずれか一方に仕切壁に沿う方向から流入されてくる気液二相冷媒中の液冷媒を、仕切壁の長さ方向に沿って設けられている複数個の冷媒分配孔により、前記他方のタンク部に順次分配しながらUターンブロック部の第1タンク部および第2タンク部の双方にその冷媒流入方向の全領域にわたりほぼ均等に流入させることができる。これにより、第1タンク部および第2タンク部に接続されている複数の冷媒チューブに対して液冷媒をほぼ均一に分配することが可能となる。従って、主に外部流体の冷却に寄与する液冷媒の分配をより均一化し、冷媒蒸発器の熱交換性能を向上させることができる。
【0010】
さらに、本発明の冷媒蒸発器は、上記の冷媒蒸発器において、前記冷媒分配孔は、前記Uターンブロック部の冷媒流入方向の手前側の一部領域を除く奥側の領域に偏らせて複数個設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、冷媒分配孔を冷媒流入方向の手前側の一部領域を除く奥側の領域に偏らせて設けているため、慣性により手前側の冷媒分配孔に多く分配され易い液冷媒を全体的に奥側の冷媒分配孔へと順次シフトし、第1タンク部および第2タンク部のいずれか一方のタンク部から他方のタンク部に流入される液冷媒の冷媒流入方向における分配を改善することができる。これにより、液冷媒を第1タンク部および第2タンク部の冷媒流入方向の全領域にわたりほぼ均等に分配することが可能となる。従って、複数の冷媒チューブに対する液冷媒の分配を均一化し、冷媒蒸発器の熱交換性能を向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明の冷媒蒸発器は、上記の冷媒蒸発器において、前記冷媒分配孔が設けられる前記奥側の領域は、前記Uターンブロック部の冷媒流入方向の最奥端部から一番手前側の前記冷媒分配孔の位置までの長さをL1とし、前記Uターンブロック部の冷媒流入方向長さの全長をL2としたとき、0.7<L1/L2<0.9とされていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、冷媒流入方向の手前側の一部領域を除く奥側の、0.7<L1/L2<0.9の領域に複数個の冷媒分配孔を設けることにより、全領域に冷媒分配孔を設けた場合に比べて、第1タンク部および第2タンク部のいずれか一方のタンク部から他方のタンク部に流入される液冷媒の分配をより均一化することができる。つまり、L1/L2が0.7未満になると、前記他方のタンク部の手前側領域における液冷媒の分配がやや不足気味となり、また、L1/L2が0.9を超えると、逆に最奥側領域における液冷媒の分配がやや不足気味となる。冷媒分配孔を設ける領域を上記領域とすることによって、複数の冷媒チューブに対する液冷媒の分配を均一化し、冷媒蒸発器の熱交換性能を向上させることができる。
【0014】
さらに、本発明の冷媒蒸発器は、上述のいずれかの冷媒蒸発器において、前記複数の冷媒分配孔は、前記Uターンブロック部の冷媒流入方向の手前側から奥側に向って漸次開口面積が大きくされていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、冷媒分配孔の開口面積をUターンブロック部の冷媒流入方向の手前側から奥側に向って漸次大きくしているため、慣性により手前側の冷媒分配孔に多く分配され易い液冷媒を開口面積の大きい奥側の冷媒分配孔へと順次シフトし、第1タンク部および第2タンク部のいずれか一方のタンク部から他方のタンク部に流入される液冷媒の冷媒流入方向における分配を改善することができる。これにより、液冷媒を第1タンク部および第2タンク部の冷媒流入方向の全領域にわたりほぼ均等に分配することが可能となる。従って、複数の冷媒チューブに対する液冷媒の分配を均一化し、冷媒蒸発器の熱交換性能を向上させることができる。
【0016】
さらに、本発明の冷媒蒸発器は、上述のいずれかの冷媒蒸発器において、前記冷媒分配孔は、円形孔により構成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、冷媒分配孔が円形孔によって構成されているため、仕切壁の冷媒分配孔穿設部分における応力集中を緩和することができる。これにより、タンク全体としての耐圧強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、仕切壁に沿う方向から流入される気液二相冷媒中の液冷媒を、上タンクに形成されるUターンブロック部の第1タンク部および第2タンク部の双方に、その冷媒流入方向の全領域にわたりほぼ均等に分配し、流入させることができるため、第1タンク部および第2タンク部に接続されている複数の冷媒チューブに対する液冷媒の分配をより均一化し、蒸発器の熱交換性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図4、ならびに図6を用いて説明する。図1には、本発明の第1実施形態にかかる冷媒蒸発器1の斜視図が示されており、図2には、その分解斜視図が示され、図3には、その正面図(A)と右側面図(B)が示されている。冷媒蒸発器1は、長さ方向に沿って複数の冷媒流路2Aを有する多数の冷媒チューブ2を備えている。この冷媒チューブ2は、例えば押し出し成形や引き抜き成形によって製造される、あるいは板材を楕円の筒状に成形し、その中にインナーフィンを収めることによって製造されるアルミ合金製の扁平なチューブにより構成することができる。
【0020】
冷媒チューブ2は、その外側を流れる外部流体(空気)Aの流れ方向に直交する方向に多数並列して積層配置されている。また、冷媒チューブ2は、空気Aの流れ方向に対して前後に複数列(2列)に配置されている。このように、空気Aの流れ方向に直交する方向に多数並列して積層配置された多数の冷媒チューブ2の間には、例えばアルミ合金製の薄板を波形形状にコルゲート成形して構成された伝熱フィン3が介装され、公知の方法によって冷媒チューブ2の外表面にロウ付け接合されている。
【0021】
多数の冷媒チューブ2の上端部および下端部には、それぞれ断面が略長円形状とされた上タンク4および下タンク5がロウ付け接合されている。この上タンク4および下タンク5は、上下に2分割された上部材4A,5Aおよび下部材4B,5Bと、上タンク4および下タンク5の内部を複数列の冷媒チューブ2に対応して列方向にそれぞれ第1タンク部6と第2タンク部7および第1タンク部8と第2タンク部9とに仕切る仕切壁4C,5Cと、上タンク4および下タンク5の両端部をそれぞれ閉塞するキャップ部材4D,5Dおよび4E,5Eとから構成されている。これら上部材4A,5A、下部材4B,5B、仕切壁4C,5C、キャップ部材4D,5Dおよび4E,5Eは、アルミ合金製のプレス成形品により構成され、公知の方法によって一体にロウ付け接合されている。
【0022】
上タンク4および下タンク5を構成する下部材4B,5Bには、多数の冷媒チューブ2の端部を挿入してロウ付け接合するためのチューブ差し込み孔4F,5Fが冷媒チューブ2の配列に対応して多数設けられている。下タンク5のキャップ部材5Eには、第1タンク部8に連通される冷媒入口5Gが設けられており、このキャップ部材5Eの冷媒入口5Gに連通するように冷媒入口ヘッダ10がロウ付け接合されている。また、上タンク4のキャップ部材4Eには、第1タンク部6に連通される冷媒出口4Gが設けられており、このキャップ部材4Eの冷媒出口4Gに連通するように冷媒出口ヘッダ11がロウ付け接合されている。冷媒入口ヘッダ10および冷媒出口ヘッダ11には、それぞれ冷媒入口配管12および冷媒出口配管13が接続されている。
【0023】
上タンク4および下タンク5の内部には、上タンクの第2タンク部7および下タンク5の第1タンク部8をそれぞれ空気Aの流れ方向に直交する方向(タンクの長さ方向)に沿って左右2つの領域に仕切る仕切板4H,5Hが設けられている。この仕切板4H,5Hは、本実施形態では左右2つの領域に仕切られた図示左側領域の冷媒チューブ2の本数と右側領域の冷媒チューブ2の本数との比が、ほぼ1:2となる位置に設けられている。また、下タンク5の第2タンク部9側には、図示右側領域のタンク長さ方向の適宜の位置2箇所に、キャップ部材5E側の端部に向って漸次小さくなる絞り孔5K,5Lを有する2枚の絞り板5I,5Jが所定間隔を隔てて設けられている。
【0024】
さらに、上タンク4および下タンク5の仕切壁4C,5Cには、仕切板4H,5Hによって仕切られた図示左側領域において、上タンク4の第1タンク部6と第2タンク部7および下タンク5の第1タンク部8と第2タンク部9とをそれぞれ連通する複数の冷媒分配孔4M,5Mが仕切壁4C,5Cの長さ方向に沿って設けられている。この冷媒分配孔4M,5Mは、上タンク4の第1タンク部6内を仕切壁4Cの長さ方向に沿って図示右側領域から左側領域に流入されてくる気液二相冷媒中の液冷媒を、第2タンク部7の図示右側領域の長さ方向にほぼ均等に分配しながら流入される機能を担うものである。
【0025】
また、冷媒入口ヘッダ10が接続される下タンク5の第1タンク部8に仕切板5Hを設けるとともに、冷媒出口ヘッダ11が接続される上タンク4の第2タンク部7に仕切板4Hを設けることによって、冷媒蒸発器1内における冷媒流通経路を、以下に説明する第1ブロック14、第2ブロック(Uターンブロック)15および第3ブロック16の3つのブロックに区画している。第1ブロック14は、冷媒入口ヘッダ10から下タンク5の第1タンク部8に流入された冷媒を、仕切板5Hよりも右側領域に接続されている複数の冷媒チューブ2を通して上タンク4の第1タンク部6へと流通させるブロックである。
【0026】
また、第2ブロック(Uターンブロック)15は、上タンク4の第1タンク部6に流入された冷媒を、仕切壁4Cに沿って図示左側領域へと流通させ、そこから複数の冷媒分配孔4Mを通して第2タンク部7の仕切板4Hよりも左側領域にその長さ方向に沿ってほぼ均等に分配し、第1タンク部6および第2タンク部7の双方から複数の冷媒チューブ2内を流下させて下タンク5の第1タンク部8および第2タンク部9へと流通させるブロックであり、Uターンブロックとも称される。さらに、第3ブロック16は、下タンク5の第1タンク部8および第2タンク部9に流下された冷媒を、冷媒分配孔5Mを通して第2タンク部9に集め、仕切壁5Cに沿って右側領域へと流通させ、そこから複数の冷媒チューブ2を通して上タンク4の第2タンク部7へと流通させるブロックであり、この上タンク4の第2タンク部7に流通された冷媒は、出口ヘッダ11を経て冷媒出口配管13へと流出される。
【0027】
以上に説明の本実施形態によると、以下の作用効果を奏する。
冷媒入口配管12より冷媒入口ヘッダを経て下タンク5の第1タンク8部内に流入された気液二相冷媒は、第1ブロック14の複数の冷媒チューブ2内を上タンク4の第1タンク部6に向って流通する間に空気Aと伝熱フィン3を介して熱交換され、その一部は蒸発する。上タンク4の第1タンク部6で集合された冷媒は、第1タンク部6内を左側領域に流通して第2ブロック(Uターンブロック)15に入る。第2ブロック(Uターンブロック)15に流入した気液二相冷媒は、第1タンク部6内を流通する間に仕切壁4Cに設けられている冷媒分配孔4Mにより第2タンク部7に均等に分配される。
【0028】
第2ブロック(Uターンブロック)15において上タンク4の第1タンク部6および第2タンク部7に均等に分配された冷媒は、第2ブロック(Uターンブロック)15の複数の冷媒チューブ2内を下タンク5の第1タンク部8および第2タンク部9に向って流下する間に空気Aと伝熱フィン3を介して熱交換され、さらに蒸発される。下タンク5の第1タンク部8および第2タンク部9に流下された冷媒は、第2タンク部9に集合され、第2タンク部9内を右側領域に流通して第3ブロック16に入る。この冷媒は、第3ブロック16の複数の冷媒チューブ2内を上タンク4の第2タンク部7に向って上昇し、この間に空気Aと熱交換され、すべて蒸発ガス化されて第2タンク部7に集合される。冷媒との熱交換により冷却された空気Aは、車室内に供給されて冷房に供され、一方、蒸発ガス化された冷媒は、出口ヘッダ11から冷媒出口配管13を経て圧縮機へと吸い込まれ、冷凍サイクル内を循環する。
【0029】
上記のように、冷媒が上タンク4内でUターンする第2ブロック(Uターンブロック)15において、上タンク4の第1タンク部6に仕切壁4Cに沿って流入される気液二相の冷媒は、図4に示されるように、仕切壁4Cの長さ方向に沿って設けられている複数個の冷媒分配孔4Mによって、手前側から順次第2タンク部7へと分配されるため、第2タンク部7に対してその長さ方向の全領域にわたりほぼ均等に液冷媒を流入させることができる。これにより、第2ブロックの第1タンク部6および第2タンク部7に接続されている複数の冷媒チューブ2に対して液冷媒をほぼ均一に分配することができる。
【0030】
従って、上記の冷媒蒸発器1によると、特に、Uターンブロック15の第1タンク部6および第2タンク部7間での液冷媒の分配を改善し、外部流体である空気Aの冷却に寄与する液冷媒の複数の冷媒チューブ2に対する分配をより均一化することができるため、冷媒蒸発器1の熱交換性能を向上させることができる。
図6には、第2ブロック(Uターンブロック)15における冷媒分布模式図が特許文献1に記載された冷媒蒸発器と対比して示されている。この図は、冷媒分布状態を空気入口側から可視化したサーモグラフィ図の模式図であり、液冷媒が多いところほど表面温度が低く、ガス冷媒が多いところほど表面温度が高くなることを示すものである。なお、空気A側の条件は、風速が1.5m/s、温度が乾球27℃、湿球19.5℃であり、冷媒側の条件は、温度0℃、質量流量100kg/hである。
【0031】
この図6からも、(A)図に示す特許文献1に記載の冷媒蒸発器に比べ、(B)図に示す本実施形態の冷媒蒸発器1の方が、表面温度の高い10〜15℃、15〜20℃の領域が大幅に減少し、冷媒分布状態が改善されていることが判る。
なお、上記実施形態において、図3に示されるように、ヘッダ4,5の上部材4A,5Aの表面に多数のリブ4N,5Nを一体に成形してもよい。また、図2に示される冷媒蒸発器1の各構成部品は、個々にロウ付け接合されるわけではなく、公知の如く、すべての構成部品を仮組み立てした後、それを炉内に搬入して加熱し、一体に炉中でロウ付けすることにより製造される。
【0032】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図5および図6を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、仕切壁4C、5Cに設ける冷媒分配孔4M,5Mの設け方が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態では、第2ブロック(Uターンブロック)15において、仕切壁4C、5Cに設ける複数個の冷媒分配孔4M,5Mを、図5に示すように、第2ブロック(Uターンブロック)15を構成する上タンク4の冷媒流入方向長さの全長(上タンク4の左端から仕切板4Hまでの寸法)をL2としたとき、冷媒流入方向の手前側の一部領域を除く奥側領域の長さL1の範囲に複数個設けた構成としている。
【0033】
上記の奥側領域長さL1は、第1タンク部6および第2タンク部7の最奥端部から一番手前側の冷媒分配孔4M位置までの長さであり、この奥側領域の長さL1は、全長L2に対して、0.7<L1/L2<0.9の範囲が実用的であり、L1/L2は、0.8前後が最も好ましい。図6(C)に、L1/L2が0.8の場合における冷媒分布の模式図が示されている。図6(B)に示す上記第1実施形態の場合の模式図に比べて、冷媒分布状態が更に改善されていることが読み取れる。従って、本実施形態によっても、第1実施形態と同様に、冷媒蒸発器1の熱交換性能を向上させることができる。
【0034】
なお、L1/L2が0.7未満になると、第2タンク部7における仕切板4Hよりの領域に対する液冷媒の分配がやや不足気味となり、図6(C)において、図中の右下側に表面温度の高い10〜15℃の領域が広がる傾向となる。一方、L1/L2が0.9を超えた場合には、逆に最奥側領域に対する液冷媒の分配がやや不足気味となり、図6(C)において、図中の左下側に表面温度の高い10〜15℃の領域が現れることになる。このことからも、L1/L2が0.8程度が最も好ましいといえる。
【0035】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、説明する。
本実施形態は、上記した第1および第2実施形態に対して、冷媒分配孔4M,5Mの大きさを変えるようにしている点が異なっている。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態では、仕切壁4C、5Cにその長さ方向に沿って複数個設ける冷媒分配孔4M,5Mの大きさを、冷媒流入方向の手前側から奥側に向って漸次大きくした構成としている。
【0036】
上記のように、冷媒分配孔4M,5Mの大きさを冷媒流入方向の奥側に向って漸次大きくすることによっても、慣性により手前側の冷媒分配孔4Mに多く分配され易い液冷媒を順次奥側の大きい冷媒分配孔4Mへとシフトし、第1タンク部6から第2タンク部7へと流入される液冷媒の冷媒流入方向における分配を改善することができる。従って、本実施形態においても、上記第1および第2実施形態と同様、液冷媒を第1タンク部6および第2タンク部7の冷媒流入方向の全領域にわたりほぼ均等に分配することが可能となり、複数の冷媒チューブ2に対する液冷媒の分配を均一化し、冷媒蒸発器1の熱交換性能を向上させることができる。
【0037】
また、上記第1ないし第3実施形態では、冷媒分配孔4M,5Mの形状を、特定していないが、冷媒分配孔4M,5Mの形状は、円形孔であることが望ましい。これは仕切壁4C,5Cの冷媒分配孔穿設部分における応力集中を緩和するためであり、これにより、タンク全体としての耐圧強度を高めることができる。特に、昨今は高圧冷媒が使用される傾向にあることから、高圧冷媒仕様としても有効である。但し、本発明においては、冷媒分配孔4M,5Mの形状が円形のものに限定されるものではない。
【0038】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、Uターンブロック15において、冷媒が第1タンク部6側から第2タンク部側に流れるようにしたものを例示したが、逆に第2タンク部側から第1タンク部6側に流れるような構成としてもよいことはもちろんである。また、上記実施形態では、冷媒蒸発器1内における冷媒流通経路を、3ブロックに区画した例について説明したが、ブロック数については、3ブロックに限定されるものではない。さらに、冷媒蒸発器1に対する冷媒の入口および出口については、上下、左右いずれに設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる冷媒蒸発器の斜視図である。
【図2】図1に示す冷媒蒸発器の分解斜視図である。
【図3】図1に示す冷媒蒸発器の正面図(A)とその右側面図(B)である。
【図4】図1に示す冷媒蒸発器におけるUターンブロック部の冷媒分配状態を示す平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる冷媒蒸発器におけるUターンブロック部の冷媒分配状態を示す平面図である。
【図6】本発明にかかる冷媒蒸発器と従来の冷媒蒸発器とのUターンブロック部における冷媒分布状態を対比して示す模式図(サーモグラフィ図)である。
【符号の説明】
【0040】
1 冷媒蒸発器
2 冷媒チューブ
2A 冷媒流路
4 上タンク
5 下タンク
4C,5C 仕切壁
4G 冷媒出口
4H,5H 仕切板
4M,5M 冷媒分配孔
5G 冷媒入口
6,8 第1タンク部
7,9 第2タンク部
14 第1ブロック
15 第2ブロック(Uターンブロック)
16 第3ブロック


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を上下方向に流す冷媒流路を有し、該冷媒流路の外側を流れる外部流体の流れ方向と直交方向に多数並列に配置されるとともに、前記外部流体の流れ方向に沿って前後に複数列に配置された多数の冷媒チューブと、
前記多数の冷媒チューブの上下両端に接続されて前記外部流体の流れ方向と直交する方向に配置されるとともに、前記複数列の冷媒チューブに対応して内部が列方向に仕切壁により第1タンク部と第2タンク部とに仕切られ、冷媒の分配もしくは集合を行う上下一対のタンクとを備え、
前記タンクには、冷媒入口と冷媒出口とが設けられ、前記冷媒入口から流入した冷媒が前記タンク内の複数箇所に設けられている仕切板により区画される複数のブロックの前記冷媒チューブ内を順次流通した後、前記冷媒出口から流出される冷媒蒸発器において、
前記複数のブロックの1つが、前記冷媒が前記上タンクの前記第1タンク部および前記第2タンク部のいずれか一方に前記仕切壁に沿う方向から流入し、そこから前記いずれか他方のタンク部に流通され、該第1タンク部および第2タンク部の各々から前記複数の冷媒チューブに分配されて流通されるUターンブロック部とされ、
該Uターンブロック部において、前記上タンクの前記第1タンク部と前記第2タンク部との間を仕切る前記仕切壁に、該仕切壁の長さ方向に沿って複数個の冷媒分配孔を設け、前記第1タンク部と前記第2タンク部との間を連通したことを特徴とする冷媒蒸発器。
【請求項2】
前記冷媒分配孔は、前記Uターンブロック部の冷媒流入方向の手前側の一部領域を除く奥側の領域に偏らせて複数個設けられていることを特徴とする請求項1に記載の冷媒蒸発器。
【請求項3】
前記冷媒分配孔が設けられる前記奥側の領域は、前記Uターンブロック部の冷媒流入方向の最奥端部から一番手前側の前記冷媒分配孔の位置までの長さをL1とし、前記Uターンブロック部の冷媒流入方向長さの全長をL2としたとき、0.7<L1/L2<0.9とされていることを特徴とする請求項2に記載の冷媒蒸発器。
【請求項4】
前記複数の冷媒分配孔は、前記Uターンブロック部の冷媒流入方向の手前側から奥側に向って漸次開口面積が大きくされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の冷媒蒸発器。
【請求項5】
前記冷媒分配孔は、円形孔により構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の冷媒蒸発器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−30882(P2009−30882A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195504(P2007−195504)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】