説明

冷菓製造装置

【課題】冷菓取出の際に抽出路内で溶けた冷菓が吹き出し、飛び散った冷菓により使用者や周辺を汚染する不都合を効果的に防止することを可能とする冷菓製造装置を提供する。
【解決手段】本発明のソフトクリーム製造装置SMは、本体1内に設けられた冷却シリンダ8内においてミックスを撹拌しながら冷却することにより、冷菓を製造するものであって、本体1の前面に設けられ、所定の取出操作に基づいて冷却シリンダ8内で製造された冷菓を下端の冷菓取出口58Aより抽出する冷菓取出部56と、冷菓取出部56における取出操作を許容した状態で、少なくとも冷菓取出口58Aの前方から当該冷菓取出口58Aの前下方に渡って設けられた透視可能なカバー46とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトクリーム等の冷菓を製造する冷菓製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の冷菓製造装置は、コンプレッサ、凝縮器、絞り及び冷却シリンダとホッパー(ミックスタンク)に装備した冷却器からなる冷却装置を備え、この冷却装置の冷凍サイクルを四方弁により可逆させ、冷菓製造時には冷却器に液化冷媒を流して冷却シリンダ、ホッパーを冷却し、一方ミックス、装置の殺菌時にはコンプレッサからの高温冷媒ガス(ホットガス)を冷却器に導いて放熱させ、冷却器を放熱器として作用させて、冷却シリンダ、ホッパーの加熱を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、冷却シリンダ内にはビータモータにて駆動させるビータが取り付けられ、冷却シリンダ内のミックスを冷却器により冷却しながら、ビータによって撹拌し、ソフトクリーム等の冷菓を製造する。この冷却シリンダの前面にはフリーザドアが設けられ、フリーザドア内に形成した取出通路内には上下移動自在のプランジャが取り付けられ、冷却シリンダと取出通路とは抽出路にて連通される。そして、プランジャを上下動させることにより抽出路の出口を開閉し、それによって、冷却シリンダからの冷菓の抽出/停止を行うものであった。
【特許文献1】実公昭63−20304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、冷却シリンダ内では、ビータの回転によって冷菓を回転しながら前方に押し出す方向に圧力が加えられている。また、抽出路内には冷却シリンダ内同様に常時冷菓が存在することになるが、抽出路はビータによる撹拌にかかわらず、そこで冷菓が滞留することになる。そして、この抽出路内の冷菓はフリーザドアを介した外部からの熱伝導を受けやすく、それによって係る抽出路内の冷菓が溶解しやすくなる。特に、前回の冷菓抽出から次回の冷菓抽出までの時間が空くと、より外部からの熱伝導によって、当該抽出路内には溶けた冷菓、すなわち、液状ミックスが残留することとなる。
【0005】
この状態で、冷菓を抽出するためにプランジャが引き上げられると、ビータの回転による圧力で取出通路下端の冷菓取出口から溶けた冷菓が吹き出し、飛び散って使用者や周辺を汚染する問題があった。
【0006】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、冷菓取出の際に抽出路内で溶けた冷菓が吹き出し、飛び散った冷菓により使用者や周辺を汚染する不都合を効果的に防止することを可能とする冷菓製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の冷菓製造装置は、本体内に設けられた冷却シリンダ内においてミックスを撹拌しながら冷却することにより、冷菓を製造するものであって、本体の前面に設けられ、所定の取出操作に基づいて冷却シリンダ内で製造された冷菓を下端の冷菓取出口より抽出する冷菓取出部と、該冷菓取出部における取出操作を許容した状態で、少なくとも冷菓取出口の前方から当該冷菓取出口の前下方に渡って設けられた透視可能なカバーとを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明の冷菓製造装置は、上記発明において冷菓取出部は、冷却シリンダの前面を閉塞するフリーザドアと、該フリーザドアに上下に渡って構成され、下端が冷菓取出口となる取出通路と、フリーザドアに形成され、前端の出口が取出通路の内壁面に開口すると共に、後端の入口が冷却シリンダの前端部に開口した抽出路と、取出通路内に上下移動自在に設けられ、降下して抽出路の出口を閉塞すると共に、取出操作により上昇して抽出路の出口を開放するプランジャとを備えて構成されており、カバーの下端は、抽出路の出口下端と冷菓取出口の下縁前端とを結ぶ線と当該カバーとが交わる点以下の高さに位置していることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明の冷菓製造装置は、請求項1の発明において、冷菓取出部は、ナットにより本体に着脱可能に取り付けられて冷却シリンダの前面を閉塞するフリーザドアと、該フリーザドアに上下に渡って構成され、下端が冷菓取出口となる取出通路と、フリーザドアに形成され、出口が取出通路の内壁面に開口すると共に、入口が冷却シリンダの前端部に開口した抽出路と、取出通路内に上下移動自在に設けられ、降下して抽出路の出口を閉塞すると共に、取出操作により上昇して抽出路の出口を開放するプランジャとを備えて構成されており、カバーは、ナットに着脱自在に係支されることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明の冷菓製造装置は、上記発明において、ナットに係支された状態で、カバーの両側後端は本体に当接することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明の冷菓製造装置は、上記各発明において、カバーは、その上下寸法を伸縮可能とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、本体内に設けられた冷却シリンダ内においてミックスを撹拌しながら冷却することにより冷菓を製造する冷菓製造装置において、本体の前面に設けられ、所定の取出操作に基づいて冷却シリンダ内で製造された冷菓を下端の冷菓取出口より抽出する冷菓取出部と、該冷菓取出部における取出操作を許容した状態で、少なくとも冷菓取出口の前方から当該冷菓取出口の前下方に渡って設けられた透視可能なカバーとを備えたので、例えば前回の冷菓取出から今回の冷菓取出までに比較的長い時間が経過することで、冷菓取出部内において溶解してしまった冷菓が取出操作によって冷菓取出口より吹き出した場合であっても、当該冷菓取出口の前方から前下方に渡って設けられるカバーが存在するため、作業者や周辺に飛び散り、これらを汚染してしまう不都合を防止することが可能となる。
【0013】
特に、カバーは透視可能なものであることから、冷菓の取出操作を行う際に、冷菓取出口から取り出される冷菓の状態を視認しながら冷菓を取り出すことが可能となり、カバーの存在によって操作性が悪くなる不都合を回避することが可能となる。
【0014】
請求項2の発明によれば、上記発明に加えて冷菓取出部は、冷却シリンダの前面を閉塞するフリーザドアと、該フリーザドアに上下に渡って構成され、下端が冷菓取出口となる取出通路と、フリーザドアに形成され、前端の出口が取出通路の内壁面に開口すると共に、後端の入口が冷却シリンダの前端部に開口した抽出路と、取出通路内に上下移動自在に設けられ、降下して抽出路の出口を閉塞すると共に、取出操作により上昇して抽出路の出口を開放するプランジャとを備えて構成されており、カバーの下端は、抽出路の出口下端と冷菓取出口の下縁前端とを結ぶ線と当該カバーとが交わる点以下の高さに位置しているため、当該カバーによって、冷菓取出口から前下方に吹き出した冷菓を受けることができ、当該装置の前方にて冷菓取出作業を行う作業者等に当該冷菓が飛び散り汚してしまう不都合を回避することが可能となる。
【0015】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明に加えて、冷菓取出部は、ナットにより本体に着脱可能に取り付けられて冷却シリンダの前面を閉塞するフリーザドアと、該フリーザドアに上下に渡って構成され、下端が冷菓取出口となる取出通路と、フリーザドアに形成され、出口が取出通路の内壁面に開口すると共に、入口が冷却シリンダの前端部に開口した抽出路と、取出通路内に上下移動自在に設けられ、降下して抽出路の出口を閉塞すると共に、取出操作により上昇して抽出路の出口を開放するプランジャとを備えて構成されており、カバーは、ナットに着脱自在に係支されるため、カバーを本体に取り付けるための格別な手段を設けることなく、フリーザドアの取付に用いられているナットをカバーの取付に使用することによって、部品点数の削減を実現しつつ、当該カバーによって容易にフリーザドアの下端に形成された冷菓取出口から吹き出した液状の冷菓が前方乃至前下方に飛び散り作業者や周辺を汚染してしまう不都合を防止することが可能となる。
【0016】
特に、当該カバーは、ナットに着脱自在に係支されるものであることから、片手であってもカバーを着脱することが可能となり、使用性の向上を図ることができると共に、容易に取り外すことができることから、カバーを別途洗浄することができ、衛生面においても有利となる。
【0017】
請求項4の発明によれば、上記発明に加えて、ナットに係支された状態で、カバーの両側後端は本体に当接するため、安定した状態でカバーを取り付けることが可能となる。従って、当該カバーが不安定な取付となることで、抽出作業において冷菓が該カバーに当接し、商品価値が消失してしまう不都合を回避することが可能となる。
【0018】
請求項5の発明によれば、上記各発明に加えて、カバーは、その上下寸法を伸縮可能とされていることから、抽出当初の液状の冷菓が飛び散りやすい状況では、カバーを下側まで引き下げて使用することにより、より一層作業者や周辺に冷菓が飛散する不都合を回避することができ、冷菓の抽出が安定し、液状の冷菓が殆ど存在しなくなった状況では、カバーを上側に伸縮させて使用することで、冷菓の取出作業性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の冷菓製造装置の実施例としてのソフトクリーム製造装置SMの斜視図、図2は図1のソフトクリーム製造装置SMの概略内部構成図、図3は冷却シリンダとフリーザドアの断面図、図4は図1のソフトクリーム製造装置SMの冷媒回路図をそれぞれ示している。
【0020】
実施例の冷菓製造装置SMは、ソフトクリームやシャーベット(シェーク)等の冷菓を製造販売するための装置であり、本体1の上部には、例えば前記ソフトクリーム等の原料となるミックスを貯蔵するホッパー2が設けられている。このホッパー2は上面に開口しており、この上面開口はそこに着脱自在に載置される断熱性の蓋部材3にて開閉自在に閉塞され、ミックスの補充時等にはこの蓋部材3が取り外される。
【0021】
一方、ホッパー2の周囲にはホッパー冷却器4が巻回されており、このホッパー冷却器4によりホッパー2内のミックスは保冷される。また、ホッパー2の内底部にはインペラと称されるホッパー撹拌器5が設けられており、下方に設けた誘導電動機から成る図示しない撹拌モータにて回転駆動される。
【0022】
更に、ホッパー2の側壁における所定高さの位置には、一対の導電極から成るミックスレベルセンサ7が取り付けられている。ミックスがミックスレベルセンサ7、7の位置より高く存在する場合には、両ミックスレベルセンサ7、7の電極がミックスによって導通され、それによって、ミックスの存在が判断される。そのため、ミックスが不足して液位がミックスレベルセンサ7、7の位置よりも低下すると、ミックスを介した導通状態が遮断されるので、係る遮断が検知されて加熱による殺菌工程を行わないようホットガスの流通停止、又は、撹拌器5の回転停止の制御がなされる。
【0023】
8はパイプ状のミックス供給器9によりホッパー2から適宜供給されるミックスをビーター10により回転撹拌して冷菓(ソフトクリーム)を製造する冷却シリンダであり、その周囲にはシリンダ冷却器11が取り付けられている。ビーター10はビーターモータ12、駆動伝達ベルト、減速機13及び回転軸を介して回転される。
【0024】
次に、図3を参照して冷却シリンダ8及び当該冷却シリンダ8内で製造された冷菓を抽出する冷菓取出部56の構成について説明する。冷却シリンダ8はこの図に示すように前後方向に延在するシリンダであり、その外面には上述したようにシリンダ冷却器11(図2参照)が巻回されている。そして、ビータ10はこの冷却シリンダ8内に前後に渡って配設される。このビータ10の回転軸10Aは後部にて前記減速機13に連結されているが、ビータ10の回転軸10Aは冷却シリンダ8の中心軸に同一軸芯とされている。
【0025】
一方、冷菓取出部56を構成するフリーザドア14は、冷却シリンダ8の前面開口を塞ぐかたちで該フリーザドア14の四隅をそれぞれナット57・・・により本体1に着脱可能に取り付けられるものであり、当該フリーザドア14内には上下に渡る取出通路59が貫通形成され、この取出通路59内にプランジャ16が上下移動自在に略キッチリと挿入されている。
【0026】
そして、この取出通路59の下端には冷菓(ソフトクリーム)を成形するためのノズルを構成する星形ノズル58が取り付けられる。なお、本実施例において、星形ノズル58内の平断面星形の通路は、フリーザドア14内の取出通路59と共に取出通路59を構成するものであり、そのため、当該星形ノズル58の下端開口は、取出通路59の冷菓取出口58Aを構成する。
【0027】
更に、この取出通路59の下部からは冷却シリンダ8側に向けて抽出路61がフリーザドア14内に形成されている。この抽出路61の前端の出口61Aは取出通路59の内壁面下部に開口しており、後端の入口はフリーザドア14が本体1に取り付けられた状態で冷却シリンダ8内の前端下部に開口する。
【0028】
他方、プランジャ16の前面上部には係合凹所16Aが形成されている。取出レバー15はフリーザドア14の前端上部に形成された回動軸62に前後に回動自在に枢支されており、上部の操作部15A(後述する図5参照)とは回動軸62を挟んで反対側の下端部には、斜め後方下側に突出して前記プランジャ16の係合凹所16Aに係合する図示しない係合部が形成されている。
【0029】
そして、取出レバー15が略垂直に起立した状態では、プランジャ16は取出通路59内にて降下した位置にあり、プランジャ16下部後面は抽出路61の出口61Aを閉塞する。他方、その状態から取出レバー15の操作部15Aを手前に引き下ろすと、プランジャ16は逆に取出通路59内で上昇し、抽出路61の出口61Aより上方に移動して出口61Aを開放する。更に、取出レバー15の操作部15Aを再び上後方に押し戻せば、プランジャ16は降下して再び抽出路61の出口61Aは閉塞される。
【0030】
なお、本実施例では、内部に取出通路59や抽出路61が形成されたフリーザードア14や取出レバー15、プランジャー16により冷菓取出部56が構成される。
【0031】
次に、図2及び図4を参照して冷菓製造装置SMの冷却装置Rを説明する。図4においてRは可逆式の冷却装置である。以下この冷却装置Rにつき説明すると、18はコンプレッサ、19はコンプレッサ18からの吐出冷媒を、冷却サイクル(実線矢印)を構成する場合と、加熱サイクル(破線矢印)を構成する場合とで流通方向を逆に切り換える四方弁、20は水冷式のコンデンサである。
【0032】
コンデンサ20は外側の冷媒配管67と内側の通水配管68とから成る二重管構造とされ、この二重管が螺旋状に巻回された構造とされている。冷媒配管67内を流れる冷媒は、節水弁63を介して通水配管68内を常時流通される冷却水(水道水)と熱交換して冷却されることになる。即ち、前記四方弁19が冷却サイクルを構成している場合において、コンデンサ20の冷媒配管67にはコンプレッサ18から吐出された高温高圧のガス冷媒が逆止弁21を介して流入し、そこで凝縮液化して液冷媒となる。
【0033】
この液冷媒はドライコア(ドライヤ)23を経て逆止弁22より出ると二方向に分流し、一方はシリンダ冷却弁24、冷却シリンダ用キャピラリチューブ25を経て減圧され、シリンダ冷却器11に流入してここで蒸発気化して、冷却シリンダ8を冷却する。他方はホッパー冷却弁26、前段のホッパー用キャピラリチューブ27を経て減圧され、ホッパー冷却器4に流入して同様にここで蒸発気化し、ホッパー2を冷却した後、後段のキャピラリチューブ28を経て流出する。
【0034】
そして、冷却シリンダ8及びホッパー2を冷却した後の冷媒ガスは、アキュームレータ30にて合流した後、四方弁19を経てコンプレッサ18に戻る冷却サイクルを形成して、冷媒が実線方向に流れる冷却運転が行われる。尚、前記ホッパー2には当該ホッパー2の温度を検出するための図示しないホッパーセンサが取り付けられると共に、冷却シリンダ8には、当該冷却シリンダ8の温度により実質的に冷却シリンダ8内のミックスの温度を検出するための図示しないシリンダセンサが取り付けられている。
【0035】
ところで、上記冷却運転において、良質の冷菓(ソフトクリーム)を得るべく冷却シリンダ8及びホッパー2を所定温度に冷却維持する必要がある。そのため、冷却シリンダ8の温度を検出する上記シリンダセンサを設け、このシリンダセンサにより、シリンダ冷却弁24をON(開)、コンプレッサ18をONして冷却を行ない、シリンダ冷却弁24がOFF(閉)しているときにホッパー冷却弁26の開/閉とコンプレッサ18のON/OFFを行なわせる。即ち、冷却シリンダ8の冷却が優先する制御とされており、シリンダ冷却弁24がOFFの条件のもとで、ホッパー冷却弁26はONとなる。
【0036】
上述した冷却運転の下で販売が成された後、閉店時には加熱方式によるミックスの殺菌を行なうことになる。この場合には、冷却装置Rを冷却サイクルから加熱サイクルの運転に切り換える。即ち、四方弁19を操作して冷媒を点線矢印のように流す。すると、コンプレッサ18からの高温、高圧の冷媒ガス、即ちホットガスは四方弁19、アキュームレータ30を経て二手に分かれ、一方はシリンダ冷却器11に直接に、他方は逆止弁33を介してホッパー冷却器4に流入して、それぞれにおいて放熱作用を生じ、規定の殺菌温度で所定時間、冷却シリンダ8、ホッパー2は加熱される。
【0037】
放熱後の液化冷媒はそれぞれシリンダホットガス弁34、ホッパーホットガス弁35を介して合流した後、逆止弁40を経てコンデンサ20の冷媒配管67に流入し、そこで気液分離される。その後、冷媒ガスはコンデンサ20の冷媒配管67から出て逆止弁21の下流側に接続された冷媒配管69を介して並列接続のリバース電磁弁(開閉弁)36及びリバースキャピラリチューブ37に流入される。そして、リバース電磁弁36又はリバースキャピラリチューブ37を経た冷媒ガスは、逆止弁21の上流側に接続された分岐配管60を介して、四方弁19を経てコンプレッサ18に戻る加熱サイクルを形成する。
【0038】
尚、図1又は図2において50はコントロールパネル、44は電装箱、そして45はフリーザドア14の下方に対応して本体1の前面に取り付けられたドレン受けである。また、55は給水栓で、ミックス洗浄時にホッパー2や冷却シリンダ8に給水するために用いられる。更にまた、43はバイパス弁であり、コンプレッサ18の過負荷防止の役割を奏する。
【0039】
以上の構成で、本願発明のソフトクリーム製造装置SMの動作を説明する。今、ソフトクリーム製造装置SMのホッパー2内には所定量のミックスが投入され、ミックス供給器9より冷却シリンダ8内にもミックスが供給されているものとする。その状態で、コントロールパネル50の冷却スイッチが操作されると、制御装置は運転を開始し、冷却運転(冷却工程、デフロスト工程)、殺菌・保冷運転(殺菌工程、保冷工程)の各運転を実行する。
【0040】
まず、冷却運転について説明する。プルダウン(運転開始)において、制御装置は、冷却シリンダ8内の現在のミックス温度が冷却終了温度例えば+0.5℃以上か否か判断する。そして、プルダウン時のミックスの温度は高いので、制御装置は、冷却工程を実行する。
【0041】
この冷却工程では、制御装置は、コンプレッサ18を運転し、四方弁19は前記冷却サイクルとする(非通電)。そして、シリンダ冷却弁24をON(開)、ホッパー冷却弁26をOFF(閉)、シリンダホットガス弁34及びホッパーホットガス弁35をOFFとする。また、ビータモータ12によりビータ10を回転させる。
【0042】
これにより、冷却シリンダ8内のミックスはシリンダ冷却器11により冷却されて温度は急速に低下していくと共に、冷却シリンダ8内のミックスはビータ10により撹拌される。
【0043】
このような冷却工程の進行によって冷却シリンダ8内のミックスの温度は低下していき、当該ミックス固有の凝固点に近づくとその温度効果は徐々に緩慢となると共に、販売に供せる冷菓となると所定の硬度を有するようになる。そして、冷菓(ソフトクリーム)の硬度により、それを撹拌しているビータ10の負荷が増加するため、ビターモータ12の通電電流は上昇する。
【0044】
そして、ビータモータ12の通電電流がしきい値を超えると、制御装置は現在のミックスの温度を冷却終了温度(OFF点温度)にセットし、冷却停止を行う。すなわち、この冷却停止では、制御装置はシリンダ冷却弁24をOFFし、代わりにホッパー冷却弁26をONする。これにより、冷却シリンダ8の冷却は停止され、ホッパー冷却弁26のONにより、今度はホッパー2の冷却が行われるようになる。これでプルダウンは終了する。
【0045】
その後、制御装置は冷却シリンダ8内の現在のミックス温度が前記冷却終了温度(OFF点温度)+0.5℃以上に上昇したか否かを判断する。なお、制御装置は、ホッパー2内の温度も所定の温度以下に冷却されている場合には、ホッパー冷却弁26もOFFすると共に、この場合にはコンプレッサ18も停止する。実施例では、ホッパー冷却弁26は10℃でON、8℃でOFFされる。
【0046】
そして、冷却シリンダ8内の冷菓の温度が上昇して冷却終了温度(OFF点温度)+0.5℃以上となると、制御装置は再び前述した冷却シリンダ8の冷却を開始し、以後、これを繰り返すものである。
【0047】
このようにして冷却シリンダ8内に冷菓が製造される。冷菓を販売する際には、取出レバー15を手前に引くことによってプランジャ16を引き上げ、抽出路61の出口61Aを開放する。冷却シリンダ8内ではビータ10の回転によって冷菓を回転しながら前方に押し出す方向に圧力が加えられているので、冷却シリンダ8内の冷菓は抽出路61の出口61Aから出て取出通路59内に入り、下端の星形ノズル58を経て抽出されることになる。
【0048】
次に、殺菌・保冷運転(殺菌工程、保冷工程)について説明する。コントロールパネル50の殺菌スイッチが操作されると、制御装置は、ミックス切れのない条件下であることを判断した上で、殺菌工程を実施する。
【0049】
この場合、制御装置は、四方弁19により冷却サイクルから加熱サイクルに切り換える。これにより、ホットガスが冷却シリンダ8、ホッパー2に供給されて加熱されていく(殺菌昇温)。そして、係る殺菌昇温が終了すると、今度は、ホッパー内のミックス温度などに基づき、制御装置はコンプレッサ18、シリンダホットガス弁34、ホッパーホットガス弁35をON、OFF制御して、冷却シリンダ8、ホッパー2とも+68℃以上の加熱温度で約30分の合計加熱時間を満足するように殺菌保持を実行する。
【0050】
この殺菌昇温及び殺菌保持が終了すると、制御装置は保冷プルダウンに移行する。この保冷プルダウンでは、所定時間以内に所定温度以下となる条件の下、冷却シリンダ8、ホッパー2の温度を+10℃以下の温度まで冷却する。そして、+10℃以下まで低下したら制御装置は、保冷工程に移行する。
【0051】
次に、上記図3及び図5、図6を参照して、本願発明に係るカバー46について詳述する。図5は冷菓取出部56の拡大斜視図、図6はカバー46の斜視図をそれぞれ示している。カバー46は、少なくとも冷菓取出口58A(星形ノズル58の下端開口)の前方から当該取出口58Aの前下方に渡って設けられる透視可能なカバー部材である。本実施例では、無色透明の材料であって、所定の強度を確保するため、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)により構成する。
【0052】
本実施例において、上記冷菓取出口58Aが形成される(設けられる)フリーザドア14は、本体1の前面に密着して設けられ、内部に抽出路61が形成される取付部14Aと、当該取付部14Aの前側に位置して内部に取出通路59が形成される取出部14Bとから構成されており、取出部14Bは、取付部14Aよりも所定寸法だけ幅寸法が小さく形成されており、全体として取出部14Bが前方に突出した階段状を呈している。
【0053】
そのため、本実施例におけるカバー46は、フリーザドア14の取出部14Bの前面及び冷菓取出口58A前下方を下側に所定寸法だけ延在して被覆する前板47と、当該前板47の両側端を取出部14Bの両側面に沿って後方に折曲される側板48、48と、それぞれの側板48の後端を取付部14Aの前面及び側面に渡って形成される取付片49、49とから構成される。
【0054】
前板47の下端は、図3に示すように、少なくとも、フリーザドア14内に形成される抽出路61の出口61A下端(A点)から、同じくフリーザドア14内に形成され、当該抽出路61よりも前側に位置する取出通路59の下縁前端、即ち、冷菓取出口58A(星形ノズル58)の下縁前端(B点)とを結ぶ線と、カバー46の前板47とが交わる点(C点)以下の高さに位置する。
【0055】
また、この前板47の下端は、低い位置まで延在するほど冷菓取出口58Aからの冷菓の飛散を抑止することが可能となるが、あまり低い位置まで延在すると、冷菓をコーンなどの容器に盛りつける際に当該前板47に容器や作業者の手が当たることとなるため、上記条件を満たし、且つ、当該不都合が生じない高さとすることが望ましい。なお、本実施例におけるソフトクリーム製造装置SMでは、各条件を満たす寸法として、冷菓取出口58A、即ち、星形ノズル58の下端から下方に5cm程度延在した位置とする。
【0056】
更に、この前板47の上縁は、フリーザドア14側に少許、折曲することにより補強フランジ51が形成されている。これにより、当該カバー46の長手方向に対する強度を向上させることが可能となる。
【0057】
本実施例における取付片49は、側板48の上端からフリーザドア14の下端に対応する位置にまで延在して形成されており、当該取付片49の前面49Aには、下端から上方に向けて切欠49Bが形成されている。両切欠49Bは、フリーザドア14の取付部14Aに位置して本体1へ固定するために用いられる下隅部のナット57、57に上方から着脱自在に係支される。
【0058】
また、この取付片49の側面49C後端は、ナット57、57に係支された状態で、本体1の前面に当接する構成とされている。
【0059】
係る構成のカバー46を、左右の取付片49、49を本体1側のナット57、57に係支し、冷菓取出部56における取出操作を許容した状態で、前板46にて冷菓取出口58Aの前方及び前下方を覆う。
【0060】
ここで、取出レバー15の操作によって、冷菓の取出動作が連続して行われる場合には、外部からの熱伝導によって、フリーザドア14内の抽出路61内の冷菓が溶解してしまう不都合が生じがたいが、例えば、前回の冷菓取出から今回の冷菓取出までに比較的長い時間が経過すると、冷菓取出部56内、即ち、フリーザドア14内に形成される抽出路61内の冷菓が外部からの熱伝導により溶解しやすくなる。係る場合において、上述したように取出レバー15を操作し、ソフトクリームの取出動作を行うと、抽出路61内の液状のミックスが冷却シリンダ8内のビータ10の回転による圧力と、大気圧との関係で、勢いよく冷菓取出口58Aより吹き出す。
【0061】
このとき、フリーザドア14の下側に向けて吹き出す冷菓は、ドレン受け45により受容されるため、周辺や作業者に冷菓が付着する不都合は生じがたいが、ビータ10の回転による圧力は、後方から前方に向けて加えられるため、特に、プランジャ16が上昇して冷菓取出口58Aの下縁が取出通路59に開き始めると液体の冷菓が前方や前下方に向けて勢いよく吹き出す。
【0062】
本実施例では、上述したように、冷菓取出部56における取出操作を許容した状態で、冷菓取出口58Aの前方から前下方に渡ってカバー46が設けられているため、当該液状のミックスが吹き出したとしても、冷菓取出口58Aの前方乃至前下方に位置して冷菓抽出を行っている作業者や周辺に飛び散り、これらを汚染してしまう不都合を防止することが可能となる。
【0063】
特に、カバー46は透視可能なものであることから、冷菓の取出操作を行う際に、冷菓取出口58Aから取り出される冷菓の状態を視認しながら冷菓を取り出すことが可能となり、カバー46の存在によって操作性が悪くなる不都合を回避することが可能となる。
【0064】
また、本実施例におけるカバー46は、上述したように、前板47の下端は、フリーザドア14内の抽出路61の出口61A下端と冷菓取出口58Aの下縁前端とを結ぶ線と前板47とが交わる点以下の高さに位置しているため、当該カバー46の前板47によって、冷菓取出口58Aから前方乃至前下方に吹き出した冷菓を受けることができ、当該装置SMの前方にて冷菓取出作業を行う作業者等に当該冷菓が飛び散り汚してしまう不都合を効果的に回避することができる。
【0065】
更に、本実施例におけるカバー46は、両端に形成された係止片49、49を、フリーザドア14を本体1に着脱自在に取り付けるためのナット57、57に係支させることで、容易にフリーザドア14に取り付けることが可能となる。そのため、カバー46を本体1(フリーザドア14)に取り付けるための特別な手段を設けることなく、前記ナット57をカバー46の取付に使用することによって、部品点数の削減を実現しつつ、当該カバー46によって容易にフリーザドア14の下端に形成された冷菓取出口58Aから吹き出した液状の冷菓が前方乃至前下方に飛び散り作業者や周辺を汚染してしまう不都合を防止することが可能となる。
【0066】
特に、当該カバー46は、フリーザドア14より前方に突出して取り付けられるナット57に着脱自在に係支されるものであることから、片手であってもカバー46を着脱することが可能となり、使用性の向上を図ることができる。また、容易に取り外すことができることから、カバー46を別途洗浄することができ、衛生面においても有利となる。
【0067】
更に、当該ナット57、57にカバー46が係支された状態では、当該カバー46の両側後端、即ち、係止片49の後端49Cは本体1前面に当接するため、安定した状態で取り付けることが可能となる。従って、当該カバー46が不安定な取付となることで、抽出作業において冷菓が該カバー46に当接し、商品価値が消失してしまう不都合を回避することが可能となる。
【0068】
なお、当該カバー46は、上記実施例に限定されるものではなく、例えば図7に示すカバー64のように、前板47、若しくは、前板47及び側板48、48の内側若しくは外側において、これらと重合し、上下方向に摺動するスライド板53を備え、カバー64の上下寸法を伸縮可能な構成としても良い。具体的には、前板47に上下方向に延在する長穴52、52を形成し、スライド板53の上部に設けられた係止部材54を当該長穴52内を上下に摺動自在に移動可能とする。
【0069】
係る構成とすることにより、抽出当初の液状の冷菓が飛び散りやすい状況では、カバー64のスライド板53を下側まで引き下げて使用することにより、より一層作業者や周辺に冷菓が飛散する不都合を回避することができる。他方、冷菓の抽出が安定し、液状の冷菓が殆ど存在しなくなった状況では、カバー64のスライド板53を上側に縮めて使用することで、冷菓の取出作業性を向上させることが可能となる。
【0070】
これにより、カバー64を取り外さなくとも、支障なく液状の冷菓の飛散を回避しつつ、盛りつけ(抽出)作業性を向上させることが可能となる。
【0071】
なお、上記各実施例において、冷菓の冷却シリンダ8内からの抽出は、プランジャ16を用いた構造を採用しているが、これに限定されるものではなく、例えばボタン操作などによってモータやソレノイドを作動させ、冷菓取出口58Aを開放する等の電気的な取出装置を用いて冷菓を取り出すものであっても、同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の冷菓製造装置の実施例としてのソフトクリーム製造装置の斜視図である。
【図2】図1のソフトクリーム製造装置の概略内部構成図である。
【図3】冷却シリンダと冷菓取出部の断面図である。
【図4】図1のソフトクリーム製造装置の冷媒回路図である。
【図5】冷菓取出部の拡大斜視図である。
【図6】カバーの斜視図である。
【図7】他の実施例としてのカバーの斜視図である。
【符号の説明】
【0073】
SM ソフトクリーム製造装置(冷菓製造装置)
R 冷却装置
1 本体
4 ホッパー冷却器
8 冷却シリンダ
9 ミックス供給器
10 ビータ
11 シリンダ冷却器
12 ビータモータ
14 フリーザドア
14A 取付部
14B 取出部
15 取出レバー
15A 操作部
16 プランジャ
45 ドレン受け
46、64 カバー
47 前板
48 側板
49 取付片
49A 前面
49B 切欠
49C 側面
51 補強フランジ
52 長穴
53 スライド板
54 係止部材
56 冷菓取出部
57 ナット
58 星形ノズル
58A 冷菓取出口
59 取出通路
61 抽出路
61A 出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に設けられた冷却シリンダ内においてミックスを撹拌しながら冷却することにより、冷菓を製造する冷菓製造装置において、
前記本体の前面に設けられ、所定の取出操作に基づいて前記冷却シリンダ内で製造された冷菓を下端の冷菓取出口より抽出する冷菓取出部と、
該冷菓取出部における取出操作を許容した状態で、少なくとも前記冷菓取出口の前方から当該冷菓取出口の前下方に渡って設けられた透視可能なカバーとを備えたことを特徴とする冷菓製造装置。
【請求項2】
前記冷菓取出部は、前記冷却シリンダの前面を閉塞するフリーザドアと、該フリーザドアに上下に渡って構成され、下端が前記冷菓取出口となる取出通路と、前記フリーザドアに形成され、前端の出口が前記取出通路の内壁面に開口すると共に、後端の入口が前記冷却シリンダの前端部に開口した抽出路と、前記取出通路内に上下移動自在に設けられ、降下して前記抽出路の出口を閉塞すると共に、前記取出操作により上昇して前記抽出路の出口を開放するプランジャとを備えて構成されており、
前記カバーの下端は、前記抽出路の出口下端と前記冷菓取出口の下縁前端とを結ぶ線と当該カバーとが交わる点以下の高さに位置していることを特徴とする請求項1に記載の冷菓製造装置。
【請求項3】
前記冷菓取出部は、ナットにより前記本体に着脱可能に取り付けられて前記冷却シリンダの前面を閉塞するフリーザドアと、該フリーザドアに上下に渡って構成され、下端が前記冷菓取出口となる取出通路と、前記フリーザドアに形成され、出口が前記取出通路の内壁面に開口すると共に、入口が前記冷却シリンダの前端部に開口した抽出路と、前記取出通路内に上下移動自在に設けられ、降下して前記抽出路の出口を閉塞すると共に、前記取出操作により上昇して前記抽出路の出口を開放するプランジャとを備えて構成されており、
前記カバーは、前記ナットに着脱自在に係支されることを特徴とする請求項1に記載の冷菓製造装置。
【請求項4】
前記ナットに係支された状態で、前記カバーの両側後端は前記本体に当接することを特徴とする請求項3に記載の冷菓製造装置。
【請求項5】
前記カバーは、その上下寸法を伸縮可能とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の冷菓製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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