説明

冷蔵倉庫送風装置

【課題】冷蔵倉庫の荷捌き場内の結露を防ぐ有効かつ適切で経済的な装置を提供する。
【解決手段】トラックヤードに接する一方の壁面に荷物を般出入する荷物般出入口を備え、他方の壁面に冷蔵庫に通じる庫内出入扉を備え、場内に低温低湿度の空気を供給する送気装置を備える冷蔵倉庫の荷捌き場において、前記荷物般出入口の近傍にあって該荷物般出入口の開口高さよりも上部に設置され、前記庫内出入扉に向かって斜め下方向に荷捌き場内の空気を送る荷物般出入口側送風機からなる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵倉庫における荷捌き場内の結露防止に関する。
【背景技術】
【0002】
我々の食生活は、食品を低温で保存することによりその鮮度を長期にわたって維持することができるようになって大幅に改善された。これら低温保存食品(冷蔵・冷凍食品)は衛生管理上、その性質に見合った温度下で管理されて安全に消費者の手元に届ける必要があり、この低温保存食品の流通を支えているのが消費地の近くに立地する大型の冷蔵倉庫である。そして、冷蔵倉庫の荷捌き場内は冷蔵・冷凍食品の品質維持のために0℃ないし5℃に温度管理されている。
【0003】
図3に示すように、この冷蔵倉庫は外部にトラックヤード25を有し、それに面して密閉空間になり得る荷捌き場11が設けられ、荷捌き場11に接して冷蔵庫13が設けられている。そして、荷捌き場11は、トラックヤード25に接する一方の壁面に冷蔵・冷凍食品等の荷物を般出入するためのドックシェルターを併設する荷物般出入口15を備え、他方の壁面に冷蔵庫に通じる庫内出入扉17を備え、さらには、階上の冷蔵庫13に通じるエレベーターシャフト19が設置されている。
荷物を搬入するためには、トラック27から荷捌き場11に荷物をまず搬入し、その後、エレベーター防熱扉21が設けられたエレベーターシャフト19を通して、より低温の冷蔵庫13に移動される。逆に、出庫の際しては、冷蔵庫13からエレベーターシャフト19を通して荷捌き場11に荷物が移動され、その後、トラック27に荷積みされる。
【0004】
ところで、冷蔵倉庫10における荷物の搬入、搬出作業においては、トラック27の後部と荷物搬出入口15と間に隙間が存在し、この隙間から、高温高湿度の外気が荷捌き場11に流入するとともに、荷捌き場11内から低温低湿度の冷気が外部に流出する。荷捌き場11内は通常0℃ないし5℃に温度管理されているため、流入した高温高湿度の外気が温度センサー7に達し、温度センサー7が設定温度以上であることを感知すると送気装置5が稼働する。流入してくる外気の量が冷蔵倉庫の冷蔵能力を超えない限り、終局的には荷捌き場11内の温度、湿度を下げて当初の設定温度・湿度に戻る。しかし、流入した高温高湿度の外気の水蒸気は、荷捌き場11内の温度に対して、局所的そして一時的には飽和点を越えており、そのため、最初は荷物搬出入口15付近に結露が発生し、そして、流入してくる外気の量が多い場合には荷捌き場11内全体に結露が発生する。さらに、これら流入した外気はエレベーター防熱扉21からエレベーターシャフト19内にも流入し、ここでも結露が発生する。こうして発生した結露は、搬入された冷凍食品等の梱包部に付着し、終局的には冷凍食品等の鮮度を落とすだけでなく、荷捌き場11の床が水浸しとなったり、エレベーター内、冷蔵庫13内が結露で濡れたりして、荷捌き作業に危険が伴うという不具合が生ずる。また壁に付着した結露にはカビが生じたり、ゴミが付着したりする衛生上の問題も存在する。
【0005】
このため、荷捌き場11への外気の流入を最小限にすべく、様々な技術や装置が提案されている。
たとえば、特許文献1は「車体の後部に凹凸部があっても、複数のエアバッグに形成されたエアバッグ集合体が凹凸部に倣って弾性変形して隙間を遮蔽し、コンテナの後部開口の下辺における隙間を無くし、食品等の搬入・搬出時に低温室及びコンテナからの冷気の漏れを防止できるドックシェルターを提供すること」を課題とし、特許文献2は「荷台の内部に差し込まれてシールすることができ、内部からの冷気(暖気)の漏れ、外部からの冷気(暖気)の侵入を防止できる荷台差込式ドックシェルターを提供する」ことを課題とし、特許文献3は「使用時の騒音および電力の消費量が少なく、破損により使用不可能の状態に陥ることのない、信頼性の高いシェルターを提供する」ことを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−54874号公報
【特許文献2】特開2009−40545号公報
【特許文献3】特許第3070922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、冷蔵倉庫において結露を防ぐための最も有力な手段は、外気の流入を防ぐことであることは言うまでもないが、荷物を運搬するトラックは、その荷台の大きさや、荷物搬出入口に接する後部構造が大幅に異なっているため、特許文献1ないし特許文献3に開示された技術をもってしても、トラックの荷台と荷捌き場との隙間をゼロにすることは不可能である。
【0008】
そこで、本願発明は、特許文献1ないし特許文献3に開示された技術に頼ることなく、冷蔵倉庫の荷捌き場内の結露を防ぐ有効、適切かつ経済的な手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、実際の冷蔵倉庫を使用した実験をも含む研究を重ねた結果、荷捌き場内の所定箇所に送風機を設置することにより、効率的に荷捌き場内の空気を攪拌して一様にすることで、温度上昇を早い段階で抑えるとともに結露を防止することができる、との知見を得た。本発明はこの知見に基づくものである。
すなわち、上記課題を解決するために、本願請求項1に係る冷蔵倉庫送風装置は、トラックヤードに接する一方の壁面に荷物を般出入する荷物般出入口を備え、他方の壁面に冷蔵庫に通じる庫内出入扉を備え、場内に低温低湿度の空気を供給する送気装置を備える冷蔵倉庫の荷捌き場において、前記荷物般出入口近傍にあって該荷物般出入口の開口高さよりも上部に設置され、前記庫内出入扉に向かって斜め下方向に荷捌き場内の空気を送る荷物般出入口側送風機からなる、ことを特徴としている。
また、本願請求項2に係る冷蔵倉庫送風装置は、請求項1に記載の冷蔵倉庫送風装置であって、前記荷物般出入口側送風機の送風方向の床面に対する俯角は10°ないし80°である、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係る冷蔵倉庫送風装置は、請求項1または請求項2に記載の冷蔵倉庫送風装置であって、前記荷物般出入口側送風機に加え、前記一方の壁面と前記他方の壁面との間にあって該荷物般出入口側送風機と略同一高さに庫内出入扉側送風機が設置され、該庫内出入扉側送風機は該荷物般出入口側送風機の方向に向かって斜め下方向に荷捌き場内の空気を送る、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項4に係る冷蔵倉庫送風装置は、請求項3に記載の冷蔵倉庫送風装置であって、前記庫内出入扉側送風機の送風方向の床面に対する俯角は0°ないし60°である、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記解決手段により、本発明は以下の効果を奏する。
(1)本発明は、庫内出入扉に向かって斜め下方向に荷捌き場内の空気を送る荷物般出入口側送風機を荷物般出入口近傍、かつ、該荷物般出入口の開口高さよりも上部に設置することにより、
(ア)外部から侵入してきた高温高湿度の外気をいち早く温度センサーに向けて送り、これにより既設の送気装置が稼働するとともに、外気を荷捌き場内の冷気と強制的に撹拌し一様な空気とすることによって、荷捌き場内の結露の発生を防止することができる。さらに、荷捌き場内の結露発生防止により、エレベーター内や冷蔵庫内の結露の発生を防止することができる。
(イ)荷物般出入口側送風機は市販の送風機、有圧換気扇などの汎用製品をそのまま使用でき、それ以外は既設の設備であり、かつ、殆ど手を加えることが無いため、初期投資費用および維持管理費用が極めて安価で経済的なものとなる。
(ウ)荷物般出入口側送風機を荷物般出入口の開口高さよりも上部に設置することにより、荷捌き作業の邪魔にならない。なお、荷物般出入口側送風機の設置距離は荷物般出入口から庫内出入扉に向かって略0.5mないし3mであることが望ましい。
(エ)荷物般出入口側送風機の送風方向の床面に対する俯角を10°ないし80°とすることにより、荷物般出入口側送風機が排出した空気の流れ(以下、「送気流」という。)もこの方向に流れるため、外気を荷捌き場内に吸引することが少なく、かつ、荷捌き場内の冷却された空気を外部に排出することが少なくなる。
(2)荷物般出入口側送風機に加えて、庫内出入扉側送風機を設置することにより、荷捌き場内には空気の循環流が生じ、この循環流により上記(1)(ア)の効果がより一層大きくなる。
なお、荷物般出入口側送風機の設置高さよりも庫内出入扉側送風機の設置高さを高くすることにより、それぞれの送気流が互いに干渉すること無く循環流が生じ易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1に係る冷蔵倉庫送風装置を備えた冷蔵倉庫の断面図である。
【図2】実施例2に係る冷蔵倉庫送風装置を備えた冷蔵倉庫の断面図である。
【図3】従来の冷蔵倉庫の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る冷蔵倉庫送風装置について、図1および図2を基に説明する。なお、図1ないし図3において、符号1は荷物般出入口側送風機、符号3は庫内出入扉側送風機、符号5は送気装置、符号7は温度センサー、符号10は冷蔵倉庫、符号11は荷捌き場、符号13は冷蔵庫、符号15は荷物般出入口、符号17は庫内出入扉、符号19はエレベーターシャフト、符号21はエレベーター防熱扉、符号23は荷捌き場独立柱、符号25はトラックヤード、符号27はトラック、である。また矢印1wは荷物般出入口側送風機1の送気流、矢印3wは庫内出入扉側送風機3の送気流、である。
【実施例1】
【0013】
まず、実施例1に係る冷蔵倉庫送風装置について、主に、図1を基に説明する。
実施例1に係る冷蔵倉庫送風装置は、荷物般出入口15の近傍にあってその開口高さよりも高くなるように天井から吊り下げられる荷物般出入口側送風機1と、天井に吊設される既設の送気装置5と、荷捌き場独立柱23に添着されて送気装置5に稼働/停止の指令を送る温度センサー7と、から構成されている。
【0014】
各荷物般出入口15毎に設置される荷物般出入口側送風機1は、市販の送風機を使用していて、荷物般出入口15から略1.5mの庫内出入扉17寄りの位置に設置されている。そして、送気流1wは庫内出入扉17の方向に向かって荷捌き場11の床面に対して略45°となるように調整されている。
【0015】
送気装置5は、図示外の主要冷蔵装置から冷媒配管を介して送られてくる低温低湿度の空気を荷捌き場11内に排出する。そして、温度センサー7が設定温度を超える温度を感知すると、送気装置5が稼働し低温低湿度の空気を荷捌き場21内 に送る。同様に、温度センサー7が設定温度を下回る温度を感知すると、送気装置5は稼働を停止し送気を中止する。
【0016】
ここで、実施例1に係る冷蔵倉庫送風装置の作用について説明する。
荷物の搬出入作業は、冷蔵倉庫10のトラックヤード25にトラック27を乗り入れて、荷物般出入口15にトラック27の後部を付け、荷物般出入口15を開口して行なわれる。
【0017】
この際、トラック27と荷物搬出入口15の間の隙間から、高温高湿度の外気が荷捌き場21に流入する。このとき荷物般出入口15毎に設置される荷物般出入口側送風機1の送気流1wによって、該高温高湿の外気は荷捌き場独立柱23に設置された温度センサー7に速やかに送られる。これによって温度センサー7が設定温度以上であることを感知すると、送気装置5から低温低湿度の空気が送気され、荷捌き場11内の冷却、除湿が速やかに行なわれて荷捌き場11内の結露を防止する。さらに、送気流1wにより流入した高温高湿度の外気と荷捌き場11の冷気とが速やかに一様に撹拌されることによっても荷捌き場11内の結露を防止する。
【0018】
また、荷物般出入口側送風機1から斜め下方向に向かう直線的な送気流1wにより、高温高湿度の外気の外部からの吸引を防止し、荷捌き場11内の冷気を外部に排出することを防止する。
【実施例2】
【0019】
つぎに、実施例2に係る冷蔵倉庫送風装置について、図2を基に説明するが、実施例2に係る冷蔵倉庫送風装置は、実施例1に係る冷蔵倉庫送風装置と略同一の構成であり、相違する部分は庫内出入扉側送風機3が設置されているところにあるので、ここでは、主に、相違する部分について説明する。
【0020】
実施例2に係る冷蔵倉庫送風装置は、荷物般出入口15の近傍にあってその開口高さよりも高くなるように天井から吊り下げられる荷物般出入口側送風機1と、トラックヤード25側の壁面と庫内出入扉17側の壁面との間にあって荷物般出入口側送風機1と略同一高さに天井から吊り下げられる庫内出入扉側送風機3と、天井に吊設される既設の送気装置5と、荷捌き場独立柱23に添着されて送気装置5に稼働/停止の指令を送る温度センサー7と、から構成されている。
【0021】
荷物般出入口側送風機1と同様、各荷物般出入口15毎に設置される庫内出入扉側送風機3は、市販の送風機を使用していて、前述したように、トラックヤード25側の壁面と庫内出入扉17側の壁面との間の位置に荷物般出入口側送風機1と略同一高さに天井から吊り下げられている。そして、庫内出入扉側送風機3の送気流3wの方向は、荷物般出入口側送風機1に向かって荷捌き場11の床面に対して略0°に調整されている。
【0022】
すなわち、庫内出入扉側送風機3は、荷物般出入口側送風機1に対向して設置され、送気流1wおよび送気流3wも対向する方向に流れるようになっている。また、庫内出入扉側送風機3は、荷捌き場11内の空気を攪拌する役割も担っていて、各荷物般出入口15毎に複数台を配置しても良い。
なお、荷物般出入口側送風機1、送気装置5および温度センサー7については、実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【0023】
つぎに、実施例2に係る冷蔵倉庫送風装置の作用について説明するが、実施例2に係る冷蔵倉庫送風装置の作用についても実施例1に係る冷蔵倉庫送風装置の作用と略同様であり、相違する部分は庫内出入扉側送風機3に拠るものであるので、ここでも、主に、相違する作用について説明する。
【0024】
トラックヤード25から荷さばき場21に侵入した高温高湿度の外気は、この荷物般出入口側送風機1の送気流1wにより荷捌き場独立柱23に設置された温度センサー7に直ちに送られるが、送気流1wに加えて、庫内出入扉側送風機3の送気流3wに拠り、荷捌き場11内には空気の循環流が生ずる。
【0025】
この空気の循環流に拠り、荷捌き場21内の空気が実施例1よりも高温高湿度の外気と荷捌き場21の冷気とがより速やかに一様に撹拌されることによって、荷捌き場21内の結露を素早く防止することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 荷物般出入口側送風機
3 庫内出入扉側送風機
5 送気装置
7 温度センサー
10 冷蔵倉庫
11 荷捌き場
13 冷蔵庫
15 荷物般出入口
17 庫内出入扉
25 トラックヤード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックヤードに接する一方の壁面に荷物を般出入する荷物般出入口を備え、他方の壁面に冷蔵庫に通じる庫内出入扉を備え、場内に低温低湿度の空気を供給する送気装置を備える冷蔵倉庫の荷捌き場において、
前記荷物般出入口近傍にあって該荷物般出入口の開口高さよりも上部に設置され、前記庫内出入扉に向かって斜め下方向に荷捌き場内の空気を送る荷物般出入口側送風機からなる、ことを特徴とする冷蔵倉庫送風装置。
【請求項2】
前記荷物般出入口側送風機の送風方向の床面に対する俯角は10°ないし80°である、ことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵倉庫送風装置。
【請求項3】
前記荷物般出入口側送風機に加え、前記一方の壁面と前記他方の壁面との間にあって該荷物般出入口側送風機と略同一高さに庫内出入扉側送風機が設置され、該庫内出入扉側送風機は該荷物般出入口側送風機の方向に向かって斜め下方向に荷捌き場内の空気を送る、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷蔵倉庫送風装置。
【請求項4】
前記庫内出入扉側送風機の送風方向の床面に対する俯角は0°ないし60°である、ことを特徴とする請求項3に記載の冷蔵倉庫送風装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−149604(P2011−149604A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10526(P2010−10526)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(392010739)金剛産業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】