説明

冷蔵庫

【課題】専用機でなく、農薬の付着した可能性のある保存物を保存しながら農薬成分を減らすことができる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】冷蔵庫の貯蔵室である野菜室114内に備えられた紫外線照射手段118によって紫外線を室内照射することによって、野菜室114の内部に収納された保存物に付着した農薬成分を紫外線により分解することが可能となり、冷蔵庫に保存しながら保存物に付着した農薬成分を減らすことができ、安全性と使い勝手をより向上した冷蔵庫を提供することができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は野菜や果物などの食物に付着している農薬成分を紫外線を照射することによって減らす事のできる冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食の安全性に対する消費者の懸念は深く、東京都消費者生活アンケート「食品の安全性」(2000年7月〜8月に調査)によると、中でも特に食品の残留農薬に対する不安は消費者の約9割が不安を感じていると言う国民意識調査結果が出ている。
【0003】
残留農薬に対する安全性の確保のため、農家の農薬使用に対する規制や、人の健康面から残留量を規制した食品衛生法といった法規制は整備されつつも、毎年厚生労働省が実施する残留農薬検査では規定量を上回って残留している、いわゆる違反の農産物が検出されていると言う事実がある。検出率の高い残留農薬は主には海外から輸入時にポストハーベスト目的で使用された農薬で、その中には日本国内では使用禁止されている農薬も多くある。
【0004】
このような残留農薬の実態の中、消費者が安心して食生活を送るために、残留農薬を除去する装置の必要性が高いと考える。
【0005】
従来、野菜や果物などに付着している農薬等の有害物質を除去する機能を有する、食物洗浄装置がある(例えば、特許文献1)。
【0006】
図6は特許文献1に記載された従来の農薬等の有害物質を除去する機能を有する食物洗浄装置を示すものである。
【0007】
図6に示すように、洗浄液26は通常水道水が使用され、洗浄槽25の側壁には洗浄液26を供給する供給管36、洗浄槽25の底部には洗浄液を排出する排出管37が接続されている。また、供給管36と排出管37には洗浄液26の供給と排出を制御する電磁弁38,39が設けられている。
【0008】
洗浄液26に微細気泡を発生させ気泡発生手段27は、微細気泡となる気体を吸引する吸引管31が設けられたエジェクター30と、洗浄液26を搬送させるとともに洗浄液26を加圧して気体を溶解させるための流体ポンプ28と、溶解した気体を減圧して析出させ洗浄槽25内は微細気泡を含む洗浄液26を再びエジェクター30に戻す分岐部33で構成されている。洗浄槽25とエジェクター30およびエジェクター30と流体ポンプ28は洗浄液26を搬送する搬出管29、流体ポンプ28と分岐部33は吐出管32、分岐部33とエジェクター30は戻し管35がそれぞれ構成されている。食物に付着している汚染物質を溶出させる液体改質手段40は気泡発生手段27を構成している流体ポンプ28と分岐部33の間に設けられ、洗浄液26は液体改質手段40を構成するシクロケイ酸塩化合物と接触することにより、汚染物質を溶出させる洗浄液として改質している。汚染紫外線48はオゾンを発生させるオゾン発生装置49と、発生したオゾンを洗浄槽25に供給する気体ポンプ50とオゾンの供給と洗浄液26の流入を防止するための電磁弁51で構成されている。オゾン発生装置49は、高圧放電を利用してオゾンを発生させるものが適用される。
【0009】
以上のように構成された食物洗浄装置において、以下その動作について説明する。
【0010】
制御部(図示せず)から洗浄開始の信号が発せられると電磁弁38は作動(開)し、食物を洗浄する洗浄液26が供給管36から洗浄槽25に供給される。洗浄液26が所定の量になると電磁弁38が作動(閉)し、供給が停止される。次に流体ポンプ28が作動し、洗浄液26は搬送管29を通り、エジェクター30に搬送され、エジェクター30に設けられている吸引管31から吸引された空気を巻き込む。洗浄液26に巻き込まれた空気は流体ポンプ28によって加圧された洗浄液26に溶解し、吐出管32を通り液体改質手段40によって活性化され、減圧ノズル34で加圧され、溶解していた空気の析出により微細気泡を発生した状態で洗浄槽25内に噴出される。減圧ノズル34では加圧された洗浄液26を減圧させるために圧損を高くして噴出流量を少なくしているので、過剰の洗浄液26は戻し管35に導かれ、気泡発生手段27を循環する。一方流体ポンプ28の作動と同時に、オゾン発生装置49、気体ポンプ50、電磁弁51が作動し、オゾンが洗浄槽25内の洗浄液26に供給される。洗浄槽25に入れられた野菜や果物などの食物はこの洗浄液26によって洗浄される。
【特許文献1】特開平9−75050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の構成では、野菜や果物を洗浄液に浸漬し、オゾンガスを含む微細気泡の物理的作用、化学的作用によって、農薬等の有害物質を除去する専用機器のため、洗浄槽や排水管が必要であり、構造が複雑で大掛かりな装置になるという課題を有していた。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、専用機でなく、冷蔵庫に保存しながら紫外線の光子エネルギーにより、分子中の電子配置変化をおこす事が可能となり、例えば有機リン系農薬であればチオノ体(P=S)からチオール体(P―S)への光異性化反応によって、農薬成分を減らすことができ、お客様に安心感を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の冷蔵庫は、断熱区画された貯蔵室を有する断熱箱体と、前記貯蔵室内に紫外線照射手段を備え、前記紫外線照射手段によって紫外線を照射することによって、前記貯蔵室の内部に収納された保存物に付着した農薬成分を低減するものである。
【0014】
また、本発明の冷蔵庫は、断熱区画された貯蔵室を有する断熱箱体と、前記貯蔵室内に紫外線照射手段と紫外線を受けて触媒機能を発揮する光触媒を有した部材を備え、前記紫外線照射手段によって紫外線を照射することで前記部材が反応することによって、前記貯蔵室の内部に収納された保存物に付着した農薬成分を低減するものである。
【0015】
これによって、本発明では野菜や果物に付着する農薬等の有害物質の化学結合を、紫外線の光子エネルギーが切断することにより、農薬成分を分解することが可能となり、専用機ではなく、冷蔵庫に保存しながら保存物の農薬成分を減らすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の冷蔵庫は、紫外線により農薬を分解することが可能となり、冷蔵庫に保存しながら農薬成分を減らすことができるので、安全性と使い勝手をより向上した冷蔵庫を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
請求項1に記載の発明は、断熱区画された貯蔵室を有する断熱箱体と、前記貯蔵室内に紫外線照射手段を備え、前記紫外線照射手段によって紫外線を照射することによって、前記貯蔵室の内部に収納された保存物に付着した農薬成分を低減することにより、農薬成分を紫外線のエネルギーにより分解させることができるので、保存物の農薬成分を減らすことができる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、断熱区画された貯蔵室を有する断熱箱体と、前記貯蔵室内に紫外線照射手段と紫外線を受けて触媒機能を発揮する光触媒を有した部材を備え、前記紫外線照射手段によって紫外線を照射することで前記部材が反応することによって、前記貯蔵室の内部に収納された保存物に付着した農薬成分を低減することにより、空気中の水と酸素から酸化剤であるOHラジカルとオゾンを作りだすことが可能となり、前記貯蔵室に保存されている保存物の農薬成分をOHラジカルとオゾンにより酸化分解させることができるので、保存物の農薬成分を減らすことができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記貯蔵室の内壁が、樹脂で形成されており、前記紫外線照射手段によって照射される紫外線の波長が280nm以上400nm以下であることにより、貯蔵室の内壁が、樹脂で形成される事により、形成するのが簡便であり、また安価である為、材料費の低減化を図ることを実現した上で、野菜や樹脂部品を劣化させず、人体への安全性を確保しながら、最も簡単な構成で、農薬成分を減らす事ができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記貯蔵室の内壁が金属で形成されることにより、前記紫外線による材料劣化を防ぐことができるので、冷蔵庫の長期信頼性の確立を図ることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記紫外線の波長が220nm〜280nmであることにより、貯蔵室の内壁の劣化を防ぎ、冷蔵庫の長期信頼性の確立を図った上で、光子のエネルギーが高くなり、農薬の化学結合を切断し分解する能力が向上するので、農薬分解速度の向上をはかることができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、前記貯蔵室に備えられた扉と、前記扉の開閉を検知する扉検知手段とを備えて、前記扉検知手段が前記扉の開放を検知した時に前記紫外線照射手段を停止させることにより、扉を開けた時に人に直接紫外線を浴びることを防止できるので、紫外線を人体が長時間浴びるときに生じるシミ・しわの原因となり皮膚の老化を促進を防ぎ、安全性の向上を図る事ができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、前記紫外線照射手段の運転と停止を制御する動作スイッチを備え、使用者が前記動作スイッチを操作できるものとしたことにより、人が動作させたことを認知したときのみ動作させることができるので、人が直接紫外線を浴びることを防止することができるので、紫外線を人体が長時間浴びるときに生じるシミ・しわの原因となり皮膚の老化を促進を防ぎ、安全性の向上を図ることができる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の側断面図であり、図2は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の紫外線の農薬除去性能を示した図である。
【0026】
図において、冷蔵庫100は仕切り板116によって、上から冷蔵室112、切替室113、野菜室114、冷凍室115に仕切られている。野菜室114の内壁は樹脂で作られている。野菜室114の上部天面には紫外線ランプ118が備えられている。紫外線ランプ118は、野菜室114の天面に設けられ、ピーク波長350nm近辺の紫外線を照射する紫外線LEDである。
【0027】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
【0028】
紫外線ランプ118として、紫外線の波長が長く比較的安全な紫外線AおよびB領域である280nm以上380nm以下の範囲の波長を持つLEDを使用する。一般的に家庭用の冷蔵庫においては、短い波長での紫外線は人体への安全性が低下することから実用上適さず、また、波長が長すぎると農薬成分の分解効果が低減するが、この範囲の波長を用いることで農薬には吸収されやすく、野菜室内に貯蔵された、野菜などの表面に付着した農薬成分を分解させることができるので、これにより貯蔵された保存物の農薬成分を低減することができる。
【0029】
また、本実施の形態で用いた280nm以上380nm以下の範囲の波長を持つ紫外線は太陽光に含まれる波長であり、人体に比較的安全な波長領域の紫外線であることから、連続的に照射することができ、前記野菜室内に保存された保存物に付着した農薬成分の化学結合を切断することができるので、人体の安全性を確保しながら、付着した農薬を分解し、減らすことができる。よって、使用者に安心感を提供しながら使用者の人体に安全な野菜を提供することができる。また、紫外線は太陽光に含まれる波長の紫外線波長であることから、人体にも安全であると共に、保存する保存物であるたとえば、野菜なども、劣化させたり、変色させたりすることなく、付着している農薬を分解し、減らす事ができる。
【0030】
また、人体にも、保存物にも安全な波長を用いることによって連続的に使うことが可能となり、紫外線は長時間照射すればするほど農薬を多く分解することができるので、特に冷蔵庫は比較的長期間にわたり食品を保存する為に長時間照射することが可能となるので、農薬をより多く分解することができる。
【0031】
紫外線ランプ118はLEDであることから、ランニングコストも安く、さらに冷蔵温度といった低温環境下での使用によって劣化が少ないので、半永久的に使用できることから長期信頼性も高いので、汎用性が高く、簡易的な構造で、専用機器にすること無く、冷蔵庫で保存しながら前記保存物に付着した、農薬成分をへらすことができる。
【0032】
また、紫外線は保存物の農薬の化学結合を切断することで、たとえばP=OをP−Oへ変化させることができ、従って、疎水性である二重結合を親水性である一重結合へと変換できる。
【0033】
よって、紫外線を照射せず、水洗いする時よりも、農薬を親水性へと変換していることから、紫外線の照射後、お客様が使用の際に、紫外線の照射後にも残った保存物の農薬を、野菜を水洗いすることにより、より多くの農薬成分を水洗いによって減らすことができる。
【0034】
また、前記紫外線を照射することにより、分子が励起状態へ変化するので、ビタミンDの前駆物質を多く含むきのこ類などはビタミンDへと変化することで、栄養素増加が期待できる。
【0035】
また、紫外線ランプ118はLEDを用いることで温度上昇も少ないことから、保存物に影響を与えることなく保存することができる。
【0036】
図2は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の紫外線の農薬除去性能を従来の浸漬仕様、及び水洗いと比較した図である。
【0037】
実験方法は、マラチオンを約3ppm付着させたミニトマト10個ずつを各仕様で除去処理操作を行い、処理後のマラチオン濃度をガスクロマトグラフィーにて測定し除去率を算出した。
【0038】
次に各仕様の説明をする。水道水洗浄10秒間とはミニトマト10個をざるに入れ約10秒間流水で洗浄したものである。また、紫外線照射24時間とは、ミニトマト10個に、ピーク波長350nm、120μW/cmの紫外線LEDを24時間照射したものである。
【0039】
実験の結果、水道水洗浄10秒間での除去率は20%で、通常家庭での水洗い程度では残留農薬の80%を除去できず、摂取している結果となった。一方、従来事例のオゾン水を使用した食物洗浄装置での1時間洗浄では、55%の除去率であった。また、紫外線照射24時間では、55%の除去率で、食物洗浄装置と同等の農薬除去性能を有する結果となった。
【0040】
以上のように、冷蔵庫100に紫外線ランプ118として紫外線LEDを備えることにより、保存中の時間を利用して長時間照射することができ、食物洗浄装置と同等の分解性を有することができ、また、波長の強い紫外線を用いない為に断熱壁の劣化も生じないことから、樹脂で形成することが可能となり、材料費の低減化と長寿命化を図れる。
【0041】
また、紫外線の照射波長を350nm近辺にすることにより、紫外線による人体への悪影響を与えず、また野菜を劣化させることなく保存物の農薬を分解する事が可能となり、保存物の農薬を減らすことができる。
【0042】
LEDはランニングコストが安く、その上、耐久性に優れており、非常に汎用性が高くなることや、コンパクト化設計が可能である為、貯蔵室の内容量を確保することが可能である。
【0043】
以上のように、本実施の形態では、冷蔵庫100に紫外線ランプ118を備え、紫外線ランプ118はピーク波長350近辺の紫外線を照射する紫外線LEDを用いることにより、人体に悪影響を与えず、野菜も劣化させることなく、また、樹脂により形成された断熱壁を劣化させることも無く、保存物の農薬成分を分解することができる。
【0044】
なお、紫外線LEDを連続照射することによって保存物に付着した菌の増殖を抑制することも可能であり、より保存性が向上する。
【0045】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2における冷蔵庫の側断面図である。
【0046】
図3において、冷蔵庫100は仕切り板111によって、上から冷蔵室112、切替室113、野菜室114、冷凍室115に仕切られている。野菜室114は、野菜室114を区画し開閉する為の扉116aとで構成されており、野菜室内壁はステンレスで作られている。野菜室114の上部天面には紫外線と、ピーク波長250nm近辺の紫外線を照射する紫外線照射手段である紫外線ランプ118を備えている。前記野菜室には扉116aの開閉を検知する扉検知手段120を備えている。
【0047】
冷蔵室112は冷蔵室112を区画し開閉する為116bの扉を備え、扉116bには紫外線ランプ118を動作させる動作スイッチ121を備えている。
【0048】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
【0049】
まず、扉を開けて、野菜を前記野菜室へ投入する。続いて扉を閉じる。この動作までは紫外線118はOFFの状態である。続いて紫外線ランプ118を動作させる動作スイッチ121を使用者自らONして紫外線ランプ118を動作させる。これにより紫外線118は前記野菜室内に保存された保存物へ照射される。紫外線ランプ118の動作スイッチ121をONした時点より積算時間30分で自動的にOFFとなるように設定している。さらに、照射中に使用者が扉を開けた際には扉スイッチが検知し、OFFとなることから使用者が紫外線を直接浴びることが無いので、使用者の安全性を確保する事ができる。
【0050】
紫外線ランプ118には分解能力の高い220nmから280nmの範囲の波長を持つランプを使用し、紫外線の高い光子エネルギーによって、貯蔵室内に貯蔵された、野菜などの表面に付着した残留農薬などの有害物質に作用し、化学結合を切断する事ができるので、野菜室に保存した保存物の農薬成分を分解することができ、野菜室内の保存物の付着農薬を減らすことができる。
【0051】
図4は本発明の実施の形態2における冷蔵庫の紫外線の農薬除去性能を従来の浸漬仕様、及び水洗いと比較した図である。
【0052】
実験方法は、マラチオンを約3ppm付着させたミニトマト10個ずつを各仕様で除去処理操作を行い、処理後のマラチオン濃度をガスクロマトグラフィーにて測定し除去率を算出した。
【0053】
次に各仕様の説明をする。水道水洗浄10秒間とはミニトマト10個をざるに入れ約10秒間流水で洗浄したものである。また、紫外線照射1時間とは、ミニトマト10個に、ピーク波長254nm、1095μW/cm2の紫外線を1時間照射したものである。
【0054】
実験の結果、水道水洗浄10秒間での除去率は20%で、通常家庭での水洗い程度では残留農薬の80%を除去できず、摂取している結果となった。一方、従来事例のオゾン水を使用した食物洗浄装置での1時間洗浄では、55%の除去率であった。また、紫外線照射0.5時間では、65%の除去率で、食物洗浄装置より高い農薬除去性能を有する結果となり、さらに洗浄装置に比べ、専用装置にすることなく、冷蔵庫で保存中に農薬などの有害物質を分解し、保存物の農薬を減らす有効な手段であるといえる。
【0055】
以上のように、本実施の形態では、冷蔵庫100に紫外線ランプ118を備えることにより、簡便な構造で農薬等の有害物質を除去、分解する機能を冷蔵庫が有することとなり、消費者は冷蔵庫に野菜や果物を保存するだけで、簡単に農薬等の有害物質を減らすことができる。
【0056】
また、光子エネルギーの高い紫外線ランプ118を使用したことにより、照射時間を短縮する事が可能となり、前記野菜室内壁の材料劣化防止につながる。
【0057】
また、本実施の形態では、野菜室内に紫外線を照射するので水を使用することなく農薬等有害物質を除去、分解することができる。
【0058】
また、紫外線は、扉検知手段120が扉116aの閉まっている事を検知した時のみ、照射されるので人が紫外線に触れることを防止できるので、安全性の向上を図ることができる。また、紫外線の周囲に遮光板119を備えた事により、紫外線である紫外線の光を扉側に遮断し、人が扉を開けた際、直接紫外線を目にすることなく、野菜室内の貯蔵物にのみ紫外線を照射する事ができるので、安全性の向上を図ることができる。さらに、遮光板119を備えたことにより、野菜室に照射する紫外線のエネルギーを分散させることなく貯蔵物へ照射することができるので、分解効率の向上を図ることができる。
【0059】
また、動作スイッチ121を備えたことにより、使用者が紫外線ランプ118を動作させたことを認知したときのみ動作させることができるので、安全性の向上を図ることができるとともに、使用者のニーズに合せて農薬の分解を行うことができる。さらに、人が必要とした時のみ動作させることができる為、連続運転で使用する時よりも使用エネルギーの削減を図ることができるので、冷蔵庫の省エネルギー化を実現できる。
【0060】
なお、本実施の形態では、紫外線を動作させる動作スイッチ121をON、OFFの切り替えのみとしているが、ON、OFFの切り替え機能に加え紫外線の光量を使用者に選択できるものであれば使用者が必要な時に必要な紫外線の光量を選択できるので、必要に応じて農薬低減効果を使い分けることができると共に、使用エネルギーの削減を図ることができる。
【0061】
なお、本実施の形態においては、野菜室内壁をステンレスとしたが、紫外線による劣化の少ない金属、ガラスでも同様の効果が得られ、一般的な樹脂の場合と比較して、より農薬分解効果の大きい短波長の紫外線や、同等の波長であっても紫外線の光量を増加させた場合でも貯蔵室の内壁の劣化が少ないので平均で10年程度といった長期間の使用が前提の冷蔵庫に適用することが可能となる。
【0062】
なお、本実施の形態では遮光板をステンレスとしたが、紫外線による劣化の少ない金属、ガラスでも同様の効果が得られる。
【0063】
なお、本実施の形態においては、紫外線ランプ118を野菜室114天面へと配置したが、野菜室114内の収納ケース(図示せず)を透明にすることにより、野菜室114内であればどこへ配置しても同様の効果が得られる。
【0064】
また、本実施の形態では野菜室114が、冷凍室115の上段に配置することとしたが、野菜室114を最下段に配置することにより、野菜室114を使用する際に、紫外線が直接目に入ることなく、より安全に野菜室114を使用することができる。
【0065】
また、本実施の形態では使用者自らが動作スイッチ121をONすることにより、照射を開始させるとしたが、前記扉スイッチが前記扉が閉じていることを検知した場合に紫外線を照射させることとしても良い。
【0066】
また、本実施の形態では、動作スイッチ121を作動後積算照射時間が30分で紫外線118はOFFとなるとしたが、使用者自らがOFFすることとしても良く、また使用者のニーズに合わせて照射時間を選択できるものとしても良い。例えば、選択の照射時間は野菜の量や農薬の気になる野菜、例えばそのまま生で食べる葉野菜などは長い時間設定にする事ができるなどとすると、より使用者のニーズに合わせた冷蔵庫を提供することができ望ましい。
【0067】
なお、本実施の形態では、野菜室114全体に紫外線を照射するものとしたが、野菜室114の一区画を仕切ってその部分にのみ紫外線照射手段である紫外線ランプ118を備えることとしてもよく、その場合には、紫外線ランプ118が備えられた区画を農薬低減用の区画として使い分けることができ、使用者の安全性の向上と、使用者のニーズに合わせた使い方を提案することができる。
【0068】
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3における冷蔵庫の側断面図である。図5において、図1と同一手段、同一部材は同一番号で示している。
【0069】
図5において、冷蔵庫100は仕切り板116によって、上から冷蔵室112、切替室113、野菜室114、冷凍室115に仕切られている。野菜室114の内壁は樹脂で作られている。野菜室114の上部天面には紫外線照射手段である紫外線ランプ118が備えられている。紫外線ランプ118は、野菜室114の天面に設けられ、ピーク波長350nm近辺の紫外線を照射する紫外線LEDである。前記野菜室内全面は酸化チタンコーティングが施されている(図示せず)。
【0070】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
【0071】
酸化チタン光触媒は、紫外線より光エネルギーをうけることにより、空気中の酸素から強い酸化能力をもつOHラジカルをつくりだすことができる。そのOHラジカルが、保存された保存物に付着した農薬を酸化分解させることができるので、保存物の農薬成分を減らすことができる。
【0072】
また、酸化チタン光触媒は、空気中の酸素より酸化能力の高いオゾンも同時につくり出すことができる。そのオゾンも保存中の保存物に付着した農薬成分を酸化分解することができるので保存中の保存物の農薬を減らすことができる。
【0073】
また、本実施の形態では、酸化チタンコーティングとしたが、他の光触媒の成分でも同様の効果が期待でき、さらに、酸化チタンコーティングとしたが、樹脂材料に練りこんで形成する方法でも、同様の効果が得られる。
【0074】
また、本実施の形態では、酸化チタンコーティングとしたが、光触媒をカセット形式にしても、同様の効果が得られる。
【0075】
なお、本実施の形態において野菜室の構成や、貯蔵室の内壁の材料等については、実施の形態1または2に記載のものとしても良く、実施の形態1または2に本実施の形態に記載の紫外線LEDおよび光触媒を適用することが十分に可能であり、その場合には上記と同様の有用な効果を奏するのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明にかかる冷蔵庫の有害物質分解機能は、分解力の高い紫外線を照射し、保存物の農薬を低減することができるため、家庭用冷蔵庫、業務用冷蔵庫、食品保存庫及び食物洗浄装置の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の側断面図
【図2】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の紫外線の農薬除去性能を示した図
【図3】本発明の実施の形態2における冷蔵庫の側断面図
【図4】本発明の実施の形態2における冷蔵庫の紫外線の農薬除去性能を示した図
【図5】本発明の実施の形態3における冷蔵庫の側断面図
【図6】従来の食物洗浄装置の概略構成図
【符号の説明】
【0078】
100 冷蔵庫
111 仕切り板
112 冷蔵室
113 切替室
114 野菜室
115 冷凍室
116a 扉
116b 扉
118 紫外線ランプ(紫外線照射手段)
120 扉検知手段
121 動作スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱区画された貯蔵室を有する断熱箱体と、前記貯蔵室内に紫外線照射手段を備え、前記紫外線照射手段によって紫外線を照射することによって、前記貯蔵室の内部に収納された保存物に付着した農薬成分を低減する冷蔵庫。
【請求項2】
断熱区画された貯蔵室を有する断熱箱体と、前記貯蔵室内に紫外線照射手段と紫外線を受けて触媒機能を発揮する光触媒を有した部材を備え、前記紫外線照射手段によって紫外線を照射することで前記部材が反応することによって、前記貯蔵室の内部に収納された保存物に付着した農薬成分を低減する冷蔵庫。
【請求項3】
前記貯蔵室の内壁が、樹脂で形成されており、前記紫外線照射手段によって照射される紫外線の波長が280nm以上400nm以下である請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記貯蔵室の内壁が、金属で形成されている請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記紫外線の波長が220nm以上280nm以下である請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記貯蔵室に備えられた扉と、前記扉の開閉を検知する扉検知手段とを備えて、前記扉検知手段が前記扉の開放を検知した時に前記紫外線照射手段を停止させる請求項1から5のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記紫外線照射手段の運転と停止を制御する動作スイッチを備え、使用者が前記動作スイッチを操作できるものとした請求項1から6のいずれか一項に記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−285618(P2007−285618A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114195(P2006−114195)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】