説明

冷蔵庫

【課題】貯蔵室内の照明体として高輝度LEDを使用した場合でも、コンパクトな照明装置として、照明装置の高温化を抑制してハンダ部の溶融を防ぐとともにLEDの輝度を損なうことがないようにした冷蔵庫を提供する。
【解決手段】断熱筐体内に形成された貯蔵室5と、この貯蔵室の前面開口部を開閉自在に閉塞する扉8と、この扉の閉塞時に駆動され冷却器9で生成された冷気を貯蔵室内に供給するファン11と、前記貯蔵室の天井部に配設された冷気が流通するダクト13と、このダクト内を流れる冷気と熱交換するように設けたLED20による庫内の照明装置15と、この照明装置の室内側を覆うシェード21とからなり、前記扉を開放したときは、照明装置を点灯させるとともに前記ファンを駆動してダクトに冷気を流通させるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子による貯蔵室内の照明装置を配設した冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光素子である高輝度タイプのLEDが開発され実用に供されているが、冷蔵庫の庫内照明装置として使用する場合には、入力が大きいためLEDの点灯時にはLEDハンダ部が発熱し温度上昇して、基板のハンダチップが溶融する問題点があり、温度抑制のために、LEDを搭載する基板の面積を拡大して放熱性能を大きくしたり、LEDの消費電流を制限するなどの構成を採用していた。
【0003】
この点につき、貯蔵室内の照明体として高輝度LEDを使用した場合でも、貯蔵室扉の開扉時に開扉時間に応じて照明装置への入力を低下させることにより発熱による温度上昇を防止するようにした構成が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2006−292221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記のように、基板の面積を拡大することは基板のコスト高になるばかりでなく貯蔵室内のスペース効率が悪くなるものであり、また、消費電流を制限すれば、本来の高輝度LEDが保持する明るさを実現できないことになる。
【0005】
本発明は上記の点を考慮してなされたもので、貯蔵室内の照明体として高輝度LEDを使用した場合でも、コンパクトな照明装置として、照明装置の高温化を抑制してハンダ部の溶融を防ぐとともにLEDの輝度を損なうことがないようにした冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1による冷蔵庫は、断熱筐体内に形成された貯蔵室と、この貯蔵室の前面開口部を開閉自在に閉塞する扉と、この扉の閉塞時に駆動され冷却器で生成された冷気を貯蔵室内に供給するファンと、前記貯蔵室の天井部に配設された冷気が流通するダクトと、このダクト内を流れる冷気と熱交換するように設けたLEDによる庫内の照明装置と、この照明装置の室内側を覆うシェードとからなり、前記扉を開放したときは、照明装置を点灯させるとともに前記ファンを駆動して前記ダクトに冷気を流通させるようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項3による冷蔵庫は、断熱筐体内に形成された貯蔵室と、この貯蔵室の前面開口部を開閉自在に閉塞する扉と、この扉の開放時に点灯するように前記貯蔵室の天井部に配設されたLEDによる庫内の照明装置と、この照明装置の室内側を覆うシェードとからなり、前記照明装置はLEDをハンダ付けした基板の裏面に良熱伝導体からなる板面を施し、前記基板を取り付けた照明装置を天井部に固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、開扉による庫内灯の照明時間が所定以上に長くなった場合には冷気流により強制的に照明装置を冷却することができ、LEDの輝度を損なうことなく、また、基板の大きさを拡大することなく、安価に、LEDからの光で貯蔵室内を明るく照明することができるものであり、請求項3記載の発明によっても、基板裏面に施した良熱伝導体の板面により通電されているLEDの放熱を促進し、ハンダ付け部の温度上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づき本発明の1実施形態について説明する。図1にその概略縦断面図を示す冷蔵庫本体(1)は、外箱(2)と内箱(3)間に断熱材(4)を介在させた断熱箱体からなり、最上部に冷蔵食品を収納貯蔵する冷蔵室(5)を設け、その下部に、野菜室(6)や冷凍室(7)など所定の貯蔵温度に沿った貯蔵室を配置し、冷蔵室(5)の前面開口には、本体一側に設けたヒンジによって開閉可能とした扉(8)を取り付けるとともに、野菜室(6)ほかのそれぞれの貯蔵室の前面開口には引き出し方式の扉を配設している。
【0010】
前記各貯蔵室は、冷蔵空間および冷凍空間ごとに設けた冷蔵用冷却器(9)と冷凍用冷却器(10)、および各冷却ファン(11)(12)、ダクトによって冷気を循環し、それぞれ所定の設定温度に冷却制御される。
【0011】
冷蔵室(5)は、本体内の背面に設けた冷蔵用冷却器(9)で生成した冷気を、ファン(11)により背面に設けたダクトから室内に吹き出すとともに、冷気の一部を、冷蔵室(5)の天井面を断熱材(4)側へわずかに窪ませて前後方向に設置した前記天井ダクト(13)を介して前面吹出口(13a)から室内の前面上部に吹き出し冷却する構成であり、冷蔵庫における貯蔵室として最も大きな収納スペースを保有しているとともに、室内には複数段の載置棚(14)を設けて貯蔵品の収納空間を形成し、天井部における前記天井ダクト(13)部分には、このダクト(13)内を流れる冷気と熱交換するようにして、冷蔵室(5)内を照明する照明装置(15)を設置している。
【0012】
照明装置(15)は、図2に全体断面図を示すように、冷蔵室(5)の天井面に前後方向に設置した前記天井ダクト(13)の前面開口部に近い部分に形成した開口部(13b)を閉塞するように取付具(16)によって取り付けられている。この取付具(16)には、図3に部分拡大断面図、図4にその斜視図を示す固定具(17)が固定されており、固定具(17)には、半導体発光素子である高輝度タイプのLED(20)を固着した基板(19)をその係止部(17a)(17b)により係止固定している。
【0013】
前記高輝度タイプのLED(20)は、低電圧、小電力で十分な輝度が得られ、電流によって簡単に輝度制御ができるとともに応答速度が速く、且つ発光が安定して長寿命である特性を有しており、冷蔵室扉(8)の開閉に連動して動作する図示しないドアスイッチによりオンオフされるものであって、開扉された場合に入力され、パルス通電によって点灯する。
【0014】
前記基板(19)は、図5に示すように、冷蔵室(5)の幅方向に長い薄板状に形成したエポキシ樹脂からから形成されており、室内側である表面に、前記LED(20)を幅方向に2個ハンダ付けにより固着したものであって、LED(20)が対向する開口部(13b)の室内側をシェード(21)で覆うととともに、取付具(16)を天井ダクト(13)部材に取り付けたものであり、冷蔵室扉(8)の開扉時には、前記LED(20)が点灯して冷蔵室(5)内を照明するように作用するものである。
【0015】
そして、前記基板(19)は、LED(20)の照射が冷蔵室(5)を上部前方から広く照らすように後方に向い上方に傾斜させて固定具(17)に取り付けられており、基板(19)の裏面側には、図6のように銅箔パターン(22)を形成するとともにその表面を絶縁のためにエポキシ樹脂のレジスト(23)で被覆している。
【0016】
なお、前記シェード(21)は、LED(20)からの光を効率よく拡散して室内(5)に照射するため、着色したり、シボ加工を施すことで表面に凹凸部を設けた透明性の高いアクリル樹脂などにより形成しているが、天井ダクト(13)の下面から突出しないように設置されており、冷蔵室(5)上部の収納スペースを減じないように配慮されている。
【0017】
また、照明装置(15)は、前述のように、冷蔵室(5)の前後方向における前面開口部に近い天井面に配置されていることから、開扉時に点灯した際には、冷蔵室(5)内を上部前方から奥方向に指向して収納物を使用者の見る方向から照らすように作用するため、収納物が逆光にならず見やすい効果を得ることができるとともに、載置棚(14)の収納物からはやや離間した位置になるので、収納物への熱影響を少なくすることができる。
【0018】
しかして、LED(20)は、冷蔵室扉(8)の開扉時に点灯するが、点灯とともに温度が上昇するものである。特に、コスト低減のためLEDの使用個数を削減し、且つ明るさを保持するためにより高輝度化した場合には、温度上昇はさらに大きくなるものであり、雰囲気条件によってはLED(20)を固着しているハンダが溶融する温度以上となり安全基準を上回る不具合が生じる。
【0019】
そこで、本発明の1実施形態においては、信頼性を確保するため、前記照明装置(15)におけるLED(20)をハンダ付けしている基板(19)の裏面に、良熱伝導体である銅箔パターン(22)を広く形成するとともにその表面をレジスト(23)で被覆することにより、高温化するLED(20)のハンダ付け部の熱を、銅箔パターン(22)で放熱させるものであって、この放熱により、ハンダ付け部の温度上昇が抑制され、溶融点以下の安全な低温度に保持することができる。
【0020】
さらに、前記実施例に示す構成においては、照明装置(15)を、冷蔵室(5)の天井部に配設した天井ダクト(13)部に設けて、このダクト(13)内を流れる冷気(矢印)と熱交換するように配設しており、冷蔵室扉(8)を開放したときは、照明装置(15)を点灯させるとともに冷気循環用のファン(11)を駆動して天井ダクト(13)に冷却器(9)からの冷気を流通させるようにしている。
【0021】
前記ファン(11)の駆動時間は、照明装置(15)が点灯している開扉時間中とするが、万一扉が半ドア状態となった場合は、照明装置(15)の点灯が継続することから、これによる温度上昇を考慮して、安全のため設定されている照明装置(15)の点灯遮断までの時間、例えば、10分間は駆動を継続させるように制御する。
【0022】
この構成により、低温の冷気が冷気流通側に面している基板(19)の裏面の銅箔パターン(22)を冷却し、熱伝導により基板表面側のLED(20)のハンダ付け部を冷却して放熱することができる。
【0023】
なお、基板(19)の裏面における良熱伝導体は、前記銅箔パターン(22)による構成に限らず、特に図示しないが、アルミ箔テープを張り付ける構成でもよく、また、基板(19)自体を良熱伝導性の金属板で形成するようにしても同様の効果を得ることができる。
【0024】
なお、上記実施例においては、照明装置(15)を冷蔵室(5)の天井ダクト(13)内に配置して冷気流により基板(19)の放熱を促進する構成としたが、これに限らず、基板(19)の周囲に多少の空間を設けて空気が対流するようにすれば、基板(19)裏面の良熱伝導体により放熱は助長され、LED(20)のハンダ付け部の温度上昇を抑制することができるものである。
【0025】
また、照明装置を配設する貯蔵室を冷蔵庫の最上部に配置した冷蔵室(5)を例にして説明したが、これに限らず最上部の貯蔵室は冷凍室でもよく、また、下方部に配設した野菜室(6)や冷凍室(7)の室内壁面に前記実施例と同様の構成で照明装置(15)を設置するようにしてもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の冷蔵庫を示す概略縦断面図である。
【図2】図1における照明装置の全体断面図である。
【図3】図2の基板と固定具の拡大縦断面図である。
【図4】図3の斜視図である。
【図5】図4に示す基板の表面図である。
【図6】図4に示す基板の裏面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 冷蔵庫本体 2 外箱 3 内箱
4 断熱材 5 冷蔵室 8 扉
9 冷蔵用冷却器 11 ファン 13 天井ダクト
13a 前面吹出口 13b 開口部 15 照明装置
16 取付具 17 固定具 17a、17b 係止部
19 基板 20 LED 21 シェード
22 銅箔パターン 23 レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱筐体内に形成された貯蔵室と、この貯蔵室の前面開口部を開閉自在に閉塞する扉と、この扉の閉塞時に駆動され冷却器で生成された冷気を貯蔵室内に供給するファンと、前記貯蔵室の天井部に配設された冷気が流通するダクトと、このダクト内を流れる冷気と熱交換するように設けたLEDによる庫内の照明装置と、この照明装置の室内側を覆うシェードとからなり、前記扉を開放したときは、照明装置を点灯させるとともに前記ファンを駆動して前記ダクトに冷気を流通させるようにしたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
LEDをハンダ付けするとともに裏面に良熱伝導体からなる板面を施した基板を取付部材に取り付けた照明装置をダクト部に固定し、前記基板の裏面を冷気流通側に位置させたことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
断熱筐体内に形成された貯蔵室と、この貯蔵室の前面開口部を開閉自在に閉塞する扉と、この扉の開放時に点灯するように前記貯蔵室の天井部に配設されたLEDによる庫内の照明装置と、この照明装置の室内側を覆うシェードとからなり、前記照明装置はLEDをハンダ付けした基板の裏面に良熱伝導体からなる板面を施し、前記基板を取り付けた照明装置を天井部に固定したことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
LEDをハンダ付けした基板は、その裏面にレジストを被覆した銅箔パターンを施したものであることを特徴とする請求項2または3記載の冷蔵庫。
【請求項5】
LEDをハンダ付けした基板は、その裏面にアルミ箔テープを張り付けたものであることを特徴とする請求項2または3記載の冷蔵庫。
【請求項6】
照明装置におけるLEDをハンダ付けした基板を良熱伝導性の金属で形成したことを特徴とする請求項1または3記載の冷蔵庫。
【請求項7】
照明装置は、貯蔵室天井部の前後方向における前方側に配置させたことを特徴とする請求項1または3記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−79857(P2009−79857A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250742(P2007−250742)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】