説明

冷蔵庫

【課題】貯蔵室内の貯蔵物の量が多い場合でも目標温度まで冷却することができ、一方、貯蔵物が少量の場合は電力消費を抑制する冷蔵庫を提供する。
【解決手段】貯蔵室内の温度を検知する温度検知手段と、貯蔵室に設けられて貯蔵物を載置する棚と、この棚に載置された貯蔵物の重量を検知する重量検知手段とを備え、この重量検知手段によって検知した貯蔵物の重量に基づいて、圧縮機の回転数または貯蔵物の温度の少なくとも何れかを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫に重量センサを用いて貯蔵物の管理を行った例としては、特許文献1記載の様に、冷蔵庫に食品の種類や賞味期限などの情報を非接触タグから読み取るタグセンサと位置検出用の感圧センサを設置して、貯蔵した食品の賞味期限と残量、冷蔵庫内の位置を使用者に報知するものがあった。
【0003】
冷蔵庫内の温度は、庫内に設置された温度センサで貯蔵室内の空気の温度を検知し、この温度と所定の目標温度との差を判断することで、圧縮機やダンパの制御を行っている。
【0004】
例えば、貯蔵室の扉の開閉や貯蔵物の出し入れがあったり、霜取り運転後など温度センサの温度が予め設定された目標温度に対して高温となった場合、圧縮機の回転数を高くして貯蔵室により低温の冷気を送ったり、ダンパを開ける時間を長くしたりして、温度センサが所定の温度になるまで冷却運転を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−185326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この制御方法では貯蔵室内の貯蔵物の温度ではなく空気の温度で判断しているため、貯蔵物が多くて冷気の循環が悪い場合などは、貯蔵物の冷却が不十分な状態で、貯蔵室内の冷却を弱めてしまう場合がある。このため、食品の劣化が早くなったり、飲み物の冷えが悪くなったりといった問題が発生していた。
【0007】
また、目標温度と温度センサの温度の差が大きいと、圧縮機を高回転で運転して、より低温の空気を貯蔵室に送るため、冷蔵室内の冷気吐き出し口付近の貯蔵物が凍結してしまうという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、貯蔵室内の貯蔵物の量が多い場合でも目標温度まで冷却することができ、一方、貯蔵物が少量の場合は電力消費を抑制する冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、貯蔵室内の温度を検知する温度検知手段と、前記貯蔵室に設けられて貯蔵物を載置する棚と、前記棚に載置された前記貯蔵物の重量を検知する重量検知手段とを備え、前記重量検知手段によって検知した前記貯蔵物の重量に基づいて、圧縮機の回転数または前記貯蔵物の温度の少なくとも何れかを制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貯蔵室内の貯蔵物の量が多い場合でも目標温度まで冷却することができ、一方、貯蔵物が少量の場合は電力消費を抑制する冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態にかかる冷蔵庫の外観正面図。
【図2】図1の冷蔵庫の冷蔵室扉を開いた状態図。
【図3】図2の冷蔵室内部の断面を上方から見た図。
【図4】図2の冷蔵室内部の棚支持部分。
【図5】図1の冷蔵庫の引き出し式貯蔵室のバスケット支持部断面図。
【図6】本発明の実施形態にかかる重量センサの検知重量と温度センサによる規定温度からの調整温度設定例。(直線制御)
【図7】本発明の実施形態にかかる重量センサの検知重量と温度センサによる規定温度からの調整温度設定例。(階段制御)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施例は、貯蔵室内の温度を検知する温度検知手段と、前記貯蔵室に設けられて貯蔵物を載置する棚と、前記棚に載置された前記貯蔵物の重量を検知する重量検知手段とを備え、前記重量検知手段によって検知した前記貯蔵物の重量に基づいて、圧縮機の回転数または前記貯蔵物の温度の少なくとも何れかを制御する。
【0013】
また、前記重量検知手段の検知データを記憶する記憶手段を備え、前記貯蔵室が所定温度以下に低下しない場合、前記記憶手段に記憶した前記検知データに基づいて前記貯蔵室の前記貯蔵物が所定量以下であるかを判断する。
【0014】
また、前記貯蔵室の前記貯蔵物が所定量以上である場合、使用者に報知する報知手段を備える。
【0015】
また、前記重量検知手段が、前記貯蔵室の棚支持部または貯蔵物を収納する収納容器の引き出しレール支持部に埋め込まれた重量または圧力を検知するセンサである。
【0016】
また、前記温度検知手段の検知温度が所定温度まで下がっても、前記重量検知手段で検知した貯蔵物の重量が所定値以上の場合、冷却運転を続ける。
【0017】
以下、具体的な構成について説明する。冷蔵庫は圧縮機で冷媒を圧縮して冷媒を冷凍サイクルに送り出し、放熱パイプで圧縮機から流れてきた冷媒の熱量を放出し、減圧器で高圧の冷媒の圧力と温度を下げ、エバポレータで低温となった冷媒と冷蔵庫内の空気との熱交換を行い、このエバポレータで熱交換して低温となった庫内空気をファンによって循環させることで、冷蔵庫内の各貯蔵室を冷却している。
【0018】
冷蔵庫1には図1の様に冷蔵室2や引き出し式の冷凍室3,野菜室4などの温度帯の異なる部屋が複数ある。各室には温度センサや重量センサが設置されており、エバポレータで冷却された冷気を庫内に循環させるファンの回転数や、冷気を通す風路内に設けられたダンパの開閉などを制御することによって所定の温度帯に保たれている。
【0019】
冷蔵室の貯蔵物の重さを検知する重量センサは、図2や図4の冷蔵室棚支持部6に設置され、冷蔵室棚5の四隅の下に図3の様に設置されている。
【0020】
また、野菜室や冷凍室内の重量センサは貯蔵物を入れるバスケットを支持する左右の引き出しレール9の前後に設置されている。
【0021】
各室には重量センサの他に温度センサが設置され、貯蔵室内の温度を検知できる。
【0022】
温度センサで検知した貯蔵室の温度が所定の温度よりも高い場合はダンパを開きファンで冷気を送って貯蔵室内の温度を下げる。このとき、重量センサの検知した重さが図6,図7の規定値1よりも軽い場合は、温度センサの温度が所定温度以上でもダンパを閉じたり圧縮機を止める等して冷却を止める。冷却を止める際の温度は、温度センサによって決められた所定温度から重量センサの値によって求められた調整温度分補正した温度となる。
【0023】
この制御によって貯蔵物の過剰な冷却・凍結などを防止し圧縮機の停止時間が長くなることで、電力消費量を低減することができる。
【0024】
また、重量センサの検知した重量が図6,図7の規定値1以上であった場合は、温度センサの検知温度が所定の温度以下に下がっても、重量センサの検知重量に基づく調整温度分、温度が低下するまで冷却運転を続ける。
【0025】
冷却運転が長くなることで、詰め込み過ぎで貯蔵室内の冷気循環が悪くなり貯蔵物よりも温度センサが先に冷えてしまった場合でも、重量センサによる調整温度を適正に設定することで貯蔵物を所定の温度近くまで冷却し、食品の冷却不足による劣化を防止できる。
【0026】
この様に冷却運転が長くなる場合は、貯蔵物の部分的な凍結を防止するために、圧縮機の回転数を落して冷気の温度を高めにしたり、冷気を循環させるファンの回転数を落して冷気の循環量を減らしたり等、冷却速度を遅くする手段がある。伝熱効率が上がり省エネにもつながる。
【0027】
ここで、冷蔵庫の冷えが悪くなる原因は、使用者による貯蔵物の詰め込みすぎが原因であることが多い。重量センサによって貯蔵物の重さを検知し一定以上の重さとなった場合はアラームなどで使用者に報知することで、この貯蔵物の詰め込み過ぎで貯蔵物の冷却が不十分になる恐れのあることを使用者に警告できる。
【0028】
また、本実施形態の冷蔵庫には、数日分の冷蔵庫の運転状況として、各貯蔵室に設置された温度センサの温度や霜取りヒータの通電,貯蔵室の扉の開閉回数とタイミングを時系列で記憶している。このデータは使用者からメーカへの修理依頼時の運転状況の確認や不良品として返品された冷蔵庫の不良解析手段として用いられている。このデータに重量センサの情報を追加することで、貯蔵物の重量データから詰め込み過ぎによる冷却不足の判断ができる。
【0029】
以上より、貯蔵室内の貯蔵物の重量を検知することで、貯蔵物の冷却速度を予測し、温度センサが所定の温度以下になった場合でも貯蔵物の温度は所定の温度まで下がっていないと判断し、最適な温度まで冷却運転を続けることができる。冷却中の運転に関しては、圧縮機の回転数により冷却速度を調整することにより、冷蔵室内の貯蔵物の凍結を防止することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 冷蔵庫
2 冷蔵室
3 冷凍室
4 野菜室
5 冷蔵室棚
6 冷蔵室棚支持部
7 重量センサ
8 バスケット
9 レール
10 調整温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室内の温度を検知する温度検知手段と、前記貯蔵室に設けられて貯蔵物を載置する棚と、前記棚に載置された前記貯蔵物の重量を検知する重量検知手段とを備え、前記重量検知手段によって検知した前記貯蔵物の重量に基づいて、圧縮機の回転数または前記貯蔵物の温度の少なくとも何れかを制御することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記重量検知手段の検知データを記憶する記憶手段を備え、前記貯蔵室が所定温度以下に低下しない場合、前記記憶手段に記憶した前記検知データに基づいて前記貯蔵室の前記貯蔵物が所定量以下であるかを判断することを特徴とする、請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記貯蔵室の前記貯蔵物が所定量以上である場合、使用者に報知する報知手段を備えたことを特徴とする、請求項1または2記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記重量検知手段が、前記貯蔵室の棚支持部または貯蔵物を収納する収納容器の引き出しレール支持部に埋め込まれた重量または圧力を検知するセンサであることを特徴とする、請求項1または2記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記温度検知手段の検知温度が所定温度まで下がっても、前記重量検知手段で検知した貯蔵物の重量が所定値以上の場合、冷却運転を続けることを特徴とする、請求項1記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−11383(P2013−11383A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143729(P2011−143729)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】