説明

冷蔵庫

【課題】タッチセンサを有する冷蔵庫において、タッチセンサの接触面におけるスイッチ電極の面積が小さくなる場合でも電極面積をより広く確保する。
【解決手段】冷蔵庫100は、少なくとも送風機27および圧縮機30とを制御し、断熱箱体19の上部外側に配置される主制御部41と、左冷蔵室扉22aに配置され、静電容量式の複数のタッチセンサ70を有する入力部60およびタッチセンサの操作結果を表示する表示部56を有する副制御部68とを備える。そして、主制御部と副制御部との間で通信している。タッチセンサの少なくともいずれかが、このタッチセンサが設けられた基板8の前面側及び背面側にタッチセンサ70b、裏面スイッチ電極70jを有する。前面側の電極と背面側の電極とを電気的に接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵庫に係り、特にタッチセンサからの操作内容を表示する表示手段を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタッチセンサを備えた冷蔵庫の例が、特許文献1及び特許文献2に記載されている。特許文献1に記載の冷蔵庫では、限られた設置スペースに効率的に基板を配置するとともに誤操作を防止するために、静電容量型の操作スイッチを複数配置し、両端に位置する操作スイッチの周囲にL字状の誤操作防止用電極を配置している。
【0003】
また、特許文献2に記載の冷蔵庫では、実使用状況に応じた操作状況を表示して、操作性の向上を図っている。具体的には、静電容量型の操作スイッチの操作結果を、表示部に表示し、この表示部をLED照明が照明するようにしている。そして、操作スイッチが操作され、照明が減光されておらず、貯蔵室の扉が開いておれば、操作スイッチの操作を無効にしている。
【0004】
従来のタッチセンサを備えた冷蔵庫の他の例が、特許文献3に記載されている。この公報に記載の冷蔵庫では、静電容量形のスイッチを表示パネル部の制御スイッチとして使用し、液晶パネル等の表示装置とこの表示装置の上面を覆う表示パネルとの間に、上記スイッチを配置している。これにより、スイッチ部へ水が浸入するのを防止するとともに、パネルの設置場所への制約をなくしている。
【0005】
従来のタッチセンサを使用した家庭用機器の例が、特許文献4に記載されている。この公報に記載の誘導加熱調理器では、拭き掃除等の際に誤ってタッチセンサに触れても、誘導加熱調理器が誤動作しないように、切/スタートキーに隣接してダミーキーを配置している。そして、加熱中にダミーキーと切/スタートキーが同時に操作されたら、加熱を中止しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−58696号公報
【特許文献2】特開2011−58662号公報
【特許文献3】特開2007−298242号公報
【特許文献4】特開2009−93849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
冷蔵庫の高機能化に伴い、冷蔵庫各部の温度をこまめに調整することが可能になっている。そのため、調整内容を表示する表示手段や調整手段を冷蔵庫の前面扉に設け、冷蔵庫の使用者が操作し易くする試みがなされている。上記特許文献1、2に記載の冷蔵庫では、この観点から大型の冷蔵庫が有する前面扉に、複数のタッチセンサを横一列に配置し、誤動作の防止や操作性の向上を図っている。
【0008】
ところで、静電容量式のタッチセンサは、スイッチ検出用電極(スイッチ電極)の静電容量の変化で電極が接触を検出している。スイッチ電極の静電容量は、スイッチ電極が接触されると変化するが、その他にスイッチ電極の静電容量は接触されなくても、外部からのノイズや温度変化などの環境変化によって変化することがある。そこで、このような意図しない事象に起因して静電容量が変化した場合には、スイッチがON判定しないような、閾値を設けている。一般に、環境変化での静電容量の変化量は小さく、接触による静電容量の変化量は大きいので、誤動作防止のために、閾値を大きく設定できることが望ましい。
【0009】
しかし、同じ接触によるスイッチングであっても、スイッチ電極の大きさにより静電容量の変化量が異なる。スイッチ電極の面積が小さくパターンの容量が小さいと、意図的な接触であっても静電容量の変化量が小さくなり、環境変化によるものと区別し難くなる。一方、閾値設定を容易にするためにはスイッチ電極を大きくすればよいが、スイッチ電極を大きくすると基板面積を広げざるを得ず、その場合、基板を設置する部分の断熱材が薄くなり冷蔵庫の断熱性能が低下する。また、冷蔵庫では、主制御用基板とスイッチング用の制御基板の配置位置が異なり、これら2つの基板間を通信するために、スイッチング用基板は通信回路を搭載しなければならず、スイッチ電極の面積を減少せざるを得ない。
【0010】
さらに、より高精度な庫内温度の調整をするためにスイッチ数を増せば、より一層スイッチ電極面積を低下せざるを得なくなる。すなわち、基板面積を十分に確保できず、複数個あるスイッチ電極の中で一部だけ電極の大きさを小さく変えて対処すると、外乱との区別のための閾値の設定が困難になる。
【0011】
上記特許文献1に記載の冷蔵庫では、基板の小型化については考慮されているがまだ不十分であり、特許文献2、3に記載の冷蔵庫においては、このようなスイッチ電極の面積の制約については、十分には考慮されていない。また、特許文献4に記載の電磁調理器では、前面操作部に余裕があり、スイッチ電極の面積についてまでは考慮されていない。
【0012】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、タッチセンサを有する冷蔵庫において、タッチセンサの接触面におけるスイッチ電極の面積が小さくなる場合でも電極面積をより広く確保し、非接触時と接触時の静電容量変化量を大きくして、閾値の設定を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する本発明の特徴は、庫内に冷気を送風する送風機及び冷凍サイクルを構成する圧縮機を制御する主制御部と、前面扉面に配置され静電容量式のタッチセンサを有する入力部及び前記タッチセンサの複数のスイッチ電極からの操作結果を表示する表示部を有する副制御部とを備え、前記主制御部と前記副制御部との間で通信する冷蔵庫において、前記複数のスイッチ電極の少なくともいずれかが、該スイッチ電極が設けられた基板の前面側及び背面側に電極を有し、前面側のスイッチ電極と背面側のスイッチ電極とを電気的に接続したことにある。
【0014】
また、前記複数のスイッチ電極のうち前記背面側のスイッチ電極と電気的に接続した、前記前面側のスイッチ電極は、背面側にスイッチ電極を有しない他の前面側のスイッチ電極の面積よりも狭いことを特徴とする。
【0015】
また、前記複数のスイッチ電極の操作内容を表示する表示手段を設け、前記タッチセンサに接続された複数のスイッチ電極の両端は誤操作防止用であり、この両端に配置したスイッチ電極の少なくともいずれかの電極が前記基板の前面側と背面側に設けられて電気的に接続されていることを特徴とする。
【0016】
また、前記前面扉は一対の回転式であって、前記副制御部は、前記前面扉のうち幅方向長さが短い側に配置されていることを特徴とする。
【0017】
また、冷蔵庫の上面端部に前記前面扉を回動自在に保持するヒンジ部を設け、前記前面扉の上部に前記ヒンジ部が貫挿される孔を形成し、前記ヒンジ部を介して前記主制御部と前記副制御部とを通信することを特徴とする。
【0018】
また、前記前面側のスイッチ電極の投影範囲内に前記背面側のスイッチ電極を設けて電極面積を拡大することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、タッチセンサを有する冷蔵庫において、タッチセンサが搭載される基板の接触面におけるスイッチ電極の面積が制約されていても、基板の表裏両面を電極面として利用することにより電極面積を拡大するので、静電容量の変化量が大きくなりON判定の閾値設定が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る冷蔵庫の一実施例の外観正面図および断面側面図。
【図2】図1に示した冷蔵庫の部分分解斜視図。
【図3】図1に示した冷蔵庫に搭載される操作・表示部の詳細断面図。
【図4】図3に示した操作・表示部の分解斜視図。
【図5】図4に示した操作・表示部が備える基板部の表面図及び背面図。
【図6】冷蔵庫内に配置される主制御部及び副制御部のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る冷蔵庫の一実施例について、図面を用いて説明する。図1は、冷蔵庫本体100の図面であり、図1(a)はその正面図、図1(b)はその断面側面図である。本実施例の冷蔵庫100は、比較的大容量の冷蔵庫であり、冷蔵室22は左右2個の扉(左冷蔵室扉22a,右冷蔵室扉22b)で覆われている。各扉(左冷蔵室扉22a,右冷蔵室扉22b)は、その幅方向端部を軸に回動可能なフレンチタイプのドアとなっている。
【0022】
本実施例の冷蔵庫100は複数の貯蔵室を有しており、最上部に冷蔵室22が、冷蔵室の真下側の左側には製氷室23が、右側には上段冷凍室24が形成されている。製氷室23及び上段冷凍室24の真下には下段冷凍室25が、この下段冷凍室25の真下であって冷蔵庫100の最下部には野菜室26が形成されている。
【0023】
各貯蔵室は扉とそれに付属するパッキン11で気密に覆われている。上述したように、最上段に位置する冷蔵室22は幅狭に形成された左冷蔵室扉22aと右冷蔵室扉22bとで覆われており、これら両扉(左冷蔵室扉22a,右冷蔵室扉22b)は冷蔵庫本体100の上部に設けられたヒンジ3(左ヒンジ3a、右ヒンジ3b)等により、回転自在に軸支されている。すなわち、左右開き式に構成されたフレンチドアを構成している。両扉(左冷蔵室扉22a,右冷蔵室扉22b)の開閉は、軸支部の近傍であって上端近くに配置された冷蔵室扉開閉検知手段22cにより、検出される。
【0024】
左右に配置された製氷室23と上段冷凍室24は、引き出し式の扉である製氷室扉23aおよび上段冷凍室扉24aでそれぞれ気密に覆われている。そして、これら製氷室扉23aおよび上段冷凍室扉24aの開閉は、互いに近接して配置された製氷室扉開閉検知手段23bおよび上段冷凍室扉開閉検知手段24bにより、検知される。
【0025】
下段冷凍室25も引き出し式の扉である下段冷凍室扉25aで気密に覆われ、その開閉は下段冷凍室扉開閉検知手段25bにより検知される。最下段に配置される野菜室26も引き出し式の扉である野菜室扉26aで前面を覆われ、この野菜室扉26aの開閉は野菜室扉開閉検知手段26bで検知される。下段冷凍室扉開閉検知手段25bおよび野菜室扉開閉検知手段26bは、それぞれの幅方向中間部であって上部に配置されている。
【0026】
ここで、冷蔵室22を覆う左冷蔵室扉22aの上下方向中間部には、詳細を後述する操作・表示部50が設けられている。操作・表示部50を左冷蔵室扉22aに設けるのは、この左冷蔵室扉22aを標準化し、冷蔵庫本体100の内容積が異なる機種の場合には、右冷蔵室扉22bの幅方向長さを変更して用いるためである。また、左冷蔵室扉22aの方が左右方向の長さが短いので、この操作・表示部50を設けることにより冷蔵庫扉の断熱面積が減少し、それにより断熱性能が低下するのを減少させるためでもある。
【0027】
図1(b)に冷蔵庫本体100の側面図を、一部断面状態で示す。冷蔵庫本体100は、外箱21と内箱20間に断熱材を充填して形成された断熱箱体19により、貯蔵室を形成する。外箱21は、天井部に天板21aを、背面側に後板21bを有している。貯蔵室は、上下方向に複数段、本実施例では3段に設けられた仕切り部材12〜14により上下方向に区画され、上から順に冷蔵室22、製氷室23または上段冷凍室24、下段冷凍室25、野菜室26が形成される。これら各貯蔵室に冷風を供給するために、断熱箱体19の庫内側の奥側部分には、冷却通路18が形成されている。この冷却通路18には、冷風の供給先を変化させる図示しないダンパの他に、送風機27や冷却器28が配置されている。冷蔵庫本体100の背面側の下部には、冷風を発生する冷凍サイクルを構成する圧縮機30および凝縮器31が配置されている。
【0028】
冷蔵庫本体100の庫内の天井面には、庫内灯45が取り付けられており、冷蔵室扉(左冷蔵室扉22a,右冷蔵室扉22b)が開いたのを冷蔵室扉開閉検知手段22cが検知したら、点灯する。断熱箱体19の上方であって冷蔵庫本体100の後部側には凹部40が形成されており、主制御部41が配置されている。主制御部41の外側はカバー42で覆われている。主制御部41は、冷凍サイクルを形成する圧縮機30等を制御する。
【0029】
図2に、冷蔵庫本体100の天井部部分を分解斜視図で示す。冷蔵庫本体100の天井面であって前側の左右両端部には、ヒンジ3(左ヒンジ3a、右ヒンジ3b)が設けられており、ヒンジ3の先端下面側には筒状突起15aが下方に延びている。図2では左冷蔵室扉22aのみ示しているが、右冷蔵室扉22bも右ヒンジ3bに係止される。左冷蔵室扉22aの右端側には、図示しないヒータを内蔵したシール手段16が取り付けられている。ヒータには、以下に示すリード線41aを介して電力が供給される。
【0030】
図2に示すように、左冷蔵室扉22aの幅方向端部には孔15bが形成されており、この孔15bに左ヒンジ3aの筒状突起15aが嵌合して、左冷蔵室扉22aを回動可能にする。孔15bには、さらに、主制御部41と左冷蔵室扉22aに配置した操作・表示部50とを電気的に接続し、かつ操作・表示部50が有する副制御部68(図4、5参照)との間で有線通信するための複数のリード線41aが挿入されている。
【0031】
図3に、左冷蔵室扉22aに操作・表示部50を配置する様子を、断面図で示す。また図4に、操作・表示部50を分解斜視図で示す。操作・表示部50は、操作内容が記載された透明なフィルムであるシート7と、このフィルムの後方に配置され、入力用の複数のタッチ電極が下側に設けられた基板8と、基板8のさらに後ろ側に配置されるLED発光部76と、これら各部材シート7、基板8、LED発光部76を保持するケース9とが積層されたものである。そして、各部材シート7、基板8、LED発光部76がケース9に一体保持されて、左冷蔵室扉22aを左右方向にスライドすることにより、左冷蔵室扉22aの所定位置に位置決めされる。
【0032】
フィルム7の前面であって左冷蔵室扉22aの表面は、ガラス板6aからなる冷蔵室扉カバー部材6で覆われている。したがって、冷蔵庫の使用者は、このガラス板6a越しに、冷蔵庫本体100へ入力操作する。
【0033】
ここで、冷蔵庫の多機能化により、冷蔵庫の使用者が各種の操作が可能になっている。例えば、急に氷が必要となり氷を急速に製造するとか、冷蔵庫に保管する物品が肉類等であっていわゆる真空チルドを必要とする場合に、上段冷凍室24を真空チルドモードにするとか、また必要以上の冷却を避けるための温度調節とかが使用者の好みに応じて変化可能になっている。
【0034】
そのため、冷蔵庫の前面からの操作を可能にし前面に表示することにより、冷蔵庫の使用者の使い勝手を向上させている。しかしながら、操作内容が多岐にわたる結果、操作ボタン(入力センサ)数が増えている。この図4に示した実施例の場合には、入力操作用のスイッチ電極を6個設け、それぞれが、例えば、強、中、弱の3段階に表示されている。これらの操作内容は、シート7に記載されている。シート7の記載に対応するように、LED透光部77bをLED発光部76に配置する。LED透光部77bは、LEDで発生した光の向きをほぼ90度変えて、シート7に記載された操作内容を照射する。ケース9は、LEDおよびLED透光部77bの形状に応じて凹凸が形成されており、右端側には基板8に配置された電子部品の形状に応じた凹凸が形成されている。
【0035】
次に、この操作・表示部50が有する基板8の詳細を、図5を用いて説明する。図5は、基板の正面図(図5(a))および背面図(図5(b))、タッチセンサ部の拡大斜視図(図5(c))である。基板8の上部には、LEDおよびLED透光部77bを嵌合するための横長の矩形状の孔63が多数設けられ、表示部56を形成している。基板8の下部には、タッチパネルを構成する複数のタッチセンサのスイッチ電極70(タッチセンサ70a〜70h)が横一列に配置されている。各スイッチ電極であるタッチセンサ70a〜70hは横長の矩形形状であり、最右端に配置されたスイッチ電極70hのさらに右側に配置されたタッチセンサIC64と配線パターン67a〜67hにより電気的に接続されている。配線パターン67a〜67hは、ノイズによる混信を避けるため、隣り合うタッチセンサ70a〜70hでは、できるだけ上下に位置を異ならせている。
【0036】
最右端に配置される副制御部68では、裏面に主としてLEDの発光の制御と通信用のマイコン72が配置されている。通信用マイコン72は、操作部60から入力された信号を処理して、主制御部41に伝達するためのものである。通信部には、コネクタ73が配置されており、主制御部41と有線通信する際の端子として作用する。また、警報用のブザー74も副制御部68に配置されている。
【0037】
上述したように、基板8は冷蔵庫本体100のフレンチドアタイプ(回転式)の左冷蔵室扉22aに取り付けられているので、基板8の長さはこの左冷蔵室扉22aの左右幅寸法以下に制約される。また、実用的には、操作表面のデザインと素材から基板8を板取する面積の効率の点からも制約される。
【0038】
冷蔵庫本体100の左冷蔵室扉22aは内部に断熱材が充填されているので、操作・表示部50を左冷蔵室扉22aに組み付ける際は、左冷蔵室扉22aの側面から基板を挿入している。そのため、ロゴ表示などのデザイン上必要な部分には操作部を配置できないので、この部分には、電子部品実装部分をまとめて配置して副制御部68を形成している。本実施例では、副制御部68と冷蔵庫本体100の天井部に配置した主制御部41とを有線通信しているので、この通信に必要な通信制御部75をこの副制御部68に含ませている。その結果、入力操作に必要なタッチセンサ用スイッチ電極70c〜70hを副制御部68よりも左側に、横一列で配置している。そして、このスイッチ電極70c〜70hへの配線パターン67a〜67hを、副制御部68に近接配置したタッチセンサIC64から配線している。主制御部との通信方法は本実施例の様な有線通信のみではなく光通信でも良い。
【0039】
なお、本実施例に示した基板8では、誤操作防止機能として複数個のスイッチが同時に操作された場合に操作を受け付けない機能を採用している。例えば、表面の拭き掃除をした場合でも両端のスイッチがONと判定されないように、入力操作用のスイッチ電極70c〜70hの両端に、誤操作防止用スイッチ電極70a、70bを設けている。
【0040】
通信制御等に必要な部品が基板8の右端部に副制御部68として配置されており、入力操作で混信を防止するためには各スイッチ電極70c〜70hに必要な幅方向長さと間隔が決まるので、スイッチ数が多くなると、誤操作防止用スイッチ電極70a、70bに割り当てられる幅方向長さを十分に確保できなくなる。
【0041】
ここで、静電容量式のタッチセンサを用いた場合には、スイッチ電極の静電容量の変化から、スイッチ電極への接触を検出している。スイッチ電極の静電容量は、スイッチ電極に接触して変化する場合の他に、非接触であっても外部からのノイズや温度変化などの環境変化によって変化することがある。この後者の意図しない静電容量の変化については、スイッチがONと判定されないように、閾値を設定して対処する。一般的に、環境変化での静電容量の変化量は小さく、接触による変化量は大きいので、誤動作防止のために、静電容量が大きく変化したときに、意図した操作があったものとしてスイッチONとなるよう閾値を設定する。
【0042】
ところで、スイッチ電極の面積が小さくなると、非接触時と接触時の静電容量の差が小さくなり、入力の有無を計る閾値を設定する際に、環境変化やノイズによる変化と区別がつきにくくなり、タッチパネル(タッチセンサ)が誤動作を引き起こしやすくなる。そこで、スイッチ電極の面積が小さくなっても誤動作を引き起こしにくくするため、本実施例では、面積が狭いスイッチ電極であっても電極面積を他のスイッチ電極とほぼ同じくすることとしている。
【0043】
具体的には、図5(c)に示すように、表面側だけではタッチセンサ70bの幅方向長さが短く小さな電極面積しか得られない場合であっても、スイッチ電極の静電容量の変化量を大きくするために、裏面側にも裏面スイッチ電極70jを配置し、これらのタッチセンサ70b、裏面スイッチ電極70j間を、基板8に形成したスルーホール61を被覆する金属被覆62の膜を介して接続している。
【0044】
尚、実施例ではリード線の配線59で接続としていたが、スルーホール61の金属皮膜62と連続して形成した配線パターンでも当然良い。さらに、スルーホール61は、タッチセンサ70b、裏面スイッチ電極70jに一体に形成されたものであっても良い。または、スルーホール61の代わりにタッチセンサ70b、裏面スイッチ電極70jに電極端子を一体に形成し、この端子を基板に挿通して、半田付けするようにしても良い。
【0045】
ここで、静電容量式のタッチセンサは、複数個あるスイッチ同士が干渉しないように、タッチセンサIC64からタッチセンサ70a〜70hまでの配線パターン67a〜67hに制約がある。配線パターン67a〜67hと他のタッチセンサ70a〜70hとの距離やタッチセンサ70a〜70h同士は、所定距離以上離して配置する必要がある。しかしながら、本実施例によれば、誤操作防止用スイッチ電極70bの面積を拡大するための裏面スイッチ電極70jをこの誤操作防止用スイッチ電極70bが配置された真裏面に配置しているので、同じスイッチであるから干渉するおそれがない。つまり、表面に設けた誤操作防止用スイッチ電極70bの投影面の範囲内であれば、他のタッチセンサ70a、70c〜70hとの位置関係を変更することなく裏面(拡大)スイッチ電極70jを配置することができる。
【0046】
本実施例では、一箇所のスイッチ電極が小さい場合に、裏面に拡大するスイッチ電極を配置しているが、複数個のスイッチ電極のそれぞれに対して、拡大するスイッチ電極を配置するようにしてもよいことは言うまでもない。ただし、静電容量式タッチセンサが複数のスイッチ電極を有する場合には、隣り合うスイッチ電極の静電容量の変化をノイズとして検出するので、各スイッチ電極間寸法とスイッチ電極からセンサICまでの配線パターン間の寸法が制約される。したがって、スイッチ電極を裏面にも設けて電極面積を拡大する場合には、表面側に設けたスイッチ電極の投影部分の範囲内に裏面側のスイッチ電極を設けると基板面積を有効に活用することができる。
【0047】
次に図6を用いて、主制御部41と副制御部68とからなる本実施例に記載の冷蔵庫本体100の制御部の動作について説明する。図6は、制御ブロック図である。冷蔵庫100の使用者は、操作部60の各操作スイッチを操作して、各貯蔵室の温度を設定する。操作部60は、複数のタッチスイッチからなるタッチパネルである。表示部56では、現在の冷蔵庫100の運転状態をLEDで発光表示する。なお、LEDの明るさは、個別に調光手段51で制御される。
【0048】
一方主制御部は上述したとおり冷蔵庫100の上部に設けられており、表示部56、操作部60、調光手段51、各貯蔵室の扉開閉検知手段、および庫内を冷却するための圧縮機30や送風機27(冷却ファン)等の制御対象機器10が接続されている。
【0049】
主制御部41は、操作部60から入力され設定された各貯蔵室の設定温度情報、または図示しない温度センサ等の情報に基づき、圧縮機30や冷却ファン27を起動/停止または回転数制御する。主制御部41はまた、現在の制御状態を示す情報や各貯蔵室の扉開閉検知手段が検出した各扉の開閉状態を、表示部56に表示したり、操作部60から操作された情報を無効化したりする。このように副制御部68からの情報を主制御部41に送信することにより、使用者に最適な冷蔵庫の運転を可能にしている。
【符号の説明】
【0050】
3 ヒンジ
3a 左ヒンジ
3b 右ヒンジ
6 冷蔵室扉カバー部材
6a ガラス板
7 シート
8 基板
9 ケース
10 制御対象機器
11 パッキン
12〜14 仕切り部材
15a 筒状突起
15b 孔
16 シール手段
19 断熱箱体
20 内箱
21 外箱
21a 天板
21b 後板
22 冷蔵室
22a 左冷蔵室扉
22b 右冷蔵室扉
22c 冷蔵室扉開閉検知手段
23 製氷室
23a 製氷室扉
23b 製氷室扉開閉検知手段
24 上段冷凍室
24a 上段冷凍室扉
24b 上段冷凍室扉開閉検知手段
25 下段冷凍室
25a 下段冷凍室扉
25b 下段冷凍室扉開閉検知手段
26 野菜室
26a 野菜室扉
26b 野菜室扉開閉検知手段
27 送風機
28 冷却器
30 圧縮機
31 凝縮器
40 凹部
41 主制御部
41a リード線
42 カバー
45 庫内灯
50 操作・表示部
51 調光手段
56 表示部
59 配線
60 操作部(入力部)
61 スルーホール
62 金属被覆
63 (表示用)孔
67、67a〜67h 配線パターン
68 副制御部
70、70c〜70h スイッチ電極(タッチセンサ)
70a、70b 誤操作防止用スイッチ電極(タッチセンサ)
70j 裏面スイッチ電極
71 タッチセンサIC
72 通信用マイコン
73 コネクタ
74 ブザー
75 通信制御部
76 LED発光部
77a LED
77b LED透光部
78 フランジ部
100 冷蔵庫(本体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
庫内に冷気を送風する送風機及び冷凍サイクルを構成する圧縮機を制御する主制御部と、前面扉面に配置され静電容量式のタッチセンサを有する入力部及び前記タッチセンサの複数のスイッチ電極からの操作結果を表示する表示部を有する副制御部とを備え、前記主制御部と前記副制御部との間で通信する冷蔵庫において、
前記複数のスイッチ電極の少なくともいずれかが、該スイッチ電極が設けられた基板の前面側及び背面側に電極を有し、前面側のスイッチ電極と背面側のスイッチ電極とを電気的に接続したことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記複数のスイッチ電極のうち前記背面側のスイッチ電極と電気的に接続した前記前面側のスイッチ電極は、背面側にスイッチ電極を有しない他の前面側のスイッチ電極の面積よりも狭いことを特徴とする、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記複数のスイッチ電極の操作内容を表示する表示手段を設け、前記タッチセンサに接続された複数のスイッチ電極の両端は誤操作防止用であり、この両端に配置したスイッチ電極の少なくともいずれかの電極が前記基板の前面側と背面側に設けられて電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記前面扉は一対の回転式であって、前記副制御部は、前記前面扉のうち幅方向長さが短い側に配置されていることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
冷蔵庫の上面端部に前記前面扉を回動自在に保持するヒンジ部を設け、前記前面扉の上部に前記ヒンジ部が貫挿される孔を形成し、前記ヒンジ部を介して前記主制御部と前記副制御部とを通信することを特徴とする、請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記前面側のスイッチ電極の投影範囲内に前記背面側のスイッチ電極を設けて電極面積を拡大することを特徴とする、請求項1又は2に記載の冷蔵庫。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−68402(P2013−68402A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261175(P2011−261175)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】