説明

凍結防止用ドレインホース

【課題】電気ヒータの発熱によりドレイン水の凍結を抑えつつ、相手排水管の材料が熱影響で変質するおそれが軽減される凍結防止用ドレインホースを提供する。
【解決手段】凍結防止用ドレインホース1はドレイン水を排出させる。凍結防止用ドレインホース1は、基端ホース部10と、基端ホース部10の先方側に一体的に連設された挿入先端ホース部12と、電気ヒータ2と、筒状断熱層3とを有する。挿入先端ホース部12における電気ヒータ2から断熱層3の外周側に放出される単位面積および単位時間あたりの放熱量をQinsertとする。基端ホース部10における電気ヒータ2から断熱層3の外周側に放出される単位面積および単位時間あたりの放熱量をQbaseとする。QinsertはQbaseよりも小さく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コージェネ装置や空気調和装置等の装置に接続され凍結防止用ドレインホースに関し、特に、装置が発生する凍結可能なドレイン水(例えば凝縮水等)を凍結を抑制させつつ装置の外部に排出させる凍結防止用ドレインホースに関する。
【背景技術】
【0002】
凍結防止用ドレインホースは、装置に繋がる基端ホース部と、相手排水管が外周側に位置するように相手排水管の内周壁面側に内挿され得るように基端ホース部の先方側に一体的に設けられた挿入先端ホース部とをもつ。ここで、凍結防止用ドレインホースは、基端ホース部および挿入先端ホース部の双方に設けられた電気ヒータと、基端ホース部および挿入先端ホース部の双方に設けられた電気ヒータを覆うように基端ホース部および挿入先端ホース部を外周側から被覆する筒状断熱層とを有する。厳寒の地域や冬期等において、ドレイン水が凍結するおそれがあるときには、装置の機能に支障をきたすおそれがあるため、電気ヒータは通電されて発熱する。このように電気ヒータが通電により発熱すると、電気ヒータが発生する熱により、凍結防止用ドレインホースを流れるドレイン水の凍結を抑制できる。
【0003】
一般的には、相手排水管は、ユーザ側の事情によって選択されることがある。このため、相手排水管の材質はユーザによって様々に相違することが多く、予想外の材質で相手配水管が作製されている場合もある。このように相手排水管が熱影響を受け易い材料で形成されている場合には、相手排水管の材料が電気ヒータから伝熱による熱影響で変質するおそれがある。環境温度が低く凍結し易い条件のときには、凍結防止のために電気ヒータへの通電量が増加されるが、電気ヒータから伝熱による熱影響で相手排水管の材料が益々変質するおそれがある。この場合、相手排水管の排水性能に影響を与えるおそれがある。
【0004】
また、特許文献1は、ドレイン水を排水する偏平なドレイン用流路を形成する樹脂製の主要部を有する偏平なドレインガイドと、ドレインガイドのドレイン用流路に内挿されて接続されると共に電気ヒータをもつ偏平な連結具とを備えるドレイン排水具を開示する。ドレインガイドの主要部に形成されているドレイン用流路には、主要部よりも熱伝導率が高い材料で形成された補助層が挿入されている。補助層は、高い熱伝導率を示す銅等のフィラーをもつ樹脂で形成されている。ドレイン用流路を流れるドレイン水は、補助層に接触しつつ流れる。特許文献1には次のように記載されている。即ち、補助層は高い熱伝導率をもつため、ドレイン水が補助層に接触すると、補助層はドレイン水の熱を吸収して昇温して蓄熱層として機能する。更に補助層を外側から被覆する主要部の熱伝導率は補助層よりも低いため、外部への放熱が抑えられる。結果として、厳寒の地域や冬期等において、ドレイン水が微量づつ間欠的に流れるときであっても、ドレイン水の凍結を抑えることができる。
【0005】
特許文献2は、内周側から外周側にかけて、ホースの芯を構成するチューブ状の防水層と、防水層を被覆する電気ヒータと、電気ヒータを被覆する絶縁層と、耐圧強化層と、被覆層とを順に積層した構造をもつフレキホースを開示する。このものによれば、電気ヒータへの通電により水の凍結防止に貢献できる。
【0006】
特許文献3は、ホース本体とホース本体に積層された発泡材で形成された断熱層とからなる断熱ホースにおいて、断熱ホースの軸端から所定距離離間した部位にスリットを形成し、スリットと軸端との間においては、断熱層はホース本体に非接合状態とされている技術を開示する。
【0007】
特許文献4は、圧送ホースの接続金具に発熱材を配置し、発熱材を断熱保温材で被覆した構造をもつホースの凍結防止装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−107169公報
【特許文献2】特開2000−130652公報
【特許文献3】特開2004−346976公報
【特許文献4】登録実用新案第3084293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1によれば、連結部には電気ヒータが設けられている。しかし、連結部に接続されるドレインガイドには、高い熱伝導率をもつ銅フィラーなどを含む補助層が設けられているものの、電気ヒータが設けられていない。このためドレインガイドにおいては、凍結抑制に寄与する補助層が設けられているものの、外気温度がかなり低く、水が凍結し易い条件であるときには、ドレインガイドのドレイン流路を流れるドレイン水が凍結するおそれがある。特に、ドレイン水が間欠的に流れるときには、ドレイン水が凍結するおそれがある。更に、外気温度がかなり低く、凍結し易い条件であるときには、高い熱伝導率をもつ銅フィラーなどを含む補助層から外気の冷熱がドレイン流路に伝達されるため、かえって、ドレイン流路を流れる水の凍結が促進されるおそれがある。
【0010】
特許文献2によれば、電気ヒータが通電されて発熱するため、フレキホースを流れる水の凍結が防止される。しかしながら、ユーザ側の事情により、相手排水管が外周側に位置するように、フレキホースの先端が相手排水管の内周壁面側に内挿されて使用されるときがある。このような場合には、熱影響を受け易い材料で形成されている相手配管が選択されているときには、相手排水管の材料がフレキホースの電気ヒータの熱影響に起因して変質するおそれがある。殊に、環境温度が低いときには、電気ヒータへの通電量が増加して電気ヒータ発熱量が増加するため、相手排水管の材料がフレキホースの電気ヒータの熱影響に起因して変質するおそれがある。
【0011】
特許文献3によれば、断熱層には電気ヒータが設けられていない。このため断熱層がホース本体に被覆されているものの、外気温度が低く、水が凍結し易い条件であるときには、ホース本体を流れる水が凍結するおそれがある。
【0012】
特許文献4は、圧送ホースを流れるスラリー等の凍結抑制に有利である。しかし、ユーザ側の事情により、相手排水管が外周側に位置するように、圧送ホースの先端が相手排水管の内周壁面側に内挿されて使用される場合には、熱影響を受け易い材料で形成されている相手配管が選択されているときには、相手排水管の材料が発熱材の熱影響に起因して変質するおそれがある。殊に、環境温度が低いときには、発熱材の単位時間あたりの発熱量が増加するため、相手排水管の材料が発熱材の熱影響に起因して変質するおそれがある。
【0013】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、電気ヒータの通電発熱によりドレイン水の凍結を抑えることができ、しかも、相手排水管の過熱を抑制し、相手排水管が熱影響を受け易い材料で形成されている場合であっても、相手排水管の材料が熱影響で変質するおそれを軽減できる凍結防止用ドレインホースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)請求項1に係る凍結防止用ドレインホースは、装置に接続され装置が発生するドレイン水の凍結を抑制させつつドレイン水を装置の外部に排出させる凍結防止用ドレインホースであって、凍結防止用ドレインホースは、装置に繋がる基端ホース部と、相手排水管が外周側に位置するように相手排水管の内周壁面側に少なくとも一部が内挿され得るように基端ホース部の先方側に一体的に連設された挿入先端ホース部と、基端ホース部および挿入先端ホース部に設けられた電気ヒータと、基端ホース部および挿入先端ホース部に設けられた電気ヒータを覆うように基端ホース部および挿入先端ホース部を外周側から被覆する筒状断熱層とを有しており、挿入先端ホース部における電気ヒータから筒状断熱層の外周側に放出される単位面積および単位時間あたりの放熱量Qinsertは、基端ホース部における電気ヒータから筒状の断熱層の外周側に放出される単位面積および単位時間あたりの放熱量Qbaseよりも小さく設定されている(Qinsert<Qbase)ことを特徴とする。
【0015】
使用時において、凍結防止用ドレインホースのうち挿入先端ホース部の少なくとも一部は、相手排水管の周壁が外周側に位置するように相手排水管の内周壁面側に内挿されることがある。厳寒の地域や冬期等では、電気ヒータに通電される。このため、基端ホース部および挿入先端ホース部を流れるドレイン水の凍結が抑制される。
【0016】
上記したように電気ヒータが通電により発熱すると、電気ヒータが発生する熱は基端ホース部および挿入先端ホース部に伝熱されるばかりか、挿入先端ホース部が内挿されている相手排水管の周壁にも伝熱される。一般的には、相手排水管はユーザ側の事情によって選択されることが多い。このため、相手排水管の材質はユーザによって様々に相違することがある。相手排水管が熱影響を受け易い材料で形成されていることもある。このような場合には、相手排水管の材料が電気ヒータからの熱影響に起因して変質するおそれがある。
【0017】
そこで本発明によれば、挿入先端ホース部における電気ヒータから筒状断熱層の外周側に放出される単位面積および単位時間あたりの放熱量Qinsertは、基端ホース部における電気ヒータから筒状断熱層の外周側に放出される単位面積および単位時間あたりの放熱量Qbaseよりも小さく設定されている(Qinsert<Qbase)。従って、単位面積および単位時間あたり、挿入先端ホース部側からの放熱量Qinsertは、基端ホース部側からの放熱量Qbaseよりも小さく設定されている。この結果、熱影響を受け易い材料で形成されている相手配管をユーザが選択した場合であっても、相手排水管の材料が熱影響で変質するおそれが軽減される。なお放熱量Qinsert,Qbaseはそれぞれ、電気ヒータの通電時において、単位面積および単位時間あたりの平均値とすることができる。
【0018】
装置としては、ドレイン水を発生させ得るものであれば何でも良い。ドレイン水は凝縮水等が挙げられる。例えば、エンジンでコンプレッサを駆動させる空気調和機などに使用されるヒートポンプ装置、エンジンで発電機を回転駆動させるコージェネ装置、燃料電池で発電させる燃料電池装置(コージェネ装置)等が挙げられる。このようにエンジンから排出された高温の排ガスを凝縮させた凝縮水をドレイン水として外部に排出する装置に適用できる。電気ヒータの形状および構造等は特に限定されるものではなく、要するに、ドレイン水の凍結を抑制できるものであれば良い。
【0019】
(2)請求項2に係る凍結防止用ドレインホースによれば、上記において、電気ヒータは、基端ホース部および挿入先端ホース部にスパイラル状に巻回されており、電気ヒータは、挿入先端ホース部において基端ホース部よりも相対的に粗に巻回されており、基端ホース部において挿入先端ホース部よりも相対的に密に巻回されていることを特徴とする。
【0020】
これにより、単位面積および単位時間あたり、挿入先端ホース部における電気ヒータから筒状断熱層の外周側に放出される放熱量Qinsertは、基端ホース部における電気ヒータから断熱層の外周側に放出される放熱量Qbaseよりも小さく設定される(Qinsert<Qbase)。電気ヒータは、基端ホース部および挿入先端ホース部にスパイラル状に巻回されているため、巻回密度の粗および密の設定に有利である。更に、基端ホース部および挿入先端ホース部が撓むときであっても、その撓みに電気ヒータは対処できる。
【0021】
(3)請求項3に係る凍結防止用ドレインホースによれば、上記において、筒状断熱層のうち挿入先端ホース部を被覆する断熱層部分の厚みを外周側に通過する単位面積および単位時間あたりの熱移動量は、筒状断熱層のうち基端ホース部を被覆する断熱層部分の厚みを外周側に通過する単位面積および単位時間あたりの熱移動量よりも小さいことを特徴とする。この場合、相手排水管が外周側に位置するように相手排水管の内周壁面側に挿入先端ホース部が内挿されているとき、挿入先端ホース部側の電気ヒータから相手排水管側に伝熱される単位面積および単位時間あたりの熱移動量Q1は、抑えられる。この結果、相手排水管における熱影響を抑制させることができ、熱影響に起因する相手排水管の変質が抑制される。
【0022】
(4)請求項4に係る凍結防止用ドレインホースによれば、上記において、筒状断熱層のうち挿入先端ホース部を被覆する断熱層部分の厚みTinsertは、筒状断熱層のうち基端ホース部を被覆する断熱層部分の厚みTbaseよりも厚く設定されている(Tinsert>Tbase)ことを特徴とする。この場合、相手排水管が外周側に位置するように相手排水管の内周壁面側に挿入先端ホース部が内挿されているとき、挿入先端ホース部側の電気ヒータから相手排水管側に伝熱される熱移動量Q1は、抑えられる。この結果、相手排水管における熱影響を抑制させることができ、熱影響に起因する相手排水管の変質が抑制される。
【0023】
(5)請求項5に係る凍結防止用ドレインホースによれば、上記において、相手排水管の内周壁面と、挿入先端ホース部の筒状断熱層の外周壁面とは互いに断面形状が異なり、相手排水管の内周壁面と挿入先端ホース部の筒状断熱層の外周壁面との間に、断熱用空間が確保されることを特徴とする。この場合、挿入先端ホース部の筒状断熱層から相手排水管の内周壁面に向かう単位面積および単位時間あたりの熱移動は、断熱用空間により制限される。これにより電気ヒータが設けられている場合であっても、相手排水管の内周壁面の保護性を高め得る。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る凍結防止用ドレインホースによれば、単位面積および単位時間あたり、挿入先端ホース部における電気ヒータから筒状断熱層の外周側に放出される放熱量Qinsertは、基端ホース部における電気ヒータから断熱層の外周側に放出される放熱量Qbaseよりも小さく設定される(Qinsert<Qbase)。この場合、電気ヒータの発熱によりドレイン水の凍結を抑えつつ、相手排水管の過熱を抑制できる。従って、相手排水管が熱影響を受け易い材料で形成されている場合であっても、相手排水管の材料が熱影響で変質するおそれを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態1に係り、相手排水管に凍結防止用ドレインホースを挿入している状態を模式的に示す断面図である。
【図2】実施形態1に係り、相手排水管に凍結防止用ドレインホースを挿入している状態を模式的に示す断面図である。
【図3】実施形態2に係り、相手排水管に凍結防止用ドレインホースを挿入している状態を模式的に示す断面図である。
【図4】実施形態3に係り、相手排水管に凍結防止用ドレインホースを挿入している状態を模式的に示す断面図である。
【図5】実施形態4に係り、凍結防止用ドレインホースを模式的に示す斜視図である。
【図6】実施形態5に係り、凍結防止用ドレインホースを模式的に示す斜視図である。
【図7】実施形態6に係り、凍結防止用ドレインホースを模式的に示す平面図である。
【図8】実施形態8に係り、相手排水管に凍結防止用ドレインホースを挿入している状態を模式的に示す断面図である。
【図9】適用形態を示す装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
凍結防止用ドレインホースは、装置に繋がる基端ホース部と基端ホース部の先方側に一体的に設けられた挿入先端ホース部とを有する芯ホースをもつ。凍結防止用ドレインホースは、好ましくは、基端ホース部および挿入先端ホース部からなる芯ホースに設けられた電気ヒータと、芯ホースに設けられた電気ヒータを覆うように基端ホース部および挿入先端ホース部を外周側から被覆する筒状断熱層とを有する。凍結防止用ドレインホースの挿入先端ホース部のうちの少なくとも一部は、電気ヒータおよび筒状断熱層と共に、相手排水管の孔に内挿される。この状態では、筒状断熱層の外周側に相手排水管が位置する。相手排水管の内周壁面の横断面形状は、真円に近い円形状であることが多い。この場合、筒状断熱層の外周壁面の横断面形状は、楕円、長円、三角、四角、六角等の異形状(非真円形状)にできる。こりにより筒状断熱層の外周側に断熱用空間を確保でき、ドレイン水の凍結防止のために電気ヒータの発熱が大きいときであっても、相手排水管の熱影響による変質を抑えることができる。なお、前記した横断面は、ドレインホースの中心軸線に対して直角方向に沿った断面を意味する。筒状断熱層の外周壁面に断熱用空間を形成するため複数の突起を形成しても良い。
【0027】
単位時間あたり、挿入先端ホース部における電気ヒータの発熱量は、基端ホース部においる電気ヒータの発熱量よりも小さく設定されていることが好ましい。相手排水管の変質を抑えるためである。
【0028】
なお使用の形態としては、相手排水管の開口は真上向きでも良いし、または斜め上向き(例えば鉛直線に対して20〜70°の範囲内において傾斜)でも良いし、横向きでも良い。その相手排水管の開口の上方から凍結防止用ドレインホースの先端出口を下方(鉛直方向または斜め下方向)または水平方向に移動させて相手排水管の開口に差し込むことが多い。
【0029】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について図1および図2を参照して説明する。図1に示すように、凍結防止用ドレインホース1は、装置9に接続されており、装置9が発生する凍結可能なドレイン水を外部に排出させる。凍結防止用ドレインホース1の芯ホース1xは、ドレイン水を流すドレイン通路1yをもつ。芯ホース1xは、筐体90およびホース接続部92をもつ装置9に繋がる上流側の基端ホース部10と、基端ホース部10の先方側に一体的に設けられた下流側の挿入先端ホース部12とを有する。筐体9の筐体90よりも外方は一般的には外気とされており、厳寒の地域や冬期等では、凍結を発生させ易い温度に低下することがある。ドレイン水は装置9から排出される排水であり、装置9の熱交換器において凝縮された凝縮水などで形成されることが多い。芯ホース1xについては、基端ホース部10および挿入先端ホース部12にわたり、内径および外径を同一にしてもよいし、異なっていてもよい。凍結防止用ドレインホース1のうち先端側の挿入先端ホース部12側は、ユーザ側の事情等に応じて、相手排水管4に接続されることがある。この場合、図1,図2に示すように、挿入先端ホース部12は、相手排水管4の周壁43が外周側に位置するように相手排水管4の周壁43で区画される孔40の内周壁面41側に内挿され得るようにされている。挿入先端ホース部12は、相手排水管4の内径(孔40の径)と略同一(但し、挿入先端ホース部12が相手排水管4に挿入できること)でも良いし、相手排水管4の内径より小さくても良い。
【0030】
図2に示すように、凍結防止用ドレインホース1は、基端ホース部10および挿入先端ホース部12に設けられた電気ヒータ2と、基端ホース部10および挿入先端ホース部12に設けられた電気ヒータ2を覆うように基端ホース部10および挿入先端ホース部12を外周側から被覆する筒状断熱層3とを有する。筒状断熱層3は高い断熱性をもつ樹脂やゴム等の高分子系材料で形成されており、発泡体等の多孔質体で形成することが好ましい。電気ヒータ2は、基端ホース部10および挿入先端ホース部12からなる芯ホース1xにおいて、これの中心軸線まわりにスパイラル状に巻回されている。このため基端ホース部10および挿入先端ホース部12が撓む変形するときであっても、その撓み変形に電気ヒータ2は対処できる。
【0031】
筒状断熱層3は芯ホース1xのほぼ全体を被覆しており、基端ホース部10および挿入先端ホース部12の双方を外側から被覆する筒状の内層30と、挿入先端ホース部12側を外側から被覆する筒状の外層32とで形成されている。外層32および内層30は互いに剥離可能に独立されていても良いし、一体的に接合されていても良い。図2から理解できるように、外層32は基端ホース部10を被覆していない。なお内層30および外層32は同一材質または同系材質で形成されていても良いし、別の材質で形成されていても良い。同系材質は、主要成分が同質であるものの、副次的成分が相違する意味である。なお、筒状断熱層3の材質としてはシリコンゴム、クロロプレンゴム、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等が例示されるが、これに限定されるものではない。図1に示すように、内層30および外層32の合計厚みをTinsertとする。筒状断熱層3のうち基端ホース部10を被覆する内層30の厚みをTbaseとする。すなわち、図2に示すように、筒状断熱層3のうち挿入先端ホース部12を被覆する断熱層部分(内層30および外層32の合計和)の厚みをTinsertとする。筒状断熱層3のうち基端ホース部10を被覆する断熱層部分の厚みをTbaseとする。厚みTinsertは厚みTbaseよりも厚く設定されている(Tinsert>Tbase)。
【0032】
本実施形態によれば、図1,図2に示すように、相手排水管4が凍結防止用ドレインホース1の外周側に位置するように、挿入先端ホース部12のうち先端12e側の少なくとも一部が相手排水管4の孔40の内周壁面41側に内挿された状態で、凍結防止用ドレインホース1は使用されることがある。相手排水管4は外周壁面4p,軸端面4eをもつ。
【0033】
凍結防止用ドレインホース1の排水性や設置性等が考慮されたものである。厳寒の地域や冬期等では、凍結防止用ドレインホース1を流れるドレイン水の凍結を抑えるため、電気ヒータ2は通電される。このため、基端ホース部10および挿入先端ホース部12を流れるドレイン水の凍結が抑制される。
【0034】
本実施形態によれば、凍結防止用ドレインホース1の単位面積および単位時間あたりの放熱量については、次のようにされている。すなわち、挿入先端ホース部12における電気ヒータ2から筒状断熱層3の外周側に放出される平均的な放熱量をQinsertとする。基端ホース部10における電気ヒータ2から筒状断熱層3の外周側に放出される平均的な放熱量をQbaseとする。このとき本実施形態によれば、単位面積および単位時間あたり、放熱量Qinsertは、放熱量Qbaseよりも小さく設定されている(Qinsert<Qbase)。
【0035】
上記したように電気ヒータ2が通電により発熱すると、電気ヒータ2が発生する熱が基端ホース部10および挿入先端ホース部12からなる芯ホース1xのドレイン通路1y内に伝熱され、ドレイン通路1y内を流れるドレイン水の凍結防止に貢献できる。更に、電気ヒータ2が発生する熱は、挿入先端ホース部12の外周側に位置する相手排水管4の内周壁面41にも伝熱される。一般的には、相手排水管4はユーザ側の事情に応じて選択されることが多い。このため、相手排水管4の材質はユーザによって様々に相違することがある。相手排水管4が熱影響を受け易い材料(例えば塩化ビニール、ポリエチレン等)で形成されていることもある。このような場合、相手排水管4の材料が電気ヒータ2からの熱影響に起因して変質するおそれがあり、好ましくない。変質が進行すると、ドレイン水の排水に支障をきたすおそれがある。
【0036】
そこで本実施形態によれば、前述したように、単位面積および単位時間あたり、挿入先端ホース部12における電気ヒータ2から筒状断熱層3の外周側に放出される平均的な放熱量Qinsertは、基端ホース部10における電気ヒータ2から筒状断熱層3の外周側に放出される平均的な放熱量Qbaseよりも、小さく設定されている(Qinsert<Qbase)。従って、単位面積および単位時間あたり、挿入先端ホース部12側からの放熱量Qinsertは、基端ホース部10側からの放熱量Qbaseよりも小さく設定されている。この結果、ドレイン水の凍結を抑制させつつ、熱影響を受け易い材料で形成されている相手排水管4をユーザが選択している場合であっても、相手排水管4の材料が電気ヒータ2の発熱の熱影響で変質するおそれが軽減される。
【0037】
更に、本実施形態に係る凍結防止用ドレインホース1によれば、電気ヒータ2は、基端ホース部10および挿入先端ホース部12からなる芯ホース1xの外周壁面にスパイラル状に巻回されている。ここで、電気ヒータ2は、挿入先端ホース部12において基端ホース部10よりも相対的に粗に巻回されている。電気ヒータ2のスパイラルピッチについては、基端ホース部10における電気ヒータ2のスパイラルピッチをPbaseとし、挿入先端ホース部12における電気ヒータ2のスパイラルピッチをPinsertとすると、スパイラルピッチPinsertはスパイラルピッチPbaseよりも長く設定されている。Pinsert/Pbaseとしては1.1〜4.0の範囲、1.2〜3.0の範囲が例示される。但しこれに限定されるものではない。
【0038】
このように本実施形態によれば、スパイラル状の電気ヒータ2の平均的な巻回密度は、基端ホース部10において、挿入先端ホース部12よりも相対的に高く設定されている。換言すると、スパイラル状の電気ヒータ2の平均的な巻回密度は、挿入先端ホース部12において基端ホース部10よりも相対的に粗に設定されている。従って、前述したように、単位面積および単位時間あたり、挿入先端ホース部12側からの平均的な放熱量Qinsertは、基端ホース部10側からの平均的な放熱量Qbaseよりも小さく設定されている(Qinsert<Qbase)。なお、図2において、電気ヒータ2のスパイラルピッチが大きい領域をMAとして示し、電気ヒータ2のスパイラルピッチが小さい領域をMBとして示す。
【0039】
Qinsert/Qbase=0.20〜0.85の範囲、殊に0.30〜0.80の範囲、0.40〜0.70の範囲が例示される。但しこれらに限定されるものではない。Qinsert/Qbaseが小さい方が、相手排水管4の内周壁面41の過熱が抑制される。Qinsert/Qbaseが小さすぎると、挿入先端ホース部12における凍結抑制効果が限定される。上記した平均的とは単純平均に相当する。
【0040】
本実施形態によれば、前述したように、筒状断熱層3のうち挿入先端ホース部12を被覆する断熱層部分の厚みをTinsertとする。筒状断熱層3のうち基端ホース部10を被覆する断熱層部分の厚みをTbaseとする。厚みTinsertは厚みTbaseよりも厚く設定されている(Tinsert>Tbase)。この結果、相手排水管4が外周側に位置するように相手排水管4の内周壁面41側に挿入先端ホース部12が内挿されているとき、すなわち、挿入先端ホース部12の外周側に相手排水管4が位置しているとき、挿入先端ホース部12側の電気ヒータ2から相手排水管4に単位面積および単位時間あたり伝熱される熱移動量は、抑えられる。この結果、電気ヒータ2の発熱に起因する相手排水管4の過熱が抑制され、相手排水管4の内周壁面41における熱影響を抑制させることができる。ひいては、電気ヒータ2の発熱に起因する熱影響に起因する相手排水管4の変質(変質劣化)が抑制される。なお、Tinsert/Tbase=1.15〜4.10の範囲、殊に1.20〜3.20の範囲、1.20〜2.50の範囲が例示される。但しこれらに限定されるものではない。Tinsert/Tbaseの比率が小さい方が、相手排水管4の孔40の内径の過剰増大化を抑制できる。
【0041】
仮に、凍結防止用ドレインホース1のうち相対的に上流側の剛性が高いと、凍結防止用ドレインホース1の全体の可撓性が確保されにくいおそれがある。この点本実施形態によれば、挿入先端ホース部12よりも装置9に対して相対的に近い側(上流側)の基端ホース部10の断熱層3の厚みTbaseは、装置9の筐体90に対して相対的に遠い側(下流側)の挿入先端ホース部12の断熱層3の厚みTinsertよりも薄く設定されている(Tinsert>Tbase)。このため、凍結防止用ドレインホース1のうち相対的に上流側の剛性が低めとなり、凍結防止用ドレインホース1のうち相対的に上流側の可撓性および柔軟性が確保され易くなり、凍結防止用ドレインホース1の全体の可撓性が確保され易い利点が得られる。この場合、凍結防止用ドレインホース1の設置の自由度が確保され易くなる。
【0042】
以上説明したように本実施形態によれば、凍結防止用ドレインホース1を流れるドレイン水の凍結を、電気ヒータ2の発熱により抑えることができる。電気ヒータ2に通電して発熱させるときにおいても、相手排水管4の過熱を抑制させ、相手排水管4が電気ヒータ2からの熱影響を受け易い材料(例えば塩化ビニール等)で形成されている場合であっても、相手排水管4の材料が電気ヒータ2からの熱影響で変質するおそれが軽減できる。従って、環境温度が低く凍結が発生し易い条件において電気ヒータ2の発熱量を増加させるときであっても、相手排水管4の材料が電気ヒータ2からの熱影響で変質するおそれが軽減できる。このような本実施形態によれば、電気ヒータ2や凍結防止用ドレインホース1の温度等を検知する温度センサを廃止したり、その温度センサを用いた過熱防止装置等を廃止することも期待できる。
【0043】
なお、図2から理解できるように、電気ヒータ2のスパイラル巻回により、基端ホース部10の外周壁10pおよび挿入先端ホース部12の外周壁面12pと筒状断熱層3の内周壁面3iとの間に、電気ヒータ2の厚みthの影響で、隙間35が形成される。隙間35は、断熱隙間としての機能を期待できる。スパイラル巻回の粗密の影響があるため、隙間35の体積については、基端ホース部10の外周壁10pよりも挿入先端ホース部12の外周壁面12pにおいて多いといえる。このため挿入先端ホース部12側から相手排水管4の内周壁面41への伝熱を抑制させ、電気ヒータ2が通電されるときにおいて相手排水管4の内周壁面41の過熱、過熱に起因する変質を抑制させるのに貢献できる。
【0044】
なお必要に応じて、筒状断熱層3の外周壁面32pの横断面形状を三角、楕円、長円等の異形状にできる。更に筒状断熱層3の外周壁面32pに、複数の突起を互いに間隔を隔てて突設させても良い。
【0045】
なお使用の形態としては、相手排水管4の孔40の開口40mは横向きでも良いし、真上向きでも良いし、または斜め上向き(例えば鉛直線に対して20〜70°の範囲内において傾斜)でも良い。その相手排水管4の開口40mの上方から凍結防止用ドレインホース1の出口(先端12e)を水平方向、または、下方(鉛直方向または斜め下方向)に移動させて相手排水管4の孔40の開口40mに差し込むことが多い。開口40mが上向きであれば、相手排水管4の孔40内の熱気の放出にも有利である。
【0046】
(実施形態2)
図3は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を果たす。図3に示すように、筒状断熱層3は、基端ホース部10および挿入先端ホース部12の双方を被覆する内層30と、挿入先端ホース部12を被覆する外層32とで形成されている。相手排水管4の内周壁面41における過熱を抑制させるためには、外層32は、内層30よりも厚み方向の熱伝達率が小さい材料で形成されている。このため、挿入先端ホース部12側の断熱性を高めつつ、凍結防止用ドレインホース1の先端側の外径DA(図3参照)の増加を抑制させることができ、ひいては相手排水管4の孔40の内径Dmの過剰増大化を抑制できる利点が得られる。
【0047】
図3から理解できるように、挿入先端ホース部12を被覆する断熱層部分の厚みをTinsertとする。筒状断熱層3のうち基端ホース部10を被覆する断熱層部分の厚みをTbaseとする。厚みTinsertは厚みTbaseよりも厚く設定されている(Tinsert>Tbase)。なお必要に応じて、筒状断熱層3の外周壁面32pの横断面形状を三角、楕円、長円等の異形状にできる。更に筒状断熱層3の外周壁面32pに、複数の突起を互いに間隔を隔てて突設させても良い。
【0048】
(実施形態3)
図4は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を果たす。図4に示すように、筒状断熱層3のうち挿入先端ホース部12を被覆する断熱層部分の厚みをTinsertとする。筒状断熱層3のうち挿入先端ホース部12を被覆する断熱層部分の厚みをTinsertとする。筒状断熱層3のうち基端ホース部10を被覆する断熱層部分の厚みをTbaseとする。厚みTinsertは基本的には厚みTbaseと同一に設定されている(Tinsert=Tbase,Tinsert≒Tbase)。
【0049】
本実施形態においても、実施形態1と同様に、電気ヒータ2は、挿入先端ホース部12において基端ホース部10よりも相対的に粗に巻回されている。すなわち、電気ヒータ2のスパイラルピッチPについては、基端ホース部10における電気ヒータ2のスパイラルピッチをPbaseとし、挿入先端ホース部12における電気ヒータ2のスパイラルピッチをPinsertとすると、スパイラルピッチPbaseよりもスパイラルピッチPinsertは長く設定されている。すなわち、電気ヒータ2は、基端ホース部10において、挿入先端ホース部12よりも相対的に密に巻回されている。換言すると、電気ヒータ2は、挿入先端ホース部12において、基端ホース部10よりも相対的に粗に巻回されている。従って、単位面積および単位時間あたり、挿入先端ホース部12側において電気ヒータ2からの放熱量Qinsertは、基端ホース部10側において電気ヒータ2からの放熱量Qbaseよりも小さく設定されている(Qinsert<Qbase)。
【0050】
この結果、熱影響を受け易い材料で形成されている相手配管をユーザが選択している場合であっても、電気ヒータ2の通電発熱によりドレイン水の凍結を抑制させつつ、相手排水管4の材料が電気ヒータ2の通電発熱の熱影響で変質するおそれが軽減される。なお必要に応じて、筒状断熱層3の外周壁面32pの横断面形状を三角形、四角形、五角形、六角形、楕円、長円等のように、相手排水管4の内周壁面41に対して異形状にできる。更に筒状断熱層3の外周壁面32pに、複数の突起を互いに間隔を隔てて突設させても良い。
【0051】
このように本実施形態においても、電気ヒータ2がオンされて発熱するときにおいて、筒状断熱層3のうち挿入先端ホース部12を被覆する断熱層部分の厚みを外周側に通過する単位面積および単位時間あたりの熱移動量は、筒状断熱層3のうち基端ホース部10を被覆する断熱層部分の厚みを外周側に通過する単位面積および単位時間あたりの熱移動量よりも小さいことが好ましい。
【0052】
(実施形態4)
図5は実施形態4を示す。本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成および同様の作用効果を果たす。図5に示すように、挿入先端ホース部12の外側に被覆されている筒状断熱層3の外周壁面32pの横断面形状は、偏平化された楕円形状または長円形状とされている(非真円形状,異形状)。挿入先端ホース部12側の断面の外周壁面の長径をD1とし、短径をD2として示す。相手排水管4の孔40の内径Dmは、挿入先端ホース部12の長径D1にほぼ整合することが好ましい。この場合、相手排水管4の内周壁面41は、相手排水管4の軸線に対して直角方向に沿った横断面において、真円形状または真円に類似する形状をなすことが好ましい。この場合、相手排水管4の内周壁面41と挿入先端ホース部12の筒状断熱層3の外周壁面32p(特に筒状断熱層3の外周壁面32pの短径側)との間に、断熱用空間44が確保される。電気ヒータ2の発熱量を大きくさせてドレイン水の凍結抑制を図りつつ、断熱用空間44の断熱作用により、相手排水管4の内周壁面41の過熱抑制に更に貢献できる。なお、凍結防止用ドレインホース1が床面等の設置面に設置されるとき、挿入先端ホース部12の短径D2が高さ方向(矢印H方向)に沿っていることが好ましい。この場合、挿入先端ホース部12は高さ方向(矢印H方向)において偏平化されるため、ユーザやメンテナンス者等の歩行に影響を与えることが抑制される。
【0053】
(実施形態5)
図6は実施形態5を示す。本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成および同様の作用効果を果たす。図6に示すように、挿入先端ホース部12の外側に被覆されている筒状断熱層3の外周壁面32pの横断面形状は、3つの頂角3rと3つの辺3sとを有する三角形状(非真円形状,異形状)とされている。この場合、相手排水管4の孔40の内周壁面41(内径:Dm)は、相手排水管4の中心軸線に対して直角方向に沿った横断面において、真円形状または真円に類似する形状をなすことが好ましい。このため、相手排水管4の内周壁面41と挿入先端ホース部12の筒状断熱層3の外周壁面32p(辺3s)との間に、断熱用空間44が確保できる。ひいては電気ヒータ2の発熱量を増加させてドレイン水の凍結抑制を図りつつ、相手排水管4の内周壁面41の過熱抑制に貢献できる。
【0054】
(実施形態6)
図7は実施形態6を示す。本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成および同様の作用効果を果たす。図7に示すように、挿入先端ホース部12および筒状断熱層3はLの字形状とされている。なお必要に応じて、筒状断熱層3の外周壁面32pの横断面形状を三角、楕円、長円等の異形状にできる。更に筒状断熱層3の外周壁面32pに、複数の突起を互いに間隔を隔てて突設させても良い。
【0055】
(実施形態7)
本実施形態は実施形態1,2,4,5と基本的には同様の構成および同様の作用効果を果たす。図示しないものの、挿入先端ホース部の横断面形状は星形状とされている。このため、相手排水管の内周壁面と挿入先端ホース部の断熱層の外周壁面との間に、断熱用空間が確保でき、相手排水管の内周壁面の過熱抑制に更に貢献できる。
【0056】
(実施形態8)
図8は実施形態8を示す。本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成および同様の作用効果を果たす。図8に示すように、挿入先端ホース部12の外側に被覆されている筒状断熱層3の外周壁面32p(横断面:円形状)には、複数の突起300が互いに間隔を隔てて突設されている。少なくとも、筒状断熱層3の外周壁面32pの少なくとも下面32pdには、複数の突起300が形成されている。突起300により、筒状断熱層3の外周壁面32pと相手排水管4の孔40の内周壁面41(横断面:円形状,内径:Dm)との間に、断熱用空間44Bが確保できる。断熱用空間44Bの隙間幅は突起300の突出量に相当する。突起300は筒状断熱層3と同材質で一体成形で形成できるが、部品を埋め込んで形成しても良い。
【0057】
用途によっては、凍結防止用ドレインホース1が横方向に沿って使用される場合がある。このような場合には、凍結防止用ドレインホース1の筒状断熱層3の外周壁面32pのうち下面32pdは、相手排水管4の内周壁面41のうち下面41dに接触し易く、このため電気ヒータ2の通電により、下面41dには熱影響による変質が進行し易い。この点本実施形態によれば、下面32pdと下面41dとの間には、これらの全面接触を回避すべく、複数の突起300により断熱用空間44Bが確実に確保できる。このため電気ヒータ2の発熱量を増加させてドレイン水の凍結抑制を図りつつ、相手排水管4の内周壁面41の過熱抑制に貢献できる。他の実施形態についても、筒状断熱層3の外周壁面32pに突起300を形成しても良い。突起300の形状は時に限定されるものではなく、円柱状、半球状等が例示される。なお、筒状断熱層3の外層32の外周壁面32pの全体に突起300が形成されていることが好ましい。
【0058】
(実施形態9)
本実施形態は、突起300を有する実施形態8(図8参照)と基本的には同様の構成および同様の作用効果を果たす。本実施形態によれば、相手排水管4の開口40mが真上または斜め上向きで、その上方から凍結防止用ドレインホース1の出口(先端12e)を下方(鉛直方向または斜め下方向)に移動させて相手排水管4の開口40mに差し込む。このような場合においても、複数の突起300は、凍結防止用ドレインホース1の筒状断熱層3の外周壁面32pと、相手排水管4の内周壁面41との全面的な接触を抑制する効果を発揮する。このため電気ヒータ2の発熱量を増加させてドレイン水の凍結抑制を図りつつ、相手排水管4の内周壁面41の過熱抑制に貢献できる。
【0059】
(適用形態)
図9は適用形態の一例を示す。装置1Bは、ガス状や液状の燃料で駆動するエンジン100と、エンジン100で駆動されるコンプレッサまたは発電機などの可動機101と、エンジン100から排出された高温の排気ガスを排ガス通路120を介して通過させる熱交換器102と、熱交換器102で生成した凝縮水で形成されたドレイン水(酸性)をアルカリ系の中和剤で中和させる中和器103と、中和器103で中和されたドレイン水を排水させるために中和器103から外部に延設された凍結防止用ドレインホース1とを備えている。凍結防止用ドレインホース1は上記した各実施形態の凍結防止用ドレインホースで形成されている。熱交換器102には、排気ガスを冷却させるための冷却液を流すポンプ106を有する冷却通路107が配置されている。
【0060】
(その他)電気ヒータはスパイラル状に巻回されているが、これに限らず、蛇行状に曲成されているタイプでも良い。筒状断熱層3は、内層30および外層32で形成されているが、両者を一体化させた断熱層で形成しても良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0061】
1は凍結防止用ドレインホース、1xは芯ホース、1yはドレイン通路、10は基端ホース部、12は挿入先端ホース部、2は電気ヒータ、3は筒状断熱層、30は内層、32は外層、4は相手排水管、40は孔、40mは開口、41は内周壁面、9は装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置に接続され前記装置が発生するドレイン水の凍結を抑制させつつドレイン水を装置の外部に排出させる凍結防止用ドレインホースであって、
前記凍結防止用ドレインホースは、
前記装置に繋がる基端ホース部と、相手排水管が外周側に位置するように前記相手排水管の内周壁面側に少なくとも一部が内挿され得るように前記基端ホース部の先方側に一体的に連設された挿入先端ホース部と、前記基端ホース部および前記挿入先端ホース部に設けられた電気ヒータと、前記基端ホース部および前記挿入先端ホース部に設けられた前記電気ヒータを覆うように前記基端ホース部および前記挿入先端ホース部を外周側から被覆する筒状断熱層とを有しており、
前記挿入先端ホース部における前記電気ヒータから前記筒状断熱層の外周側に放出される単位面積および単位時間あたりの放熱量Qinsertは、
前記基端ホース部における前記電気ヒータから前記筒状断熱層の外周側に放出される単位面積および単位時間あたりの放熱量Qbaseよりも小さく設定されている(Qinsert<Qbase)ことを特徴とする凍結防止用ドレインホース。
【請求項2】
請求項1において、前記電気ヒータは、前記基端ホース部および前記挿入先端ホース部にスパイラル状に巻回されており、前記電気ヒータは、前記挿入先端ホース部において前記基端ホース部よりも相対的に粗に巻回されており、前記基端ホース部において前記挿入先端ホース部よりも相対的に密に巻回されていることを特徴とする凍結防止用ドレインホース。
【請求項3】
請求項1または2において、前記筒状断熱層のうち前記挿入先端ホース部を被覆する断熱層部分の厚みを外周側に通過する単位面積および単位時間あたりの熱移動量は、前記筒状断熱層のうち前記基端ホース部を被覆する断熱層部分の厚みを外周側に通過する単位面積および単位時間あたりの熱移動量よりも小さいことを特徴とする凍結防止用ドレインホース。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記筒状断熱層のうち前記挿入先端ホース部を被覆する断熱層部分の厚みTinsertは、前記筒状断熱層のうち前記基端ホース部を被覆する断熱層部分の厚みTbaseよりも厚く設定されている(Tinsert>Tbase)ことを特徴とする凍結防止用ドレインホース。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、相手排水管の内周壁面と、前記挿入先端ホース部の前記筒状断熱層の外周壁面とは互いに断面形状が異なり、相手排水管の内周壁面と前記挿入先端ホース部の前記筒状断熱層の外周壁面との間に、断熱用空間が確保されることを特徴とする凍結防止用ドレインホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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