凝固可能な血小板成長因子濃縮物及びその調製法
本発明は、好ましくは成長因子PDGF、TGF−β、IGF、EGF、CTGF、bFGF及びVEGFを含む治療及び/又は化粧用途の凝固可能な血小板成長因子濃縮物に関する。好ましい態様において、凝固可能な血小板成長因子濃縮物は血液関連輸血反応を惹起しない。本発明は又、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物を調製する方法及び濃厚血小板を溶媒及び/又は界面活性剤を接触させ、該濃厚血小板と溶媒及び/又は界面活性剤少なくとも5分から6時間の範囲内、約6.0から約9.0の範囲内に維持されたpH、及び2℃から50℃、好ましくは25℃から45℃の範囲の温度でインキューべートし、そして溶媒及び/又は界面活性剤をオイル抽出及び/又はクロマトグラフィ法で除去する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は血小板誘導体の分野に関し、より具体的には血小板から得た成長因子濃縮物に関する。本発明はまた、このような成長因子濃縮物を調製する方法、及び治療及び/又は化粧に応用するための凝固可能な血小板成長因子濃縮物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
組織の創傷治癒と組織再生を支配する機作及び経路は詳細に研究されおり、殊に外傷後に生ずる細胞及び分子現象は、身体の様々な組織で大抵は共有されていることが示されている。共通の機作は従って、初期及び後期の炎症段階、細胞の増殖及び遊走、血管新生、肉芽組織の形成、そして最終的には基質形成と再構築を含む。
【0003】
興味深いことに、この現象のカスケードは架橋フィブリン及びビトロネクチン、フィブロネクチン及びトロンボスポンジンのような種々の蛋白質を特徴とする血餅形成により受傷直後から開始され、そして更に出血を抑え侵入細胞の基質としての役割を果たすと同時に、病原体の侵入に対するバリアを提供する。更に、この初期の血餅は治癒過程後期に必要とされる細胞誘導体の保存場所としての役割を果たす。
【0004】
具体的には、組織修復過程のあらゆる段階は、膜貫通受容体の細胞外ドメインと直接物質的な相互作用を通して細胞機能を調節する多様な因子、サイトカイン及び蛋白質によって、仲介、制御されていると思われる。後半の二次シグナル変換機は、それによって細胞内生態の様々な局面を制御する。
【0005】
組織再生に関する成分全ての役割については、ほんの一部が解明されているにすぎないが、これらの成分の多く、特に血小板誘導体、更に具体的には血小板由来成長因子は潜在的な効果を有することが明らかにされてきている。
【0006】
血小板由来の成長因子は、特に走化性と遊走性を示すことが知られており、そして走化性、細胞増殖、血管新生、細胞外基質沈着及び再構築のような軟組織及び硬組織の治癒と再生、及び細胞増殖の強化とに直接関わっているように見える。
【0007】
更に、血小板誘導体は繊維芽細胞、マクロファージ、内皮細胞、又はリンパ球のようなバイスタンダー細胞によるケモカイン及びサイトカイン産生の刺激のように、密接に関連する生物学的機能にも間接的にも関わっている。
【0008】
血小板に富む製剤、及び血小板のゲル、接着剤及び放出物は、従って、単独又は移植用生体材料との組み合わせでの使用が増加しており、様々な臨床又は治療への応用における血小板誘導体又は血小板成長因子の供給源となっている。
【0009】
このような血小板含有又は血小板由来製剤は、殊に骨の大欠損、複雑な頭蓋形成、及び慢性的な傷、例えば、口腔及び顎顔面外科、整形外科、歯周外科及び形成外科における傷の治療、及び慢性潰瘍、歯科及び口腔インプラント学における骨及び軟組織の再生治療並びに筋骨格疾患治療において、特に有効であることが見出されている。
【0010】
更に、血小板放出物は特に、間葉幹細胞の生体外での増殖と分化、及び軟骨細胞、内皮細胞並びに繊維芽細胞の増殖促進に関わることが示され、それによって軟骨再生と創傷治癒のための治療効果を拡大する可能性が裏付けられる。
【0011】
局所適用のための血小板由来製剤、例えばゲル、接着剤及び放出物は通常、濃厚血小板と血小板顆粒内容を放出させることができる活性剤を混合することにより調製し、血小板の生理学的活性化を再現する。
【0012】
活性化工程は一般に、血液又は血小板採取の間に添加された抗凝固剤の効果に拮抗する外来性トロンビンを直接添加するか又は塩化カルシウム(CaCl2)を使用することにより行われ、そして凝固カスケードと内因性トロンビンの放出を引き起こす。
【0013】
内因性及び外因性のトロンビンは又、フィブリノーゲンの重合とフィブリン由来の生体材料(凝集塊)を誘導し、それによって、血小板内に封入されている、種々の血小板成長因子のような成分を含む多面的な混合物の放出へと続く。
【0014】
ごく最近、レグラネクス(ヒトPDGF−bb)(Janssen Cilag Internat.)のような従来の発現システムでの組み換え血小板成長因子の製造において、新たな方法が開発された。しかし、入手可能な組み換え成長因子は非常に数が限られている。これらの成長因子の分離、同定、クローン化及び発現が困難なことが1つの理由である。更に、成長因子の併用による相乗効果が観察されるので、血小板由来製剤はそれでも尚、単一の組み換え因子の使用に対して補助的な効果をもたらす。
【0015】
現行の血小板含有又は血小板由来製剤の主な欠点の1つは、このような製剤の適当な標準化と定義がないことであり、これが様々な治療効果を有する血小板濃縮製品の特性にばらつきを与える結果となる。
【0016】
実際、血小板濃度から血小板誘導体における成長因子濃度を予測するという単純な仮定は確実ではない。なぜなら、血小板の採取及び/又は活性化に用いられる処理方法は、その技術的特徴として成長因子含有量とその結果の臨床効果に影響を及ぼすからである。その結果得られた製品の不均一性は、例えば、血小板濃度、出発物質中の白血球の存在、種、年齢、及び出発物質の保存条件及び活性化手段と同様に異なるパラメータに依存している。これらの変動が製品間での大きな差を生じ、結果として生物学的特性及び治癒能力のような治療効果の差につながることは明白である。
【0017】
例えば、無傷の血小板を含む液剤/ゲルを直接創傷部位に適用すると、血小板の活性化に伴いフィブリン塊が素早く形成されるが、血小板が完全に溶解しないものもある。このように様々な量の無傷血小板がフィブリン塊の中に封入されているため、それが放出された成長因子の実際の量の測定を困難している。
【0018】
更に血小板ゲル及び/又は成長因子製剤が、血小板活性化につながるトロンビン活性過程により得られると、これらの血小板誘導体は完全にフィブリノーゲンが枯渇し、もはや凝固せず、従って創傷部位に適用する前に外来の天然物か合成製品と混合することが必要になる。
【0019】
更に、治療用の局所血小板製剤は自己を供給源として製造されていることが多い。自己濃厚血小板は手術の数時間又は数日前に患者が提供した血液からポイント・オブ・ケアで応用するために調製されることを意味する。従って、これらの使用は大抵の場合、限られた体積の血小板ゲルを必要とする計画された手術であって、血液を提供できる程度に健康な患者のために用意されるものである。それに加え、手術部位で自己の調製品の製造は、十分に管理されていない状態でしばしば行われるという欠点があり、それゆえ、再現可能な成長因子の放出と臨床効果を確実にするために必要な標準化を欠いている。
【0020】
従って、期待される血小板誘導体製剤、さらに具体的には標準化された状態での血小板成長因子濃縮物であって、それにより個々の特有な生理病理学的状態に適合した製剤の処方を可能にする製剤を提供する方法が強く望まれている。
【0021】
更に、現行の血小板由来製品の別の主要な欠点は、無傷の血球細胞又は重要な血球細胞断片の存在が必須なことであり、血小板由来製品の供給源が異種の場合、それによって提供者の抗原に対する抗体による免疫反応の発現を引き起こす。
【0022】
更に、現行の血小板由来製品の別の主要な欠点は、生物製品の使用に伴う感染リスクが避けられないことである。実際、高度に発展した規制環境と血液採取設備を有する国の最新技術により試験された、単一提供者からのヒト同種異系濃厚血小板は高い安全性を有するにもかかわらず、そしてアフェレーシスやできうる限りの無菌的調製条件を保証する全血からの血小板製剤のように標準的な血液銀行方法であっても、ウイルスや細菌感染はそれでもなお、血小板誘導体の使用で生じやすい。血小板誘導体及び血小板成長因子におけるウイルスの無毒化のために、局所適用の同種異系血小板製剤のウイルスに対する最適な安全マージンを確保することが強く望まれる。
【0023】
最後に、老齢人口と慢性疾患数の増加は近い将来に何らかの対応をせざるを得ない重要且つ高まる健康問題を提起している。様々な治療方法、例えば手術、抗生物質投与、栄養強化、又は組織移植等が既に存在するが、組織創傷治癒と組織再生に使用される、効率よく且つ経済的に魅力ある成分に対する要求が高まりつつある。
【発明の概要】
【0024】
驚くべきことに、本発明者は以下に記載された凝固可能な血小板成長因子濃縮物及びそれらの製造方法を用いてこれらの目標を達成し得ることを見出し、徹底して研究を行った。
【0025】
本発明の方法は、特に簡便で短時間且つ効果的な血小板誘導体製剤、そして更に具体的には出発濃厚血小板又はプールされた濃厚血小板からの凝固可能な血小板成長因子濃縮物を提供できる。更に、本発明の方法は最新技術で開示された他の方法と比べて、全ての、少なくともより重要な血小板成長因子、そしてより具体的には成長因子であるPDGF、TGF−β及びEGFの回収を有意に増加する。
【0026】
更に、本発明の方法は脂質膜の溶解し、従って脂質エンベロープウイルス、そして例えば細菌のようなその他の病原体、原虫のような寄生体の不活化、及び出発濃厚血小板に存在する血漿や血小板脂質の除去を可能にする。
【0027】
本発明の方法は、治療法又は細胞療法に使用するために効率よく標準化されるウイルスが不活化された凝固可能な血小板板成長因子濃縮物の提供を可能にする。
【0028】
定量的又は機能的な血小板減少症を是正するために臨床的に静脈内で使用するときは、1つには細菌汚染のリスクを考慮して、血小板の保存期間は5日又は7日とした。5日又は7日を経過した高単位の血小板は毎年廃棄した。保存期間を超えた保存血小板を使用する血小板由来濃縮物調製のために使用できるので、本発明の方法は最終的に経済的には大変有望である。
【0029】
本発明の目的は治療及び/又は化粧用途の凝固可能な血小板成長因子濃縮物である。好ましい態様において、凝固可能な血小板成長因子濃縮物は成長因子のPDGF、TGF−β、IGF、EGF、CTGF、bFGF及びVEGFを含む。
【0030】
別の好ましい態様において、凝固可能な血小板成長因子濃縮物は血球関連の輸血反応を引き起こさない。
【0031】
別の好ましい態様において、凝固可能な血小板成長因子濃縮物はフィブロネクチン、ビトロネクチン、トロンボスポンジン、フォンビルブランド因子及び凝固因子II、V、VII、VIII、IX、X、及びXIからなる群から選択される少なくとも1つの蛋白質を含む。
【0032】
本発明の別の目的は本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物を調製する方法であり、濃厚血小板と溶媒及び/又は界面活性剤とを接触させ、濃厚血小板と溶媒及び/又は界面活性剤を少なくとも5分から6時間、約6.0から9.0の範囲にpHを保ち、2から50℃の範囲、好ましくは25から45℃の範囲内の温度でインキュベートし、溶媒及び/又は界面活性剤をオイル抽出及び/又はクロマトグラフィ法で除去する工程を含む。
【0033】
好ましい態様において、本発明の方法で使用される溶媒はジ又はトリアルキリンホスフェート、異なるアルキル鎖を有するジ又はトリアルキリンホスフェートであり、そして好ましくはトリ−n−ブチルホスフェート(TnBP)である。
【0034】
好ましい態様において、本発明の方法で使用される界面活性剤は脂肪酸のポリオキシエチレン誘導体、ソルビトール無水物の部分エステル、非イオン性界面活性剤、デオキシコール酸ナトリウム及びスルホベタインからなる群において選択され、そしてより好ましくはTriton X‐45、Triton X‐100、Tween 80及びTween 20からなる群において選択される。
【0035】
好ましい態様において、本発明の方法で使用される各々の溶媒及び/又は界面活性剤の最終濃度は、出発濃厚血小板の体積に対して、0.2から5%の体積、好ましくは0.2から2%の体積の範囲である。本発明の方法の好ましい態様において、出発濃厚血小板は濃厚血小板の体積に基づいて、2%TnBPのみ、あるいは1%TnBP及び1%Triton X‐45と接触させる。
【0036】
更に本発明の好ましい態様において、オイル抽出は医薬品グレードのオイルを用いて行い、血小板濃縮剤と溶媒及び/又は界面活性剤との混合物の重量に基づいて、前記オイルは2から20重量%、又は5から15重量%又は5から10重量%の量で使用されている。
【0037】
別の好ましい態様において、C18シリカ充填剤又はSDR(溶媒‐界面活性剤除去)hyper Dのような、等を含む手クロマトグラフィ法を使用して溶媒及び/又は界面活性剤を除去する。
【0038】
好ましい態様において、本発明の方法は、10から75nmのポアサイズの濾過膜又は同様なウイルス除去膜を使用し、得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物のナノ濾過を行うことからなる追加の工程を含む。
【0039】
別の好ましい態様において、本発明の方法は更に、5000ダルトン又はそれ以下の切断値を有する限外濾過膜を用い、成長因子及び凝固可能なフィブリノーゲンを治療応用又は細胞療法に最適な濃度まで濃縮するように設計された限外濾過工程を含む。
【0040】
好ましい態様において、本発明の方法は出発濃厚血小板を調製する予備工程を含み、前記出発濃厚血小板は、アフェレーシス又は全血から分離したバフィーコートから調製され、そして新鮮で保存期間を超えて保存された液体、又は期保存期間を超えて凍結保存された液剤のどちらかである。
【0041】
本発明の別な目的は、本発明又は本発明の方法で得られる血小板成長因子濃縮物をトロンビンと混合することからなる凝集塊を形成するための方法である。凝集塊を形成するために前記方法で使用されたトロンビンはヒト由来が好ましい。特定の態様では、活性が20IU/mlから1000IU/mlの範囲にあるトロンビンの0.1から1体積と本発明又は本発明の方法で得られる凝固可能な血小板成長因子濃縮物の1体積とを混合する。
【0042】
別の好ましい態様において、例えばC18シリカ充填剤又はSDR(溶媒‐界面活性剤除去)hyper Dを含むような疎水性タイプのクロマトグラフィ法を使用して溶媒及び/又は界面活性剤を除去する。SD及び/又はDEAE型のクラロマトグラフィー(アニオン性/カチオン性クラロマトグラフィー)も溶媒及び/又は界面活性剤を除去するために使用できる。
【0043】
本発明の別な目的は、本発明又は本発明の方法で得られる医薬品又は凝固可能な血小板成長因子濃縮物を含む足場である。
【0044】
本発明の別な目的は、凝血塊形成、又は骨再生又は創傷治癒、又は創傷は生体内あるいは生体外の細胞培養のために、医薬品又は本発明又は本発明の方法で得られる血小板成長因子濃縮物を使用することである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】研究計画:ドナーアフェレーシス血小板(N=8)を2つの小プールに分けた。小プール1はCaCl2による事前の活性化なしに直接1%TnBP−1%Triton X−45で1時間処理した。小プール2は最初に23mM CaCl2及びビーズにより活性化し、血小板ゲルを形成した。1時間のインキュベーション後、凝集塊が除去され放出物が1%TnBP−1%Triton X−45で1時間処理された。(溶媒−界面活性剤)S/D処理された両液は、溶媒及び界面活性剤を除去するためにオイルで抽出(3回)した。活性後、及びS/D処理−オイル抽出後に、出発血小板における成長因子の含有量を測定した。
【図2】出発濃厚血小板(start)、S/D直接処理(1%TnBP−1%Triton X−45)(S/D)後、出発濃厚血小板のCaCl2による活性化(Activated)後及びCaCl2活性化血小板放出物のS/D(1%TnBP−1%Triton X−45)処理(Activated+S/D)における(A)PDGF−AB;(B)TGF−β1;(C)EGF;及び(D)IGFの含有量(ng/ml)。S/D処理は材料及び方法で記載されたように行い、S/D剤除去のために3回のオイル抽出を行った。
【図3】出発濃厚血小板(Start)、出発濃厚血小板のCaCl2による活性化(Act)に続くウシトロンビン活性化(Act−T)後及びS/D処理(1%TnBP−1%Triton X−45)(ActT−S/D)後(Act−T)における(A)PDGF−AB;(B)TGF−β1;及び(C)EGFの含有量(ng/ml)。S/D処理は材料及び方法で記載されたように行い、S/D剤除去のために3回のオイル抽出を行った。
【図4】出発濃厚血小板(レーン1)、本発明に係る溶媒‐界面活性剤により処理された同一濃厚血小板(レーン2)及びCaCl2により活性化された同一濃厚血小板(レーン3)間での蛋白質組成物の比較。4%〜12%のゲル上でSDS−PAGEでサンプルが分離され、そして蛋白質がクマシー染色で着色された。レーンMは蛋白質マーカー(キロダルトンにおけるサイズがゲル左側に表示)。
【図5】S/D処理(1%TnBP−1%Triton X−45)(S/D−PC)、又はCaCl2活性化(Act−PC)、又は任意にCaCl2活性化後S/D処理(Act−PC+S/D)された保存期間を超えた凍結血小板から得られた、それぞれの濃縮物のPDGF−AB(図5a)及びEGF(図5b)組成物の比較。
【図6】S/D処理(1%TnBP−1%Triton X−45)(S/D−PC)、又はCaCl2活性化(Act−PC)された保存期間を超えた凍結血小板から得られた、それぞれの濃縮物のIGF−I(図6a)及びTGF−β1(図6b)組成物の比較。
【図7】種々のクロマトグラフィゲル(CM、SP及びDEAE)上での吸着試験後に上清に残存するPDGF−AB含有量(ng/mLで表示)。各ゲルに対して左から右に示された結果が、それぞれ1mLのゲル当たり3mL、6mL、9mL又は10mLのSD−PCに対応する。
【図8】各種のクロマトグラフィゲル(CM、SP及びDEAE)上でのVEGFの吸着%。
【図9】各種のクロマトグラフィゲル(CM、SP及びDEAE)上でのTGF−β1の吸着%。
【図10】各種のクロマトグラフィゲル(CM、SP及びDEAE)上でのEGFの吸着%。
【図11】SP−セファロース上で1回のオイル抽出後最初の分離/精製工程を含む本発明の方法における特定の態様での模式図。SP−セファロースから得られたPDGF溶出液はPDGF及びVEGFの両方の成長因子を含む。SP−セファロースの結果得られたカラム通過画分は更にDEAE−セファロース上で分離/精製され、TGF−β及びEGF成長因子の両方を含むTGF−β溶出液が調製される。
【図12】出発PC、溶媒‐界面活性剤で処理されたPC、1回のオイル抽出及び遠心分離後溶媒‐界面活性剤で処理されたPC(SD−PC@)、DEAEセファロースFF(DEAE−BKT)上にロード後のカラム通過画分及びDEAEセファロースFF(DEAE−E1M)から回収した溶出液におけるng/mlで表示されたEGF量。
【図13】1回のオイル抽出及び遠心分離後溶媒‐界面活性剤で処理されたPC(SD−PC@)、DEAEセファロースFF(DEAE−BKT)上にロード後のカラム通過画分及びDEAEセファロースFF(DEAE−E1M)から回収した溶出液におけるngで表示されたEGF総量。
【図14】1回のオイル抽出及び遠心分離後溶媒‐界面活性剤で処理されたPC(SD−PC@)、DEAEセファロースFF(DEAE−BKT)上にロード後のカラム通過画分及びDEAEセファロースFF(DEAE−E1M)から回収した溶出液におけるngで表示されたVEGF総量。
【図15】1回のオイル抽出及び遠心分離後溶媒‐界面活性剤で処理されたPC(SD−PC@)、DEAEセファロースFF(DEAE−BKT)上にロード後のカラム通過画分及びDEAEセファロースFF(DEAE−E1M)から回収した溶出液におけるngで表示されたPDGF−AB総量。
【図16】MTSアッセイの結果。(A)10%(v/v)FBS添加(10%FBS)、FBS非添加(w/oFBS)、10%(v/v)活性化PC放出物(ActPC)添加、及びC18(10%C18)、tC18(10%tC18)又はSDR(10%SDR)上でのクロマトグラフィ後の10%(v/v)HPGF混合物添加のD−MEM中;(B)10%(v/v)FBS添加又はC18後の3、5、7.5、10、15、又は20%(v/v)HPGF混合物添加のD−MEM中で培養されたHEK293A線維芽細胞。(C)10%FBS添加、FBS非添加(w/o FBS)、又はC18後の0.1、0.5、1、2、3、5、7、10、15、又は20%(v/v)HPGF混合物添加のD−MEM中で培養されたSIRC線維芽細胞。製造者の使用説明書によるMTS細胞増殖アッセイを用い、5日後に細胞生存率を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0046】
詳細な説明
本発明の目的は治療及び/又は化粧用途のための凝固可能な血小板成長因子濃縮物である。
【0047】
本明細書で使用される用語「凝固可能な」は、本発明に係る又は本発明の方法により得られた血小板成長因子濃縮物はフィブリノーゲンと凝固因子XIIIの両方を含み、そしてそれによって治療への応用が必要なとき、トロンビンのような適当な活性剤と混合すると凝集塊を生成できることを意味する。
【0048】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物のフィブリノーゲン濃度は好ましくは1より高く、より好ましくは1,5より高く、より好ましくは2.5g/Lより高く、そして凝固因子XIIIの濃度は好ましくは0.5より高く、より好ましくは0.75、さらに好ましくは1.0iu/mlより高い。
【0049】
本明細書で使用される用語「化粧的用途」は、人体の様々な表面部分、特に皮膚、髪、爪、唇、外性器、又は歯及び口腔内粘膜との接触を意図する処置を意味し、これらの外観に清潔さ、芳香、保護、変化を与えるか又は良好な状態に保つことを目的とする。
【0050】
本明細書で使用される用語「治療用途のため」は、薬学、免疫学又は代謝効果によってヒト及び/又は動物の疾患を治療し、それらの生理的機能を回復、修正又は変更するための治療又は予防処置を意味する。
【0051】
本発明又は本発明の方法により得られる凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、溶媒及び/又は界面活性剤が存在せず及びウイルスに対して安全という2つの理由で、特にヒト及び/又は動物の疾患を治療し、及び/又はそれらの体表面部分と接することに適する。
「溶媒及び/又は界面活性剤がなく」との表現は、凝固可能な血小板成長因子濃縮物中の溶媒及び/又は界面活性剤のレベルは極めて低く、そして好ましくは検出できないことを意味する。実際、当業者は溶媒及び/又は界面活性剤の濃度の増加は長期毒性と直接関連し、そしてより具体的には神経学的疾患の発症(例えばJ.P.R.Pelletier, S.Transue及びE.L.Snyder、「Pathogen inactivation techniques.Best Practice & Research Clinical Haematology」Vol.19,No.1,pp.205−242,2006に記載)と関連することは既知である。
【0052】
従って、「溶媒がなく」との記載は、本発明において溶媒濃度が100ppm未満であり、好ましくは50ppm未満、好ましくは20ppm未満、好ましくは10ppm未満、5ppm未満、そして更に好ましくは1ppm未満であることを意味する。
【0053】
更に「界面活性剤がなく」との記載は、本発明において界面活性剤濃度が500ppm未満であり、好ましくは250ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、そして更に好ましくは10ppm未満である。
【0054】
「ウイルスに対して安全」との記載は、凝固可能な血小板成長因子濃縮物は実質上感染性ウイルス、より好ましくは脂質含有ウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV、ウエストナイルウイルス(WNV),TTウイルス、デングウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、ヒトヘルペスウイルス−8(HHV−8)、サル泡沫ウイルス、重症急性呼吸器症候群ウイルス(SARSコロナウイルス)及びその他の脂質エンベロープ肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、乳酸脱水素酵素ウイルス、ヘルペス群ウイルス、ラブドウイルス、白血病ウイルス、ミクソウイルス、アルファウイルス、アルボウイルス、パラミクソウイルス、アレナウイルス及びコロナウイルスが存在しないことを意味する。
【0055】
「実質上存在しない」との意味は、凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、その「ウイルスバリデーション試験に関する手引書」(資料CPMP/BWP/268/95)において、欧州医薬品審査庁(EMEA)の欧州医薬品委員会(CPMP)による厳しいウイルス減少工程を特徴とすることが要求されているように、ウイルスの不活性化程度が少なくとも4log10より大きく、そして好ましくは5log10より大きく、更に好ましくは6log10より大きい。従って脂質エンベロープウイルスによる血液感染患者への感染に関与する見込みはない。
【0056】
本発明に係る又は本発明の方法により得られる凝固可能な血小板成長因子濃縮物は更に以下の機能的な成長因子、血小板由来成長因子(PDGF)、A及びB鎖のヘテロダイマー及び/又はA−A及び/又はB−B鎖のヘテロダイマー(PDGF−A、PDGF−AB、PDGF−B)としてのどちらか、TGF−β1及び/又はTGF−β2及び/又は骨形成タンパク質(BMPs)、インシュリン様成長因子(IGF)、上皮成長因子(EGF)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)及び血管内皮成長因子(VEGF)を含む形質転換増殖因子(TGF−β)スーパーファミリーを含む。
【0057】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物におけるPDGF濃度は90ng/mlより高く、好ましくは100より高く、好ましくは120より高く、好ましくは150より高く、好ましくは180より高く、そして好ましくは250ng/mlより高い。
【0058】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物におけるTGF−β1濃度は100ng/mlより高く、好ましくは140より高く、好ましくは160より高く、好ましくは180より高く、そして好ましくは250ng/mlより高い。
【0059】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物におけるIGF濃度は少なくとも出発濃厚血小板におけるものと同じであり、そして好ましくは65ng/mlより高く、好ましくは75より高く、好ましくは80より高く、そして好ましくは100ng/mlより高い。
【0060】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物におけるEGF濃度は好ましくは0.5より高く、好ましくは1より高く、好ましくは1.5より高く、好ましくは2より高く、そして好ましくは2.5ng/mlより高い。
【0061】
特定の態様において、本発明に係るSD処理及びオイル抽出後の凝固可能な血小板成長因子濃縮物におけるVEGF濃度は、0.5ng/mlより高く、好ましくは0.75、好ましくは1、そして好ましくは1.5ng/mlより高い。
【0062】
特定の態様において、本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は低脂質含有量が要求される疾病での使用に適する。本発明で使用されるように、「低脂質含有量が要求される疾病で」との表現は、本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は脂質が枯渇している、即ち、本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物のコレステロール、トリグリセリド、HDL及びLDLのレベルは、出発濃厚血小板のレベル又は本技術分野で既知の血小板活性化により得られた成長因子濃縮剤のレベルより優位に低い。本発明の凝固可能な血小板由来成長因子濃縮物の脂質、特にコレステロール、トリグリセリド、及びLDLにおけるきわめて低いレベルのおかげで、この濃縮剤は特定の疾患、例えば心血管合併症の高いリスクを示す患者又は心臓の高リスク疾患に罹患する患者での使用に適する。何故なら治療を受けた患者に供される脂質量は極めて少ないので、動静脈系内でのプラーク形成の結果続いて起きる血管閉塞のリスクは非常に減少するからである。
【0063】
本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物中のコレステロール量は、100未満が好ましく、より好ましくは50未満、そして更に好ましくは35mg/dl未満である。
【0064】
本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物中のトリグリセリド量は、100未満が好ましく、より好ましくは50未満、そして更に好ましくは30mg/dl未満である。
【0065】
本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物中のHDL量は、30未満が好ましく、より好ましくは15未満、そして更に好ましくは10mg/dl未満である。
【0066】
本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物中のLDL量は、80未満が好ましく、より好ましくは50未満、更に好ましくは20未満、そして更に好ましくは5mg/dl未である。
【0067】
更に、本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物中の極少量及び/又は検出限界以下程度の脂質量は、安定性を増し、血小板成長因子の大規模精製時にはそのプロセスを容易にする。これはアニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフィ分離プロセスを実施するときに、特に有用になるだろう。
【0068】
特定の態様において、本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、血液細胞関連の輸血反応には至らない。
【0069】
「血液細胞関連輸血反応」は、この凝固可能な成長因子濃縮剤は無傷の生細胞(例えば赤血球、血小板及び白血球など)が存在しないので、患者の免疫学的(例えば同種免疫)及び溶血に伴う合併症を含む様々な既知の輸血反応を回避することができる(例えば、Stroncek et Rebulla,”Platelet transfusions,”The Lancet,August 4,2007;vol.370:427−438を参照)ことを意味する。実際、免疫が保たれているレシピエントはしばしばドナーの血液細胞抗原に対する免疫反応を示し、血液細胞と関連する特異的抗原に依存する種々の臨床的帰結をもたらすことになる。最も一般的に関与する抗原は、次のカテゴリから選択される:(1)血小板及び白血球で共有されるHLAsクラスI、(2)ある種の白血球に存在するHLAsクラスII、(3)顆粒球特定的抗原、(4)血小板特異的抗原(例えば、ヒト血小板抗原HPA)、そして(5)赤血球特異的抗原。
【0070】
より具体的には、本発明の調製方法に関して、血液生細胞(赤血球、白血球及び血小板)は溶媒‐界面活性剤処理で破壊/溶解し、それによって患者が外来抗原及び無傷赤血球へ暴露されるリスクを減少し、好ましくは抑制する。従って、本発明の方法は治療を受けた患者から得られた血小板又は同種血小板からの凝固可能な血小板成長因子濃縮物を調製することができる。
【0071】
特定の態様において、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、更にフィブロネクチン、ビトロネクチン、トロンボスポンジンからなる群、及び/又は凝固因子II(プロトロンビン)、V、VII、VIII、IX、X、XI、及びフォンビルブランド因子からなる群において選択される少なくとも1つの蛋白質を含む。
【0072】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物中のフィブロネクチンの濃度は、好ましくは0.2g/Lより高く、そして好ましくは約0.3g/Lである。
【0073】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物中の各凝固因子II、IX、X、VII及び/又はXIの濃度は、好ましくは0.5 iu/mlより高く、そして好ましくは約1iu/mlである。
【0074】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物中の凝固因子VIII及び/又はフォンビルブランド因子の濃度は、好ましくは0.5より高く、好ましくは0.9iu/mlより高く、そして好ましくは約1 iu/mlである。
【0075】
特定の態様において、本発明の方法によって得られた凝凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、更にIgG、IgM及び/又はIgA.のようなイムノグロビンを更に含む。
【0076】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物中のイムノグロビンIgGの濃度は、好ましくは5g/Lより高く、そして好ましくは約10g/Lである。
【0077】
別の態様において、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、更にCCNファミリーメンバー、結合織活性化プロテイン−3(CTAP−3)、PF4、血小板由来血管新生因(PDAF)、内皮細胞成長因子、早期妊娠因子(EPF)、上皮成長因子(EGI)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、アンジオポエチン様−6(ANGPTL6)、IGFBP−3、エストロゲン受容体関連蛋白質、繊維芽細胞由来内皮細胞成長因子(f−ECGF)、肝細胞成長因子(HGF)、ヒスタミン放出因子、ヒトコラゲナーゼ阻害剤、血小板殺菌蛋白−1(PMP−1)、トロンビン誘導血小板殺菌蛋白−1(t−PMP)、トロンボシジン−1(TC1)及びトロンボシジン−2(TC2)からなる群から選択される少なくとも1つの成長因子を含む。
【0078】
別の態様において、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、更にセロトニン、カテプシン、アルブミン、血小板塩基性タンパク質−PBP(CXCL7)、好中球活性化タンパク質−2及び−4(NAP−2;4)、ソマトスタチン(SST)、RANTES、CTAP−3、胎盤蛋白質14(PP14)、SCUBEl、アネクシン11、ヒートショックプロテイン27(HSP27)、及びヒートショックプロテイン60(HSP60)からなる群から選択される少なくとも1つの蛋白質を含む。
【0079】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物中のアルブミン濃度は、好ましくは30g/Lより高い。
【0080】
別の態様において、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、更にコラゲナーゼ、スーパーオキシドジスミューターゼ(SOD)、ヘパリナーゼ、メタロプロテアーゼMMP−1、−2、−9、−13、自己ERK(ext.Cell.reg.kinase)、自己分泌及び傍分泌プロテインC(PC)、及び微量の酵素アルドラーゼ、カルボキシペチダーゼ、酸性ホスファターゼ、アリールスルファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−グリセロホスファターゼ、α/β−グルコシダーゼ、α/β−フコシダーゼ、α−マンノシダーゼ、及びα−アラビアラビノシダーゼからなる群から選択される少なくとも1つの酵素を含む。
【0081】
別の態様において、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、更にヒスタミン、ADAMTS−13、α1−α2アンチトリプシン、α2−アンチプラスミン、α2−マクログロブリン、C1-INH、誘導BMP−2、−6、−7(TGF−βスーパーファミリー)、ECM再構築因子(誘導MMP、TNF−α、エラスターゼなど)、自己分泌及び傍分泌リゾホスファチジン酸(LPA)、HMGBl(アンフィレギュリン)、ATP、ADP、GPT、GDP、Ca2+、Mg2+及び/又はZn2+を含む。
【0082】
本発明の別な目的は、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物を含む医薬品である。
【0083】
「医薬品」は、血小板ゲル、血小板接着剤、成長因子濃縮フィブリン接着剤及び/又はシーラント、人工足場を意味する。
【0084】
本発明の別な目的は、培地中での本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物の使用であり、この培地は繊維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、ケラチノサイト、幹細胞及び/又は移植細胞の生体内又は生体外での培養に適する。本発明の別な目的は、生体内又は生体外で繊維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、ケラチノサイト、幹細胞及び/又は移植細胞を培養するのに適する培地で、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物を含む。
【0085】
本発明の別な目的は、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物を調製する方法であり、該方法は出発濃厚血小板を溶媒及び/又は界面活性剤を接触させ、出発濃厚血小板を溶媒及び/又は界面活性剤と少なくとも5分から6時間、約6.0から約9.0の範囲で維持されたpH及び2℃から50℃の範囲内、好ましくは25℃から45℃の範囲内でインキュベートし、そしてオイル抽出及び/又はクロマトグラフィ法により溶媒及び/又は界面活性剤を除去する工程を含む。
【0086】
好ましい態様において、実施したインキュベーション時間は、例えばpH7.0から7.5(出発血小板が新鮮血小板の場合)又はpH6.8から8.2(出発血小板が保存期間を超えた/又は凍結血小板の場合)の範囲の生理的pHで2から4時間の範囲である。好ましいインキュベーション時間は、約31℃である。
【0087】
本発明の方法において使用するのに好適な溶媒は、ジ−又はトリアルキルホスフェート、例えばトリ−(n−ブチル)ホスフェート、トリ−(t−ブチル)ホスフェート、トリ−(n−ヘキシル)ホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリ−(n−デシル)ホスフェート、ジ−(n−ブチル)ホスフェート、ジ−(t−ブチル)ホスフェート、ジ−(n−ヘキシル)ホスフェート、ジ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ−(n−デシル)ホスフェート及び異なるアルキル鎖を有するジアルキルホスフェートである。異なるアルキル鎖を有するジ又はトリアルキルホスフェートとして例えば、エチルジ−(n−ブチル)ホスフェートを用いることができる。特に好ましいトリアルキルホスフェートはトリ−(n−ブチル)ホスフェート(TnBP)である。
【0088】
本発明の方法において使用するのに適する溶界面活性剤は、脂肪酸のポリオキシエチレン誘導体、ソルビトール無水物の部分エステル、例えば「ポリソルベート80」としても知られている、「Tween80」という名前で商品化された製品、「Tween20」及び非イオン性界面活性剤例えば「TritonX−100」又は「Triton X−45」という名前で売られている.オキシエチレン化アルキルフェノールを含む。
【0089】
更に好ましい界面活性剤はデオキシコール酸ナトリウム及びN−ドデシル−N,N−ジメチル−2−アンモニウム−l−エタンスルホネートのようなスルホベタイである。特に好ましい界面活性剤は「Triton X−45」、「Triton X−100」、「Tween80」及び「Tween20」である。
【0090】
本発明の特定の態様において、出発濃厚血小板は、溶媒及び界面活性剤、好ましくはTnBPとTriton X−45でインキュベートされる。
【0091】
好ましくは、溶媒又は界面活性剤度の最終濃度、又は溶媒及び界面活性剤の各々の最終濃度は、濃厚血小板の体積に対して0.2から5%の体積、好ましくは0.2から2%の体積の範囲である。好ましい態様では、出発濃厚血小板を2%TnBPとインキュベートする。別の好ましい態様では、出発濃厚血小板は、1%TnBP及び1%Triton X−45でインキュベートする。
【0092】
溶媒及び/又は界面活性剤は、医薬品グレードのオイルを用いたオイル抽出及及び/又はカラムクロマトグラフィのような別の方法により生体液中から抽出されるので、残りの濃縮物中に溶媒及び/又は界面活性剤が枯渇する。
【0093】
医薬品グレードのオイルは、天然オイルでもよく、例えば植物又は動物由来、又は同様な構造の合成化合物でもよい。適当な天然オイルとして、キャスターオイル(ヒマシ油としても知られる)、大豆、ひまわり油、綿実油が挙げられる。好ましい合成化合物は、合成トリグリセリドである。適当な合成トリグリセリドの例はトリオレイン、トリステアリン、トリパルミチン、トリミリスチン及びそれらの組み合わせである。
【0094】
医薬品グレードのオイルは、脂溶性のプロセス薬品の少なくとも80%を抽出できる量であり、血小板濃縮剤溶解物の重量に基づいて、オイルは2から20重量%、好ましくは5から15重量%、そして更に好ましくは5から10重量%で使用される。オイル抽出は、特にオイル濃度によって1回、好ましくは2回、そして更に好ましくは3回行ってもよい。
【0095】
溶媒及び/又は界面活性剤は、カラムクロマトグラフィにより濃厚血小板溶解物から除去してもよい。カラムクロマトグラフィは、オイル抽出に続いて行ってもよく、あるいは溶媒及び/又は界面活性剤処理後に直接行ってもよい。
【0096】
好適なクロマトグラフィカラムは、逆相(疎水性相互作用)マトリックス、又は例えばイオン交換(アニオン及びカチオン)マトリックス及び親和性(免疫親和性又は固定化ヘパリンのような)マトリックスのような蛋白吸着マトリックス、又はサイズ排除マトリックスを含む。好ましい逆相マトリックスは、C18シリカ充填剤、SDR(溶媒−界面活性剤除去)hyperD(Pall corporation)、ポリスチレンソーベント(Variant)及びAmberlyte(Rohm)である。C18が一般に工業規模のクロマトグラフィに推奨されたとしても、tC18シリカ充填剤も考慮される。これらの吸着材は、溶媒及び界面活性剤を結合するのに使用される一方、成長因子はカラム通過画分に溶出する。好ましいアニオン交換マトリックスは、精製される成長因子によるが、アニオン交換体ゲルであり、例えばDEAE−Sephadex A−50、DEAE−セファロースFF、Q−セファロース、DEAE−Toyopearl 650M、DEAE−Hyper Dである。好ましいカチオン交換マトリックスは、精製される成長因子によるが、カチオン交換体ゲル、例えばSP−セファロース及びCM−セファロース(両方ともFFグレード以下で入手可能)であり、SPが好ましい。これらの吸着材は、成長因子を結合するのに使用される一方、溶媒及び界面活性剤はカラム通過画分において溶出する。
【0097】
好ましい態様において、アニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフィは、オイル抽出後に行われる。選択されたクロマトグラフィによって、このような溶媒及び/又は界面活性剤の除去工程は、成長因子の分離も強化することが可能である。この点において、アニオン性クロマトグラフィ(例えばDEAE)は、好んでTGF−β1及びEGFを結合する一方カチオン性クロマトグラフィ(例えばSP)は、好んでPDGF(AB、AA及びBB)及びVEGFを結合するだろう。従って、アニオン性及びカチオン性クロマトグラフィの連続使用により、特異的な成長因子(類)の濃厚画分の調製が可能になる。このような態様は図11に開示されている。
【0098】
好ましい態様において、オイル抽出後及び/又は疎水性クロマトグラフィ後にアニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフィを行う場合、当業者の一般常識に従って溶出条件を決定する。溶出は0.15Mから2M塩化ナトリウムを含有する食塩水を用いて行う。溶出に用いる食塩水は、塩化ナトリウム及び0.15Mから2Mのアルカリ又はアルカリ土類金属の塩(例えばリン酸塩又はクエン酸塩)の混合物も含んでもよい。
【0099】
更に、アニオン性クロマトグラフィを行う時、pHは興味のある成長因子(類)の等電点より高くなるように選択する。逆にカチオン性クロマトグラフィを行う時、pHは興味のある成長因子(類)の等電点より低くなるように選択する。興味のある成長因子の安定性及び生理的機能に対応するpH、例えば成長因子の変性が避けられるように実質的には中性のpHでのクロマトグラフィによる分離/精製が行えるように、クロマトグラフィの条件を選択することが好ましい。
【0100】
あるいは、オイル抽出及び/又は疎水性クロマトグラフィ後、アニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフィを行う時、当業者の一般常識に従って溶出条件を設定する。溶出は、成長因子のpHiにより、成長因子を樹脂上への結合させるために使用したバッファとは異なるpHのバッファを用いて行ってもよい。成長因子の安定性と生理的機能を維持する条件下で、溶出に使用する溶液のpH範囲は4から10、好ましくは5から9でもよい。
【0101】
好ましい態様において、オイル抽出及び/又はクロマトグラフィ後の溶媒濃度は、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは20ppm未満、より好ましくは10ppm未満、好ましくは5ppm未満、そして更に好ましくは1ppm未満である。
【0102】
好ましい態様において、オイル抽出及び/又はクロマトグラフィ後の界面活性剤濃度は、500ppm未満、好ましくは250ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、そして更に好ましくは10ppm未満である。
【0103】
オイル抽出及び/又はクロマトグラフィによる溶媒/界面活性剤の除去に続いて、パルボウイルスB19又は、場合によってはA型肝炎ウイルス(HAV)のような非エンベロープウイルスを不活性化又は除去するために、例えばナノろ過により、より具体的には75−nm、35−nm、20−nm、15−nm、又は10−nmのポアサイズのろ過膜の使用により、追加の工程を加えてもよい。
【0104】
別の好ましい態様では、細胞破片の除去ためのオイル抽出及び/又はクロマトグラフィの後に、遠心分離の工程を行う。好ましくは、遠心分離工程は800から20000xgで10から30分間、そして好ましくは10000xgで15分間行う。
【0105】
別の特定の態様では、細胞破片を除去するためにオイル抽出及び/又はクロマトグラフィの後に、ろ過による清澄化を行う。好ましくは、ろ過工程は1μmから0.2μmのグラデーションを有するフィルタで行い、それによって細菌の除去も可能である。
【0106】
特定の態様では、本発明の方法において出発材料として使用される濃厚血小板は単一又はプールされた標準濃厚血小板、例えば輸血用に調製された濃厚血小板に相当する。濃厚血小板は全血のバフィーコート由来でもよい。バフィーコート由来の濃厚血小板1単位は、通常30から50mlに相当する。バフィーコート由来濃厚血小板は単一単位として又は単一単位をプールしたもの、例えば4から6の単一単位をプールしたものに相当する治療用単位の形のどちらかを出発物質として使用してもよい(血液成分の調製、使用および品質保証に関する指針 第13版 欧州評議会編(2007)に記載)。
【0107】
血小板濃縮剤はアフェレーシス、サイタフェレーシス又は血小板アフェレーシスの標準操作(例えば、血液成分の調製、使用および品質保証に関する指針 第13版 欧州評議会編(2007)参照)により得てもよく、そしてMCS+(Haemonetics)、Trima Accell又はCOBE Spectra(Gambro)又はAmicus (Baxter)を用いて得てもよい。アフェレーシス操作は、バフィーコート単離操作で得る時と比べて、一般的にドナー当たりの生産量が大きくなる(濃厚血小板300mlに相当する)。
【0108】
好ましい態様において、本発明の方法は、出発濃厚血小板を調製することからなる予備工程を含む。好ましくは、出発濃厚血小板を調製する方法は、アフェレーシスや全血献血からの血小板調製のような標準的な血液銀行による方法、及び血液細胞保存装置/分離装置又は卓上装置を用いるようなポイント・オブ・ケア手順を含むが、それらに限定されない。
【0109】
本発明の方法において出発材料として使用される濃厚血小板は、例えば採取後5又は7日未満の新鮮なもの、例えば採取後5又は7日を越えて保存期間を超えたもの、又は保存期間を超え且つ−20℃またはそれ以下で数週間凍結したものでもよい。
【0110】
特定の態様において、本発明の方法において出発材料として使用される濃厚血小板は更に白血球及び/又は赤血球を含んでもよい。出発濃厚血小板は従って、分化しているが活性化していない数種類の白血球、例えばリンパ球、好中球性顆粒球、及び単球を含んでもよい。好中球と単球は特にミエロペルオキシダーゼを含む顆粒に富み、これは塩素の酸化を触媒し、次亜塩素酸とその他の反応性酸素誘導体を生成し、微生物と真菌に毒性のある強力な殺菌性酸化剤として作用する。
【0111】
それゆえ、出発濃厚血小板が分化しているが活性化していない数種類の白血球を含んでいる時、本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、更に白血球由来の抗菌成分を含む。
【0112】
好ましい態様において、白血球に含有されるプロテアーゼ及び酸性ヒドロラーゼの炎症促進効果を避けることができるように、好ましくは白血球除去により出発材料として使用された濃厚血小板から白血球を除去する。
【0113】
健康人の正常な血小板数は、通常、血液1mm3当たり150000から400000個、即ち、150から400x109血小板/Lの範囲にある。この「正常」な血小板数は健康人の約95%に見られ、一方残りの5%は統計学上、異常な血小板数(非常に低いか高い)を有するのかもしれない。血小板がアフェレーシスにより採取されると、血小板数は一般に250mlのバッグの1ml当たり1.2x109血小板より多く、バッグ(単位)当たり約3x1011血小板よりも多い血小板数に相当する。好ましい態様では、出発濃厚血小板の血小板数は、通常の血中で見られるよりも3から10倍多い。
【0114】
本発明の別の目的は、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物と、トロンビン、又は活性化FVII、又はウシ又はヒトトロンボプラスチンのような凝固カスケードの他の活性化因子とを混合することからなる凝集塊を形成する方法である。
【0115】
本発明に係る又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物で凝集塊を形成する前に、抗線維素溶解薬を本発明又は本発明に係る方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物に添加し、線溶系の天然蛋白分解酵素(例えばプラスミン)によるフィブリン凝集塊の分解を抑制又は遅らせてもよい。
【0116】
特定の態様において、前記抗線維素溶解薬はアプロチニンであるが、トラネキサム酸又はイプシロンアミノカプロン酸も濃度>10mg/mlで、アプロチニンの代替物として使用してもよい。アプロチニンは通常、液体の形で3000KIU又はそれ以下の濃度で提供される。アプロチニンの最終濃度は、通常、凝固可能な血小板成長因子濃縮物とトロンビン成分とを混合した後の出発液体の半分になる。
【0117】
本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は更に、例えばコラーゲン、キトサン、セラミクスによって作られた人工足場、又は血漿由来フィブリン接着剤又はフィブリンシーラントと混合されてもよい。
【0118】
トロンビンと混合する前に、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物に追加の化合物を加えてもよい。このような追加の化合物は化学療法剤、抗生物質及び/又はホルモンを含むが、これに限定されない。
【0119】
本発明に係る又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物とトロンビンを一緒に混合することにより、凝固カスケードの最終工程を再現し、凝集塊又は不溶性フィブリンを形成するためのフィブリノーゲンの段階的な重合化へと進む。
【0120】
本発明で使用される用語「トロンビン」はあらゆる由来のものから得たトロンビンに関し、人の治療に適用する場合は、好ましくはウシ由来、より好ましくはヒト由来に向けたものである。
【0121】
ヒトCaCl2活性化血漿又はバトロキソビン(bothrops atrox moogendiの蛇毒由来の別のフィブリノーゲン凝固プロテアーゼ)、活性化FVII、ヒト又はウシトロンボプラスチンはトロンビンの代替物として使用されてもよい。好ましい態様において、0.1から1体積のトロンビンを本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物1体積に添加してもよい。
【0122】
好ましい態様において、トロンビン濃度は20IU/mlから1000IU/mlの範囲にある。さらに好ましくは、トロンビンの最終濃度はフィブリノーゲンを可溶化し、それから安定(不溶化)なフィブリンとするための連続的且つ速い重合化を保証する約500IU/mlか、あるいはより低濃度(特別な外科手術において遅い重合化が好ましい時には約4から25IU/ml)のどちらかである。
【0123】
別の好ましい態様において、トロンビンは、金属又はガラスビーズのような表面活性化剤存在下で10〜50mMCaC12を用い、高フィブリノーゲン成長因子濃縮剤の自動活性(auto−activation)により得られる。
【0124】
2つの成分、即ち、本発明に係る又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物及びトロンビンは、スプレー又は吸収性スポンジによる内視鏡的送達装置の支援の存在下又は非存在下、デュアルシリンジシステムによって連続的又は同時に修復部位に適用できる(Radosevich他,”Fibrin sealant:Scientific Rationale, Production Methods, Properties, and Current clinical use”,Vox Sanguinis,1997,72:133−143及びMarx G,”Evolution of fibrin glue applicators”,Transfus Med Rev,2003;17(4):287−98に記載された適用方法はここに参照することにより、本文に組み込まれる)。
【0125】
本発明の別の目的は、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物を、治療への応用及び凝集塊の形成又は体内又は体外での細胞培養に使用することである。体内又は体外での細胞培養に使用する場合、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は培地の体積に対し、1%から30%、好ましくは2%から20%、そして更に好ましくは3%から10%の範囲で培地中に存在する。
【0126】
濃縮物/トロンビン混合物の主要な治療用途として、口腔外科、インプラント学、整形及び口腔外科、形成外科、軟及び硬組織の治癒と再構築、心血管、胸部、又は消化管手術、神経外科、一般外科/外傷学、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、抗凝固療法を受けている患者の手術又は凝固障害のある患者を挙げられるが、これに限定されない。
【0127】
本発明の上記及びその他の目的、特徴及び利点は以下の記載及び添付の図面に対する説明により、更に明らかとなるだろう。
【実施例】
【0128】
I−材料と方法
I.l−アフェレーシス血小板採集
ボランティアドナーに対するインフォームドコンセントの後で、出発濃厚血小板(PCs)はMCS+ multiple component system(Haemonetics,Braintree,USA)を用いて採取された。静脈カテーテルにより全血を間欠流及び抗凝固剤(血液10ml当たり1mlの抗凝固クエン酸デキストロース溶液処方A)用いて採血した。多血小板血漿(PRP)が遠心分離により自動的に他の血液成分から分離され、滅菌された使い捨てバッグに採取され、赤血球と血漿はドナーに戻された。PRPの所定の体積(約300ml)が得られるまで、この手順が繰り返された。出発濃厚血小板は採取後24時間以内に下記に述べるように処理を行った。
【0129】
I.2−血球数
血小板、白血球(WBC)、及び赤血球数はセルカウンター(ABC Vet Automatic Blood Counter,ABX Diagnostics,France)を用いて測定した。
【0130】
I.3−出発濃厚血小板の処理
a−研究計画:
出発濃厚血小板は図1の研究計画に従って処理された。
簡単に説明すると、同一ドナーからの出発濃厚血小板(300ml)を穏やかに混合し、等量(150ml)の2つのサブプールに分けた。サブプール1は事前の活性化を行わず、直接S/D処理をした。サブプール2は下記のような血小板ゲルを形成する条件で、23mMCaCl2及びビーズの存在下で活性化した。その結果得られた放出物がピぺッティングで注意深く回収され(血小板ゲルでの30mlの損失により平均体積120mlに相当)、S/D処理後オイル抽出された。出発濃厚血小板、非活性化血小板サブプール1のS/D処理後、血小板サブプール2の活性化後、及び活性化サブプール2のS/D処理後のサンプルが採取された。
【0131】
b−血小板活性化:
ビーズの存在下、血小板濃縮剤(サブプール2)に1M CaCl2(Sigma;Batch 056k0688)を添加して最終濃度23mMとして、活性化した。混合物を凝集塊が形成されるまで穏やかに回転混合した。これは通常5から8分以内に生ずる。混合物を更に60分間活性化させた。これは、これらの実験条件下で、好ましい最適な血小板由来成長因子放出が見られた時間であった。形成されたビーズ/フィブリン凝集塊のデカンテーションにより上清が分離された。回収された上清の平均体積は出発濃厚血小板の体積の約80%であった。上清は更にS/D処理された。
【0132】
c−S/D処理:
便宜上、非活性化血小板サブプール1及び活性化サブプール2のS/D処理は、EP 1685852に記載されたようにバッグ内で行われた。簡単に説明すると、TnBP(Merck KGaA,Darmstadt,Germany)及びTriton X−45(Sigma,Missouri,USA.)の50%/50%混合物を絶え間なく混合して各々のプールへ15分かけて加え、最終濃度(v/v)が1%TnBP及び1%Triton X−45となるようにした。添加終了後、S/D−血小板サブプール混合物を1分間激しく振盪した。それから、処理バッグを完全に水槽に浸漬してS/D血小板混合物を25±0.5℃まで加温し、それから1時間穏やかに連続撹拌した。S/D処理の終了時に、大豆油(Sigma,Missouri,USA)をS/D−血小板サブプールへ最終濃度10%(v/v)となるように添加した。バッグを1分間激しく振盪し、それから回転シェーカー上に15分間置いた。血小板サブプール(下層)がデカンテンーション(20分)によりオイル(上層)から除去され、第二のバッグに引力により移され、3回のオイル抽出が行われた。このオイル抽出操作はTnBP及びTriton X−45をそれぞれ、10及び100ppm未満まで減少させた。
【0133】
I.4−遠心分離及び溶解剤の種類による影響
血小板由来成長因子放出に対する血小板内容物及びS/D剤の種類の影響を調べるために、以下のような実験を行った:濃厚血小板(300ml)が150mlの2つのサブプールに小分けされた。血小板をペレットにするために、1つのサブプールが高速(10000xg)で遠心分離され、上清が1%TnBP−1%Triton X−45で処理された。遠心分離処理をしなかった、他方のサブプールは更に、75mlの2つのサブプールに小分けし、1つは1%TnBP−1%Triton X−45で処理し、他方は2%TnBPで処理した。S/D処理(インキュベーションとオイル抽出)は上記のように行った。
【0134】
I.5−ウシトロンビン活性化実験
CaCl2活性化が血小板を完全に活性化しないという仮説を除外するために、2つの濃厚血小板(14ml)を0.23M CaCl2及びビーズの存在下で、上記のように活性化した。
【0135】
室温で緩やかに60分間回転撹拌したのち、濃厚血小板放出物の10mlを回収し、1000国際単位(IU)/mlの局所ウシトロンビン(Thrombin−JMI,52604−7102−1,Jones Pharma,Saint−Louis,MO)0.5mlを添加して、最終濃度約48IU/ml.を得た。混合物は室温で60分間緩やかに回転振盪した。それから、1%TnBP−1%Triton X−45で処理しオイル抽出した。並列実験では、数秒以内で生じたゲル形成の後、2つの濃厚血小板サンプル(10ml)を同一のウシトロンビン0.5mlで直接活性化し緩やかに60分間回混合した。実験過程の色々な段階でサンプルを採取し、10000xgで遠心分離し血小板由来成長因子の解析まで−80℃で凍結した。
【0136】
I.6−成長因子アッセイ
手順の各工程で1mlのサンプルを採取した。血小板及び細胞破片がペレットになるまで10000xgで15分間遠心分離した(Microfuge(登録商標)22R,BeckmanCoulter,Fullerton,CA)し、血小板由来成長因子測定のための無細胞上清を得た。並列実験も800xgで15分間遠心分離した。上清はすぐに−80℃で凍結した。
【0137】
サンプルは37℃で解解し、感度及び特異性の高い市販の免疫アッセイを用いて1時間以内に解析した。標準とサンプルはデュプリケートでアッセイされ、平均値が計算された。結果はサンプルに適用した希釈係数を掛けた。
【0138】
α−PDGF−AB
Quantikine ELISAキット(#.DHD00B,R&D Systems,Minneapolis,MN)を用いて、PDGF−ABをアッセイした。サンプルをCalibrator Diluent (RD6−11)により100倍希釈した。血小板を2時間インキュベートし、洗浄し、そしてPDGF−ABに対する酵素抱合抗体と室温で更に3時間インキュベートした。ウェルを洗浄バファーで洗浄し、基質液を室温で20〜30分間添加した。ウェルを光から保護された。停止液が各ウェルに添加され、マイクロタイタープレートリーダーを用いて450nmの吸収を測定した。最小検出濃度は1.7pg/mlであった。
【0139】
b−TGF−β1
TGF−β1はQuantikine ELISAキット(DB100B,R&D Systems)を用いて測定された。サンプルはCalibrator Diluent (RD5−26)で100倍に希釈された。TGF−β1標準液(890207)の希釈系列は、TGF−β−受容体IIでコートした96−穴マイクロタイタープレート中に100μlの容量で調製された。TGF−β1の解析前に、酸による活性及び中和が行われ、潜在的なTGF−β1を免疫反応型に活性化した。この目的のために、0.5mlのサンプルと1N HClの0.1mlとを混合して室温で10分間インキュベートし、1.2N NaOH/0.5M HEPES(N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N0−[2−エタンスルホン酸])、Sigma(H−7523)の0.1mlを添加して中和し、遠心分離した。上清画分をアッセイしてTGF−β1の総含有量を求めた。アリコート(50μl)をマイクロタイタープレートにデュプリケートで加えてカバーし、2時間室温でインキュベートした。それからウェルを洗浄し、TGF−b1に対する酵素抱合ポリクローナル抗体を添加して室温で1.5時間インキュベーションした。測定は上記のように行った。TGF−β1の検出限界は4.61pg/mlであった。
【0140】
c−EGF
EGFはQuantikine ELISAキット(番号DEG00,R&D Systems,Minneapolis,MN)を用いて測定された。サンプルはCalibrator Diluent(RD6N)で20倍希釈された。標準、コントロール、又はサンプル200μlをウェルに添加した。プレートは2時間室温でインキュベートした。ウェルを吸引し洗浄バファーを満たして洗浄した。EGF抱合体を各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。ウェルを洗浄バファーで洗浄し、基質液(200μl)を各ウェルに添加した。混合物を室温で20分間インキュベートし、光から保護した。停止液(50μl)を各ウェルに加えた。450nmに設定されたマイクロプレートリーダー(VersaMax(商標)microplate reader,Molecular Devices,USA)を用い、各ウェルの光学密度を30分以内に測定した。最小検出濃度は0.7g/mlであった。
【0141】
d−IGF−1
IGF−1はQuantikine ELISAキット(DG100,R&D Systems製)を用いて定量された。サンプルはCalibrator Diluent (RD5−22)で100倍に希釈した。最小検出濃度は0.007から0.056ng/mlの範囲にあり、平均MDDはメーカーの報告のように0.026ng/mlであった。各ウェルにアッセイ希釈剤(RD 1−53)150μlを添加し、続いて標準液(890775)50μlを添加した。プレートを粘着片で覆い、2〜8℃で2時間インキュベートした。ウェルを3回洗浄し、それから酵素抱合IGF−1と2〜8℃で1時間インキュベートした。測定は上記のように行った。
1.7−統計学的解析
全ての実験に対するデータは平均値、標準偏差、及び最小値と最大値として記録される。統計学的比較は両側t検定で行った。0.05未満のp値を用いて、操作の様々な段階での調製血小板間での平均PGF濃度に対する有意差を評価した。値は有意差なし(NS;<0.05)として示され、<0.01又は0.001であった。0.005に近づいたときの正確なp値を示す。
【0142】
I.8−PC、S/D−PC及びAct−P比較のためのサンプル調製と分離
出発濃厚血小板(PC)に対応する各サンプル、溶媒/界面活性剤(1%TnBP及び1%Triton X−45)で処理された出発濃厚血小板(S/D−PC)、及びCaCl2で活性化された出発濃厚血小板(Act−PC)は、タンパク含有量を比較するためにSDS−PAGEで分離された。
【0143】
各サンプルの20μlとNuPAGE LDS サンプルバッファ(4X)(Invitrogen)、2μlのNuPAGE還元剤(10X)(Invitrogen)及び脱イオン水とを混合し、最終体積を20μl(活性化濃厚血小板に対応するサンプルでは21μl)とする。その結果得られた混合物は、それから10分間70℃で加熱され、4〜12%ポリアクリルアミド勾配ゲルを用いてSDS−PAGEを行った(NuPAGE Bis−Tris,Invitrogen)。
【0144】
タンパク質の分離は200Vの定電圧、150mA/gelの予想電流で35分間行った。得られたゲルはクマシーブルーR−250で染色された。タンパクマーカーであるMark12未着色スタンダート(Invitrogen)はサンプル中に含まれるタンパクの分子量を測定するために使用された。Mark12マーカーをMESでバッファされたNuPAGE novex 4−12% Bis−Trisゲル(Invitrogen)にロードし、分離後クマシーブルーR−250で染色した。対応する結果を図4に示す。
【0145】
溶媒/界面活性剤法で処理された出発濃厚血小板のタンパクの特徴は非処理の出発血小板濃縮剤の特徴と大きな違いはないように見える。一方、活性化濃厚血小板のタンパクの特徴は40から70kDa領域のバンドの欠如から明らかなように非処理の開始時血小板濃縮剤の特徴は著しく異なり、これらのバンドはそれぞれ、フィブリノーゲンの63.5、56及び47kDaのアルファ、ベータ及びガンマサブユニットに一致する。
【0146】
I.9−成長因子活性のアッセイ
血小板のS/D処理(l%TnBP−1%Triton X−45)で得られた成長因子がその活性を維持できたかを知るために、生体外での細胞培養による研究をヒト骨芽細胞様MG63細胞株を用いて行った。S/D−PC又はAct−PCのどちらからから得られた成長因子濃縮物で処理したMG−63細胞の反応性を細胞形態と生存能力を調べることにより評価した。
【0147】
105から106の細胞を、2mMグルタミンを添加した90%イーグル最少必須培地(MEM)、1.5g/Lの重炭酸ナトリウムで調整したイーグルBSS(平衡塩類溶)、0.1mMの非必須アミノ酸、1.0mMピルビン酸ナトリウム、10%加熱不活性化ウシ胎仔血清、及び任意に5%のS/D−PC又はAct−PC成長因子濃縮物添加した培地を用い、35−mmのペトリ皿で培養した。37℃の5%CO2及び95%エアを含む加湿雰囲気中でインキュベーション後、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS,Gibco,UK)で洗浄し、トリプシン−EDTA溶液(0.25%トリプシン)で37℃、5分間剥離し、遠心分離し更に細胞テスト用に懸濁した。
【0148】
3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイで、生存/死滅細胞を検出(生存率解析)した。細胞形態を調べるために電子顕微鏡での観察も行った。
【0149】
3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)アッセイで、細胞増殖をモニタリングした。簡単に説明すると、500μlのMTS(Celliter 96 Promega Corp.、USA)を各サンプルに添加した。37℃、60分間インキュベーションした後、マイクロプレートリーダーを用いて490nmの吸光度で測定した。
【0150】
I.10−ウイルス不活性化アッセイ
出発濃厚血小板の溶解に使用した溶媒及び/又は界面活性剤のウイルス検証試験はEMEA及びWHOの推奨するような国際ガイドラインに従って小規模実験により行った。50mlの出発濃厚血小板を関連ウイルス(HIV;ヒト免疫不全ウイルス)及び3つのモデルウイルス、牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、これはC型肝炎ウイルスのモデルであり、仮性狂犬病ウイルス(PRV)、これは別の適当な生体外モデルウイルスがないとHBVのモデルとして使用されることがある、そして水疱性口内炎ウイルス(VSV)の懸濁原液に、独立して添加した。これらのウイルスのより高力価の懸濁原液を出発濃厚血小板に加え、そして1%TnBP及び1%triton X−45の混合物を添加した。ウイルス感染力は溶媒‐界面活性剤処理の前及び処理中の異なる時点で評価され、ウイルス感染力動態を測定した。感染力及びTCID50/ml値で表されるデータを測定するために、生体外での細胞培養を行った。得られたデータから、S/D処理により、処理(最初に評価した時点)から5分以内で残存するウイルス感染力が見いだされなかったので、前記4ウイルスが完全に不活化されることが示された。得られた減少係数は、HIVは>5.6log10、BVDVは>6.6log10、PRVは>6.4log10、そしてVSV>7.0log10であった。したがって、溶媒及び/又は界面活性剤の溶解処理により、出発濃厚血小板の溶解物に潜在的に存在する脂質−エンベロープウイルスの感染を強力に不活性化することが保証される。
【0151】
I.11−保存期間を超えた凍結血小板の成長因子組成物
保存期間を超えた(採取後5日を超える)濃厚血小板を−20℃の冷凍庫に移し、1か月保存した、それから、水槽中で35℃で解凍し、新鮮血小板で記載されたのと同一の実験が行われた。成長因子の量が種々の調製品で測定された。対応する結果を図5及び6に示す。
【0152】
I.12−凝集塊形成アッセイ
S/D処理した出発濃厚血小板から得た成長因子濃縮物は、溶媒及び界面活性剤をオイル抽出により除去した後に、回収された。得られた成長因子濃縮物5mlを5−mlシリンジに注入した。500IU/mlのウシトロンビン5mlが別の5−mlシリンジに注入した。2つのシリンジが単一ノズルに連結されたダブル−シリンジアプリケーターに置かれた。この2成分を強制的にノズルを通過させた。血小板ゲルが5秒以内に形成された。
【0153】
II−結果
II.1−細胞数計測
10人の異なるドナーからの10の血小板フェレーシス濃縮物が実験された。血小板フェレーシスから得た濃厚血小板は、平均血小板数が1064±235.2x106/ml(範囲:782〜1358x106血小板/ml)、平均白血球数0.1125±0.025x106/ml(範囲:0.0〜1.5)及び平均赤血球数0.0212±0.025x1006/mlであった。
【0154】
II.2−成長因子量
種々の調製血小板において、PDGF−AB、TGF−β1、EGF、及びIGF−1の平均濃度±標準偏差(SD)、最少及び最大値、及びp値が表1に示される。実験の各シリーズで得られた個々のデータポイントを図2に示す。
【0155】
【表1】
【0156】
出発濃厚血小板の平均PDGF−AB含有量は13.8±14.3ng/ml(N=10)であった。TnBP−Triton X−45による直接のS/D処理後、含有量は出発濃厚血小板と比べて約13倍に相当する184.4±80.2ng/ml(p<0.001)まで有意に増加した。出発濃厚血小板が最初にCaCl2で活性化されると、含有量は有意に増加(84.6±35.5;p<0.001したが、その増加は少なく(約6倍の増加)、次のS/D処理の間本質的な変化ではなかった(88.3±45.9;NS)。PDGF−AB含有量は、活性化及び活性化/S/D−処理血小板より非活性化S/D−処理血小板のほうが高かった(p<0.001)。
【0157】
同様のデータがTGF−β1でも見られた。出発濃厚血小板の平均TGF−β1含有量は16.6±14.3ng/ml(N=10)であった。直接のS/D処理後、TGF−β1含有量は、出発濃厚血小板に比べて、およそ12倍に増加し192.2±37.4ng/ml(p<0.001)となった。出発濃厚血小板が最初にCaCl2で活性化されると、含有量は約4倍(63.8±14.1ng/ml)(p<0.001)に増加し、そして次のS/D処理(68.6±27.2ng/ml)の間に有意な増加なかった。平均TGF−β1含有量は、活性化及び活性化/S/D−処理血小板よりS/D−処理血小板のほうが有意に高かった(p<0.001)。
【0158】
EGF(<0.7pg/ml)は出発濃厚血小板中では検出できなかったが、S/D処理後、平均EGF含有量は(2.2±1.6ng/ml;N=6)となり検出可能になった。これは、CaCl2活性化後(0.9±0.6ng/ml)(p<0.05)、又はCaCl2活性化に続くS/D処理後(1.4±1.0ng/ml)の値より有意に(p<0.05)に高い。
【0159】
出発濃厚血小板の平均IGF−1含有量は83.4±32.8ng/mlであった(N=8)。他の血小板由来成長因子と反して、S/D処理後に有意な増加がみられなかった(88.4±33.5;p=0.025)。平均含有量はCaCl2活性化後の調製血小板(117.2±34.9ng/ml)よりわずかに高く(p<0.001)、次のS/D処理後安定した(112.4±39.7ng/ml)。
【0160】
150mlの濃厚血小板から回収されたPDGF−AB、TGF−β1、EGF、及びIGF−1の総量は血小板ゲル形成(120ml)による20%の平均体積ロスを考慮すると、それぞれ、S/D直接処理後(153ml)、28213、29406、336、及び13525ngであり、そしてCaCl2活性化後10152、7156、108、そして14064ngであった。これはCaCl2活性化と比べて、PDGF−AB、TGF−β1及びEGFを放出するS/D処理はより高い効率を示すことを裏付けている。
【0161】
表2は、新鮮な出発濃厚血小板(A)、遠心分離(血小板のペレット化及び除去のため)に続く上清のTnBP−Triton X−45処理後(B)、及び1%TnBP及び1%Triton X−45(C)又は2%TnBP(D)による出発濃厚血小板のS/D処理後における血小板由来成長因子の含有量の比較を示す。未処理濃厚血小板(A)のPDGF−AB、TGF−β1、EGF、及びIGF−1含有量は、前記データ(表1)と一致した。血小板フリー上清(B)がTnBP−Triton X−45(B)で処理されると、PDGF−AB、TGF−β1、又はEGF含有量は低いままか又は検出不可能であった(3.9;1.1;p<0.001)。一方、IGF−1含有量は高いが、出発濃厚血小板と同じであった(75.4に対して72.2ng/ml)。従って、S/D処理中のPDGF−AB、TGF−β1及びEGFの放出は血小板の存在によるものであった。1%TnBP及び1%Triton X−45又は2%TnBPで処理された血小板溶解物における血小板由来成長因子含有量の増加も同様であった。更に、1%triton X−45又は1%triton X−100のどちらかで処理され、その界面活性剤がオイル抽出を伴わないtC18バッチ吸着(SPlT45tC18及びSPlTl00tC18)によって除去された濃厚血小板において、成長因子PDGF−AB、TGF−β1、IGF及びEGFの放出は、2%TnBP単独、又は1%TnBP及び1%Triton X−45での処理後に見られる範囲内であったことが示された。従って血小板溶解の程度は、この溶媒及び界面活性剤での組み合わせ又は、溶媒又は界面活性剤単独のどちらかを用いれば、本質的に同じであることが示された。
【0162】
サンプルを10000xg又は800xgで遠心分離した場合、本アッセイで測定された血小板成長因子の含有量に影響しないことが、最終的にデータ(図示せず)から明らかになった。
【0163】
【表2】
【0164】
更に、出発濃厚血小板中のS/D処理濃厚血小板及びCaCl2活性化濃厚血小板の両方から得られた成長因子濃縮物において、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、アルブミン、イムノグロビンIgGの濃度、及び凝固因子II、VII、VIII、IX、X、XI及びXIII及びフォンビルブランド因子の濃度が測定された。これらの結果は表3に示す。
【0165】
【表3】
【0166】
活性化された濃厚血小板はほぼ完全にフィブリノーゲン及び凝固因子が枯渇しているようにみえる。
【0167】
II.3−ウシトロンビン活性化実験
CaCl2/ビーズ処理は血小板の部分的な活性化しか起こさないので、S/D溶解物に比べて放出物中のPDGF−AB、TGF−β1、及びEGF含有量が低くなるのかもしれないという仮説を排除するために、最初にCaCl2で活性化され、それから更にウシトロンビン(Act−T)及びS/D処理されたトロンビン(Act−T−SD)で、処理された濃厚血小板からの放出物中の血小板由来成長因子の含有量を測定した(図3)。図3に、出発濃厚血小板(start)、CaCl2活性化後(Act)、それに続いてウシトロンビン活性化(Act−T)、及びS/D処理(Act−T−SD)におけるPDGF−AB(A)、TGF−β1(B)、及びEGF(C)含有量を示す。CaCl2活性化に比べて、追加のウシトロンビン活性化はPDGF−AB(A)、TGF−β1(B)、及びEGF(C)の放出を増加しないことが示されている。
【0168】
血小板成長因子の放出、及び特にPDGF−AB、TGF−β1、及びEGFは、血小板がカルシウム及び/又はトロンビンで活性化された時より、S/D処理が行われた時のほうが有意に高いことが初めて示される。S/D処理は高脂質血小板膜の溶解を起こし、そして細胞内アルファ顆粒から血小板由来成長因子を放出することが考えられる。これらの血小板由来成長因子の放出はトロンビン活性が最初に行われると低くなるという事実は、おそらく凝集血小板及び一部の放出された血小板由来成長因子が、出発濃厚血小板に存在するフィブリノーゲンのトロンビン誘導重合によって形成されたフィブリンネットワーク(血小板ゲルとして知られている)内に捕捉される結果起きるのだろう。実際、CaCl2は部分的な活性と内因性トロンビンにより不完全な凝集塊形成を起こす可能性は、約48NIH単位/mlのウシトロンビンを活性化血小板放出物に更に添加しても、血小板由来成長因子の放出を増加しなかったという事実により除外される。血小板の完全な活性化は上記表3に記載したように、極めて低濃度(又は検出不可能)のフィブリノーゲン及び凝固因子によっても裏付けられる。
【0169】
同様に(ここに示さないが)、ウシトロンビンで濃厚血小板を活性化すると、放出物中の血小板成長因子含有量が同じになることがわかった。また、IGF−1含有量はS/D処理後でも本質的に変わらず、カルシウム/トロンビン活性後にわずかに増加することも分かった。この結果は、おそらく殆どのIGFはフリーの循環形で血漿中に存在し、ほんの少量が血小板に存在しているという事実を反映しているのだろう。
【0170】
我々のデータから、S/D処理による血小板溶解は、トロビン活性化、凍結−解凍サイクル及び/又は凍結乾燥のような他で使用される方法よりも、細胞内血小板顆粒から血小板成長因子を浸出液中に放出するために最も効果的な手段であるように見える。初期の研究では、ヒト全血血清における平均PDGFレベルは、17.5ng/ml及び0.06ng/106血小板であることが示されている。これは我々の研究で用いたアフェレーシス濃厚血小板中のおよそ60ng/mlに相当する一方、S/D処理濃厚血小板では平均値が約3倍高いことがわかる。更に、我々のデータにより血小板からのPDGF−AB、TGF−β1、及びEGFの増強された放出はS/D処理が1%TnBP−1%Triton X−45の組み合わせ、2%TnBP、又は1%Triton X−45又は1%Triton X−100のどちらかを用いておこなわれるかどうかにより得られ、そしてS/D剤を除去するためのオイル抽出処理は血小板溶解物で評価された4つの血小板成長因子の含有量を減少しないことが示される。
【0171】
II.4−成長因子濃縮物の脂質含有量の比較
表4に記載したように、出発濃厚血小板のS/D処理又はCaCl2活性化による血小板成長因子濃縮物の脂質含有量を測定し、出発濃厚血小板の含有量と比較した
【0172】
【表4】
【0173】
脂質含有量は日立臨床技術分析装置で測定した。各試験サンプルはpH7.2、886x103血小板/μl、0.1x103白血球(WBC)/μl及び0.08x106赤血球(RBC)/μlの同一出発濃厚血小板から調製された。
【0174】
表4に記載されているように、S/D処理に続くオイル抽出によって調製されたS/D−PC成長因子濃縮物のLDL(低密度リポプロテイン)、HDL(高密度リポプロテイン)、トリグリセリド及びコレステロールの量は、Triton処理血小板又は活性化血小板と比べると、有意に低い。更に、S/D処理によって溶解された血小板を1回又は3回オイル抽出すると、有意な差は見られなかった。
【0175】
本発明の成長因子濃縮物におけるコレステロール、トリグリセリド及びLDLの枯渇は、臨床及び治療目的として重要である。トリグリセリド、及びLDL−コレステロールの組み合わせの役割は動静脈系でのプラーク形成によるアテローム性動脈硬化及び心血管疾患の発症においてよく知られており、それによって心臓麻痺、脳卒中及び抹消血管疾患へとつながる。
【0176】
11.5−成長因子活性
顕微解析により細胞の形、大きさ及び数の変化が明らかになった:細胞をS/D処理又は出発濃厚血小板のCaCl2活性化から得られた血小板由来成長因子濃縮物とインキュベートすると、多数の紡錘形細胞が特に観察された。更に、細胞をSD−PC成長因子濃縮物とインキュベートすると、Act−PC又は成長因子濃縮物とインキュベートしなかった細胞に比べて、細胞計数から時間及び濃度依存性にMG−63骨芽細胞数が有意に増加しているこことが示された。MTT解析でも、Act−PC処理細胞に比べて、SD−PC成長因子存在下インキュベートされた細胞の細胞活性が増加していることが示された。S/D−PC 又はAct−PC成長因子濃縮物のどちらもMG−63骨芽細胞に対する細胞毒性は示さなかった。
【0177】
従って、この研究からS/D処理血小板又は活性化血小板から得られた成長因子は、選択された抽出方法の後でも活性を有していることが示される。しかし、我々の実験で、細胞をS/D処理で得られた成長因子濃縮物とインキュベートすると、細胞反応は有意に増加することが示された。MG−63細胞に関する本発明の方法で得られた濃縮物の改善効果は、成長因子、特にPDGF、TGF−β1、及びEGF(創傷治癒及び組織再生において、これらの因子の重要性は知られている)の含有量の増加、及び/又は活性化濃厚血小板の非存在下又はごく少量の存在下で更に生物学的活性物質量の増加することで生じるのかもしれない。
【0178】
細胞増殖を刺激するウイルス不活化HPGF混合物の能力も、ヒト胎児腎繊維芽細胞(HEK293A;Invitrogen Corporation,Carlsbad,California,USA)及びStatens Seruminstitute ウサギ角膜繊維芽細胞(SIRC)(ATCC CCL−60,Bioresource Collection and Research Center、シンシュー、台湾)を用いて評価された。細胞株を37℃、5パーセントCO2含有の制御された雰囲気下で維持した。平底の96穴プレート(Greiner bio−one,東京、日本)を用い、10%FBS、0.1mM非必須アミノ酸及び1mMピルビン酸ナトリウムを添加したダルベッコ改変イーグル培地(D−MEM)中、ウェル当たり2x103細胞の密度で培養した。
【0179】
細胞を18時間接着させ、それから無血清培地で6時間培養した。細胞を無血清培地で2回洗浄した後、10%FBS(Gibco,Invitrogen)、活性化血小板放出物、又はHPGF(S/D処理、オイル抽出及び疎水性クロマトグラフィ処理をしたPCから調製)を添加したD−MEM培地(Gibco,Invitrogen)で最長5日間培養した。細胞毒性の可能性を検出するため、及びFBS非存在下での細胞増殖促進の最適濃度を見つけるために、様々な濃度のHPGF画分を用いて細胞培養を行った。Promega Corporation(Madison,Wisconsin,USA)のMTSテトラゾリウム化合物を用い、メーカーの使用説明書に従って細胞増殖を測定した。
【0180】
HEK293A細胞から得られたMTSアッセイの結果を図16に示す。細胞を10%(v/v)FBSを添加したD−MEM中で培養すると、高い生存率を示した。FBS非存在下(B)では、細胞増殖は見られなかった。tC18、C18、又はSDRでそれぞれ処理した後の活性化PC及びHPGF混合物の10%(v/v)存在下で培養すると、高い細胞生存率を示した。これは細胞増殖作用を有し且つ無毒性であることを示唆する。図16は、HPGF濃度を3 から20%に増加すると、MTSは濃度依存性に改善することを示す。SIRC細胞から得たMTSデータを図16に示す。HPGFはSIRCの増殖を刺激した。面白いことに、テストしたHPGFの全濃度(最大20%)で、細胞は増殖したが、10%FBSに匹敵する最適濃度は0.1から0.5%HPGFであることがわかった。
【0181】
HPGFは細胞増殖を強化し細胞生存率を維持する。D−MEM培地中の10%(v/v)HPGFはヒトHEK293A繊維芽細胞株の増殖を刺激する。細胞増殖作用は、10%活性化PC放出物又は10%FBSを用いた場合と同じであった。これにより、HPGFの生理活性はウイルス不活化及びS/D除去処理の間に変化しないこと、そして最終調製物は細胞毒性がないこと示された。MTS値は3%から20%(v/v)のHPGF濃度と共に増加した。HPGFはFBSに相当するような方法で、ウサギSIRC細胞株の増殖も強化した。面白いことに、5日目の最も効果的なHPGF濃度は0.3から0.5%のような低濃度であった。HPGFは毒性を示さないことは正常な細胞増殖及び形態から明らかであった。更に、このアッセイで、血小板放出物含有濃縮成長培地はFBSに比べて、細胞増殖の強化及び細胞生存率の維持、及び生体外でのヒトMSCの増殖を可能にし、それらの骨形成、軟骨形成及び脂質生成分化能を増強し、コンフルエントに達する時間を短縮し、colony−forming unit−fibroblastのサイズを増加することが裏付けられる。
【0182】
これらの結果はまた、本発明又は本発明の治療における方法によって得られた成長因子濃縮物、及び改善された細胞培養培を調製するための、重要な可能性を確認するものである。実際、本発明の成長因子濃縮物は、毒性を生じることなしに血小板放出物の細胞増殖刺激活性を維持する。従って、細胞療法及び再生医療において、FBS及び活性化血小板放出物の代替候補として考慮することができる。
【0183】
II.6-フィブリノーゲン枯渇GF濃縮物の調製
a.GF混合物の調製
PC(約300ml)を採取後24時間以内に処理した。最初に、1%トリ−n−ブチルホスフェート(TnBP;Merck KGaA,Darmstadt,Germany)及び1%Triton X−45(Sigma,Missouri,USA)(総量=6mL)の組み合わせを用いて、イン−バッグ(in−bag)で溶媒/界面活性剤(S/D)処理を行った。S/D−PC混合物を完全に混合するために1分間激しく振盪し、それから一定の緩やかな撹拌条件下で、31℃の水槽に少なくとも1時間浸漬した。S/D処理終了、S/D−PC混合物を30mL(10%v/vに相当)の大豆オイル(Sigma,Missouri,USA)で1回抽出した。オイル添加後、バッグを1分間激しく振盪し、それから20分間回転シェーカー上に置いた。混合物を30分間デカンテーションし、PCフェーズからオイルフェーズを分離した。PC(下層;約280ml)が重力により回収された。オイル抽出終了時、S/D−PCを10,500rpm(10,400 x g)で15分間、室温(20〜25℃)で遠心分離した。
【0184】
30mlの上清をオクタデシル(C18;batch WAT020594,ドライパウダー;125Å ポロシティ;55〜105μmの顆粒サイズ)充填剤を用いて、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)カラムにより無希釈で処理した。クロマトグラフの材料をカラムに充填し、5体積の1M塩化ナトリウムと20%エタノールで洗浄し、20mMクエン酸バッファ5体積、pH7.4で平衡化した。SD−PCをHIC吸着剤ml当たり7mlの割合及び22.6cm/hrの線速度で注入した。280nmでの吸収が増加し、そしてその吸収がベースラインに戻るとすぐに、C18流出液(C18−GF)を回収した。用いた実験条件下で、カラム通過画分の体積は60〜80mLであり、注入されたSD−PC体積に比べて2から3倍の希釈係数に相当した。
【0185】
研究過程で、他の2つのHIC吸着剤も上記と同様な実験条件下で評価した:tC18吸着剤(batch WAT036810;ドライパウダー;125Åポロシティ;36.1〜54.2μmの顆粒サイズ;Waters Corporation)及びSDR HyperD 吸着剤(batch 20033−0223,40〜100μm顆粒サイズ;Pall−BioSepra, Cergy Saint Christophe,France).
【0186】
b.トロンビン活性化によるフィブリノーゲンの除去
フィブリノーゲン(及び他の凝固因子)は、(a)0.3mlの1M CaCl2(最終濃度23mM)及びガラスビーズ(内因性ヒトトロンビン生成のため)又は(b)最終濃度約50IU/mlとするための1000IUウシトロンビンのどちらかを添加することにより、C18クロマトグラフィ後に得られた成長因子混合物10mlの活性化によって除去された。フィブリン塊ができるまで混合物を緩やかな回転混合(60rpm)下においた。上清を回収し、分注し、そして測定した。
【0187】
c.フィブリノーゲンの測定
【0188】
【表5】
【0189】
このデータにより、フィブリノーゲンはCaCl2又は外来性トロンビンを用いて活性化した後、完全に除去されることが示される。
【0190】
d.成長因子の測定
【0191】
【表6】
【0192】
成長因子はフィブリノーゲン除去後、尚上清に存在することがデータから示される。
従って、フィブリノーゲンが(上記方法により)除去されたウイルス不活化成長因子混合物は細胞培養、特に幹細胞培養の添加剤として、使用できる可能性がある。
【0193】
II.7−ウイルス不活化
更に、ここで使用されたS/D処理条件は血液感染性エンベロープウイルス、特にHIV、HBV及びHCVの不活化に効果的であるという証拠が多数ある。
【0194】
上記材料及び方法で述べたように、31℃での1%TnBP−1%Triton X−45の組み合わせは5分以内の処理において、HIV、BVDV及びPRVに対して減少係数、>5.6、>6.6、及び>6.4log10を保証し、そして>7.0log10で急速にVSV及びSindbisモデルウイルスを不活化する。HAV及びパルボウイルスB19のような非エンベロープウイルスはS/D処理で不活化されないかもしれないが、それらは免疫機能の変化した数名患者にのみ病原性を示す。単一ドナーの同種異系の血小板由来成長因子調製品ではプールしていない場合、統計学上、汚染リスクが極めて減少するだろう。しかし、更に非エンベロープウイルスによる汚染リスクを減少するために、ナノ濾過を実行してもよい。
【0195】
明らかに、ここに記載されたように、血小板由来成長因子は将来、適正製造基準、医薬品製造管理および品質管理基準(GMP)の条件下、例えば血液施設(ヒト由来血漿分画製剤のウイルス安全性の確保のためのウイルス不活化及び除去処理工程に係るガイドラインwww.WHO.int.Geneva,2003:1−72)によって製造しなければならだろう。このような血小板製剤のS/D処理は、局所適用として実用面で利点を多数提供することができる。第一に、同種異系での提供におけるウイルスに関する安全性が改善され、このような製剤の臨床的可能性がより広がるだろう。第二に、S/D処理により放出される、より高力価の血小板由来成長因子は血小板放出物を用いる方法の費用対効果の改善が可能になるだろう。第三に、組み換え血小板由来成長因子の使用が承認されないような適用において、又は、天然の血小板由来成長因子の組み合わせが有効な相乗的結果をもたらす可能性がある時、もし承認されれば(数種の下肢の糖尿病性潰瘍の治療に関し)、このウイルス不活化方法により、同種異系の血小板由来成長因子が簡便に使用することができるだろう。最後に、十分に特徴づけられたウイルス不活化血小板由来成長因子は、ウシ胎仔血清又は細胞工学研究のための組み換え血小板由来成長因子の代替物として、治癒過程を促進するので局所に適用するフィブリンベースの足場か又は人工の足場に組み込むんで使用可能であり、又は生体外での間葉幹細胞の増殖、及びそれらの骨細胞、又は軟骨細胞への分化のためにも使用可能であろう。
【0196】
III.成長因子の分離:SDの除去及び成長因子画分の分離のためのイオン交換クロマトグラフィ実験
1.適切なクロマトグラフ支持体の選択及び各種成長因子の結合能力決定のためのバッチ吸着工程の予備試験
a. A PDGF−ABの吸着テスト
先に記載したように、SD−PCを得た。TnBP及びTriton X−45の量を減少するため、1回のオイル抽出が行われた。5mlのSP−セファロースFFゲル、CM−セファロースFF、DEAE−セファロースFFをカラム中で洗浄し、ゲルを20mMクエン酸ナトリウム、0.05M NaClバッファで、pH7.5で平衡化した(流出液のpHと伝導度は出発バッファと同じ)。ゲルをカラムから出してビーカーの中に回収した。希釈NaOHで、SD−PCのpHを7.5に調製した。各ゲルの1gを別々のチューブに入れて余剰バッファを除いた。様々な量のSD−PCを各種のゲルに加えた。チューブを低速で30分間回転させ、約5〜10分間ゲルを沈殿させた。可能な限り多くの上清を回収し、成長因子含有量を測定するためにサンプルを採取した。
【0197】
出発SD−PCは280ng/mlのPDGF−ABを含んでいた。カチオン交換ゲルであるSP−セファロースFF及びCM−セファロースFFのゲル1ml当たり3から10mlのSD−PCの割合で使用した時、PDGF−ABの最大吸着を得た。ゲル1gに対してSD−PC10mlの割合で、SP−セファロースFFと接触させた後、上清中に少量のPDGF−ABしか存在しないということから明らかなように、SP−セファロースFFを用いると特に高い吸着が得られた。反対に、DEAE−セファロースFF(約250ng/g)でSD−PCを吸着した後に得られた上清には、多量のPDGF−ABが存在した。これらのデータは図7に示す。
【0198】
b.VEGFの吸着テスト
先に記載したように、SD−PCを得た。TnBP及びTriton X−45の量を減少するため、1回のオイル抽出が行われた。5mlのSP−セファロースFFゲル、CM−セファロースFF、DEAE−セファロースFFをカラム中で洗浄し、ゲルを20mMクエン酸ナトリウム、0.05M NaClバッファで、pH7.5で平衡化した(流出液のpHと伝導度は出発バッファと同じ)。ゲルをカラムから出してビーカーの中に回収した。希釈NaOHで、SD−PCのpHを7.5に調整した。各ゲルの1gを別々のチューブに入れて余剰バッファを除いた。様々な量のSD−PCを各種のゲルに加えた。チューブを低速で30分間回転させ、約5〜10分間ゲルを沈殿させた。可能な限り多くの上清を回収し、成長因子含有量を測定するためにサンプルを採取した。
【0199】
図8に、ゲルに対するSD−PCの割合に基づいた各種レジンにおけるVEGFの吸着%を示す。VEGFは本質的に吸着されなかったので、アニオン交換体DEAE−セファロースFFを特にゲル1gにたいして10mlのSD−PCの割合で使用すると、VEGFの吸着が限定されることがデータにより示される。反対に、VEGFは高い割合(約60%)でSP−セファロースFF及びCM−セファロースFFにより吸着された。
【0200】
c. TGF−β1の吸着テスト
先に記載したように、SD−PCを得た。TnBP及びTriton X−45の量を減少するため、1回のオイル抽出が行われた。5mlのSP−セファロースFFゲル、CM−セファロースFF、DEAE−セファロースFFをカラム中で洗浄し、ゲルを20mMクエン酸ナトリウム、0.05M NaClバッファで、pH7.5で平衡化した(流出液のpHと伝導度は出発バッファと同じ)。ゲルをカラムから出してビーカーの中に回収した。希釈NaOHで、SD−PCのpHを7.5に調整した。各ゲルの1gを別々のチューブに入れて余剰バッファを除いた。様々な量のSD−PCを各種のゲルに加えた。チューブを低速で30分間回転させ、約5〜10分間ゲルを沈殿させた。可能な限り多くの上清を回収し、成長因子含有量を測定するためにサンプルを採取した。
【0201】
図9はゲルに対するSD−PCの割合に基づいた各種レジンにおけるTGF−β1の吸着%を示す。アニオン交換体DEAE−セファロースFFのゲル1ml当たり3mlのSD−PCの割合で使用すると、70%を超えるTGF−β1が吸着され、最大吸着を得た。反対に、少量(約20%又はそれ以下)のTGF−β1がCM−セファロースFF及びSP−セファロースFFに吸着された。
【0202】
d.EGFの吸着テスト
先に記載したように、SD−PCを得た。TnBP及びTriton X−45の量を減少するため、1回のオイル抽出が行われた。5mlのSP−セファロースFFゲル、CM−セファロースFF、DEAE−セファロースFFをカラム中で洗浄し、ゲルを20mMクエン酸ナトリウム、0.05M NaClバッファで、pH7.5で平衡化した(流出液のpHと伝導度は出発バッファと同じ)した。ゲルをカラムから出してビーカーの中に回収した。希釈NaOHで、SD−PCのpHを7.5に調整した。各ゲルの1gを別々のチューブに入れて余剰バッファを除いた。様々な量のSD−PCを各種のゲルに加えた。チューブを低速で30分間回転させ、約5〜10分間ゲルを沈殿させた。可能な限り多くの上清を回収し、成長因子含有量を測定するためにサンプルを採取した。
【0203】
図10はゲルに対するSD−PCの割合に基づいた各種レジンにおけるEGFの吸着%を示す。アニオン交換体DEAE−セファロースFFのゲルのg当たり3mlのSD−PCの割合で使用すると、70%を超えるEGFが吸着され、最大吸着を得た。反対に、少量(15から30%)がSP−セファロースFFに吸着され、CM−セファロースFFを用いると更に少量(5から20%)が吸着された。
【0204】
e.結論
カチオン交換SP−セファロースFF及びCM−セファロースFFは、PDGF−AB及びVEGFの吸着に適合することが分かった。一方、DEAE−セファロースFFはTGF−β1及びEGFの吸着に対して満足な結果が得られた。
【0205】
2.SP−セファロース FFカラムクロマトグラフィ実験
イオン交換体を使用したときSDが除去されているかどうかを確認するため、更に以下の実験を行った。
【0206】
a.SD−PCの調製
この実験では、SD−PCに対し1回のオイル抽出が行われた。使用されたSP−セファロース FFの量は、バッチ吸着実験で測定されたように、1回のオイル抽出が行われたSP−PCの100mlに対して10ml(約10g)だった。
【0207】
b.カラムの平衡化
SP−セファロースFFをカラム(GE Healthcare)に充填した。カラムに充填後、SP−セファロースFFを20mMクエン酸ナトリウム、0.05M NaClバッファで、pH7.5で平衡化した。流出液のpHと伝導度が平衡バッファと同じになるまで、平衡バッファを50cm/hrの線速度でカラムに流した。280nmでの流出液の吸収が記録された。
【0208】
c.SD−PC注入とカラム通過液の収集
希釈NaOHでSD−PCのpHを7.5に調節し、それから50cm/hrの線速度でカラムに注入した。A280nmが増加し始めたらすぐに流出液を収集した。
【0209】
d.ベースラインへの戻りと成長因子溶出
全SD−PCを注入し、A280nmが初期のベースラインに戻るまで、カラムを平衡バッファで洗浄した。その後、SP−セファロースFFを20mMクエン酸ナトリウム、1M NaClバッファで、pH7.5及び50cm/hrで平衡化した。A280nmが増加し始め、ベースラインA280nmのレベルへ戻ると、すぐに溶出液を収集した。
【0210】
e.カラム再生と保存
カラムはその後、2M塩化ナトリウムの2カラム体積、続いて0.5N NaOHの2カラム体積で再生された。
【0211】
f.結果
表6はカラム溶出液中の成長因子含有量を、表7は溶媒及び界面活性剤含有量を示す。
【0212】
【表7】
【0213】
表6は、SP−溶出液はPDGF−AB及びPDGF−BBが濃縮され、PDGF−AA及びVEGFの両方を分離可能なことを示す。一方、TnBP及びTriton X−45カラム通過(流出)画分で見られた(表7参照)。1M PDGF−AB/VEGF溶出液では、これらウイルス不活性化剤の混入は検出できなかった。
【0214】
【表8】
【0215】
3.DEAE−セファロースFFカラムクロマトグラフィ実験
a.SD−PCの調製
PC(約300ml)を採取後24時間以内に処理した。最初に、1%トリ−n−ブチルホスフェート(TnBP;Merck KGaA, Darmstadt, Germany)及び1%Triton X−45(Sigma,Missouri,USA)(総量=6mL)の組み合わせを用いて、イン−バッグ(in−bag)で溶媒/界面活性剤(S/D)処理を行った。S/D−PC混合物を完全に混合するために1分間激しく振盪し、それから一定の緩やかな撹拌条件下で、31℃の水槽に少なくとも1時間浸漬した。S/D処理終了、S/D−PC混合物を30mL(10%v/vに相当)の大豆オイル(Sigma,Missouri,USA)で1回抽出した。オイル添加後、バッグを1分間激しく振盪し、それから20分間回転シェーカー上に置いた。混合物を30分間デカンテーションし、PCフェーズからオイルフェーズ分離した。PC(下層;約280ml)が重力により回収された。オイル抽出終了時、S/D−PCを10,500rpm(10,600xg)で15分間、室温(20〜25℃)で遠心分離した。
【0216】
b.Hi−Trap(商標)DEAE−セファロースFF
20mLの上清を充填済みですぐに使用できる(直ちに使用できるように予備包装されている)カラムを用いアニオン交換クロマトグラフィによる希釈を行わずに処理した。Hi−Trap(商標)DEAE−セファロースFFの使用量は、20mlのSD−PCサンプルに対して5mlであった。カラムを5体積の20mMクエン酸ナトリウム、0.05M NaClバッファ、pH7.5で平衡化した。SD−PC(20mL)が流速50cm/hrで注入され、続いて平衡バッファが注入された。280nmでの吸収が増加し、そしてそれがベースラインへ戻るとすぐに、カラム通過画分(DEAE−BKT)を回収した。カラム通過画分の体積は49.7mLであった。それから更に5体積の平衡バッファでカラムを洗浄して完全にSDをカラム通過画分中へ洗い流した。カラムはそれから20mMクエン酸ナトリウム、1M NaClバッファ、pH7.5、線速度50cm/hrで溶出された。280nmでの吸収が増加し、そしてそれがベースラインへ戻るとすぐに、この溶出液を収集した(体積:10mL)。
【0217】
図12及び13は調製工程中にng/ml及び総ngで表示されたEGF含有量を示す。対応する溶出液は280nmでの吸収が増加し、そしてそれがベースラインへ戻るとすぐに、収集された。収集された体積は17.9mLであった。カラム通過画分及び溶出液のSD剤及び成長因子が測定された(表8参照)。
【0218】
【表9】
【0219】
データはDEAEクロマトグラフィの工程により、1回のオイル抽出後にSD−PC中に存在したS/D剤が除去されたことを示す。S/D剤をカラム通過画分及び1M NaCl溶出液中で収集したが、検出不可能な量であることがわかった。
【0220】
c.成長因子VEGF及びPDGF−AB含有量
カラム通過画分及び溶出液中の成長因子VEGF及びPDGF−ABの含有量について解析した。図14及び15は総ngで表示された成長因子の含有量を示す。PDGF−AB及びVEGFはDEAE−セファロースマトリックスに結合せず、カラム通過画分中に存在した(この適用での文脈では、用語ゲルとマトリックスは同じ意味である)。反対に、EGFはゲルに吸着され、カラムからSD剤が存在せずに溶出された。
【0221】
上記のアニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフによる処理は、上記に例示したように、オイル抽出されたSD−PCで行うことができるが、オイル抽出を伴わないSD−PCに直接応用することもできる。TnBP及びTriton X−45の混入量が減るので、カラム洗浄に必要なバッファ体積が減り、ベースラインへの戻りがより早くなるので、オイル抽出を行うことが好ましい。オイル抽出は、クロマトグラフ材料の目詰まりとそれによる分離技術の効率低下を招きやすい脂質量も減少する。しかし、オイル抽出は除外されてもよい。
【0222】
上記のアニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフによる処理は、従ってS/D処理後直接行ってもよいが、オイル抽出後、又はS/D処理後又はオイル抽出後に使用されるなら、疎水性カラムの通過画分で行われることが好ましい。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は血小板誘導体の分野に関し、より具体的には血小板から得た成長因子濃縮物に関する。本発明はまた、このような成長因子濃縮物を調製する方法、及び治療及び/又は化粧に応用するための凝固可能な血小板成長因子濃縮物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
組織の創傷治癒と組織再生を支配する機作及び経路は詳細に研究されおり、殊に外傷後に生ずる細胞及び分子現象は、身体の様々な組織で大抵は共有されていることが示されている。共通の機作は従って、初期及び後期の炎症段階、細胞の増殖及び遊走、血管新生、肉芽組織の形成、そして最終的には基質形成と再構築を含む。
【0003】
興味深いことに、この現象のカスケードは架橋フィブリン及びビトロネクチン、フィブロネクチン及びトロンボスポンジンのような種々の蛋白質を特徴とする血餅形成により受傷直後から開始され、そして更に出血を抑え侵入細胞の基質としての役割を果たすと同時に、病原体の侵入に対するバリアを提供する。更に、この初期の血餅は治癒過程後期に必要とされる細胞誘導体の保存場所としての役割を果たす。
【0004】
具体的には、組織修復過程のあらゆる段階は、膜貫通受容体の細胞外ドメインと直接物質的な相互作用を通して細胞機能を調節する多様な因子、サイトカイン及び蛋白質によって、仲介、制御されていると思われる。後半の二次シグナル変換機は、それによって細胞内生態の様々な局面を制御する。
【0005】
組織再生に関する成分全ての役割については、ほんの一部が解明されているにすぎないが、これらの成分の多く、特に血小板誘導体、更に具体的には血小板由来成長因子は潜在的な効果を有することが明らかにされてきている。
【0006】
血小板由来の成長因子は、特に走化性と遊走性を示すことが知られており、そして走化性、細胞増殖、血管新生、細胞外基質沈着及び再構築のような軟組織及び硬組織の治癒と再生、及び細胞増殖の強化とに直接関わっているように見える。
【0007】
更に、血小板誘導体は繊維芽細胞、マクロファージ、内皮細胞、又はリンパ球のようなバイスタンダー細胞によるケモカイン及びサイトカイン産生の刺激のように、密接に関連する生物学的機能にも間接的にも関わっている。
【0008】
血小板に富む製剤、及び血小板のゲル、接着剤及び放出物は、従って、単独又は移植用生体材料との組み合わせでの使用が増加しており、様々な臨床又は治療への応用における血小板誘導体又は血小板成長因子の供給源となっている。
【0009】
このような血小板含有又は血小板由来製剤は、殊に骨の大欠損、複雑な頭蓋形成、及び慢性的な傷、例えば、口腔及び顎顔面外科、整形外科、歯周外科及び形成外科における傷の治療、及び慢性潰瘍、歯科及び口腔インプラント学における骨及び軟組織の再生治療並びに筋骨格疾患治療において、特に有効であることが見出されている。
【0010】
更に、血小板放出物は特に、間葉幹細胞の生体外での増殖と分化、及び軟骨細胞、内皮細胞並びに繊維芽細胞の増殖促進に関わることが示され、それによって軟骨再生と創傷治癒のための治療効果を拡大する可能性が裏付けられる。
【0011】
局所適用のための血小板由来製剤、例えばゲル、接着剤及び放出物は通常、濃厚血小板と血小板顆粒内容を放出させることができる活性剤を混合することにより調製し、血小板の生理学的活性化を再現する。
【0012】
活性化工程は一般に、血液又は血小板採取の間に添加された抗凝固剤の効果に拮抗する外来性トロンビンを直接添加するか又は塩化カルシウム(CaCl2)を使用することにより行われ、そして凝固カスケードと内因性トロンビンの放出を引き起こす。
【0013】
内因性及び外因性のトロンビンは又、フィブリノーゲンの重合とフィブリン由来の生体材料(凝集塊)を誘導し、それによって、血小板内に封入されている、種々の血小板成長因子のような成分を含む多面的な混合物の放出へと続く。
【0014】
ごく最近、レグラネクス(ヒトPDGF−bb)(Janssen Cilag Internat.)のような従来の発現システムでの組み換え血小板成長因子の製造において、新たな方法が開発された。しかし、入手可能な組み換え成長因子は非常に数が限られている。これらの成長因子の分離、同定、クローン化及び発現が困難なことが1つの理由である。更に、成長因子の併用による相乗効果が観察されるので、血小板由来製剤はそれでも尚、単一の組み換え因子の使用に対して補助的な効果をもたらす。
【0015】
現行の血小板含有又は血小板由来製剤の主な欠点の1つは、このような製剤の適当な標準化と定義がないことであり、これが様々な治療効果を有する血小板濃縮製品の特性にばらつきを与える結果となる。
【0016】
実際、血小板濃度から血小板誘導体における成長因子濃度を予測するという単純な仮定は確実ではない。なぜなら、血小板の採取及び/又は活性化に用いられる処理方法は、その技術的特徴として成長因子含有量とその結果の臨床効果に影響を及ぼすからである。その結果得られた製品の不均一性は、例えば、血小板濃度、出発物質中の白血球の存在、種、年齢、及び出発物質の保存条件及び活性化手段と同様に異なるパラメータに依存している。これらの変動が製品間での大きな差を生じ、結果として生物学的特性及び治癒能力のような治療効果の差につながることは明白である。
【0017】
例えば、無傷の血小板を含む液剤/ゲルを直接創傷部位に適用すると、血小板の活性化に伴いフィブリン塊が素早く形成されるが、血小板が完全に溶解しないものもある。このように様々な量の無傷血小板がフィブリン塊の中に封入されているため、それが放出された成長因子の実際の量の測定を困難している。
【0018】
更に血小板ゲル及び/又は成長因子製剤が、血小板活性化につながるトロンビン活性過程により得られると、これらの血小板誘導体は完全にフィブリノーゲンが枯渇し、もはや凝固せず、従って創傷部位に適用する前に外来の天然物か合成製品と混合することが必要になる。
【0019】
更に、治療用の局所血小板製剤は自己を供給源として製造されていることが多い。自己濃厚血小板は手術の数時間又は数日前に患者が提供した血液からポイント・オブ・ケアで応用するために調製されることを意味する。従って、これらの使用は大抵の場合、限られた体積の血小板ゲルを必要とする計画された手術であって、血液を提供できる程度に健康な患者のために用意されるものである。それに加え、手術部位で自己の調製品の製造は、十分に管理されていない状態でしばしば行われるという欠点があり、それゆえ、再現可能な成長因子の放出と臨床効果を確実にするために必要な標準化を欠いている。
【0020】
従って、期待される血小板誘導体製剤、さらに具体的には標準化された状態での血小板成長因子濃縮物であって、それにより個々の特有な生理病理学的状態に適合した製剤の処方を可能にする製剤を提供する方法が強く望まれている。
【0021】
更に、現行の血小板由来製品の別の主要な欠点は、無傷の血球細胞又は重要な血球細胞断片の存在が必須なことであり、血小板由来製品の供給源が異種の場合、それによって提供者の抗原に対する抗体による免疫反応の発現を引き起こす。
【0022】
更に、現行の血小板由来製品の別の主要な欠点は、生物製品の使用に伴う感染リスクが避けられないことである。実際、高度に発展した規制環境と血液採取設備を有する国の最新技術により試験された、単一提供者からのヒト同種異系濃厚血小板は高い安全性を有するにもかかわらず、そしてアフェレーシスやできうる限りの無菌的調製条件を保証する全血からの血小板製剤のように標準的な血液銀行方法であっても、ウイルスや細菌感染はそれでもなお、血小板誘導体の使用で生じやすい。血小板誘導体及び血小板成長因子におけるウイルスの無毒化のために、局所適用の同種異系血小板製剤のウイルスに対する最適な安全マージンを確保することが強く望まれる。
【0023】
最後に、老齢人口と慢性疾患数の増加は近い将来に何らかの対応をせざるを得ない重要且つ高まる健康問題を提起している。様々な治療方法、例えば手術、抗生物質投与、栄養強化、又は組織移植等が既に存在するが、組織創傷治癒と組織再生に使用される、効率よく且つ経済的に魅力ある成分に対する要求が高まりつつある。
【発明の概要】
【0024】
驚くべきことに、本発明者は以下に記載された凝固可能な血小板成長因子濃縮物及びそれらの製造方法を用いてこれらの目標を達成し得ることを見出し、徹底して研究を行った。
【0025】
本発明の方法は、特に簡便で短時間且つ効果的な血小板誘導体製剤、そして更に具体的には出発濃厚血小板又はプールされた濃厚血小板からの凝固可能な血小板成長因子濃縮物を提供できる。更に、本発明の方法は最新技術で開示された他の方法と比べて、全ての、少なくともより重要な血小板成長因子、そしてより具体的には成長因子であるPDGF、TGF−β及びEGFの回収を有意に増加する。
【0026】
更に、本発明の方法は脂質膜の溶解し、従って脂質エンベロープウイルス、そして例えば細菌のようなその他の病原体、原虫のような寄生体の不活化、及び出発濃厚血小板に存在する血漿や血小板脂質の除去を可能にする。
【0027】
本発明の方法は、治療法又は細胞療法に使用するために効率よく標準化されるウイルスが不活化された凝固可能な血小板板成長因子濃縮物の提供を可能にする。
【0028】
定量的又は機能的な血小板減少症を是正するために臨床的に静脈内で使用するときは、1つには細菌汚染のリスクを考慮して、血小板の保存期間は5日又は7日とした。5日又は7日を経過した高単位の血小板は毎年廃棄した。保存期間を超えた保存血小板を使用する血小板由来濃縮物調製のために使用できるので、本発明の方法は最終的に経済的には大変有望である。
【0029】
本発明の目的は治療及び/又は化粧用途の凝固可能な血小板成長因子濃縮物である。好ましい態様において、凝固可能な血小板成長因子濃縮物は成長因子のPDGF、TGF−β、IGF、EGF、CTGF、bFGF及びVEGFを含む。
【0030】
別の好ましい態様において、凝固可能な血小板成長因子濃縮物は血球関連の輸血反応を引き起こさない。
【0031】
別の好ましい態様において、凝固可能な血小板成長因子濃縮物はフィブロネクチン、ビトロネクチン、トロンボスポンジン、フォンビルブランド因子及び凝固因子II、V、VII、VIII、IX、X、及びXIからなる群から選択される少なくとも1つの蛋白質を含む。
【0032】
本発明の別の目的は本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物を調製する方法であり、濃厚血小板と溶媒及び/又は界面活性剤とを接触させ、濃厚血小板と溶媒及び/又は界面活性剤を少なくとも5分から6時間、約6.0から9.0の範囲にpHを保ち、2から50℃の範囲、好ましくは25から45℃の範囲内の温度でインキュベートし、溶媒及び/又は界面活性剤をオイル抽出及び/又はクロマトグラフィ法で除去する工程を含む。
【0033】
好ましい態様において、本発明の方法で使用される溶媒はジ又はトリアルキリンホスフェート、異なるアルキル鎖を有するジ又はトリアルキリンホスフェートであり、そして好ましくはトリ−n−ブチルホスフェート(TnBP)である。
【0034】
好ましい態様において、本発明の方法で使用される界面活性剤は脂肪酸のポリオキシエチレン誘導体、ソルビトール無水物の部分エステル、非イオン性界面活性剤、デオキシコール酸ナトリウム及びスルホベタインからなる群において選択され、そしてより好ましくはTriton X‐45、Triton X‐100、Tween 80及びTween 20からなる群において選択される。
【0035】
好ましい態様において、本発明の方法で使用される各々の溶媒及び/又は界面活性剤の最終濃度は、出発濃厚血小板の体積に対して、0.2から5%の体積、好ましくは0.2から2%の体積の範囲である。本発明の方法の好ましい態様において、出発濃厚血小板は濃厚血小板の体積に基づいて、2%TnBPのみ、あるいは1%TnBP及び1%Triton X‐45と接触させる。
【0036】
更に本発明の好ましい態様において、オイル抽出は医薬品グレードのオイルを用いて行い、血小板濃縮剤と溶媒及び/又は界面活性剤との混合物の重量に基づいて、前記オイルは2から20重量%、又は5から15重量%又は5から10重量%の量で使用されている。
【0037】
別の好ましい態様において、C18シリカ充填剤又はSDR(溶媒‐界面活性剤除去)hyper Dのような、等を含む手クロマトグラフィ法を使用して溶媒及び/又は界面活性剤を除去する。
【0038】
好ましい態様において、本発明の方法は、10から75nmのポアサイズの濾過膜又は同様なウイルス除去膜を使用し、得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物のナノ濾過を行うことからなる追加の工程を含む。
【0039】
別の好ましい態様において、本発明の方法は更に、5000ダルトン又はそれ以下の切断値を有する限外濾過膜を用い、成長因子及び凝固可能なフィブリノーゲンを治療応用又は細胞療法に最適な濃度まで濃縮するように設計された限外濾過工程を含む。
【0040】
好ましい態様において、本発明の方法は出発濃厚血小板を調製する予備工程を含み、前記出発濃厚血小板は、アフェレーシス又は全血から分離したバフィーコートから調製され、そして新鮮で保存期間を超えて保存された液体、又は期保存期間を超えて凍結保存された液剤のどちらかである。
【0041】
本発明の別な目的は、本発明又は本発明の方法で得られる血小板成長因子濃縮物をトロンビンと混合することからなる凝集塊を形成するための方法である。凝集塊を形成するために前記方法で使用されたトロンビンはヒト由来が好ましい。特定の態様では、活性が20IU/mlから1000IU/mlの範囲にあるトロンビンの0.1から1体積と本発明又は本発明の方法で得られる凝固可能な血小板成長因子濃縮物の1体積とを混合する。
【0042】
別の好ましい態様において、例えばC18シリカ充填剤又はSDR(溶媒‐界面活性剤除去)hyper Dを含むような疎水性タイプのクロマトグラフィ法を使用して溶媒及び/又は界面活性剤を除去する。SD及び/又はDEAE型のクラロマトグラフィー(アニオン性/カチオン性クラロマトグラフィー)も溶媒及び/又は界面活性剤を除去するために使用できる。
【0043】
本発明の別な目的は、本発明又は本発明の方法で得られる医薬品又は凝固可能な血小板成長因子濃縮物を含む足場である。
【0044】
本発明の別な目的は、凝血塊形成、又は骨再生又は創傷治癒、又は創傷は生体内あるいは生体外の細胞培養のために、医薬品又は本発明又は本発明の方法で得られる血小板成長因子濃縮物を使用することである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】研究計画:ドナーアフェレーシス血小板(N=8)を2つの小プールに分けた。小プール1はCaCl2による事前の活性化なしに直接1%TnBP−1%Triton X−45で1時間処理した。小プール2は最初に23mM CaCl2及びビーズにより活性化し、血小板ゲルを形成した。1時間のインキュベーション後、凝集塊が除去され放出物が1%TnBP−1%Triton X−45で1時間処理された。(溶媒−界面活性剤)S/D処理された両液は、溶媒及び界面活性剤を除去するためにオイルで抽出(3回)した。活性後、及びS/D処理−オイル抽出後に、出発血小板における成長因子の含有量を測定した。
【図2】出発濃厚血小板(start)、S/D直接処理(1%TnBP−1%Triton X−45)(S/D)後、出発濃厚血小板のCaCl2による活性化(Activated)後及びCaCl2活性化血小板放出物のS/D(1%TnBP−1%Triton X−45)処理(Activated+S/D)における(A)PDGF−AB;(B)TGF−β1;(C)EGF;及び(D)IGFの含有量(ng/ml)。S/D処理は材料及び方法で記載されたように行い、S/D剤除去のために3回のオイル抽出を行った。
【図3】出発濃厚血小板(Start)、出発濃厚血小板のCaCl2による活性化(Act)に続くウシトロンビン活性化(Act−T)後及びS/D処理(1%TnBP−1%Triton X−45)(ActT−S/D)後(Act−T)における(A)PDGF−AB;(B)TGF−β1;及び(C)EGFの含有量(ng/ml)。S/D処理は材料及び方法で記載されたように行い、S/D剤除去のために3回のオイル抽出を行った。
【図4】出発濃厚血小板(レーン1)、本発明に係る溶媒‐界面活性剤により処理された同一濃厚血小板(レーン2)及びCaCl2により活性化された同一濃厚血小板(レーン3)間での蛋白質組成物の比較。4%〜12%のゲル上でSDS−PAGEでサンプルが分離され、そして蛋白質がクマシー染色で着色された。レーンMは蛋白質マーカー(キロダルトンにおけるサイズがゲル左側に表示)。
【図5】S/D処理(1%TnBP−1%Triton X−45)(S/D−PC)、又はCaCl2活性化(Act−PC)、又は任意にCaCl2活性化後S/D処理(Act−PC+S/D)された保存期間を超えた凍結血小板から得られた、それぞれの濃縮物のPDGF−AB(図5a)及びEGF(図5b)組成物の比較。
【図6】S/D処理(1%TnBP−1%Triton X−45)(S/D−PC)、又はCaCl2活性化(Act−PC)された保存期間を超えた凍結血小板から得られた、それぞれの濃縮物のIGF−I(図6a)及びTGF−β1(図6b)組成物の比較。
【図7】種々のクロマトグラフィゲル(CM、SP及びDEAE)上での吸着試験後に上清に残存するPDGF−AB含有量(ng/mLで表示)。各ゲルに対して左から右に示された結果が、それぞれ1mLのゲル当たり3mL、6mL、9mL又は10mLのSD−PCに対応する。
【図8】各種のクロマトグラフィゲル(CM、SP及びDEAE)上でのVEGFの吸着%。
【図9】各種のクロマトグラフィゲル(CM、SP及びDEAE)上でのTGF−β1の吸着%。
【図10】各種のクロマトグラフィゲル(CM、SP及びDEAE)上でのEGFの吸着%。
【図11】SP−セファロース上で1回のオイル抽出後最初の分離/精製工程を含む本発明の方法における特定の態様での模式図。SP−セファロースから得られたPDGF溶出液はPDGF及びVEGFの両方の成長因子を含む。SP−セファロースの結果得られたカラム通過画分は更にDEAE−セファロース上で分離/精製され、TGF−β及びEGF成長因子の両方を含むTGF−β溶出液が調製される。
【図12】出発PC、溶媒‐界面活性剤で処理されたPC、1回のオイル抽出及び遠心分離後溶媒‐界面活性剤で処理されたPC(SD−PC@)、DEAEセファロースFF(DEAE−BKT)上にロード後のカラム通過画分及びDEAEセファロースFF(DEAE−E1M)から回収した溶出液におけるng/mlで表示されたEGF量。
【図13】1回のオイル抽出及び遠心分離後溶媒‐界面活性剤で処理されたPC(SD−PC@)、DEAEセファロースFF(DEAE−BKT)上にロード後のカラム通過画分及びDEAEセファロースFF(DEAE−E1M)から回収した溶出液におけるngで表示されたEGF総量。
【図14】1回のオイル抽出及び遠心分離後溶媒‐界面活性剤で処理されたPC(SD−PC@)、DEAEセファロースFF(DEAE−BKT)上にロード後のカラム通過画分及びDEAEセファロースFF(DEAE−E1M)から回収した溶出液におけるngで表示されたVEGF総量。
【図15】1回のオイル抽出及び遠心分離後溶媒‐界面活性剤で処理されたPC(SD−PC@)、DEAEセファロースFF(DEAE−BKT)上にロード後のカラム通過画分及びDEAEセファロースFF(DEAE−E1M)から回収した溶出液におけるngで表示されたPDGF−AB総量。
【図16】MTSアッセイの結果。(A)10%(v/v)FBS添加(10%FBS)、FBS非添加(w/oFBS)、10%(v/v)活性化PC放出物(ActPC)添加、及びC18(10%C18)、tC18(10%tC18)又はSDR(10%SDR)上でのクロマトグラフィ後の10%(v/v)HPGF混合物添加のD−MEM中;(B)10%(v/v)FBS添加又はC18後の3、5、7.5、10、15、又は20%(v/v)HPGF混合物添加のD−MEM中で培養されたHEK293A線維芽細胞。(C)10%FBS添加、FBS非添加(w/o FBS)、又はC18後の0.1、0.5、1、2、3、5、7、10、15、又は20%(v/v)HPGF混合物添加のD−MEM中で培養されたSIRC線維芽細胞。製造者の使用説明書によるMTS細胞増殖アッセイを用い、5日後に細胞生存率を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0046】
詳細な説明
本発明の目的は治療及び/又は化粧用途のための凝固可能な血小板成長因子濃縮物である。
【0047】
本明細書で使用される用語「凝固可能な」は、本発明に係る又は本発明の方法により得られた血小板成長因子濃縮物はフィブリノーゲンと凝固因子XIIIの両方を含み、そしてそれによって治療への応用が必要なとき、トロンビンのような適当な活性剤と混合すると凝集塊を生成できることを意味する。
【0048】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物のフィブリノーゲン濃度は好ましくは1より高く、より好ましくは1,5より高く、より好ましくは2.5g/Lより高く、そして凝固因子XIIIの濃度は好ましくは0.5より高く、より好ましくは0.75、さらに好ましくは1.0iu/mlより高い。
【0049】
本明細書で使用される用語「化粧的用途」は、人体の様々な表面部分、特に皮膚、髪、爪、唇、外性器、又は歯及び口腔内粘膜との接触を意図する処置を意味し、これらの外観に清潔さ、芳香、保護、変化を与えるか又は良好な状態に保つことを目的とする。
【0050】
本明細書で使用される用語「治療用途のため」は、薬学、免疫学又は代謝効果によってヒト及び/又は動物の疾患を治療し、それらの生理的機能を回復、修正又は変更するための治療又は予防処置を意味する。
【0051】
本発明又は本発明の方法により得られる凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、溶媒及び/又は界面活性剤が存在せず及びウイルスに対して安全という2つの理由で、特にヒト及び/又は動物の疾患を治療し、及び/又はそれらの体表面部分と接することに適する。
「溶媒及び/又は界面活性剤がなく」との表現は、凝固可能な血小板成長因子濃縮物中の溶媒及び/又は界面活性剤のレベルは極めて低く、そして好ましくは検出できないことを意味する。実際、当業者は溶媒及び/又は界面活性剤の濃度の増加は長期毒性と直接関連し、そしてより具体的には神経学的疾患の発症(例えばJ.P.R.Pelletier, S.Transue及びE.L.Snyder、「Pathogen inactivation techniques.Best Practice & Research Clinical Haematology」Vol.19,No.1,pp.205−242,2006に記載)と関連することは既知である。
【0052】
従って、「溶媒がなく」との記載は、本発明において溶媒濃度が100ppm未満であり、好ましくは50ppm未満、好ましくは20ppm未満、好ましくは10ppm未満、5ppm未満、そして更に好ましくは1ppm未満であることを意味する。
【0053】
更に「界面活性剤がなく」との記載は、本発明において界面活性剤濃度が500ppm未満であり、好ましくは250ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、そして更に好ましくは10ppm未満である。
【0054】
「ウイルスに対して安全」との記載は、凝固可能な血小板成長因子濃縮物は実質上感染性ウイルス、より好ましくは脂質含有ウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV、ウエストナイルウイルス(WNV),TTウイルス、デングウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、ヒトヘルペスウイルス−8(HHV−8)、サル泡沫ウイルス、重症急性呼吸器症候群ウイルス(SARSコロナウイルス)及びその他の脂質エンベロープ肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、乳酸脱水素酵素ウイルス、ヘルペス群ウイルス、ラブドウイルス、白血病ウイルス、ミクソウイルス、アルファウイルス、アルボウイルス、パラミクソウイルス、アレナウイルス及びコロナウイルスが存在しないことを意味する。
【0055】
「実質上存在しない」との意味は、凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、その「ウイルスバリデーション試験に関する手引書」(資料CPMP/BWP/268/95)において、欧州医薬品審査庁(EMEA)の欧州医薬品委員会(CPMP)による厳しいウイルス減少工程を特徴とすることが要求されているように、ウイルスの不活性化程度が少なくとも4log10より大きく、そして好ましくは5log10より大きく、更に好ましくは6log10より大きい。従って脂質エンベロープウイルスによる血液感染患者への感染に関与する見込みはない。
【0056】
本発明に係る又は本発明の方法により得られる凝固可能な血小板成長因子濃縮物は更に以下の機能的な成長因子、血小板由来成長因子(PDGF)、A及びB鎖のヘテロダイマー及び/又はA−A及び/又はB−B鎖のヘテロダイマー(PDGF−A、PDGF−AB、PDGF−B)としてのどちらか、TGF−β1及び/又はTGF−β2及び/又は骨形成タンパク質(BMPs)、インシュリン様成長因子(IGF)、上皮成長因子(EGF)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)及び血管内皮成長因子(VEGF)を含む形質転換増殖因子(TGF−β)スーパーファミリーを含む。
【0057】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物におけるPDGF濃度は90ng/mlより高く、好ましくは100より高く、好ましくは120より高く、好ましくは150より高く、好ましくは180より高く、そして好ましくは250ng/mlより高い。
【0058】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物におけるTGF−β1濃度は100ng/mlより高く、好ましくは140より高く、好ましくは160より高く、好ましくは180より高く、そして好ましくは250ng/mlより高い。
【0059】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物におけるIGF濃度は少なくとも出発濃厚血小板におけるものと同じであり、そして好ましくは65ng/mlより高く、好ましくは75より高く、好ましくは80より高く、そして好ましくは100ng/mlより高い。
【0060】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物におけるEGF濃度は好ましくは0.5より高く、好ましくは1より高く、好ましくは1.5より高く、好ましくは2より高く、そして好ましくは2.5ng/mlより高い。
【0061】
特定の態様において、本発明に係るSD処理及びオイル抽出後の凝固可能な血小板成長因子濃縮物におけるVEGF濃度は、0.5ng/mlより高く、好ましくは0.75、好ましくは1、そして好ましくは1.5ng/mlより高い。
【0062】
特定の態様において、本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は低脂質含有量が要求される疾病での使用に適する。本発明で使用されるように、「低脂質含有量が要求される疾病で」との表現は、本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は脂質が枯渇している、即ち、本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物のコレステロール、トリグリセリド、HDL及びLDLのレベルは、出発濃厚血小板のレベル又は本技術分野で既知の血小板活性化により得られた成長因子濃縮剤のレベルより優位に低い。本発明の凝固可能な血小板由来成長因子濃縮物の脂質、特にコレステロール、トリグリセリド、及びLDLにおけるきわめて低いレベルのおかげで、この濃縮剤は特定の疾患、例えば心血管合併症の高いリスクを示す患者又は心臓の高リスク疾患に罹患する患者での使用に適する。何故なら治療を受けた患者に供される脂質量は極めて少ないので、動静脈系内でのプラーク形成の結果続いて起きる血管閉塞のリスクは非常に減少するからである。
【0063】
本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物中のコレステロール量は、100未満が好ましく、より好ましくは50未満、そして更に好ましくは35mg/dl未満である。
【0064】
本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物中のトリグリセリド量は、100未満が好ましく、より好ましくは50未満、そして更に好ましくは30mg/dl未満である。
【0065】
本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物中のHDL量は、30未満が好ましく、より好ましくは15未満、そして更に好ましくは10mg/dl未満である。
【0066】
本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物中のLDL量は、80未満が好ましく、より好ましくは50未満、更に好ましくは20未満、そして更に好ましくは5mg/dl未である。
【0067】
更に、本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物中の極少量及び/又は検出限界以下程度の脂質量は、安定性を増し、血小板成長因子の大規模精製時にはそのプロセスを容易にする。これはアニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフィ分離プロセスを実施するときに、特に有用になるだろう。
【0068】
特定の態様において、本発明又は本発明の方法により得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、血液細胞関連の輸血反応には至らない。
【0069】
「血液細胞関連輸血反応」は、この凝固可能な成長因子濃縮剤は無傷の生細胞(例えば赤血球、血小板及び白血球など)が存在しないので、患者の免疫学的(例えば同種免疫)及び溶血に伴う合併症を含む様々な既知の輸血反応を回避することができる(例えば、Stroncek et Rebulla,”Platelet transfusions,”The Lancet,August 4,2007;vol.370:427−438を参照)ことを意味する。実際、免疫が保たれているレシピエントはしばしばドナーの血液細胞抗原に対する免疫反応を示し、血液細胞と関連する特異的抗原に依存する種々の臨床的帰結をもたらすことになる。最も一般的に関与する抗原は、次のカテゴリから選択される:(1)血小板及び白血球で共有されるHLAsクラスI、(2)ある種の白血球に存在するHLAsクラスII、(3)顆粒球特定的抗原、(4)血小板特異的抗原(例えば、ヒト血小板抗原HPA)、そして(5)赤血球特異的抗原。
【0070】
より具体的には、本発明の調製方法に関して、血液生細胞(赤血球、白血球及び血小板)は溶媒‐界面活性剤処理で破壊/溶解し、それによって患者が外来抗原及び無傷赤血球へ暴露されるリスクを減少し、好ましくは抑制する。従って、本発明の方法は治療を受けた患者から得られた血小板又は同種血小板からの凝固可能な血小板成長因子濃縮物を調製することができる。
【0071】
特定の態様において、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、更にフィブロネクチン、ビトロネクチン、トロンボスポンジンからなる群、及び/又は凝固因子II(プロトロンビン)、V、VII、VIII、IX、X、XI、及びフォンビルブランド因子からなる群において選択される少なくとも1つの蛋白質を含む。
【0072】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物中のフィブロネクチンの濃度は、好ましくは0.2g/Lより高く、そして好ましくは約0.3g/Lである。
【0073】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物中の各凝固因子II、IX、X、VII及び/又はXIの濃度は、好ましくは0.5 iu/mlより高く、そして好ましくは約1iu/mlである。
【0074】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物中の凝固因子VIII及び/又はフォンビルブランド因子の濃度は、好ましくは0.5より高く、好ましくは0.9iu/mlより高く、そして好ましくは約1 iu/mlである。
【0075】
特定の態様において、本発明の方法によって得られた凝凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、更にIgG、IgM及び/又はIgA.のようなイムノグロビンを更に含む。
【0076】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物中のイムノグロビンIgGの濃度は、好ましくは5g/Lより高く、そして好ましくは約10g/Lである。
【0077】
別の態様において、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、更にCCNファミリーメンバー、結合織活性化プロテイン−3(CTAP−3)、PF4、血小板由来血管新生因(PDAF)、内皮細胞成長因子、早期妊娠因子(EPF)、上皮成長因子(EGI)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、アンジオポエチン様−6(ANGPTL6)、IGFBP−3、エストロゲン受容体関連蛋白質、繊維芽細胞由来内皮細胞成長因子(f−ECGF)、肝細胞成長因子(HGF)、ヒスタミン放出因子、ヒトコラゲナーゼ阻害剤、血小板殺菌蛋白−1(PMP−1)、トロンビン誘導血小板殺菌蛋白−1(t−PMP)、トロンボシジン−1(TC1)及びトロンボシジン−2(TC2)からなる群から選択される少なくとも1つの成長因子を含む。
【0078】
別の態様において、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、更にセロトニン、カテプシン、アルブミン、血小板塩基性タンパク質−PBP(CXCL7)、好中球活性化タンパク質−2及び−4(NAP−2;4)、ソマトスタチン(SST)、RANTES、CTAP−3、胎盤蛋白質14(PP14)、SCUBEl、アネクシン11、ヒートショックプロテイン27(HSP27)、及びヒートショックプロテイン60(HSP60)からなる群から選択される少なくとも1つの蛋白質を含む。
【0079】
特定の態様において、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物中のアルブミン濃度は、好ましくは30g/Lより高い。
【0080】
別の態様において、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、更にコラゲナーゼ、スーパーオキシドジスミューターゼ(SOD)、ヘパリナーゼ、メタロプロテアーゼMMP−1、−2、−9、−13、自己ERK(ext.Cell.reg.kinase)、自己分泌及び傍分泌プロテインC(PC)、及び微量の酵素アルドラーゼ、カルボキシペチダーゼ、酸性ホスファターゼ、アリールスルファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−グリセロホスファターゼ、α/β−グルコシダーゼ、α/β−フコシダーゼ、α−マンノシダーゼ、及びα−アラビアラビノシダーゼからなる群から選択される少なくとも1つの酵素を含む。
【0081】
別の態様において、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、更にヒスタミン、ADAMTS−13、α1−α2アンチトリプシン、α2−アンチプラスミン、α2−マクログロブリン、C1-INH、誘導BMP−2、−6、−7(TGF−βスーパーファミリー)、ECM再構築因子(誘導MMP、TNF−α、エラスターゼなど)、自己分泌及び傍分泌リゾホスファチジン酸(LPA)、HMGBl(アンフィレギュリン)、ATP、ADP、GPT、GDP、Ca2+、Mg2+及び/又はZn2+を含む。
【0082】
本発明の別な目的は、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物を含む医薬品である。
【0083】
「医薬品」は、血小板ゲル、血小板接着剤、成長因子濃縮フィブリン接着剤及び/又はシーラント、人工足場を意味する。
【0084】
本発明の別な目的は、培地中での本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物の使用であり、この培地は繊維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、ケラチノサイト、幹細胞及び/又は移植細胞の生体内又は生体外での培養に適する。本発明の別な目的は、生体内又は生体外で繊維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、ケラチノサイト、幹細胞及び/又は移植細胞を培養するのに適する培地で、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物を含む。
【0085】
本発明の別な目的は、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物を調製する方法であり、該方法は出発濃厚血小板を溶媒及び/又は界面活性剤を接触させ、出発濃厚血小板を溶媒及び/又は界面活性剤と少なくとも5分から6時間、約6.0から約9.0の範囲で維持されたpH及び2℃から50℃の範囲内、好ましくは25℃から45℃の範囲内でインキュベートし、そしてオイル抽出及び/又はクロマトグラフィ法により溶媒及び/又は界面活性剤を除去する工程を含む。
【0086】
好ましい態様において、実施したインキュベーション時間は、例えばpH7.0から7.5(出発血小板が新鮮血小板の場合)又はpH6.8から8.2(出発血小板が保存期間を超えた/又は凍結血小板の場合)の範囲の生理的pHで2から4時間の範囲である。好ましいインキュベーション時間は、約31℃である。
【0087】
本発明の方法において使用するのに好適な溶媒は、ジ−又はトリアルキルホスフェート、例えばトリ−(n−ブチル)ホスフェート、トリ−(t−ブチル)ホスフェート、トリ−(n−ヘキシル)ホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリ−(n−デシル)ホスフェート、ジ−(n−ブチル)ホスフェート、ジ−(t−ブチル)ホスフェート、ジ−(n−ヘキシル)ホスフェート、ジ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ−(n−デシル)ホスフェート及び異なるアルキル鎖を有するジアルキルホスフェートである。異なるアルキル鎖を有するジ又はトリアルキルホスフェートとして例えば、エチルジ−(n−ブチル)ホスフェートを用いることができる。特に好ましいトリアルキルホスフェートはトリ−(n−ブチル)ホスフェート(TnBP)である。
【0088】
本発明の方法において使用するのに適する溶界面活性剤は、脂肪酸のポリオキシエチレン誘導体、ソルビトール無水物の部分エステル、例えば「ポリソルベート80」としても知られている、「Tween80」という名前で商品化された製品、「Tween20」及び非イオン性界面活性剤例えば「TritonX−100」又は「Triton X−45」という名前で売られている.オキシエチレン化アルキルフェノールを含む。
【0089】
更に好ましい界面活性剤はデオキシコール酸ナトリウム及びN−ドデシル−N,N−ジメチル−2−アンモニウム−l−エタンスルホネートのようなスルホベタイである。特に好ましい界面活性剤は「Triton X−45」、「Triton X−100」、「Tween80」及び「Tween20」である。
【0090】
本発明の特定の態様において、出発濃厚血小板は、溶媒及び界面活性剤、好ましくはTnBPとTriton X−45でインキュベートされる。
【0091】
好ましくは、溶媒又は界面活性剤度の最終濃度、又は溶媒及び界面活性剤の各々の最終濃度は、濃厚血小板の体積に対して0.2から5%の体積、好ましくは0.2から2%の体積の範囲である。好ましい態様では、出発濃厚血小板を2%TnBPとインキュベートする。別の好ましい態様では、出発濃厚血小板は、1%TnBP及び1%Triton X−45でインキュベートする。
【0092】
溶媒及び/又は界面活性剤は、医薬品グレードのオイルを用いたオイル抽出及及び/又はカラムクロマトグラフィのような別の方法により生体液中から抽出されるので、残りの濃縮物中に溶媒及び/又は界面活性剤が枯渇する。
【0093】
医薬品グレードのオイルは、天然オイルでもよく、例えば植物又は動物由来、又は同様な構造の合成化合物でもよい。適当な天然オイルとして、キャスターオイル(ヒマシ油としても知られる)、大豆、ひまわり油、綿実油が挙げられる。好ましい合成化合物は、合成トリグリセリドである。適当な合成トリグリセリドの例はトリオレイン、トリステアリン、トリパルミチン、トリミリスチン及びそれらの組み合わせである。
【0094】
医薬品グレードのオイルは、脂溶性のプロセス薬品の少なくとも80%を抽出できる量であり、血小板濃縮剤溶解物の重量に基づいて、オイルは2から20重量%、好ましくは5から15重量%、そして更に好ましくは5から10重量%で使用される。オイル抽出は、特にオイル濃度によって1回、好ましくは2回、そして更に好ましくは3回行ってもよい。
【0095】
溶媒及び/又は界面活性剤は、カラムクロマトグラフィにより濃厚血小板溶解物から除去してもよい。カラムクロマトグラフィは、オイル抽出に続いて行ってもよく、あるいは溶媒及び/又は界面活性剤処理後に直接行ってもよい。
【0096】
好適なクロマトグラフィカラムは、逆相(疎水性相互作用)マトリックス、又は例えばイオン交換(アニオン及びカチオン)マトリックス及び親和性(免疫親和性又は固定化ヘパリンのような)マトリックスのような蛋白吸着マトリックス、又はサイズ排除マトリックスを含む。好ましい逆相マトリックスは、C18シリカ充填剤、SDR(溶媒−界面活性剤除去)hyperD(Pall corporation)、ポリスチレンソーベント(Variant)及びAmberlyte(Rohm)である。C18が一般に工業規模のクロマトグラフィに推奨されたとしても、tC18シリカ充填剤も考慮される。これらの吸着材は、溶媒及び界面活性剤を結合するのに使用される一方、成長因子はカラム通過画分に溶出する。好ましいアニオン交換マトリックスは、精製される成長因子によるが、アニオン交換体ゲルであり、例えばDEAE−Sephadex A−50、DEAE−セファロースFF、Q−セファロース、DEAE−Toyopearl 650M、DEAE−Hyper Dである。好ましいカチオン交換マトリックスは、精製される成長因子によるが、カチオン交換体ゲル、例えばSP−セファロース及びCM−セファロース(両方ともFFグレード以下で入手可能)であり、SPが好ましい。これらの吸着材は、成長因子を結合するのに使用される一方、溶媒及び界面活性剤はカラム通過画分において溶出する。
【0097】
好ましい態様において、アニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフィは、オイル抽出後に行われる。選択されたクロマトグラフィによって、このような溶媒及び/又は界面活性剤の除去工程は、成長因子の分離も強化することが可能である。この点において、アニオン性クロマトグラフィ(例えばDEAE)は、好んでTGF−β1及びEGFを結合する一方カチオン性クロマトグラフィ(例えばSP)は、好んでPDGF(AB、AA及びBB)及びVEGFを結合するだろう。従って、アニオン性及びカチオン性クロマトグラフィの連続使用により、特異的な成長因子(類)の濃厚画分の調製が可能になる。このような態様は図11に開示されている。
【0098】
好ましい態様において、オイル抽出後及び/又は疎水性クロマトグラフィ後にアニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフィを行う場合、当業者の一般常識に従って溶出条件を決定する。溶出は0.15Mから2M塩化ナトリウムを含有する食塩水を用いて行う。溶出に用いる食塩水は、塩化ナトリウム及び0.15Mから2Mのアルカリ又はアルカリ土類金属の塩(例えばリン酸塩又はクエン酸塩)の混合物も含んでもよい。
【0099】
更に、アニオン性クロマトグラフィを行う時、pHは興味のある成長因子(類)の等電点より高くなるように選択する。逆にカチオン性クロマトグラフィを行う時、pHは興味のある成長因子(類)の等電点より低くなるように選択する。興味のある成長因子の安定性及び生理的機能に対応するpH、例えば成長因子の変性が避けられるように実質的には中性のpHでのクロマトグラフィによる分離/精製が行えるように、クロマトグラフィの条件を選択することが好ましい。
【0100】
あるいは、オイル抽出及び/又は疎水性クロマトグラフィ後、アニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフィを行う時、当業者の一般常識に従って溶出条件を設定する。溶出は、成長因子のpHiにより、成長因子を樹脂上への結合させるために使用したバッファとは異なるpHのバッファを用いて行ってもよい。成長因子の安定性と生理的機能を維持する条件下で、溶出に使用する溶液のpH範囲は4から10、好ましくは5から9でもよい。
【0101】
好ましい態様において、オイル抽出及び/又はクロマトグラフィ後の溶媒濃度は、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは20ppm未満、より好ましくは10ppm未満、好ましくは5ppm未満、そして更に好ましくは1ppm未満である。
【0102】
好ましい態様において、オイル抽出及び/又はクロマトグラフィ後の界面活性剤濃度は、500ppm未満、好ましくは250ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、そして更に好ましくは10ppm未満である。
【0103】
オイル抽出及び/又はクロマトグラフィによる溶媒/界面活性剤の除去に続いて、パルボウイルスB19又は、場合によってはA型肝炎ウイルス(HAV)のような非エンベロープウイルスを不活性化又は除去するために、例えばナノろ過により、より具体的には75−nm、35−nm、20−nm、15−nm、又は10−nmのポアサイズのろ過膜の使用により、追加の工程を加えてもよい。
【0104】
別の好ましい態様では、細胞破片の除去ためのオイル抽出及び/又はクロマトグラフィの後に、遠心分離の工程を行う。好ましくは、遠心分離工程は800から20000xgで10から30分間、そして好ましくは10000xgで15分間行う。
【0105】
別の特定の態様では、細胞破片を除去するためにオイル抽出及び/又はクロマトグラフィの後に、ろ過による清澄化を行う。好ましくは、ろ過工程は1μmから0.2μmのグラデーションを有するフィルタで行い、それによって細菌の除去も可能である。
【0106】
特定の態様では、本発明の方法において出発材料として使用される濃厚血小板は単一又はプールされた標準濃厚血小板、例えば輸血用に調製された濃厚血小板に相当する。濃厚血小板は全血のバフィーコート由来でもよい。バフィーコート由来の濃厚血小板1単位は、通常30から50mlに相当する。バフィーコート由来濃厚血小板は単一単位として又は単一単位をプールしたもの、例えば4から6の単一単位をプールしたものに相当する治療用単位の形のどちらかを出発物質として使用してもよい(血液成分の調製、使用および品質保証に関する指針 第13版 欧州評議会編(2007)に記載)。
【0107】
血小板濃縮剤はアフェレーシス、サイタフェレーシス又は血小板アフェレーシスの標準操作(例えば、血液成分の調製、使用および品質保証に関する指針 第13版 欧州評議会編(2007)参照)により得てもよく、そしてMCS+(Haemonetics)、Trima Accell又はCOBE Spectra(Gambro)又はAmicus (Baxter)を用いて得てもよい。アフェレーシス操作は、バフィーコート単離操作で得る時と比べて、一般的にドナー当たりの生産量が大きくなる(濃厚血小板300mlに相当する)。
【0108】
好ましい態様において、本発明の方法は、出発濃厚血小板を調製することからなる予備工程を含む。好ましくは、出発濃厚血小板を調製する方法は、アフェレーシスや全血献血からの血小板調製のような標準的な血液銀行による方法、及び血液細胞保存装置/分離装置又は卓上装置を用いるようなポイント・オブ・ケア手順を含むが、それらに限定されない。
【0109】
本発明の方法において出発材料として使用される濃厚血小板は、例えば採取後5又は7日未満の新鮮なもの、例えば採取後5又は7日を越えて保存期間を超えたもの、又は保存期間を超え且つ−20℃またはそれ以下で数週間凍結したものでもよい。
【0110】
特定の態様において、本発明の方法において出発材料として使用される濃厚血小板は更に白血球及び/又は赤血球を含んでもよい。出発濃厚血小板は従って、分化しているが活性化していない数種類の白血球、例えばリンパ球、好中球性顆粒球、及び単球を含んでもよい。好中球と単球は特にミエロペルオキシダーゼを含む顆粒に富み、これは塩素の酸化を触媒し、次亜塩素酸とその他の反応性酸素誘導体を生成し、微生物と真菌に毒性のある強力な殺菌性酸化剤として作用する。
【0111】
それゆえ、出発濃厚血小板が分化しているが活性化していない数種類の白血球を含んでいる時、本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は、更に白血球由来の抗菌成分を含む。
【0112】
好ましい態様において、白血球に含有されるプロテアーゼ及び酸性ヒドロラーゼの炎症促進効果を避けることができるように、好ましくは白血球除去により出発材料として使用された濃厚血小板から白血球を除去する。
【0113】
健康人の正常な血小板数は、通常、血液1mm3当たり150000から400000個、即ち、150から400x109血小板/Lの範囲にある。この「正常」な血小板数は健康人の約95%に見られ、一方残りの5%は統計学上、異常な血小板数(非常に低いか高い)を有するのかもしれない。血小板がアフェレーシスにより採取されると、血小板数は一般に250mlのバッグの1ml当たり1.2x109血小板より多く、バッグ(単位)当たり約3x1011血小板よりも多い血小板数に相当する。好ましい態様では、出発濃厚血小板の血小板数は、通常の血中で見られるよりも3から10倍多い。
【0114】
本発明の別の目的は、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物と、トロンビン、又は活性化FVII、又はウシ又はヒトトロンボプラスチンのような凝固カスケードの他の活性化因子とを混合することからなる凝集塊を形成する方法である。
【0115】
本発明に係る又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物で凝集塊を形成する前に、抗線維素溶解薬を本発明又は本発明に係る方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物に添加し、線溶系の天然蛋白分解酵素(例えばプラスミン)によるフィブリン凝集塊の分解を抑制又は遅らせてもよい。
【0116】
特定の態様において、前記抗線維素溶解薬はアプロチニンであるが、トラネキサム酸又はイプシロンアミノカプロン酸も濃度>10mg/mlで、アプロチニンの代替物として使用してもよい。アプロチニンは通常、液体の形で3000KIU又はそれ以下の濃度で提供される。アプロチニンの最終濃度は、通常、凝固可能な血小板成長因子濃縮物とトロンビン成分とを混合した後の出発液体の半分になる。
【0117】
本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は更に、例えばコラーゲン、キトサン、セラミクスによって作られた人工足場、又は血漿由来フィブリン接着剤又はフィブリンシーラントと混合されてもよい。
【0118】
トロンビンと混合する前に、本発明に係る凝固可能な血小板成長因子濃縮物に追加の化合物を加えてもよい。このような追加の化合物は化学療法剤、抗生物質及び/又はホルモンを含むが、これに限定されない。
【0119】
本発明に係る又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物とトロンビンを一緒に混合することにより、凝固カスケードの最終工程を再現し、凝集塊又は不溶性フィブリンを形成するためのフィブリノーゲンの段階的な重合化へと進む。
【0120】
本発明で使用される用語「トロンビン」はあらゆる由来のものから得たトロンビンに関し、人の治療に適用する場合は、好ましくはウシ由来、より好ましくはヒト由来に向けたものである。
【0121】
ヒトCaCl2活性化血漿又はバトロキソビン(bothrops atrox moogendiの蛇毒由来の別のフィブリノーゲン凝固プロテアーゼ)、活性化FVII、ヒト又はウシトロンボプラスチンはトロンビンの代替物として使用されてもよい。好ましい態様において、0.1から1体積のトロンビンを本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物1体積に添加してもよい。
【0122】
好ましい態様において、トロンビン濃度は20IU/mlから1000IU/mlの範囲にある。さらに好ましくは、トロンビンの最終濃度はフィブリノーゲンを可溶化し、それから安定(不溶化)なフィブリンとするための連続的且つ速い重合化を保証する約500IU/mlか、あるいはより低濃度(特別な外科手術において遅い重合化が好ましい時には約4から25IU/ml)のどちらかである。
【0123】
別の好ましい態様において、トロンビンは、金属又はガラスビーズのような表面活性化剤存在下で10〜50mMCaC12を用い、高フィブリノーゲン成長因子濃縮剤の自動活性(auto−activation)により得られる。
【0124】
2つの成分、即ち、本発明に係る又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物及びトロンビンは、スプレー又は吸収性スポンジによる内視鏡的送達装置の支援の存在下又は非存在下、デュアルシリンジシステムによって連続的又は同時に修復部位に適用できる(Radosevich他,”Fibrin sealant:Scientific Rationale, Production Methods, Properties, and Current clinical use”,Vox Sanguinis,1997,72:133−143及びMarx G,”Evolution of fibrin glue applicators”,Transfus Med Rev,2003;17(4):287−98に記載された適用方法はここに参照することにより、本文に組み込まれる)。
【0125】
本発明の別の目的は、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物を、治療への応用及び凝集塊の形成又は体内又は体外での細胞培養に使用することである。体内又は体外での細胞培養に使用する場合、本発明又は本発明の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物は培地の体積に対し、1%から30%、好ましくは2%から20%、そして更に好ましくは3%から10%の範囲で培地中に存在する。
【0126】
濃縮物/トロンビン混合物の主要な治療用途として、口腔外科、インプラント学、整形及び口腔外科、形成外科、軟及び硬組織の治癒と再構築、心血管、胸部、又は消化管手術、神経外科、一般外科/外傷学、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、抗凝固療法を受けている患者の手術又は凝固障害のある患者を挙げられるが、これに限定されない。
【0127】
本発明の上記及びその他の目的、特徴及び利点は以下の記載及び添付の図面に対する説明により、更に明らかとなるだろう。
【実施例】
【0128】
I−材料と方法
I.l−アフェレーシス血小板採集
ボランティアドナーに対するインフォームドコンセントの後で、出発濃厚血小板(PCs)はMCS+ multiple component system(Haemonetics,Braintree,USA)を用いて採取された。静脈カテーテルにより全血を間欠流及び抗凝固剤(血液10ml当たり1mlの抗凝固クエン酸デキストロース溶液処方A)用いて採血した。多血小板血漿(PRP)が遠心分離により自動的に他の血液成分から分離され、滅菌された使い捨てバッグに採取され、赤血球と血漿はドナーに戻された。PRPの所定の体積(約300ml)が得られるまで、この手順が繰り返された。出発濃厚血小板は採取後24時間以内に下記に述べるように処理を行った。
【0129】
I.2−血球数
血小板、白血球(WBC)、及び赤血球数はセルカウンター(ABC Vet Automatic Blood Counter,ABX Diagnostics,France)を用いて測定した。
【0130】
I.3−出発濃厚血小板の処理
a−研究計画:
出発濃厚血小板は図1の研究計画に従って処理された。
簡単に説明すると、同一ドナーからの出発濃厚血小板(300ml)を穏やかに混合し、等量(150ml)の2つのサブプールに分けた。サブプール1は事前の活性化を行わず、直接S/D処理をした。サブプール2は下記のような血小板ゲルを形成する条件で、23mMCaCl2及びビーズの存在下で活性化した。その結果得られた放出物がピぺッティングで注意深く回収され(血小板ゲルでの30mlの損失により平均体積120mlに相当)、S/D処理後オイル抽出された。出発濃厚血小板、非活性化血小板サブプール1のS/D処理後、血小板サブプール2の活性化後、及び活性化サブプール2のS/D処理後のサンプルが採取された。
【0131】
b−血小板活性化:
ビーズの存在下、血小板濃縮剤(サブプール2)に1M CaCl2(Sigma;Batch 056k0688)を添加して最終濃度23mMとして、活性化した。混合物を凝集塊が形成されるまで穏やかに回転混合した。これは通常5から8分以内に生ずる。混合物を更に60分間活性化させた。これは、これらの実験条件下で、好ましい最適な血小板由来成長因子放出が見られた時間であった。形成されたビーズ/フィブリン凝集塊のデカンテーションにより上清が分離された。回収された上清の平均体積は出発濃厚血小板の体積の約80%であった。上清は更にS/D処理された。
【0132】
c−S/D処理:
便宜上、非活性化血小板サブプール1及び活性化サブプール2のS/D処理は、EP 1685852に記載されたようにバッグ内で行われた。簡単に説明すると、TnBP(Merck KGaA,Darmstadt,Germany)及びTriton X−45(Sigma,Missouri,USA.)の50%/50%混合物を絶え間なく混合して各々のプールへ15分かけて加え、最終濃度(v/v)が1%TnBP及び1%Triton X−45となるようにした。添加終了後、S/D−血小板サブプール混合物を1分間激しく振盪した。それから、処理バッグを完全に水槽に浸漬してS/D血小板混合物を25±0.5℃まで加温し、それから1時間穏やかに連続撹拌した。S/D処理の終了時に、大豆油(Sigma,Missouri,USA)をS/D−血小板サブプールへ最終濃度10%(v/v)となるように添加した。バッグを1分間激しく振盪し、それから回転シェーカー上に15分間置いた。血小板サブプール(下層)がデカンテンーション(20分)によりオイル(上層)から除去され、第二のバッグに引力により移され、3回のオイル抽出が行われた。このオイル抽出操作はTnBP及びTriton X−45をそれぞれ、10及び100ppm未満まで減少させた。
【0133】
I.4−遠心分離及び溶解剤の種類による影響
血小板由来成長因子放出に対する血小板内容物及びS/D剤の種類の影響を調べるために、以下のような実験を行った:濃厚血小板(300ml)が150mlの2つのサブプールに小分けされた。血小板をペレットにするために、1つのサブプールが高速(10000xg)で遠心分離され、上清が1%TnBP−1%Triton X−45で処理された。遠心分離処理をしなかった、他方のサブプールは更に、75mlの2つのサブプールに小分けし、1つは1%TnBP−1%Triton X−45で処理し、他方は2%TnBPで処理した。S/D処理(インキュベーションとオイル抽出)は上記のように行った。
【0134】
I.5−ウシトロンビン活性化実験
CaCl2活性化が血小板を完全に活性化しないという仮説を除外するために、2つの濃厚血小板(14ml)を0.23M CaCl2及びビーズの存在下で、上記のように活性化した。
【0135】
室温で緩やかに60分間回転撹拌したのち、濃厚血小板放出物の10mlを回収し、1000国際単位(IU)/mlの局所ウシトロンビン(Thrombin−JMI,52604−7102−1,Jones Pharma,Saint−Louis,MO)0.5mlを添加して、最終濃度約48IU/ml.を得た。混合物は室温で60分間緩やかに回転振盪した。それから、1%TnBP−1%Triton X−45で処理しオイル抽出した。並列実験では、数秒以内で生じたゲル形成の後、2つの濃厚血小板サンプル(10ml)を同一のウシトロンビン0.5mlで直接活性化し緩やかに60分間回混合した。実験過程の色々な段階でサンプルを採取し、10000xgで遠心分離し血小板由来成長因子の解析まで−80℃で凍結した。
【0136】
I.6−成長因子アッセイ
手順の各工程で1mlのサンプルを採取した。血小板及び細胞破片がペレットになるまで10000xgで15分間遠心分離した(Microfuge(登録商標)22R,BeckmanCoulter,Fullerton,CA)し、血小板由来成長因子測定のための無細胞上清を得た。並列実験も800xgで15分間遠心分離した。上清はすぐに−80℃で凍結した。
【0137】
サンプルは37℃で解解し、感度及び特異性の高い市販の免疫アッセイを用いて1時間以内に解析した。標準とサンプルはデュプリケートでアッセイされ、平均値が計算された。結果はサンプルに適用した希釈係数を掛けた。
【0138】
α−PDGF−AB
Quantikine ELISAキット(#.DHD00B,R&D Systems,Minneapolis,MN)を用いて、PDGF−ABをアッセイした。サンプルをCalibrator Diluent (RD6−11)により100倍希釈した。血小板を2時間インキュベートし、洗浄し、そしてPDGF−ABに対する酵素抱合抗体と室温で更に3時間インキュベートした。ウェルを洗浄バファーで洗浄し、基質液を室温で20〜30分間添加した。ウェルを光から保護された。停止液が各ウェルに添加され、マイクロタイタープレートリーダーを用いて450nmの吸収を測定した。最小検出濃度は1.7pg/mlであった。
【0139】
b−TGF−β1
TGF−β1はQuantikine ELISAキット(DB100B,R&D Systems)を用いて測定された。サンプルはCalibrator Diluent (RD5−26)で100倍に希釈された。TGF−β1標準液(890207)の希釈系列は、TGF−β−受容体IIでコートした96−穴マイクロタイタープレート中に100μlの容量で調製された。TGF−β1の解析前に、酸による活性及び中和が行われ、潜在的なTGF−β1を免疫反応型に活性化した。この目的のために、0.5mlのサンプルと1N HClの0.1mlとを混合して室温で10分間インキュベートし、1.2N NaOH/0.5M HEPES(N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N0−[2−エタンスルホン酸])、Sigma(H−7523)の0.1mlを添加して中和し、遠心分離した。上清画分をアッセイしてTGF−β1の総含有量を求めた。アリコート(50μl)をマイクロタイタープレートにデュプリケートで加えてカバーし、2時間室温でインキュベートした。それからウェルを洗浄し、TGF−b1に対する酵素抱合ポリクローナル抗体を添加して室温で1.5時間インキュベーションした。測定は上記のように行った。TGF−β1の検出限界は4.61pg/mlであった。
【0140】
c−EGF
EGFはQuantikine ELISAキット(番号DEG00,R&D Systems,Minneapolis,MN)を用いて測定された。サンプルはCalibrator Diluent(RD6N)で20倍希釈された。標準、コントロール、又はサンプル200μlをウェルに添加した。プレートは2時間室温でインキュベートした。ウェルを吸引し洗浄バファーを満たして洗浄した。EGF抱合体を各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。ウェルを洗浄バファーで洗浄し、基質液(200μl)を各ウェルに添加した。混合物を室温で20分間インキュベートし、光から保護した。停止液(50μl)を各ウェルに加えた。450nmに設定されたマイクロプレートリーダー(VersaMax(商標)microplate reader,Molecular Devices,USA)を用い、各ウェルの光学密度を30分以内に測定した。最小検出濃度は0.7g/mlであった。
【0141】
d−IGF−1
IGF−1はQuantikine ELISAキット(DG100,R&D Systems製)を用いて定量された。サンプルはCalibrator Diluent (RD5−22)で100倍に希釈した。最小検出濃度は0.007から0.056ng/mlの範囲にあり、平均MDDはメーカーの報告のように0.026ng/mlであった。各ウェルにアッセイ希釈剤(RD 1−53)150μlを添加し、続いて標準液(890775)50μlを添加した。プレートを粘着片で覆い、2〜8℃で2時間インキュベートした。ウェルを3回洗浄し、それから酵素抱合IGF−1と2〜8℃で1時間インキュベートした。測定は上記のように行った。
1.7−統計学的解析
全ての実験に対するデータは平均値、標準偏差、及び最小値と最大値として記録される。統計学的比較は両側t検定で行った。0.05未満のp値を用いて、操作の様々な段階での調製血小板間での平均PGF濃度に対する有意差を評価した。値は有意差なし(NS;<0.05)として示され、<0.01又は0.001であった。0.005に近づいたときの正確なp値を示す。
【0142】
I.8−PC、S/D−PC及びAct−P比較のためのサンプル調製と分離
出発濃厚血小板(PC)に対応する各サンプル、溶媒/界面活性剤(1%TnBP及び1%Triton X−45)で処理された出発濃厚血小板(S/D−PC)、及びCaCl2で活性化された出発濃厚血小板(Act−PC)は、タンパク含有量を比較するためにSDS−PAGEで分離された。
【0143】
各サンプルの20μlとNuPAGE LDS サンプルバッファ(4X)(Invitrogen)、2μlのNuPAGE還元剤(10X)(Invitrogen)及び脱イオン水とを混合し、最終体積を20μl(活性化濃厚血小板に対応するサンプルでは21μl)とする。その結果得られた混合物は、それから10分間70℃で加熱され、4〜12%ポリアクリルアミド勾配ゲルを用いてSDS−PAGEを行った(NuPAGE Bis−Tris,Invitrogen)。
【0144】
タンパク質の分離は200Vの定電圧、150mA/gelの予想電流で35分間行った。得られたゲルはクマシーブルーR−250で染色された。タンパクマーカーであるMark12未着色スタンダート(Invitrogen)はサンプル中に含まれるタンパクの分子量を測定するために使用された。Mark12マーカーをMESでバッファされたNuPAGE novex 4−12% Bis−Trisゲル(Invitrogen)にロードし、分離後クマシーブルーR−250で染色した。対応する結果を図4に示す。
【0145】
溶媒/界面活性剤法で処理された出発濃厚血小板のタンパクの特徴は非処理の出発血小板濃縮剤の特徴と大きな違いはないように見える。一方、活性化濃厚血小板のタンパクの特徴は40から70kDa領域のバンドの欠如から明らかなように非処理の開始時血小板濃縮剤の特徴は著しく異なり、これらのバンドはそれぞれ、フィブリノーゲンの63.5、56及び47kDaのアルファ、ベータ及びガンマサブユニットに一致する。
【0146】
I.9−成長因子活性のアッセイ
血小板のS/D処理(l%TnBP−1%Triton X−45)で得られた成長因子がその活性を維持できたかを知るために、生体外での細胞培養による研究をヒト骨芽細胞様MG63細胞株を用いて行った。S/D−PC又はAct−PCのどちらからから得られた成長因子濃縮物で処理したMG−63細胞の反応性を細胞形態と生存能力を調べることにより評価した。
【0147】
105から106の細胞を、2mMグルタミンを添加した90%イーグル最少必須培地(MEM)、1.5g/Lの重炭酸ナトリウムで調整したイーグルBSS(平衡塩類溶)、0.1mMの非必須アミノ酸、1.0mMピルビン酸ナトリウム、10%加熱不活性化ウシ胎仔血清、及び任意に5%のS/D−PC又はAct−PC成長因子濃縮物添加した培地を用い、35−mmのペトリ皿で培養した。37℃の5%CO2及び95%エアを含む加湿雰囲気中でインキュベーション後、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS,Gibco,UK)で洗浄し、トリプシン−EDTA溶液(0.25%トリプシン)で37℃、5分間剥離し、遠心分離し更に細胞テスト用に懸濁した。
【0148】
3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイで、生存/死滅細胞を検出(生存率解析)した。細胞形態を調べるために電子顕微鏡での観察も行った。
【0149】
3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)アッセイで、細胞増殖をモニタリングした。簡単に説明すると、500μlのMTS(Celliter 96 Promega Corp.、USA)を各サンプルに添加した。37℃、60分間インキュベーションした後、マイクロプレートリーダーを用いて490nmの吸光度で測定した。
【0150】
I.10−ウイルス不活性化アッセイ
出発濃厚血小板の溶解に使用した溶媒及び/又は界面活性剤のウイルス検証試験はEMEA及びWHOの推奨するような国際ガイドラインに従って小規模実験により行った。50mlの出発濃厚血小板を関連ウイルス(HIV;ヒト免疫不全ウイルス)及び3つのモデルウイルス、牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、これはC型肝炎ウイルスのモデルであり、仮性狂犬病ウイルス(PRV)、これは別の適当な生体外モデルウイルスがないとHBVのモデルとして使用されることがある、そして水疱性口内炎ウイルス(VSV)の懸濁原液に、独立して添加した。これらのウイルスのより高力価の懸濁原液を出発濃厚血小板に加え、そして1%TnBP及び1%triton X−45の混合物を添加した。ウイルス感染力は溶媒‐界面活性剤処理の前及び処理中の異なる時点で評価され、ウイルス感染力動態を測定した。感染力及びTCID50/ml値で表されるデータを測定するために、生体外での細胞培養を行った。得られたデータから、S/D処理により、処理(最初に評価した時点)から5分以内で残存するウイルス感染力が見いだされなかったので、前記4ウイルスが完全に不活化されることが示された。得られた減少係数は、HIVは>5.6log10、BVDVは>6.6log10、PRVは>6.4log10、そしてVSV>7.0log10であった。したがって、溶媒及び/又は界面活性剤の溶解処理により、出発濃厚血小板の溶解物に潜在的に存在する脂質−エンベロープウイルスの感染を強力に不活性化することが保証される。
【0151】
I.11−保存期間を超えた凍結血小板の成長因子組成物
保存期間を超えた(採取後5日を超える)濃厚血小板を−20℃の冷凍庫に移し、1か月保存した、それから、水槽中で35℃で解凍し、新鮮血小板で記載されたのと同一の実験が行われた。成長因子の量が種々の調製品で測定された。対応する結果を図5及び6に示す。
【0152】
I.12−凝集塊形成アッセイ
S/D処理した出発濃厚血小板から得た成長因子濃縮物は、溶媒及び界面活性剤をオイル抽出により除去した後に、回収された。得られた成長因子濃縮物5mlを5−mlシリンジに注入した。500IU/mlのウシトロンビン5mlが別の5−mlシリンジに注入した。2つのシリンジが単一ノズルに連結されたダブル−シリンジアプリケーターに置かれた。この2成分を強制的にノズルを通過させた。血小板ゲルが5秒以内に形成された。
【0153】
II−結果
II.1−細胞数計測
10人の異なるドナーからの10の血小板フェレーシス濃縮物が実験された。血小板フェレーシスから得た濃厚血小板は、平均血小板数が1064±235.2x106/ml(範囲:782〜1358x106血小板/ml)、平均白血球数0.1125±0.025x106/ml(範囲:0.0〜1.5)及び平均赤血球数0.0212±0.025x1006/mlであった。
【0154】
II.2−成長因子量
種々の調製血小板において、PDGF−AB、TGF−β1、EGF、及びIGF−1の平均濃度±標準偏差(SD)、最少及び最大値、及びp値が表1に示される。実験の各シリーズで得られた個々のデータポイントを図2に示す。
【0155】
【表1】
【0156】
出発濃厚血小板の平均PDGF−AB含有量は13.8±14.3ng/ml(N=10)であった。TnBP−Triton X−45による直接のS/D処理後、含有量は出発濃厚血小板と比べて約13倍に相当する184.4±80.2ng/ml(p<0.001)まで有意に増加した。出発濃厚血小板が最初にCaCl2で活性化されると、含有量は有意に増加(84.6±35.5;p<0.001したが、その増加は少なく(約6倍の増加)、次のS/D処理の間本質的な変化ではなかった(88.3±45.9;NS)。PDGF−AB含有量は、活性化及び活性化/S/D−処理血小板より非活性化S/D−処理血小板のほうが高かった(p<0.001)。
【0157】
同様のデータがTGF−β1でも見られた。出発濃厚血小板の平均TGF−β1含有量は16.6±14.3ng/ml(N=10)であった。直接のS/D処理後、TGF−β1含有量は、出発濃厚血小板に比べて、およそ12倍に増加し192.2±37.4ng/ml(p<0.001)となった。出発濃厚血小板が最初にCaCl2で活性化されると、含有量は約4倍(63.8±14.1ng/ml)(p<0.001)に増加し、そして次のS/D処理(68.6±27.2ng/ml)の間に有意な増加なかった。平均TGF−β1含有量は、活性化及び活性化/S/D−処理血小板よりS/D−処理血小板のほうが有意に高かった(p<0.001)。
【0158】
EGF(<0.7pg/ml)は出発濃厚血小板中では検出できなかったが、S/D処理後、平均EGF含有量は(2.2±1.6ng/ml;N=6)となり検出可能になった。これは、CaCl2活性化後(0.9±0.6ng/ml)(p<0.05)、又はCaCl2活性化に続くS/D処理後(1.4±1.0ng/ml)の値より有意に(p<0.05)に高い。
【0159】
出発濃厚血小板の平均IGF−1含有量は83.4±32.8ng/mlであった(N=8)。他の血小板由来成長因子と反して、S/D処理後に有意な増加がみられなかった(88.4±33.5;p=0.025)。平均含有量はCaCl2活性化後の調製血小板(117.2±34.9ng/ml)よりわずかに高く(p<0.001)、次のS/D処理後安定した(112.4±39.7ng/ml)。
【0160】
150mlの濃厚血小板から回収されたPDGF−AB、TGF−β1、EGF、及びIGF−1の総量は血小板ゲル形成(120ml)による20%の平均体積ロスを考慮すると、それぞれ、S/D直接処理後(153ml)、28213、29406、336、及び13525ngであり、そしてCaCl2活性化後10152、7156、108、そして14064ngであった。これはCaCl2活性化と比べて、PDGF−AB、TGF−β1及びEGFを放出するS/D処理はより高い効率を示すことを裏付けている。
【0161】
表2は、新鮮な出発濃厚血小板(A)、遠心分離(血小板のペレット化及び除去のため)に続く上清のTnBP−Triton X−45処理後(B)、及び1%TnBP及び1%Triton X−45(C)又は2%TnBP(D)による出発濃厚血小板のS/D処理後における血小板由来成長因子の含有量の比較を示す。未処理濃厚血小板(A)のPDGF−AB、TGF−β1、EGF、及びIGF−1含有量は、前記データ(表1)と一致した。血小板フリー上清(B)がTnBP−Triton X−45(B)で処理されると、PDGF−AB、TGF−β1、又はEGF含有量は低いままか又は検出不可能であった(3.9;1.1;p<0.001)。一方、IGF−1含有量は高いが、出発濃厚血小板と同じであった(75.4に対して72.2ng/ml)。従って、S/D処理中のPDGF−AB、TGF−β1及びEGFの放出は血小板の存在によるものであった。1%TnBP及び1%Triton X−45又は2%TnBPで処理された血小板溶解物における血小板由来成長因子含有量の増加も同様であった。更に、1%triton X−45又は1%triton X−100のどちらかで処理され、その界面活性剤がオイル抽出を伴わないtC18バッチ吸着(SPlT45tC18及びSPlTl00tC18)によって除去された濃厚血小板において、成長因子PDGF−AB、TGF−β1、IGF及びEGFの放出は、2%TnBP単独、又は1%TnBP及び1%Triton X−45での処理後に見られる範囲内であったことが示された。従って血小板溶解の程度は、この溶媒及び界面活性剤での組み合わせ又は、溶媒又は界面活性剤単独のどちらかを用いれば、本質的に同じであることが示された。
【0162】
サンプルを10000xg又は800xgで遠心分離した場合、本アッセイで測定された血小板成長因子の含有量に影響しないことが、最終的にデータ(図示せず)から明らかになった。
【0163】
【表2】
【0164】
更に、出発濃厚血小板中のS/D処理濃厚血小板及びCaCl2活性化濃厚血小板の両方から得られた成長因子濃縮物において、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、アルブミン、イムノグロビンIgGの濃度、及び凝固因子II、VII、VIII、IX、X、XI及びXIII及びフォンビルブランド因子の濃度が測定された。これらの結果は表3に示す。
【0165】
【表3】
【0166】
活性化された濃厚血小板はほぼ完全にフィブリノーゲン及び凝固因子が枯渇しているようにみえる。
【0167】
II.3−ウシトロンビン活性化実験
CaCl2/ビーズ処理は血小板の部分的な活性化しか起こさないので、S/D溶解物に比べて放出物中のPDGF−AB、TGF−β1、及びEGF含有量が低くなるのかもしれないという仮説を排除するために、最初にCaCl2で活性化され、それから更にウシトロンビン(Act−T)及びS/D処理されたトロンビン(Act−T−SD)で、処理された濃厚血小板からの放出物中の血小板由来成長因子の含有量を測定した(図3)。図3に、出発濃厚血小板(start)、CaCl2活性化後(Act)、それに続いてウシトロンビン活性化(Act−T)、及びS/D処理(Act−T−SD)におけるPDGF−AB(A)、TGF−β1(B)、及びEGF(C)含有量を示す。CaCl2活性化に比べて、追加のウシトロンビン活性化はPDGF−AB(A)、TGF−β1(B)、及びEGF(C)の放出を増加しないことが示されている。
【0168】
血小板成長因子の放出、及び特にPDGF−AB、TGF−β1、及びEGFは、血小板がカルシウム及び/又はトロンビンで活性化された時より、S/D処理が行われた時のほうが有意に高いことが初めて示される。S/D処理は高脂質血小板膜の溶解を起こし、そして細胞内アルファ顆粒から血小板由来成長因子を放出することが考えられる。これらの血小板由来成長因子の放出はトロンビン活性が最初に行われると低くなるという事実は、おそらく凝集血小板及び一部の放出された血小板由来成長因子が、出発濃厚血小板に存在するフィブリノーゲンのトロンビン誘導重合によって形成されたフィブリンネットワーク(血小板ゲルとして知られている)内に捕捉される結果起きるのだろう。実際、CaCl2は部分的な活性と内因性トロンビンにより不完全な凝集塊形成を起こす可能性は、約48NIH単位/mlのウシトロンビンを活性化血小板放出物に更に添加しても、血小板由来成長因子の放出を増加しなかったという事実により除外される。血小板の完全な活性化は上記表3に記載したように、極めて低濃度(又は検出不可能)のフィブリノーゲン及び凝固因子によっても裏付けられる。
【0169】
同様に(ここに示さないが)、ウシトロンビンで濃厚血小板を活性化すると、放出物中の血小板成長因子含有量が同じになることがわかった。また、IGF−1含有量はS/D処理後でも本質的に変わらず、カルシウム/トロンビン活性後にわずかに増加することも分かった。この結果は、おそらく殆どのIGFはフリーの循環形で血漿中に存在し、ほんの少量が血小板に存在しているという事実を反映しているのだろう。
【0170】
我々のデータから、S/D処理による血小板溶解は、トロビン活性化、凍結−解凍サイクル及び/又は凍結乾燥のような他で使用される方法よりも、細胞内血小板顆粒から血小板成長因子を浸出液中に放出するために最も効果的な手段であるように見える。初期の研究では、ヒト全血血清における平均PDGFレベルは、17.5ng/ml及び0.06ng/106血小板であることが示されている。これは我々の研究で用いたアフェレーシス濃厚血小板中のおよそ60ng/mlに相当する一方、S/D処理濃厚血小板では平均値が約3倍高いことがわかる。更に、我々のデータにより血小板からのPDGF−AB、TGF−β1、及びEGFの増強された放出はS/D処理が1%TnBP−1%Triton X−45の組み合わせ、2%TnBP、又は1%Triton X−45又は1%Triton X−100のどちらかを用いておこなわれるかどうかにより得られ、そしてS/D剤を除去するためのオイル抽出処理は血小板溶解物で評価された4つの血小板成長因子の含有量を減少しないことが示される。
【0171】
II.4−成長因子濃縮物の脂質含有量の比較
表4に記載したように、出発濃厚血小板のS/D処理又はCaCl2活性化による血小板成長因子濃縮物の脂質含有量を測定し、出発濃厚血小板の含有量と比較した
【0172】
【表4】
【0173】
脂質含有量は日立臨床技術分析装置で測定した。各試験サンプルはpH7.2、886x103血小板/μl、0.1x103白血球(WBC)/μl及び0.08x106赤血球(RBC)/μlの同一出発濃厚血小板から調製された。
【0174】
表4に記載されているように、S/D処理に続くオイル抽出によって調製されたS/D−PC成長因子濃縮物のLDL(低密度リポプロテイン)、HDL(高密度リポプロテイン)、トリグリセリド及びコレステロールの量は、Triton処理血小板又は活性化血小板と比べると、有意に低い。更に、S/D処理によって溶解された血小板を1回又は3回オイル抽出すると、有意な差は見られなかった。
【0175】
本発明の成長因子濃縮物におけるコレステロール、トリグリセリド及びLDLの枯渇は、臨床及び治療目的として重要である。トリグリセリド、及びLDL−コレステロールの組み合わせの役割は動静脈系でのプラーク形成によるアテローム性動脈硬化及び心血管疾患の発症においてよく知られており、それによって心臓麻痺、脳卒中及び抹消血管疾患へとつながる。
【0176】
11.5−成長因子活性
顕微解析により細胞の形、大きさ及び数の変化が明らかになった:細胞をS/D処理又は出発濃厚血小板のCaCl2活性化から得られた血小板由来成長因子濃縮物とインキュベートすると、多数の紡錘形細胞が特に観察された。更に、細胞をSD−PC成長因子濃縮物とインキュベートすると、Act−PC又は成長因子濃縮物とインキュベートしなかった細胞に比べて、細胞計数から時間及び濃度依存性にMG−63骨芽細胞数が有意に増加しているこことが示された。MTT解析でも、Act−PC処理細胞に比べて、SD−PC成長因子存在下インキュベートされた細胞の細胞活性が増加していることが示された。S/D−PC 又はAct−PC成長因子濃縮物のどちらもMG−63骨芽細胞に対する細胞毒性は示さなかった。
【0177】
従って、この研究からS/D処理血小板又は活性化血小板から得られた成長因子は、選択された抽出方法の後でも活性を有していることが示される。しかし、我々の実験で、細胞をS/D処理で得られた成長因子濃縮物とインキュベートすると、細胞反応は有意に増加することが示された。MG−63細胞に関する本発明の方法で得られた濃縮物の改善効果は、成長因子、特にPDGF、TGF−β1、及びEGF(創傷治癒及び組織再生において、これらの因子の重要性は知られている)の含有量の増加、及び/又は活性化濃厚血小板の非存在下又はごく少量の存在下で更に生物学的活性物質量の増加することで生じるのかもしれない。
【0178】
細胞増殖を刺激するウイルス不活化HPGF混合物の能力も、ヒト胎児腎繊維芽細胞(HEK293A;Invitrogen Corporation,Carlsbad,California,USA)及びStatens Seruminstitute ウサギ角膜繊維芽細胞(SIRC)(ATCC CCL−60,Bioresource Collection and Research Center、シンシュー、台湾)を用いて評価された。細胞株を37℃、5パーセントCO2含有の制御された雰囲気下で維持した。平底の96穴プレート(Greiner bio−one,東京、日本)を用い、10%FBS、0.1mM非必須アミノ酸及び1mMピルビン酸ナトリウムを添加したダルベッコ改変イーグル培地(D−MEM)中、ウェル当たり2x103細胞の密度で培養した。
【0179】
細胞を18時間接着させ、それから無血清培地で6時間培養した。細胞を無血清培地で2回洗浄した後、10%FBS(Gibco,Invitrogen)、活性化血小板放出物、又はHPGF(S/D処理、オイル抽出及び疎水性クロマトグラフィ処理をしたPCから調製)を添加したD−MEM培地(Gibco,Invitrogen)で最長5日間培養した。細胞毒性の可能性を検出するため、及びFBS非存在下での細胞増殖促進の最適濃度を見つけるために、様々な濃度のHPGF画分を用いて細胞培養を行った。Promega Corporation(Madison,Wisconsin,USA)のMTSテトラゾリウム化合物を用い、メーカーの使用説明書に従って細胞増殖を測定した。
【0180】
HEK293A細胞から得られたMTSアッセイの結果を図16に示す。細胞を10%(v/v)FBSを添加したD−MEM中で培養すると、高い生存率を示した。FBS非存在下(B)では、細胞増殖は見られなかった。tC18、C18、又はSDRでそれぞれ処理した後の活性化PC及びHPGF混合物の10%(v/v)存在下で培養すると、高い細胞生存率を示した。これは細胞増殖作用を有し且つ無毒性であることを示唆する。図16は、HPGF濃度を3 から20%に増加すると、MTSは濃度依存性に改善することを示す。SIRC細胞から得たMTSデータを図16に示す。HPGFはSIRCの増殖を刺激した。面白いことに、テストしたHPGFの全濃度(最大20%)で、細胞は増殖したが、10%FBSに匹敵する最適濃度は0.1から0.5%HPGFであることがわかった。
【0181】
HPGFは細胞増殖を強化し細胞生存率を維持する。D−MEM培地中の10%(v/v)HPGFはヒトHEK293A繊維芽細胞株の増殖を刺激する。細胞増殖作用は、10%活性化PC放出物又は10%FBSを用いた場合と同じであった。これにより、HPGFの生理活性はウイルス不活化及びS/D除去処理の間に変化しないこと、そして最終調製物は細胞毒性がないこと示された。MTS値は3%から20%(v/v)のHPGF濃度と共に増加した。HPGFはFBSに相当するような方法で、ウサギSIRC細胞株の増殖も強化した。面白いことに、5日目の最も効果的なHPGF濃度は0.3から0.5%のような低濃度であった。HPGFは毒性を示さないことは正常な細胞増殖及び形態から明らかであった。更に、このアッセイで、血小板放出物含有濃縮成長培地はFBSに比べて、細胞増殖の強化及び細胞生存率の維持、及び生体外でのヒトMSCの増殖を可能にし、それらの骨形成、軟骨形成及び脂質生成分化能を増強し、コンフルエントに達する時間を短縮し、colony−forming unit−fibroblastのサイズを増加することが裏付けられる。
【0182】
これらの結果はまた、本発明又は本発明の治療における方法によって得られた成長因子濃縮物、及び改善された細胞培養培を調製するための、重要な可能性を確認するものである。実際、本発明の成長因子濃縮物は、毒性を生じることなしに血小板放出物の細胞増殖刺激活性を維持する。従って、細胞療法及び再生医療において、FBS及び活性化血小板放出物の代替候補として考慮することができる。
【0183】
II.6-フィブリノーゲン枯渇GF濃縮物の調製
a.GF混合物の調製
PC(約300ml)を採取後24時間以内に処理した。最初に、1%トリ−n−ブチルホスフェート(TnBP;Merck KGaA,Darmstadt,Germany)及び1%Triton X−45(Sigma,Missouri,USA)(総量=6mL)の組み合わせを用いて、イン−バッグ(in−bag)で溶媒/界面活性剤(S/D)処理を行った。S/D−PC混合物を完全に混合するために1分間激しく振盪し、それから一定の緩やかな撹拌条件下で、31℃の水槽に少なくとも1時間浸漬した。S/D処理終了、S/D−PC混合物を30mL(10%v/vに相当)の大豆オイル(Sigma,Missouri,USA)で1回抽出した。オイル添加後、バッグを1分間激しく振盪し、それから20分間回転シェーカー上に置いた。混合物を30分間デカンテーションし、PCフェーズからオイルフェーズを分離した。PC(下層;約280ml)が重力により回収された。オイル抽出終了時、S/D−PCを10,500rpm(10,400 x g)で15分間、室温(20〜25℃)で遠心分離した。
【0184】
30mlの上清をオクタデシル(C18;batch WAT020594,ドライパウダー;125Å ポロシティ;55〜105μmの顆粒サイズ)充填剤を用いて、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)カラムにより無希釈で処理した。クロマトグラフの材料をカラムに充填し、5体積の1M塩化ナトリウムと20%エタノールで洗浄し、20mMクエン酸バッファ5体積、pH7.4で平衡化した。SD−PCをHIC吸着剤ml当たり7mlの割合及び22.6cm/hrの線速度で注入した。280nmでの吸収が増加し、そしてその吸収がベースラインに戻るとすぐに、C18流出液(C18−GF)を回収した。用いた実験条件下で、カラム通過画分の体積は60〜80mLであり、注入されたSD−PC体積に比べて2から3倍の希釈係数に相当した。
【0185】
研究過程で、他の2つのHIC吸着剤も上記と同様な実験条件下で評価した:tC18吸着剤(batch WAT036810;ドライパウダー;125Åポロシティ;36.1〜54.2μmの顆粒サイズ;Waters Corporation)及びSDR HyperD 吸着剤(batch 20033−0223,40〜100μm顆粒サイズ;Pall−BioSepra, Cergy Saint Christophe,France).
【0186】
b.トロンビン活性化によるフィブリノーゲンの除去
フィブリノーゲン(及び他の凝固因子)は、(a)0.3mlの1M CaCl2(最終濃度23mM)及びガラスビーズ(内因性ヒトトロンビン生成のため)又は(b)最終濃度約50IU/mlとするための1000IUウシトロンビンのどちらかを添加することにより、C18クロマトグラフィ後に得られた成長因子混合物10mlの活性化によって除去された。フィブリン塊ができるまで混合物を緩やかな回転混合(60rpm)下においた。上清を回収し、分注し、そして測定した。
【0187】
c.フィブリノーゲンの測定
【0188】
【表5】
【0189】
このデータにより、フィブリノーゲンはCaCl2又は外来性トロンビンを用いて活性化した後、完全に除去されることが示される。
【0190】
d.成長因子の測定
【0191】
【表6】
【0192】
成長因子はフィブリノーゲン除去後、尚上清に存在することがデータから示される。
従って、フィブリノーゲンが(上記方法により)除去されたウイルス不活化成長因子混合物は細胞培養、特に幹細胞培養の添加剤として、使用できる可能性がある。
【0193】
II.7−ウイルス不活化
更に、ここで使用されたS/D処理条件は血液感染性エンベロープウイルス、特にHIV、HBV及びHCVの不活化に効果的であるという証拠が多数ある。
【0194】
上記材料及び方法で述べたように、31℃での1%TnBP−1%Triton X−45の組み合わせは5分以内の処理において、HIV、BVDV及びPRVに対して減少係数、>5.6、>6.6、及び>6.4log10を保証し、そして>7.0log10で急速にVSV及びSindbisモデルウイルスを不活化する。HAV及びパルボウイルスB19のような非エンベロープウイルスはS/D処理で不活化されないかもしれないが、それらは免疫機能の変化した数名患者にのみ病原性を示す。単一ドナーの同種異系の血小板由来成長因子調製品ではプールしていない場合、統計学上、汚染リスクが極めて減少するだろう。しかし、更に非エンベロープウイルスによる汚染リスクを減少するために、ナノ濾過を実行してもよい。
【0195】
明らかに、ここに記載されたように、血小板由来成長因子は将来、適正製造基準、医薬品製造管理および品質管理基準(GMP)の条件下、例えば血液施設(ヒト由来血漿分画製剤のウイルス安全性の確保のためのウイルス不活化及び除去処理工程に係るガイドラインwww.WHO.int.Geneva,2003:1−72)によって製造しなければならだろう。このような血小板製剤のS/D処理は、局所適用として実用面で利点を多数提供することができる。第一に、同種異系での提供におけるウイルスに関する安全性が改善され、このような製剤の臨床的可能性がより広がるだろう。第二に、S/D処理により放出される、より高力価の血小板由来成長因子は血小板放出物を用いる方法の費用対効果の改善が可能になるだろう。第三に、組み換え血小板由来成長因子の使用が承認されないような適用において、又は、天然の血小板由来成長因子の組み合わせが有効な相乗的結果をもたらす可能性がある時、もし承認されれば(数種の下肢の糖尿病性潰瘍の治療に関し)、このウイルス不活化方法により、同種異系の血小板由来成長因子が簡便に使用することができるだろう。最後に、十分に特徴づけられたウイルス不活化血小板由来成長因子は、ウシ胎仔血清又は細胞工学研究のための組み換え血小板由来成長因子の代替物として、治癒過程を促進するので局所に適用するフィブリンベースの足場か又は人工の足場に組み込むんで使用可能であり、又は生体外での間葉幹細胞の増殖、及びそれらの骨細胞、又は軟骨細胞への分化のためにも使用可能であろう。
【0196】
III.成長因子の分離:SDの除去及び成長因子画分の分離のためのイオン交換クロマトグラフィ実験
1.適切なクロマトグラフ支持体の選択及び各種成長因子の結合能力決定のためのバッチ吸着工程の予備試験
a. A PDGF−ABの吸着テスト
先に記載したように、SD−PCを得た。TnBP及びTriton X−45の量を減少するため、1回のオイル抽出が行われた。5mlのSP−セファロースFFゲル、CM−セファロースFF、DEAE−セファロースFFをカラム中で洗浄し、ゲルを20mMクエン酸ナトリウム、0.05M NaClバッファで、pH7.5で平衡化した(流出液のpHと伝導度は出発バッファと同じ)。ゲルをカラムから出してビーカーの中に回収した。希釈NaOHで、SD−PCのpHを7.5に調製した。各ゲルの1gを別々のチューブに入れて余剰バッファを除いた。様々な量のSD−PCを各種のゲルに加えた。チューブを低速で30分間回転させ、約5〜10分間ゲルを沈殿させた。可能な限り多くの上清を回収し、成長因子含有量を測定するためにサンプルを採取した。
【0197】
出発SD−PCは280ng/mlのPDGF−ABを含んでいた。カチオン交換ゲルであるSP−セファロースFF及びCM−セファロースFFのゲル1ml当たり3から10mlのSD−PCの割合で使用した時、PDGF−ABの最大吸着を得た。ゲル1gに対してSD−PC10mlの割合で、SP−セファロースFFと接触させた後、上清中に少量のPDGF−ABしか存在しないということから明らかなように、SP−セファロースFFを用いると特に高い吸着が得られた。反対に、DEAE−セファロースFF(約250ng/g)でSD−PCを吸着した後に得られた上清には、多量のPDGF−ABが存在した。これらのデータは図7に示す。
【0198】
b.VEGFの吸着テスト
先に記載したように、SD−PCを得た。TnBP及びTriton X−45の量を減少するため、1回のオイル抽出が行われた。5mlのSP−セファロースFFゲル、CM−セファロースFF、DEAE−セファロースFFをカラム中で洗浄し、ゲルを20mMクエン酸ナトリウム、0.05M NaClバッファで、pH7.5で平衡化した(流出液のpHと伝導度は出発バッファと同じ)。ゲルをカラムから出してビーカーの中に回収した。希釈NaOHで、SD−PCのpHを7.5に調整した。各ゲルの1gを別々のチューブに入れて余剰バッファを除いた。様々な量のSD−PCを各種のゲルに加えた。チューブを低速で30分間回転させ、約5〜10分間ゲルを沈殿させた。可能な限り多くの上清を回収し、成長因子含有量を測定するためにサンプルを採取した。
【0199】
図8に、ゲルに対するSD−PCの割合に基づいた各種レジンにおけるVEGFの吸着%を示す。VEGFは本質的に吸着されなかったので、アニオン交換体DEAE−セファロースFFを特にゲル1gにたいして10mlのSD−PCの割合で使用すると、VEGFの吸着が限定されることがデータにより示される。反対に、VEGFは高い割合(約60%)でSP−セファロースFF及びCM−セファロースFFにより吸着された。
【0200】
c. TGF−β1の吸着テスト
先に記載したように、SD−PCを得た。TnBP及びTriton X−45の量を減少するため、1回のオイル抽出が行われた。5mlのSP−セファロースFFゲル、CM−セファロースFF、DEAE−セファロースFFをカラム中で洗浄し、ゲルを20mMクエン酸ナトリウム、0.05M NaClバッファで、pH7.5で平衡化した(流出液のpHと伝導度は出発バッファと同じ)。ゲルをカラムから出してビーカーの中に回収した。希釈NaOHで、SD−PCのpHを7.5に調整した。各ゲルの1gを別々のチューブに入れて余剰バッファを除いた。様々な量のSD−PCを各種のゲルに加えた。チューブを低速で30分間回転させ、約5〜10分間ゲルを沈殿させた。可能な限り多くの上清を回収し、成長因子含有量を測定するためにサンプルを採取した。
【0201】
図9はゲルに対するSD−PCの割合に基づいた各種レジンにおけるTGF−β1の吸着%を示す。アニオン交換体DEAE−セファロースFFのゲル1ml当たり3mlのSD−PCの割合で使用すると、70%を超えるTGF−β1が吸着され、最大吸着を得た。反対に、少量(約20%又はそれ以下)のTGF−β1がCM−セファロースFF及びSP−セファロースFFに吸着された。
【0202】
d.EGFの吸着テスト
先に記載したように、SD−PCを得た。TnBP及びTriton X−45の量を減少するため、1回のオイル抽出が行われた。5mlのSP−セファロースFFゲル、CM−セファロースFF、DEAE−セファロースFFをカラム中で洗浄し、ゲルを20mMクエン酸ナトリウム、0.05M NaClバッファで、pH7.5で平衡化した(流出液のpHと伝導度は出発バッファと同じ)した。ゲルをカラムから出してビーカーの中に回収した。希釈NaOHで、SD−PCのpHを7.5に調整した。各ゲルの1gを別々のチューブに入れて余剰バッファを除いた。様々な量のSD−PCを各種のゲルに加えた。チューブを低速で30分間回転させ、約5〜10分間ゲルを沈殿させた。可能な限り多くの上清を回収し、成長因子含有量を測定するためにサンプルを採取した。
【0203】
図10はゲルに対するSD−PCの割合に基づいた各種レジンにおけるEGFの吸着%を示す。アニオン交換体DEAE−セファロースFFのゲルのg当たり3mlのSD−PCの割合で使用すると、70%を超えるEGFが吸着され、最大吸着を得た。反対に、少量(15から30%)がSP−セファロースFFに吸着され、CM−セファロースFFを用いると更に少量(5から20%)が吸着された。
【0204】
e.結論
カチオン交換SP−セファロースFF及びCM−セファロースFFは、PDGF−AB及びVEGFの吸着に適合することが分かった。一方、DEAE−セファロースFFはTGF−β1及びEGFの吸着に対して満足な結果が得られた。
【0205】
2.SP−セファロース FFカラムクロマトグラフィ実験
イオン交換体を使用したときSDが除去されているかどうかを確認するため、更に以下の実験を行った。
【0206】
a.SD−PCの調製
この実験では、SD−PCに対し1回のオイル抽出が行われた。使用されたSP−セファロース FFの量は、バッチ吸着実験で測定されたように、1回のオイル抽出が行われたSP−PCの100mlに対して10ml(約10g)だった。
【0207】
b.カラムの平衡化
SP−セファロースFFをカラム(GE Healthcare)に充填した。カラムに充填後、SP−セファロースFFを20mMクエン酸ナトリウム、0.05M NaClバッファで、pH7.5で平衡化した。流出液のpHと伝導度が平衡バッファと同じになるまで、平衡バッファを50cm/hrの線速度でカラムに流した。280nmでの流出液の吸収が記録された。
【0208】
c.SD−PC注入とカラム通過液の収集
希釈NaOHでSD−PCのpHを7.5に調節し、それから50cm/hrの線速度でカラムに注入した。A280nmが増加し始めたらすぐに流出液を収集した。
【0209】
d.ベースラインへの戻りと成長因子溶出
全SD−PCを注入し、A280nmが初期のベースラインに戻るまで、カラムを平衡バッファで洗浄した。その後、SP−セファロースFFを20mMクエン酸ナトリウム、1M NaClバッファで、pH7.5及び50cm/hrで平衡化した。A280nmが増加し始め、ベースラインA280nmのレベルへ戻ると、すぐに溶出液を収集した。
【0210】
e.カラム再生と保存
カラムはその後、2M塩化ナトリウムの2カラム体積、続いて0.5N NaOHの2カラム体積で再生された。
【0211】
f.結果
表6はカラム溶出液中の成長因子含有量を、表7は溶媒及び界面活性剤含有量を示す。
【0212】
【表7】
【0213】
表6は、SP−溶出液はPDGF−AB及びPDGF−BBが濃縮され、PDGF−AA及びVEGFの両方を分離可能なことを示す。一方、TnBP及びTriton X−45カラム通過(流出)画分で見られた(表7参照)。1M PDGF−AB/VEGF溶出液では、これらウイルス不活性化剤の混入は検出できなかった。
【0214】
【表8】
【0215】
3.DEAE−セファロースFFカラムクロマトグラフィ実験
a.SD−PCの調製
PC(約300ml)を採取後24時間以内に処理した。最初に、1%トリ−n−ブチルホスフェート(TnBP;Merck KGaA, Darmstadt, Germany)及び1%Triton X−45(Sigma,Missouri,USA)(総量=6mL)の組み合わせを用いて、イン−バッグ(in−bag)で溶媒/界面活性剤(S/D)処理を行った。S/D−PC混合物を完全に混合するために1分間激しく振盪し、それから一定の緩やかな撹拌条件下で、31℃の水槽に少なくとも1時間浸漬した。S/D処理終了、S/D−PC混合物を30mL(10%v/vに相当)の大豆オイル(Sigma,Missouri,USA)で1回抽出した。オイル添加後、バッグを1分間激しく振盪し、それから20分間回転シェーカー上に置いた。混合物を30分間デカンテーションし、PCフェーズからオイルフェーズ分離した。PC(下層;約280ml)が重力により回収された。オイル抽出終了時、S/D−PCを10,500rpm(10,600xg)で15分間、室温(20〜25℃)で遠心分離した。
【0216】
b.Hi−Trap(商標)DEAE−セファロースFF
20mLの上清を充填済みですぐに使用できる(直ちに使用できるように予備包装されている)カラムを用いアニオン交換クロマトグラフィによる希釈を行わずに処理した。Hi−Trap(商標)DEAE−セファロースFFの使用量は、20mlのSD−PCサンプルに対して5mlであった。カラムを5体積の20mMクエン酸ナトリウム、0.05M NaClバッファ、pH7.5で平衡化した。SD−PC(20mL)が流速50cm/hrで注入され、続いて平衡バッファが注入された。280nmでの吸収が増加し、そしてそれがベースラインへ戻るとすぐに、カラム通過画分(DEAE−BKT)を回収した。カラム通過画分の体積は49.7mLであった。それから更に5体積の平衡バッファでカラムを洗浄して完全にSDをカラム通過画分中へ洗い流した。カラムはそれから20mMクエン酸ナトリウム、1M NaClバッファ、pH7.5、線速度50cm/hrで溶出された。280nmでの吸収が増加し、そしてそれがベースラインへ戻るとすぐに、この溶出液を収集した(体積:10mL)。
【0217】
図12及び13は調製工程中にng/ml及び総ngで表示されたEGF含有量を示す。対応する溶出液は280nmでの吸収が増加し、そしてそれがベースラインへ戻るとすぐに、収集された。収集された体積は17.9mLであった。カラム通過画分及び溶出液のSD剤及び成長因子が測定された(表8参照)。
【0218】
【表9】
【0219】
データはDEAEクロマトグラフィの工程により、1回のオイル抽出後にSD−PC中に存在したS/D剤が除去されたことを示す。S/D剤をカラム通過画分及び1M NaCl溶出液中で収集したが、検出不可能な量であることがわかった。
【0220】
c.成長因子VEGF及びPDGF−AB含有量
カラム通過画分及び溶出液中の成長因子VEGF及びPDGF−ABの含有量について解析した。図14及び15は総ngで表示された成長因子の含有量を示す。PDGF−AB及びVEGFはDEAE−セファロースマトリックスに結合せず、カラム通過画分中に存在した(この適用での文脈では、用語ゲルとマトリックスは同じ意味である)。反対に、EGFはゲルに吸着され、カラムからSD剤が存在せずに溶出された。
【0221】
上記のアニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフによる処理は、上記に例示したように、オイル抽出されたSD−PCで行うことができるが、オイル抽出を伴わないSD−PCに直接応用することもできる。TnBP及びTriton X−45の混入量が減るので、カラム洗浄に必要なバッファ体積が減り、ベースラインへの戻りがより早くなるので、オイル抽出を行うことが好ましい。オイル抽出は、クロマトグラフ材料の目詰まりとそれによる分離技術の効率低下を招きやすい脂質量も減少する。しかし、オイル抽出は除外されてもよい。
【0222】
上記のアニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフによる処理は、従ってS/D処理後直接行ってもよいが、オイル抽出後、又はS/D処理後又はオイル抽出後に使用されるなら、疎水性カラムの通過画分で行われることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的及び/又は化粧的用途のための、凝固可能な血小板成長因子濃縮物。
【請求項2】
成長因子PDGF、TGF−β、IGF、EGF、CTGF、bFGF及びVEGFを含む、請求項1に記載の凝固可能な血小板成長因子濃縮物。
【請求項3】
血液細胞関連輸血反応のリスクがないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の凝固可能な血小板成長因子濃縮物。
【請求項4】
フィブロネクチン、ビトロネクチン、トロンボスポンジン、フォンビルブランド因子、及び凝固因子II、V、VII、VIII、IX、X及びXIからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質を更に含む、請求項1又は3のいずれか1項に記載の凝固可能な血小板成長因子濃縮物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の凝固可能な血小板成長因子濃縮物であって、
‐凝固可能な血小板成長因子濃縮物のコレステロール濃度が、100未満、好ましくは50未満、更に好ましくは35mg/dl未満;及び/又は
‐凝固可能な血小板成長因子濃縮物のトリグリセリド濃度が、100未満、好ましくは50未満、更に好ましくは30mg/dl未満;及び/又は
‐凝固可能な血小板成長因子濃縮物のHDL濃度が、30未満、好ましくは15未満、更に好ましくは10mg/dl未満である。
‐凝固可能な血小板成長因子濃縮物のLDL濃度が、80未満、好ましくは50未満、更に好ましくは20mg/dl未満、そしてより好ましくは5mg/dl未満である、血小板成長因子濃縮物。
【請求項6】
凝固可能な血小板成長因子濃縮物の製造法であって、以下のステップ:
a)出発血小板濃縮物と溶媒及び/又は界面活性剤とを接触させ、
b)出発血小板濃縮物と溶媒及び/又は界面活性剤とを、少なくとも5分から6時間、約6.0から約9.0の範囲内に維持されたpH、及び2℃から50℃の範囲内の温度でインキュベートし、そして
c)オイル抽出及び/又はクロマトグラフィ法により溶媒及び/又は界面活性剤を除去すること、
を含む、製造法。
【請求項7】
前期溶媒が、ジ-又はトリアルキルホスフェート、異なるアルキル鎖を有するジ-又はトリアルキルホスフェートである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒がトリ−n−ブチルホスフェート(TnBP)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記界面活性剤が、脂肪酸のポリオキシエチレン誘導体、ソルビトール無水物の部分エステル、非イオン性界面活性剤、デオキシコール酸ナトリウム及びスルホベタインからなる群から選択される、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記界面活性剤が、Triton X−45、Triton X−100又はTween 80である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒及び/又は界面活性剤の各々の最終濃度が、出発血小板濃縮物の体積に対して、0.2から5%の体積である、請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
出発血小板濃縮物の体積に対して2%TnBPのみ、又は1%TnBP及び1%Triton X−45のいずれかを、血小板濃縮物に接触させる、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
オイル抽出が医薬品グレードのオイルで行われ、前記オイルは、血小板濃縮物と溶媒及び/又は界面活性剤との混合物の重量基準で、2から20重量%、又は5から15重量%又は5から10重量%の量で用いられる、請求項6〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記クロマトグラフィ法が、疎水性(逆相)カラム、好ましくはC18シリカ充填材、又はSDR(溶媒‐界面活性剤除去)hyper Dを含む、請求項6〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記クロマトグラフィ法が、アニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフィカラムを含む、請求項6〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
更なるステップ(c1)を含み、該ステップ(c1)は、少なくとも1つのアニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフィ分離を含む、請求項6〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記カチオン性クロマトグラフィが、強カチオンクロマトグラフィであり、及び/又は前記アニオン性クロマトグラフィが弱アニオンクロマトグラフィである、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(c)が、少なくとも1回のオイル抽出、続いて強カチオン交換体でのクロマトグラフィ及び弱アニオン交換体でのクロマトグラフィを含み、該強カチオン交換体が好ましくはSP−セファロースであり、該弱アニオン交換体が好ましくはDEAE−セファロースである、請求項6〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
更なる濃縮のステップ(d)、好ましくは限外ろ過、好ましくは5000ダルトン以下の切断値を有する膜での限外ろ過を含む、請求項6〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
10から75nmのポアサイズのろ過膜を用いるナノろ過の、更なるステップ(e)を含む、請求項6〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ステップa)の前に、出発血小板濃縮物を調製することからなる予備ステップを含む、請求項6〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
出発血小板濃縮物をアフェレーシス又は全血から分離したバフィーコートによって調製する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記出発血小板濃縮物が、新鮮であり、保存期間を超えているか、又は保存期間を超え且つ凍結されている、請求項6〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
好ましくはCaCl2又はトロンビンを添加することにより、成長因子の混合物からフィブリノーゲンを除去する、更なるステップ(f)を含む、請求項6〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の治療的及び/又は化粧的用途のための凝固可能な血小板成長因子濃縮物調製のための、請求項6〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
請求項6〜24のいずれか1項に記載の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物、又は請求項1〜5のいずれか1項に記載の治療的及び/又は化粧的用途のための凝固可能な血小板由来成長因子濃縮物と、トロンビンとを混合することからなる、凝集塊を形成する方法。
【請求項27】
活性が20IU/mlから1000IU/mlの範囲にある0.1から1体積のトロンビンと、凝固可能な血小板成長因子濃縮物の1体積とを混合する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記トロンビンがヒトトロンビンである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
請求項6〜24のいずれか1項に記載の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物、又は請求項1〜5のいずれか1項に記載の治療的及び/又は化粧的用途のための凝固可能な血小板成長因子濃縮物、を含む医薬品。
【請求項30】
凝集塊を形成するための、請求項6〜24のいずれか1項に記載の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物、又は請求項1〜5のいずれか1項に記載の治療的及び/又は化粧的用途のための凝固可能な血小板成長因子濃縮物の使用。
【請求項31】
骨再生又は軟組織及び硬組織治癒のための、請求項6〜24のいずれか1項に記載の方法によって得られる凝固可能な血小板由来成長因子濃縮物、又は請求項1〜5のいずれか1項に治療的及び/又は化粧適用途のための凝固可能な血小板成長因子濃縮物の使用。
【請求項32】
インビトロ又はエクスビボでの細胞培養のための、請求項6〜24のいずれか1項に記載の方法によって得られる凝固可能な血小板由来成長因子濃縮物、又は請求項1〜5のいずれか1項に治療的及び/又は化粧適用途のための凝固可能な血小板成長因子濃縮物の使用。
【請求項1】
治療的及び/又は化粧的用途のための、凝固可能な血小板成長因子濃縮物。
【請求項2】
成長因子PDGF、TGF−β、IGF、EGF、CTGF、bFGF及びVEGFを含む、請求項1に記載の凝固可能な血小板成長因子濃縮物。
【請求項3】
血液細胞関連輸血反応のリスクがないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の凝固可能な血小板成長因子濃縮物。
【請求項4】
フィブロネクチン、ビトロネクチン、トロンボスポンジン、フォンビルブランド因子、及び凝固因子II、V、VII、VIII、IX、X及びXIからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質を更に含む、請求項1又は3のいずれか1項に記載の凝固可能な血小板成長因子濃縮物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の凝固可能な血小板成長因子濃縮物であって、
‐凝固可能な血小板成長因子濃縮物のコレステロール濃度が、100未満、好ましくは50未満、更に好ましくは35mg/dl未満;及び/又は
‐凝固可能な血小板成長因子濃縮物のトリグリセリド濃度が、100未満、好ましくは50未満、更に好ましくは30mg/dl未満;及び/又は
‐凝固可能な血小板成長因子濃縮物のHDL濃度が、30未満、好ましくは15未満、更に好ましくは10mg/dl未満である。
‐凝固可能な血小板成長因子濃縮物のLDL濃度が、80未満、好ましくは50未満、更に好ましくは20mg/dl未満、そしてより好ましくは5mg/dl未満である、血小板成長因子濃縮物。
【請求項6】
凝固可能な血小板成長因子濃縮物の製造法であって、以下のステップ:
a)出発血小板濃縮物と溶媒及び/又は界面活性剤とを接触させ、
b)出発血小板濃縮物と溶媒及び/又は界面活性剤とを、少なくとも5分から6時間、約6.0から約9.0の範囲内に維持されたpH、及び2℃から50℃の範囲内の温度でインキュベートし、そして
c)オイル抽出及び/又はクロマトグラフィ法により溶媒及び/又は界面活性剤を除去すること、
を含む、製造法。
【請求項7】
前期溶媒が、ジ-又はトリアルキルホスフェート、異なるアルキル鎖を有するジ-又はトリアルキルホスフェートである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒がトリ−n−ブチルホスフェート(TnBP)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記界面活性剤が、脂肪酸のポリオキシエチレン誘導体、ソルビトール無水物の部分エステル、非イオン性界面活性剤、デオキシコール酸ナトリウム及びスルホベタインからなる群から選択される、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記界面活性剤が、Triton X−45、Triton X−100又はTween 80である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒及び/又は界面活性剤の各々の最終濃度が、出発血小板濃縮物の体積に対して、0.2から5%の体積である、請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
出発血小板濃縮物の体積に対して2%TnBPのみ、又は1%TnBP及び1%Triton X−45のいずれかを、血小板濃縮物に接触させる、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
オイル抽出が医薬品グレードのオイルで行われ、前記オイルは、血小板濃縮物と溶媒及び/又は界面活性剤との混合物の重量基準で、2から20重量%、又は5から15重量%又は5から10重量%の量で用いられる、請求項6〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記クロマトグラフィ法が、疎水性(逆相)カラム、好ましくはC18シリカ充填材、又はSDR(溶媒‐界面活性剤除去)hyper Dを含む、請求項6〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記クロマトグラフィ法が、アニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフィカラムを含む、請求項6〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
更なるステップ(c1)を含み、該ステップ(c1)は、少なくとも1つのアニオン性及び/又はカチオン性クロマトグラフィ分離を含む、請求項6〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記カチオン性クロマトグラフィが、強カチオンクロマトグラフィであり、及び/又は前記アニオン性クロマトグラフィが弱アニオンクロマトグラフィである、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(c)が、少なくとも1回のオイル抽出、続いて強カチオン交換体でのクロマトグラフィ及び弱アニオン交換体でのクロマトグラフィを含み、該強カチオン交換体が好ましくはSP−セファロースであり、該弱アニオン交換体が好ましくはDEAE−セファロースである、請求項6〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
更なる濃縮のステップ(d)、好ましくは限外ろ過、好ましくは5000ダルトン以下の切断値を有する膜での限外ろ過を含む、請求項6〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
10から75nmのポアサイズのろ過膜を用いるナノろ過の、更なるステップ(e)を含む、請求項6〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ステップa)の前に、出発血小板濃縮物を調製することからなる予備ステップを含む、請求項6〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
出発血小板濃縮物をアフェレーシス又は全血から分離したバフィーコートによって調製する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記出発血小板濃縮物が、新鮮であり、保存期間を超えているか、又は保存期間を超え且つ凍結されている、請求項6〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
好ましくはCaCl2又はトロンビンを添加することにより、成長因子の混合物からフィブリノーゲンを除去する、更なるステップ(f)を含む、請求項6〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の治療的及び/又は化粧的用途のための凝固可能な血小板成長因子濃縮物調製のための、請求項6〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
請求項6〜24のいずれか1項に記載の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物、又は請求項1〜5のいずれか1項に記載の治療的及び/又は化粧的用途のための凝固可能な血小板由来成長因子濃縮物と、トロンビンとを混合することからなる、凝集塊を形成する方法。
【請求項27】
活性が20IU/mlから1000IU/mlの範囲にある0.1から1体積のトロンビンと、凝固可能な血小板成長因子濃縮物の1体積とを混合する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記トロンビンがヒトトロンビンである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
請求項6〜24のいずれか1項に記載の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物、又は請求項1〜5のいずれか1項に記載の治療的及び/又は化粧的用途のための凝固可能な血小板成長因子濃縮物、を含む医薬品。
【請求項30】
凝集塊を形成するための、請求項6〜24のいずれか1項に記載の方法によって得られた凝固可能な血小板成長因子濃縮物、又は請求項1〜5のいずれか1項に記載の治療的及び/又は化粧的用途のための凝固可能な血小板成長因子濃縮物の使用。
【請求項31】
骨再生又は軟組織及び硬組織治癒のための、請求項6〜24のいずれか1項に記載の方法によって得られる凝固可能な血小板由来成長因子濃縮物、又は請求項1〜5のいずれか1項に治療的及び/又は化粧適用途のための凝固可能な血小板成長因子濃縮物の使用。
【請求項32】
インビトロ又はエクスビボでの細胞培養のための、請求項6〜24のいずれか1項に記載の方法によって得られる凝固可能な血小板由来成長因子濃縮物、又は請求項1〜5のいずれか1項に治療的及び/又は化粧適用途のための凝固可能な血小板成長因子濃縮物の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a)】
【図5b)】
【図6a)】
【図6b)】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a)】
【図5b)】
【図6a)】
【図6b)】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【公表番号】特表2011−508771(P2011−508771A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541128(P2010−541128)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【国際出願番号】PCT/IB2009/000013
【国際公開番号】WO2009/087560
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(510187370)クオ レイ バイオメディカル テクノロジー コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【国際出願番号】PCT/IB2009/000013
【国際公開番号】WO2009/087560
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(510187370)クオ レイ バイオメディカル テクノロジー コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
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