説明

凝固時間のNMR検出

本発明は、凝固並びに検体の凝集反応及び線維素溶解現象を含む凝固関連活動の検出に関する。より詳細には、本発明は、NMRベース検出器を使用して凝固をモニタリングし、及び/又は検体の凝固時間を求めるための方法及び装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固、並びに例えば検体(例えばヒトの血液検体など)の凝集反応及び線維素溶解現象などの凝固関連活動の検出に関する。より詳細には、本発明は、NMRベース検出器を使用して検体(例えば血漿、血液濃縮物、クエン酸塩添加血液など)の凝固時間を求めるための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
止血、すなわち無傷の血管内の血液の流れ状態を維持しつつ止血栓形成により流出を阻止することによって過度の失血を防ぐ生理学的プロセスは、血管壁、血小板、及び血漿タンパクの厳密に調整された相互作用によって維持される。正常な状態においては、この止血系の個々の構成要素間において繊細にバランスが取られている。止血能と呼ばれるこのバランスに何らかの障害が生じると、出血が止まらなくなるか、又は望ましくない血塊が形成される(血栓症)おそれがある。凝血機能の臨床的評価が外科患者の管理において重要であることが長年にわたり認識されている。術前においては、患者の血液の凝血機能の評価は、患者の出血リスクの予測材料として利用され、それにより血液成分の準備の改善が可能となる。また、外科的処置又は心臓処置(例えば心肺バイパスなど)の際の凝固因子の消耗の結果、前駆凝固因子(procoagulants)、フィブリノーゲン、及び血小板の血液希釈によって凝固障害が引き起こされる可能性があるため、患者の血液の凝血機能の術中モニタリングも重要である。また、凝血機能の術後評価も、患者の正常な回復には極めて重要であり得る。
【0003】
凝固は、液体又は溶液の、軟質、半固体、又は固体の塊への変形として定義される。血液は、本来、外傷又は病理状態により血管損傷が生じた場合には、凝固又は凝血して障壁を形成する。接触活性化経路すなわちトロンボプラスチン制御経路(公式には外因性経路として知られている)と、組織因子経路すなわちプロトロンビン/フィブリノーゲン制御凝固経路(公式には内因性経路として知られている)との、二つの凝固経路がよく知られている。これら接触活性化経路及び組織因子経路の両経路は、フィブリノーゲンをフィブリンに転化するように触媒作用するタンパク分解酵素であるトロンビンを結果的に生成させる。
【0004】
血液凝固分析又は凝血分析は、主に、被検体(例えば患者など)の止血状態又は凝固状態をスクリーニング若しくは診断及び/又はモニタリングするために利用される。プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)又は活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリノーゲン分析、トロンビン凝固時間(TCT、TAT、又はTT)、活性凝固時間(ACT)を含む、多数のタイプの凝固分析が存在する。PTは、凝固の接触活性化経路をモニタリングし、そのため例えばワーファリン治療などの抗血栓治療などのモニタリングに有用である。PTT又はAPTTは、組織因子凝固カスケード(例えば第VIII因子、第IX因子、第XI因子、第XII因子、他の酵素及び因子など)における因子変化を検出し、そのため主にヘパリン治療をモニタリングするために利用される。同様にACTは、凝固の組織因子経路を評価し、そのため、例えば患者が高投与量のヘパリンを投与された場合などAPTT検査が実施できない状況において、例えばヘパリン治療などの抗凝固治療などのモニタリングに有用である。TCTは、いずれの経路における欠陥に対しても感度を有さず、フィブリノーゲン重合を検査するためのプロトロンビンのレベルにて共通経路を測定する。クラウス法(凝血法)によるフィブリノーゲン分析は、検体の凝固を開始させるためのトロンビンの活性レベルを利用し、結果的に得られる凝固時間は、検体中のフィブリノーゲンのレベルと相関する。
【0005】
患者の臨床的評価のための凝固分析の大多数が、PT検査を利用して実施される。PT検査は、組織トロンボプラスチンの添加による接触活性化凝固経路の活性化を測定する。PT検査は、例えば、抗血栓治療(例えば抗凝固治療など)を受けている患者のモニタリングや、例えば後天性血小板機能欠陥、先天性血小板機能欠陥、先天性プロテインC欠損又は先天性プロテインS欠損、深部脳内出血、DIC(播種性血管内血液凝固)、第II因子欠損、第V因子欠損、第VII因子欠損、第X因子欠損、溶血性尿毒症症候群(HUS)、血友病A、血友病B、出血性脳卒中、肝性脳症、肝腎症候群;高血圧性脳内出血、特発性血小板減少性紫斑(ITP)、脳内出血、脳葉内出血、胎盤早期剥離、一過性脳虚血発作(TIA)、及びウィルソン病を含む様々な凝血障害の状態の評価を含む、複数の様々な用途に利用することが可能である。
【0006】
従来的には、凝固パラメータは、「湿式化学」検査によって判定される。この検査においては、血液検体のアリコートが、一つ又は複数の液体凝固試薬と混合され、血液が凝塊する時点が、検出される。結果は、直ちに(数秒後に)、又は各正常値に対する比率(パーセントで)などの導出量の形式で示される。PTに関しては、凝血を示唆するための共通の導出結果には、%Quick値、及びWHO規格のINR(国際標準化比率)値が含まれる。
【0007】
血液検体の凝固時間を測定するための複数の様々な装置及び方法が存在する。凝固検出方法には、粘度上昇の検出(粘度検出法)、混濁度の検出(混濁度検出法)、及び粘度/混濁度検出を組み合わせた方法が含まれる。凝固検出の他の方法は、一つ又は複数の凝固試薬を含浸された多層の多孔性膜を用いる。含浸される凝固試薬(又は複数の凝固試薬)が、検体(例えば所定の血液体積)の凝固を開始させて、検出可能な信号を生成するが、この分析は、時として所定の血液体積を要する。さらに他の方法は、変化する電場内での試薬中に懸濁された磁性粒子の振動の検出を利用する。この場合に、振動は、血液検体が凝固するのにつれて変化する。さらに他の方法は、凝血反応の前後における検体による光吸収の変化を単に測定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
殆どの現行の方法が、ポイントオブケア検査又は家庭での使用にとって不向き又は不都合となる制約を有している。ある方法は、特殊な血液検体の準備及び取扱い、又は複雑な装置を要し、そのため認定されたスタッフを配した中核的な実験室施設にしか適していない。他の方法は、家庭での使用が可能であるが、商業化するには費用効果的なものではないか、又は実施が困難なものとなる(例えば、多孔性膜による検体の濾過を要する方法は、湿潤及び均一に試薬を含浸させるという難題が生ずる)。
【0009】
さらに、実施のコスト及び困難さの他にも、複数の方法が、凝固を直接的には測定せず、殆どの検査が、添加物の利用を伴わずに凝固を測定するものではない。間接的な測定は、多くの検体において精度の問題をもたらすことが知られている。他の方法は、十分に機能することが分かっているが、多数の干渉因子により限定された狭い範囲の血液型、治療濃度域に限定される可能性があり、又は高体積の血液が必要となる可能性がある。
【0010】
したがって、現行の血液凝固検査は、概して複雑であり、それらの大多数が、中核的な臨床検査室、診療所、又は開業医のもとで行なわれる。抗凝固治療をモニタリングするために定期的に診療所又は開業医のもとに訪れることが必要であることは、患者にとっては不便かつ非常に費用のかかるおそれがある。したがって、「ポイントオブケア」(POC)の場での、若しくは外科室内での利用を容易にする、又は患者による家庭での血液凝固状態のモニタリングを容易にする、使用が容易で、コンパクトかつ可搬式の計器が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、緩和計の示度により検出可能な核磁気共鳴パラメータを用いて凝固(例えば血液凝固、血漿凝固など)をモニタリング及び測定するための非光学的方法を提供する。提供される方法は、現行では中核的な実験室施設を介してのみ得ることが可能である精度及び精密度を、ポイントオブケア(POC)環境又は家庭環境にて可能にする。提供される方法は、任意には、測定されることとなる凝固プロセスを開始させるための凝固試薬以外の添加物の必要性を伴うことなく利用することが可能であり、非侵襲的検出により検体への干渉を伴わずに直接的に凝固を測定することが可能であり、凝固状態変化の高速判定が可能となり、それにより検体のリアルタイムモニタリングが可能となり、血液型、治療濃度域、又は他の干渉因子に限定されず、光学的評価に必要な透明な検体に限定されず、凝固検体を少量のみ要し、凝固異常のプロファイリングを可能にする高い時間分解能の凝固曲線をもたらすことが可能である。さらに、本発明は、本明細書において提示される方法において使用される検体を保有するためのテストキャリアを提供する。
【0012】
本発明の一実施形態は、凝固時間を測定するための方法である。この方法は、NMR検出器の検出ボリューム内に検体を保有するテストキャリアを設けるステップと、凝固時間を判定するために経時的にNMRパラメータの変化を測定するステップとを含み、経時的に測定されるNMRパラメータの変化により、凝固時間の測定が可能となる。
【0013】
本発明の他の実施形態は、核磁気共鳴(NMR)デバイスを使用して検体の凝固状態及び/又は凝固時間を判定するための方法である。この方法は、以下のステップ、すなわちa)NMRデバイスのNMR検出器の検出ボリューム内に検体を保有するテストキャリアを設けるステップと、b)経時的に検体のNMRパラメータの少なくとも二つの値を判定するために、検体に対してNMR測定を実施するステップであり、NMRパラメータが、検体における凝固に応ずるステップと、c)検体の凝固状態及び/又は凝固時間を求めるために、ステップb)において判定された値を評価するステップとを含む。
【0014】
本発明の他の実施形態は、被検体から得た血液検体の凝固の度合いを判定するための方法である。この方法は、以下のステップ、すなわちa)血液検体のNMRパラメータを測定するステップであり、NMRパラメータが、凝固の度合いに応ずるステップと、b)ステップa)において得られたNMRパラメータの測定値を、NMRパラメータに関する既知の値と比較するステップであり、既知の値が、血液の凝固の度合いと相関付けられているステップと、c)ステップb)においてなされた比較から凝固の度合いを評価するステップとを含む。
【0015】
本発明の他の実施形態は、検査被検体から得た血液検体の凝固時間を判定するための方法である。この方法は、以下のステップ、すなわちa)血液検体のNMRパラメータを測定するステップであり、NMRパラメータが、凝固の度合いに応ずるステップと、b)ステップa)において得られた所与の時間におけるNMRパラメータの測定値を、凝固する血液による経時的なNMRパラメータの標準変化曲線を与える標準凝固時間曲線と比較するステップと、c)ステップb)における比較から凝固時間を判定するステップとを含む。
【0016】
本発明の他の実施形態は、検査被検体からの血液検体の凝固をモニタリングするための方法である。この方法は、経時的に血液検体の複数のNMRパラメータの値を測定するステップであり、NMRパラメータが、血液検体の凝固状態に応ずるステップを含む。
【0017】
本発明の他の実施形態は、検査被検体の血液検体における異常な凝血事象を診断するための方法である。この方法は、a)少なくとも一つのテストキャリアを用意するステップであり、各テストキャリアが、検査被検体からの血液検体を保有し、NMR検出器の検出ボリューム内に位置するステップと、b)経時的にNMRパラメータの検査データを得るステップであり、NMRパラメータが、各テストキャリアの血液検体における凝固に応ずるステップと、c)ステップb)において得られた検査データの一つ又は複数の特徴を、正常な凝固に応ずるNMRパラメータの標準凝固時間曲線の特徴と比較することにより、被検体における異常な凝血事象を診断するステップとを含む。
【0018】
本発明の他の実施形態は、テストキャリアである。いくつかの実施形態においては、テストキャリアは、キャリアと、検体における凝固を誘発又は支援する一つ又は複数の凝固試薬とを含む。他の実施形態においては、テストキャリアは、キャリアと、凝固を活性化する一つ又は複数の凝固試薬とを含む。いくつかの実施形態においては、テストキャリアは、一つ又は複数の内側表面がエッチングを施されたキャリアを含む。いくつかの実施形態においては、テストキャリアは、NMR測定に適したキャリアと、検体における凝固を誘発又は支援する一つ又は複数の凝固試薬とを含む。
【0019】
前述の事項は、以下において説明される図面を参照とする例示的な実施形態の以下のより詳細な説明、及び特許請求の範囲から明らかとなる。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、その代わりに概して本発明の原理の説明が強調される。以下の詳細な説明においては、本発明を実施するための方法及び装置の例示的な実施形態を参照とする。本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態を用いることが可能であることが理解される。本明細書において説明されるタイプの血液凝固検査を実施するための、好ましい方法及び装置が説明される。
【0020】
ステップを有する、含む、又は包含するものとして方法が説明される本説明全体を通じて、列挙される処理ステップから本質的になる、又は列挙される処理ステップからなる本発明の方法及びシステムがさらに存在することが予期される。ステップの順序又はいくつかの行為を実施するための順序は、本発明が実施可能なものに留まる限りにおいては、重要ではないことを理解すべきである。さらに、二つ以上のステップ又は行為が、同時に実施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】凝固時間の測定のために本発明の基本原理を用いる、NMR検出器及びテストキャリアの例示的な要素を示す図である。
【図2】血漿とAPTT試薬であるCEPHALINEX(登録商標)との混合物に塩化カルシウムを添加することにより誘発される凝固の際のT2緩和時間の短縮を実証する結果を示すグラフである。
【図3】時間分解緩和時間取得法を利用して経時的なT2緩和時間の変化を測定することにより求められる、正常なaPTT血漿凝塊/凝固及び異常なaPTT血漿凝塊/凝固を示す結果のグラフである。
【図4】時間分解緩和時間取得法を利用して経時的なT2緩和時間の変化を測定することにより求められる、正常なPT血漿凝塊/凝固及び異常なPT血漿凝塊/凝固を示す結果のグラフである。
【図5】時間分解緩和時間取得法を利用して経時的なT2緩和時間の変化を測定することにより求められる、正常な血漿凝塊/凝固に対する二つの別個の異常な血漿凝塊/凝固の曲線を示す結果のグラフである。
【図6】本発明の凝固測定方法と、Start-4と呼ばれるダイアグノスチカスタゴ社(Diagnostica Stago)(米国ニュージャージー州Parsippany)から市販の卓上型凝固計器との間の相関性を示す結果のグラフである。プロトロンビン時間(PT)及び活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を両方法により測定した。
【図7】図7a及び図7bは、T2を測定するための二つの異なる磁気共鳴パルスシーケンスを示す概略的なグラフである。(7a)スピンエコーシーケンスは、遅延τにより分離された二つの高周波(RF)パルスである90°のx位相及び180°のy位相から構成される。このエコー信号は、時間2τにて現れる。T2は、増分値τを用いて連続サイクルからエコー信号を得ることにより測定される。リサイクル遅延d1は、典型的には1〜3秒である。(7b)CPMGシーケンスにより、一連の180°のy位相RFパルス及び信号の取得により高速で立て続けに多数のエコーが取得されるため、はるかに高速のT2測定が可能となる。CPMGシーケンスにより取得されるT2測定値は、その測定の実施が短時間であることにより、散乱アーチファクトを回避する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
広い解釈において、本発明は、時間分解緩和時間取得法を利用して、例えば血液の凝血(以降においては「凝固」とも呼ぶ)のモニタリングを行なうなど、検体(例えば血液検体など)の凝固状態の変化を検出するための方法を提供する。提供される、検体(例えば血液検体など)の凝固時間を測定するための方法は、実施が容易であり、迅速であり、確実なものである。
【0023】
本明細書において、「被検体」は、哺乳類及び非哺乳類を包含する。哺乳類の例には、ヒト、チンパンジーなどのヒト以外の霊長類、及び他の類人猿及びサル種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの養殖用家畜(farm animal);ウサギ、イヌ、及びネコなどの家庭用家畜(domestic animal);ネズミ、ハツカネズミ、及びテンジクネズミなどの齧歯類動物を含む実験用動物等々を含む、哺乳綱の中の任意のメンバーが含まれるが、それらに限定されない。非哺乳類の例には、鳥、魚等々が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態においては、被検体は、臨床患者を含む。
【0024】
本明細書において、検体は、例えば被検体からの血液検体(例えば全血、血漿、血液濃縮物、クエン酸塩加血液など)などの生体検体、又は例えば凝固に適する条件を与えられた場合などに凝固することが可能な液体含有複合物(例えばモノマーなど)であることが可能である。
【0025】
血液検体は、静脈穿刺又は指穿刺などの従来的な手段により被検体(例えば患者など)から得ることが可能である。検体は、例えば検体塗布ポートを介してなど、テストキャリア上に塗布することが可能である。本発明の一態様においては、被検体から得られた血液検体は、本発明の方法及び装置において追加的な操作を伴わずに使用することが可能である。いくつかの実施形態においては、全血検体が、提供される方法との組合せにおいて使用される。代替的には、赤血球を完全に又は部分的に除去するために、被検体から得た血液検体を処理することが可能である。いくつかの実施形態においては、血球が、例えば遠心分離、赤血球凝集剤を用いた検体の反応、又は赤血球フィルタの使用によってなど、任意の既知の方法によって除去される。いくつかの実施形態においては、血漿が、提供される方法との組合せにおいて使用される。
【0026】
いくつかの実施形態においては、凝固前に、検体血液又は検体血漿を任意に希釈することが可能である。希釈剤は、単に水溶液であることが可能であり、又は非水溶液であることが可能であり、例えば塩、タンパク、糖、サッカリド、及びカルシウム、マグネシウム、ランタニドなどの金属イオン等々の様々な添加物を任意に含むことが可能である。希釈剤のいくつかの配合物には、ゼラチン含有組成物及び/又はエマルジョンが含まれてもよい。いくつかの実施形態においては、希釈剤は、生理食塩水である。いくつかの実施形態においては、希釈剤は、例えばクエン酸塩緩衝液などの緩衝液である。
【0027】
検体は、約20℃から約40℃の温度に維持されてもよい。いくつかの実施形態においては、検体は、ほぼ室温、約22℃、約25℃、約30℃、約35℃、約37℃、又は約40℃に維持される。いくつかの実施形態においては、血液検体は、ほぼ体温、すなわち約37℃に維持される。好ましい選択温度に関わらず、検体は、好ましくは、NMR示度の測定を得るプロセスの間にわたってほぼ一定の温度に維持される。
【0028】
凝固時間は、プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリノーゲン分析、トロンビン凝固時間(TCT)、フィブリノーゲン分析、及び活性凝固時間(ACT)を含む、血液凝固時間の中の一つ又は複数であることが可能である。
【0029】
いくつかの実施形態においては、検体は、ヘパリンを加えられても、及び/又は一つ又は複数の試薬と混合されてもよい。いくつかの実施形態においては、試薬は、例えば抗凝固剤などを含んでもよい。他の実施形態においては、試薬は、例えば凝固剤、凝固作用物質(例えばカルシウム(例えば塩化カルシウム)など)、カオリン、セライト、エラグ酸、ガラス粒子、トロンビン、トロンボプラスチン、PT試薬、PTT試薬若しくはAPTT試薬、ACT試薬、TCT試薬、フィブリノーゲン試薬など)、又はヘパリン中和作用物質若しくはヘパリン不活性化作用物質(例えばヘパリナーゼ、プロタミンなど)などを含んでもよい。
【0030】
本明細書において、「凝固試薬」は、その試薬が検体における凝固を誘発又は支援するのに適した条件下において、例えば血液検体などの検体と混合された場合に、凝固を誘発及び/又は支援(例えば加速)する試薬を指す。これらの条件は、当技術において知られている。凝固試薬は、プロトロンビン時間(PT)試薬、部分トロンボプラスチン時間(PTT)/活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試薬、トロンビン凝固時間(TCT)試薬、フィブリノーゲン試薬、活性凝固時間(ACT)試薬、カルシウム(例えば塩化カルシウムなど)、カオリン、セライト、エラグ酸、ガラス粒子、トロンビン、トロンボプラスチンを含むが、それらに限定されない。この場合に、各検査(又は複数の検査)のための試薬を含む具体的な作用物質は、当技術においてよく知られており、当技術において説明されているものであり、市販ソースから入手可能である。
【0031】
例えば、PT試薬は、STA(登録商標)Neoplastine CL、STA(登録商標)Neoplastine CL Plus(ダイアグノスチカスタゴ社(Diagnostica Stago)、米国ニュージャージー州Parsippany);Thromborel S、Innovin、Thromboplastin CL、Thromboplastin C Plus(デイドベーリング社(Dade Behring)、独国Liederbach);Plastinex(バイオデータコーポレーション社(BioData Corporation)、米国ペンシルベニア州Horsham);Diaplastin(ダイアメドアーゲー社(Diamed AG)、スイス);Thromboplastin、Thromboplastin M1(ヘレナラボラトリーズ社(Helena Laboratories)、米国テキサス州Beaufort);PT-Fibrinogen、PT-Fibrinogen HS、PT-Fibrinogen HS+、PT-Fibrinogen Recombinant、Brain Thromboplastin、RecombiPlasTin(インスツルメンテーションラボラトリー社(Instrumentation Laboratory)、米国マサチューセッツ州Bedford);Simplastin、Simplastin Excel、Simplastin Excel S、Simplastin L、MDA Simplastin L、Simplastin HTF、MDA Simplastin HTF(ビオメリュー社(bioMerieux)、加国ケベック州St. Laurent);Thromboplastin-D with Calcium、Thromboplastin-DL with Calcium、Thromboplastin-DS、Thromboplastin Liquid(パシフィックヘモスタシス社(Pacific Hemostasis)、米国ノースキャロライナ州Huntersville);Thromboplastin with Calcium、Thromboplastin HS with Calcium、Thromboplastin M with Calcium、Thromboplastin XS with Calcium、ThromboMAX HS with calcium、ThromboMAX with calcium(シグマダイアグノスティクス社(Sigma Diagnostics)、米国ミズーリ州St. Louis)の中のいずれかを含むことが可能である。APTT/PTT試薬は、例えば、Automated APTT Reagent、SILIMAT、Platelin(登録商標)L、Platelin(登録商標)LS、及びMDA Platelin(登録商標)L(ビオメリュー社(bioMerieux)、加国ケベック州St. Laurent);Actin(登録商標)、Actin(登録商標)FS、Actin(登録商標)FSL、及びPathromtin(登録商標)SL(デイドベーリング社(Dade Behring)、独国Liederbach);APTT-SP、APTT-C、SynthASil、SynthAFax、及びThrombosIL(インスツルメンテーションラボラトリー社(Instrumentation Laboratory)、米国マサチューセッツ州Bedford);SPECTRA(商標)(アナリティカルコントロールシステムズ社(Analytical Control Systems, Inc)、米国インディアナ州Fishers);Thrombosil、Activated Thrombofax(オーソウ社(Ortho)、米国ニュージャージー州Raritan);CK-PREST、STA(登録商標)PTT Automate(ダイアグノスチカスタゴ社(Diagnostica Stago)、米国ニュージャージー州Parsippany);Cephalinex(登録商標)(バイオデータコーポレーション社(BioData Corporation)、米国ペンシルベニア州Horsham);APTT Reagent(ダイアメドアーゲー社(Diamed AG)、スイス);APTT Reagent、APTT-FS、APTT-FSL、ALEXIN、ALEXIN HS、及びALEXIN LS(シグマダイアグノスティクス社(Sigma Diagnostics)、米国ミズーリ州St. Louis)の中のいずれかなどを含むことが可能である。フィブリノーゲン試薬は、例えば、Fibri-Prest、STA(登録商標)-Fibrinogen 5(ダイアグノスチカスタゴ社(Diagnostica Stago)、米国ニュージャージー州Parsippany);Multifibren U、Fibrinogen Determination(Dade Behring Thrombin) (デイドベーリング社(Dade Behring)、独国Liederbach);Fibrinogen Assay(バイオデータコーポレーション社(BioData Corporation)、米国ペンシルベニア州Horsham);Fibrinogen Assay(ヘレナラボラトリーズ社(Helena Laboratories)、米国テキサス州Beaufort);QFA(ウシトロンビン)、Fibrinogen C、PT- Fibrinogen、PT- Fibrinogen HS、PT- Fibrinogen HS+、PT- Fibrinogen Recombinant、RecombiPlasTin. RecombiPlasTin4.5(インスツルメンテーションラボラトリー社(Instrumentation Laboratory)、米国マサチューセッツ州Bedford);Fibriquik、Fibriquik(MDA Fibrinogen I-delta)、Fibriquik(MDA Fibrinogen II-seconds)(ビオメリュー社(bioMerieux)、加国ケベック州St. Laurent);Thromboscreen(パシフィックヘモスタシス社(Pacific Hemostasis)、米国ノースキャロライナ州Huntersville);Accuclot Fibrinogen(シグマダイアグノスティクス社(Sigma Diagnostics)、米国ミズーリ州St. Louis)などを含むことが可能である。TCT試薬は、例えばSTA(登録商標)-Thrombin、Thrombin 10、(ダイアグノスチカスタゴ社(Diagnostica Stago)、米国ニュージャージー州Parsippany);Human alpha-Thrombin(シグマダイアグノスティクス社(Sigma Diagnostics)、米国ミズーリ州St. Louis);MDA(登録商標)Thromboquik(ビオメリュー社(bioMerieux)、加国ケベック州St. Laurent);BC-Thrombin reagent(デイドベーリング社(Dade Behring)、独国Liederbach)などの、例えば動物トロンビンの任意の市販の又は生成されたソースなどを含むことが可能である。ACT試薬は、例えば、シリカベース凝固活性剤複合物(例えばカオリン、セライト、エラグ酸、ガラス粒子など)の、任意の市販の又は生成されたソースなどを含むことが可能である。さらに、凝固を誘発及び/又は支援するために、凝固試薬を組み合わせたものを試薬として使用することが可能である。
【0032】
本明細書において、「キャリア」は、例えばウェル、くぼみ、サポート、チャネル、リザーバ、くぼみ体積部、コンパートメント、凹部区域、開口を有する又は有さない筐体、チューブ、又はトラフなどの、液体検体の任意のローカライザを意味するものとして理解される。「テストキャリア」という用語は、解析のために検体が中に配置されるキャリアを意味する。テストキャリアは、例えば緩和計(すなわちBruker Minispec)又はカスタマイズされた小型緩和計などの、NMR検出コイルの検出ボリューム内に配置することが可能である。検体は、テストキャリアがNMR検出コイルの検出ボリューム内に配置される前又は後に、テストキャリア内に配置することが可能である。いくつかの実施形態においては、NMR緩和能測定を利用した検体の粘度の測定に基づく凝固検査時間は、温度制御下において確認することが可能である。
【0033】
有効T2緩和速度(すなわち1/T2)は、検体の凝固状態に関係し得ること、及び凝固時間は、経時的な一連のT2緩和速度測定値(本明細書においては凝固時間曲線と呼ぶ)に関する一つ又は複数のパラメータをモニタリングすることにより判定し得ることが、判明している。典型的には、凝固時間の判定において、調整された高周波(RF)パルスシーケンスが、検体を保有しているテストキャリアに印加され、RFエコー信号が、モニタリング及び解析されて、一つ又は複数のNMRパラメータ(例えばT2)が判定される。例えば、カスタムCPMG(Carr-Purcell-Meiboom-Gill)パルスシーケンスにより測定されるような有効T2緩和速度は、凝固状態の時間的変化を測定するために使用することが可能である。スピンエコーなどの方法により真のT2測定(例えば図7aを参照)を得ることが可能である一方で、かかる測定では、典型的には本明細書において提示される方法と同一の凝固状態に対する感度は得られず、したがって、かかる測定は、現行の用途においては有用ではない。例えば、十分な時間分解能(例えばサンプリングレートなど)により凝固時間を測定するために有用な緩和パラメータを求めるために、CPMGシーケンスパラメータは、本明細書においてさらに詳細に説明されるように、得られた緩和曲線がサンプリングされて、最適な凝固反応測定値が得られるように、調節される。
【0034】
検体の有効T2を測定するのに適したCPMGシーケンスは、以下の一連のステップ、すなわち1)リサイクル遅延により与えられる期間(例えば緩和測定の開始と第1の高周波パルスとの間の時間、システムが平衡状態に戻ることが可能となる前回のシーケンス測定の終了時との間の時間(例えば約0.5秒から約5秒など))の間に少なくともわたって待機するステップ(すなわち検体に高周波パルスを印加しない)、2)検体に対して90°高周波パルスを印加するステップ、3)例えばエコー間遅延の半分などにより与えられる期間にわたり待機するステップ、4)検体に対して180°高周波パルスを印加するステップ、5)エコー間遅延により与えられる期間にわたり待機するステップ、及び、任意にステップ4)及び5)を一回又は複数回にわたり繰り返すステップによって特徴付けられ得る。例えば図7bを参照されたい。いくつかの実施形態においては、任意に、緩和測定は、先行のパルスシーケンス測定の完了、磁石内への検体の挿入、等々の中の一つ又は複数と同時である。特定の実施形態においては、緩和測定の開始が、先行する緩和測定パルスシーケンスの完了と同時である。各180°高周波パルスの印加後に、検体が、当技術において知られている方法によりT2を判定するために得ることが可能なエコーに応答する。例えば、Carr, H. Y.及びPurcell, E. M.「Effects of Diffusion on Free Procession in Nuclear Magnetic Resonance Experiments」(Phy.Rev.904、No. 3:630(1954年));Meiboom, S.;及びGill, D.「Modified Spin-Echo Method for Measuring Nuclear Relaxation Times」(Rev.Sci.Inst.29(1958年)を参照されたい。これらの文献は、ここに参照により本明細書に組み込まれ、例えば米国特許第6,690,166号、米国特許第5,023,551号などに記載される。ステップ4)及び5)の反復が増えるのに比例して、エコーはさらに弱くなり、所与のデバイス及び所与の測定条件/環境を用いて単一のCPMGシーケンスにより記録することが可能なエコー数の実際的な限度に至る。いくつかの実施形態においては、検出可能なエコーの実際的な限度内の全てのエコーが記録される。他の実施形態においては、単一のCPMGシーケンスにおける検出可能なエコーの実際的な限度内の全て未満のエコーが記録される。例えば、分光計記録ハードウェアが、記録され得るエコーの総数を制限してもよい。この場合には、例えば、検出可能なエコーのサブセットが記録される(例えば、各四つのエコーの中の一つを取得する(例えば、本明細書においては、3のダミーエコー値により特徴付けられるCPMGシーケンスと呼ぶ))。いくつかの実施形態においては、二つ以上のCPMGシーケンスが使用され、例えば二つ以上のT2の測定が検体ごとに実施される。二つ以上のT2の測定が検体ごとに実施される場合には、CPMGシーケンス(又は複数のCPMGシーケンス)のそれぞれが、リサイクル遅延により時間で分離される。
【0035】
数分のオーダの血液凝固時間により特徴付けられることが予想される血液凝固の場合には、及び/又は、血液凝固曲線の低時間分解能が必要とされる場合には、カスタムCPMGシーケンスを特徴付けるパラメータは、当技術において知られている方法を利用して判定することが可能である。これは、T2値測定間の時間が、T2を判定するために使用される信号減衰時間に比べて長いことによる。典型的には、血液凝固時間は短く、及び/又は、比較的高い時間分解能が好ましい。例えば、1.5秒超のT2値及び1.5秒超のT1値については、第一の推定において、約5秒の滞留時間(すなわち、取得時間+リサイクル遅延)が、真の一連のT2値を測定するために必要となるように見える。したがって、例えば約10秒などの非常に短い血液凝固時間については、凝固前に一つ、又は最大でも二つの真のT2測定を得ることしかできないことが予想される。一般的には、可能な限り高い時間分解能により凝固の時間経過を測定することが望ましい。典型的には、時間分解能がより高いほど、例えば凝固時間などの凝固を特徴付けるパラメータの精度がより高くなり、例えば患者の血液/血漿凝固曲線と正常な血液/血漿凝固に関する標準曲線との比較(例えば実施例3を参照)など、凝固曲線間の比較がより良好なものとなる。
【0036】
CPMGシーケンスのパラメータは、十分な時間分解能又は滞留時間をもたらしつつ(例えばT2測定間の時間は凝固プロセスの間中にわたるキネティックトレース(kinetic trace)を実現するのに十分な短さでなければならないなど)、凝固状態の変化を反映する高い感度をもたらす「有効」T2値(本明細書において、「T2」という用語は、「有効」と具体的に示されない場合であっても、「真」T2及び「有効」T2の両方を指すことに留意されたい)の判定を可能にするように最適化することが可能であることが、現在判明している。この最適化により、凝固プロセスの時間経過間にわたる高感度の測定が可能となり、したがって一連のT2測定値が生成され、これにより、凝固時間の判定に用いられる計量が得られる。測定されたT2値は、実際には有効T2である。その理由は、このT2値が、CPMGシーケンスの最適化により影響され、すなわち、「真の」T2は、短い滞留時間には適用できない取得時間を要するからである。したがって、有効T2測定値が必要となる。CPMGシーケンス測定を最適化するためには、1)凝固プロセス間のT2測定値の変化を最大化する(デルタT2全体を最大化する)ために;2)(例えば特に上下のT2測定極値で)得られる測定値のノイズレベルを最小化するために;及び経時的に得られるT2測定数を増大させて、凝固の経過時間にわたる十分な検体測定を得ることにより、有効な凝固波形を生成するために、パラメータが変更される。当技術における知識と組み合わせて、本明細書において説明される原理を利用することにより、当業者は、本方法において教示される結果を達成するために、様々な組合せにおいて、本明細書に記載されるパラメータを変更することが可能である。提示される説明に加えて、又はその代替として、当業者は、同様に緩和測定シーケンス(又は複数の緩和測定シーケンス)を最適化して、本明細書に提示されるような凝固測定を得るために、提示される範囲とは若干異なり得るパラメータを修正することができ、及び/又はCPMGシーケンスにおける他のパラメータ若しくは他の一連の緩和信号測定値との組合せにおいてパラメータを修正することができる。
【0037】
いくつかの実施形態においては、リサイクル遅延は、0.1秒から100秒までの間である。特定の実施形態においては、リサイクル遅延は、0.5秒から1秒までの間である。いくつかの実施形態においては、リサイクル遅延は、約1秒である。
【0038】
いくつかの実施形態においては、エコー間遅延は、0.01ミリ秒から10ミリ秒までの間である。特定の実施形態においては、エコー間遅延は、0.2ミリ秒から2ミリ秒までの間である。いくつかの実施形態においては、エコー間遅延は、約0.5ミリ秒である。
【0039】
いくつかの実施形態においては、取得されるエコー数は、1から10,000までの間である。特定の実施形態においては、取得されるエコー数は、500から2,000までの間である。いくつかの実施形態においては、取得されるエコー数は、1500から2000までの間である。
【0040】
いくつかの実施形態においては、ダミーエコー数は、0から50までの間である。特定の実施形態においては、ダミーエコー数は、0から10までの間である。いくつかの実施形態においては、ダミーエコー数は、0から3までの間である。
【0041】
取得時間は、とりわけCPMGパルスシーケンス測定との関連において当技術で知られており、エコー間遅延時間×取得されるエコー数×(1とシーケンスにおけるダミーエコー数との和)、すなわちat=[ied×ae×(1+de)]となる。いくつかの実施形態においては、取得時間は、0.01ミリ秒から5,100秒までの間である。特定の実施形態においては、取得時間は、0.1秒から44秒までの間である。いくつかの実施形態においては、取得時間は、約0.5秒から約8秒までの間である。特定の実施形態においては、取得時間は、約3.5秒又は約4.5秒である。
【0042】
滞留時間は、とりわけCPMGパルスシーケンス測定との関連において当技術で知られており、リサイクル遅延の長さ+シーケンスの取得時間の長さ、すなわちdt=[rd+at]となる。いくつかの実施形態においては、滞留時間は、0.1秒から約5,200秒までの間である。特定の実施形態においては、滞留時間は、0.6秒から45秒までの間である。いくつかの実施形態においては、滞留時間は、約1秒から約6秒までの間である。特定の実施形態においては、滞留時間は、約4.5秒又は約5.5秒である。
【0043】
いくつかの実施形態においては、滞留時間は、検体が凝固しつつある間に、及び検体が凝固される前に、少なくとも二つのT2値を得ることを可能にするのに十分なものである。いくつかの実施形態においては、滞留時間は、検体が凝固しつつある間に、及び検体が凝固される前に、少なくとも五つのT2値を得ることを可能にするのに十分なものである。いくつかの実施形態においては、滞留時間は、検体が凝固しつつある間に、及び検体が凝固される前に、少なくとも十個のT2値を得ることを可能にするのに十分なものである。
【0044】
本発明の一実施形態においては、リサイクル遅延は、0.1秒から100秒までの間であり、取得されるエコー数は、1から10,000までの間であり、ダミーエコー数は、0から50までの間であり、エコー間遅延は、0.01ミリ秒から10ミリ秒までの間であり、T2測定数(すなわち一連のCPMGシーケンス数)は、2から10,000までの間であり、これらにより、取得時間は、0.00001秒から5,100秒までの間となり、滞留時間は、0.1秒から5,200秒までの間となる。
【0045】
本発明の他の実施形態においては、リサイクル遅延は、0.5秒から1秒までの間であり、取得されるエコー数は、500から2,000までの間であり、ダミーエコー数は、0から10までの間であり、エコー間遅延は、0.2ミリ秒から2ミリ秒までの間であり、T2測定数(すなわち一連のCPMGシーケンス数)は、100から500までの間であり、これらにより、取得時間は、0.1秒から44秒までの間となり、滞留時間は、0.6秒から45秒までの間となる。
【0046】
本発明の好ましい一実施形態においては、リサイクル遅延は、約0.8秒から約1秒までの間であり、取得されるエコー数は、約1650から約1850までの間であり、ダミーエコー数は、0から5までの間であり、エコー間遅延は、約0.3msから約0.7msまでの間であり、これらにより、取得時間は、約0.5秒から約7.8秒までの間となり、滞留時間は、約1.3秒から約8.8秒までの間となる。
【0047】
本発明の他の好ましい一実施形態においては、リサイクル遅延は、約1秒であり、取得されるエコー数は、約1,750であり、ダミーエコー数は、約3であり、エコー間遅延は、約0.5ミリ秒であり、これらにより、取得時間は、約3.5秒となり、滞留時間は、約4.5秒となる。
【0048】
本発明の方法を用いた凝固時間の判定は、経時的な、典型的にはT2である核磁気パラメータの測定に基づく。いくつかの実施形態においては、検体が実質的に完全に凝固される前の時点における凝固検体のT2の一つの測定が、凝固の度合い及び/又は凝固時間を判定するのに十分なものとなり得る。例えば、T2値が、正常に凝固する検体に関して判定されると、T2値及びそれに対応する時間は、凝固する検体のタイプについての所定の標準凝固時間曲線と(例えば目視検査により、コンピュータにより、等々)整合させることが可能である。標準凝固時間曲線が、凝固する検体のタイプについての凝固の度合い(すなわち、標準凝固-時間-曲線上の所与の時間における所与のT2値に関する凝固の度合いが判定されている)に相関付けられると、単一のT2測定により凝固の度合いを示すことが可能となる。さらに、T2値及びそれに対応する時間を標準凝固時間曲線と比較することにより、検体凝固時間の判定又は検体凝固時間の推定値の判定が可能となり得る。例えば、所与の時点にて測定されたT2値が、その所与の時点に関する標準曲線のT2値と合致する場合には、検体凝固時間を、標準凝固時間曲線に対応付けることが可能となる。
【0049】
いくつかの実施形態においては、経時的な複数のT2値が、例えば凝固状態(すなわち凝固されていないか、又は凝固されたか)、凝固の度合い(例えばパーセンテージ凝固など)、及び/又は凝固時間(例えばプロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンビン凝固時間(TCT)、フィブリノーゲン分析凝固時間、活性凝固時間(ACT)など)を判定するためなど、凝固を評価するために、本発明の方法を用いて判定される。
【0050】
典型的には、血漿検体又は全血検体の凝固時間を判定するために、凝固の開始時間は、例えば凝固活性試薬 (例えばカルシウムなど)を検体と混合することによってなど、検体において凝固が開始される時点とする。複数のT2値が、検体が実質的に完全に凝固する前に測定され、典型的には、さらに一つ又は複数のT2値が、実質的に完全に凝固された検体について判定される。経時的に測定されたT2値により提示される結果的に得られる凝固時間曲線により、凝固時間の判定が可能となる。図2から図6までの正常な血漿の凝固曲線及び異常な血漿の凝固曲線に関して分かるように、凝固は、典型的には、トッププラトーからボトムプラトーまでの測定されるT2値の下落をもたらす。例示及び図2から図6を参照されたい。凝固時間は、測定される凝固時間曲線のみに基づいて、標準凝固時間曲線との比較により、及び/又は所定の較正係数による正規化により、判定することが可能である。
【0051】
例えば、得られる凝固時間曲線のみに基づき、例えば凝固試薬を用いた凝固開始から、ボトムプラトーに達する時点までの時間として、凝固時間を判定することが可能である。
【0052】
測定されたT2値から凝固時間を判定する好ましい一方法は、トッププラトー値T2,tを求めるためにトッププラトーのT2値を、及びボトムプラトー値T2,b値を求めるためにボトムプラトーのT2値を、それぞれ別個に平均化し、T2が凝固時間曲線上において値T2,b+(T2,t-T2,b)/2にある間の時間を判定し、所定の較正係数により求められた時間を正規化することである。さらに、この判定により、T2血漿凝固曲線上の最初の(トッププラトー)T2と最終の(ボトムプラトー)T2との間の中間値が得られる。例えば図2から図6を参照されたい。
【0053】
いくつかの実施形態においては、第一の平均T2値(例えばトッププラトーの)と、第二の平均T2値(例えばボトムプラトーの)との間の差は、CPMGシーケンスを利用したT2測定の平均標準誤差よりもかなり大きい。いくつかの実施形態においては、第一の平均T2値(例えばトッププラトーの)と、第二の平均T2値(例えばボトムプラトーの)との間の差は、第一のT2値の少なくとも3%である。いくつかの実施形態においては、第一の平均T2値(例えばトッププラトーの)と、第二の平均T2値(例えばボトムプラトーの)との間の差は、第一のT2値の少なくとも5%である。いくつかの実施形態においては、第一の平均T2値(例えばトッププラトーの)と、第二の平均T2値(例えばボトムプラトーの)との間の差は、第一のT2値の少なくとも10%である。特定の実施形態においては、第一の平均T2値(例えばトッププラトーの)と、第二の平均T2値(例えばボトムプラトーの)との間の差は、第一のT2値の少なくとも13%である。
【0054】
較正係数は、一つ又は複数の検体に関して上述のような時間を判定し、凝固を判定するための市販の方法(例えばダイアグノスチカスタゴ社(Diagnostica Stago)のデバイスを使用するstart(登録商標)4方法など)を利用して凝固時間を同検体について判定し、市販の方法により判定される凝固時間を求めるために本発明の方法を用いて判定される時間と乗算すべき係数を判定することにより、判定することが可能である。この場合には、T2値及びそれに対応するT2測定時間により与えられるデータポイントが、判定されたT2値と比較することが可能な標準凝固時間曲線に整合される。
【0055】
本明細書において、「標準凝固時間曲線」は、一つ又は複数の被検体の検体(例えば血液検体、血漿検体、検体中の血液の一部など)の凝固に応ずるNMRパラメータの値に、又は経時的に得られた値から数学的に導出された値に相関するデータを指す。データは、曲線の形態であることが可能であるが、それに限定されない。例えば縦座標にNMRパラメータをとり、横座標に時間をとった、散布プロット/グラフ又は線プロット/グラフの観点で、得られたデータをグラフ表示することにより、NMRパラメータの測定値を対応する標準凝固時間曲線と比較するための容易な手段を得ることが可能となる。さらに、「標準凝固時間曲線」の判定に使用される検体は、正常な凝固プロセス及び凝固プロセスのタイミングを示す一つ又は複数の被検体から採取される。標準凝固時間曲線を生成するために使用される検体の一つ又は複数の被検体は、本発明の方法を利用して凝固を評価する又は評価することとなる検査被検体とは異なることが可能であるが、必ずしも異ならなくてはならないわけではない。例えば、標準凝固時間曲線は、正常な健常患者から得られた検体を使用して生成されてもよく、測定され、生成された標準凝固時間曲線と比較されることとなる検体は、抗凝固治療の評価を要する患者から得られる。患者からの検体は、標準凝固時間曲線を生成するために使用される検体プールの一部ではない。別の例においては、標準凝固時間曲線は、処置又は治療(例えば抗凝固剤の術後投与を要する外科手術など)の前の検査被検体(例えば患者など)の血液の検体(又は複数の検体)を使用して生成されてもよい。患者の血液の凝固は、本発明の方法を利用して、患者が抗凝固剤を受けている間に患者から得られた検体から評価がなされ、得られた結果を外科手術前に判定された被検体の標準凝固時間曲線と比較されてもよい。いくつかの実施形態においては、一つ又は複数の標準凝固時間曲線が、予め別個に準備され、任意の一つ又は複数の凝固時間(例えばプロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンビン凝固時間(TCT)、フィブリノーゲン分析凝固時間、活性凝固時間(ACT)など)に関する検体の個々の検査のための標準対照曲線として用意される。いくつかの実施形態においては、一つ又は複数の標準凝固時間曲線が準備され、凝固検査キットの一部としての取扱説明書及び参考資料の一部として用意される。いくつかの実施形態においては、一つ又は複数の標準凝固時間曲線が、予め準備され(例えば個々の検体準備及び検査の直前になど)、又は個々の検体準備及び検査と組み合わせて(例えば並行して)準備される。いくつかの実施形態においては、一つ又は複数の標準凝固曲線が、多数の用意された試薬の初回の使用時に初めに準備され、この場合には、準備された標準凝固曲線(又は複数の標準凝固曲線)は、一つ又は複数の検査検体凝固曲線との比較のために使用され、検体凝固検査のために同じ多数の試薬を使用する検査検体のそれぞれに対して継続的に使用される。
【0056】
凝固時間は、凝固時間曲線における所定量の変化、凝固時間曲線の量の基線から、凝固時間曲線の一次導関数から、凝固時間曲線の二次導関数から、凝固時間曲線のさらに高次の導関数から、変曲点までの、定常状態値までのパーセント変化、及びそれらの組合せを含む、凝固時間曲線の一つ又は複数のパラメータに対応する経過時間をモニタリングすることにより判定することが可能である。パラメータは、経過時間の量として、又は時間の関数としてモニタリングすることが可能であり、特徴的な値又は特徴的な運動速度(すなわち信号の半減期等々)の計算又は導出が可能となる。所望に応じて、特徴的な値又は速度を、同時に又は逐次的に、検体の凝固状態の一つ又は複数のパラメータに関する標準又は対照群と比較することが可能である。標準は、多数の特定の形態をとることが可能であるが、特徴的な値又は速度を標準凝固計器により判定される凝固時間に関連付けるデータセットとして一般的に説明することができる(例えば較正曲線など)。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態においては、検体は、テストキャリア内に配置される前に凝固試薬と混合させることが可能であり、又はテストキャリアの表面上に塗布された試薬と相互作用することが可能である。さらには、又は代替的には、検体は、検体がテストキャリア内に配置される前又は後に、テストキャリア中に配置される凝固試薬と混合されてもよい。例えば、テストキャリアの表面が、凝固試薬を塗布されてもよく、又は、凝固試薬を塗布されるか又は凝固試薬を含む別個の要素が、検体を加える前、同時、若しくは後に、テストキャリア内に配設される。
【0058】
さらに、表面積を拡張するために、及び検体(例えば血液検体(例えば全血、血漿、等々))中においてフィブリンを成長させることが可能な表面の粗さを高めるために、テストキャリア壁部に表面エッチングを施すことが可能である。表面の粗さは、凝固試薬の代わりに、又はそれに加えて、検体の凝固を活性化又は促進することができる。テストキャリアは、任意の天然材料、合成材料、多孔性材料、無孔材料、非金属材料、磁化性合致材料、疎水性材料、又は親水性材料(例えばプラスチック(すなわちデルリン又はテフロン)、ガラス、マイラーなど)からなる製造物であることが可能である。さらに、テストキャリアは、毛管、チューブ、中空チャネル、導管、マイクロ流体工学物、多孔性膜、及び被包体を含む、ある体積の溶液を隔離、又は収容、又は吸収、又は保有することが可能な任意の幾何学形状からなるものであってもよい。例えば、キャリアは、NMR緩和測定のために使用されるガラス毛管又はガラスチューブであってもよい。テストキャリアは、1ピコリットルから1ミリリットルまでの範囲の、好ましくはマイクロリットルの範囲の、さらに好ましくは1マイクロリットルから500マイクロリットルまでの範囲の、最も好ましくは10マイクロリットルから300マイクロリットルまでの範囲の体積検体を収容することができる。
【0059】
本発明は、経時的なNMRパラメータの測定を利用する検査被検体の血液検体の凝固のモニタリング(例えばリアルタイムでの)のための方法をさらに提供する。モニタリングされるNMRパラメータに関して得られる値を標準凝固時間曲線と比較することにより、異常な凝固事象に関する情報が得られる。
【0060】
経時的な血液凝固のモニタリングにより、検体の凝血プロファイルが得られ、凝固プロセス、凝血プロセス、又は溶解プロセス(例えば血塊形成、血餅退縮、又は血餅溶解など)に伴い得る別個の正常事象又は異常事象に関する情報が得られると共に、事象全体に対する洞察が得られる。本発明は、検体の凝血プロファイルによる多血小板血漿と乏血小板血漿との識別に有用である。
【0061】
本発明は、検査被検体における異常凝血事象を診断するための方法をさらに提供する。少なくとも一つのテストキャリアが用意され、各テストキャリアは、検査被検体からの検体(例えば血液検体など)を保有し、NMR検出器の検出ボリューム内に配置される。各テストキャリアの検体における凝固に応じたNMRパラメータの検査データが、例えばNMRパラメータの値を経時的に測定することによって、経時的に得られる。検査データの一つ又は複数の特徴が、正常な凝固に応じたNMRパラメータの標準凝固時間曲線の特徴と比較されて、被検体における異常な凝血事象が特定され、それによりその異常な凝血事象が診断される(例えば図3及び図4などを参照)。検査データに関する任意の適切な特徴を比較することが可能である。例には、経時的なNMRパラメータの全体的な変化、経時的なNMRパラメータ変化の速度、NMRパラメータ変化から判定される凝血時間、及び凝固前の検体におけるNMRパラメータ変化の変動が含まれる。好ましくは、NMRパラメータの検査データが、経時的にNMRパラメータの値をモニタリングして、検体の凝固(凝血)プロファイルを作成することによって得られる。
【0062】
本発明の方法の一つの特定の実施形態においては、検査被検体からの複数の検体(例えば血液検体など)が、別個の時間に収集される。一例においては、第一のテストキャリア及び第二のテストキャリアが、同じ検査被検体からのものであるが別個の時間に収集された第一の検体及び第二の検体を保有する。凝固における第一の検体と第二の検体との相違(又は複数の相違)は、第一の検体と第二の検体との間において得られた検査NMRデータ(例えば凝血プロファイルなど)の特徴(又は複数の特徴)を比較することにより、求めることが可能である。かかる比較により、例えば、(例えば第一の血液収集と第二の血液収集との間の期間にわたり第一の血液検体から診断された第一の異常凝血事象など)からの変化があるか否かを判定することが可能となる。別の特定の実施形態においては、第一の検体及び第二の検体が、異なる検査被検体から収集される。この例においては、凝固(例えば凝血プロファイルなど)における第一の検体と第二の検体との間の相違(又は複数の相違)が、標準凝固時間曲線に対してそれぞれ別個の異常凝血事象を識別するための情報をもたらすことが可能である(例えば図5などを参照)。
【0063】
また、本方法は、凝固プロセス、凝血プロセス、又は溶解プロセス(例えば血塊形成、血餅退縮、又は血餅溶解など)に伴い得る別個の事象に関する情報をもたらすと共に、事象全体に対する洞察をもたらすために有用である。提供される方法は、検体の凝血プロファイルによる多血小板血漿と乏血小板血漿との識別に有用である可能性がある。さらに、この方法は、術前、術中、及び/又は術後の出血を防ぐ又は緩和するために、心肺バイパス手術を含む外科手術の際又は後の患者の治療プランを作成する医師にとって有用な情報を提供することも可能である。
【0064】
本発明の原理に関する技術的要素の概要を本明細書において示す。凝固状態測定のための本発明の基本原理及び凝固時間の判定におけるその利用法は、NMR高周波(RF)エコー信号から求められる単一指数減衰関数の仮定に基づく。凝固状態判定のためのこのモデルによれば、経時的な有効T2緩和能変化が、検体凝固状態に関係し、温度に逆比例する。提供される方法により、緩和時間の変化のモニタリングによる凝固の運動性(kinetics)の測定が可能となる。例えば、いくつかの実施形態においては、凝固を開始させるために検体及び試薬を混合した後に、凝固が完了するまでに、測定(例えば10〜20個の測定)を行なうことが可能であり、その結果得られるキネティック曲線から凝固時間を判定することが可能である。
【0065】
図1においては、NMRシステムが図示され、複数の実施形態に基づき説明される本発明の原理が説明される。この図は、ある特定の実施形態に本発明を限定するようには意図されず、一つ又は複数のNMRパラメータを測定して検体凝固時間を求めるための基本原理を利用するデバイスの例示的な要素を説明するという目的を果たすものである。
【0066】
図1は、RF励起に対する検体103のエコー応答を検出し、それにより検体の凝固状態及びそれに対応する凝固時間を判定するためのNMRシステムの概略図100である。ある特定の実施形態においては、テストキャリア104内の検体103が、デバイス100のRFコイル105の感応領域内に配置される。デバイス100は、検体103中にバイアス磁場B0102を生成するバイアス磁石101を備える。ラーモア周波数のRF励起パルスが、RFコイル105及びRF発振器106を使用して検体に印加される。RF励起及び後の一連の180度パルスが、当技術においてCPMGエコートレインとして知られているものを誘発する。これらのエコーの振幅は、時間に応じて減衰し、これは、T2緩和曲線として知られている。コイル105は、エコー信号を検出するためにRFアンテナとして同期的に作用するように構成することが可能である。コイル105から得られるRF信号は、増幅器107により増幅され、検体103に印加される励起に応じた緩和曲線の変化を判定するために処理される。検出され処理された信号は、好ましくはT2緩和時間である。一連のT2緩和時間が、初期の一連の値から定常の一連の値までの期間にわたってモニタリングされる。これに対応する検体の凝固時間は、一連のモニタリングされたT2緩和時間と比較するための標準データセット又は較正曲線を使用して計算することが可能である。
【0067】
代替の実施形態においては、様々な構成のキャリア104が、凝固時間検査のために使用されてもよい。片側磁場、低出力磁場、及び地球の磁場を含む他の構成のバイアス磁場B0102を、検体103に印加することが可能である。
【0068】
一実施形態においては、RFコイル105が、検体キャリア104の周囲に巻き付けられる。代替の実施形態においては、RFコイル105は、平坦状RFコイルであることが可能であるか、又は他の形状及び形態のRFコイルを検体キャリア104と共に使用することが可能である。
【0069】
いくつかの実施形態においては、事前に検体キャリア104に代替の及び/又は追加の試薬を追加することが可能であり、又はキャリア104内に検体103を入れるのと同時に代替の及び/又は追加の試薬を添加することが可能である。検体103、凝固試薬108、及び任意の追加の及び/又は代替の試薬に対して、離散的な、断続的な、又は継続的な磁気傾斜力を印加するために、傾斜磁場コイル109を使用することが可能である。例えば、検体のT2緩和能測定値は、磁性粒子を用いて検体の粘度を評価するために、本明細書において説明される凝固測定値とは別個に求めることが可能である。例えばWO2009/026164を参照されたい。該特許の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。さらには、又は代替的には、特に血液検体の凝固特徴を特定するために、ある期間にわたる検体内の血塊形成の機械的完全性を確認するためにT2緩和速度が解析されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態においては、凝固時間検査は、ある所定の保温期間にわたり好ましい温度(例えば体温など)に検体を維持することによりテストキャリア104内で「保温」される(例えばテストチャンバ内での保温など)一つ又は複数の検体に対して実施される。例えば、いくつかの実施形態においては、測定の実施前に検体(例えばクエン酸添加全血、血漿、又は品質管理検体(若しくは複数の品質管理検体)など)を保温することが必要となる場合がある(例えばACT検査(又は複数のATC検査)のためなど)。患者から取り出され、検体が冷える前にテストキャリア104内に即座に配置される血液検体(又は複数の血液検体)は、保温期間を要さない場合もあり、37℃に維持されることだけが必要となる場合もある。したがって、キャリア104に関連する状態でデバイス100内に加熱要素(例えば加熱ブロック(図示せず)など)を組み込むことが可能である。好ましくは、デバイス100が通電される場合に、RFコイル105内に挿入されたテストキャリア104を一定温度(例えば体温、37℃など)に維持するために、加熱要素(例えば加熱ブロックなど)が継続的に通電される。
【0071】
いくつかの実施形態においては、適切な試薬108が、検体(例えば血液検体など)と反応して(例えばPT、aPTT、TT、及びACTの中の一つなどの検体凝固時間を判定するための、血液検体に対するある特定の検査の遂行のためになど)検体凝固を促進させるように、選択されてもよい。いくつかの実施形態においては、適切な試薬108が、事前に検体キャリア104に追加されてもよく、又はキャリア104内に検体103を入れるのと同時に添加されてもよい。いくつかの実施形態においては、凝固試薬108が、事前に検体キャリア104内に含まれていることが可能であり、この場合には、追加される検体103がキャリア104内に配置されると、検体が試薬108と反応する。特定の実施形態においては、凝固試薬(又は複数の凝固試薬)が、カルシウム、カオリン、セライト、エラグ酸、ガラス粒子、トロンビン、トロンボプラスチン、又は本明細書において記載され当技術において知られている他の凝固作用物質を含む、凝固剤又は活性作用物質から選択されてもよい。いくつかの実施形態においては、凝固試薬は、プロトロンビン時間(PT)試薬、部分トロンボプラスチン時間(PTT)/活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試薬、トロンビン凝固時間(TCT)試薬、フィブリノーゲン試薬、活性凝固時間(ACT)試薬、カルシウム(例えば塩化カルシウムなど)、カオリン、セライト、エラグ酸、ガラス粒子、トロンビン、及び/又はトロンボプラスチンから選択される、一つ又は複数の凝固作用物質から選択される。
【0072】
他の実施形態においては、テストキャリア104もまた、追加試薬(又は複数の追加試薬)を保有してもよく、又は任意には収容してもよい。いくつかの実施形態においては、血液検体中に存在する任意の抗凝固剤(又は複数の抗凝固剤)を中和するためである。例えば、介入手順の間、処置により誘発される凝固を緩和するために、ヘパリンが被検体に投与されてもよく、この場合には、テストキャリア104内の中和作用物質(若しくは複数の中和作用物質)又は不活性化作用物質(若しくは複数の不活性化作用物質)(例えばヘパリナーゼ、プロタミンなど)が、ヘパリンを中和し、血液検体を基本状態に戻すことが可能となる。例えば、一つのテストキャリア104が、プロタミンを保有し、別のテストキャリア104が、プロタミンを有さず、それにより比較凝固時間検査を実施することが可能となる。
【実施例1】
【0073】
(T2緩和を用いた血漿における凝固時間測定)
ブルカー社(Bruker)のMinispec mQseries(米国テキサス州The Woodlands)を、リアルタイムでのT2モニタリングのためのパルスシーケンスで適合化した。30秒から40秒以内になされる複数の有効T2測定、及び血漿検体の横緩和時間を、5秒おきに測定した。還元血漿(CITREX(登録商標)I lyophilized plasma preparation、バイオデータコーポレーション社(BIODATA Corporation)、米国ペンシルベニア州Horsham)と、aPTT試薬(CEPHALINEX(登録商標) activated partial thromboplastin time reagent、バイオデータコーポレーション社(BIODATA Corporation)、米国ペンシルベニア州Horsham)との混合物に塩化カルシウムを追加することにより、検体の凝固を誘発した。
【0074】
以下のCPMG設定により、事前にロードされたminispec softwareを使用するブルカー社(Bruker)のMQ minispecに基づき、運動性についてT2測定を行なった。
【0075】
1. Tau=0.25
2. ポイント数=1000
3. ダミーエコー: 3
4. リサイクル遅延: 1
5. 37℃にて0dBパルス
6. 受信機利得: 75
7. 1スキャン
T2最初とT2最終との間の中間点判定により遂行される曲線解析によって、凝固時間を推定した。図2を参照されたい。凝固の際に、血漿検体の緩和時間は、検体が完全に凝固されるまで、着実に減少した。図2を参照されたい。観察されたT2の全体的な変化は、約300msであった。凝固時間は、図2における曲線に基づき約35sと判定された。
【実施例2】
【0076】
(T2緩和によるプールされた正常検体及び単一のドナーの異常検体を用いた凝固測定)
ジョージキングバイオメディカル社(George King Bio-Medical)を通じて真性の患者血漿を購入し、解凍後2時間以内に使用した。実験誤差を生じさせるように(平均値が示される)正常検体及び異常検体の両方を正副の二つにおいて実施した。正副のサンプリングにより、基準(start-4)データと比べてより正確な凝固時間が得られた。(検体の標準偏差により二つの係数、すなわち有効T2値、凝固時間を制御したことに留意されたい)。
【0077】
経時的なT2緩和時間の変化の測定を行なった。以下のCPMG設定により、事前にロードされたminispec softwareを使用するブルカー社(Bruker)のMQ minispecに基づき、運動性について測定を行った。
【0078】
1. Tau=0.25
2. ポイント数=1750
3. ダミーエコー: 3
4. リサイクル遅延: 1
5. 37℃にて18dBパルス
6. 受信機利得: 75
7. 1スキャン
T2最初とT2最終との間の中間点判定により凝固時間を生成するように曲線解析を遂行した。
【0079】
2A. PTT凝固測定のために、100μLの患者血漿及び100μLのaPTT凝固試薬PTT-A(ダイアグノスチカスタゴ社(Diagnostica Stago)、米国ニュージャージー州Parsippany)を、5mmのNMRチューブ内において37℃まで事前に加温した。37℃まで事前に加温された100μLの塩化カルシウムを血漿及び凝固試薬に追加して、凝固を活性化した。図3及び図5を参照されたい。観察されるT2の全体的な変化は、正常な検体については約250msであり、異常な検体については約250msであった。凝固時間は、図3の曲線に基づき、正常な検体については約50秒、異常な検体については約140秒と判定された。図5においては、観察されるT2の全体的な変化は、正常な検体については約205msであり、異常な検体1については300msであり、異常な検体2については約95msであった。凝固時間は、図5の曲線に基づき、正常な検体については約70秒、異常な検体については約100秒、異常な検体2については約90秒と判定された。
【0080】
2B. aPPT凝固測定のために、37℃まで事前に加温された100μLの患者血漿及び200μLのNeoplastine CI Plus(ダイアグノスチカスタゴ社(Diagnostica Stago)、米国ニュージャージー州Parsippany)を混合して、凝固を活性化した。図4を参照されたい。観察されるT2の全体的な変化は、正常な検体については約150msであり、異常な検体については約160msであった。凝固時間は、図4の曲線に基づき、正常な検体については約19秒、異常な検体については約67秒と判定された。
【実施例3】
【0081】
(本発明の方法を用いて得られる凝固方法結果と、市販の卓上型凝固計器により得られる結果との相関性)
aPTT測定のために、100μLの患者血漿及び100μLのPTT-A(ダイアグノスチカスタゴ社(Diagnostica Stago))を、5mmのNMRチューブ内において37℃まで事前に加温した。37℃まで事前に加温された100μLの塩化カルシウムを血漿及び凝固試薬に追加して、凝固を活性化した。PT測定のために、37℃まで事前に加温された100μLの患者血漿及び200μLのNeoplastine CI Plus(ダイアグノスチカスタゴ社(Diagnostica Stago)、米国ニュージャージー州Parsippany)を混合して、凝固を活性化した。実施例2において説明されるCPMGパラメータにより、事前にロードされたminispec softwareを使用するブルカー社(Bruker)のMQ minispecに基づき、運動性について測定を行った。T2最初とT2最終との間の中間点判定により、凝固時間を生成するための曲線解析を遂行した。
【0082】
ブルカー社(Bruker)のMinispec mQseries、及びStart(登録商標)4と呼ばれるダイアグノスチカスタゴ社(Diagnostica Stago)(米国ニュージャージー州Parsippany)から市販の卓上型凝固計器を使用して、血漿検体のプロトロンビン時間(PT)及び活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を測定した。図6は、これら二つの方法のグラフによる比較を表す相関プロットを示す。当技術において知られているように、ダイアグノスチカスタゴ社(Diagnostica Stago)のStart(登録商標)4との相関性をもたらすために、T2 Biosystemsにより測定される時間に対して減算係数を適用した。この減算係数は、NMR計器により導出される全ての正常凝固値が臨床的に正常な範囲となる固定値を減じることにより決定した。相関データポイントは、プロットの対角線に非常に近接しており、凝固時間を測定するための二つの非常に異なるアプローチを用いて得られた結果の相関性が優れていることを示唆する。
【0083】
本発明の例示的な実施形態を参照として本発明を詳細に示し説明したが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更を本発明においてなし得ることが、当業者には理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核磁気共鳴(NMR)デバイスを使用して検体の凝固状態及び/又は凝固時間を判定するための方法であって、
a)経時的に前記検体のT2の少なくとも二つの値を判定するために、前記NMRデバイスのNMR検出器の検出ボリューム内の前記検体に対してNMR測定を実施するステップであり、前記T2は前記検体の凝固に応ずる、前記NMR測定を実施するステップと、
b)前記検体の凝固状態及び/又は凝固時間を求めるために、前記ステップa)において判定された前記値を評価するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
被検体から得た検体の凝固の度合いを判定する方法であって、
a)前記検体のT2を測定するステップであり、前記T2は凝固の度合いに応ずる、前記T2を測定するステップと、
b)前記ステップa)において得られた前記T2の測定値を、前記T2に関する既知の値と比較するステップであり、前記既知の値は正常な検体における凝固の度合いと相関付けられている、前記比較するステップと、
c)前記ステップb)においてなされた前記比較から凝固の度合いを評価するステップと
を含む、方法。
【請求項3】
検査被検体から得た検体の凝固時間を判定する方法であって、
a)前記検体のT2を測定するステップであり、前記T2は凝固の度合いに応ずる、前記T2を測定するステップと、
b)前記ステップa)において得られた所与の時間における前記T2の測定値を、凝固による経時的な前記T2の標準変化曲線を与える標準凝固時間曲線と比較するステップと、
c)前記ステップb)における前記比較から前記凝固時間を判定するステップと
を含む、方法。
【請求項4】
検査被検体からの検体の凝固をモニタリングするための方法であって、
(a)経時的に前記検体のT2の複数の値を測定するステップであり、前記T2は前記検体の凝固状態に応ずる、前記複数の値を測定するステップ
を含む、方法。
【請求項5】
(b)前記ステップ(a)において得られた前記T2の測定値を標準凝固時間曲線と比較するステップ
をさらに含み、任意には、
(c)前記ステップ(b)における前記比較から異常な凝固事象を判定するステップ
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項6】
前記標準凝固時間曲線は、所定のものであるか、又は計算されたものである、請求項3又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記標準凝固時間曲線は、一つ又は複数の被検体の一つ又は複数の検体からの、経時的な前記T2の複数の測定値から判定される、請求項3又は5に記載の方法。
【請求項8】
前記検査被検体は、前記複数の被検体の中の一つであり、前記標準凝固-時間-曲線は、前記検査被検体からの一つ又は複数の検体からの測定値から準備される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
検査被検体の検体における異常な凝血事象を診断するための方法であって、
a)経時的に前記検査被検体の前記検体のT2を測定するステップであり、前記T2は前記検体の凝固に応ずる、前記T2を測定するステップと、
b)前記ステップa)において得られた前記被検体のT2を、正常な凝固に応ずるT2の前記標準凝固時間曲線のT2と比較することにより、前記被検体における異常な凝血事象を診断するステップと
を含む、方法。
【請求項10】
前記標準凝固時間曲線の特徴と比較された前記検体の前記T2の前記特徴は、経時的な前記T2の全体的な変化、経時的な前記T2の速度、前記T2の変化から判定される凝血時間、及び凝固前の前記検体における前記T2変化の変動からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記被検体からの第一の検体を保有する第一のテストキャリア、及び前記被検体からの第二の検体を保有する第二のテストキャリアが前記測定の前に用意され、前記第一の検体及び前記第二の検体は、別個の時間に前記被検体から収集される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第一の検体の前記T2の一つ又は複数の特徴を、前記第二の検体における前記T2の一つ又は複数の特徴と比較して、凝固における前記第一の検体と前記第二の検体との間の相違(又は複数の相違)を評価するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記T2は、CPMGシーケンスを使用することにより測定される、請求項1、2、3、4及び9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
凝固されない検体が、第一の平均T2値により特徴付けられ、凝固される検体が、第二の平均T2値により特徴付けられ、前記CPMGシーケンスのパラメータは、前記第一の値と前記第二の値との差が、前記CPMGシーケンスを使用したT2の測定に基づき検査検体が凝固されるか又は凝固されないかを判定するのに十分なものとなるように最適化されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記差は、前記CPMGシーケンスを使用したT2測定の平均標準誤差よりもかなり大きい、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記差は、
前記第一のT2値の少なくとも3%である、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記検体は、正常な血漿、正常な血液、又は正常な血液の一部である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記パラメータは、
前記検体が凝固しつつある間及び前記検体が凝固される前に、少なくとも二つのT2値を測定するのに十分な任意の二つのT2の測定間の滞留時間を得るように最適化される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記CPMGシーケンスは、正常に凝固する検体に対して最適化されたパラメータにより特徴付けられ、前記正常に凝固する検体は、その凝固されない状態においては、第一のT2値により特徴付けられ、その凝固された状態においては、第二のT2値により特徴付けられ、前記パラメータは、
(a)前記第一の値の少なくとも5%である、前記第一の値と前記第二の値との間の差、及び(b)前記検体が凝固しつつある間、及び前記検体が凝固される前に、少なくとも二つのT2値を測定するのに十分な、任意の二つのT2の測定間の滞留時間、をもたらすように最適化されている、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記CPMGシーケンスのパルス減衰が、T2の測定による前記検体の加熱を部分的に又は完全に低減させるように最適化されている、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記CPMGシーケンスは、
約0.1秒から約100秒までの間のリサイクル遅延、1から約10,000までの間の取得されるエコー数、約0.01ミリ秒から約10ミリ秒までの間のエコー間遅延、及び約0.1秒から約5,200秒までの間の滞留時間により特徴付けられる、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
凝固試薬が、前記検体と混合される、請求項1、2、3、4及び9のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
凝固を誘発又は支援する凝固試薬が、前記凝固試薬が前記検体において凝固を誘発又は支援するのに適した条件下において、前記検体と混合される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記凝固試薬は、プロトロンビン時間(PT)試薬、部分トロンボプラスチン時間(PTT)試薬、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試薬、トロンビン凝固時間(TCT)試薬、フィブリノーゲン試薬、及び/又は活性凝固時間(ACT)試薬の中の一つ又は組合せである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記凝固試薬は、プロトロンビン時間(PT)試薬、部分トロンボプラスチン時間(PTT)試薬、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試薬、トロンビン凝固時間(TCT)試薬、フィブリノーゲン試薬、及び活性凝固時間(ACT)試薬からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
a)前記凝固試薬は、テストキャリアが前記NMR検出器の前記検出ボリューム内に配置される前に、前記テストキャリア内の前記検体と混合され、
b)前記凝固試薬は、テストキャリアが前記NMR検出器の前記検出ボリューム内に配置された後に、前記テストキャリア内の前記検体と混合され、
c)前記検体は、テストキャリアが前記NMR検出器の前記検出ボリューム内に配置される前に、前記テストキャリア内に配置され、及び/又は
d)前記検体は、前記テストキャリアが前記NMR検出器の前記検出ボリューム内に配置された後に、前記テストキャリア内に配置される、請求項22から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記T2は、経時的に前記T2をモニタリングすることにより得られる、請求項1、2、3、4及び9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記検体の前記T2の測定は、少なくとも、前記検体が実質的に凝固されることによって、前記T2の値が実質的に変化しなくなるまで継続される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記T2は、前記凝固試薬が前記検体と混合された後に測定される、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記T2は、前記検体が凝固される前に測定される、請求項1、2、3、4及び9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記凝固時間は、終了時間と開始時間との間の差として判定され、凝固は、前記開始時間に実質的に始まり、前記終了時間に実質的に終了する、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項32】
前記開始時間は、凝固を誘発又は支援する凝固試薬が、前記凝固試薬が前記検体における凝固を誘発又は支援するのに適した条件下において、前記検体と混合される時間であり、前記終了時間は、前記T2の任意の後の値とは実質的に異ならない前記T2の値と関連付けられる、請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−507722(P2012−507722A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534756(P2011−534756)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/062537
【国際公開番号】WO2010/051362
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(511105894)ティー2 バイオシステムズ,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】