説明

凝縮液原料を利用したオレフィンの製造

天然ガス凝縮液をオレフィン生産プラントのための原料として使用する方法であって、原料が気化され、プラント中での熱分解に用いられる凝縮液から軽質炭化水素が除去されるような分離条件に置かれ、液体留出物が分離回収のために残置される、使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天然ガス由来の凝縮液の熱分解によるオレフィンの形成に関する。より詳しくは、本発明は天然ガス凝縮液の、熱分解炉中の炭化水素熱分解を採用したオレフィン生産プラント用の原料としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素の熱分解は、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエンのようなオレフィンおよびベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族化合物の製造に広く用いられる触媒を用いない石油化学プロセスである。
【0003】
基本的に、全成分原油から蒸留や他の分留によって製造された、ナフサ、軽油または他の全成分原油からの留分のような炭化水素原料は、炭化水素分子を分離された状態に保つための希釈剤として働く水蒸気と混合される。水蒸気/炭化水素混合物は約900〜約1,000華氏温度(°FまたはF)で予熱された後、反応帯に入るが、ここで極めて急速に加熱されて約1,450〜約1,550°Fの範囲の厳しい炭化水素熱分解温度に達する。熱分解の遂行にはいかなる触媒の助けも不要である。
【0004】
この方法は熱分解炉(水蒸気分解炉)中で、反応帯の圧力が約10〜約30psigのもとで実施される。熱分解炉はその内部に伝達区画と放射区画を有する。予熱が伝達区画で行われるのに対し、厳しい熱分解は放射区画で起きる。
【0005】
厳しい熱分解の後、熱分解炉からの流出物は多種多様のガス状の炭化水素、例えば1分子あたり1〜35個の炭素原子のものを含む。これらのガス状の炭化水素は飽和、単不飽和、および 多価不飽和であり得る、また、脂肪族、脂環式、および/または芳香族であり得る。分解ガスはかなりの量の分子状水素(以下、単に水素と呼ぶ)をも含む。
【0006】
従って、実用化されているオレフィン生産プラントで行われる従来の水蒸気熱分解では、全成分原油の留分を使用し、これらを熱分解する間、留分の全部を気化させている。この分解産物は、例えば、約1重量%の水素、約10重量%のメタン、約25重量%のエチレンおよび約17重量%のプロピレンを含み、ここですべての重量%は前記産物と、ほとんどが1分子あたり炭素原子を4〜35個含む他の炭化水素分子からなる残留分の総重量に基づく。
【0007】
この分解産物はオレフィン生産プラントでさらに処理され、このプラントの生産物として様々な、各々別個の高純度の流れ、例えば水素、エチレン、プロピレン、1分子あたりの炭素原子が4個の混合炭化水素、燃料油および分解ガソリンなどが生産される。前記それぞれの分離した個別の流れは、それ自体で価値のある市販品である。従って、オレフィン生産プラントは現在のところ全成分原油の流れの一部(留分)を取りこんで、そこから複数の、別個の有用な製品を生成している。
【0008】
天然ガスおよび全成分原油は、幾つかの空隙率が大きく変化する地下の地層中で自然に形成されたものである。これらの地層の多くは岩からなる不透水性地層で覆われていた。天然ガスおよび全成分原油(原油)は地表の下にある様々な層位トラップにも蓄積される。膨大な天然ガスおよび/または原油はこのように様々な深さの地表の下に集まり、炭化水素産生層を形成する。この天然ガスの多くは、原油と密接に物理的接触しており、それゆえに原油からいくらかの軽い分子を吸収している。
【0009】
地中に油井が掘られ、このような炭化水素産生層の1つ以上を貫通すると、天然ガスおよび/または原油はその油井を通って地表に回収される。
【0010】
ここで用いている用語“全成分原油”および“原油”は、(地表において優勢な状態の温度および圧力のもとで)液体の原油であって、油井に由来し、存在しうるすべての天然ガスを分離したものであり、かつ、このような原油を原油精製所へ輸送するのに好ましい処理および/またはこのような精製所での従来の蒸留といった処理を一切受けないものを意味する。この処理には脱塩のような段階も含まれる。従って、この原油は製油所での蒸留や他の分留に適しているが、いかなる蒸留や分留も受けていないものを指す。アスファルテンやタールのような不揮発性の要素が含まれてもよいが、必ずしも常に含まれていなくてもよい。全成分原油の沸点範囲を規定することは不可能ではないにせよ困難であるとされている。したがって、全成分原油は1つ以上の原油で、油田パイプラインおよび/または従来の原油貯蔵設備から直接に由来するものであり、利用可能性を決定付けているのは、一切あらかじめ精留されていないことである。
【0011】
天然ガスも、原油と同様に、地表で生産される際の組成は広範に変化しうるが、一般にかなりの量の、たいていは大量の、例えば約50重量%のメタンを含む。天然ガスはしばしばより少ない量の(約50重量%未満)、しばしば約20重量%未満の、エタン、プロパン、ブタン、窒素、二酸化炭素、硫化水素などのうちの1以上のものをも含んでいる。地中から生産された天然ガス流は、多くの場合、しかしすべてではないが、少ない量の(約50重量%未満)、しばしば約20重量%未満の、炭素原子1分子あたりの炭素数が5〜12の炭化水素(C5〜C12)を含み、これは一般に地表において優勢な環境大気の状態の温度および圧力のもとでは通常ガス状ではなく、一旦地表で生産された後は天然ガスから凝縮しうるものである。重量%は、すべてここで問題の天然ガス流の総重量に基づく。
【0012】
さまざまな天然ガス流が地表で生産されるとき、流れが集められる地表において優勢な状態の温度および圧力のもとで、こうして生産された天然ガス流から炭化水素の組成物が自然に凝結する。このように製造された通常液体の炭化水素質凝縮液は、同様の優勢な状態のもとで通常ガス状の天然ガスから分離して存在する。通常ガス状の天然ガスにはメタン、エタン、プロパンおよびブタンが含まれる。生産された天然ガス流から凝結する通常液体の炭化水素留分は、通例“凝縮液”と呼ばれ、一般にブタンより重い分子(C5〜約C20またはわずかに上回るもの)を含む。生産された天然ガスから分離した後、この液体凝縮液留分は通常天然ガスと呼ばれる残りのガス状の留分とは別々に処理される。
【0013】
従って、最初に地表で生産された天然ガス流から回収された凝縮液は、組成の点で天然ガス(主としてメタン)と厳密には同じ物質ではない。また組成の点で原油とも同じ物質ではない。凝縮液は、通常ガス状の天然ガスと通常液体の全成分原油との間のすき間を占める。凝縮液は、通常ではガス状の天然ガスよりも重い炭化水素、ならびに全成分原油の最も軽い限界に位置する狭い範囲の炭化水素を含む。
【0014】
凝縮液は、原油と異なり、沸点範囲を用いて特徴づけることができる。凝縮液は通常約100〜約650華氏温度(°F)の範囲で沸騰する。この沸点範囲において、凝縮液は多種多様の炭化水素質材料を含む。これらの材料は、ナフサ、灯油、ディーゼル燃料および軽油(燃料油、炉用燃料油、暖房用燃料油など)として一般に呼ばれている留分を構成する化合物を含む。ナフサおよび関連する軽沸成分(以下ナフサと総称する)は、C5〜C10の範囲にあり、凝縮液中の最も軽い沸点範囲の留分であり、約100〜約400°Fの範囲で沸騰する。石油蒸留物(灯油、ディーゼル、軽油)は一般にC10〜約C20またはわずかに上回る範囲であり、一般にその大部分は約350〜約650°Fの範囲で沸騰する。これらは、以下単独および集合的に”留出物”と呼ぶことにする。注目すべきは、様々な留出物の組成物は350°F未満および/または650°Fより高い沸点を有することがあり、このような留出物は前記350〜650°Fの範囲に、そして本願発明に含まれる、ということである。
【0015】
前記で説明したように、従来のオレフィン生産プラント用の出発原料は、通常このプラントに到達する前に、まず、重要で費用のかかる処理を受ける。通常は、凝縮液および全成分原油は蒸留等で精留され複数の留分になる。この留分は、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油(真空または大気圧)などであり、原油の場合(そして天然ガスではない場合)には高沸点残留分が含まれる。その後、これらの留分は、残留分以外いずれも、通常オレフィン生産プラントに渡され、プラントにおける出発原料となる。
【0016】
ここでもし、凝縮液および/または原油を処理して従来のオレフィン生産プラント用の出発原料として供給するための炭化水素質留分を生成する精製蒸留ユニット(全成分原油の処理ユニット)にかかる資本および運転コストをそっくり削減できるとすれば望ましいことである。しかしながら、従来技術によれば、最近まで炭化水素の切片(留分)においてすら、沸点範囲分布が広すぎるためこれは避けるべきこととされていた。例えば、レングレの米国特許第5,817,226号公報を参照のこと。
【0017】
最近、米国特許第6,743,961号公報がドナルド.H.パワーズに与えられている。この特許は充填材料を含んだ蒸発/温和分解域を用いた全成分原油の熱分解に関する。この領域は、より粘稠な炭化水素液体成分の熱分解/気化が最大化するまで、全成分原油のまだ気化していない液相がこの領域内に保持されるように運転される。この方法では、充填材料上の析出物として残る固体残渣の形成を最小限にすることが可能である。この残渣は後で従来の水蒸気−空気デコーキングにより、理想的には通常の炉内デコーキングサイクル(当該特許の第7欄、50〜58行目を参照のこと)の間に、充填材料から焼き払われる。従って、その特許の第2領域9は、供給された原油の炭化水素質物質のうち、そのプロセスで用いられている条件(当該特許の第8欄、60〜64行目を参照のこと)の下で分解も気化もしないものを含む成分に対するトラップとして働く。
【0018】
2002年11月16日に出願された米国特許出願第10/244,792号(米国特許公報第6,743,961号と発明者および譲受人が共通する)は、前記特許で開示されたプロセスを対象とするものの、そこでは弱酸性の熱分解触媒を用いて、気化/軽熱分解ユニットの全体機能を、気化(先行する軽熱分解を行わない)−軽熱分解(続いて気化)スペクトラムにおける軽熱分解側へ向かわせている。
【0019】
米国特許公報第6,979,757号(米国特許公報第6,743,961号と発明者および譲受人が共通する)は、前記特許で開示されたプロセスを対象とするものの、そこでは、気化や軽分解が起こらずに気化/軽熱分解ユニット中に残っている液体炭化水素の少なくとも一部を除去している。供給された原油のこれら液体炭化水素成分は、前記ユニットの底部付近から取り出され、別の制御されたキャビテーション装置に送られ、前工程で気化および軽熱分解に耐えていた粘稠な炭化水素成分にさらなる熱分解エネルギーを与える。従って、この発明も気化/軽熱分解ユニットの機能全体を、前記気化−軽い熱分解スペクトラムにおける軽熱分解側へ向かわせている。
【0020】
米国特許出願第11/219,166号、出願日2005年9月2日(米国特許公報第6,743,961号と発明者および譲受人が共通する)は、全成分原油をオレフィンプラントに使用する気体および液体の炭化水素の混合物の原料として使用するプロセスを対象とする。気化した炭化水素を残りの液体から分離し、この気相を厳しい熱分解工程に送る。残りの液体炭化水素は、ユニットに急冷油を導入し、急冷油および供給された原油の残りの液体炭化水素を含む残留液をユニットから取り出すことにより、軽熱分解後の気化を助ける条件のもとに置かれる。
【0021】
ガソリンの需要が増大する時期には、留出物を含む様々な原油留分を流動式接触分解のような様々な精製装置での接触分解プロセスにかけることでガソリンの供給量(貯留)を増大させることができる。従って、原油1バレルから製造されるガソリン/ナフサの量は所望により増大させることができる。これは上記で定義した留出物には当てはまらない。1バレルの原油から回収される留出物の量は決まっていて、ガソリンのように増大させることはできない。留出物の生産(供給)を増やすには精製する原油の量を増やす以外にないのである。
【0022】
従って、オレフィンを形成する熱分解炉のために供給されるはずのものから留出物を回収することが強く望まれることがままあり、本発明はそうしたプロセスを提供するものである。
【0023】
本発明を用いることにより、不足している有用な留出物を熱分解用供給材料から別々に回収することが可能になり、こうして価値の乏しい分解生成物への転換を抑えることができる。本発明によれば、高品位の留出物の熱分解を防ぐことができるだけでなく、当業者に自明であったと思われるやり方よりも熱効率が大きくなり、また資本経費も抑制される。当業者はまず供給原料を熱分解させ、従来の熱蒸留塔に送って熱分解している供給原料から留出物を蒸留していた。このやり方では、塔の建設と、このような塔につきものの通常の再沸器と塔頂凝縮器の設置に多額の費用がかかる。本発明では、スプリッターを使用することにより、より低廉な資本コストでエネルギー効率の大幅な向上を蒸留塔において実現している。本発明では、再沸器、塔頂凝縮器ならびに関連する蒸留塔装置を、それらの機能を損なうことなく廃止することにより、このように資本コストをかなり節約している。さらに、本発明は蒸留塔のときよりもはるかに大きい運転時のエネルギー効率を示す、その理由は、蒸留塔では必要とされる余分のエネルギーが本発明では不要であるからであり、本発明では分離機能のために、分解炉の運転に既に消費されようとしているエネルギーを代わりに利用するものであり(分解炉の上流側の単体の蒸留塔の運転により消費されるエネルギーとは対照的に)、また、分離器からの気化生成物は炉の熱分解区画に直接行くからである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明によれば、前記で定義したように凝縮液をオレフィンプラント用の原料に利用するためのプロセスを提供するものであり、前記で定義したように留出物の回収率を最大化し、かつ、オレフィンプラント用に供給される原料の沸点が留出物よりも低いままにするものである。
【0025】
本発明によれば、凝縮液は予熱されることで、コークス形成が少ない、もしくは全くない状態で凝縮液原料から炭化水素蒸気と液体留出物の混合物を生成する。気化した炭化水素を残りの液体留出物から分離し、この気相を厳しい熱分解工程に送る。残りの液体留出物は別々に回収され供給用留出物(貯留物)に加えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
ここで用いられる用語“炭化水素”、および“炭化水素質”は、必ずしも物質が水素原子および炭素原子のみを含むことを意味するものではない。こうした用語は、実際には炭化水素質物質としては、主としてあるいは本質的に水素および炭素原子からなるが、他の元素、例えば酸素、硫黄、窒素、金属、無機塩などがかなりの量含まれていてもよいものを含む。
【0027】
本発明で用いられる用語“ガス状の”は、本質的に気相であり、例えば水蒸気単独、水蒸気と炭化水素蒸気の混合物などである1つ以上の気体を指す。
【0028】
本発明で用いられる用語“コークス”は、任意の高分子量の炭素質固体を意味し、多核芳香族化合物の縮合により形成された化合物を含む。
【0029】
本発明にとって有用なオレフィン製造プラントは、初めに供給原料を受け取り熱分解する熱分解炉を含んでよい。炭化水素の水蒸気分解のための熱分解炉は、対流および放射により加熱され、また、一連の予熱、循環および熱分解の管、通常は供給された炭化水素の予熱、輸送および熱分解のための管の束を含む。熱分解のための高熱は、炉の放射区画(輻射部)に置かれたバーナーから供給される。これらのバーナーから出た排ガスは炉の伝達区画を通って循環することにより、新たに供給される炭化水素の予熱に必要な熱を供給する。炉の伝達区画および放射区画は“交差部”において連結し、前記で言及されている管は一方の区画の内部から次の区画の内部へと炭化水素フィードを運ぶ。
【0030】
分解炉は、放射管(コイル)の入口で始まる放射区画中での急速加熱のために設計されており、放射管入り口は温度が低く反応速度定数が低い。輸送された熱の大部分は単に炭化水素を入口温度から反応温度にまで上昇させる。コイルの中ほどでは、温度上昇率は低いが、熱分解率はかなり上がっている。コイルの出口では、温度上昇率はいくぶん増大しているが、入口においてほど急速ではない。反応物質の消失速度は、反応物質の反応速度定数とその局地的な濃度との積として得られる。コイルの末端では、反応物質濃度は低く、さらなる熱分解はプロセスガス温度を上昇させることで実施できる。
【0031】
炭化水素フィードの水蒸気希釈は、炭化水素の分圧を低くし、オレフィンの形成を促進し、放射管中でのコークス形成の傾向を低減する。
【0032】
分解炉は一般的に、輻射耐火壁の間の中央に置かれた直立管のある長方形の火室を有する。この管は上端で支えられている。
【0033】
放射区画への点火は、壁または床あるいはその両方に据え付けられたバーナーにより、ガス状の、あるいはガス状と液体の組み合わせの燃料を用いてなされる。火室は一般的にわずかな負圧のもとで、ほとんどの場合上向きの排ガス流を伴う。伝達区画に向かう排ガス流は、少なくとも1以上の自然通風または吸出し送風機により構築される。
【0034】
放射コイルは通常単一の平面内で、火室の中央に吊るされている。これらは単一の平面内に入れ子にしても、ねじれ形の2列の管配列を平行に置いてもよい。バーナーから放射管への熱伝達はその大部分が放射により行われるため、熱“放射区画”と呼ばれ、そこでは炭化水素は約1,450°F〜約1,550°Fにまで加熱され、厳しい熱分解を受ける。
【0035】
最初は空である放射コイルは、それゆえに、加熱された管状の化学反応器である。炉に供給された炭化水素は、放射区画からの排ガスからの対流加熱、伝達区画へのフィードの水蒸気希釈などにより、伝達区画内で約900°F〜約1,000°Fにまで予熱される。予熱の後、従来形の実用炉内では、フィードはすぐに放射区画へ流入させてもよい。
【0036】
一般的な炉内では、伝達区画は複数の領域があってよい。例えば、フィードはまず第1(上部)領域中で予熱され、ボイラー供給水は第2領域中で加熱され、フィードと水蒸気の混合物は第3領域中で加熱され、水蒸気は第4領域中で過熱され、最後にフィード/水蒸気混合物の予熱は底部の第5領域で完了する。領域の数とその機能は相当程度変更可能である。従って、熱分解炉は複雑かつ可変の構造とすることができる。
【0037】
放射区画を離れた、分解したガス状の炭化水素は急速に温度を下げることで熱分解パターンが破壊されるのを防ぐ。分解ガスを同じオレフィン生産プラント中の下流部でのさらなる処理の前に冷却することにより、大量のエネルギーを高圧蒸気として回収し、炉および/またはオレフィンプラント内で再使用する。これは当業者に公知の移送ライン熱交換器を用いることでしばしば達成される。
【0038】
放射コイルの設計者は、滞留時間を短く、温度を高く、炭化水素分圧を低くするようにしている。コイル長および直径は、コイルあたりの供給量、温度性能についてのコイルの金属特性、およびコイル上へのコークス沈着速度によって決定される。コイルは、単一の、直径の小さな管で、供給量が少なく、炉あたりの管コイル数の多いものから、長くて直径の大きな管で、供給量が多く、炉あたりの管コイル数の少ないものまで広範に及ぶ。長いコイルはUターン屈曲部で繋いだ管長からなっていてよい。様々な管の組み合わせを用いることができる。例えば、4本の平行な狭い管から2本のやはり平行なより直径の大きな管へ供給し、そこからさらに直列につながれたさらに直径の大きな管へ供給することもできる。それゆえに、コイル長、直径、および直列および/または並列の流れの配列は炉ごとに大幅に変わる。炉はその設計における独自仕様の特性のため、しばしば製造者名で言及される。本発明はいかなる熱分解炉にも適用でき、例えばルマス社、M.W.ケロッグ社、三菱、ストーン&ウェブスターエンジニアリング社、KTI社、リンデ・セラス社などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
炉から出た分解した炭化水素の下流側の処理はかなり変化し、特に最初の炭化水素フィードが気体であったか液体であったかに基づく。本発明ではフィードとして天然ガスの凝縮した液体を用いるので、下流側処理は液体供給オレフィンプラントとして記述される。液体原料、すなわち従来技術に関するナフサから軽油まで、そして本発明に関する凝縮液、を分解したガス状の炭化水素の下流側処理は、ガス状の原料に関する場合に比べると、液体原料中にはより重い炭化水素成分が含まれるため、より複雑である。
【0040】
液体炭化水素原料の下流側処理においては、プラント毎に大幅に変わるとはいえ、炉の流出物を例えば前記移送ライン熱交換器で熱交換した後に油で急冷することが一般的に採用されているその後、分解した炭化水素流は重質液を除去するために一次精留し、続いて非凝縮の炭化水素を圧縮し、それらから酸性ガスと水を除去する。次いで様々な所望の生成物を個々、例えば、エチレン、プロピレン、1分子あたりの炭素原子が4個の炭化水素の混合物、燃料油、分解ガソリンおよび高純度水素流に分離する。
【0041】
本発明に基づいて、これまで精留、蒸留などを受けることのなかった凝縮液を、まるごとあるいはその一部をオレフィンプラントの熱分解炉のための一次(出発)原料として利用するプロセスが提供される。そうすることによって、本発明により、前記に記載されているような先行技術で行われているように、炉のための一次原料として供給するために、費用のかかる凝縮液の蒸留により様々な留分、例えば、ナフサから灯油、軽油などを得る必要性がなくなっている。
【0042】
本発明によって、凝縮液を第1フィードとして用いながら前記利点(エネルギー効率、および資本コスト削減)が達成される。その際、炉の放射区画に入って通過した炭化水素流の完全な気化が達成されるのに対し、最初に凝縮した液体フィード中に存在する留出物留分は、分解に供される、より軽い蒸気質の炭化水素からの分離が容易であるため本質的に液相状態に保たれる。
【0043】
本発明は、対流および放射区画とで互いに別々に独立して運転される内蔵式の気化設備を用いることで実施することができ、これらは(1)炉の一体型区画、例えば炉内部の伝達区画内または近傍だが、放射区画の上流側および/または(2)炉自体の外側で、しかし炉と流体連通状態にあるものとして使用することが可能である。炉の外側のものを使用する場合、第一フィードの凝縮液を炉の伝達区画で予熱し、伝達区画の外から単体の気化設備に通す。この単体設備からの蒸気質の炭化水素生成物を炉に戻し、炉の放射区画に入れる。予熱は所望により炉の伝達区画内以外で、あるいは炉の内側および/または外側のいかなる組み合わせでも実施することができ、これらもなおも本発明の範囲内にある。
【0044】
本発明の蒸発装置は予熱された、あるいは予熱されていない凝縮液フィードを受け入れる。余熱は例えば常温〜約350°F、好ましくは約200〜約350°Fである。これはフィードの完全な気化に必要とされるよりも低い温度領域である。いかなる予熱も、好ましくは、たとえ必要でなくても、このような凝縮液を最初のフィードとする同じ炉の伝達区画で起きる。
【0045】
従って、本発明の気化操作段階における第1領域では気/液分離を採用するが、ここで予熱された供給流中の蒸気質の炭化水素およびあれば他のガスは、予熱後に液体のまま残った留出物成分と分離される。前記ガスは気/液分離区画から取り出され、炉の放射区画へと通される。
【0046】
第一の、例えば、上部の領域における気/液分離は、留出液のふるい落としにより行われるが、その際従来のいかなる方法、当業者に公知で明白な幾多の手段を用いてもよい。液体の気/液分離に適した装置としては、接線状蒸気入口を備えた液体ノックアウト容器、遠心分離器、従来のサイクロン分離器、シェーペンターズ、羽根式液滴分離器などが挙げられる。
【0047】
前記蒸気からこのように分離された液体は、2番目の、例えば低い領域に移動する。これは下記図2に示すような外部配管により行うことができる。あるいは蒸発装置を用いて内部的に行うこともできる。この第2領域に流入して長さ方向に沿って移動した液体は、接近してくる、例えば上昇してくる水蒸気と出会う。この液体は、ガスが除去され存在しないため、接近してきた水蒸気の熱エネルギーおよび希釈効果の影響をまともに受ける。
【0048】
この第2領域は少なくとも1つの液体分配装置、例えば多孔板、溝形分配器、2重流トレイ、チムニートレイ、スプレーノズルなどを有していてもよい。
【0049】
この第2領域は、領域内の液体および気体の密接な混合を促進するための1つ以上の従来の充填材料および/またはトレイをその一部に有していてもよい。
【0050】
残りの液体炭化水素がこの第2領域を通って移動する(落下する)につれて、軽い物質、例えば存在すると考えられるガソリンまたはナフサは、高エネルギーの水蒸気と接触することにより相当な割合が気化する。これにより、より気化しにくい炭化水素成分が落下し続けること、液体炭化水素に対する比率および温度がより高い水蒸気にさらされることが可能になり、水蒸気のエネルギーおよび低い炭化水素分圧と高い水蒸気分圧の両方により気化可能になっている。
【0051】
図1は典型的な熱分解操作(プラント)1を示し、ここで炉2は上部の伝達区画Cおよび下部の放射区画Rを有し、これらは交差部で連結している(図2参照)。フィード5、例えば、ナフサは、炉2で分解するものであるが、熱分解に先立って、気化をほぼ完全にするために、最初に領域6で予熱され、次いで希釈水蒸気7と混合され、得られた混合物は、区画Cのうち領域6よりも熱い領域である領域8でさらに加熱される。得られた気体の混合物は放射区画Rに通され、1つ以上の放射コイル9に分配される。コイル9の分解ガス生成物は集められ、配管10により複数の移送ライン熱交換器11(図1のTLE)に送られ、ここで分解ガス生成物は熱分解作用が本質的に終了する程度に冷却される。分解ガス生成物は、TLE 11のすぐ下流側にある回収・冷却された急冷油20の噴射によりさらに冷却される。急冷油とガスの混合物は配管12を通って急冷塔13に送られる。塔13では配管14からの分解ガソリンのような炭化水素質液体急冷物質と接触させ、さらなる燃料油生成物を凝結して回収するのみならず、分解ガス生成物をさらに冷却する。生成物24の一部は、さらなる冷却(図示せず)の後、配管20を通って配管12へと回収される。熱分解したガス生成物は塔13から配管15を通って取り出され、水急冷塔16へ送られ、ここで塔16のより低い部分から回収された回収冷却水17と接触する。水17は塔16内で液体炭化水素留分を凝結させる、すなわち、一部は液体急冷物質14として使用され、一部は配管18を通って取り出され、他の場所で他の処理に用いられる。配管20へ送られなかった急冷油留分24の一部は、燃料油として取り出され、他の場所で処理される。
【0052】
このように処理された分解ガス生成物は塔16から取り出され、配管19を通って圧縮・精留設備21に送られ、ここで前記個別生成物ストリームはプラント1の生成物として取り出され、こうした個別生成物ストリームは配管23としてまとめて代表される。
【0053】
図2は本発明の方法を図1の炉2に適用した1実施例を示す。前述したように、実際の炉は複雑な構造なので、図2は単純化・簡潔化のためかなり図式化されている。図2では、炉2は予熱区画6に流入する初期または第一の凝縮液供給流5を有するよう示されている。フィード5は本質的に(主として)凝縮液のみからなるが、必ずしも全部が凝縮液である必要はない。他の炭化水素質物質はフィード5中に少ない割合で存在してよく、具体的には凝縮液よりも軽沸の成分、例えば天然ガス液体、ブタン類、天然ガソリンなどである。フィード5は、上記で言及した理由により、区画6に流入する前および/または区画6内で希釈用水蒸気(不図示)と混合する。区画6は従来の炉の典型的な予熱区画である。本発明では、予熱は任意であるので、区画6はまるごと削除することも可能である。予熱する場合、外部炉2を区画6の代わり、もしくは追加で使用することができる。従って、従来の炉内部にあった典型的な予熱区画は本発明を実施する場合は使用してもあるいは削除してもよく、同様にフィード5の予熱も使用してもあるいは削除してもよい。本発明の1実施例では、フィード5は区画6を通り、前記所望の温度領域にまで加熱されると配管25により区画6から出て行く。従来のオレフィンプラントでは、予熱されたフィードは希釈水蒸気と混合された後、区画6、例えば、炉の伝達区画Cから、直接図1の区画8に送られ、次いで炉2の放射区画Rへと送られる。しかしながら、本発明のこの実施形態によれば、予熱されたフィード(主に留出液および留出物より軽い炭化水素蒸気、すべてフィード5由来)は、代わりに配管25を通って、例えば約200〜約350°Fの温度で、本実施形態においては物理的に炉2の外側に位置する単体の蒸発装置26へと送られる。しかしながら装置26は炉2と流れが連通した状態にある。予熱されたフィードは最初に装置26の上部にある第1領域27に入るが、そこではより軽いガス状の成分、例えば、ナフサおよびより軽い成分が存在し、随伴する液体成分から分離される。
【0054】
装置26は本発明の新規な特徴の1要素となる蒸発装置である。装置26は従来の分解炉と同時には見出されていない。図2の実施形態では、装置26は炉2から配管25を介して予熱された凝縮液を受け取る。本発明の他の実施形態では、予熱区画6を使用する必要はなく、フィード5は直接に装置26に供給される。装置26中に存在する水蒸気は熱と希釈効果の双方を与え、主として(支配的には)その装置内で液相状態に留まっているナフサおよびより軽い成分の少なくともかなりの部分を気化させる。装置26で受け取られる、予熱された凝縮液フィードと一緒にされた気体成分は配管28によって領域27から取り出される。従って、配管28は本質的にすべての軽質炭化水素蒸気、例えば、領域27に存在するナフサの沸点範囲およびより軽い物質を運び去るものである。領域27に存在する液体留出物は、液体ナフサとともに、配管29を通ってより下部の領域30内の上側へと排出される。この実施形態では、領域27および30は、堅いトレイでよい遮水壁31により互いに流れが連通した状態で分離されている。配管29は、領域27および30の間の外部下降流連通部分を代表する。前記の代わりに、あるいは前記に加えて、領域27および30は、それぞれの間に、液体が領域30の内側に流れ下り、気体が領域27の内側に上昇できるように設計された1つ以上のトレイを使用することで壁31を少なくとも一部の液体について透過性となるように修飾したものによって、内部での流れの連通を有していてもよい。例えば、遮水壁(または堅いトレイ)31の代わりに、チムニートレイを使用することができ、その場合配管42で運ばれる蒸気は代わりにチムニートレイを通過し、配管28を通って装置26を去り、また、液体32は装置26から外側へ配管29を通る代わりに装置26の内部を通って区画30へと流れ下る。この内部下降流の場合、分配器33は任意となる。
【0055】
液体がどのような方法で領域27から取り出され領域30に移るとしても、この液体の下方への移動は矢印32で示され、従って前記で記載の少なくとも1つの液体分配装置33に接触する。装置33は、液体が一様に塔の幅方向に流れて、例えば、充填材料34と接触するために、液体を装置26の横断面を横切るように均等に分配する。本発明では、充填材料34は炭化水素の穏やかな熱分解を促進する触媒のような物質を欠いている。
【0056】
希釈水蒸気7は過熱領域35を通過し、続いて、配管40を通って充填材料34の下の領域30の低い部分54に流入し、そこで矢印41で示すように上昇して充填材料34と接触する。充填材料34中で液体32と水蒸気41は互いに密に混じり合い、それによって液体32の一部を気化させる。この新たに形成された気体は、希釈水蒸気41を伴って、領域30から配管42を通って取り出され、配管28中の気体に加えられ、配管43中で複合炭化水素蒸気を形成する。ストリーム42は本質的にフィード5からの炭化水素蒸気、例えばナフサと、水蒸気とを含む。
【0057】
ストリーム42はこのように供給流5の一部と希釈水蒸気41を加え、ストリーム50中に存在する供給流5からの留出液を除いたものを表わす。ストリーム43は対流層Cのより高温な(低い場所にある)区画内の混合フィード予熱帯44を通って、すべての存在する材料の温度をさらに上昇させ、さらにクロスオーバー配管45を通って区画R内の放射コイル9に入る。配管45は炉の導管55の内側でも外側でもよい。
【0058】
ストリーム7は全体を領域30で使用することができる、あるいは、その一部を配管28(配管52経由)と配管43(配管53経由)のいずれかあるいは両方で用いて配管28および43中での液体の形成防止することができる。
【0059】
区画Rでは配管45からの幾多の種類の炭化水素成分を含んだ蒸気質フィードが前記のような厳しい熱分解条件下に置かれる。
【0060】
熱分解産物は図1に示したような炉2の下流側でオレフィンプラントの残余部分におけるさらなる処理のため配管10を通って区画Rから出て行く。
【0061】
装置26の区画30は液体32を高温のガス、例えば水蒸気41と接触させるための表面領域を提供する。区画30内での液体と気体の向流により、最も重質な(最も沸点の高い)液体が、高温ガスの対炭化水素比の最も高いものと、最も高い温度のガスと同時に接触することができる。
【0062】
従って、図2の具体的な実施形態において、分離された液体炭化水素29はフィード5の留出物含有量のすべてとはいかなくても殆どを含んでいる。区画27の操作温度にもよるが、液体29は本質的に唯一であるかもしくはいくつかの前記留出物質を含みうるか、あついはこうした物質に加えて限られた量のナフサのようなより軽質の物質を含む。時には留出生成物中にいくらかのナフサがあるのが望ましい場合もあり、本発明は、本質的に留出留分のみ、あるいは留出留分に加えてストリーム5を構成するいくらかのより軽質な留分で構成されている生成物ストリーム50を形成するような弾力的運用が可能である。
【0063】
従って、原料5が約100〜約650°Fの範囲で沸騰し、ナフサに(約100〜約350°Fの範囲で沸騰する)に加えて少なくとも1つの留出留分(例えばたいていの場合約350〜約650°Fの範囲で沸騰する)を含む場合、このフィードは、本発明に従って装置6中で予熱され、さらに装置26中で加熱され、配管28および43を通して取り出すために存在する殆どすべてのナフサを気化させる。その結果ほぼ配管50を通って回収される液体留出物のみが残る。この結果を得るための装置6および26の操作温度はフィード5の成分に依存して大幅に変化しうるが、通常は約100〜約450°Fの範囲である。
【0064】
別の方法では、いくらかのナフサを液相状態のまま配管50を通って回収される留出物中に残すのが望ましい場合、装置6(使用される場合)および26の操作温度はこうした結果を得るために変更することができる。ストリーム50中にほぼ留出物のみを含むのが望ましくない場合、ストリーム50の液相状態に残存するナフサの量は、本発明では大幅に変化させることが可能だが、一般的にはナフサの総重量およびストリーム50の留出物に対して約30重量%以下である。こうした結果を得るための装置6(使用される場合)および装置26の操作温度はフィード5の成分、ならびに使用される水蒸気の温度と圧力に依存して大幅に変化しうるが、通常は約200〜約450°Fの範囲である。
【0065】
ストリーム29は、領域27から下方に落下し、より下方の第2領域30に入り、領域30に最初に存在したいかなる量の望ましくない液体ナフサ留分をも気化させることができる。これらのガス状の炭化水素は、例えば、配管40を通って領域30の低い部分(区画54)、例えば下から半分もしくは1/4に導入されたあとに領域30を通って上昇する水蒸気41のような高温のガスの影響により、配管42を通って装置26から出て行く。
【0066】
勿論、装置6および26は所望によりいくらかの留出物が蒸気質のストリーム28および/または42中に残るように操作することが可能である。
【0067】
フィード5はおよそ常温ないし約300°F以下の温度で、大気圧よりわずかに高い圧力ないし約100psig以下(以下、“大気圧〜100psig”と呼ぶ)の圧力で炉2に入る。フィード5は常温〜約350°Fの温度で、大気圧〜100psigの圧力で、配管25を通って領域27に入る。
【0068】
ストリーム28はフィード5から形成され、ほぼすべて炭化水素であり、温度は常温〜約400°F、圧力は大気圧〜100psigである。
【0069】
ストリーム29は予熱器6で気化したもの以外のフィード5由来の残存液体の殆どすべてであり、温度は常温〜約400°F、圧力は大気圧よりわずかに高い圧力ないし約100psig以下(以下、“大気圧〜100psig”と呼ぶ)である。
【0070】
ストリーム28および42の組み合わせは、ストリーム43で表わされ、温度は約170〜約400°F、圧力は大気圧〜100psigであり、さらに例えば全水蒸気/炭化水素比が炭化水素1ポンドあたり水蒸気約0.1〜約2ポンドであり、好ましくは約0.1〜約1ポンドであるような組み合わせを含む。
【0071】
ストリーム45は温度が約900〜約1,100°F、圧力が大気圧〜100psigであってよい。
【0072】
液体留出物50はほぼ留出物成分のみを含むか、あるいは留出物成分およびストリーム28および/または43中に見出されるより軽質な成分の混合物を含んでもよい。留出物ストリーム50は温度が約550°F未満で、圧力は大気圧〜100psigであってよい。
【0073】
領域30においては、希釈比(高温ガス/液体液滴)は大幅に変化する、なぜならば凝縮液の成分が大幅に変化するからである。一般に、高温ガス41、例えば、水蒸気の炭化水素に対する比は領域30の頂部で約0.1/1〜約5/1、好ましくは約0.1/1〜約1.2/1、より好ましくは約0.1/1〜約1/1となるであろう。
【0074】
水蒸気は配管40を通って導入される適切な高温ガスの例である。他の物質が使用される水蒸気中に存在してもかまわない。ストリーム7は従来の熱分解プラントで通常使用されるタイプの水蒸気であってよい。このようなガスは領域30に入る液体炭化水素32のかなりの留分が揮発するのに十分な温度であることが好ましい。一般に、導管40から領域30に入るガスは大気圧〜100psigで少なくとも約350°F、好ましくは約650〜約850°F、である。このようなガスは、単純化のため、以下水蒸気のみとして言及することにする。
【0075】
ストリーム42は水蒸気と、沸点が約350°Fより低い炭化水素蒸気の混合物であってよい。注目すべきは、オペレーターが、いくらかの留出物がストリーム42に流入するのを許容することを望む場合があり、そのような場合も本発明の範囲内であるということである。ストリーム42は温度が約170〜約450°F、圧力が大気圧〜100psigである。
【0076】
充填材料および/またはトレイは、配管41から入る水蒸気のための表面積を提供する。区画34はこうして下降流の液体と配管40から入った上昇流の水蒸気41とを接触させる表面積を提供する。区画30内の向流により、最も重質な(最も沸点の高い)液体が、高温ガスの対炭化水素比の最も高いものと、最も高い温度のガスと同時に接触することができる。
【0077】
配管40からの水蒸気は、例えば導管5(不図示)に導入されうる希釈水蒸気のようには分圧低下目的の希釈剤としては働かないように見受けられる。むしろ、配管40からの水蒸気は希釈機能だけではなく液相状態に留まった炭化水素のための追加の気化エネルギーをも提供するものである。これは、エネルギー流入量を調節することで、より重質の炭化水素成分の気化を達成するのにちょうど十分なエネルギーとすることで達成される。例えば、配管40中の水蒸気を用いることで、フィード5の液体の十分な気化が達成される。まさに高い水蒸気希釈比と、最も高温の水蒸気が、領域30のより低い場所へ移動する液体炭化水素液滴の場合に最も必要なものとして提供されるのである。
【0078】
図2の装置26は、炉2の外部の単体の装置とせずに、領域30全体を炉2の内部とするために対流層Cの内部に物理的に含まれていてもよい。装置26を完全に炉内に含ませることは様々な炉の設計を考慮すれば望ましいことであるかもしれないが、本発明の利益を達成するためには必ずしも要求されていない。装置26は全部または一部を炉の外で使用することもでき、これもなお本発明の思想の範囲内である。装置26を炉2に対して完全に内部設置のものと完全に外部設置のものとを組み合わせて用いることも当業者にとって自明であり、これも本発明の範囲内である。
【実施例】
【0079】
アルジェリア産ベジャイア凝縮液とされる天然ガス凝縮液ストリーム5を貯槽から取り出し熱分解炉2の伝達区画内に直接、常温常圧で供給する。この伝達区画において、この凝縮液の初期フィードは約60psigの下で約280°Fにまで予熱され、次いで蒸発装置26に送られ、そこで約280°F、約60psigのガソリンおよびナフサガスの混合物がその装置の領域27において留出液から分離される。分離されたガスは領域27から取り出され、放射コイル9の出口で1,450°F〜1,550°Fの温度領域の厳しい熱分解のために同じ炉の放射区画に運ばれる。
【0080】
前記随伴した炭化水素と分離した後のフィード5由来の残存した炭化水素液を、下部の区画30に運び、区画内をその底部に向かって下方へ降下させる。予熱した約660°Fの水蒸気40を領域30の底部付近に導入し、区画54において水蒸気の炭化水素に対する比が約1.5となるようにする。落下する液滴は、領域30の底部から頂部へと上昇する水蒸気と向流になる。領域30中を下方へ落下する液体に関しては、水蒸気の炭化水素に対する比は区画34の頂部から底部に向かって増加する。
【0081】
水蒸気および気相ナフサ42の約250°Fの混合物を領域30の上端付近から取り出し、先に領域27から配管28を通して取り出したガスと混合して、存在する炭化水素1ポンドあたり約0.45ポンドの水蒸気を含む水蒸気/炭化水素蒸気の混成流を形成する。この混成流を領域44で約50psig未満の下で約1,000°Fにまで予熱し、炉2の放射区画Rに導入する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】典型的な炭化水素熱分解プラントの単純化されたフローシートを示す。
【図2】本発明の一実施形態であって、単体の蒸発装置を用いた実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1 熱分解操作プラント
2 炉
5 フィード
6 区画
7 水蒸気
8 区画
9 放射コイル
10 配管
11 熱交換器
12 配管
13 急冷塔
14 液体急冷物質
15 配管
16 水急冷塔
17 回収冷却水
18 配管
19 配管
20 急冷油
21 圧縮・精留設備
23 配管
24 急冷油留分の一部
25 配管
26 蒸発装置
27 領域
28 配管
29 配管
30 領域
31 遮水壁
32 矢印
33 液体分配装置
34 充填材料
41 矢印
42 ストリーム
43 配管
44 予熱帯
45 配管
50 生成物ストリーム
52 配管
53 配管
54 領域30の低い部分
55 導管
C 伝達区画
R 放射区画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素材料を熱分解し、分解した材料を後続の処理に付すための熱分解炉を使用し、該炉はその内部に少なくとも対流加熱区画およびそれとは別個の放射加熱区画を有し、該放射加熱区画は前記分解のために用いられるオレフィン生産プラントの運転方法において、
改良点が、天然ガス凝縮液を前記炉への一次原料として供給し、前記原料の大部分が、少なくとも1種の留出物および、該少なくとも1種の留出物より沸点の低い炭化水素を含む炭化水素質材料からなり、
少なくとも蒸発装置中において、(1)前記少なくとも1種の留出物より本質的に沸点の低い炭化水素から炭化水素蒸気を形成し、一方で本質的に前記少なくとも1種の留出物である炭化水素を液体のまま保ち、さらに(2)該炭化水素蒸気を該液体の炭化水素から分離し、該炭化水素蒸気を前記放射加熱区画に通し、該液体の炭化水素を前記蒸発装置から回収することを含む、運転方法。
【請求項2】
前記回収された液体炭化水素が留出物の貯留部に加えられる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料が約100〜約650°Fの温度領域で沸騰し、A)少なくとも1種のナフサと、B)灯油、ディーゼル燃料、および軽油からなる群から選択された少なくとも1種の留出物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記原料を加熱して前記ナフサの本質的に全量を気化させる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記原料を約150〜約450°Fの温度にまで加熱する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記原料を加熱して前記ナフサのかなりの部分を気化させるものの、液相状態に限られた量のナフサが残存し、少なくとも1種の液体留出物と混合している請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記原料を約200〜約450°Fの温度にまで加熱する請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−528426(P2009−528426A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557286(P2008−557286)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/004197
【国際公開番号】WO2007/106291
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(501391331)エクイスター ケミカルズ、 エルピー (30)
【氏名又は名称原語表記】Equistar Chemicals,LP
【Fターム(参考)】