説明

凝集反応装置

【課題】凝集反応槽内における原水の短絡を減少させて未凝集の懸濁物質(SS)の量を低減させて、凝集反応装置の後段に位置する固液分離装置へ良好な処理水を提供する。
【解決手段】所定の配管により導かれた被処理水をその上方から受け入れるとともに、その下方から処理された前記被処理水を排出する水槽と、この水槽内に位置して、その内部を上下方向の複数の反応室にそれぞれ仕切る仕切り板と、前記仕切り板で仕切られた複数の反応室にそれぞれ導かれた前記被処理水をそれぞれ撹拌する複数の撹拌手段とを具備した凝集反応装置であって、前記配管は、前記水槽内の水平方向に前記被処理水を吐出させる吐出口を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凝集反応装置に係り、特に懸濁物質(SS)や油等の汚濁物質を含んだ水から汚濁物質を分離する際、凝集反応によって凝集汚泥を生成して処理する凝集反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用水処理や排水処理においては、凝集反応装置に処理対象とする原水(被処理水)と共に無機系または有機系の凝集剤を注入して被処理水中に含まれる懸濁物や溶解物を凝集させ、凝集フロックとして除去することが行われている。
この種の装置としては、竪型湿式造粒装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。これは、懸濁物質を含む懸濁液を凝集反応槽の下方に設けた流入管からその内部に導くとともに、高分子凝集剤を凝集反応槽の下方から凝集反応槽に導いて旋回流を生じさせて凝集反応を起こさせ、凝集反応槽の上方に設けた流出管から槽外に排出されるよう構成したものである。
【0003】
同様な凝集反応を起こさせる凝集装置も知られている(例えば、特許文献2を参照)。この凝集装置は、凝集反応槽内部に開口部を有する隔壁を複数多段に設け、かつ槽内部における生成フロックに接触ころがり運動を生起させるように回転円板を前記多段隔壁相互間で前記開口部を望むように配置して凝集反応槽の上方に設けられた開口部から原水を導くように構成したものである。
【特許文献1】実開昭60−24411号公報
【特許文献2】特開昭49−9764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の竪型湿式造粒装置のように原水を凝集反応槽の下方から流入させる場合は、この凝集反応装置の次段に設けられる加圧浮上槽の混合室に原水を直接供給できないという問題がある。またこの装置は、原水が下方から凝集反応槽に導かれているため原水の状況を目視確認することが困難であるという問題もある。
この種の問題は、前述した特許文献2に記載の凝集装置によることで解決ができるものの凝集反応槽の上方から、この槽内に導かれる原水は、下向きの運動量を有しているため、隔壁によって多段構成された一段目にて十分な凝集処理ができないうちに二段目へ流入(短絡)して処理性能が低下するという新たな問題が生じる。
【0005】
本発明は、このような従来の事情を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、凝集反応槽内における原水の短絡を減少させて未凝集の懸濁物質(SS)の量を低減させて、該凝集反応装置の後段に位置する固液分離装置へ良好な処理水を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成すべく本発明の凝集反応装置は、所定の配管により導かれた被処理水をその上方から受け入れるとともに、その下方から処理された前記被処理水を排出する水槽と、この水槽内に位置して、その内部を上下方向の複数の反応室にそれぞれ仕切る仕切り板と、前記仕切り板で仕切られた複数の反応室にそれぞれ導かれた前記被処理水をそれぞれ撹拌する複数の撹拌手段とを具備した凝集反応装置であって、特に
前記配管(原水導入管)は、前記水槽内の水平方向に前記被処理水を吐出させる吐出口を備えることを特徴としている。
【0007】
好ましくは、前記仕切り板は、この仕切り板の略中心を通り、所定の幅に切り欠かれたスリットを備えることを特徴としている。
特に前記吐出口は、その開口部における中心位置の高さが前記水槽に蓄えられる前記被処理水の水面の高さに略等しいものとして構成される。
好ましくは、前記配管によって前記水槽内に導かれる前記被処理水の水面は、その配管の吐出口における開口部の高さに位置付けられることが望ましい。
【0008】
上述の凝集反応装置は、原水(被処理水)をその槽の上方に位置付けられた反応槽に導き、下方に位置付けられた反応槽から凝集処理水を得る。また原水は、反応槽にこの原水を導く配管(原水導入管)によって凝集槽の上方から導かれた後、凝集槽内で水平方向に向きを変えた吐出口から排出される。この吐出口の中心位置の高さは凝集槽内で蓄えられる処理水の水面と略同じ高さに位置付けられ、上方の反応室における被処理水の凝集処理が不十分な状態で下方の反応室に直接流れ込む、いわゆる短絡を防ぐ。
【0009】
また前記撹拌手段は、前記水槽における水平面の略中央の位置から垂直方向に延伸されて前記仕切り板を貫き、前記各反応室をそれぞれ貫通する棒体と、この棒体に取り付けられて、その長手方向を軸心として該棒体を回転駆動させる駆動部と、前記軸体にそれぞれに取り付けられて、前記軸体が貫通する前記反応室毎に前記棒体の軸心から前記水槽の壁面方向に延伸された板状の撹拌翼とを具備し、
隣り合う前記反応室の上流側に位置する該反応室は、下流側の前記反応室より少なくとも等しい枚数の前記撹拌翼を備えることを特徴としている。
【0010】
好ましくは、最上流の前記反応室に位置する前記撹拌手段は、四枚の前記撹拌翼が前記棒体の回転方向に対して互いに略90度異なる位相差をなして該棒体に取り付けられることが望ましい。
より好ましくは最下流の前記反応室に位置する前記撹拌手段は、二枚の前記撹拌翼が前記棒体の回転方向に対して互いに略180度異なる位相差をなして該棒体に取り付けられることが望ましい。
【0011】
上述の凝集反応装置は、原水が槽内に導かれる吐出口に近い反応室、つまり上方に位置する反応槽内の撹拌翼が下方の反応槽に設けられた撹拌翼より翼の枚数が多く、撹拌翼によって撹拌される被処理水に生じる乱流強度が大きい。一方、下方に位置する反応槽内には、上方の反応槽よりも翼の数が少ない撹拌翼が設けられているので、撹拌によって生じる被処理水の乱流強度が弱くなり緩速撹拌を行ったことと同様に作用する。このため被処理水に急速撹拌を行った後に、緩速撹拌を行ったことと同様に作用し、粒径が大きく良好な凝集フロックが生成される。
【0012】
また本発明の凝集反応装置は、この凝集反応装置に複数の前記仕切り板を備えるとき、これら仕切り板にそれぞれ設けられた前記スリットの延伸方向が前記仕切り板の上方または下方から視野したとき、互いに重ならない位置に設けられることを特徴としている。
好ましくは前記撹拌手段は、隣接する反応室にそれぞれ設けられた二枚の前記撹拌翼が前記棒体の回転方向に対して互いに略90度異なる位相差をなして該棒体に取り付けられているとき、隣接する前記反応室にそれぞれ設けられた前記撹拌翼の延伸方向が互いに90度の位相差をなして該棒体に取り付けられることが望ましい。
【0013】
より好ましくは、前記スリットの短手方向の幅は、前記撹拌翼の厚みより略広く、かつ前記仕切り板における一辺の長さの20%以下の長さであることが望ましい。
上述の凝集反応装置は、下方の反応室の被処理水が上方の反応室に逆流する、いわゆる逆混合や、上方の反応室における被処理水の凝集処理が不十分な状態で下方の反応室に流れ込む、いわゆる短絡が起こりにくく反応率が高くなる。このため本発明の凝集反応装置は、被処理水中における未凝集の懸濁物質(SS)等の量が減少し、処理水の水質を良好にさせる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の凝集反応装置によれば、原水(被処理水)を凝集槽内に導く配管(原水導入管)の端部に設けられた吐出口の中心位置の高さが凝集槽内で蓄えられる処理水の水面と略同じ高さに位置付けられているので、複数の反応室に仕切られた凝集反応槽内での短絡が起こりにくくなる原水の凝集処理率を向上させることができる。この吐出口は、凝集反応槽の上方に位置付けられているので、凝集反応槽内に流れ込む原水(被処理水)の状態を目視するが可能であり、また原水のサンプリングを容易に行うことができる。
【0015】
また本発明の凝集反応装置は、複数の反応室を区画している仕切り板にスリットが設けられて、この仕切り板にて仕切られる直下の反応室内に設けられた撹拌翼の延伸方向と一致させるように設けられているので、撹拌翼をこのスリットを通して上方に引き上げることができる。したがって仕切り板を取り外すことなく撹拌翼を上方に引き上げることができるので、撹拌翼の取り外し、取り付け等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0016】
更に本発明の凝集反応装置は、仕切り板で仕切られた複数の反応室において、凝集反応槽の上方に位置する反応室に設けられた撹拌翼の枚数が下方に位置する反応室内の撹拌翼の枚数より多いので、上方に位置する反応室内の被処理水に生じる乱流強度が大きくなる。このため被処理水に急速撹拌を行った後に、緩速撹拌を行ったことと同様に作用し、粒径が大きく良好な凝集フロックを生成することができる。一方、下方に位置する反応室内は、上方の反応室よりも撹拌翼の枚数が少ないため、撹拌によって生じる被処理水の乱流強度が弱くなる。それ故、緩速撹拌と同様の効果を得ることができる。
【0017】
このように本発明の凝集反応装置は、被処理水中における未凝集の懸濁物質(SS)等の量を減少させ、後段の固液分離装置に導かれる処理水の質が良好になるという実用上多大なる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の凝集反応装置の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1〜図4は発明を実施する形態の一例であるが、これらの図は、本発明を説明するための図であって、これらの図によって本発明が限定されるものではない。
図1〜図4において10は、凝集反応槽(水槽)である。この凝集反応槽10には、その上方から凝集反応槽10内に原水(被処理水)を導く配管(原水導入管)1が設けられている。そして凝集反応槽10の下方には、この凝集反応槽10内にて処理された被処理水を取り出して次段の加圧浮上装置32へ排出する排出路2が設けられている。
【0019】
原水導入管1は、凝集反応槽10の上方から下向きに曲げられて、凝集反応槽10内で水平向きになるように曲げられている(図3および図4(a)FF’断面を参照)。そしてその端部には、原水(被処理水)を凝集反応槽10内に吐出させる吐出口1aが設けられている。この吐出口1aの開口部は、凝集反応槽10内に導かれて、この凝集反応槽10内において凝集処理中に蓄えられる被処理水の水面の位置と略等しい高さに位置付けられる。この開放部は、その中央部における位置の高さが被処理水の水面の位置と略等しい高さであることが望ましい(図4(b)のFF’断面の位置)。
【0020】
凝集反応槽10は、この凝集反応槽10の内部に位置して、凝集反応槽10内を上下方向の複数の反応室11にそれぞれ仕切る仕切り板12を備える。この仕切り板12には、この仕切り板12の略中央を通り、所定の幅に切り欠かれたスリット12aが設けられている。このスリット12aは、仕切り板12で仕切られた複数の反応室11を連通して凝集反応槽10に導かれた原水(被処理水)を上方の反応室11から下方の反応室11に導き、各反応室11にて生じる短絡または逆混合を防ぐ役割を担う。このスリット12aは、凝集反応槽10の幅の長さまたは奥行きの長さの20%以下、好ましくは15%以下の幅で、かつ後述する撹拌翼13bの幅より1mm以上広いことが望ましい。
【0021】
尚、凝集反応槽10は、仕切り板12の枚数を多くして多数の反応室11を有する多段構成にするほど処理水の質が向上するものの構造が複雑になる。したがって凝集反応槽10は、二枚の仕切り板12を用いて三つの反応室11の構成にすると構造が複雑にならず好ましい。
この仕切り板12で仕切られた複数の反応室11には、各反応室11に導かれた被処理水を撹拌する複数の撹拌手段13がそれぞれ設けられている。この撹拌手段13は、凝集反応槽10内に導かれて蓄えられる被処理水がなす水面の略中央の位置から垂直方向に延伸されて仕切り板12を貫き、各反応室11をそれぞれ貫通する棒体13aと、この棒体13aに取り付けられて、その長手方向を軸心として該棒体13aを回転駆動させる駆動部14と、棒体13aにそれぞれ取り付けられて、前記棒体13aが貫通する反応室11毎に棒体13aの軸心から凝集反応槽10の壁面方向に延伸された板状の撹拌翼13bを備える。
【0022】
例えば凝集反応槽10の高さが950mm、幅、奥行きとも800mmであるとすれば、撹拌翼13bの幅は、31mm〜200mm程度、好ましくは50mm〜80mmが望ましい。あるいは撹拌翼13bの幅は、各反応室11の高さに対して3%〜40%程度、好ましくは8%〜31%が望ましい。尚、撹拌翼13bの厚みは、3mm〜10mm程度、好ましくは4.5mm〜7mmが望ましい。
【0023】
また隣り合う反応室11の上流側に位置する反応室11は、下流側の反応室11より少なくとも等しい枚数の撹拌翼13bを備える。好ましくは上流側に位置する反応室11ほど撹拌翼13bの枚数を増やすことが望ましい。例えば、図2に示すように凝集反応槽10を二枚の仕切り板12によって三つの反応室11を備える構成とした場合、最も上流側(初段)の反応室11には、四枚の撹拌翼13bを備えた撹拌手段13とし、次段(第二段)および終段の反応室11には、それぞれ二枚の撹拌翼13bの構成とする。
【0024】
このように上流側に位置する反応室11の撹拌翼13bの枚数を増やして、上流側ほど被処理水に与える乱流強度を大きくする一方、下流側の被処理水に与える乱流強度を弱くする。
尚、初段の反応室11が四枚の撹拌翼13bを備える場合、棒体13aの回転方向に対して互いに略90度異なる位相差をなして取り付けることが望ましい。
【0025】
また下流の反応室に位置する撹拌手段13が、二枚の撹拌翼13bを備える場合、棒体13aの回転方向に対して互いに略180度異なる位相差をなして取り付けることが好ましい。
特に図2に示すように第二段および終段の反応室11がそれぞれ備える撹拌手段13は、各反応室11にそれぞれ設けられた二枚の撹拌翼13bが棒体13aの回転方向に対して互いに略180度異なる位相差をなして棒体13aに取り付けられているとき、隣接する反応室11にそれぞれ設けられた撹拌翼13bの延伸方向が互いに90度の位相差をなすよう棒体13aに取り付ける。
【0026】
しかして第二段以降の下流側に位置する反応室11がそれぞれ備える撹拌翼13bは、撹拌翼の取り外し、取り付け等のメンテナンスを容易にできるようにするため、各反応室11のスリット12aの位置を隣接する反応室11にそれぞれ設けられた撹拌翼13bの延伸方向と一致するように設ける。具体的には、図3に示すように第二段および最終段のそれぞれの反応室11に設けられた撹拌翼13bが互いに90度の位相差をなすよう棒体13aに取り付けられているとすれば(図3および図4(c)のCC’断面および図4(g)EE’断面を参照)、各仕切り板12にそれぞれ設けられたスリット12aも互いに90度の位相差を有するように凝集反応槽10内に取り付ける(図3および図4(d)のBB’断面および図4(g)DD’断面を参照)。
【0027】
また前述した原水導入管1および吐出口1aの取り付け位置は、凝集反応槽10を上方から視野した図4(c)の断面FF’に示すように撹拌翼13bが、この図において時計回りに回転する旋回流が生じる場合、撹拌翼13bによる旋回流の接線方向と一致するようにして原水が吐出口1aから凝集反応槽10内に吐出されるようにする。
尚、上述した凝集反応槽10は、直方体形状として説明したものであるが、水平面の断面が円形または楕円形状等の円筒形状であってもよい(特に図示せず)。その場合は前述した仕切り板12を凝集反応槽10の断面形状に一致させて複数の反応室11が形成されるようにすると共に、仕切り板12にスリット12aを設ければよい。もちろんこの場合は、撹拌翼13bが回転するとき凝集反応槽10の壁面に接触することなく回動できるようにすることは言うまでもない。
【0028】
ちなみに吐出口1aの下流側、すなわち旋回流の下流側には、詳細は述べないが凝集反応槽10内に導かれた原水に凝集反応を起こさせる凝集剤を投入する凝集剤投入口20、凝集反応槽10内で凝集反応を起こしている被処理水のpHを計測するpHセンサ21、このpHセンサ21が検出したpH値を測定するpH測定装置22、pH測定装置22が検出したpH値が適切なpH値になるようにアルカリ薬剤および酸性薬剤を凝集反応槽10内にそれぞれ投入するアルカリ剤投入口23および酸性剤投入口24を備える。尚、凝集剤投入口20から投入される凝集剤は、凝集剤を蓄えるPACタンク25に保持されて、凝集制御装置の制御部26から凝集ポンプ27が駆動されて凝集反応槽10に注入される薬注量が制御される。また、凝集反応槽10内のpH値を所定の値にするため、pH測定装置22が測定したpH値は、制御部26に与えられて、凝集反応槽10内のpH値を調整するアルカリ性薬液および酸性薬液(塩酸)を蓄えるアルカリ剤タンク28および塩酸タンク29にそれぞれ保持されて、制御部26からアルカリ剤注入ポンプ30または塩酸注入ポンプ31が選択駆動されて凝集反応槽10に薬液が注入されてpH値の調整がなされる。
【0029】
このように構成された本発明の凝集反応槽10の次段には、加圧浮上装置32が接続される。この加圧浮上装置32は、本発明の凝集反応装置とは異なるため略述するが凝集反応槽10にて凝集反応された被処理水に含まれるフロックを分離する役割を担っている。この加圧浮上装置32は、槽内に蓄えられた処理水を取り出して、空気を混入させて高圧の加圧水を生成して凝集反応槽10と加圧浮上装置32とを連結する排出路2に気液混合流を送り込む加圧水製造装置33を備える。
【0030】
そして前段の凝集反応装置にて凝集反応がなされた被処理水に含まれる水の比重より小さいフロック(スカム等)は、加圧浮上装置32に蓄えられる被処理水の水面近傍に位置付けられたスカム取出し装置34によって槽外へ排出され、浮上スラッジとして排出される。一方、加圧浮上装置に導かれた被処理水に含まれる比重の大きなスラッジは、沈降スラッジとして槽外に排出される。
【0031】
しかして加圧浮上装置32にてスラッジが取り出された処理水は、次段の水位調整装置40にて水位が調整されて後工程へ送られる。
かくして上述したように構成された本発明の凝集反応装置によれば、凝集反応槽10内に原水(被処理水)を導く配管(原水導入管1)を介してその上方から該原水を受け入れ、原水導入管1の端部に設けられた吐出口1aから凝集反応槽10内の水平方向に前記被処理水を吐出させると共に、スリット12aを備える複数の仕切り板12によって槽内に複数の反応室11を設けているので、凝集反応槽10内での反応が多段反応となり原水の凝集処理率を向上させることが可能である。また吐出口1aは、凝集反応槽10の上方に位置付けられているので、凝集反応槽10内に流れ込む原水(被処理水)の状態を目視するが可能であり、また原水のサンプリングを容易に行うことも可能である。
【0032】
また凝集反応槽10は、複数の反応室11を区画する仕切り板12にそれぞれスリット12aが設けられて、このスリット12aの切り欠き方向が、この仕切り板12にて仕切られる直下の反応室11内に設けられた撹拌翼13bの延伸方向と一致するようにして設けられているので、撹拌翼13bをこのスリット12aを通して上方に引き上げることができる。したがって仕切り板12を取り外すことなく撹拌手段13を上方に引き上げることができるので、撹拌翼13bの取り外し、取り付け等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0033】
特に本発明の凝集反応装置は、仕切り板12で仕切られた複数の反応室11において、凝集反応槽10の上方に位置する該凝集反応槽10に設けられた撹拌翼13bの枚数が下方に位置する反応室11内の撹拌翼13bの枚数より多いので、上方に位置する反応室11内の被処理水に生じる乱流強度が大きくなる。
また下方に位置する反応室11内では、上方の反応室11よりも撹拌翼の枚数が少ないため、撹拌によって生じる被処理水の乱流強度が弱くなり、緩速撹拌と同様の効果を得ることができる。このため、被処理水に急速撹拌を行った後に、緩速撹拌を行ったことと同様に作用する。それ故、粒径が大きく良好な凝集フロックを得ることができる。
【0034】
このように本発明の凝集反応装置は、被処理水中における未凝集の懸濁物質(SS)等の量を減少させ、後段の固液分離装置に導かれる処理水の質を良好にすることができる。
尚、本発明の凝集反応装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る凝集反応装置を用いた汚泥凝集処理システムの要部概略構成を示す図。
【図2】図1に示す凝集反応槽の概略構成を示す斜視図。
【図3】図1に示す凝集反応槽を横から見た断面図。
【図4】図3に示す凝集反応槽の断面図。
【符号の説明】
【0036】
1 原水導入管
1a 吐出口
2 排出路
10 凝集反応槽
11 反応室
12 仕切り板
12a スリット
13 撹拌手段
13a 棒体
13b 撹拌翼
14 駆動部
20 凝集剤投入口
21 pHセンサ
22 pH測定装置
23 アルカリ剤投入口
24 酸性薬剤投入口
25 PACタンク
26 制御部
27 凝集ポンプ
28 アルカリ剤タンク
29 塩酸タンク
30 アルカリ剤注入ポンプ
31 塩酸注入ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配管により導かれた被処理水をその上方から受け入れるとともに、その下方から処理された前記被処理水を排出する水槽と、
この水槽内に位置して、その内部を上下方向の複数の反応室にそれぞれ仕切る仕切り板と、
前記仕切り板で仕切られた複数の反応室にそれぞれ導かれた前記被処理水をそれぞれ撹拌する複数の撹拌手段と
を具備した凝集反応装置であって、
前記配管は、前記水槽内の水平方向に前記被処理水を吐出させる吐出口を備えることを特徴とする凝集反応装置。
【請求項2】
前記仕切り板は、この仕切り板の略中心を通り、所定の幅に切り欠かれたスリットを備えることを特徴とする請求項1に記載の凝集反応装置。
【請求項3】
前記吐出口は、その開口部における中心位置の高さが前記水槽に蓄えられる前記被処理水の水面の高さに略等しいものである請求項1に記載の凝集反応装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の凝集反応装置であって、前記配管によって前記水槽内に導かれる前記被処理水の水面は、その配管の吐出口における開口部の高さに位置付けられることを特徴とする凝集反応装置。
【請求項5】
前記撹拌手段は、前記水槽における水平面の略中央の位置から垂直方向に延伸されて前記仕切り板を貫き、前記各反応室をそれぞれ貫通する棒体と、
この棒体に取り付けられて、その長手方向を軸心として該棒体を回転駆動させる駆動部と、
前記軸体にそれぞれに取り付けられて、前記軸体が貫通する前記反応室毎に前記棒体の軸心から前記水槽の壁面方向に延伸された板状の撹拌翼と
を具備し、
隣り合う前記反応室の上流側に位置する該反応室は、下流側の前記反応室より少なくとも等しい枚数の前記撹拌翼を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の凝集反応装置。
【請求項6】
最上流の前記反応室に位置する前記撹拌手段は、四枚の前記撹拌翼が前記棒体の回転方向に対して互いに略90度異なる位相差をなして該棒体に取り付けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の凝集反応装置。
【請求項7】
最下流の前記反応室に位置する前記撹拌手段は、二枚の前記撹拌翼が前記棒体の回転方向に対して互いに略180度異なる位相差をなして該棒体に取り付けられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の凝集反応装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の凝集反応装置であって、
この凝集反応装置に複数の前記仕切り板を備えるとき、これら仕切り板にそれぞれ設けられた前記スリットの延伸方向が前記仕切り板の上方または下方から視野したとき、互いに重ならない位置に設けられることを特徴とする凝集反応装置。
【請求項9】
前記撹拌手段は、隣接する反応室にそれぞれ設けられた二枚の前記撹拌翼が前記棒体の回転方向に対して互いに略90度異なる位相差をなして該棒体に取り付けられているとき、隣接する前記反応室にそれぞれ設けられた前記撹拌翼の延伸方向が互いに90度の位相差をなして該棒体に取り付けられることを特徴とする請求項6または7に記載の凝集反応装置。
【請求項10】
前記スリットの短手方向の幅は、前記撹拌翼の厚みより略広く、かつ前記仕切り板における一辺の長さの20%以下の長さであることを特徴とする請求項1に記載の凝集反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−260615(P2007−260615A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91576(P2006−91576)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】