説明

処理液付与装置及び画像形成装置

【課題】画像記録媒体に付与する処理液の汚染を抑制する。
【解決手段】スクイーズローラ233側の第1塗布液槽235aと、塗布ローラ232側の第2塗布液槽235bとを隔てる隔壁237を配置する。スクイーズローラ233が第2塗布液槽235bの処理液中を通過するときに第2塗布液槽235bの処理液中に第2液槽渦流242が生じる。これにより、比較的狭い空間に貯留される処理液201は激しく旋回するため、流速が高まり第2液槽渦流242が発生する。この第2液槽渦流242による剪断力がスクイーズローラ233のローラ面に加わることによって、スクイーズローラ233のローラ面へ付着した異物や紙粉などは強力に、かつ確実に剥離できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録媒体等の処理液付与対象に処理液を付与する処理液付与装置及び画像記録媒体に対して処理液を付与する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、主に、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機などの製品として知られ、複数の画像形成方式が存在する。例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置が知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドから画像記録媒体に対してインク滴を吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用される場合がある。)を行う。画像記録媒体とは、紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、画像を構成するインク滴等の液体あるいはトナー等の固体が付着可能なものを意味し、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称されることがある。液体吐出記録方式の画像形成装置には、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型の画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型の画像形成装置とがある。
【0003】
液体吐出方式の画像形成装置とは、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の画像記録媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。ここでいう「画像形成」には、文字や図形等の意味を持つ画像を画像記録媒体に付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を画像記録媒体に付与すること(単に液滴を画像記録媒体に着弾させること)も含まれる。また、インクとは、所謂インクに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる液体の総称として用いる。更に、画像とは、平面に付与されるものに限らず、立体物に付与されるもの、あるいは、立体物自体を造形して形成される像も含まれる。また、画像形成装置には、液体吐出方式のものに限らず、電子写真方式で画像形成を行うものなども含まれるが、以下の説明では、インクを吐出する液体吐出方式の画像形成装置を例に挙げて説明する。
【0004】
この液体吐出方式の画像形成装置においては、液滴で形成される画像記録媒体上のドットがひげ状に乱れるフェザリングと呼ばれる不具合、異なる種類の液滴(例えば色の異なるインク液滴)が互いに隣接している箇所で液滴が相互に混ざり合うカラーブリード等の不具合が生じることがある。また、液体吐出方式の画像形成装置においては、画像形成後の画像記録媒体上の液滴が乾くまでに時間がかかるという不具合も存在する。
【0005】
このような不具合を抑制する技術としては、従来、その不具合を抑制し得る所定の処理液を画像形成前の画像記録媒体に付与し、その処理液の効能によって、画像記録媒体に着弾した液滴が乱れるのを抑制したり、液滴の乾燥時間を短くしたりするものが知られている。例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3には、インクと反応して画像滲みやカラーブリードを抑制する処理液を画像形成前の画像記録媒体に塗布ローラで塗布する技術が開示されている。上記特許文献1の処理液塗布装置では、処理液搬送手段の汲上げローラが回動し、汲上げローラのローラ面が液室の処理液タンクに収容された処理液に侵入して浸りながら処理液中をローラ軸に直交する方向に移動し処理液から侵出することで処理液を汲上げる。汲上げローラのローラ面が処理液付与手段の塗布ローラのローラ面に膜厚制御ローラを介して間接的に当接することで、汲上げローラのローラ面上の処理液が塗布ローラのローラ面に付与される。搬送手段の搬送ローラによって、処理液付与対象の画像記録媒体が上記塗布ローラと上記搬送ローラとのニップ部を通過する際に、塗布ローラのローラ面に付与されて膜厚調整された処理液が画像記録媒体に塗布される。塗布ローラ上の余剰の処理液は塗布ローラと間接的に当接される汲上げローラに転写され、汲上げローラが液室内の処理液中を通過することで液室に戻される。あるいは、上記特許文献2及び上記特許文献3のように、画像記録媒体に処理液を転写した後にブレード状の清掃部材を塗布ローラのローラ面に当接させることで、処理液転写後塗布ローラのローラ面に残った処理液を回収している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、画像記録媒体、例えば用紙に付着している紙粉などの異物が、上記塗布ローラと上記搬送ローラとの上記ニップ部にて上記塗布ローラのローラ面に転写し、さらに上記塗布ローラと間接的に当接する上記汲上げローラにも転写する。上記汲上げローラは液室内の処理液に侵入して液中を通過することで汲上げローラのローラ面と処理液との摩擦によって液室内に渦流が発生する。この渦流による剪断力によって汲上げローラのローラ面に付着した異物を剥離除去できるが、異物が処理液タンク中の処理液に存在することになる。処理液タンク内の渦流によって処理液内の異物が液室の底に沈殿せずに攪拌される。このため、液室内の処理液の汚染が増すことになる。
上記特許文献2及び上記特許文献3によれば、紙粉などの異物が付着した上記塗布ローラのローラ面にブレード状の清掃部材を当接して異物を含む処理液を回収して当該異物は除去できるが、ブレード状の清掃部材と上記塗布ローラのローラ面との摩擦によって摩擦粉が発塵してしまう。この摩擦粉が上記塗布ローラのローラ面に付着する。この付着した摩擦粉が清掃部材との接触によって上記塗布ローラのローラ面から剥離脱落し空中に浮遊して画像記録媒体上に付着する。このため、付着した摩擦粉を含めた画像記録媒体上に画像形成が行われた場合、画像記録媒体から摩擦粉が剥離すると本来あるべき画素が欠落したり、インク等の浸透した摩擦粉が画像記録媒体上を移動することで画像面を汚したりするという問題が生じる。また、上記摩擦粉が液室内に収容された処理液に混入し、処理液が徐々に汚染されていき、処理液本来の効能が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、処理液の汚染を抑制できる処理液付与装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、処理液を転写する位置へ処理液付与対象を搬送する搬送手段と、前記処理液付与対象に処理液を付与する処理液付与手段と、搬送面が液室に収容されている処理液に侵入して処理液中を移動して処理液から侵出して処理液を前記処理液付与手段へ搬送する処理液搬送手段と、前記液室に供給される処理液を貯留する処理液貯留部と、該処理液貯留部内の処理液を前記液室へ供給する液供給手段と、を具備し、前記処理液搬送手段によって前記処理液付与手段に搬送された処理液を前記処理液付与手段によって前記処理液付与対象に付与する処理液付与装置において、前記処理液搬送手段の前記搬送面が前記液室内の処理液に侵入する侵入線を含みかつ該侵入線から鉛直方向の侵入側仮想面、処理液から侵出する侵出線を含みかつ該侵出線から鉛直方向の侵出側仮想面及び前記搬送面で囲まれた前記液室内に、前記処理液搬送手段の前記搬送面が移動する方向と直交する方向に延び、かつ前記処理液搬送手段の前記搬送面に近接する端部を有する隔壁を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1記載の処理液付与装置において、前記隔壁によって分けられた前記搬送面の侵入側の液室の容積が侵出側の液室の容積より小さくなる位置に前記隔壁を設けることを特徴とするものである。
更に、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の処理液付与装置において、前記隔壁は前記処理液搬送手段の回転中心の鉛直下方位置よりも前記搬送面の侵入側に位置することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の処理液付与装置において、処理液の流れる少なくとも1つの流路を形成し、該流路に沿って処理液を流して処理液の流れ方向を規制する規制部材を設けることを特徴とするものである。
更に、請求項5の発明は、請求項4記載の処理液付与装置において、前記規制部材により形成される流路は前記処理液搬送手段の幅方向における中心から外側の幅方向に向かっていることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5記載の処理液付与装置において、前記流路の方向は前記隔壁となす傾斜角を有し、該傾斜角は前記処理液搬送手段の幅方向における外側へ向かって徐々に小さくなることを特徴とするものである。
更に、請求項7の発明は、請求項2記載の処理液付与装置において、前記侵入側処理液に含まれる異物を排出する異物排出機構と、前記侵入側の液室と前記侵出側の液室とを連通する連通路とを設け、前記侵入側処理液中に沈殿している異物を前記異物排出機構を介して処理液回収槽に排出し、異物を排出した後の処理液を前記連通路を介して前記侵出側の液室内へ送液することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7記載の処理液付与装置において、前記異物排出機構を前記処理液搬送手段の幅方向における前記液室の両側に設けたことを特徴とするものである。
更に、請求項9の発明は、請求項7記載の処理液付与装置において、前記侵入側処理液を回収する第1の回収液槽と前記侵出側処理液を回収する第2の回収液槽とに隔てる回収液槽隔壁を前記処理液回収液槽に設けることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1記載の処理液付与装置において、前記隔壁を複数設けることを特徴とするものである。
更に、請求項11の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の処理液付与装置によって画像記録媒体へ処理液を付与し、処理液が付与された前記画像記録媒体上に画像形成を行うことを特徴とするものである。
【0009】
本発明においては、上記処理液搬送手段の搬送面が液室内の処理液に侵入する侵入線を含みかつ侵入線に直交する侵入側仮想面、処理液から侵出する侵出線を含みかつ侵出線に直交する侵出側仮想面及び上記搬送面で囲まれた前記液室内に、隔壁を設ける。この隔壁は上記搬送面が移動する方向と直交する方向に延び、かつ上記搬送面に近接する端部を有している。液室内の処理液は、上記隔壁によって、上記搬送面が処理液に侵入する側の処理液と、上記搬送面が処理液から侵出する側の処理液と、に分けられる。上記搬送面が処理液に侵入する側の処理液で発生する渦流による剪断力が、上記搬送面に加えられることで、上記搬送面に付着している異物が剥離除去される。隔壁の端部と搬送面との隙間を介して処理液の移動があるが、上記隔壁の端部は上記搬送面に近接しているため、上記隙間は非常に小さくこの隙間を介して移動する処理液の液量は非常に少ない。これにより、上記搬送面が処理液から侵出する側の処理液の汚れは、上記搬送面が処理液に侵入する側の処理液の汚れに比べて少ない。既に異物が剥離除去されている上記搬送面が処理液から侵出しようとする前に、異物による汚染が抑制された処理液中を移動することで、汚染の抑制された処理液を上記処理液付与手段へ搬送し、上記処理液付与手段によって上記処理液付与対象に汚染の抑制された処理液を付与することできる。よって、処理液の汚染を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明によれば、処理液の汚染を抑制できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態の処理液付与装置を搭載した画像形成装置の全体構成を示す正面図である。
【図2】実施形態の処理液付与装置の透視斜視図である。
【図3】実施形態の処理液付与装置の部分正面図である。
【図4】実施形態の処理液付与装置の一部の透視側面図である。
【図5】実施形態の処理液付与装置の部分拡大断面図である。
【図6】実施形態の処理液付与装置の平面図である。
【図7】実施形態の処理液付与装置の変形例の一部を透視側面図である。
【図8】実施形態の処理液付与装置の変形例の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した処理液付与装置の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施形態の処理液付与装置を搭載した画像形成装置の全体構成を示す正面図である。図2は本実施形態の処理液付与装置の透視斜視図であり、図3は本実施形態の処理液付与装置の部分正面図である。また、図4は本実施形態の処理液付与装置の一部の透視側面図である。図1に示す画像形成装置1は、被記録媒体である用紙100に液滴を吐出して画像を形成する画像形成手段としての記録ヘッドユニット101と、用紙100を搬送する搬送ベルト102と、用紙100を収容する給紙トレイ103と、記録ヘッドユニット101よりも用紙搬送方向上流側で被塗布部材である用紙100に処理液を塗布する本実施形態の処理液付与装置としての処理液塗布装置200とを備えている。
【0013】
記録ヘッドユニット101は、液滴を吐出する複数のノズルを用紙幅相当分の長さに配列したノズル列を有するライン型液体吐出ヘッドから構成され、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する記録ヘッド101y、101m、101c、101kを備えている。シリアル型画像形成装置として記録ヘッドをキャリッジに搭載する構成とすることもできる。
【0014】
搬送ベルト102は、無端状ベルトであり、搬送ローラ121とテンションローラ122との間に掛け渡されて周回するように構成している。この搬送ベルト102に対する用紙100の保持は、例えば静電吸着、空気の吸引による吸着などを行う構成とすることやその他の公知の搬送手段を用いることができる。また、ローラ対による搬送手段を用いることもできる。
【0015】
給紙トレイ103に収容された用紙100はピックアップローラ131で1枚ずつ分離給紙されて搬送ローラ対132によってレジストローラ対133に送られる。そして、レジストローラ対133から所定のタイミングで搬送ローラ対134によって搬送路135を介して処理液塗布装置200に送られ、処理液塗布装置200により処理液が塗布されて搬送ベルト102上に送り込まれて保持される。そして、搬送ベルト102の周回移動で搬送されてヘッドユニット101から各色の液滴が吐出されて画像が形成され、その後排紙トレイ104に排出される。
【0016】
本実施形態の処理液付与装置である処理液塗布装置200は、図1〜図4に示すように、処理液201を収容した新処理液槽202と、この新処理液槽202から処理液201を圧送するポンプ203と、ポンプ203で供給路204を介して供給された処理液201を被記録媒体である用紙100に塗布する塗布部208とを備えている。ここで、処理液201は、用紙100の表面に塗布することで用紙100の表面を改質する改質材である。例えば、処理液201は、予め用紙100(前述したように材質としての紙に限定されない。)にムラなく塗布しておくことで、インクの水分を速やかに用紙100に浸透させると共に色成分を増粘させ、更には乾燥も早めることによって滲み(フェザリング、ブリーディング等)や裏抜けを防止し、生産性(単位時間当たりの画像出力枚数)をあげることを可能にする定着剤(セット剤)である。この処理液201は、組成的には、例えば界面活性剤(アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれか、若しくはこれらを2種類以上混合させたもの)に対して、水分の浸透を促進するセルロース類(ヒドロキシプロピルセルロース等)とタルク微粉体の様な基剤を加えた溶液等を挙げることができる。更に、微粒子を含有することもできる。
【0017】
塗布部208は、用紙100を搬送する搬送ローラ231と、搬送ローラ231に対向して用紙100に処理液201を塗布する塗布ローラ232と、塗布液槽部235の処理液201に触れて汲上げて塗布ローラ232のローラ面に付与するとともに処理液201の液膜を薄くするスクイーズローラ233と、処理液201を供給し、回収するハウジング部234内の塗布液槽部235とを有している。各ローラの回転方向はで示す矢示方向である。
【0018】
これらのローラは、搬送ローラ231に塗布ローラ232が接し、塗布ローラ232にスクイーズローラ233が接して配置されている。また、スクイーズローラ233は塗布液槽部235の処理液201に浸されるように配置されている。
【0019】
処理液塗布工程では、スクイーズローラ233を回転することで塗布液槽部235から処理液201が汲上げられて、スクイーズローラ233と塗布ローラ232とで形成される谷部分に処理液溜まり201bが形成される。また、谷部分に溜められた処理液溜まり201bは塗布ローラ232とスクイーズローラ233が加圧接触している。これにより、スクイーズローラ233と塗布ローラ232とのニップ部(接触部)を通過するときに薄い液膜層201aとなって、処理液201が搬送ローラ231と塗布ローラ232との間を通過する被記録媒体上に塗布される。なお、被記録媒体の用紙100の頁間や、用紙100、主走査(幅)方向の外側領域にて塗布されなかった分の処理液は第2塗布液槽235bに溜まるが、隔壁237頂点の僅かな隙間からも、第1塗布液槽235aへ流れてくる。また、停止状態では第2塗布液槽235bの水位は回収液槽251を経由し連通するため、第1塗布液槽235aと同じ水位になる。
【0020】
ところで、図1〜図4のような構造による処理液の塗布方式においては、塗布ローラ232から液膜層201aの処理液が被記録媒体の用紙100へ転写塗布した後、湿った状態での塗布ローラ232表面へは異物や、特には用紙100に付着していた紙粉などが付き易く、そのような状態でスクイーズローラ233に接すると、スクイーズローラ233へも異物や紙粉などが移行付着してしまう。それは塗布液槽部235の処理液201でゆすがれると離脱し、次々と異物や紙粉などにより塗布液槽部235の処理液201が汚染されてしまうことになる。
【0021】
このような汚染された状態の処理液201では、次々と処理すべき印刷前の新しい用紙100の記録面へ異物や紙粉の付着程度が高まるため、下流側の記録ヘッドユニット101によるインク滴着弾画像形成の品質が悪化し、特には印刷時に用紙100の表面上に付着していた異物や紙粉の上にインク滴が着弾し、その着弾した異物や紙粉が動いてしまうと本来あるべき画素が欠落してしまったり、インク滴が浸透した状態の異物や紙粉が他の位置で用紙100の画像面上にこすれたり、付着してしまうなどで画像汚損となる問題を生じる。更に、徐々に汚染されていく処理液201の処理液本来の機能が改質してしまい、処理能力の低下に繋がる問題が生じる。
【0022】
このような課題が生じるため、用紙100の処理枚数や、経過時間に応じて、塗布液槽部235内の処理液201は適宜新しい処理液201と交換する必要がある。このため、ドレン口255よりドレン流路256とドレン弁257を経由し、廃処理液261は廃処理液槽260へと廃棄される。新たな処理液の補充は新処理液槽202内に貯留されている処理液201をポンプ203の駆動により供給路204を通じて適量分が塗布液槽部235へと供給されることになる。しかし、既に廃棄された汚染された処理液が塗布液槽部235内にまだ貯留されていた際にもたらす異物や紙粉が時間と共に沈降し、塗布液槽部235の底部に溜まってしまうと、それらは徐々に増粘し、廃棄しきれず留まってしまうことがある。そのような状態にもかかわらず新しい処理液201を同じ塗布液槽部235へ注ぎ入れてしまうと、折角の新液も汚染されてしまうため、上記各現象がすぐさま発生してしまうことになる。
【0023】
そこで、本実施形態の処理液付与装置によれば、図1〜図4において、スクイーズローラ233が処理液201に浸る塗布液槽には、スクイーズローラ233の軸芯を側面方向か見て鉛直方向より塗布ローラ232側で接する側でスクイーズローラ233の表面に僅かな隙間が生じる、つまり当接しない程度近接する高さまでの隔壁237が塗布液槽部235の底面より形成されている。この隔壁237とスクイーズローラ233の表面との隙間から、第2塗布液槽235bから第1塗布液槽235aへ処理液が流れる。この隔壁237を境界にしてスクイーズローラ233の回転位相下流側の塗布液槽部235の液槽部を第1塗布液槽235aとし、同じく回転位相上流側の液槽部を第2塗布液槽235bとする。このような構造によりスクイーズローラ233側の第1塗布液槽235bと、塗布ローラ232側の第2塗布液槽235aとを隔てる隔壁237を配置した構造になっている。この隔壁237の設置位置は塗布液槽235にスクイーズローラ233のローラ面が浸っている間とする。本実施形態では処理液搬送手段や処理液付与手段としてローラを用いたが無端状ベルトを用いてもよい。
【0024】
この隔壁237を設けたことにより、図5に示すように、スクイーズローラ233の回転により、第1塗布液槽235a内の処理液201には第1液槽渦流241のような攪拌流が生じ、スクイーズローラ233の表面を濡らした処理液201が塗布ローラ232との接触により処理液溜まり201bとなる。そして、スクイーズローラ233と塗布ローラとのニップ部(接触部)を通過するときに薄い液膜層201aとなって、この液膜層201aの処理液201が搬送ローラ231と塗布ローラ232との間を通過する被記録媒体の用紙100上に塗布される。隔壁237はスクイーズローラ233の回転中心の鉛直下方位置よりも搬送面の侵入側に位置している。
【0025】
更に、スクイーズローラ233が回転するとその表面の角度位相は第2塗布液槽235bへ到達し、隔壁237の第2塗布液槽235b側の断面形状と、第2塗布液槽235bの液槽側の断面形状と、スクイーズローラ233の回転とにより、既に貯留されている処理液201に第2液槽渦流242が発生する。
【0026】
この第2液槽渦流242が生じることにより、比較的狭い空間である第2塗布液槽235bに貯留される処理液201は激しく旋回するため流速が高まる。図5に示すように第2塗布液槽235bの容積が第1塗布液槽235aの容積より小さくなる位置に隔壁237を設け、あるいは図5に示すようにスクイーズローラ233の回転中心の鉛直下方位置よりも搬送面の侵入側に位置に隔壁237を設け、第2塗布液槽235bに発生する第2液槽渦流242による剪断力を第1塗布液槽235aに発生する第1液槽渦流241の剪断力より大きくする。これにより、スクイーズローラ233へ付着した異物や紙粉などは、第2液槽渦流242によってスクイーズローラ233の表面で生じる剪断力により、異物や紙粉などが剥離し易くなる。
【0027】
第2塗布液槽口236bは、図5で示すように、第2塗布液槽235bの両端に開口し、それぞれが第2回収路253bに連通している。第2塗布液槽235bに貯留されている処理液201は第2回収路253bを通って回収部250の一部である第2回収槽251bへ第2回収槽口252bを通過し流入する。
【0028】
図4に示すように、回収部250の内部には回収液槽隔壁254が回収槽251内の底面より設置されており、第1回収槽251aと第2回収槽251bとを隔てている。回収液槽隔壁254の高さは第1塗布液槽235aと第2塗布液槽235b内に貯留されている処理液の液面より低くなるように設定しており、各々の槽内に満たされている処理液の水頭が均等になるように常に連通している。但し、第2塗布液槽235bから連通する第2塗布液槽235bの第2回収液槽口252bの高さは、第1塗布液槽235aから連通する第1塗布液槽235aの第1回収液槽口252aの高さより低い水頭差を設けることにより極力第2塗布液槽235bの底部に沈降した異物や紙粉などが第1塗布液槽235a側へ流入させないようにしている。
【0029】
なお、図2〜図4に示すように第2塗布液槽235bの底部にはドレン口255が設けられ、沈殿した異物を、ドレン流路256を通して廃処理液槽260へと流す。その流れは途中に設けたドレン弁257の駆動により制御されるため、ドレン弁257が開放されている間だけ流入が可能となる。
【0030】
このように、回収槽251やその内部のラビリンスとしての機能を備えた回収槽隔壁254、あるいは適宜廃液を送液し隔離する廃液処理槽260からなる異物排出機構を備え、回収槽251は第2塗布液槽から流れる液の流速を低下させる槽となっている。これにより、第1塗布液槽235a内には紙粉や異物などが極力含まれない鮮度の高い液を貯留させることができる。
【0031】
本実施形態の処理液付与装置の平面図である図6で示すように、整流板238は、第2塗布液槽235bの底部に施された突起部であり、第2塗布液槽235b内の処理液201の流れ方向を規制する規制部材である。なお、図5には整流板238の断面が示されている。図6に示すように、第2塗布液槽235bの長手方向中央部の三角形状の突起を中心に図示の上下で線対称に整流板238が配置されている。配置された各整流板238の間の隙間部(流路)における長手方向の断面積は整流板238の突起の断面積に比べて広いため、処理液201の流速は遅くなる。一方で、整流板238のある断面積は各整流板238の隙間部の断面積より狭いため処理液201の流速は速くなる。この流速の高低差により上述したように第2液槽渦流242が液槽中に沈殿していた紙粉や異物などを攪拌する作用が高まる。更に、第2塗布液槽235bの長手方向中央部の三角形状の整流板238より外側になるほど傾斜角度が大きくなる形状で配列する。このため、図示の上下方向への流れのベクトルを大きくする作用により、第2塗布液槽235b内の液流速は外側になるほど流量と流速が高まる。これにより、図示の上下両側に配置されている第2塗布液槽口236bへの圧力が高まる。このような構造により、上流側より下流側の流速が早くなる流路形状となっている。
【0032】
このように、整流板238を具備し、この整流板238の形状(構造)により、第2塗布液槽235b内に既に沈殿している紙粉や異物を掻き出し、またこの外側へ圧力がかかる液流を常に発生させることで異物の沈殿を防ぐ作用が生じ、第2塗布液槽235b内の処理液201へ異物が混入する可能性を下げることができる。
【0033】
更に、図6で示すように、図示の上下に異物排出機構である回収液槽251を振り分けたことにより、第1塗布液槽と第2塗布液槽の両端に独立した異物排出機構をそれぞれ設け、スクイーズローラ233の長手方向の処理液201の左右の汚れ度合い(図6では上下方向)の差が生じなくなり、しかも2箇所から異物を除去する手段を講じることで速やかな異物を除去することができる。
【0034】
また、変形例として、図7及び図8に示すように、第1塗布液槽235a内で新たに第2塗布液槽235bと、第1塗布液槽235aの間に隔壁237aを配置し新たに第3塗布液槽235cを設け、上記隔壁237に相当する隔壁237bとする。更に、第3塗布液槽口236cを設けて、第2塗布液槽口236bと同様に図7に示すように第3回収流路253cを経由し回収液槽251内の第1回収液槽251aへと第2回収液槽口252cから流入することになっている。
【0035】
このような構造により、第1塗布液槽と、第2塗布液槽との間に複数の隔壁を備える実施形態として、第2塗布液槽235bと、第1塗布液槽235aの間に新たな第3塗布液槽235c、或いは図示しない第4、第5以上の塗布液槽を設けることにより、スクイーズローラ233へ付着した異物や紙粉などを段階的に確実に剥離することができる。
【0036】
なお、図示してないが、塗布液槽235、あるいは第1塗布液槽235a,第2塗布液槽235b,第3塗布液槽235cの液面水位を監視する検知手段を設け、この検知手段による検知結果に基づいてポンプ203、ドレン弁257の制御を行っている。また、第1塗布液槽235a又は第1回収液槽251aに収容する処理液の汚染度を検知する汚染度検知手段を設け、検知結果に基づいてポンプ203の駆動を制御して新処理液槽202からの処理液201の液量を調整する。汚染度検知手段の一例としては、処理液の光学的透過率を検知する検出手段、あるいは処理液の物質変化に伴って変化する光学的屈折率を検知する検出手段がある。
【0037】
以上説明したように、実施形態によれば、図5に示すように、スクイーズローラ233側の第1塗布液槽235aと、塗布ローラ232側の第2塗布液槽235bとを隔てる隔壁237を塗布液槽内に配置する。この隔壁237は各ローラ軸の軸方向に延びている。この隔壁237で分けられて形成された第2塗布液槽235bの処理液中には、スクイーズローラ233のローラ面と該処理液との摩擦によって第2液槽渦流242が生じる。第2塗布液槽235bが比較的狭い空間であり、この空間に貯留される処理液201は激しく旋回するため流速が高まる。これにより、スクイーズローラ233へ付着した異物や紙粉などは、従来例以上の剪断力がスクイーズローラ233の表面に加わることにより、強力に、かつ確実に剥離できる。そして、第1塗布液槽235aには異物や紙粉などは入ってこない。よって、付与される処理液の汚染を抑制することができる。
【0038】
また、実施形態によれば、図4に示すように、第2塗布液槽235bから第2回収液槽251bに連通することで、第2塗布液槽235bの異物を含む処理液201を第2回収液槽251bに排出する。これにより、第1塗布液槽235a内には紙粉や異物などが極力含まれない鮮度の高い処理液を貯留させることができる。
【0039】
更に、実施形態によれば、図6に示すように、第2塗布液槽235b内の処理液201の流れ方向を規制する規制部材である整流板238を設けることにより、第2塗布液槽235b内に既に沈殿している紙粉や異物を掻き出し、また第2塗布液槽235bの外側へ圧力が加わる液流を常に発生させることにより異物の沈殿を防ぐ作用で、第2塗布液槽235b内の処理液201は異物の混入する可能性を下げることができる。
【0040】
また、実施形態によれば、図6に示すように第1塗布液槽235aと第2塗布液槽235bの両端に、第1回収液槽251aと第2回収液槽251bをそれぞれ設け、スクイーズローラ233のローラ軸方向の処理液201の鮮度差がなくし、しかも2箇所への異物を排出することで速やかな異物排出効果を得られる。
【0041】
更に、実施形態によれば、図7及び図8に示すように、第2塗布液槽235bと、第1塗布液槽235aの間に新たな第3塗布液槽235cを設けることにより、スクイーズローラ233へ付着した異物や紙粉などを段階的に剥離し、処理液から異物の除去を十分行って処理液の汚染をより一層抑制できる。
【符号の説明】
【0042】
1 画像形成装置
100 用紙
101 記録ヘッドユニット
102 搬送ベルト
103 給紙トレイ
104 排紙トレイ
121 搬送ローラ
122 テンションローラ
131 ピックアップローラ
132 搬送ローラ対
133 レジストローラ対
134 搬送ローラ対
135 搬送路
200 処理液塗布装置
201 処理液
202 新処理液槽
203 ポンプ
204 供給路
208 塗布部
231 搬送ローラ
232 塗布ローラ
233 スクイーズローラ
234 ハウジング部
235 塗布液槽部
235a 第1塗布液槽
235b 第2塗布液槽
235c 第3塗布液槽
236a 第1塗布液槽口
236b 第2塗布液槽口
237 隔壁
237a 隔壁
237b 隔壁
238 整流板
241 第1液槽渦流
242 第2液槽渦流
250 回収部
251 回収液槽
251a 第1回収液槽
251b 第2回収液槽
252a 第1回収液槽口
252b 第2回収液槽口
253a 第1回収路
253b 第2回収路
254 回収液槽隔壁
255 ドレン口
256 ドレン流路
257 ドレン弁
260 廃処理液槽
261 廃処理液
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】特開2008−260307号公報
【特許文献2】特開2007−301814号公報
【特許文献3】特開2010−194526号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を転写する位置へ処理液付与対象を搬送する搬送手段と、前記処理液付与対象に処理液を付与する処理液付与手段と、搬送面が液室に収容されている処理液に侵入して処理液中を移動して処理液から侵出して処理液を前記処理液付与手段へ搬送する処理液搬送手段と、前記液室に供給される処理液を貯留する処理液貯留部と、該処理液貯留部内の処理液を前記液室へ供給する液供給手段と、を具備し、前記処理液搬送手段によって前記処理液付与手段に搬送された処理液を前記処理液付与手段によって前記処理液付与対象に付与する処理液付与装置において、
前記処理液搬送手段の前記搬送面が前記液室内の処理液に侵入する侵入線を含みかつ該侵入線から鉛直方向の侵入側仮想面、処理液から侵出する侵出線を含みかつ該侵出線から鉛直方向の侵出側仮想面及び前記搬送面で囲まれた前記液室内に、前記処理液搬送手段の前記搬送面が移動する方向と直交する方向に延び、かつ前記処理液搬送手段の前記搬送面に近接する端部を有する隔壁を設けたことを特徴とする処理液付与装置。
【請求項2】
請求項1記載の処理液付与装置において、
前記隔壁によって分けられた前記搬送面の侵入側の液室の容積が侵出側の液室の容積より小さくなる位置に前記隔壁を設けることを特徴とする処理液付与装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の処理液付与装置において、
前記隔壁は前記処理液搬送手段の回転中心の鉛直下方位置よりも前記搬送面の侵入側に位置することを特徴とする処理液付与装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の処理液付与装置において、
処理液の流れる少なくとも1つの流路を形成し、該流路に沿って処理液を流して処理液の流れ方向を規制する規制部材を設けることを特徴とする処理液付与装置。
【請求項5】
請求項4記載の処理液付与装置において、
前記規制部材により形成される流路は前記処理液搬送手段の幅方向における中心から外側の幅方向に向かっていることを特徴とする処理液付与装置。
【請求項6】
請求項5記載の処理液付与装置において、
前記流路の方向は前記隔壁となす傾斜角を有し、該傾斜角は前記処理液搬送手段の幅方向における外側へ向かって徐々に小さくなることを特徴とする処理液付与装置。
【請求項7】
請求項2記載の処理液付与装置において、
前記侵入側処理液に含まれる異物を排出する異物排出機構と、前記侵入側の液室と前記侵出側の液室とを連通する連通路とを設け、前記侵入側処理液中に沈殿している異物を前記異物排出機構を介して処理液回収槽に排出し、異物を排出した後の処理液を前記連通路を介して前記侵出側の液室内へ送液することを特徴とする処理液付与装置。
【請求項8】
請求項7記載の処理液付与装置において、
前記異物排出機構を前記処理液搬送手段の幅方向における前記液室の両側に設けたことを特徴とする処理液付与装置。
【請求項9】
請求項7記載の処理液付与装置において、
前記侵入側処理液を回収する第1の回収液槽と前記侵出側処理液を回収する第2の回収液槽とに隔てる回収液槽隔壁を前記処理液回収液槽に設けることを特徴とする処理液付与装置。
【請求項10】
請求項1記載の処理液付与装置において、
前記隔壁を複数設けることを特徴とする処理液付与装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の処理液付与装置によって画像記録媒体へ処理液を付与し、処理液が付与された前記画像記録媒体上に画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−218374(P2012−218374A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88826(P2011−88826)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】