説明

処理液供給器具及びそれ用の蓋具

【課題】処理液を供給するための処理液供給器具に関し、小型で安価な処理液供給器具を提供。
【解決手段】膨縮可能な貯液具本体と、接続口部とを備え、接続口部から吸引されると貯液具本体が縮むと共に内部の処理液が接続口部から流出する構成を備えた貯液具3と、連通路7内に圧縮ガスが流れると貯液具3内の処理液を液供給路8を介して連通路7内に吸引し得る構成を備え、前記連通路7の中間部に段差部を設け、当該段差部を介して小径通路7aと大径通路とを設け、処理液供給路8は、前記大径通路内の当該段差部の近傍に連通してなる構成を備えた処理液供給アダプター2と、連通路7の大径通路から小径通路7a内にまで差し入れられるように形成され、その周面には、大径通路内に略一杯に嵌まる大きさの突部311aと、小径通路7a内に略一杯に嵌まる大きさの突部とを有する軸部31を備えた蓋具30と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤、防錆剤、防錆油、錆黒化処理液などの処理液を供給するための処理液供給器具とその蓋具に関する。
【背景技術】
【0002】
金型内部には冷却水等を流通させる内部通液路が形成されているが、この内部通液路は一般的に複雑な形状に形成されているため、冷却水等が抜けにくく、内部に溜まって錆が発生しやすい。そこで従来から、金型内部通液路の防錆を図るための様々な処理方法が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1(特開2002−1457号)は、冷却水孔に防錆塗料をポンプ等で注入する方法を開示している。
【0004】
特許文献2(特開平6−234145号)は、成形作業を終了した際或いは金型を交換する際に、金型に対する冷却水の供給を遮断し、圧縮空気などの圧力気体を温調装置への流入を規制して金型の循環水路内に供給して循環水路内に溜まった冷却水を排出し、冷却水残留により錆付くのを防止する方法を提案している。
【0005】
特許文献3(特開平7−275822号)は、洗浄液タンクから洗浄液を洗浄対象たる液体通路に供給する洗浄液供給路と、該液体通路から排出された洗浄液を該洗浄液タンクへ還流させる洗浄液排出路とを備えた液体通路の洗浄システムにおいて、該洗浄液タンクの該洗浄液を該液体通路と該洗浄液供給路とを介して吸引して該液体通路内に負圧下で該洗浄液を供給するとともに該洗浄液の脈動を発生させる循環手段を該洗浄液排出路に設け、この際、洗浄液として最初に水を用い、次に例えば硬質研磨剤が所定量添加された酸性洗浄液を用いることによって、水で除去されなかった堆積物については酸性液の溶解力と機械的衝撃力により水垢や錆等を除去する方法を提案している。
【0006】
特許文献4(特開平9−1090号)は、水に燐酸、界面活性剤および有機酸誘導体を所定割合で添加して形成した錆除去用の洗浄液を、所要圧力で、樹脂成形用金型の冷却部の一端から供給して他端から排出し、上記金型冷却部の内面に発生した錆を除去すると共に、洗浄液中の燐酸と金型形成材の鉄とが化合した燐酸鉄の防錆被膜を金型冷却部内面に形成することを特徴とする金型冷却部の錆除去方法を提案している。
【0007】
特許文献5(特開2000−289036号)は、金型にゴム材から成る基材0.1〜50.0wt%と、有機溶剤50.0〜99.9wt%とを混合して成る防錆剤を塗布して防錆被膜を形成し、金型の保管中は、この防錆被膜が金型から容易に剥離せず、防錆効果を持続可能とし、金型を用いて成形物を形成する際には、防錆被膜は、金型から容易に剥離可能とし、不良品の発生を抑えて経済的な成形を可能とする方法を提案している。
【0008】
特許文献6(特開2000−254953号)は、金型用冷却装置の冷却タンクを利用することにより、コンデンサーやコンプレッサ等の機器をあらためて設備することなく防錆を図る手段として、加熱シリンダーの冷却装置において、ホッパーの下部に位置する加熱シリンダーの冷却用通水路に、熱交換部、液タンク並びに循環用ポンプを備えた密閉式の液体循環回路を接続し、この液体循環回路の熱交換部を既存の金型冷却システムの冷却水タンク内に配置し、液体循環回路に防錆性を備えた冷却液を流通させる方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−1457号公報
【特許文献2】特開平6−234145号公報
【特許文献3】特開平7−275822号公報
【特許文献4】特開平9−1090号公報
【特許文献5】特開2000−289036号公報
【特許文献6】特開2000−254953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、小型で簡便に扱うことができ、しかも安価に供給することができる処理液供給器具を提供せんとするものである。また、本発明は、処理液供給作業後に、処理液供給器具の保管に適した専用の蓋具を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、処理液を収容可能で、かつ膨縮可能な貯液具本体と、接続口部とを備え、接続口部から吸引されると貯液具本体が縮むと共に内部の処理液が接続口部から流出する構成を備えた貯液具と、
連通路内に圧縮ガスが流れると貯液具内の処理液を液供給路を介して連通路内に吸引し得る構成を備えた処理液供給アダプターであって、前記連通路の中間部に段差部を設け、当該段差部の圧縮ガス供給手段との接続口部側を小径通路とし、当該段差部の処理液噴射口部側を前記小径通路より径の大きな大径通路とし、処理液供給路は、前記大径通路内の当該段差部の近傍に連通してなる構成を備えた処理液供給アダプターと、
前記処理液供給アダプターの連通路内に差し入れ可能な太さに形成された軸部を備え、当該軸部は、連通路の大径通路から噴射口受部側の小径通路内にまで差し入れられるように形成され、その軸部の周面には、連通路の大径通路内に略一杯に嵌まる大きさの突部と、小径通路内に略一杯に嵌まる大きさの突部とが設けられてなる構成を有する蓋具と、
を備えた処理液供給器具を提案する。
【0012】
上記の連通路及び液供給路は、連通路内に圧縮ガスが流れると貯液具内の処理液を液供給路を介して連通路内に吸引し得る構成であるのが好ましい。例えば、前記連通路の中間部に段差部を設け、当該段差部の接続口部側を小径通路とし、当該段差部の処理液噴射口部側を前記小径通路より径の大きな大径通路とし、処理液供給路は、前記大径通路内の当該段差部の近傍に連通してなる構成を備えた構造であれば、連通路内に圧縮ガスが流れると、貯液具内の処理液が液供給路を介して連通路内に吸引され、圧縮ガスとともに連続的に噴射させることができる。
また、貯液具連結口部は、貯液具の連結部内周に接合する筒状の舌片部を設け、当該舌片部に前記液供給路を連通してなる構成を備えた構造であれば、処理液が貯液具から吸引される際に、貯液具連結口部と貯液具の連結口との接合部分から漏れ出すようなことはなく、処理液を漏れなく噴出させることが可能となる。なお、前記段差部の近傍とは、小径通路内を流通してきたガスが大径通路に入って拡散する際、その拡散によって負圧になる範囲を意味している。
【0013】
上記「貯液具(処理液供給貯液具)」、即ち、上記処理液供給器具の貯液具連結口部に連結して使用する貯液具は、処理液を収容可能で、かつ膨縮可能な貯液具本体と、接続口部とを備え、接続口部から吸引されると貯液具本体が縮むと共に内部の処理液が接続口部から流出する構成を備えたものが好ましい。
このような構成を備えた貯液具であれば、上記処理液供給アダプターに連結して圧縮ガス供給手段からの圧縮ガスを連通路内に流すと液供給路側が負圧となり、貯液具本体内が接続口部から吸引され、本体内の処理液は連通路内に引き出され、圧縮ガスと共に処理液を金型内部通液路へ圧送させることができる。しかもこの際、貯液具はどのような角度で使用しても同様に金型内部通液路内へ処理液を圧送することができる(すなわち天地無用)点でも優れている。
【0014】
本発明において「圧縮ガス供給手段」とは、コンプレッサ、ポンプ、エアガンなど、圧縮ガスを供給する装置乃至器具(圧縮ガス供給装置乃至器具)を意味し、その「噴射口」とは、圧縮ガス供給装置乃至器具から供給される圧縮ガスを噴射する噴射具の先端部、例えばエアガンに接続された噴射ノズルの先端部に設けられた噴射口などを包含する意である。
また、本発明において「処理液」とは、洗浄液、防錆液、防錆油、錆黒化処理液など、金型内部通液路に何らかの処理を施すための液を意味している。
また、本発明において「噴射口を略密接状態で当接乃至連結可能」の「略密接状態」とは、当接乃至連結した際に圧縮ガス等が漏れないように略隙間なく接続する状態を意味し、「当接」とは嵌合することなく接続する意を、逆に「連結」とは両者が嵌合して接続する意を包含する。
「金型内部通液路の開口部に挿入乃至連結可能」の「挿入」とは、嵌合することなく挿入する意を、逆に「連結」とは両者が嵌合して接続する意を包含する。
【0015】
上述の如く、本発明の処理液供給器具は、処理液が貯留された貯液具を処理液供給アダプターに連結し、当該アダプターの連通路内に圧縮ガスを吹き込んで処理液を噴出させるものであり、金型内部通液路に処理液を供給する作業終了後は、圧縮ガス供給手段と処理液供給アダプターとの接合を解除し、貯液具を処理液供給アダプターに連結させたままで適当な場所に保管される。この場合、貯液具内に処理液の残余があると、貯液具を傾いていたり横倒しになっていたりすると、処理液供給アダプターの連通路開口端から処理液が漏れ出てしまう。また、処理液によっては、保管中に上記アダプターの連通路が通気孔となって大気に触れることにより、液表面が固まったり変質したりすることもある。
【0016】
このような、器具保管中の液漏れ及び貯留された処理液の変質防止のため、本発明では、処理液供給器具の金型接続口部の開口端から連通路内に差し入れ可能な太さに形成された軸部の一端に、これよりも幅広の握り部を一体に設けて蓋具を構成し、この蓋具の軸部を使用後の処理液供給器具の連通路に差し込むことで、連通路を閉鎖し、貯液具内が密閉されるようにした。
処理液供給器具への蓋具の装着及び取り外しは、握り部を把持して行える。軸部を連通路に差し込んだとき、軸部よりも幅広の握り部が連通路端部に係合して軸部を連通路内に保持させ、また、握り部で連通路端部が閉塞されることで連通路開口端は閉鎖され、連通路内にゴミや塵埃が進入し付着することも防止できる。
【0017】
前記構成の蓋具において、連通路を確実に閉鎖するため、連通路の金型接続口部側の大径通路と噴射口受部側の小径通路とに差し入れられるように軸部が形成してあることが好ましい。
より好ましくは、軸部周面に連通路の大径通路内に略一杯に嵌まる大きさの突部と、小径通路内に略一杯に嵌まる大きさの突部を設けて蓋具を構成することができる。このような構成であれば、軸部を連通路内に差し込んだときに、大径、小径両通路の内周面に突部がそれぞれ圧接して通路を確実に遮断し、また、連通路内で軸部が固定されて抜け落ちることもない。また、軸部は、突部が連通路内周面と接し、他の部分と連通路内周面との間は空隙となるため、軸部周面が連通路内周面に張り付くようなこともなく、取り外しも容易に行える。
また、軸部と握り部の接合部分に鍔部を設けて蓋具を構成すれば、蓋具を器具に装着した際に、連通路端部が鍔部で塞がれて軸部が差し入れられた連通路内部を確実に密閉し、通路内にゴミや塵埃が進入し付着することを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例に係る処理液供給器具の一例を、処理液供給アダプターと貯液具とに分解して示した側面図である。
【図2】図1に示した処理液供給アダプターの断面図である。
【図3】(A)〜(C)のいずれも、噴射口受部と噴射口との接続状態を示した要部断面図である。
【図4】(A)〜(C)のいずれも、金型接続口部と金型内部通液路との接続状態を示した要部断面図である。
【図5】連通路に圧縮ガスを流した際に液供給路側が負圧になることを説明した要部断面図である。
【図6】図1に示した貯液具の側面図である。
【図7】図6に示した貯液具の動作を説明した側面図である。
【図8】図1に示した処理液供給器具の使用方法の一例を示した側面図である。
【図9】処理液供給アダプターの変形例を示した断面図である。
【図10】処理液供給アダプターの他の変形例を示した断面図である。
【図11】処理液供給アダプターの他の変形例を示した断面図である。
【図12】図9の処理液供給アダプターの噴射口との接続状態を示した要部断面図である。
【図13】処理液供給アダプターの他の変形例を示すために、エアガンと共に示した側面図である。
【図14】図13に示した処理液供給アダプターの断面図である。
【図15】液供給路が連通路に連結する位置を説明するために、連通路内の圧縮ガスの流れと共に、処理液供給アダプターの要部を拡大して示した断面図である。
【図16】貯液具の変形例を示した断面図である。
【図17】図16に示した貯液具の使用状態の一例を示した断面図である。
【図18】図16に示した貯液具の一構成例を示した断面図である。
【図19】本発明の他の構成例の処理液供給器具の構成要素である処理液供給アダプターの正面、左右側面、上面、底面を示した図である。
【図20】図19のA−A線に沿った断面図である。
【図21】本発明の他の構成例の処理液供給器具の構成要素である貯液具の半面を断面で示した外観図である。
【図22】図19の処理液供給アダプターに図20の貯液具を装着したときの連結部分の拡大断面図である。
【図23】本発明の蓋具の実施例の正面、左右側面、上面を示した図である。
【図24】図23の蓋具を処理液供給アダプターに装着した状態を示した断面図である。
【図25】本発明の蓋具の他の実施例の正面、左右側面、上面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例に基づいて本発明の実施形態について説明するが、本発明がこの実施例に制限されるものではない。
【0020】
金型内部通液路への処理液供給器具1は、図1に示すように、処理液供給アダプター2と貯液具3とから構成することができる。
【0021】
処理液供給アダプター2は、図2に示すように、樹脂成形された本体部2Aの一端に噴射口受部4を形成し、本体部2Aの他端に金型接続口部5を形成し、本体部2Aの下面部には貯液具連結口部6を形成し、本体部2Aの内部には噴射口受部4、金型接続口部5間を連通する連通路7を形成すると共に、当該連通路7、貯液具連結口部6間を連通する液供給路8を形成して構成してある。
【0022】
本体部2Aは、その材料を特に限定するものではなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム、エラストマ(弾性を備えた樹脂体)などから形成可能であるが、経済性と使用時の気密性確保等を考慮すると、ポリプロピレン、ポリエチレンなどから形成するのが好ましい。
処理液供給アダプター2全体を一体成形することも可能であるが、噴射口受部4、金型接続口部5、貯液具連結口部6、連通路7、液供給路8のいずれか一つ或いは二つ以上を本体部2Aとは別の材料から形成し、後から固着して一体に形成することも可能である。本例の場合、貯液具連結口部6及び液供給路8を本体部2Aとは別材料から形成してある。
また、本体部2Aは、図1及び図2に示すような角形状や円柱形状、或いは図11に示すような略円錐形状の如く適宜肉厚形状に形成することも可能であるが、図10に示すように、金型接続口部5と略連続した円管状に形成することも可能である。
【0023】
噴射口受部4には、連通路7から連続し、外側に向ってロートの如く開拡したテーパ面9aを形成してなる噴射口当接開口部9を設けてある。
この際、テーパ面9aの傾斜角度αは、特に限定するものではないが、30°〜80°程度とするのが好ましい。
また、噴射口当接開口部9の開口径は、圧縮ガス供給装置乃至器具に接続された噴射具の先端部、例えばエアガン等の噴射ノズル先端部101(この先端部101に噴射口を備えている)を挿入可能な大きさであれば特に限定するものではない。
【0024】
このような噴射口受部4であれば、図3(A)〜(C)に示すように、例えばエアガン等の噴射ノズル先端部101をテーパ面9aに押し付けて当接すれば、その噴射口を略密接状態に接続することができ、噴射ノズル先端部101の噴射口から噴射される圧縮ガスを漏らさないように連通路7内に案内することができる。しかもこの際、噴射ノズル先端部101の噴射口を当接する部分をテーパ面9aとしてあるから、噴射ノズル先端部101の径や形状が異なっていても噴射ノズル先端部101を略密接状態に当接させることができる。
【0025】
なお、噴射口受部4は、図13に示すように、本体部2Aから突出部2aを設け、エアガン等の噴射ノズル先端部101の噴射口内周面部に設けられたネジ部と螺合し得るネジ部4aを前記突出部2aの外周面に形成し、螺合して接続するように形成することもできる。
【0026】
金型接続口部5は、金型内部通液路51の開口部52に挿入可能な挿入部10を本体部2Aから突設し、当該挿入部10の先端部で連通路7を開口させてある。
詳しくは、金型内部通液路51の開口部52には、通常、冷却水等を供給するホースを接続するための継手53が着脱可能に取り付けられるため、この継手53の開口孔53a内に挿入し得るように挿入部10を形成してある。
【0027】
さらに詳しくは、図4に示すように、継手53の開口孔53a内には段部53bが形成されていることが多く、当該段部53bの奥側が狭くなり小径孔53cとなっているから、挿入部10はこの小径孔53c内に挿入可能な長さ及び太さに形成するのが好ましい。
このような金型接続口部5であれば、図4に示すように、継手53の開口孔53a内奥の小径孔53c内まで挿入部10を挿入することができ、連通路7を介して送られて来る処理液を漏れなく金型内部通液路51内に圧送することができる。開口孔53a内に段部53bがある場合、当該段部53bの奥側まで挿入部10を挿入しないと処理液が逆に噴出する可能性がある。
なお、継手53の開口孔53a及びその内部の小径孔53cの径は通常約5mm〜20mm程度であるから、挿入部10の外径を約5mm程度とし、かつ長さを約30mm程度とすれば、あらゆる継手53の開口孔53aの小径孔53c内に挿入させることができる。
【0028】
貯液具連結口部6は、本例の場合、図2に示すように、内周面にネジ部11aが刻設されたキャップ体11の上部を本体部2Aの下面部に埋設し、キャップ体11の周側部11bを本体部2Aの下面部から突出させるようにして構成してある。
但し、本発明における貯液具連結口部は、貯液具3を連結可能であれば、好ましくは着脱自在に連結可能であれば、構造は任意である。
【0029】
連通路7は、噴射口受部4、金型接続口部5間を連通する穴として形成してあり、詳しくは、図5に示すように、中間部に段差部7cを設け、この段差部7cの噴射口受部4側をより径小の穴からなる小径通路7aとし、段差部7cの金型接続口部5側をより径大の穴からなる大径通路7bとしてある。
具体的な一例としては、段差部7cの大きさ、すなわち小径通路7aと大径通路7bの径の差を約5mm以上とするのが好ましい。
小径通路7aは、噴射口受部4から段差部7cに向って窄まった形状に形成することもできる。
【0030】
液供給路8は、図5に示すように、連通路7、貯液具連結口部6間を連通路7と略直交するように連通してある。詳しくは、大径通路7b内の段差部7cの近傍に連通し、連通路7内に圧縮ガスが流れると液供給路8内が負圧となり、貯液具3内の処理液を吸引し得るように構成してある。
なお、図の例では、段差部7cの段差面と液供給路8の噴射口受部4側の内周面が面一になるように液供給路8が連通路7に連通しているが、図15に示すような段差部7cの近傍範囲(図の太線部X)内であれば連通させることができる。即ち、小径通路7a内を流通してきた圧縮ガスが大径通路7bに入って一気に拡散した際、その拡散線Sの懐部分(点斜線部)が負圧になる範囲であり、当該近傍範囲(図の太線部X)に液供給路8が連通していれば、連通路7内に圧縮ガスが流れると液供給路8内が負圧となり、貯液具3内の処理液を吸引することができる。
この際、拡散線Sの角度αを45度と想定し、拡散線Sが大径通路7bの内周面に交わる位置よりも段差部7c寄りの部分を近傍範囲(図の太線部X)と設定することができる。
【0031】
要するに、連通路7内に圧縮ガスを流すと貯液具3内の処理液を連通路7内に吸引することができるように形成するためには、連通路7の径を段差部7cを介してその金型接続口部5側をより大きくすると共に、連通路7の拡径した大径通路7b内の段差部7c近傍に液供給路8が連結するように構成すればよい。
この際、液供給路8が連通路7に交わる角度は、特に限定するものではなく、本例のように略直交状に交わるように形成することも、又、更にいずれかに傾いた角度で交わるように形成することもできる。
【0032】
液供給路8の径の大きさは、貯液具3内の処理液を吸引するのに適した適宜大きさに設計するのが好ましい。一般的には、例えば大径通路7bの径が約4mm程度の場合、液供給路8の内径は約1.5mm程度とするのが好ましい。但し、これに限定されるものではない。
なお、本例の場合、本体部2Aに穴12を穿設し、この穴12内に管部材13を挿入して固着し、この管部材13の中空部13a(約1.5mm)を液供給路8とし、この管部材13の下端部を上記キャップ体11の天面を貫いてキャップ体11内に突入させ、貯液具3を連結すると貯液具本体15内に進入するようにしてある。
【0033】
貯液具3は、図6に示すように、処理液を貯液可能で、かつ膨縮可能な貯液具本体15から構成してある。
【0034】
この貯液具本体15は、合成樹脂から形成してあり、伸縮自在な蛇腹状に形成してある胴部17と、胴部17上に突出した円管部18と、円管部18の上端部に形成された貯液具連結口部6と着脱可能に連結し得る連結部19とから構成してある。
連結部19は、貯液具連結口部6のネジ部6aと螺合可能に形成してある。
【0035】
このような貯液具3であれば、貯液具連結口部6に連結すると胴部12内は密閉状態となるが膨縮可能であるから、図7に示すように、貯液具本体15内に処理液を収納した状態で連結部19側から吸引されると、貯液具本体15の胴部17が縮むと共に、内部の処理液が連結部19の口から流出する。
また、図示はしないが、貯液具3は、通気穴が無いから360°いずれの角度で使用しても、例えば図7の状態から天地逆さで使用しても、同様に処理液を供給することができる。
【0036】
なお、本例では、貯液具本体15の胴部を蛇腹状に形成して膨縮自在としてあるが、このような構成に限定するものではない。例えば、ゴム風船の如く素材自体が膨縮自在であってもよい。
また、貯液具3の他の構成も任意に変更可能であり、例えば貯液具本体15に着脱可能なキャップを装着する構成とすることもできる。
【0037】
次に、処理液供給器具1の使用方法について説明する。
【0038】
処理液を収納した貯液具3を、連結部19を貯液具連結口部6に連結して処理液供給アダプター2に装着して処理液供給器具1を組立てる。
次に、図8に示すように、金型内部通液路51の開口部52の継手53の開口孔53a内、詳しくは開口孔53a内奥の小径孔53c内に挿入部10を挿入すると共に、エアガン等の圧縮ガス供給装置乃至器具100の噴射ノズル先端部101を噴射口当接開口部9のテーパ面9aに押し付けて噴射口受部4と噴射ノズル先端部101の噴射口とを略密接状態に接続する。
そして、この接続状態を維持しつつ、圧縮ガス供給装置乃至器具100を操作して噴射ノズル先端部101の噴射口から圧縮ガスを連通路7内を噴射させれば、連通路7内を流通する圧縮ガスによって液供給路8内が負圧となり、貯液具本体15内は吸引され、貯液具本体15が収縮すると同時に内部の処理液は液供給路8を通じて連通路7内に流入し、処理液及び圧縮ガスは金型内部通液路51内に圧送される。
【0039】
このように、処理液供給器具1を使用すれば、処理液を圧送する装置を新たに設置する必要も、金型を改造する必要もなく、既に金型周辺で使われている圧縮ガス供給装置乃至器具100を利用するだけで、金型内部通液路51内に処理液を連続的に圧送することができ、金型内部通液路の処理を簡便に施すことができる。
また、金型50の金型内部通液路51の開口部52は、図8に示すように、水平方向に開口していることは希であり、冷却水等が金型内部通液路51内に溜まらないように下方或いは斜め下方に開口していることが多いが、本発明の処理液供給器具1であれば360°いずれの角度で使用しても、同様に金型内部通液路51内に処理液を供給することができる。
【0040】
図9〜図12は、上記処理液供給器具1の変形例を示したものである。
【0041】
これらの変形例は、上記処理液供給器具1において、テーパ面9aの外側に、圧縮ガス供給手段100の噴射口を当接させる際に当該テーパ面9aと当該噴射口との間に介在して気密性を高めるパッキン部20を更に設けて噴射口受部4を構成したものである。
【0042】
本例のパッキン部20は、本体部2Aと一体に形成してあり、連通路7の開口端縁付近を基端部として外側に向ってスカート状に開拡し、かつテーパ面9aから独立して斜めに起立し、かつ前後に可動可能に形成してある。また、パッキン部20は、パッキン機能を発揮し得る弾力性を持ち得るように薄く形成してある。この際、肉厚が大きすぎると、たとえポリエチレンなどの柔軟な樹脂でも弾力性が低下してパッキン機能を発揮しないようになる。
なお、パッキン部20は、パッキン機能を発揮し得る弾力性を持ち得る樹脂、例えばポリエチレン、或いはそれと同等か、それよりも柔軟な樹脂から形成するのが好ましい。よって、上記のように本体部2Aと一体形成する場合、本体部2Aもポリエチレン、或いはそれと同等か、それよりも柔軟な樹脂から形成するのが好ましい。
【0043】
このような噴射口受部4であれば、図12に示すように、噴射ノズル先端部101をパッキン部20に当接してテーパ面9aに押付けて、パッキン部20を介在させて噴射ノズル先端部101をテーパ面9aに接続すれば、気密性を更に高めることができる。しかも、テーパ面9aの角度(図2のα)が大きくても接続時の気密を確実に確保することができる。
【0044】
なお、上記の例では、パッキン部20を本体部2Aと一体に形成してあるが、別体に形成してもよい。また、本体部2Aと同じ材質でも別の材質であってもよい。
さらに、上記の例は、言い換えれば薄い樹脂からなる円環状体をテーパ面9aから独立して起立させて前後可動可能に形成したものであるが、このような円環状体を予めテーパ面9aに固着して一体に形成することも可能である。なお、この際のパッキン部20の形状を円環状に限定するものではない。
【0045】
図16〜図18は、貯液具3の変形例を示したものである。
貯液具3は、処理液を収容可能で、かつ膨縮可能な貯液具本体と、連結口部とを備えていれば、上記の例に限定されるものではない。例えば、図16に示すように、処理液を収容する処理液収容部23をプラスチックフィルム袋やゴム風船袋等で形成することもできる。この際、処理液収容部23を支持するため、金属、プラスチックなどからなる保形容器24内に処理液収容部23を収納するのが好ましい。このように構成すれば、図17に示すように、たとえ天地が逆になっても、処理液収容部23は保形容器24に支持されるから作業の邪魔になることがない。
また、連結部14は保形容器24に設けるのが好ましく、図18に示すように、処理液収容部23は保形容器24に対して着脱可能に構成するのが好ましい。
【0046】
図19〜図22は処理液供給器具1の他の構成例を示したものである。
この構成例の処理液供給アダプター2は、図19及び図20に示すように、樹脂により全体が漏斗形に一体成形されてなり、前述した構成のアダプターと同様に、その一端にテーパ面9aを有する噴射口受部4、他端に金型接続口部5をそれぞれ設けると共に、その下部に貯液具連結口部6を形成し、噴射口部受部4と金型接続口部5を連通路7で連通し、さらに連通路7と貯液具連結口部6とを液供給路8で連通させた形態に構成してある。
【0047】
連通路7は、図20に示すように、噴射口受部4側が開口径が小さい小径通路7a、金型接続口部5側が開口径が大きい大径通路7bとしてあり、両通路が接続する段差部7cは、小径通路7a端部から大径通路7b端部間をテーパ面7dで連続させてなり、このテーパ面7d内から液供給路8を垂下させてある。
【0048】
また、貯液具連結口部6は、貯液具3の連結部19外周に一体嵌合し得るように、内周にネジ部11aを有する円筒キャップ形をなすと共に、その円筒キャップ部分の下面中央に、貯液具3の連結部19の内周に接合する筒状の舌片部61を適宜な長さで一体に突出させ、当該舌片部61の中央に液供給路8の開口端を設けた形状としてある。
【0049】
貯液具3は、図21に示すように、適宜な容量で処理液を貯液可能な伸縮自在な蛇腹状の胴部17の上面に円管部18を突出させてなる貯液具本体15から構成し、円管部18の上部に、外周面に螺子溝を刻設した連結部19を設け、この連結部19の内側は前記筒状舌片部61がすっぽりと嵌まって接合する空洞状に設けてある。
【0050】
このように構成された処理液供給器具1は、処理液が入れられた貯液具3を、その連結部19を貯液具連結口部6に連結して処理液供給アダプター2に装着して組立てられる。この状態で、図22に示されるように、処理液供給アダプター2の貯液具連結口部6が貯液具3の連結部19に嵌合して貯液具3の開口を閉鎖し、さらに舌片部61が連結部19の内側開口に進入して当該開口内周面に接合する。すなわち、貯液具3の円管部18の端部開口は、貯液具連結口部6と舌片部61との二重の壁面で隙間なく閉鎖されて処理液供給アダプター2の下部に一体に取り付けられるため、貯液具3内部の気圧と液供給路8内の気圧とが一定に保たれ、段差部7cに負圧が生じたときは、内部処理液を液供給路8を通して連通路7内にスムーズに流出させ、外部に噴出させることができる。この際、貯液具連結口部6との接合部分から処理液が漏れ出すこともない。
【0051】
図23は前記各構成の処理液供給器具1に使用される蓋具30の構成を示したものである。
同図に示すように、蓋具30は、樹脂成形により、前記連通路7内に差し入れ可能な太さを有していて一端部を先細りとした楊枝形の軸部31の他端部に、それよりも幅広の握り部32を一体に設けた形状に構成してある。
【0052】
詳しくは、軸部31は、前記金型接続口部5の開口端から連通路7の小径通路7aの端部に至る長さを有し、その握り部32側の基部311が大径通路7bの内径よりも小径、先端部312が小径通路7aの内径よりも小径の太さをなし、基部311と先端部312は径を徐々に小さくしたテーパ部313で連続させた形状となっている。基部311は、金型接続口部5の開口端から連通路7の段差部7cまでの長さと略同じに設けてある。
【0053】
また、基部311の端部周面には、大径通路7b内に略一杯に嵌まる大きさの環状の突部311aが設けられ、先端部312の周面には小径通路7a内に略一杯に嵌まる大きさの環状の突部312aが設けられている。これら突部311a、312aは、それぞれ軸部31に複数個を適当な間隔を開けて設けたものであってもよい。
【0054】
さらに、軸部31と握り部32の接合部分には、軸部31と交差して正方形の輪郭に張り出した鍔部33を一体に設けてある。鍔部33は、軸部31を連通路7内に差し込んだときに、当該通路端部に当接して通路を閉鎖するためのものであり、その輪郭は適宜な形状とすることができる。また、握り部32も、軸部31よりも幅広であって指先で把持可能であれば、適宜な形状とすることができる。換言すれば、図25内に点線で示した握り部31と鍔部33の形状は、適宜に選定して軸部31を有する蓋具30を構成可能である。
【0055】
このように構成された蓋具30は、図24に示すように、処理液供給器具1の保管時、握り部32を把持して軸部31を金型接続口部5の開口端から連通路7内に差し込み、処理液供給アダプター2に装着する。差し込まれた軸部31は、その先端部312が小径通路7a内、基部311が大径通路7b内にそれぞれ挿入され、両通路の内周面に突部312a、311aが圧接して通路内に固定される。これにより、連通路7は、小径、大径両通路7a、7bが共に突部312a、311aにより遮断され、貯液具3の内部から液供給路8、連通路7に渡る空間部は完全に密閉された状態となり、貯液具3内部の処理液を大気に触れさせずに当該器具1を保管することができる。また、蓋具30により連通路7が閉鎖されるので、保管中に、処理液供給1が横倒しになっても貯液具3内部の処理液が漏れ出すようなことはなく、連通路7内にゴミや塵埃が進入し付着して流通路を目詰まりさせることもない。また、軸部31を差し入れた状態で、突部312a、311a以外の軸部31の周面と連通路7の内周面との間は隙間となるので、軸部31を差し入れ及び抜き取る際の接触抵抗が小さく、蓋具30の装着及び取り外しを容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0056】
1 処理液供給器具
2 処理液供給アダプター
3 貯液具
4 噴射口受部
5 金型接続口部
6 貯液具連結口部
7 連通路
8 液供給路
9 噴射口当接開口部
9a テーパ面
10 挿入部
11 キャップ体
12 穴
13 管部材
15 貯液具本体
17 胴部
18 円管部
19 連結部
20 パッキン部
23 処理液収容部
24 保形容器
30 蓋具
31 軸部
32 握り部
33 鍔部
50 金型
51 金型内部通液路
61 舌片部
100 圧縮ガス供給装置乃至器具
101 噴射ノズル先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を収容可能で、かつ膨縮可能な貯液具本体と、接続口部とを備え、接続口部から吸引されると貯液具本体が縮むと共に内部の処理液が接続口部から流出する構成を備えた貯液具と、
連通路内に圧縮ガスが流れると貯液具内の処理液を液供給路を介して連通路内に吸引し得る構成を備えた処理液供給アダプターであって、前記連通路の中間部に段差部を設け、当該段差部の圧縮ガス供給手段との接続口部側を小径通路とし、当該段差部の処理液噴射口部側を前記小径通路より径の大きな大径通路とし、処理液供給路は、前記大径通路内の当該段差部の近傍に連通してなる構成を備えた処理液供給アダプターと、
前記処理液供給アダプターの連通路内に差し入れ可能な太さに形成された軸部を備え、当該軸部は、連通路の大径通路から噴射口受部側の小径通路内にまで差し入れられるように形成され、その軸部の周面には、連通路の大径通路内に略一杯に嵌まる大きさの突部と、小径通路内に略一杯に嵌まる大きさの突部とが設けられてなる構成を有する蓋具と、
を備えた処理液供給器具
【請求項2】
処理液供給アダプターは、貯液具の連結部内周に接合する筒状の舌片部を設け、当該舌片部に前記液供給路を連通してなる構成を備えた貯液具連結口部を有することを特徴とする請求項1に記載の処理液供給器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2009−220108(P2009−220108A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115250(P2009−115250)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【分割の表示】特願2003−180903(P2003−180903)の分割
【原出願日】平成15年6月25日(2003.6.25)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】