説明

処置具

【課題】針の先端が心臓に接触することを防止しながらガイドワイヤを心膜腔内に導入することができる処置具を提供する。
【解決手段】生体組織Aと生体組織Aの表面に形成された膜状組織Bとの間に挿入される針31を導出するチャネル部30と、チャネル部30の軸線方向に並んで配置され、膜状組織Bを密着させて保持する第1の保持部11および第2の保持部21と、第1の保持部11と第2の保持部21とがチャネル部30の軸線を挟んで配置されるように、第1の保持部材10と第2の保持部材20とを相対移動させる接続部材40とを備える処置具を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば心膜腔内にガイドワイヤを導入するための処置具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、心膜をつまんだ状態で穿刺することにより、ガイドワイヤを心膜腔内に導入する処置具が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6156009号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の場合、ガイドワイヤを挿入するための孔を心膜にあけるために針を心膜に貫通させたときに、心膜と隣接する心臓に針の先端が接触してしまう可能性があるという問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、針の先端が心臓等の生体組織に接触することを防止しながら、ガイドワイヤを心膜等の膜状組織腔内に導入することができる処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、生体組織と該生体組織の表面に形成された膜状組織との間に挿入される針を導出するチャネル部と、該チャネル部の軸線方向に並んで配置され、前記膜状組織を密着させて保持する第1の保持部および第2の保持部と、前記第1の保持部と前記第2の保持部とが前記チャネル部の軸線を挟んで配置されるように、前記第1の保持部と前記第2の保持部とを相対移動させる相対移動手段とを備える処置具を採用する。
【0006】
本発明によれば、第1の保持部および第2の保持部により膜状組織(例えば心膜)を密着させて保持した状態で、相対移動手段により第1の保持部と第2の保持部とを相対移動させることで、第1の保持部と第2の保持部とがチャネル部の軸線を挟んで配置される。これにより、第1の保持部および第2の保持部により保持された膜状組織は、チャネル部の軸線上に配置される。この状態において、チャネル部からその軸線方向に針を導出することで、針を膜状組織に貫通させて膜状組織腔内に挿入することができる。
【0007】
この場合において、第1の保持部および第2の保持部により膜状組織がチャネル部の軸線に交差する方向に保持される一方で、生体組織(例えば心臓)の表面はチャネル部の軸線に沿う方向に配置されている。したがって、針は生体組織の表面に沿う方向に導出されるため、針の先端が生体組織に接触することを防止して、生体組織を損傷させてしまうことを防止することができる。
【0008】
上記発明において、前記相対移動手段が、前記第1の保持部と前記第2の保持部の少なくとも一方を、前記生体組織の表面から離間する方向に移動させることとしてもよい。
第1の保持部と第2の保持部の少なくとも一方を、生体組織の表面から離間する方向に移動させることで、第1の保持部および第2の保持部により保持された膜状組織は、生体組織の表面から引っ張られて、生体組織と膜状組織との間に空間が形成される。この空間にチャネル部からその軸線方向に針を導出することで、確実に生体組織と膜状組織との間に針を挿入することができ、針の先端が生体組織に接触することを防止することができる。
【0009】
上記発明において、前記相対移動手段が、前記第1の保持部と前記第2の保持部の少なくとも一方を、前記第1の保持部と前記第2の保持部とが近接する方向に移動させることとしてもよい。
第1の保持部と第2の保持部とを近接する方向に移動させることで、第1の保持部および第2の保持部により保持された膜状組織の、チャネル部の軸線(すなわち生体組織の表面)に対する傾きを大きくすることができる。このように保持された膜状組織に、チャネル部からその軸線方向に針を導出することで、確実に生体組織と膜状組織との間に針を挿入することができ、針の先端が生体組織に接触することを防止することができる。
【0010】
上記発明において、前記第1の保持部と前記第2の保持部の少なくとも一方が、前記膜状組織を引っ掛けて保持する引掛機構を有することとしてもよい。
このような引掛機構を有することで、容易に膜状組織を引っ掛けて保持することができる。
【0011】
上記発明において、前記第1の保持部と前記第2の保持部の少なくとも一方を、前記チャネル部の軸線方向に移動させた状態で固定する固定機構を有することとしてもよい。
このような固定機構を有することで、膜状組織がチャネル部の軸線上に配置された状態、すなわちチャネル部から針を導出可能な状態で、第1の保持部と第2の保持部の少なくとも一方を固定することができる。これにより、針を膜状組織腔内に挿入する作業の容易化を図ることができる。
【0012】
上記発明において、前記第1の保持部および前記第2の保持部により保持された前記膜状組織が所定の張力以上になった際に、前記針を前記膜状組織腔内に挿入する針挿入機構を有することとしてもよい。
このような針挿入機構を有することで、相対移動手段により第1の保持部と第2の保持部とを相対移動させて、第1の保持部および第2の保持部により保持された膜状組織が所定の張力以上になった際に、自動的に針を膜状組織腔内に挿入することができる。これにより、針を膜状組織腔内に挿入する作業の容易化を図ることができる。
【0013】
上記発明において、前記針を前記膜状組織腔内に挿入された状態で固定する針固定機構を有することとしてもよい。
このような針固定機構を有することで、針を膜状組織腔内に挿入された状態で固定することができ、作業の容易化を図るとともに、安全性を向上することができる。
【0014】
上記発明において、前記第1の保持部と前記第2の保持部とを前記チャネル部の軸線方向に連結する連結部材を備え、前記連結部材が、前記第1の保持部および前記第2の保持部をそれぞれ前記チャネル部の軸線に交差する方向に揺動させる関節部を有することとしてもよい。
このような構成を有することで、関節部により第1の保持部および第2の保持部をそれぞれチャネル部の軸線に交差する方向、すなわち膜状組織の表面に交差する方向に揺動させることで、第1の保持部および第2の保持部により保持された膜状組織は、生体組織の表面から引っ張られて、生体組織と膜状組織との間に空間が形成される。この空間にチャネル部からその軸線方向に針を導出することで、確実に生体組織と膜状組織との間に針を挿入することができ、針の先端が生体組織に接触することを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、針の先端が心臓等の生体組織に接触することを防止しながら、ガイドワイヤを心膜等の膜状組織腔内に導入することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る処置具の概略構成図である。
【図2】図1の処置具の先端部の部分拡大図であり、(a)は正面図、(b)は縦断面図を示している。
【図3】図2の保持部の部分拡大図であり、(a)は第1の保持部、(b)は第2の保持部である。
【図4】図2の変形例として示す保持部の部分拡大図であり、(a)は第1の保持部、(b)は第2の保持部である。
【図5】図2の処置具の動作を説明する図であり、(a)は膜状組織を保持した状態、(b)は膜状組織を生体組織から離間した状態、(c)は膜状組織に穿刺針を挿入した状態を示している。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る処置具の概略構成図であり、(a)は正面図、(b)は縦断面図を示している。
【図7】図6の処置具の動作を説明する図であり、(a)は膜状組織を保持した状態、(b)は膜状組織を生体組織から離間した状態、(c)は膜状組織に穿刺針を挿入した状態を示している。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る処置具の概略構成図である。
【図9】図8の処置具の先端部の部分拡大図であり、(a)は正面図、(b)は縦断面図を示している。
【図10】図9の処置具の動作を説明する図であり、(a)は膜状組織を保持した状態、(b)は膜状組織を生体組織から離間した状態、(c)は膜状組織に穿刺針を挿入した状態を示している。
【図11】図9の第1の変形例に係る処置具の概略構成図であり、(a)は正面図、(b)は縦断面図を示している。
【図12】図11の処置具の動作を説明する図であり、(a)は膜状組織を保持した状態、(b)は膜状組織を生体組織から離間した状態、(c)は膜状組織に穿刺針を挿入した状態を示している。
【図13】図9の第2の変形例に係る処置具の概略構成図であり、(a)は正面図、(b)は縦断面図を示している。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る処置具の動作を説明する図であり、(a)は膜状組織を保持した状態、(b)は膜状組織を生体組織から離間した状態、(c)は膜状組織に穿刺針を挿入した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明の第1の実施形態に係る処置具1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る処置具1は、例えば心膜等の膜状組織と心臓等の生体組織との間にガイドワイヤを導入するための処置具であり、図1に示されるように、体内に挿入される硬性の挿入部(本体部)51と、該挿入部51の先端側に配置された先端部52と、操作者によって把持操作されることにより先端部52を動作させる操作部53とを備えている。
【0018】
挿入部51は、細長い筒状であり、例えば金属などの硬質な材料から構成されている。挿入部51内には、後述する穿刺針31および先端部52と操作部53とを接続するワイヤ54が長手方向に挿通されている。
【0019】
操作部53は、挿入部51に対して固定された固定ハンドル55aと、固定ハンドル55aに対してピン56を中心に揺動可能に設けられた可動ハンドル55bとを備えている。可動ハンドル55bは、把持力を伝達するワイヤ54を介して先端部52(後述する第1の保持部材10)と接続されている。
【0020】
操作部53は、操作者が固定ハンドル55aおよび可動ハンドル55bを握ったときに、可動ハンドル55bが固定ハンドル55aに接近し、ワイヤ54が基端側に引っ張られるように構成されている。これにより、操作者は、両ハンドル55a,55bを握ることにより先端部52(後述する第1の保持部材10)を動作させることができる。なお、両ハンドル55a,55bの相対位置を固定することにより先端部52の動作を一定に保持する図示しない固定手段が操作部53に設けられていてもよい。
【0021】
図2(a)および図2(b)は、挿入部51の先端部52の部分拡大図である。
本実施形態に係る処置具1は、その先端部52において、図2(a)および図2(b)に示すように、生体組織の表面に形成された膜状組織を保持する第1の保持部材10と、第1の保持部材10と同様に膜状組織を保持する第2の保持部材20と、第1の保持部材10と第2の保持部材20とを軸線方向に相対移動可能に接続する接続部材(相対移動手段)40とを備えている。
【0022】
第1の保持部材10と第2の保持部材20とは、軸線方向に並んで配置されており、接続部材40を介して軸線方向に相対移動可能に接続されている。
第1の保持部材10は、例えば金属等の硬質材料で構成された棒状部材であり、先端側部材12と基端側部材13とが、ピン14により揺動可能に接続されている。
【0023】
先端側部材12には、図3(a)に示すように、膜状組織を引っ掛けて保持する第1の保持部(引掛機構)11が設けられている。
第1の保持部11は、例えば金属や硬質樹脂で構成された複数の突起であり、膜状組織に食い込みやすいように先端部が鋭利な形状とされている。第1の保持部11の高さTは、例えば膜状組織の厚さの1/10程度とする。また、第1の保持部11の先端部は、第1の保持部材10の先端側から基端側に向かって傾斜した形状とする。
このような形状とすることで、膜状組織の粘膜を通過して膜状組織に食い込ませることができ、確実且つ容易に膜状組織を引っ掛けて保持することができる。
【0024】
第2の保持部材20は、例えば金属等の硬質材料で構成された筒状部材であり、その内部には、生体組織と膜状組織との間に挿入される穿刺針31を導出するためのチャネル部30が形成されている。
穿刺針31は、図示しないガイドワイヤを挿入するための孔を膜状組織に形成するためのものであり、第2の保持部材20の長手方向に形成されたチャネル部30内において、その軸線方向に移動可能に配置されている。
【0025】
第2の保持部材20には、図3(b)に示すように、膜状組織を引っ掛けて保持する第2の保持部(引掛機構)21が設けられている。
第2の保持部21は、前述の第1の保持部11と同様に、例えば金属や硬質樹脂で構成された複数の突起であり、膜状組織に食い込みやすいように先端が鋭利な形状とされている。第2の保持部21の先端部は、第2の保持部材20の基端側から先端側に向かって傾斜した形状とする。
【0026】
上記構成を有することで、第2の保持部材20の第2の保持部21を膜状組織に密着させて保持した状態において、第1の保持部材10を先端側に移動させた際に、ピン14を中心として先端側部材12を下向きに揺動させ、第2の保持部21に密着させられた膜状組織に、先端側部材12に形成された第1の保持部11を密着させることができるようになっている(図5(a)参照)。
【0027】
また、この状態から、第1の保持部材10を基端側に移動させることで、第1の保持部11と第2の保持部21とがチャネル部30の軸線を挟んで配置されるようになっている(図5(b)参照)。これら図5(a)および図5(b)における詳細な動作については後述する。
【0028】
なお、第1の保持部11および第2の保持部21として、図4(a)および図4(b)に示すように、繊維状の材料を用いることとしてもよい。具体的には、第1の保持部11および第2の保持部21として、生体親和性が高い椰子の繊維等の植物性材料やアザラシの体毛等の動物性材料を使用する。このようにすることで、膜状組織を保持する際の膜状組織へのダメージを抑制することができる。
【0029】
上記構成を有する処置具1の作用について以下に説明する。
まず、処置具1の挿入部51を生体内に挿入し、操作部53の両ハンドル55a,55bの把持および解除を行うことにより先端部52を動作させる。具体的には、図5(a)に示すように、第2の保持部材20の第2の保持部21を膜状組織Bに密着させて保持した状態において、第1の保持部材10を先端側に移動させると、先端側部材12がピン14を中心として下向きに揺動し、先端側部材12に設けられた第1の保持部11が膜状組織Bに密着させられる。
【0030】
この状態から、第1の保持部材10を基端側に移動させると、図5(b)に示すように、先端側部材12が、ピン14を中心として上向きに揺動し、生体組織Aの表面から離間する方向に移動する。これにより、第1の保持部11により保持された膜状組織Bは、生体組織Aの表面から引っ張られて、生体組織Aと膜状組織Bとの間に空間が形成される。
【0031】
また、この際、第1の保持部11と第2の保持部21とが近接する方向に移動する。これにより、第1の保持部11および第2の保持部21により保持された膜状組織Bの、チャネル部30の軸線(すなわち生体組織Aの表面)に対する傾きを大きくすることができる。
【0032】
この状態において、図5(c)に示すように、第1の保持部11および第2の保持部21により保持された膜状組織Bと、生体組織Aとの間にチャネル部30からその軸線方向に穿刺針31を導出する。これにより、穿刺針31は生体組織Aの表面に沿う方向に導出されるため、穿刺針31の先端が生体組織Aに接触することを防止して、生体組織Aを損傷させてしまうことを防止することができる。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る処置具1によれば、第1の保持部11および第2の保持部21により膜状組織Bを密着させて保持した状態で、第1の保持部材10と第2の保持部材20とを相対移動させることで、第1の保持部11と第2の保持部21とがチャネル部30の軸線を挟んで配置される。これにより、第1の保持部11および第2の保持部21により保持された膜状組織Bは、チャネル部30の軸線上に配置される。この状態において、チャネル部30からその軸線方向に穿刺針31を導出することで、穿刺針31を膜状組織Bに貫通させて膜状組織Bの腔内に導入することができる。
【0034】
この場合において、第1の保持部11および第2の保持部21により、膜状組織Bがチャネル部30の軸線に交差する方向に保持される一方で、生体組織Aの表面はチャネル部30の軸線に沿う方向に配置されている。したがって、穿刺針31は生体組織Aの表面に沿う方向に導出されるため、穿刺針31の先端が生体組織Aに接触することを防止して、生体組織Aを損傷させてしまうことを防止することができる。
【0035】
また、第1の保持部11を、生体組織Aの表面から離間する方向に移動させることで、第1の保持部11および第2の保持部21により保持された膜状組織Bは、生体組織Aの表面から引っ張られて、生体組織Aと膜状組織Bとの間に空間が形成される。この空間にチャネル部30からその軸線方向に穿刺針31を導出することで、確実に生体組織Aと膜状組織Bとの間に穿刺針31を挿入することができ、穿刺針31の先端が生体組織Aに接触することを防止することができる。
【0036】
また、第1の保持部材10を、第1の保持部11と第2の保持部21とが近接する方向に移動させることで、第1の保持部11および第2の保持部21により保持された膜状組織Bの、チャネル部30の軸線(すなわち生体組織Aの表面)に対する傾きを大きくすることができる。このように保持された膜状組織Bに、チャネル部30からその軸線方向に穿刺針31を導出することで、確実に生体組織Aと膜状組織Bとの間に穿刺針31を挿入することができ、穿刺針31の先端が生体組織Aに接触することを防止することができる。
【0037】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る処置具2について、主に図6および図7を参照して説明する。以降では、前述の実施形態に係る処置具と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
本実施形態に係る処置具2は、図6に示すように、第2の保持部材20の先端側に、複数の突起部を有する円筒形状の歯車(第2の保持部)23と、歯車23と嵌合するラチェット(固定機構)24とを備えている。また、チャネル部30は、第1の保持部材10と第2の保持部材20との間に設けられている。
【0038】
上記構成を有する本実施形態に係る処置具2の作用について以下に説明する。
図7(a)に示すように、処置具2を生体内に挿入し、第2の保持部材20の歯車23を膜状組織Bに密着させて保持した状態において、第1の保持部材10を先端側に移動させると、先端側部材12がピン14を中心として下向きに揺動し、先端側部材12に設けられた第1の保持部11が膜状組織Bに密着させられる。
【0039】
この状態から、第1の保持部材10を基端側に移動させると、図7(b)に示すように、先端側部材12が、ピン14を中心として上向きに揺動し、生体組織Aの表面から離間する方向に移動する。これにより、第1の保持部11により保持された膜状組織Bは、生体組織Aの表面から引っ張られて、生体組織Aと膜状組織Bとの間に空間が形成される。
【0040】
また、この際、第2の保持部材20の歯車23により膜状組織Bが、チャネル部30の基端側に送り込まれる。これにより、確実に、チャネル部30から穿刺針31を膜状組織Bの腔内に挿入することが可能となる。さらに、この場合において、歯車23にラチェット24を嵌合させることで、歯車23の逆回転が防止されるため、穿刺針31を膜状組織Bの腔内に挿入する際の作業性を向上することが可能となる。
【0041】
この状態において、図7(c)に示すように、第1の保持部11および歯車23により保持された膜状組織Bと、生体組織Aとの間にチャネル部30からその軸線方向に穿刺針31を導出する。これにより、穿刺針31は生体組織Aの表面に沿う方向に導出されるため、穿刺針31の先端が生体組織Aに接触することを防止して、生体組織Aを損傷させてしまうことを防止することができる。
【0042】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係る処置具3について、主に図8から図13を参照して説明する。
本実施形態に係る処置具3は、図9に示すように、第1の保持部材10に対して第2の保持部材20を軸線方向に移動させるものである。
本実施形態に係る処置具3は、図8に示されるように、体内に挿入される硬性の挿入部(本体部)51と、該挿入部51の先端側に配置された先端部52と、操作者によって把持操作されることにより先端部52を動作させる操作部53とを備えている。
【0043】
挿入部51は、細長い筒状であり、例えば金属などの硬質な材料から構成されている。挿入部51内には、穿刺針31および先端部52と操作部53とを接続するワイヤ54が長手方向に挿通されている。
【0044】
操作部53は、挿入部51に対して固定された固定ハンドル55aと、固定ハンドル55aに対してピン56を中心に揺動可能に設けられた可動ハンドル55bとを備えている。可動ハンドル55bは、把持力を伝達するワイヤ54を介して先端部52(第2の保持部材20)と接続されている。
【0045】
操作部53は、操作者が固定ハンドル55aおよび可動ハンドル55bを握ったときに、可動ハンドル55bが固定ハンドル55aに接近し、ワイヤ54が基端側に引っ張られるように構成されている。これにより、操作者は、両ハンドル55a,55bを握ることにより先端部52(第2の保持部材20)を動作させることができる。なお、両ハンドル55a,55bの相対位置を固定することにより先端部52の動作を一定に保持する図示しない固定手段が操作部53に設けられていてもよい。
【0046】
また、操作部53には、穿刺針31を一定位置に保持するロック機構57が設けられている。このロック機構57により穿刺針31と第2の保持部材20との相対位置を固定することで、後述するように第2の保持部材20を基端側に移動させた場合にも、第2の保持部材20と一緒に穿刺針31を基端側に移動させることができる。また、穿刺針31の穿刺時にはロック機構57を解除することで、穿刺針31を第2の保持部材20から導出することができる。
【0047】
本実施形態に係る処置具3の作用について以下に説明する。
まず、処置具3の挿入部51を生体内に挿入し、操作部53の両ハンドル55a,55bの把持および解除を行うことにより先端部52を動作させる。具体的には、図10(a)に示すように、予め第2の保持部材20を基端側に移動させて処置具3を生体内に挿入し、第2の保持部材20の第2の保持部21を膜状組織Bに密着させて保持させる。この状態において、先端側部材12がピン14を中心として下向きに揺動し、先端側部材12に設けられた第1の保持部11が膜状組織Bに密着させられる。
【0048】
この状態から、第2の保持部材20を先端側に移動させると、図10(b)に示すように、先端側部材12が、ピン14を中心として上向きに揺動し、生体組織Aの表面から離間する方向に移動する。これにより、第1の保持部11により保持された膜状組織Bは、生体組織Aの表面から引っ張られて、生体組織Aと膜状組織Bとの間に空間が形成される。
【0049】
この状態において、図10(c)に示すように、第1の保持部11および第2の保持部21により保持された膜状組織Bと生体組織Aとの間に、チャネル部30からその軸線方向に穿刺針31を導出する。これにより、穿刺針31は生体組織Aの表面に沿う方向に導出されるため、穿刺針31の先端が生体組織Aに接触することを防止して、生体組織Aを損傷させてしまうことを防止することができる。
【0050】
〔第1の変形例〕
本実施形態に係る処置具3の第1の変形例として、図11に示すように、第2の保持部材20の基端側にバネ(針挿入機構)25を設けることとしてもよい。
バネ25は、膜状組織Bに穿刺針31を穿刺するために必要な力以上で収縮するようになっている。
【0051】
上記構成を有することで、図12(a)に示すように、第1の保持部11および第2の保持部21により膜状組織Bを保持した状態で、第2の保持部材20を先端側に移動させると、図12(b)に示すように、第1の保持部11および第2の保持部21により保持された膜状組織Bの張力が上昇する。
【0052】
そして、図12(c)に示すように、第1の保持部11および第2の保持部21により保持された膜状組織Bが所定の張力になると、第2の保持部材20の基端側に設けられたバネ25に穿刺針31を穿刺するために必要な力がかかることとなる。これにより、バネ25が収縮して第2の保持部材20が基端側に移動し、第2の保持部材20内に設けられたチャネル部30から穿刺針31が軸線方向に突き出される。
【0053】
以上のように、本変形例に係る処置具4によれば、第1の保持部10と第2の保持部20とを相対移動させて、第1の保持部10および第2の保持部20により保持された膜状組織Bが所定の張力以上になった際に、自動的に穿刺針31を膜状組織Bに穿刺することができる。これにより、穿刺針31を膜状組織Bに穿刺する作業の容易化を図ることができる。
【0054】
〔第2の変形例〕
本実施形態に係る処置具3の第2の変形例として、図13に示すように、第1の変形例と同様に第2の保持部材20の基端側にバネ(針挿入機構)25を設けるとともに、バネ25を収縮した状態で固定するラッチ機構(針固定機構)28を設けることとしてもよい。
ラッチ機構28は、バネ25よりも先端側の第2の保持部20に設けられた引掛部27と、バネ25よりも基端側の第2の保持部20に設けられた突起部26とから構成されている。
【0055】
上記構成を有することで、第1の保持部11および第2の保持部21により膜状組織Bを保持した状態で、第2の保持部材20を先端側に移動させて、第2の保持部材20の基端側に設けられたバネ25に穿刺針31を穿刺するために必要な力がかかった場合に、バネ25が収縮して第2の保持部材20が基端側に移動し、第2の保持部材20内に設けられたチャネル部30から穿刺針31が軸線方向に突き出される。この場合において、バネ25よりも先端側の第2の保持部20に設けられた突起部26に、バネ25よりも先端側の第2の保持部20に設けられた引掛部27が固定される。
【0056】
このようなラッチ機構28を有することで、穿刺針31を膜状組織Bに穿刺した状態で固定することができ、作業の容易化を図るとともに、安全性を向上することができる。また、突起部26に引掛部27が固定された際のラッチ音により、穿刺針31を膜状組織Bに穿刺したことがわかるため、穿刺針31を膜状組織Bに挿入する際の作業性を向上することができる。
なお、ラッチ機構28として、引掛部27をバネ25よりも基端側に設けるとともに、突起部26をバネ25よりも基端側に設けることとしてもよい。
【0057】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態に係る処置具6について、主に図14を参照して説明する。
本実施形態に係る処置具6は、図14に示すように、第1の保持部材10と第2の保持部材20とが、軸線方向(膜状組織Bの表面に沿う方向)に並んで配置されており、連結部材41により連結されている。
【0058】
第1の保持部材10と連結部材41とは、連結部材41の先端側に設けられたピン(関節部)42を中心に揺動可能に連結されている。
第2の保持部材20と連結部材41とは、連結部材41の基端側に設けられたピン(関節部)43を中心に揺動可能に連結されている。
【0059】
連結部材41の先端側には、連結部材41および第2の保持部材20内を挿通されたワイヤ44が接続されている。
このワイヤ44を基端側に引っ張ることで、連結部材41の先端側が、膜状組織Bの表面から離間するようになっている。
【0060】
上記構成を有する本実施形態に係る処置具6の作用について以下に説明する。
図14(a)は、処置具6を生体内に挿入し、第1の保持部材10の第1の保持部11および第2の保持部材20の第2の保持部21を膜状組織Bに密着させて保持した状態を示している。
【0061】
この状態から、ワイヤ44を基端側に引っ張ると、図14(b)に示すように、連結部材41の先端側が、膜状組織Bの表面から離間する。これにより、連結部材41に連結された第1の保持部材10が、ピン42を中心として、膜状組織Bを保持したまま上方向に揺動する。これにより、第1の保持部11により保持された膜状組織Bは、生体組織Aの表面から引っ張られて、生体組織Aと膜状組織Bとの間に空間が形成される。
【0062】
この状態において、図14(c)に示すように、第1の保持部11および第2の保持部21により保持された膜状組織Bと、生体組織Aとの間にチャネル部30からその軸線方向に穿刺針31を導出する。これにより、穿刺針31は生体組織Aの表面に沿う方向に導出されるため、穿刺針31の先端が生体組織Aに接触することを防止して、生体組織Aを損傷させてしまうことを防止することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の各実施形態および各変形例を適宜組み合わせた構成に適用することとしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1,2,3,4,5,6 処置具
10 第1の保持部材
11 第1の保持部(引掛機構)
20 第2の保持部材
21 第2の保持部(引掛機構)
23 歯車(第2の保持部)
24 ラチェット(固定機構)
25 バネ(針挿入機構)
26 突起部
27 引掛部
28 ラッチ機構(針固定機構)
30 チャネル部
31 穿刺針
40 接続部材(相対移動手段)
41 連結部材
42,43 ピン(関節部)
51 挿入部
52 先端部
53 操作部
54 ワイヤ
57 ロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織と該生体組織の表面に形成された膜状組織との間に挿入される針を導出するチャネル部と、
該チャネル部の軸線方向に並んで配置され、前記膜状組織を密着させて保持する第1の保持部および第2の保持部と、
前記第1の保持部と前記第2の保持部とが前記チャネル部の軸線を挟んで配置されるように、前記第1の保持部と前記第2の保持部とを相対移動させる相対移動手段とを備える処置具。
【請求項2】
前記相対移動手段が、前記第1の保持部と前記第2の保持部の少なくとも一方を、前記生体組織の表面から離間する方向に移動させる請求項1に記載の処置具。
【請求項3】
前記相対移動手段が、前記第1の保持部と前記第2の保持部の少なくとも一方を、前記第1の保持部と前記第2の保持部とが近接する方向に移動させる請求項1または請求項2に記載の処置具。
【請求項4】
前記第1の保持部と前記第2の保持部の少なくとも一方が、前記膜状組織を引っ掛けて保持する引掛機構を有する請求項1に記載の処置具。
【請求項5】
前記第1の保持部と前記第2の保持部の少なくとも一方を、前記チャネル部の軸線方向に移動させた状態で固定する固定機構を有する請求項1に記載の処置具。
【請求項6】
前記第1の保持部および前記第2の保持部により保持された前記膜状組織が所定の張力以上になった際に、前記針を前記膜状組織腔内に挿入する針挿入機構を有する請求項1に記載の処置具。
【請求項7】
前記針を前記膜状組織腔内に挿入された状態で固定する針固定機構を有する請求項1に記載の処置具。
【請求項8】
前記第1の保持部と前記第2の保持部とを前記チャネル部の軸線方向に連結する連結部材を備え、
前記連結部材が、前記第1の保持部および前記第2の保持部をそれぞれ前記チャネル部の軸線に交差する方向に揺動させる関節部を有する請求項1に記載の処置具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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