説明

凹凸パターン形成用液状レジストインキの塗布方法

【課題】本発明は、液状レジストインキの使用量を少量に抑え、基板上に均一に液状レジストインキを塗布することを可能とし、しかも塗布が不要な基板の裏側部分にまで液状レジストインキが回り込むことが無い凹凸パターン形成用液状レジストインキの塗布方法を提供する。
【解決手段】本発明の凹凸パターン形成用液状レジストインキの塗布方法は、スプレーノズルシステムを用いて、液状レジストインキを基板上に噴霧することを特徴とする。前記スプレーノズルシステムは、超音波スプレーノズルシステムであることが好ましい。また、前記超音波スプレーノズルシステムは、超音波発生装置、圧電変換器、振動増幅器および超音波ノズルを有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレーノズルシステムを用いて液状レジストインキを基板上に噴霧することを特徴とする凹凸パターン形成用液状レジストインキの塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置、フレキシブルディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録装置は、適用範囲が著しく増大し、その重要性も高まってきている。これらの装置に用いられる磁気記録媒体の記録密度もまた著しい向上が図られつつある。特にMRヘッドおよびPRML技術の導入以来、面記録密度の上昇はさらに激しさを増している。近年ではさらにGMRヘッド、TMRヘッドなども導入されている。これらの磁気記録媒体については、今後更に高記録密度を達成することが要求されている。そのために磁気記録層の保磁力、信号対雑音比(以下「SNR」とも記す。)および分解能を、さらに高めることが期待
されている。また、近年では線記録密度の向上と同時にトラック密度の増加によって面記録密度を上昇させようとする試みもなされている。
【0003】
しかし、トラック密度を上げていくと、隣接するトラック間の磁気記録情報が互いに干渉し合い、その境界領域の磁化遷移領域がノイズ源となりSNRを損なうという問題が生じやすくなる。
【0004】
面記録密度を上昇させるためには、磁気記録媒体上の各記録ビットのサイズをより微細なものとし、各記録ビットに可能な限り大きな飽和磁化と磁性膜厚を確保する必要がある。
【0005】
しかし、記録ビットを微細化していくと、1ビット当たりの磁化最小体積が小さくなり、熱揺らぎによる磁化反転で記録データが消失するという問題が生じる。
【0006】
またトラック間距離が近づくために、充分な再生出力を得ることが困難であり、そのために充分なSNRを確保し難いという問題がある。
【0007】
このような熱揺らぎの問題やSNRの確保、あるいは充分な再生出力の確保を達成する方法の一つとして、ディスクリートトラック法が挙げられる。ディスクリートトラック法とは、記録媒体表面にトラックに沿った凹凸を形成し、あるいは隣接トラック間に非磁性部を形成して、記録トラック同士を物理的に分離することによってトラック密度を上げる方法である。
【0008】
このディスクリートトラック法の一例としては、ガラス板などの基体上に磁性層を備えた基板の上にレジスト層を形成し、そのレジスト層に凹凸パターンを賦形して、この凹凸パターンに沿って非磁性部を形成する方法がある。基板の上にレジスト層を形成させる方法としては、例えばスピンコート法がある(例えば、特許文献1および2参照)。スピンコート法とは、所定量の液状レジストインキを基板の中心部付近に乗せた後に基板を回転させて遠心力を利用して放射状にインキを塗布する方法である。
【0009】
しかし、スピンコート法の場合、特に微細凹凸パターン形成用の液状レジストインキを均一に塗布するためには実際にコートされる量よりも過剰量のインキを使用しなければならない。そのため多量のインキを廃棄せざるを得ないという問題があった。また、塗布が不要な基板の裏側部分にまでインキが回り込むため、インキの除去が必要になる場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−164692号公報
【特許文献2】特開2007−316581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、液状レジストインキの使用量を少量に抑え、基板上に均一に液状レジストインキを塗布することを可能とし、しかも塗布が不要な基板の裏側部分にまで液状レジストインキが回り込むことが無い凹凸パターン形成用液状レジストインキの塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、スプレーノズルシステム、その中でも特に超音波スプレーノズルシステムを用いて、特定の液状レジストインキを基板上に噴霧することで上記課題を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明はたとえば以下の(1)〜(9)に関する。
【0014】
(1)
スプレーノズルシステムを用いて、液状レジストインキを基板上に噴霧することを特徴とする凹凸パターン形成用液状レジストインキの塗布方法。
【0015】
(2)
前記スプレーノズルシステムが超音波スプレーノズルシステムである(1)に記載の塗布方法。
【0016】
(3)
前記超音波スプレーノズルシステムが、超音波発生装置、圧電変換器、振動増幅器および超音波ノズルを有することを特徴とする(2)に記載の塗布方法。
【0017】
(4)
前記超音波ノズルに沿って定常波振動が発生し、該超音波ノズルの先端で振幅が最大となることを特徴とする(3)に記載の塗布方法。
【0018】
(5)
前記液状レジストインキを、エッジマスクを介して基板上に噴霧することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の塗布方法。
【0019】
(6)
前記液状レジストインキが、活性エネルギー線硬化性化合物および有機溶媒を含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の塗布方法。
【0020】
(7)
前記基板が、基体上に磁性層が形成されたものであり、該磁性層上に液状レジストインキを噴霧することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の塗布方法。
【0021】
(8)
液状レジストインキ層に凹凸パターンを形成する方法であって、該凹凸パターンとは逆パターンの形状を有するスタンパを、(1)〜(7)のいずれかに記載の塗布方法により基板上に塗布された液状レジストインキ層に押し付けることを特徴とする凹凸パターンの形成方法。
【0022】
(9)
基体上に磁性層を備えた基板上に、請求項8に記載の凹凸パターンの形成方法により、凹凸パターンを有する液状レジストインキ層を形成する工程と、
前記液状レジストインキ層を硬化させて、凹凸パターンを有する転写層を形成する工程と、
前記凹凸パターンを有する転写層をエッチングし、凹部の厚さ分を除去して前記磁性層表面の一部を露出させる工程と、
残存する前記転写層をマスクとして用いて、前記磁性層の露出部を除去または前記磁性層の露出部を非磁性化する工程とを、この順序で含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明のスプレーノズルシステム、その中でも特に超音波スプレーノズルシステムを用いて液状レジストインキを基板上に噴霧することを特徴とする凹凸パターン形成用液状レジストインキの塗布方法によれば、液状レジストインキの使用量を少量に抑えることができ、また基板上に均一に液状レジストインキを塗布することができる。しかも塗布が不要な基板の裏側部分にまで液状レジストインキが回り込むこと無く、生産性良くディスクリートトラック法の凹凸パターンを形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、凹凸パターンを有する転写層の形成方法の工程を示す図である。
【図2】図2は磁気記録媒体の磁性層の加工における底抜き工程を示す。
【図3】図3は磁気記録媒体の磁性層の一部除去加工、もしくは非磁性化の概略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の凹凸パターン形成用液状レジストインキの塗布方法は、スプレーノズルシステムを用いて、液状レジストインキを基板上に噴霧することを特徴としている。
【0026】
前記スプレーノズルシステムとは、液状物を所望のスプレー形状に調整して、ノズルから塗布対象物にスプレー噴霧する機能を有する装置である。スプレー噴霧する際の形状(以下「スプレー形状」とも記す。)としては、単純霧状タイプ、扇形フラットタイプ、円形フルコーンタイプ、円環ホローコーンタイプ、または直進形ソリッドタイプを例示できる。所望のスプレー形状を生成する方法としては、液状物に熱などのエネルギーを与えて霧状のスプレー形状を得る方法、ノズルの孔の形状や配置と液状物に加える圧力とのバランスを調整する方式や、気体と液状物とを混合してスプレーを生成する方法などがある。
【0027】
このようなスプレーノズルシステムを用いると、塗布対象物に対して均一に液状物を塗布することができ、また用途により塗布範囲を変更できるという点で好ましい。
【0028】
前記スプレーノズルシステムは、超音波スプレーノズルシステムであることが特に好ましい。超音波スプレーノズルシステムとは、ノズル内の液状物に超音波振動を与えて霧状のスプレー形状を得る装置である。超音波スプレーノズルシステムを用いると、ノズルから噴霧される各液滴のサイズがほぼ均一となるという点で好ましい。
【0029】
前記超音波スプレーノズルシステムは、超音波発生装置、圧電変換器、振動増幅器および超音波ノズルを有することが好ましい。すなわち、後述のように、超音波発生装置で生成した電気エネルギーを圧電変換器によって機械振動エネルギーに変換し、振動増幅器によって振動を増幅し、その増幅された機械振動エネルギーが超音波ノズルを介して液状レジストインキに与えられた後に、超音波ノズルから液状レジストインキを噴出させる。
【0030】
前記超音波発生装置は、10〜200kHzの周波数の超音波を発生させる装置が好ましく、中でも25〜120kHzの周波数の超音波を発生させる装置がより好ましい。前記範囲の周波数の超音波を発生させる装置であると、液状レジストインキの粘度にも依存するが、噴霧粒子の微細化および安定化の点で好ましい。
【0031】
前記圧電変換器は、前記超音波発生装置から発生した高周波電気エネルギーを同一周波数の機械振動に変換するものである。前記圧電変換器としては、セラミック圧電変換器を例示することができる。
【0032】
前記圧電変換器は振動増幅器を付設していることが好ましい。振動増幅器を付設していると変換された機械振動をさらに増幅させることができる。
【0033】
前記圧電変換器は超音波ノズルと連結していることが好ましい。前記圧電変換器によって変換された機械振動は超音波ノズルに伝わり、超音波ノズルに沿って定常波振動が発生する。該定常波振動は、超音波ノズルの先端で振幅が最大となることが好ましい。超音波ノズルの長さは、ノズル先端の噴霧生成面において振幅が最大となるように調整されていることが好ましく、例えば10〜60mmである。後述する液状レジストインキは超音波ノズルの中を通って、ノズル先端の噴霧生成面に送られ、振動エネルギーを吸収して噴霧化される。噴霧化速度は、液状レジストインキが噴霧生成面に送られる速度によって制御することができ、例えば流量調整装置を用いて0.01〜10ml/秒の範囲で行うことができる。また、空気、窒素ガスまたはアルゴンガス等をアシストガスとしてノズルに送り込み、該ガス圧を制御することで噴霧の指向性を制御することができる。
【0034】
本発明において用いられる液状レジストインキとしては、例えば活性エネルギー線によって硬化できる官能基を有する硬化性化合物(以下「活性エネルギー線硬化性化合物」とも記す。)が挙げられ、該活性エネルギー線硬化性化合物を有機溶媒に溶解させたものが好ましい。このような液状レジストインキは、活性エネルギー線によって容易に硬化させることができ、また耐熱性の点でも好ましい。
【0035】
前記活性エネルギー線としては、紫外線などの光線(光エネルギー)、電子線、X線、α線、β線、γ線、中性子線などの放射線などが挙げられる。
【0036】
前記活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、オキセタニル基、グリシジル基、シクロヘキセンオキサイド基、ビニルエーテル基などの硬化性基を持つ、少なくとも1種以上の化合物が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル基、オキセタニル基、シクロヘキセンオキサイド、ビニルエーテル基など硬化の速い硬化性基を持つ化合物が好適である。
【0037】
ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味し、その他の括弧付きの官能基や化合物名称についても同様である。
【0038】
(メタ)アクリロイル基を持つ化合物の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−
sec−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシフェニルエチルなどのモノ(メタ)アクリレート類;
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリンなどの(メタ)アクリルアミド類;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリロイル基を持つシルセスキオキサン化合物;
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加させたいわゆるエポキシ(メタ)アクリレート
などを挙げることができる。
【0039】
アリル基を持つ化合物の例としては、エチレングリコールモノアリルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのアリルエーテル類、酢酸アリル、安息香酸アリルなどのモノアリルエステル類、ジアリルアミン、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリルなどのジアリルエステル類、オリゴプロピレンテレフタレートなどのオリゴエステル類にアリルアルコールを反応させたアリルエステル樹脂類などが挙げられる。
【0040】
ビニル基またはビニルエーテル基を持つ化合物の例としては、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのモノビニルエーテル類や、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニルなどのモノビニルエステル類、アジピン酸ジビニルなどのジビニルエステル類、N−ビニルピロリドン、N−メチル−N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類、スチレン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2,4,5−トリメチルスチレン、ペンタメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−ビニルビフェニル、3−ビニルビフェニル、4−ビニルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−ビニル−p−ターフェニル、1−ビニルアントラセン、α−メチルスチレン、o−イソプロペニルトルエン、m−イソプロペニルトルエン、p−イソプロペニルトルエン、2,4−ジメチル−α−メチルスチ
レン、2,3−ジメチル−α−メチルスチレン、3,5−ジメチル−α−メチルスチレン、p−イソプロピル−α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−クロロスチレンなどのスチレン誘導体、エチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,9−ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類や、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニルなどのジビニルアリール類などを挙げることができる。
【0041】
オキセタニル基を持つ化合物の例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンなどのモノオキセタニル化合物、東亞合成(株)社製アロンオキセタンOXT−121(商品名)OX−SQ(商品名)、新日鐵化学(株)社製OXTP(商品名)、OXBP(商品名)などの他官能オキセタン樹脂などが挙げられる。
【0042】
グリシジル基を持つ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0043】
シクロヘキセンオキサイド基を持つ化合物の例としては、ダイセル化学工業(株)社製セロキサイド2021P(商品名)、セロキサイド3000(商品名)、EHPE3150(商品名)、EHPE3150CE(商品名)があげられる。
【0044】
上記に例示した活性エネルギー線硬化性化合物の中では、エッチング工程における除去のしやすさの観点で、(メタ)アクリロイル基を持つシルセスキオキサン化合物が好適である。具体的には、下記(1)で示される構造の化合物が、ナノインプリントの成形性の点でも好適である。
【0045】
【化1】

【0046】
上記(1)に示した(メタ)アクリロイル基を持つシルセスキオキサン化合物は、オクタキスジメチルシリルオキシシルセスキオキサンとメタクリル酸アリルとをヒドロシリル
化反応させて得ることができる。オクタキスジメチルシリルオキシシルセスキオキサンとしては、アルドリッチ製のPSS−Octakis(dimethylsilyloxy)substituted)を用いることができる。
【0047】
なお、上記(1)に示した(メタ)アクリロイル基を持つシルセスキオキサン化合物は、(メタ)アクリロイル基と共重合できる官能基を持った化合物との共存下でラジカル重合を行って、硬化速度や粘度等を調整することができる。
【0048】
このような(メタ)アクリロイル基と共重合できる官能基を持った化合物としては、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基、マレイル基、フマル基等を持つ化合物が挙げられる。中でも特に(メタ)アクリロイル基持つ化合物が好ましく、(メ
タ)アクリル酸エステルの構造を1つ以上有するモノマーまたはオリゴマーが好適に用い
られる。
【0049】
前記(メタ)アクリル酸エステルの構造を1つ以上有するモノマーまたはオリゴマーとしては、単官能もしくは多官能の(メタ)アクリレートが使用できる。単官能もしくは多官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシフェニルエチル、エチレングリコールジ(メタ)クリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0050】
また(メタ)アクリロイル基と共重合できる官能基を持つ化合物として、さらには、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加させたいわゆるエポキシアクリレートも用いることが出来る。
【0051】
(メタ)アクリロイル基と共重合できる官能基を持つ化合物の他の例として、以下の化合物も挙げることができる。
【0052】
ポリイソシアネート化合物、たとえば、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、m−またはp−キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートまたはその変性物や重合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなど;
活性水素含有(メタ)アクリレート系モノマーとして、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールメタクリレートアクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどと反応させたウレタンアクリレートなども用いることが出来る。
【0053】
スチレン及びその誘導体も(メタ)アクリロイル基と共重合できる官能基を持つ化合物として用いることができ、例えば、スチレン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2,4,5−トリメチルスチレン、ペンタメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−ビニルビフェニル、3−ビニルビフェニル、4−ビニルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−ビニル−p−ターフェニル、1−ビニルアントラセン、α−メチルスチレン、o−イソプロペニルトルエン、m−イソプロペニルトルエン、p−イソプロペニルトルエン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、2,3−ジメチル−α−メチルスチレン、3,5−ジメチル−α−メチルスチレン、p−イソプロピル−α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロピルベンゼン等である。
【0054】
(メタ)アクリロニトリル及びその誘導体も(メタ)アクリロイル基と共重合できる官能基を持つ化合物として用いることができ、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等である。
【0055】
有機カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体も(メタ)アクリロイル基と共重合できる官能基を持つ化合物として用いることができ、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、アジピン酸ジビニル等である。
【0056】
有機カルボン酸のアリルエステル及びその誘導体も(メタ)アクリロイル基と共重合できる官能基を持つ化合物として用いることができ、例えば、酢酸アリル、安息香酸アリル、アジピン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル等である。
【0057】
フマル酸のジアルキルエステル及びその誘導体も(メタ)アクリロイル基と共重合できる官能基を持つ化合物として用いることができ、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−sec−ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジベンジル等である。
【0058】
マレイン酸のジアルキルエステル及びその誘導体も(メタ)アクリロイル基と共重合できる官能基を持つ化合物として用いることができ、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ−sec−ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、マレイ
ン酸ジベンジル等である。
【0059】
イタコン酸のジアルキルエステル及びその誘導体も(メタ)アクリロイル基と共重合できる官能基を持つ化合物として用いることができ、例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジ−sec−ブチル、イタコン酸ジイソブチル、イタコン酸ジ−n−ブチル、イタコン酸ジ−2−エチルヘキシル、イタコン酸ジベンジル等である。
【0060】
有機カルボン酸のN−ビニルアミド誘導体も(メタ)アクリロイル基と共重合できる官能基を持つ化合物として用いることができ、例えば、N−メチル−N−ビニルアセトアミド等である。
【0061】
マレイミド及びその誘導体も(メタ)アクリロイル基と共重合できる官能基を持つ化合物として用いることができ、例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等である。
【0062】
前記有機溶媒としては、前記活性エネルギー線硬化性化合物を溶解できる溶媒であれば、特に制限なく使用することが可能である。該有機溶媒の具体例としては、前記活性エネルギー線硬化性化合物骨格によって異なってくるが、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコールのようなアルコール類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、メチルエチルケトンのようなケトン類、ジグライム、トリグライム、テトラグライムのようなエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエステル類、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類が挙げられる。
【0063】
また、前記有機溶媒としては、超音波スプレーノズルから噴霧された後、速やかに蒸発出来るように沸点が低い方が望ましい。ただし、沸点があまりに室温に近いと安定的に送液することが困難になるので、好ましい沸点範囲としては、大気圧下で30〜300℃、より
好ましい範囲としては60〜220℃である。
【0064】
上記液状レジストインキは、超音波スプレーノズルシステムを用いて基板上に噴霧する場合、その粘度が重要となる。該粘度は、ローター番号18のB型粘度計において、25℃、2.5rpmで、10mPa・s以上500,000mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以上5,000mPa・s以下であることがより好ましい。前記液状レジストインキの粘度を前記範囲とするために、上記有機溶媒を用いて調整することも可能である。
【0065】
また、上記液状レジストインキ中に固形物を混合させてもよいが、該固形物は後の工程でのナノインプリントに悪影響を与えない程度の小さな微粒子であること好ましい。該固形物の粒子径は10nm以下であることが望ましい。前記固形物の具体例としては、ナノジルコニア(住友大阪セメント製)、ゾルゲル法超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学製)等が挙げられる。
【0066】
前記固形物の配合量は、UVナノインプリントを行う場合、液状レジストインキ中、40質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましい。熱ナノインプリントや加圧ナノインプリントを行う場合、液状レジストインキ中、70質量%以下と
することが好ましく、50質量%以下とすることがより好ましい。有機溶媒を揮発させた
後、液状レジストインキ中の固形分があまりに多いと、UVナノインプリントを行う際に硬化不良を起こしやすく、更に強靱性の観点での機械強度が低下する傾向がある。熱ナノインプリントや加圧ナノインプリントを行う際は、機械強度が低下する傾向がある。
【0067】
また、本発明の塗布方法は、前記液状レジストインキを、エッジマスクを介して基板上に噴霧することが好ましい。
【0068】
前記エッジマスクを構成する材料としては、ステンレスなどの金属、ポリアミド、発泡ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂などの樹脂が挙げられ、中でもアクリル樹脂が、耐溶剤性および無色透明性の点で好ましい。
【0069】
媒体加工時にエッチング処理条件によっては磁性膜にバイアスをかけてエッチングの方向性、速度を制御することがある。したがって、基板、例えばハードディスク基板の外周部分は、レジストを除去して、導電性を持たせることが望ましい。ハードディスク基板の外周部分のレジストを除去するために、スピンコートの場合にはエッジリンスと称する煩雑な工程が必要である。一方、スプレーノズルシステムの場合には、前記エッジマスクを用いることで、エッジリンスをすることなく、外周部分に液状レジストインキが塗布されていないハードディスク基板を得ることができる。外周部分とは、基板の外側から数mmから数10mm内側までの部分をいう。前記エッジマスクは、前記外周部分を覆うような構造を有する。該エッジマスクで基板上の外周部分(エッジ部分)を覆って液状レジストインキを噴霧することにより、外周部分(エッジ部分)にレジストが塗布されることを防止できる。
【0070】
また、液状レジストインキの基板裏側への回り込みがないこと、およびナノインプリント時の転写性を向上させることを両立させるために、液状レジストインキは、ある程度の粘性とチクソ性とを持っていることが望ましい。
【0071】
溶媒等を揮発させた後の液状レジストインキの粘度としては、ローター番号18のB型粘度計において、25℃、2.5rpmで、20mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以上10,000mPa・s以下であることがより好ましい。溶媒等を揮発させた後の液状レジストインキのチクソ性としては、ローター番号18のB型粘度計において、25℃で、5rpmのときの粘度と50rpmのときの粘度との比(5rpmのときの粘度/50rpmのときの粘度;チクソトロピー係数)が、好ましくは1.01以上10以下であり、より好ましくは1.1以上5以下である。
【0072】
このような特性を有する液状レジストインキとするために、塗布やエッチング特性に影響を与えない範囲で、チクソ剤を用いることができる。チクソ剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、コロイド状シリカ、水素添加ヒマシ油、有機ベントナイト等が挙げられ、これらの1種以上が用いられる。
【0073】
本発明に用いる基板は、ガラス板などの非磁性体からなる基体上に磁性層が形成されたものが好ましい。
【0074】
前記磁性層は、通常スパッタ法により薄膜として形成することができ、面内磁気記録媒体用の磁性層でも垂直磁気記録媒体用の磁性層でもかまわない。このような磁性層は主としてCoを主成分とする合金から形成することが好ましい。
【0075】
例えば、面内磁気記録媒体用の磁性層としては、非磁性のCrMo下地層と強磁性のCoCrPtTa磁性層からなる積層構造が利用できる。
【0076】
垂直磁気記録媒体用の磁性層としては、例えば軟磁性のFeCo合金(FeCoB、FeCoSiB、FeCoZr、FeCoZrB、FeCoZrBCuなど)、FeTa合
金(FeTaN、FeTaCなど)、Co合金(CoTaZr、CoZrNB、CoBなど)等からなる裏打ち層と、Pt、Pd、NiCr、NiFeCrなどの配向制御膜と、必要によりRu等の中間膜、及び60Co−15Cr−15Pt合金や70Co−5Cr−15Pt−10SiO2 合金からなる磁性層を積層したものを利用することができる。
【0077】
前記磁性層の厚さは、好ましくは3nm以上20nm以下、より好ましくは5nm以上15nm以下とする。
【0078】
前記磁性層の表面にはさらに保護膜層を形成させてもよい。前記保護膜層は、通常スパッタ法により薄膜として形成させることができる。前記保護膜層としては、炭素(C)、水素化炭素(HxC)、窒素化炭素(CN)、アモルファスカーボン、炭化珪素(SiC)等の炭素質層やSiO2 、Zr23、TiNなどを用いることができる。また、前記保護膜層は2層以上の層から構成されていてもよい。
【0079】
前記保護膜層の膜厚は10nm未満とすることが好ましい。前記保護膜層の膜厚が10nm以上とするとヘッドと磁性層との距離が大きくなり、充分な出入力信号の強さが得られない場合がある。
【0080】
超音波スプレーノズルシステムを用いて、所定量の液状レジストインキを基板上に均一に噴霧するための方法としては、超音波ノズルを鉛直下向きに設置し、その下方に基板を水平方向にセットし、所定量の液状レジストインキを塗布するまでの噴霧時間あるいは基板滞留時間を制御する方法を例示することができる。
【0081】
さらには気流の変動による噴霧状態のばらつきを低減するために、できるだけ密閉された槽内に上記超音波スプレーノズルシステムを組み入れ、前記槽内に基板を一定時間滞留させる方法を用いることもできる。
【0082】
この場合、コンベアに複数の基板を乗せて、前記槽内を連続的にコンベアが一定速度で移動する方法が効率的で好ましい。また前記槽の底面については、均一に噴霧される有効噴霧面を予め確認しておき、その有効噴霧面の内部を基板が通過するように調整することが好ましい。
【0083】
上記液状レジストインキの基板上への塗布量は、次工程の凹凸賦形を安定的に行うという観点から、上記液状レジストインキ塗布により形成される層(以下「液状レジストインキ層」とも記す。)の厚さが50〜200nmになる量であることが好ましい。また、塗布を複数回行うことによって塗布面のムラを無くすこともできる。
【0084】
上記液状レジストインキが塗布された基板は、必要に応じて乾燥してもよい。上記液状レジストインキに多量の溶媒が含有する場合には、例えば100℃で約1時間の乾燥を行
うことが好ましい。当該乾燥後、液状レジストインキ層に凹凸パターンを形成する。
【0085】
前記凹凸パターンは、該凹凸パターンとは逆パターンの形状を有するスタンパを、基板上に塗布された上記液状レジストインキ層に押し付けて形成されることが好ましい。
【0086】
凹凸パターンの形成の具体例としては、前記スタンパと押圧基盤との間に基板を挟み込み、規定の圧力で上述したように押し付ける方法が挙げられる。この操作により凹凸パターンを有する液状レジストインキ層を形成することができる。
【0087】
前記スタンパは石英ガラスやNi合金などの精密加工が可能な材料からなる。このスタンパにより現状の成形加工技術で微細な凹凸パターンを精密に形成することができる。前
記スタンパとしては、前記材料から成るメタルプレートなどが挙げられる。
【0088】
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、基体上に磁性層を備えた基板上に、上述の凹凸パターンの形成方法により、凹凸パターンを有する液状レジストインキ層を形成する工程と、前記液状レジストインキ層を硬化させて、凹凸パターンを有する転写層を形成する工程と、前記凹凸パターンを有する転写層をエッチングし、凹部の厚さ分を除去して前記磁性層表面の一部を露出させる工程と、残存する前記転写層をマスクとして用いて、前記磁性層の露出部を除去または前記磁性層の露出部を非磁性化する工程とを、この順序で含むことを特徴としている。
【0089】
<転写層形成工程>
上述のスタンパが活性エネルギー線を透過する材料からなる場合には、スタンパの表面に基板を押しつけた状態のまま、スタンパ側から活性エネルギー線を照射することで液状レジストインキ層を硬化させて、転写層を形成することができる。前記スタンパが活性エネルギー線を透過しない場合には、スタンパを剥離した後に活性エネルギー線を基板に照射して液状レジストインキ層を硬化させて、転写層を形成することができる。
【0090】
上述した(メタ)アクリロイル基を持つシルセスキオキサン化合物の硬化物は、フッ素系ガスと酸素ガスとのエッチング速度の選択性が高い。したがって、活性エネルギー線硬化性化合物として、上述した(メタ)アクリロイル基を持つシルセスキオキサン化合物を用いると、上述のとおり形成された転写層は、酸素などのエッチングガスに対して耐性が高くなるのでエッチングの度合いを容易に制御することができ、また、除去する際に用いられるCF4などのフッ素系ガスに対しては耐性が低くなるので容易に除去される。従っ
て、前記微細な凹凸パターンを有する転写層は、優れたレジストとなるので、半導体や磁気記録媒体をはじめとした幅広い用途に適用可能である。
【0091】
<底抜き工程>
前記凹凸パターンを有する転写層をエッチングし、凹部の厚さ分を除去することにより、前記磁性層表面の一部を露出させる。例えば、まずレジスト材からなる転写層を侵食しやすいガス(例えばCF4などのフッ素系ガス)によって、レジスト材からなる転写層表
面をエッチングし凹部の厚さ分を除去して前記磁性層表面の一部を露出させることができる。
【0092】
磁性層表面に保護膜層が形成されている場合は、当該エッチングまたは別のエッチングにより、磁性層表面の一部を露出させることができる。
【0093】
<磁性層露出部の除去工程もしくは非磁性化工程>
残存する前記転写層をマスクとして用いて、前記磁性層の露出部を除去または前記磁性層の露出部を非磁性化し、前記転写層に形成された凹凸パターンに沿って、基板上の磁性層に凹凸パターンを形成することができる。
【0094】
磁性層に凹凸パターンを形成させる方法としては、例えば、前記磁性層表面の一部を露出させた後、磁性層を侵食しやすいガス(例えば酸素など)によって、磁性層の露出部を除去するか、あるいは非磁性化処理する方法が挙げられる。
【0095】
こうした方法により、凹凸の線幅寸法が10μm以下のパターン、つまり1つの凹の線幅と1つの凸の線幅との合計が10μm以下である微細な凹凸パターンを有する磁性層を形成することができる。好ましくは凹部と凸部との幅がそれぞれ20〜200nm程度の微細な凹凸パターンを有する磁性層を形成することができる。
【0096】
上述の磁性層の露出部の除去加工もしくは非磁性化の後、改めて残存しているレジスト材からなる転写層をエッチングによって除去することにより、磁気記録媒体を得ることができる。
【0097】
当該製造方法により、微細な凹凸パターンが形成された磁性層を有する磁気記録媒体を得ることができる。当該製造方法により得られた磁気記録媒体を磁気記録再生装置に組み込むことにより、従来と同等以上の記録再生特性を確保しつつ、記録密度を大幅に増加した磁気記録再生装置を製造することができる。
【実施例】
【0098】
[実施例1]
[超音波スプレーノズルシステム:Sono-Tek Corporation製]
超音波発生装置・・・PV-06-05108 動作周波数:20-120 Hz
圧電変換器・・・セラミック圧電変換器(Sono-Tek Corporation製)
振動増幅器・・・チタン製ホーン(前および後)
液体供給・・・シリンジポンプ
超音波ノズル・・・Model:870-120、 動作周波数: 120 Hz
[液状レジストインキの調製]
下記構造式で表される硬化性化合物50質量部と、有機溶媒(ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート)50質量部とを混合し、液状レジストインキを調製した。このようにして得られた液状レジストインキの粘度は、ローター番号18のB型粘度計において、25℃、2.5rpmで、1,170mPa・sであった。
【0099】
【化2】

【0100】
[基板]
ガラス板上に磁性層を形成したハードディスク基板と用いた。
【0101】
[塗布]
上記超音波スプレーノズルシステムを用いて、上記調製した液状レジストインキを、上記基板上に噴霧した。噴霧方法は、コンベア式で間歇的に基板表面に塗布する方法とした。
【0102】
塗布条件は以下のとおりとした。
【0103】
流量・・・0.15ml/秒
基板1枚当たりの使用量・・・約0.45ml(塗布時間は1枚当り3秒)
層厚・・・約50nm
塗布された液状レジストインキ層は、均一性が良好で、目視観察で外観に不具合は見られなかった。また、液状レジストインキの基板裏側への回り込みは観察されなかった。また、液状レジストインキのロス率は5%未満であった。
【0104】
[比較例1]
スピンコート法により、上記調製した液状レジストインキを、上記基板上に以下の条件により塗布した。
【0105】
基板1枚当たりの使用量・・・4ml
層厚・・・約50nm
塗布された液状レジストインキ層は、均一性が良好で、目視観察で外観に不具合は見られなかった。また、液状レジストインキの基板裏側への回り込みは、裏側の外周付近に数mmの幅で観察された。また、液状レジストインキのロス率は99%以上であった。
【符号の説明】
【0106】
12 スタンパ
14 液状レジストインキ層
16 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレーノズルシステムを用いて、液状レジストインキを基板上に噴霧することを特徴とする凹凸パターン形成用液状レジストインキの塗布方法。
【請求項2】
前記スプレーノズルシステムが超音波スプレーノズルシステムである請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記超音波スプレーノズルシステムが、超音波発生装置、圧電変換器、振動増幅器および超音波ノズルを有することを特徴とする請求項2に記載の塗布方法。
【請求項4】
前記超音波ノズルに沿って定常波振動が発生し、該超音波ノズルの先端でその振幅が最大となることを特徴とする請求項3に記載の塗布方法。
【請求項5】
前記液状レジストインキを、エッジマスクを介して基板上に噴霧することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塗布方法。
【請求項6】
前記液状レジストインキが、活性エネルギー線硬化性化合物および有機溶媒を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の塗布方法。
【請求項7】
前記基板が基体上に磁性層が形成されたものであり、該磁性層上に液状レジストインキを噴霧することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の塗布方法。
【請求項8】
液状レジストインキ層に凹凸パターンを形成する方法であって、該凹凸パターンとは逆パターンの形状を有するスタンパを、請求項1〜7のいずれかに記載の塗布方法により基板上に塗布された液状レジストインキ層に押し付けることを特徴とする凹凸パターンの形成方法。
【請求項9】
基体上に磁性層を備えた基板上に、請求項8に記載の凹凸パターンの形成方法により、凹凸パターンを有する液状レジストインキ層を形成する工程と、
前記液状レジストインキ層を硬化させて、凹凸パターンを有する転写層を形成する工程と、
前記凹凸パターンを有する転写層をエッチングし、凹部の厚さ分を除去して前記磁性層表面の一部を露出させる工程と、
残存する前記転写層をマスクとして用いて、前記磁性層の露出部を除去または前記磁性層の露出部を非磁性化する工程とを、この順序で含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−179203(P2010−179203A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22750(P2009−22750)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】