説明

凹凸形成方法及び防眩フィルム

【課題】可撓性透明支持体上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布し形成された塗膜に表面粗さの変更或いは、凸部のパターンの変更が容易で、凹凸形状を安定に形成する凹凸形成方法及びこの凹凸形成方法により作製された防眩フィルムの提供。
【解決手段】連続搬送される可撓性透明支持体の上に形成された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜面に凹凸形状を形成する凹凸形成方法において、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗布工程と、前記塗膜面にスポット光照射装置より出射されたスポット状の活性エネルギー線を照射するスポット光照射工程と、前記スポット光照射工程の後に、前記塗膜面の全面に活性エネルギー線を照射する全面照射工程とを有することを特徴とする凹凸形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性透明支持体上に形成された塗膜に凹凸形状を形成する凹凸形成方法及びこの凹凸形成方法により作製された防眩フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に基材の上に、凹凸形状を有した層を形成する方法としては、二酸化ケイ素(シリカ)等のフィラーを含む樹脂を塗工して形成する方法、凝集シリカ等の不定形シリカの二次凝集体により凹凸形状を形成する方法、基材の表面に凹凸を持ったフィルムをラミネートする方法、有機ビーズを樹脂中に添加して凹凸形状を形成する方法、微細な凹凸形状を有する転写ロールを用いて長尺の樹脂フィルム表面に微細な凹凸形状を連続的に形成する方法等が提案されている。
【0003】
この様な基材の上に、凹凸形状を有した層を有するフィルムの特性の一つとしての乱反射を利用して防眩フィルムとして使用されている。例えば、CRT、PDP(プラズマディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)パネル等のディスプレイ表示装置において、外光の反射や蛍光灯等の写り込みによる視認性の低下を抑制するために、ディスプレイの最表面に配置されている。
【0004】
ディスプレイ表示装置に使用する防眩フィルムを上記の様な方法によると、防眩層の表面形状の予測可能性が低く、数多くの試行錯誤を経ないと目的の表面形状を得られない、表面形状の調節が容易には出来ないといった問題点があり検討がなされてきた。
【0005】
例えば、電離放射線硬化型樹脂を塗布し塗膜を形成した後、電離放射線の透過部と非透過部を有するマスクを使用し、電離放射線照射を行った後、マスクを外して電離放射線を全面照射することで、電離放射線硬化型樹脂の硬化の程度が異なる部分を形成することにより硬化収縮差により凹凸形状を形成する方法が知られている(特許文献1参照。)。
【0006】
特許文献1に記載の方法では、使用するマスクを選定することで表面形状の予測可能性が高く、凹凸分布、凹凸形状等を調整することが容易となる面では優れているが、特許文献1に記載のマスクを使用した方法で作製する場合の問題点を図7を参照しながら説明する。
【0007】
図7はマスクを使用した方法で作製した凹凸形状の概略図である。図7(a)は特許文献1に記載のマスクを使用した方法で作製した凹凸形状の概略平面図である。図7(b)は図7(a)のN−N′に沿った拡大概略断面図である。
【0008】
図中、201jは可撓性透明支持体の上に形成された凸形状部を示す。201j3は凸形状部201j間に形成された凹形状部を示す。凸形状部201jの形状は、周囲201j1が高く、中央部201j2が窪んだ形状をしている。この様な形状は、マスクを介して電離放射線を照射すると光回折の影響により光透過部(スポット)の周辺部が高強度になるため、1つの光透過部(スポット)の領域内で周辺部の凹凸部高さが中心部より高い形状となることが知られている。この様な形状になることで次の問題点が挙げられる。
1.図7に示す様な形状は電離放射線を照射した時の光回折により発生するため、その形状の制御が難しく、高さの異なる凸形状部の配置が出来難くなり、凹凸形状のパターンの変更に制約がかかる。
2.光透過部の形状変更が複雑である。又、規則的な形状(孔径及び配置)を使用して防眩フィルムを製造した場合、モアレが生じる。
3.搬送される支持体とマスクの高精度な同期が要求される。
【0009】
この様な、状況から、可撓性透明支持体上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布し形成された塗膜に凸部の高さ或いは、凸部のパターンの変更が容易で、凹凸形状を安定に形成する凹凸形成方法及びこの凹凸形成方法により作製された防眩フィルムの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−095836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は可撓性透明支持体上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布し形成された塗膜に凸部の高さ或いは、凸部のパターンの変更が容易で、凹凸形状を安定に形成する凹凸形成方法及びこの凹凸形成方法により作製された防眩フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0013】
1.連続搬送される可撓性透明支持体の上に形成された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜面に凹凸形状を形成する凹凸形成方法において、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗布工程と、前記塗膜面にスポット光照射装置より出射されたスポット状の活性エネルギー線を照射するスポット光照射工程と、前記スポット光照射工程の後に、前記塗膜面の全面に活性エネルギー線を照射する全面照射工程とを有することを特徴とする凹凸形成方法。
【0014】
2.前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、少なくとも1種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有することを特徴とする前記1に記載の凹凸形成方法。
【0015】
3.前記スポット光照射工程は、少なくとも1台のスポット状の活性エネルギー線を照射する照射装置を使用していることを特徴とする前記1又は2に記載の凹凸形成方法。
【0016】
4.前記スポット光照射工程は、可撓性透明支持体の搬送方向に沿って複数配設されていることを特徴とする前記1又は2に記載の凹凸形成方法。
【0017】
5.前記活性エネルギー線が紫外線レーザーであることを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の凹凸形成方法。
【0018】
6.前記スポット状の活性エネルギー線の光強度分布が、中心部≧周縁部であることを特徴とする前記1から5の何れか1項に記載の凹凸形成方法。
【0019】
7.前記1から6の何れか1項に記載の凹凸形成方法を用いて製造したことを特徴とする防眩フィルム。
【発明の効果】
【0020】
可撓性透明支持体上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布し形成された塗膜に凸部の高さ或いは、凸部のパターンの変更が容易で、凹凸形状を安定に形成する凹凸形成方法及びこの凹凸形成方法により作製された防眩フィルムを提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】連続搬送される可撓性透明支持体の上に形成された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜面に凹凸形状を形成する凹凸形成工程の模式図である。
【図2】図1に示されるスポット光照射工程のスポット光照射装置の配置を示す概略平面図である。
【図3】図1に示されるスポット光照射工程に使用されるスポット光照射装置の一例を示す模式図である。
【図4】図2(a)に示される配置のスポット光照射装置を使用して可撓性透明支持体の上に形成した凹凸形状の一例を示す概略図である。
【図5】図2(a)に示される配置のスポット光照射装置の内、1台を使用して可撓性透明支持体の上に形成した凹凸形状の一例を示す概略図である。
【図6】図2(b)に示される配置のスポット光照射装置を使用して可撓性透明支持体の上に形成した凹凸形状の一例を示す概略図である。
【図7】マスクを使用した方法で作製した凹凸形状の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態を図1から図6を参照しながら説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
図1は連続搬送される可撓性透明支持体の上に形成された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜面に凹凸形状を形成する凹凸形成工程の模式図である。
【0024】
図中、1は凹凸形成工程を示す。凹凸形成工程1は、可撓性透明支持体2を供給する供給工程101と、可撓性透明支持体2の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布し塗膜を形成する塗布工程102と、塗膜から溶媒を除去する溶媒除去工程103と、形成された塗膜面にスポット状の活性エネルギー線を照射するスポット光照射工程104と、塗膜面の全面に非スポット状の活性エネルギー線を照射する全面照射工程105と、巻き取り回収工程106とを有している。
【0025】
塗布工程102は、供給工程101から供給されてくる可撓性透明支持体2を保持するバックアップロール102aと、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をバックアップロール102aに保持された可撓性透明支持体2の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布するダイコーター102bとを使用している。
【0026】
可撓性透明支持体2に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する方法は、特に限定はなく、例えば一定の塗布液を塗布した後に不要分を除去して塗膜を形成する後計量型塗布方式、必要な塗布液膜を形成する量だけ塗布液を吐出させて支持体上に塗布液を塗布する前計量型塗布方式であっても構わなく、必要に応じて適宜選択することが可能である。後計量型塗布方式としては、ブレード塗布法、エアーナイフ塗布法、ワイヤーバー塗布法、グラビア塗布法、リバース塗布法、リバースロール塗布法が知られている。
【0027】
前計量型塗布方式としては、スリット型ダイコーターを用いたエクストルージョン塗布法、スライドコーターを用いたスライド塗布法、カーテン塗布法、インクジェットヘッドを用いた塗布法が知られている。本図は前計量型塗布方式で塗布している場合を示している。
【0028】
溶媒除去工程103は、塗布工程102で可撓性透明支持体2の上に形成された塗膜から溶媒を除去するための溶媒除去手段を使用している。溶媒除去手段としては特に限定はなく、例えば、温風吹き付け装置、加熱装置等が挙げられる。
【0029】
溶媒除去手段で溶媒を除去する条件は使用する溶媒、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の種類等により変わるため一義的に決めることは困難であるが、スポット光照射工程104に入る時の残留溶媒量を、スポット照射時の塗膜粘度、表面張力等を考慮し、0.001g/mから0.1g/mになる様な条件を適宜決めることが好ましい。又、溶媒除去工程103は、使用する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の種類によっては使用しない場合もある。
【0030】
スポット光照射工程104は、塗布工程102で可撓性透明支持体2の上に形成された塗膜面にスポット状の活性エネルギー線を照射するスポット光照射装置104aを使用している。スポット光照射工程104に付いては図2、図3で詳細に説明する。
【0031】
スポット光照射工程104は、可撓性透明支持体2の搬送方向(図中の矢印方向)に沿って複数配設されていても構わない。塗膜面の上に形成する凹凸形状の配置パターン、凹凸形状の大きさ、凹凸形状の数等必要に応じて適宜選定することが可能となっている。
【0032】
全面照射工程105は、スポット光照射工程104でスポット光照射装置104aより出射されたスポット状の活性エネルギー線を照射された塗膜の全面に非スポット状の活性エネルギー線を照射する照射装置105aを使用している。
【0033】
全面に活性エネルギー線を照射することでスポット光照射装置104aより出射されたスポット状の活性エネルギー線が照射されなかった部分も硬化し、凹凸形状を形成した塗膜面が形成される。
【0034】
スポット光照射工程104でスポット光照射装置104aより出射されたスポット状の活性エネルギー線が照射された後、全面照射工程105で塗膜の全面に非スポット状の活性エネルギー線を照射するまでの時間は、塗膜表面に形成された凹凸形状のレベリングを考慮し、0.1secから180secが好ましく、より好ましくは0.1secから30secである。
【0035】
本発明に使用することが出来る活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、γ線等で、パターン状に形成された活性エネルギー線硬化型樹脂を活性化させるエネルギー源であれば制限なく使用出来るが、紫外線、電子線が好ましい。特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。又、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、YAG−THGレーザー、YAG−FHGレーザー、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光等も用いることが出来る。スポット状の活性エネルギー線を照射するには紫外線レーザーを使用することが好ましい。
【0036】
照射条件はそれぞれの光源によって異なるが、照射光量は1mJ/cm以上が好ましく、更に好ましくは、20mJ/cmから10000mJ/cmであり、特に好ましくは、50mJ/cmから2000mJ/cmである。
【0037】
又、電子線も同様に使用出来る。電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50keVから1000keV、好ましくは100keVから300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることが出来る。
【0038】
本発明においては、活性エネルギー線照射の時の雰囲気中の酸素濃度が10%以下、特に1%以下であることが好ましい。該雰囲気にするには窒素ガス等を導入することが有効である。
【0039】
又、本発明においては、活性エネルギー線の硬化反応を効率的に進めるため、可撓性透明支持体を加熱することも出来る。加熱方法としては、特に制限はないが、ヒートプレート、ヒートロール等の使用が挙げられる。
【0040】
加熱温度としては、使用する活性光線硬化型樹脂の種類により一概には規定出来ないが、基材フィルムへの熱変形等の影響を与えない温度範囲であることが好ましく、30℃から200℃が好ましく、更に50℃から120℃が好ましく、特に好ましくは70℃から100℃である。
【0041】
スポット光照射工程104でスポット光照射装置104aより出射されたスポット状の活性エネルギー線とは、活性エネルギー線の照射によって活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有する塗膜の厚み方向の一部若しくは全部を硬化させることが可能なエネルギーを有するスポット径が1mm未満の活性エネルギー線を言う。
【0042】
全面照射工程105で照射する非スポット状の活性エネルギー線とは、スポット状の活性エネルギー線のスポット径の1mm以上、好ましくは可撓性透明支持体2の幅全体に照射される活性エネルギー線を言う。
【0043】
図2は図1に示されるスポット光照射工程のスポット光照射装置の配置を示す概略平面図である。図2(a)は3台のスポット光照射装置を配置した概略平面図である。図2(b)は可撓性透明支持体の片側に2台のスポット光照射装置を配置した概略平面図である。図2(c)は可撓性透明支持体を挟んで2台のスポット光照射装置を配置した概略平面図である。
【0044】
図2(a)に付き説明する。
【0045】
図中、104a1は可撓性透明支持体2の搬送方向(図中のA矢印方向)に対して左側端(図の上側)に配置されたスポット光照射装置を示す。104a2は可撓性透明支持体2の搬送方向(図中のA矢印方向)に対して右側端(図の下側)に配置されたスポット光照射装置を示す。104a3は可撓性透明支持体2の搬送方向(図中のA矢印方向)に対して中央(図の中央)に配置されたスポット光照射装置を示す。
【0046】
スポット光照射装置の配置する台数は、塗膜面の上に形成する凹凸形状の配置パターン、凹凸形状の大きさ、凹凸形状の数等必要に応じて適宜選定することが可能となっている。本図ではスポット光照射装置の配置の1例として3台を配置した場合を示している。
【0047】
スポット光照射装置104a1から出射されたスポット状の活性エネルギー線がB矢印で示される走査方向に向けて膜面に照射される場合を示している。スポット光照射装置104a2から出射されたスポット状の活性エネルギー線がC矢印で示される走査方向に向けて膜面に照射される場合を示している。スポット光照射装置104a3から出射されたスポット状の活性エネルギー線がD矢印で示される走査方向に向けて膜面に照射される場合を示している。
【0048】
本図はスポット光照射装置104a1及びスポット光照射装置104a2は可撓性透明支持体2の搬送方向(図中のA矢印方向)と逆方向に角度を持たせて走査する場合を示しているが、可撓性透明支持体2の搬送方向(図中のA矢印方向)と同じ方向であってもよい。
【0049】
走査は一方向走査の繰り返しが好ましい。
【0050】
本図に示される様に、配置された各スポット光照射装置から出射されるスポット状の活性エネルギー線の照射方向を適宜組み合わせることで必要に応じた凹凸形状の配置パターンを作製することが可能となる。
【0051】
更に、本図に示す様にスポット光照射工程に3台のスポット光照射装置(104a1から104a3)を有するスポット光照射工程104を連続して可撓性透明支持体2の搬送方向(図中のA矢印方向)に配設することで更に緻密な凹凸形状を塗膜面上に形成することが可能である。
【0052】
尚、各スポット光照射装置(104a1から104a3)から出射されるスポット状の活性エネルギー線のスポット径、強度、走査速度、照射するタイミング等の制御は独立にすることが好ましい。独立に制御することで、塗膜に照射するスポット状の活性エネルギー線のスポット径、強度、位置、時間を制御することが可能となっている。
【0053】
図2(b)に付き説明する。
【0054】
図中、104a4は可撓性透明支持体2の搬送方向(図中のA矢印方向)に対して左側端(図の上側)に配置されたスポット光照射装置を示す。104a5は可撓性透明支持体2の搬送方向(図中のA矢印方向)に対してスポット光照射装置104a4の下流側に配置されたスポット光照射装置を示す。
【0055】
スポット光照射装置の配置する台数は、塗膜面の上に形成する凹凸形状の配置パターン、凹凸形状の大きさ、凹凸形状の数等必要に応じて適宜選定することが可能となっている。本図ではスポット光照射装置の配置の1例として2台を配置した場合を示している。
【0056】
スポット光照射装置の配置位置は、可撓性支持体の搬送方向に対して左右・中央何れでもよく、複数台配置する場合においても同様である。
【0057】
スポット光照射装置104a4から出射されるスポット状の活性エネルギー線がE矢印で示される走査方向に向けて膜面に照射される場合を示している。スポット光照射装置104a5から出射されるスポット状の活性エネルギー線がF矢印で示される走査方向に向けて膜面に照射される場合を示している。
【0058】
スポット光照射装置から出射されるスポット状の活性エネルギー線の走査は、可撓性支持体の搬送方向に対し略垂直方向に往復動でも、一方向でもよいが、スキャン精度を確保するためには一方向が好ましい。又、複数台のスポット光照射装置からのスキャンは、同一方向でも、互いに向かい合う方向でもよい。
【0059】
本図に示される様に、配置された各スポット光照射装置から出射されるスポット状の活性エネルギー線の照射方向を適宜組み合わせることで必要に応じた凹凸形状の配置パターンを作製することが可能となる。
【0060】
更に、本図に示す様にスポット光照射工程に2台のスポット光照射装置(104a4及び104a5)を有するスポット光照射工程104を連続して可撓性透明支持体2の搬送方向(図中のA矢印方向)に配設することで更に緻密な凹凸形状を塗膜面上に形成することが可能である。
【0061】
尚、各スポット光照射装置(104a4及び104a5)から出射されるスポット状の活性エネルギー線のスポット径、強度、走査速度、照射するタイミング等の制御は独立にすることが好ましい。独立に制御することで、塗膜に照射するスポット状の活性エネルギー線のスポット径、強度、位置、時間を不規則に制御することが可能となっている。
【0062】
図2(c)に付き説明する。
【0063】
図中、104a6は可撓性透明支持体2の搬送方向(図中のA矢印方向)に対して左側端(図の上側)に配置されたスポット光照射装置を示す。104a7は可撓性透明支持体2の搬送方向(図中のA矢印方向)に対して右側端(図の下側)に配置されたスポット光照射装置を示す。
【0064】
スポット光照射装置の配置する台数は、塗膜面の上に形成する凹凸形状の配置パターン、凹凸形状の大きさ、凹凸形状の数等必要に応じて適宜選定することが可能となっている。本図ではスポット光照射装置の配置の1例として2台を配置した場合を示している。
【0065】
スポット光照射装置104a6から出射されるスポット状の活性エネルギー線がG矢印で示される走査方向に向けて膜面に照射される場合を示している。スポット光照射装置104a7から出射されるスポット状の活性エネルギー線がH矢印で示される走査方向に向けて膜面に照射される場合を示している。
【0066】
本図は、スポット光照射装置104a6が可撓性透明支持体2の搬送方向(図中のA矢印方向)と逆方向に角度を持たせて走査する場合を示している。スポット光照射装置104a7は可撓性透明支持体2の搬送方向(図中のA矢印方向)と同じ方向に角度を持たせて走査する場合を示している。勿論、スポット光照射装置104a6は可撓性透明支持体2の搬送方向(図中のA矢印方向)と同方向に角度を持たせて走査しても構わない。走査は一方向走査の繰り返しが好ましい。
【0067】
本図に示される様に、配置された各スポット光照射装置から出射されるスポット状の活性エネルギー線の照射方向を適宜組み合わせることで必要に応じた凹凸形状の配置パターンを作製することが可能となる。
【0068】
更に、本図に示す様にスポット光照射工程に2台のスポット光照射装置(104a6及び104a7)を有するスポット光照射工程104を連続して可撓性透明支持体2の搬送方向(図中のA矢印方向)に配設することで更に緻密な凹凸形状を塗膜面上に形成することが可能である。
【0069】
尚、各スポット光照射装置(104a6及び104a7)から出射されるスポット状の活性エネルギー線のスポット径、強度、走査速度、照射するタイミング等の制御は独立にすることが好ましい。独立に制御することで、塗膜に照射するスポット状の活性エネルギー線のスポット径、強度、位置、時間を制御することが可能となっている。
【0070】
図2(a)から(c)に示される各スポット光照射装置から出射されるスポット状の活性エネルギー線のスポットの走査方向は、可撓性支持体の搬送方向に対し垂直な方向となす角をθ[rad]、可撓性支持体の搬送速度V[m/sec]、スポットの走査速度V[m/sec]、可撓性支持体の幅L[m]、一つのスポット光照射装置による搬送方向のピッチp[m]とした場合、次式を満たす範囲であることが好ましい。
【0071】
cosθ ≧ (V/V)・(p/L)
可撓性支持体面とスポット走査線群により形成される面との最大角度(照射角度)は、可撓性支持体上に形成されるスポット形状を考慮して、90±5°が好ましい。
【0072】
各スポット光照射装置(104a1から104a7)から出射されるスポット状の活性エネルギー線のスポット径、強度、走査速度、照射するタイミング等の制御に関しては図3で説明する。
【0073】
各スポット光照射装置(104a1から104a7)としては、市販品のスポット光照射装置を使用することが可能であり、例えば次のスポット光照射装置を挙げられる。
【0074】
市販のYAG−THGレーザーの一例としては、例えばミヤチテクノス(株)製ML−9602Aを挙げられる。塗膜面上の走査速度等により適宜選定出来る。
【0075】
図3は図1に示されるスポット光照射工程に使用されるスポット光照射装置の一例を示す模式図である。尚、本図は活性エネルギー線として紫外線レーザー光を使用した場合を示している。
【0076】
図中、104aはスポット光照射装置を示す。スポット光照射装置104aは、レーザー発振器を含む紫外線レーザー光源3、反射ミラー4、スイッチング用可動ミラー5、光走査光学系6とを有している。紫外線レーザー光源3は、集光レンズ等の光学系(不図示)を有している。
【0077】
光走査光学系6は、回転多面鏡601と、fθレンズ602とを有している。201は可撓性透明支持体2の上に形成された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を示す。尚、紫外線レーザー光源3にパルス型の紫外線レーザー光源を使用した場合はスイッチング用可動ミラー5は不要となる。
【0078】
スイッチング用可動ミラー5は、ON/OFFすることで走査光603を、スポット光にし、ON/OFFするタイミングにより、塗膜201の上を照射する間隔を制御することが可能となっている。
【0079】
回転多面鏡601は、回転することで塗膜201上を走査しスポット状の活性エネルギー線603を膜面に照射する様になっており、回転する速度で照射時間及びスポット径の制御、又回転多面鏡601の面の方向でスポット状の活性エネルギー線603の走査方向の制御が可能となっている。
【0080】
fθレンズ602は、fθレンズ602の形状を変えることで紫外線レーザー光301のスポット径を制御することが可能となっている。又、スポット径は紫外線レーザー光源3から出射されるビーム径を変えることでも制御することが可能となっている。
【0081】
光走査光学系6は紫外線レーザー光を走査するための機構であれば、回転多面鏡601とfθレンズ602との組み合わせ以外でも構わない。更に、スイッチング用可動ミラー5は、これに限られず、光走査光学系6に同期した回折格子型の反射スイッチング素子やDMDなどの反射スイッチング素子などを使用して、レーザー光のON/OFFを制御するものでもよい。以上により、スイッチング用可動ミラー5のスイッチング素子と光走査光学系6を組み合わせて任意の部分に紫外線レーザー光を照射出来る様になる。
【0082】
可撓性透明支持体2の搬送系の制御と、スポット光照射装置104aの制御とを独立で制御が可能な照射装置を用いることにより、装置の小型化が可能であると共に、連続生産性に適した工程とすることが可能となる。
【0083】
本図に示されるスポット光照射装置104aを使用して、スポット光照射装置104aから出射されるスポット状の活性エネルギー線を塗膜201に照射する方法を次に説明する。
【0084】
紫外線レーザー光源3から出射した紫外線レーザー光301は、ミラー4に照射され、反射しスイッチング用可動ミラー5に照射される。スイッチング用可動ミラー5に照射された紫外線レーザー光301は反射され、回転多面鏡601に照射される。この時、スイッチング用可動ミラー5のON/OFFにより断続的に回転多面鏡601に照射される。回転多面鏡601に照射された紫外線レーザー光301はfθレンズ602により、必要とする径のスポット状の活性エネルギー線(本図では紫外線レーザー光)となり、塗膜201の面上を走査し照射することになる。
【0085】
紫外線レーザー光源3から出射した紫外線レーザー光301のビーム径は、fθレンズ602の前まで平行光でfθレンズ602によりスポット状に絞り込まれ塗膜201の面上に照射される。
【0086】
この時、予め走査光603の走査方向に合わせ回転多面鏡601の位置を決めておく必要がある。
【0087】
塗膜201の面では、スポット光の走査光が照射されたパターンに合わせ硬化し凹凸形状を形成する。
【0088】
本図に示すスポット光照射装置104aを、例えば図2(a)に示す様に3台配置し、各スポット光照射装置のスイッチング用可動ミラー5のON/OFFのタイミング、回転多面鏡601の配置する位置、回転速度、fθレンズ602の種類を組み合わせて塗膜201の面に照射する走査光を不規則に制御することで必要に応じた凹凸形状のパターンを形成することが可能となっている。
【0089】
図2(a)、図2(b)、図2(c)に示される各スポット光照射装置から、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜面に照射されるスポット状の活性エネルギー線のスポットの形状は、搬送に伴うスポットの変形分を補正するため、搬送方向径≦幅方向径とすることが好ましい。
【0090】
塗膜201の面に照射されるスポット状の活性エネルギー線の光強度分布が、中心部≧周縁部であることを特徴とする。スポット状の活性エネルギー線の光強度分布は、レーザー発振器を含む紫外線レーザー光源3内の光学系(例えば集光レンズ)或いはfθレンズの形状を変えることで制御することが可能となっている。
【0091】
本発明で中心部とは、スポット中心からスポット半径の10%に相当する範囲を言う。本発明で周縁部とは、スポット状の活性エネルギー線のスポット半径の90%から100%に相当する範囲を言う。
【0092】
本図に示す様に、直接に膜面にスポット状の活性エネルギー線を照射するため、光回折の発生がなくなり、図7に示す様な形状の発生がなくなる。このため、凸形状部の制御が容易になり安定した凸形状部の形成が可能となる。
【0093】
図4は図2(a)に示される配置のスポット光照射装置を使用して可撓性透明支持体の上に形成した凹凸形状の一例を示す概略図である。図4(a)は図2(a)に示される配置のスポット光照射装置を使用して可撓性透明支持体の上に形成した凹凸形状の一例を示す概略平面図である。図4(b)は図4(a)に示されるK−K′に沿った概略断面図である。
【0094】
図中、201aはスポット光照射装置104a1(図2参照)からB矢印で示される走査方向に向けて出射されたスポット状の紫外線レーザー光を膜面に照射されることで塗膜面に形成された凸形状部を示す。201bはスポット光照射装置104a2(図2参照)からC矢印で示される走査方向に向けて出射されたスポット状の紫外線レーザー光を膜面に照射されることで塗膜面に形成された凸形状部を示す。201cはスポット光照射装置104a3(図2参照)からD矢印で示される走査方向に向けて出射されたスポット状の紫外線レーザー光を膜面に照射されることで塗膜面に形成された凸形状部を示す。201dは凸形状部201bと凸形状部201cとの間に形成された凹形状部を示す。
【0095】
凹形状部201dは、塗膜面にスポット状の紫外線レーザー光を照射されることで、照射された箇所で硬化反応が進むことで、照射された箇所の周囲の未照射の部分の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は照射された箇所に引きよせられることで凹形状となり、この後全面に紫外線レーザー光が照射されることで硬化し凹形状部が形成されると考えられている。
【0096】
Sは凸形状部201cの頂点と次の凸形状部201cの頂点との間隔を示す。間隔Sは必要に応じて、図2に示すスポット光照射装置104a3から出射されるスポット状の紫外線レーザー光の照射間隔(例えば紫外線レーザー光のパルス間隔、スイッチングミラーのON/OFFのタイミング等)を制御することで変更することが可能である。
【0097】
Tは凸形状部201bの頂点と次の凸形状部201bの頂点との間隔を示す。間隔Tは必要に応じて、図2に示すスポット光照射装置104a1から出射されるスポット状の紫外線レーザー光の照射間隔(例えば紫外線レーザー光のパルス間隔、スイッチングミラーのON/OFFのタイミング等)を制御することで変更することが可能である。
【0098】
Uは凸形状部201bの可撓性透明支持体2の塗布面からの高さを示す。高さUは必要に応じて、図2に示すスポット光照射装置104a2から出射されるスポット状の紫外線レーザー光の照射強度、照射時間等を制御することで変更することが可能である。
【0099】
Vは凸形状部201cの可撓性透明支持体2の塗布面からの高さを示す。高さVは必要に応じて、図2に示すスポット光照射装置104a3から出射されるスポット状の紫外線レーザー光の照射強度、照射時間等を制御することで変更することが可能である。
【0100】
尚、凸形状部201aの可撓性透明支持体2の塗布面からの高さ、凸形状部201aの頂点と次の凸形状部201aの頂点との間隔の制御も、凸形状部201b、凸形状部201cと同じ方法で行うことが可能である。
【0101】
可撓性透明支持体2の塗膜面に形成された、凸形状部201a、凸形状部201a及び凸形状部201aの密度、配置、パターン等は、配置された3台の各スポット光照射装置から出射されるスポット状の紫外線レーザー光のスポット径、照射タイミング、照射強度、走査速度、照射角度、走査角度及び可撓性透明支持体2の搬送速度等を適宜組み合わせることで変更することが可能である。
【0102】
図5は図2(a)に示される配置のスポット光照射装置の内、1台を使用して可撓性透明支持体の上に形成した凹凸形状の一例を示す概略図である。図5(a)は図2(b)に示される配置のスポット光照射装置104a3のみを使用して可撓性透明支持体の上に形成した凹凸形状の一例を示す概略平面図である。図5(b)は図5(a)に示されるL−L′に沿った概略断面図である。
【0103】
図中、201eはスポット光照射装置104a3(図2参照)のD矢印で示される走査方向に向けて出射されたスポット状の紫外線レーザー光を膜面に照射されることで塗膜面に形成された凸形状部を示す。201fは隣接する凸形状部201eの間に形成された凹形状部を示す。Wは凸形状部201eの可撓性透明支持体2の塗布面からの高さを示す。高さWは必要に応じて、図2に示すスポット光照射装置104a3から出射されるスポット状の紫外線レーザー光の照射強度、照射時間等を制御することで変更することが可能である。
【0104】
可撓性透明支持体2の塗膜面に形成された、凸形状部201eの密度、大きさは、スポット光照射装置104a3(図2参照)から出射されるスポット状の紫外線レーザー光のスポット径、照射タイミング、照射強度、走査速度、照射角度、走査角度及び可撓性透明支持体2の搬送速度等を適宜組み合わせることで変更することが可能である。
【0105】
図6は図2(b)に示される配置のスポット光照射装置を使用して可撓性透明支持体の上に形成した凹凸形状の一例を示す概略図である。図6(a)は図2(b)に示される配置のスポット光照射装置を使用して可撓性透明支持体の上に形成した凹凸形状の一例を示す概略平面図である。図6(b)は図6(a)に示されるM−M′に沿った概略断面図である。尚、図2(c)に示される配置のスポット光照射装置を使用して可撓性透明支持体の上に凹凸形状を形成も本図と同じパターンなるため省略した。
【0106】
図中、201gはスポット光照射装置104a4(図2参照)からE矢印で示される走査方向に向けて出射されたスポット状の紫外線レーザー光を膜面に照射されることで塗膜面に形成された凸形状部を示す。201hはスポット光照射装置104a5(図2参照)のF矢印で示される走査方向に向けて出射されたスポット状の紫外線レーザー光を膜面に照射されることで塗膜面に形成された凸形状部を示す。201iは凸形状部201gと凸形状部201hとの間に形成された凹形状部を示す。Xは凸形状部201hの可撓性透明支持体2の塗布面からの高さを示す。Yは凸形状部201gの可撓性透明支持体2の塗布面からの高さを示す。高さX及び高さYは必要に応じて、図2に示すスポット光照射装置104a4及び、スポット光照射装置104a5から出射されるスポット状の紫外線レーザー光の照射強度、照射時間等を制御することで変更することが可能である。
【0107】
可撓性透明支持体2の塗膜面に形成された、凸形状部201g及び凸形状部201hの密度、大きさ、配置、パターンは、スポット光照射装置104a4(図2参照)及びスポット光照射装置104a5(図2参照)から出射されるスポット状の紫外線レーザー光のスポット径、照射タイミング、照射強度、走査速度、照射角度、走査角度及び可撓性透明支持体2の搬送速度等を適宜組み合わせることで変更することが可能である。
【0108】
図1から図6に示す様に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成した後、塗膜に対し、スポット状の活性エネルギー線を照射して部分的に硬化させた後、非スポット状の活性エネルギー線を塗膜全面に照射して全体を硬化させ、塗膜面上に凹凸形状を形成する凹凸形成方法により次の効果が挙げられる。
1.直接に膜面にスポット状の活性エネルギー線を照射するため、光回折の発生がなくなることで凸形状部の制御が容易になり安定した凸形状部の形成が可能となる。
2.安定した凸形状部の形成が出来ることで、安定した凹凸形状の形成が可能となった。
3.凹凸形状のパターン及び形状の変更が容易になり、必要に応じた凹凸形状のパターンの形成が容易になった。
4.凹凸形状のパターンに合わせたマスクの交換、作製等の煩雑な作業がなくなり、生産効率の向上が可能となった。
【0109】
次に本発明に用いる活性エネルギー線硬化樹脂に付き説明する。
【0110】
本発明に使用する活性エネルギー線硬化樹脂とは、紫外線や電子線の様な活性光線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂である。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性光線照射によって硬化する樹脂でもよい。
【0111】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0112】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、又はプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る。例えば、特開昭59−151110号に記載の、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
【0113】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステル末端の水酸基やカルボキシル基に2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸の様なモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号公報)。
【0114】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂は、エポキシ樹脂の末端の水酸基にアクリル酸、アクリル酸クロライド、グリシジルアクリレートの様なモノマーを反応させて得られる。
【0115】
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂としては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
【0116】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシ樹脂の例として、好ましく用いられるエポキシ系活性光線反応性化合物を示す。
【0117】
(a)ビスフェノールAのグリシジルエーテル(この化合物はエピクロルヒドリンとビスフェノールAとの反応により、重合度の異なる混合物として得られる)
(b)ビスフェノールA等のフェノール性OHを2個有する化合物に、エピクロルヒドリン、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを反応させ末端にグリシジルエーテル基を有する化合物
(c)4,4′−メチレンビスフェノールのグリシジルエーテル
(d)ノボラック樹脂又はレゾール樹脂のフェノールフォルムアルデヒド樹脂のエポキシ化合物
(e)脂環式エポキシドを有する化合物、例えば、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)オキザレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−シクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルピメレート)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチル−シクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシ−1′−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシ−6′−メチル−1′−シクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5′,5′−スピロ−3″,4″−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン
(f)2塩基酸のジグリシジルエーテル、例えば、ジグリシジルオキザレート、ジグリシジルアジペート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルフタレート
(g)グリコールのジグリシジルエーテル、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、コポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル
(h)ポリマー酸のグリシジルエステル、例えば、ポリアクリル酸ポリグリシジルエステル、ポリエステルジグリシジルエステル
(i)多価アルコールのグリシジルエーテル、例えば、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グルコーストリグリシジルエーテル
(j)2−フルオロアルキル−1,2−ジオールのジグリシジルエーテルとしては、前記低屈折率物質のフッ素含有樹脂のフッ素含有エポキシ化合物に挙げた化合物例と同様のもの
(k)含フッ素アルカン末端ジオールグリシジルエーテルとしては、上記低屈折率物質のフッ素含有樹脂のフッ素含有エポキシ化合物等を挙げることが出来る。
【0118】
上記エポキシ化合物の分子量は、平均分子量として2000以下で、好ましくは1000以下である。
【0119】
上記のエポキシ化合物を活性光線により硬化する場合、より硬度を上げるためには、(h)又は(i)の多官能のエポキシ基を有する化合物を混合して用いると効果的である。
【0120】
エポキシ系活性光線反応性化合物をカチオン重合させる光重合開始剤又は光増感剤は、活性光線照射によりカチオン重合開始物質を放出することが可能な化合物であり、特に好ましくは、照射によりカチオン重合開始能のあるルイス酸を放出するオニウム塩の一群の複塩である。
【0121】
活性光線反応性化合物エポキシ樹脂は、ラジカル重合によるのではなく、カチオン重合により重合、架橋構造又は網目構造を形成する。ラジカル重合と異なり反応系中の酸素に影響を受けないため好ましい活性光線反応性樹脂である。
【0122】
本発明に有用な活性光線反応性エポキシ樹脂は、活性光線照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出する光重合開始剤又は光増感剤により重合する。光重合開始剤としては、光照射によりカチオン重合を開始させるルイス酸を放出するオニウム塩の複塩の一群が特に好ましい。
【0123】
かかる代表的なものは下記一般式(a)で表される化合物である。
【0124】
一般式(a)
〔(R1)a(R2)b(R3)c(R4)dZ〕w〔MeXv〕w
式中、カチオンはオニウムであり、ZはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、ハロゲン(例えば、I、Br、Cl)、又はN=N(ジアゾ)であり、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていてもよい有機の基である。a、b、c、dはそれぞれ0〜3の整数であって、a+b+c+dはZの価数に等しい。Meはハロゲン化物錯体の中心原子である金属又は半金属(metalloid)であり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xはハロゲンであり、wはハロゲン化錯体イオンの正味の電荷であり、vはハロゲン化錯体イオン中のハロゲン原子の数である。
【0125】
上記一般式(a)の陰イオン〔MeXv〕wの具体例としては、テトラフルオロボレート(BF)、テトラフルオロホスフェート(PF)、テトラフルオロアンチモネート(SbF)、テトラフルオロアルセネート(AsF)、テトラクロロアンチモネート(SbCl)等を挙げることが出来る。
【0126】
又、その他の陰イオンとしては過塩素酸イオン(ClO)、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CFSO)、フルオロスルホン酸イオン(FSO)、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼン酸陰イオン等を挙げることが出来る。
【0127】
この様なオニウム塩の中でも特に芳香族オニウム塩をカチオン重合開始剤として使用するのが有効であり、中でも特開昭50−151996号、同50−158680号等に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号、同52−30899号、同59−55420号、同55−125105号等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号、同56−149402号、同57−192429号等に記載のオキソスルホキソニウム塩、特公昭49−17040号等に記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4,139,655号等に記載のチオピリリュム塩等が好ましい。又、アルミニウム錯体や光分解性ケイ素化合物系重合開始剤等を挙げることが出来る。上記カチオン重合開始剤と、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、チオキサントン等の光増感剤を併用することが出来る。
【0128】
又、エポキシアクリレート基を有する活性光線反応性化合物の場合は、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の光増感剤を用いることが出来る。この活性光線反応性化合物に用いられる光増感剤や光開始剤は、紫外線反応性化合物100質量部に対して0.1質量部〜15質量部で光反応を開始するには十分であり、好ましくは1質量部〜10質量部である。この増感剤は近紫外線領域から可視光線領域に吸収極大のあるものが好ましい。
【0129】
本発明に有用な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含む塗布液において、光重合開始剤は、一般的には、例えば活性光線硬化型エポキシ樹脂(プレポリマー)100質量部に対して0.1質量部〜15質量部の使用が好ましく、更に好ましくは、1質量部〜10質量部の範囲の添加が好ましい。
【0130】
又、エポキシ樹脂を上記ウレタンアクリレート型樹脂、ポリエーテルアクリレート型樹脂等と併用することも出来、この場合、活性光線ラジカル重合開始剤と活性光線カチオン重合開始剤を併用することが好ましい。
【0131】
又、本発明では、光重合開始剤としてオキセタン化合物を用いることも出来る。用いられるオキセタン化合物は、酸素又は硫黄を含む3員環のオキセタン環を有する化合物である。中でも酸素を含むオキセタン環を有する化合物が好ましい。オキセタン環は、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アリールアルキル基、アルコキシル基、アリルオキシ基、アセトキシ基で置換されていてもよい。具体的には、3,3−ビス(クロルメチル)オキセタン、3,3−ビス(ヨードメチル)オキセタン、3,3−ビス(メトキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(フェノキシメチル)オキセタン、3−メチル−3クロルメチルオキセタン、3,3−ビス(アセトキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(フルオロメチル)オキセタン、3,3−ビス(ブロモメチル)オキセタン、3,3−ジメチルオキセタン等が挙げられる。尚、本発明ではモノマー、オリゴマー、ポリマーの何れであってもよい。
【0132】
本発明で用いることの出来る紫外線硬化性樹脂の具体例としては、例えば、アデカオプトマーKR、BYシリーズのKR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、旭電化工業(株)製)、コーエイハードのA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学工業(株)製)、セイカビームのPHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業(株)製)、KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー(株))、RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製)、サンラッド H−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(以上、三洋化成工業(株)製)、SP−1509、SP−1507(以上、昭和高分子(株)製)、RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成(株)製)、又はその他の市販のものから適宜選択して利用することが出来る。
【0133】
又、活性光線硬化型樹脂として、紫外線硬化性樹脂を用いる場合、前記紫外線硬化性樹脂の光硬化を妨げない程度に、紫外線吸収剤を紫外線硬化性樹脂組成物に含ませてもよい。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
【0134】
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0135】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるモノではない。尚、実施例において「部」或いは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」或いは「質量%」を表す。
【0136】
実施例1
図1に示す凹凸形成工程を使用して、可撓性透明支持体の上に形成された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜に以下に示す方法で凹凸形状を形成した。
【0137】
(可撓性透明支持体の準備)
厚さ100μm、幅2m、長さ200mのトリアセチルセルロース製の可撓性透明支持体を準備した。
【0138】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成した可撓性透明支持体の準備)
下記に示す活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を使用し準備した塗膜形成用塗布液を、エクストルージョンコーターを使用し、準備した可撓性透明支持体の上に塗布速度6m/minで塗布した後、温度100℃で溶媒を除去し厚さ20μmの塗膜を形成し、表2に示す活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成した可撓性透明支持体を準備し、No.1−1とした。
【0139】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜形成用塗布液の調製)
ウレタンアクリレートオリゴマー 95質量部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 5質量部
メチルエチルケトン 200質量部
(スポット光照射工程でのスポット状の活性エネルギー線の照射)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成した可撓性透明支持体No.1−1に対して図3に示すスポット光照射装置を、図2(a)に示す3台配置した内、基材の搬送方向に対して直交する様に配置した1台のみを使用して、幅方向100μmピッチ、基材の搬送方向に100μmピッチで図5(a)に示す様なパターンになる様に以下に示す条件で活性エネルギー線を塗膜に照射した。
【0140】
光源:YAG−THG(波長355nm)、パルス幅50nsec
照射光:スポット光照射装置のスポット光の直径50μm
照射光量:スポット光照射装置のスポット光の中心部光量 200mJ/cm/pulse、周縁部光量 200mJ/cm/pulse
照射角度:90°
走査角度:スポット光照射装置0°
(全面照射工程での非スポット状の活性エネルギー線の照射)
スポット工程で塗膜面にスポット状の活性エネルギー線を照射した後、10秒後に以下の条件で全面照射を行い、凹凸形状物を形成し試料No.101とした。
【0141】
光源:波長365nmの高圧水銀ランプ
照射光量:300mJ/cm
比較試料No.102の作製
準備した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を有する可撓性透明支持体No.1−1を使用し、この上に、試料No.101と同じパターンの凹凸形状になる様なマスクを塗膜面上0.2mmの位置に設置した状態で1回目の活性エネルギー線を照射した。この後マスクを剥離し、活性エネルギー線を塗膜面の全面に照射し、凹凸形状物を形成し比較試料No.102とした。
【0142】
1回目の活性エネルギー線の照射条件
光源:波長365nmの高圧水銀ランプ
照射光量:200mJ/cm
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を有する可撓性透明支持体の搬送速度:6m/min
2回目の活性エネルギー線の照射条件
光源:波長365nmの高圧水銀ランプ
照射光量:300mJ/cm
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を有する可撓性透明支持体の搬送速度:6m/min
評価
作製した試料No.101、102に付き、表面粗さを以下の方法で測定した結果を表1に示す。
【0143】
表面粗さの測定
作製した試料50m、100m、150mから10cm×10cmの試料を取り、各試料に付き10箇所を(株)ミツトヨ製表面粗さ測定器(SURFPAK−SJ)を用いて表面粗さを測定した。尚、表面粗さは各試料の10箇所の平均値を示す。
【0144】
【表1】

【0145】
本発明の方法で凹凸形状を作製した試料No.101は、表面粗さが全長に渡り安定している優れた性能を示した。一方、マスクを使用した従来の方法で作製した試料No.102は、試料No.101に比べ表面粗さが全長に渡り劣る性能を示した。尚、試料No.101、102の断面を(株)キーエンス製レーザー顕微鏡VK−8700で観察(×10000)した結果、試料No.101は図5に示す様な凸部形状をしているのに対して、試料No.102は図7に示す様な凸部の中央部が窪んだ形状となっていた。本発明の有効性が確認された。
【0146】
実施例2
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成した可撓性透明支持体の準備)
実施例1で作製した試料No.101と同じ活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成した可撓性透明支持体を準備した。
【0147】
(スポット光照射工程でのスポット状の活性エネルギー線の照射)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成した可撓性透明支持体に対して、図2に示す様に、図3に示すスポット光照射装置を3台配置した内、基材の搬送方向に対して直交する様に配置した1台のみを使用して、幅方向50μmピッチ、基材の搬送方向に50μmピッチで表2に示す様にスポット光源の中心部と周縁部との光量を変えた以外は、図5(a)に示す様なパターンになる様に、以下に示す条件で活性エネルギー線を塗膜に照射し凹凸形状を形成し試料No.201から204とした。
【0148】
【表2】

【0149】
評価
作製した試料No.201から204に付き、表面粗さを実施例1と同じ方法で測定した結果を表3に示す。
【0150】
【表3】

【0151】
スポット光照射装置のスポット光源強度が、中心部≧周縁部の関係にあるスポット光を照射することで、表面粗さは安定した性能を示す結果を得た。本発明の有効性が確認された。
【0152】
実施例3
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成した可撓性透明支持体の準備)
実施例1で作製した試料No.101と同じ活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成した可撓性透明支持体を準備した。
【0153】
(スポット光照射工程でのスポット状の活性エネルギー線の照射)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成した可撓性透明支持体No.1−1に対して図3に示すスポット光照射装置を図2(a)に示す様に3台配置して、図4(a)に示す様なパターンになる様に以下に示す条件で活性エネルギー線を塗膜に照射した。
光源:YAG−THG(波長355nm)、パルス幅25nsec
照射光:第1スポット光照射装置のスポット光の直径20μm
第2スポット光照射装置のスポット光の直径15μm
第3スポット光照射装置のスポット光の直径10μm
照射光量:第1スポット光照射装置のスポット光の中心部光量 220mJ/cm/pulse、周縁部光量 200mJ/cm/pulse
第2スポット光照射装置のスポット光の中心部光量 200mJ/cm/pulse、周縁部光量 180mJ/cm/pulse
第3スポット光照射装置のスポット光の中心部光量 180mJ/cm/pulse、周縁部光量 150mJ/cm/pulse
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成した可撓性透明支持体の搬送速度:6m/min
照射角度:90°
走査角度:第1スポット光照射装置45°
第2スポット光照射装置45°
第3スポット光照射装置0°
走査方向:第1スポット光照射装置及び第2スポット光照射装置は可撓性透明支持体の搬送方向に対して逆方向
第3スポット光照射装置は可撓性透明支持体の搬送方向に対して直角方向
照射ピッチ:第1スポット光照射装置 141μm
第2スポット光照射装置 141μm
第3スポット光照射装置 100μm
(全面照射工程での非スポット状の活性エネルギー線の照射)
スポット工程で塗膜面にスポット状の活性エネルギー線を照射した後、10秒後に以下の条件で全面照射を行った。
【0154】
光源:波長365nmの高圧水銀ランプ
照射光量:300mJ/cm
評価
作製した試料に付き、第1スポット光照射装置、第2スポット光照射装置、第3スポット光照射装置により、活性エネルギー線を照射されたことにより形成された凹凸形状を有する表面の表面粗さに付き実施例1と同じ方法で測定した結果を表4に示す。
【0155】
【表4】

【0156】
複数のスポット光照射装置を使用し、各スポット光照射装置を個別に制御して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜に活性エネルギー線を照射し複雑なパターンの凹凸形状を形成しても、各スポット光照射装置から活性エネルギー線を照射することで形成された凹凸形状を有する表面の表面粗さは安定していることが確認された。本発明の有効性が確認された。
【0157】
実施例4
実施例3で作製した凹凸形状が形成された試料の防眩フィルムとしての評価として、ちらつき、反射防止性に付き以下に示す方法で測定し、以下に示す評価ランクに基づき評価した結果、ちらつき、反射防止性は共に○であった。
【0158】
本発明の凹凸形成方法で作製した基材上に凹凸形状を有するフィルムは、ちらつき、反射防止性が優れ、防眩性フィルムとしての機能を有することが確認された。本発明の有効性が確認された。
【0159】
ちらつきの評価方法
高精細画像である180μmの画素ピッチの画像を持つディスプレイに貼着して画像の状態を目視で評価した。
【0160】
評価ランク
○:ちらつきがなく良好
△:使用する上で問題ならない僅かなちらつきが見られる
×:画像にちらつきが見られる
反射防止性の評価方法
凹凸形状形成面の表面に40Wの蛍光灯を照射し、その反射の程度を目視で評価した。
【0161】
評価ランク
○:蛍光灯の反射が抑えられ良好
△:蛍光灯の反射が僅かに見られる
×:蛍光灯の反射が著しい
【符号の説明】
【0162】
1 凹凸形成工程
101 供給工程
102 塗布工程
102b ダイコーター
103 溶媒除去工程
104 スポット光照射工程
104a、104a1から104a7 スポット光照射装置
105 全面照射工程
105a 照射装置
106 巻き取り回収工程
2 可撓性透明支持体
201a、201b、201c、201e、201g、201h、201j 凸形状部
201d、201f、201i、201j3 凹形状部
201j1 周囲
201j2 中央部
3 紫外線レーザー光源
4 反射ミラー
5 スイッチング用可動ミラー
6 光走査光学系
601 回転多面鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続搬送される可撓性透明支持体の上に形成された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜面に凹凸形状を形成する凹凸形成方法において、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗布工程と、前記塗膜面にスポット光照射装置より出射されたスポット状の活性エネルギー線を照射するスポット光照射工程と、前記スポット光照射工程の後に、前記塗膜面の全面に活性エネルギー線を照射する全面照射工程とを有することを特徴とする凹凸形成方法。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、少なくとも1種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有することを特徴とする請求項1に記載の凹凸形成方法。
【請求項3】
前記スポット光照射工程は、少なくとも1台のスポット状の活性エネルギー線を照射する照射装置を使用していることを特徴とする請求項1又は2に記載の凹凸形成方法。
【請求項4】
前記スポット光照射工程は、可撓性透明支持体の搬送方向に沿って複数配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の凹凸形成方法。
【請求項5】
前記活性エネルギー線が紫外線レーザーであることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の凹凸形成方法。
【請求項6】
前記スポット状の活性エネルギー線の光強度分布が、中心部≧周縁部であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の凹凸形成方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の凹凸形成方法を用いて製造したことを特徴とする防眩フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−256605(P2010−256605A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106288(P2009−106288)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】