説明

凹凸模様を有する嵩高紙及びその製造方法

【課題】嵩高紙の凹凸部を自由に設計することのできる製造方法を提供すること。
【解決手段】繊維原料と熱膨張性粒子を水中に分散させた製紙原料から、高目付領域と低目付領域から成る湿式混抄シートであって、それぞれの領域において熱膨張性粒子が繊維中に均一に分散されている前記湿式混抄シートを抄造し、次いで該湿式混抄シートを加熱して熱膨張性粒子を膨張させることにより、凹凸模様を有する嵩高紙を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸模様を有する嵩高紙及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、熱膨張性粒子を加熱膨張させて凹凸模様を有する紙を製造する方法について関示している。具体的には、特許文献1は、パルプに熱膨張性粒子を定着させた後に凝集させてフロックを形成させ、このフロックを熱膨張性粒子を添加していない製紙原料中に分散させて抄き上げ、得られたシートを加熟して熱膨張性粒子を膨張させることで、フロックの存在部分が膨張嵩高となった凹凸模様を有する模様紙を形成することを開示している。
【0003】
【特許文献1】特開昭60−59198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている方法では、熱膨張性粒子を含むフロックを製紙原料中に分散させたシートを形成し、その熱膨張性粒子を加熱膨張させることにより、フロック存在部分が嵩高となった凹凸模様を有する模様紙を製造する。ここで、前記フロックは製紙原料中に分散されて紙に抄きあげられるため、凹凸部の形成はランダムな配置とならざるを得ず、その結果、凹凸部を自由に設計する事が出来なかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の方法は、繊維原料と熱膨張性粒子を水中に分散させた製紙原料から、高目付領域と低目付領域から成る湿式混抄シートであって、それぞれの領域において熱膨張性粒子が繊維中に均一に分散されている前記湿式混抄シートを抄造し、次いで該湿式混抄シートを加熱して熱膨張性粒子を膨張させることにより、凹凸模様を形成することを特徴とする、凹凸模様を有する嵩高紙の製造方法である。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、製紙原料が、30〜100質量%の天然パルプと0〜70質量%の他の繊維とからなる繊維原料100質量部あたり、膨張前の平均粒径が5〜30μmであって、加熱により体積が20〜125倍に膨張する熱膨張性粒子1〜40質量部を含んで成ることを特徴とする。また、嵩高紙の密度が0.01g/cm3以上、0.1g/cm3未満であることを特徴とする。また、部分的に目詰めをした抄紙用ワイヤーを用いることにより、高目付領域と低目付領域から成る湿式混抄シートを抄造することを特徴とする。また、高目付領域内に低目付領域が点在するように配置されていることを特徴とする。また、低目付領域内に高目付領域が点在するように配置されていることを特徴とする。また、高目付領域と低目付領域とが、紙の一方向に線状に交互に配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の凹凸模様を有する嵩高紙は、30〜100質量%の天然パルプと0〜70質量%の他の繊維とからなる繊維原料100質量部、及び膨張前の平均粒径が5〜30μmであって、加熱により体積が20〜125倍に膨張する熱膨張性粒子1〜40質量部を水中に分散させた製紙原料から、高目付領域と低目付領域から成る湿式混抄シートであって、それぞれの領域において熱膨張性粒子が繊維中に均一に分散されている前記湿式混抄シートを抄造し、次いで該湿式混抄シートを加熱して熱膨張性粒子を膨張させることにより得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、熱膨張性粒子を全体に均一に混合した製紙原料を、部分的に目詰めした抄紙用ワイヤーを用いて抄き上げて、平均目付より低目付となった領域と高目付となった領域とからなるシートを得、このシートを加熱膨張させるため、平均目付と同じ目付の均一な紙に比べて見掛けの厚みが大きい紙が得られる。この方法によれば、目付を増やすことなく高目付と同等のシート見掛け厚さを得る事が出来るため経済性に優れる。
【0009】
本発明の嵩高紙は、0.1g/cm3未満、好ましくは0.05g/cm3以下の密度を有する。同等レベルの低密度シートであって、その嵩高特性と保液特性から吸収性物品の吸収コアの材料としてよく利用されているエアレイドパルプ不織布等の低密度シートは、液拡散性が悪いという欠点と、湿潤加圧によって嵩がへたるという欠点を有している。一方、本発明の嵩高紙は、熱膨張性粒子の膨張によって嵩高性が発現しており、繊維部分は比較的高密度状態を維持し、空隙部分は膨張した熱膨張性粒子のバルーンが詰まっているという形態になっている。従って、嵩がへたらないだけでなく、加圧に対する反発弾性も有するため、紙おむつや生理処理用品等の吸収性物品の吸収コアに用いれば、よじれが少ない製品を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を、以下、図面を用いて説明するが、本発明は図面に示されたものに限定されるものではない。
図1は、本発明の凹凸模様を有する嵩高紙1の1つの実施態様の平面図であり、図2はそのX−X’断面図である。本発明の凹凸模様を有する嵩高紙1は、高目付領域2と低目付領域3から構成されている。
【0011】
図3は、本発明の製造方法で用いる抄紙機4の簡略図である。該抄紙機4は、製紙原料液5、抄紙用丸網シリンダー6、第1搬送ベルト8、第2搬送ベルト9、サクションボックス10、噴射用ノズル11、スクリーンドラム12、ドライヤー13及び完成品巻取りロール14から構成されている。繊維原料と熱膨張性粒子を水中に分散させた製紙原料液5から、抄紙用丸網シリンダー6により高目付領域と低目付領域から成る湿式混抄シート7を抄造し、該湿式混抄シート7は、第1搬送ベルト8及び第2搬送ベルト9によって搬送され、次いで噴射用ノズル11からの湿熱空気又は水蒸気によって湿式混抄シート7を加熱して熱膨張性粒子を膨張させ、次いでドライヤー13によりシートを乾燥させ、完成した嵩高紙を完成品巻取りロール14で巻取ることにより、凹凸模様を有する嵩高紙を製造する。
【0012】
図4は、本発明の製造方法で用いる抄紙用ワイヤー15の1つの実施態様の平面図である。この抄紙用ワイヤー15は非目詰め部分16及び目詰め部分17から成る。目詰め部分17は直径6mmの円であり、5mmの間隔で抄紙ワイヤー上に存在する。図4の抄紙用ワイヤー15を用いることにより、高目付領域内に低目付領域が点在する嵩高紙を得ることができる。抄紙用ワイヤー15全体に対する目詰め部分17の面積率は23.4%である。
【0013】
図5は、本発明の製造方法で用いる抄紙用ワイヤー15の別の実施態様の平面図である。この抄紙用ワイヤー15は非目詰め部分16及び目詰め部分17から成る。非目詰め部分16は直径6mmの円であり、1mmの間隔で抄紙ワイヤー上に存在する。図5の抄紙用ワイヤー15を用いることにより、低目付領域内に高目付領域が点在する嵩高紙を得ることができる。抄紙用ワイヤー15全体に対する目詰め部分17の面積率は42.3%である。
【0014】
図6は、本発明の製造方法で用いる抄紙用ワイヤー15のさらに別の実施態様の平面図である。幅2mmの線状の目詰め部分17と、幅6mmの線状の非目詰め部分16が交互に配置されている。図6の抄紙用ワイヤー15を用いることにより、高目付領域と低目付領域とが紙の一方向に線状に交互に配置されている嵩高紙を得ることができる。抄紙用ワイヤー15全体に対する目詰め部分17の面積率は25%である。
【0015】
本発明で使用される繊維原料は、通常の製紙で使用されるものの何れもが使用可能であり、例えば天然パルプ、合成パルプ、有機繊維、無機繊維である。繊維原料は、例えば30〜100質量%の天然パルプと、0〜70質量%の合成パルプ、有機繊維及び無機繊維からなる群から選ばれる繊維とからなる。抄紙性の観点からすると、パルプを50質量%以上配合した方がシートの地合、強度において優れている。天然パルプとしては、針葉樹や広葉樹の化学パルプや機械パルプ等の木材パルプ、古紙パルプ、麻や綿等の非木材天然パルプが挙げられるが、これらに限定されない。合成パルプとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等を原料とした合成パルプが挙げられるが、これらに限定されない。有機繊維としては、アクリル繊維、レーヨン繊維、フェノール繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維が挙げられるが、これらに限定されない。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明に使用する熱膨張性粒子は、マイクロカプセル内に低沸点溶剤を封入した熱膨張性粒子である。このカプセルは、膨張前の平均粒径が5〜30μm、好ましくは8〜14μmであり、80〜200℃の比較的低温度での短時間の加熱によって、体積が20〜125倍、好ましくは50〜80倍に膨張する粒子である。低沸点溶剤としてはイソブタン、ペンタン、石油エーテル、ヘキサン、低沸点ハロゲン化炭化水素、メチルシラン等の揮発性有機溶剤(膨張剤)を塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の共重合体から成る熱可塑性樹脂で包み込んだものであり、マイクロカプセルの膜ポリマーの軟化点以上に加熱されると膜ポリマーが軟化しはじめ、同時に内包されている膨張剤の蒸気圧が上昇し、膜が押し広げられてカプセルが膨張する。熱膨張性粒子は比較的低温、短時間で膨張して独立気泡を形成し、断熱性に優れた材を提供でき、また比較的扱い易いので、本用途には最適である。これら熱膨張性粒子として、マツモトマイクロスフェアーF−36、同F−30D、F−30GS、F−20D、F−50D、F−80D(松本油脂製薬(株)製)、エクスパンセルWU、同DU(スウェーデン製、販売元日本フィライト(株))が知られているが、これらに限定されるわけではない。熱膨張性粒子の配合量は、パルプ繊維100質量部に対して1〜40質量部、好ましくは3〜20質量部であり、1質量部以下では十分な膨張が得られず、40質量部以上では経済性の面からあまり適当とはいえない。
【0017】
パルプスラリーにはその他に、各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留まり向上剤、紙力増強剤、サイズ剤等が適宜選択して使用される。具体的には、紙力増強剤、歩留まり向上剤として、ポリアクリルアミド系のカチオン性、ノニオン性、アニオン性及び両性の樹脂、ポリエチレンイミン及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリアミン、ポリアミド、ポリアミドポリアミン及びその誘導体、カチオン性及び両性澱粉、酸化澱粉、カルボキシメチル化澱粉、植物ガム、ポリビニルアルコール、尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂、親水性のポリマー粒子等の有機系化合物、及び硫酸バンド、アルミナゾル、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム等のアルミ化合物、更に硫酸第一鉄、塩化第一鉄あるいはコロイダルシリカ、ベントナイト等の無機系化合物等を組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明の抄紙工程では、水中に所定の割合で配合されて得た原料スラリーを、ワイヤーパートでシート化した後、プレスパートで脱水する。抄紙用ワイヤーとしては、70〜100メッシュ、好ましくは80メッシュのものを用いることができる。抄紙用ワイヤーは、部分的に目詰めをしたワイヤーを使うことで、部分的に製紙原料が少ない低目付領域と部分的に製紙原料が多い高目付領域とからなる湿式混抄シートを得る事が出来る。具体的には、目詰めをした部分では製紙原料が流れにくいため製紙原料が蓄積しにくくなり部分的に製紙原料の少ない低目付領域となり、目詰めをしていない部分では製紙原料が流れやすいため製紙原料が蓄積しやすくなり部分的に製紙原料の多い高目付領域となる。本発明では、部分的に製紙原料が少なく平均目付けよりも小さな目付け領域を低目付領域とし、部分的に製紙原料が多く平均目付けよりも大きな目付け領域を高目付領域とする。本発明のように製紙原料中に熱膨張性粒子が均一に分散されていれば、低目付領域にも高目付領域にもほぼ同じ割合で熱膨張性粒子が存在する事になり、加熱するとそれらは同じように膨張しそれぞれ嵩高となる。ここで、平均目付より大きな目付となった高目付領域における紙の見掛け嵩は均一目付の紙より大きくなり、低目付領域はその逆になる。従って大きな凹凸模様の見掛け嵩の高い嵩高紙を得ることが出来る。ワイヤーの目詰めは反応硬化型樹脂などを使って行うことができ、大きさや数、形状や配置は自由に設計する事が可能である。例えば、非目詰め領域内に目詰め領域が点在するように配置するか、目詰め領域内に非目詰め領域が点在するように配置するか、または非目詰め領域と目詰め領域とを、紙の一方向に線状に交互に配置することができる。1つの目詰めサイズが小さくなるに従って低目付領域が形成されにくくなり、反対に、大きくなるに従ってその部分の低目付領域が形成されやすくなる。ここで、1つの目詰めサイズが小さすぎると、目詰め部分に製紙原料が覆いかぶさり、目詰め部分が埋められてしまうため、低目付領域が形成されなくなってしまう。一方、1つの目詰めサイズが大きくなり過ぎると、均一に低目付領域が形成されず、また製紙原料が存在しない穴開きとなる傾向にあるため、抄紙用ワイヤーから搬送ベルトへの移行の際に穴の部分から破れたりして移行しないというトラブルが生じやすくなる。1つの目詰めサイズの最適範囲は紙の目付けによって変わるため、特定することはできない。ワイヤー全体に対する目詰め部分の面積率は、必要に応じて変化させることができるが、面積率が大きいほど紙の見掛け嵩の向上に効果があり、小さいほど見掛け嵩が小さくなる。また、面積率を大きくし過ぎると、抄紙時に目詰めをしていない部分に原料が集中しすぎて抄紙できなくなる。ワイヤー全体に対する目詰め部分の面積率は、目詰めパターンによって変わるが、10%〜60%、好ましくは20%〜50%である。
【0019】
一般的な抄紙工程においては、前記脱水によって水分率は抄紙原料の60質量%前後とされるが、熱膨張性粒子の膨張の程度によってその水分率を調節することが望ましい。乾燥と同時に膨張をさせようとする場合には、乾燥して繊維同士の結合カが生じる前に膨張が完了するように、その水分率は出来るだけ大きいほうが好ましい。その場合には、脱水プレスを弱くして60質量%以上の水分率とするのが良いが、反対に100質量%を超えるような高い水分率であると乾燥効率の問題が発生する。一方、膨張を完了させた後に乾燥を行なうという方法を採る場合には、膨張段階において湿式混抄シートが乾燥しないように、湿熱空気又は水蒸気によってシー卜全体の温度を膨張開始温度まで効率よく上げる必要があるため、水分率はできる限り低い状態、例えば40〜60質量%であるのが望ましい。必要に応じて、一般的な脱水手法であるプレス脱水と、別の脱水方法、例えば熱膨張性粒子の膨張開始温度以下の温風による蒸発脱水などを併用することもできる。しかしながら、熱効率の間題はあるが、高い水分率であっても出来あがりの状態に問題が生ずることはない。
【0020】
本発明の加熱膨張工程において、熱膨張性粒子を膨張させるためには、熱膨張性粒子の膨張開始温度以上で加熱すればよい。簡単な方法としては、乾燥させるための加熱を利用して、乾燥と同時に熱膨張性粒子を膨張させる方法がある。この方法では、乾燥によって繊維間結合が生じてしまうと、その後は熱膨張性粒子の膨張が阻害されるため、湿式混抄シートの水分率を出来るだけ大きくするなどの工夫を要する。ただし、水分率を大きくしても、熱膨張性粒子が十分に膨張する前にシートが乾燥してしまう場合もあり、嵩高性を十分に発現させるためには最適な方法とはいえない。より嵩高性を発現するための最適な加熱膨張方法としては、シートを乾燥させることなく加熱して熱膨張性粒子を膨張させた後に、乾燥工程で乾燥する方法がある。この方法によれば、熱膨張性粒子の膨張工程の間は繊維間結合力が生じないため、熱膨張性粒子の膨張による紙の嵩高発現が阻害されず、嵩高性を十分に発現させることができる。この時、シートを支持体上に載せ、その上面側から前記湿熱空気又は水蒸気を吹きつけながら、支持体の下面側から吸引すると、シート全体が素早く且つムラなく加熱され、それによって加熱膨張効果が高まるため、最も効率の良い方法であるといえる。ここで、支持体としては、ネットなどの搬送ベルトが挙げられるが、これに限定されない。湿熱空気又は水蒸気を吹き付ける方法のうち、間隔を置いて配置されたノズル穴からシートに蒸気を噴射する場合は、シートの水分率が高すぎると(約80質量%以上)、ノズル穴のピッチによっては、シート全面に均一な温度が加わらず、膨張にムラが生じてしまうため、シートの水分率は低いほうが好ましい。一方、シート全面に均一な蒸気を噴射する場合、例えばスリットノズルを用いて蒸気噴射を行う場合には、シートの水分率は制限されないが、熱効率の点から考えると水分率はできる限り低い方が好ましい。
【0021】
次いで、加熱膨張させた湿潤状態の膨張シートを乾燥工程へ送り乾燥させる。ここで、乾燥方法としては従来からの一般的な乾燥方法を用いることができるが、強いプレスでシートを潰さないようにする事が肝要である。
【0022】
本発明において用いられる湿熱空気又は水蒸気の温度は、熱膨張性粒子のマイクロカプセル殻壁が軟化して膨張を開始する温度以上であれば良く、使用する熱膨張性粒子によって決められる。加熱膨張工程において湿式混抄シートの乾燥を防ぐためには、相対湿度は100%であることが好ましいが、必ずしも100%である必要はない。湿熱空気又は水蒸気の供給方法としては、ボイラから高温蒸気を取り出して直接シートに噴射する方法が最も好ましいが、乾燥装置からの湿排気を使うことも可能である。
【0023】
本発明の嵩高紙の密度は、0.01g/cm3以上、0.1g/cm3未満、好ましくは0.01g/cm3以上、0.05g/cm3以下である。嵩高紙の密度が0.01g/cm3未満であると、強度が低く、簡単に破れてしまうため、表面摩擦耐久性に問題が生ずる傾向となり実用的ではない。嵩高紙の高目付領域及び低目付領域の配置は、上記のとおり、ワイヤーの目詰め部分と非目詰め部分の配置を変えることにより、自由に設計することが可能である。嵩高紙の高目付領域及び低目付領域の配置は規則的であっても、不規則的であってもよく、嵩高紙の用途に応じて適宜選択することができる。本発明の嵩高紙の用途としては、紙おむつや生理用ナプキンの他、切花梱包シート、荷造りクッションシート、紙ワイプス等が挙げられる。
【実施例】
【0024】
実施例1
針葉樹晒クラフトパルプ85質量部を水に分散させたパルプスラリーに、熱膨張性粒子として、マツモトマイクロスフィアーF−36(松本油脂製薬(株)製、粒径5〜15μm、膨張開始温度75〜85℃)15質量部、熱膨張性粒子定着剤として、ファイレックスRC−104(明成化学工業(株)製、カチオン変性アクリル系共重合体)0.2質量部及びファイレックスM(明成化学工業(株)製、アクリル系共重合体)0.2質量部を、よく撹拌しながら添加して、パルプ濃度1.0質量%の抄紙用原料とした。得られた抄紙用原料を用いて、常法に従って角型手抄きシートマシーン(80メッシュ)により坪量50g/m2の紙を抄紙し、ろ紙で挟んで脱水し、含水率60質量%の湿式混抄シートを得た。手抄きシートマシーンの抄紙用ワイヤーは、図4に示した抄紙用ワイヤーを使った。抄き上げた湿式混抄シートを搬送ベルトヘ載置し、5m/分の速度で搬送した。この時、搬送ベルト下面からは吸引し、湿式混抄シート上面からはボイラで得た水蒸気(ノズルマニホールド内温度:172〜174℃、圧力0.82〜0.85MPa)をノズル(穴直径0.3mm、穴ピッチ2mm、1列配置)から90メッシュの金網を介して吹き付けることにより、シートを膨張させた。その後、120℃に設定したロータリードライヤーで、シートを強く加圧しないようにして乾燥させ、目付が50g/m2の嵩高紙を得た。得られた嵩高紙の断面図を図7に示す。高目付領域内に水玉状に凹んだ低目付領域が点在する凹凸模様を有し、両領域の熱膨張性粒子の膨張度合いはほぼ同じであった。高目付領域は、目付が約59.1g/m2、厚みが約2.3mm、密度が約0.026g/cm3であり、低目付領域は、目付が約20g/m2、厚みが約0.8mm、密度が約0.025g/cm3であった。
【0025】
実施例2
図6の抄紙用ワイヤーを使用した以外は実施例1と同じ操作で嵩高紙を得た。得られた嵩高紙の断面図を図8に示す。高目付領域内に約2mmの幅の線状に凹んだ低目付領域が約8mmのピッチで配された凹凸模様を有していた。高目付領域は、目付が約57g/m2、厚みが約2.2mm、密度が0.026g/cm3であり、低目付領域は、目付が約30g/m2、厚みが約1.55mm、密度が0.019g/cm3であった。
【0026】
比較例1
目詰めをしていない抄紙用ワイヤーを使った以外は実施例1と同じ原料と操作によって目付51g/m2の嵩高紙を得た。得られた紙の厚みは1.95mmで密度が0.026g/cm3であった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の凹凸模様を有する嵩高紙の1つの実施態様の平面図。
【図2】本発明の凹凸模様を有する嵩高紙の1つの実施態様の断面図。
【図3】実生産を想定した抄紙機の簡略図。
【図4】高目付領域内に低目付領域が点在する嵩高紙を得るための抄紙用ワイヤーの平面図。
【図5】低目付領域内に高目付領域が点在する嵩高紙を得るための抄紙用ワイヤーの平面図。
【図6】高目付領域と低目付領域とが紙の一方向に線状に交互に配置されている嵩高紙を得るための抄紙用ワイヤーの平面図。
【図7】実施例1で得られた嵩高紙の断面図。
【図8】実施例2で得られた嵩高紙の断面図。
【符号の説明】
【0028】
1 嵩高紙
2 高目付領域
3 低目付領域
4 抄紙機
5 製紙原料液
6 抄紙用丸網シリンダー
7 湿式混抄シート
8 第1搬送ベルト
9 第2搬送ベルト
10 サクションボックス
11 噴射用ノズル
12 スクリーンドラム
13 ドライヤー
14 完成品巻取りロール
15 抄紙用ワイヤー
16 非目詰め部分
17 目詰め部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維原料と熱膨張性粒子を水中に分散させた製紙原料から、高目付領域と低目付領域から成る湿式混抄シートであって、それぞれの領域において熱膨張性粒子が繊維中に均一に分散されている前記湿式混抄シートを抄造し、次いで該湿式混抄シートを加熱して熱膨張性粒子を膨張させることにより、凹凸模様を形成することを特徴とする、凹凸模様を有する嵩高紙の製造方法。
【請求項2】
製紙原料が、30〜100質量%の天然パルプと0〜70質量%の他の繊維とからなる繊維原料100質量部あたり、膨張前の平均粒径が5〜30μmであって、加熱により体積が20〜125倍に膨張する熱膨張性粒子1〜40質量部を含んで成ることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
嵩高紙の密度が0.01g/cm3以上、0.1g/cm3未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
部分的に目詰めをした抄紙用ワイヤーを用いることにより、高目付領域と低目付領域から成る湿式混抄シートを抄造することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
高目付領域内に低目付領域が点在するように配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
低目付領域内に高目付領域が点在するように配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
高目付領域と低目付領域とが、紙の一方向に線状に交互に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
30〜100質量%の天然パルプと0〜70質量%の他の繊維とからなる繊維原料100質量部、及び膨張前の平均粒径が5〜30μmであって、加熱により体積が20〜125倍に膨張する熱膨張性粒子1〜40質量部を水中に分散させた製紙原料から、高目付領域と低目付領域から成る湿式混抄シートであって、それぞれの領域において熱膨張性粒子が繊維中に均一に分散されている前記湿式混抄シートを抄造し、次いで該湿式混抄シートを加熱して熱膨張性粒子を膨張させることにより得られる、凹凸模様を有する嵩高紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−287150(P2009−287150A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143399(P2008−143399)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】