説明

出隅柱及びその製造方法並びに面取り加工装置

【課題】略一定幅の面取り部を有する外観意匠性に優れた出隅柱及びその製造方法、並びに面取り加工装置を提供すること。
【解決手段】2枚の平板状の窯業系板片2を、窯業系板片2の側辺24において略直角状に接合してなる出隅柱1。窯業系板片2は、意匠面21に凹部22を部分的に有している。出隅柱1は、2枚の窯業系板片2の接合部23の意匠面21側に形成された頂部11に、面取り部12を設けてなる。2枚の窯業系板片2の接合部23の裏側角部13と面取り部12との距離である角部厚みtを、凹部22が配された部分においては小さくすることにより、面取り部12の幅wを略一定にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の出隅部に配設する出隅柱及びその製造方法、並びに出隅柱の面取り部を形成するための面取り加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の出隅部に配設される出隅柱として、角部に面取り部を設けたものがある(特許文献1参照)。
該出隅柱は、2枚の平板状の窯業系板片を、該窯業系板片の側辺において略直角状に接合してなる。そして、上記出隅柱は、2枚の窯業系板片の接合部の意匠面側に形成された頂部に、面取り部を設けてなる。
該面取り部は、上記2枚の窯業系板片を接合した後、上記頂部を切削加工することにより形成する。
【0003】
しかし、上記窯業系板片は、例えば、木質繊維とセメント、珪砂、珪酸、木片等との混合粉体を、型板上に散布フォーミングし、蒸気養生やオートクレーブ処理等を行うことにより、成形される。このとき、上記混合粉体の散布状態にばらつきが生じたり、型板に薄い半硬化したセメントが残っていた場合等には、窯業系板片に凹部が形成されることがある。
【0004】
また、樹脂型枠と鉄板下敷とからなる型板は、養生中の熱膨張により、歪みが生じることがあり、これにより窯業形板片に凹部が形成されることがある。
そして、、もともと軽いエンボス模様を形成した意匠面の場合には、上記の凹部は目立ちにくいが、平坦な意匠面を有する窯業形板片の場合には、上記の凹部が目立ちやすい。
【0005】
上記窯業系板片の意匠面に凹部が存在する場合、該凹部の切削深さが浅くなることがある。例えば、局部的に0.1〜2.5mmの凹みが生じている場合、その凹部が存在する頂部においては、切削深さが浅くなる。これにより、上記凹部においては、面取り部の幅が小さくなり、結果として面取り部の幅にばらつきが生じる。例えば、正常な部分の面取り部の幅が6mmであるときに、凹部が存在する部分の面取り部の幅が3mm程度となってしまう。これにより、出隅柱の外観意匠性を低下させる要因となるおそれがある。
【0006】
特に、上記意匠面が平坦な窯業系板片を用いた場合、上記面取り部の幅のばらつきは、外観上目立ちやすく、外観意匠性を低下させやすい。即ち、凹部が浅くても、面取り部の幅のばらつきが目立ち、外観意匠性に影響を与えるおそれがある。そして、そのような浅い凹部の発生をも完全に防止することは困難である。
【0007】
【特許文献1】特許第2799051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、略一定幅の面取り部を有する外観意匠性に優れた出隅柱及びその製造方法、並びに面取り加工装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、2枚の平板状の窯業系板片を、該窯業系板片の側辺において略直角状に接合してなる出隅柱であって、
上記窯業系板片は、意匠面に凹部を部分的に有しており、
上記出隅柱は、上記2枚の窯業系板片の接合部の上記意匠面側に形成された頂部に、面取り部を設けてなり、
上記2枚の窯業系板片の接合部の裏側角部と上記面取り部との距離である角部厚みを、上記凹部が配された部分においては小さくすることにより、上記面取り部の幅を略一定にしていることを特徴とする出隅柱にある(請求項1)。
【0010】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記出隅柱においては、上記角部厚みを、上記凹部が配された部分においては小さくする。これにより、上記面取り部の幅を略一定にすることが可能となる。その結果、外観意匠性に優れた出隅柱を得ることができる。
【0011】
即ち、上記窯業系板片は、意匠面に凹部を部分的に有しているため、上記角部厚みを一定にして同一平面上に面取り部を形成すると、上記凹部が配される上記頂部においては、面取り部の幅が狭くなる。
そこで、上記凹部が配された部分においては、上記角部厚みを小さくすることにより、即ち面取り部を上記裏側角部に近付けることにより、面取り部の幅を大きくする。これにより、凹部が配されていない部分と同等の幅を有する面取り部を形成し、全体として、略一定幅の面取り部を形成することができる。
【0012】
以上のごとく、本発明によれば、略一定幅の面取り部を有する外観意匠性に優れた出隅柱を提供することができる。
【0013】
第2の発明は、意匠面に凹部を部分的に有する2枚の平板状の窯業系板片を、該窯業系板片の側辺において略直角状に接合して接合体を形成し、上記2枚の窯業系板片の接合部の上記意匠面側に形成された上記接合体の頂部に面取り部を形成して出隅柱を製造する方法であって、
切削カッターが配設された切削基台上において上記接合体を長手方向に移動させて、上記切削カッターによって上記頂部を切削することにより、上記面取り部を形成するに当り、
上記接合体を弾性変形させると共にその弾性変形量を被削部分ごとに調整し、上記凹部が配された上記被削部分を含めて切削深さを略一定とすることにより、一定幅の上記面取り部を形成することを特徴とする出隅柱の製造方法にある(請求項4)。
【0014】
本製造方法においては、面取り加工時において、上記接合体を弾性変形させると共にその弾性変形量を被削部分ごとに調整し、上記凹部が配された上記被削部分を含めて切削深さを略一定とする。
仮に、接合体を弾性変形させずに切削加工しようとすると、上記凹部が配された被削部分は、切削深さが浅くなり、その結果、面取り部の幅が小さくなる。また、同様に接合体を弾性変形させずに、凹部が配された被削部分の面取り幅を設計値どおりにしようとすると、他の被削部分の切削深さが深くなりすぎ、面取り部の幅が設計値よりも広がりすぎてしまう。
【0015】
そこで、上記のごとく、接合体を弾性変形させると共にその弾性変形量を調整する。例えば、凹部が配された被削部分を切削する際には弾性変形量を小さくし、他の被削部分を切削する際には弾性変形量を大きくする。これにより、上記凹部が配された被削部分を含めて切削深さを略一定とする。
切削深さが略一定となれば、一定幅の上記面取り部を形成することができ、外観意匠性に優れた出隅柱を製造することができる。
【0016】
以上のごとく、本発明によれば、略一定幅の面取り部を有する外観意匠性に優れた出隅柱の製造方法を提供することができる。
【0017】
第3の発明は、2枚の平板状の窯業系板片を、該窯業系板片の側辺において略直角状に接合してなる出隅柱に、面取り部を形成するための面取り加工装置であって、
該面取り加工装置は、上記2枚の窯業系板片を接合してなる接合体を載置して搬送するための切削基台と、該切削基台に取付けられ、上記窯業系板片の意匠面側に形成された上記接合体の頂部を切削して面取り部を形成するための切削カッターとからなり、
上記切削基台は、下方に配設され上記接合体の一方の意匠面を支承する複数の水平ガイドロールと、側方に配され上記接合体の他方の意匠面をガイドする複数の垂直ガイドロールと、上記水平ガイドロールの上方から、上記窯業系板片を押圧しつつ上記接合体を送り出す押圧ロールとを有し、
上記水平ガイドロール及び上記垂直ガイドロールのうち、上記切削カッターによる切削加工点付近に配された上下調整用ガイドロール及び左右調整用ガイドロールは、他の上記水平ガイドロール及び上記垂直ガイドロールよりも大きい半径を有し、
上記上下調整用ガイドロール及び上記左右調整用ガイドロールは、上記接合体の被削部分を上記切削カッターから遠ざける方向に押圧して上記接合体を弾性変形させ、上記切削カッターによる上記頂部への切削深さを略一定とすることができるよう構成してあることを特徴とする面取り加工装置にある(請求項8)。
【0018】
上記面取り加工装置は、上下調整用ガイドロール及び左右調整用ガイドロールを、他の上記水平ガイドロール及び上記垂直ガイドロールよりも大きい半径としている。これにより、上記切削カッターによる上記頂部の切削を行う際、被削部分を上記切削カッターから遠ざける方向に移動させるように、上記接合体を弾性変形させることができる。
【0019】
そして、このとき、上記上下調整用ガイドロール及び左右調整用ガイドロールは、凹部が形成されていると否とに関わらず、意匠面に当接された状態にある。そのため、切削カッターに対する上記被削部分の位置を常に一定に保つことができる。これにより、上記切削カッターによる上記頂部への切削深さを略一定とすることができる。
その結果、面取り部の幅を略一定とすることができ、外観意匠性に優れた出隅柱を製造することができる。
【0020】
以上のごとく、本発明によれば、略一定幅の面取り部を有する外観意匠性に優れた出隅柱を製造することができる面取り加工装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
上記第1〜3の発明(請求項1、請求項4、請求項8)において、上記出隅柱は、長手方向の長さを例えば455〜3030mmとすることができる。
また、上記凹部は、例えば0.1〜2.5mmの深さを有する。
【0022】
また、上記面取り部は、最大幅と最小幅との差が2mm以下であることが好ましい(請求項2、請求項6)。
この場合には、上記面取り部の幅の変化が外観上目立ちにくく、略一定幅として認識することができる。そのため、外観意匠性に優れた出隅柱を得ることができる。
【0023】
また、上記面取り部は、平均の幅が3〜12mmであることが好ましい(請求項3、請求項7)。
この場合には、本発明の作用効果を充分に発揮することができる。即ち、上記平均の幅が3mm未満の場合には、頂部に破損を生じやすくなるおそれがある。一方、上記平均の幅が12mmを超える場合には、本発明の手段を用いなくても、窯業系板片の凹部に起因する面取り部の幅の変化が目立ちにくく、本発明の作用効果を充分に発揮することが困難である。
【0024】
次に、上記第2の発明(請求項4)において、上記切削基台は、下方に配設され上記接合体の一方の意匠面を支承する複数の水平ガイドロールと、側方に配され上記接合体の他方の意匠面をガイドする複数の垂直ガイドロールと、上記水平ガイドロールの上方から、上記窯業系板片を押圧しつつ上記接合体を送り出す押圧ロールとを有し、
上記水平ガイドロール及び上記垂直ガイドロールのうち、上記切削カッターによる切削加工点付近に配された上下調整用ガイドロール及び左右調整用ガイドロールは、他の上記水平ガイドロール及び上記垂直ガイドロールよりも大きい半径を有し、
上記上下調整用ガイドロール及び上記左右調整用ガイドロールによって、上記接合体の被削部分を上記切削カッターから遠ざける方向に押圧して上記接合体を弾性変形させ、上記切削カッターによる上記頂部への切削深さを略一定とすることができる(請求項5)。
この場合には、略一定幅の面取り部を有する外観意匠性に優れた出隅柱を、効率的に製造することができる。
【0025】
また、上記上下調整用ガイドロール及び左右調整用ガイドロールの半径は、他の水平ガイドロール及び垂直ガイドロールの半径よりも、例えば1〜3mm大きい。この半径の差が1mm未満の場合には、凹部の配された頂部における切削深さが浅くなるおそれがあり、面取り部の幅を一定にすることが困難となるおそれがある。一方、上記半径の差が3mmを超える場合には、上記接合体に大きな負荷がかかり、接合体に損傷を与えるおそれがある。
【実施例】
【0026】
本発明の実施例にかかる出隅柱及びその製造方法並びに面取り加工装置につき、図1〜図12を用いて説明する。
本例の出隅柱1は、図1に示すごとく、2枚の平板状の窯業系板片2を、該窯業系板片2の側辺24において略直角状に接合してなる。
上記窯業系板片2は、意匠面21に凹部22を部分的に有している。
【0027】
上記出隅柱1は、上記2枚の窯業系板片2の接合部23の上記意匠面21側に形成された頂部11に、面取り部12を設けてなる。
上記2枚の窯業系板片2の接合部23の裏側角部13と上記面取り部12との距離である角部厚みtを、上記凹部22が配された部分においては小さくすることにより、上記面取り部12の幅wを略一定にしている。
【0028】
上記面取り部12は、最大幅と最小幅との差が2mmであり、平均の幅が6.0mmである。
また、上記出隅柱1は、長手方向の長さが3030mmである。そして、窯業系板片2の厚みは、凹部22を除いて、16mmである。また、上記凹部22は、0.1〜2.5mmの深さを有する。従って、凹部22における窯業系板片2の厚みは13.5〜15.9mmである。
【0029】
上記出隅柱1を製造するに当っては、まず、図4、図5に示すごとく、長さ3030mm×幅455mm×厚み16mmの窯業系建築板20を用意する。この窯業系建築板20は、通常、シーラー処理又は塗装加工した外壁板として用いられる。上記窯業系建築板20は、例えば、木質繊維とセメント、木片等との混合粉体を、型板上に散布フォーミングし、蒸気養生やオートクレーブ処理等を行うことにより、成形される。このとき、上記混合粉体の散布状態にばらつきが生じたり、型板に薄い半硬化したセメントが残っていた場合等には、意匠面21に凹部22が形成される。
【0030】
次いで、上記窯業系建築板20を長手方向の切断線L(図4)に沿って切断し、幅86mmの窯業系板片2を得る。
次いで、図6に示すごとく、窯業系建築板20の一方の側辺24を約45°の角度に切断すると共に、その切断面同士を接着して、2枚の窯業系建築板20を接合する。
【0031】
このようにして、図6に示すごとく、意匠面21に凹部22を部分的に有する2枚の平板状の窯業系板片2を、該窯業系板片2の側辺24において略直角状に接合して接合体10を形成する。上記2枚の窯業系板片2の接合部23の意匠面21側に形成された接合体10の頂部11に、図1〜図3に示すごとく、面取り部12を形成して出隅柱1を製造する。
【0032】
上記面取り部12を形成するに当っては、図7〜図10に示すような面取り加工装置3を用いる。
該面取り加工装置3は、上記接合体10を載置して搬送するための切削基台32と、該切削基台32に取付けられ、窯業系板片2の意匠面21側に形成された上記接合体10の頂部11を切削するための切削カッター31とからなる。
【0033】
上記切削基台32は、下方に配設され接合体10の一方の意匠面21を支承する複数の水平ガイドロール33と、側方に配され接合体10の他方の意匠面21をガイドする複数の垂直ガイドロール34と、上記水平ガイドロール33の上方から、窯業系板片2を押圧しつつ接合体10を送り出す押圧ロール35とを有する。
【0034】
上記水平ガイドロール33及び垂直ガイドロール34のうち、切削カッター31による切削加工点P付近に配された上下調整用ガイドロール330及び左右調整用ガイドロール340は、他の水平ガイドロール33及び垂直ガイドロール34よりも大きい半径を有する。
上記上下調整用ガイドロール330及び左右調整用ガイドロール340の半径は、他の水平ガイドロール33及び垂直ガイドロール34の半径よりも2mm大きい。
【0035】
上記水平ガイドロール33及び垂直ガイドロール34は、ジュラコン(ポリプラスチック社の登録商標、ポリアセタール樹脂)からなり、切削基台32に対して回転可能に固定されている。それ故、水平ガイドロール33及び垂直ガイドロール34は、接合体10の上下左右の位置決めをすることができる。
【0036】
また、上記押圧ロール35は、鉄芯と該鉄芯に巻回した硬質ゴムとからなり、切削基台32に対してスプリングを介して取付けられている。それ故、押圧ロール35は、接合体10の上下動を吸収しつつ押圧する。
なお、上記上下調整用ガイドロール330は2個、左右調整用ガイドロール340は1個配設されているが、これらの個数は特に限定されるものではない。
【0037】
また、本例においては、切削加工点Pの前後に上記2個の上下調整用ガイドロール330が配され、切削加工点Pの直上に上記左右調整用ガイドロール340が配されている。
また、上記切削カッター31は、回転円盤310の外周に多数の刃部311を形成してなる。そして、回転円盤310が回転することにより、刃部311が接合体10の被削部分を切削できるよう構成されている。なお、本明細書において、「切削カッター」を「刃部」と同義に用いることもある。
【0038】
上記面取り部12を形成するに当っては、図7、図8に示すごとく、切削カッター31が配設された切削基台32上において上記接合体10を長手方向に移動させて、上記切削カッター31によって上記頂部11を切削する。
このとき、図7〜図12に示すごとく、上記接合体10を弾性変形させると共にその弾性変形量を被削部分ごとに調整し、図6に示すごとく、上記凹部22が配された上記被削部分を含めて切削深さdを略一定とする。これにより、図1〜図3に示すごとく、一定幅wの上記面取り部12を形成する。
即ち、上下調整用ガイドロール330及び左右調整用ガイドロール340によって、上記接合体10の被削部分を切削カッター31から遠ざける方向に押圧して接合体10を弾性変形させ、切削カッター31による頂部11への切削深さdを略一定とする。
【0039】
具体的には、凹部22のない頂部11を切削する際には、図7、図11に示すごとく、上下調整用ガイドロール330及び左右調整用ガイドロール340によって、被削部分を切削カッター31から遠ざける方向に押圧して、接合体10を比較的大きく弾性変形させる。
【0040】
また、凹部22の存在する頂部11を切削する際にも、図8、図12に示すごとく、上下調整用ガイドロール330及び左右調整用ガイドロール340によって、被削部分を切削カッター31から遠ざける方向に押圧するが、接合体10の弾性変形量は比較的小さい。
これにより、凹部22の存在する頂部11と凹部22の存在しない頂部11とを、略同一の切削深さdで切削することができ、面取り部12の幅wを略一定とすることができる。具体的には、切削深さdを3.0±0.5mmとすることにより、面取り幅wを6.0±1.0mmとすることができる。
【0041】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記出隅柱1においては、上記角部厚みtを、上記凹部22が配された部分においては小さくする。これにより、上記面取り部12の幅wを略一定にすることが可能となる。その結果、外観意匠性に優れた出隅柱1を得ることができる。
【0042】
即ち、上記窯業系板片2は、意匠面21に凹部22を部分的に有しているため、上記角部厚みtを一定にして同一平面上に面取り部12を形成すると、上記凹部22が配される上記頂部11においては、面取り部12の幅wが狭くなる(比較例参照)。
そこで、図3に示すごとく、上記凹部22が配された部分においては、上記角部厚みtを小さくすることにより、即ち面取り部12を上記裏側角部13に近付けることにより、面取り部12の幅を大きくする。これにより、図2、図3に示すごとく、凹部22が配されていない部分と同等の幅wを有する面取り部12を形成し、図1に示すごとく、全体として、略一定幅の面取り部12を形成することができる。
【0043】
そして、本例の製造方法においては、面取り加工時において、図7〜図12に示すごとく、上記接合体10を弾性変形させると共にその弾性変形量を被削部分ごとに調整し、図6に示すごとく、上記凹部22が配された被削部分を含めて切削深さdを略一定とする。
仮に、接合体10を弾性変形させずに切削加工しようとすると、上記凹部22が配された被削部分は、切削深さdが浅くなり、その結果、面取り部12の幅wが小さくなる(比較例参照)。また、同様に接合体10を弾性変形させずに、凹部22が配された被削部分の面取り幅wを設計値どおりにしようとすると、他の被削部分の切削深さが深くなりすぎ、面取り部12の幅wが広がりすぎてしまう。
【0044】
そこで、上記のごとく、接合体10を弾性変形させると共にその弾性変形量を調整する。即ち、図8、図10、図12に示すごとく、凹部22が配された被削部分を切削する際には弾性変形量を小さくし、図7、図9、図11に示すごとく、他の被削部分を切削する際には弾性変形量を大きくする。これにより、図6に示すごとく、上記凹部22が配された被削部分を含めて切削深さdを略一定とする。
切削深さdが略一定となれば、図1に示すごとく、一定幅wの上記面取り部12を形成することができ、外観意匠性に優れた出隅柱1を製造することができる。
【0045】
図7〜図12に示すごとく、上記面取り加工装置3は、上下調整用ガイドロール330及び左右調整用ガイドロール340を、他の水平ガイドロール33及び垂直ガイドロール34よりも大きい半径としている。これにより、上述のごとく、上記切削カッター31による頂部11の切削を行う際、被削部分を切削カッター31から遠ざける方向に移動させるように、接合体10を弾性変形させることができる。
【0046】
そして、このとき、図7〜図12に示すごとく、上下調整用ガイドロール330及び左右調整用ガイドロール340は、凹部22が形成されていると否とに関わらず、意匠面21に当接された状態にある。そのため、切削カッター31に対する被削部分の位置を常に一定に保つことができる。これにより、切削カッター31による頂部11への切削深さdを略一定とすることができる。
【0047】
また、上記面取り部12は、最大幅と最小幅との差が2mm以下であるため、面取り部12の幅wの変化が外観上目立ちにくく、略一定幅として認識することができる。そのため、外観意匠性に優れた出隅柱1を得ることができる。
また、面取り部12は、平均の幅wが6.0mmであるため、本発明の作用効果を充分に発揮することができる。
【0048】
以上のごとく、本例によれば、略一定幅の面取り部を有する外観意匠性に優れた出隅柱及びその製造方法、並びに面取り加工装置を提供することができる。
【0049】
(比較例)
本例は、図13〜図20に示すごとく、同一平面上に面取り部92が形成された出隅柱9及びその製造方法の例である。
また、上記出隅柱9は、実施例と同様に、意匠面21に凹部22を部分的に有する2枚の窯業系板片2を略直角状に接合してなる。
【0050】
本例の出隅柱9は、実施例と同様にして得られる接合体10の頂部91を、面取り加工装置8により切削して面取り部92を形成する。
上記面取り加工装置8は、図17〜図20に示すごとく、切削基台82と切削カッター81とからなる。
【0051】
そして、上記切削基台82は、複数の水平ガイドロール83と、複数の垂直ガイドロール84と、押圧ロール85とを有する。
上記複数の水平ガイドロール83及び垂直ガイドロール84は、全て同等の半径を有しており、接合体10を特に弾性変形させることなく真直ぐな状態で搬送する。
そして、図17〜図20に示すごとく、接合体10を弾性変形させずに、切削カッター81によって切削加工する。
その他は、実施例と同様である。
【0052】
本例の場合には、上述のごとく、接合体10を弾性変形させずに切削加工するため、図16、図18、図20に示すごとく、凹部22が配された被削部分は、切削深さdが浅くなり、その結果、図15に示すごとく、面取り部92の幅wが小さくなる。その一方で、凹部22が配されていない被削部分は、図17に示すごとく充分な切削深さdとなるため、図14に示すごとく面取り部92の幅wは大きく確保される。
【0053】
この現象は、以下の理由による。
即ち、凹部22が形成されていない部分については、図17、図19に示すごとく、意匠面21が水平ガイドロール83及び垂直ガイドロール84に接触した状態で、切削加工されるため、切削深さdが確保され、面取り部92の幅wが確保される。
【0054】
ところが、凹部22が形成されている部分については、図18、図20に示すごとく、意匠面21が水平ガイドロール83及び垂直ガイドロール84から浮いた状態で、切削加工されるため、切削深さdが浅くなり、面取り部92の幅wが狭くなってしまう。例えば、凹部22が配されていない頂部91の面取り部92の幅wが6.0mmであるとき、凹部22が配された頂部91の面取り部92の幅wが3.0mmとなる。
そのため、図13に示すごとく、全体として、面取り部92の幅にばらつきが生じ、外観意匠性を低下させるおそれがある。
【0055】
このように、接合体10を弾性変形させることなく面取り部92の切削加工を行うと、面取り幅wにばらつきが生じてしまう。
これは、接合体10を弾性変形させないと、図15、図16に示すごとく、上記面取り部92は同一平面上に形成されるが、上記窯業系板片2は、意匠面21に凹部22を部分的に有しているため、該凹部22が配される頂部91においては、面取り部92の幅wが狭くなってしまうからである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例における、出隅柱の斜視図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】図1のB−B線矢視断面図。
【図4】実施例における、窯業系建築板の平面図。
【図5】図4のC−C線矢視断面図。
【図6】実施例における、接合体の斜視図。
【図7】実施例における、面取り加工の側面説明図。
【図8】実施例における、凹部が配された頂部の面取り加工の側面説明図。
【図9】図7のD−D線矢視断面相当の説明図。
【図10】図8のE−E線矢視断面相当の説明図。
【図11】実施例における、面取り加工の底面説明図。
【図12】実施例における、面取り加工の底面説明図。
【図13】比較例における、出隅柱の斜視図。
【図14】図13のF−F線矢視断面図。
【図15】図13のG−G線矢視断面図。
【図16】比較例における、接合体の斜視図。
【図17】比較例における、面取り加工の側面説明図。
【図18】比較例における、凹部が配された頂部の面取り加工の側面説明図。
【図19】図17のH−H線矢視断面相当の説明図。
【図20】図18のI−I線矢視断面相当の説明図。
【符号の説明】
【0057】
1 出隅柱
10 接合体
11 頂部
12 面取り部
13 裏側角部
2 窯業系板片
21 意匠面
22 凹部
23 接合部
24 側辺
3 面取り加工装置
31 切削カッター
32 切削基台
33 水平ガイドロール
330 上下調整用ガイドロール
34 垂直ガイドロール
340 左右調整用ガイドロール
35 押圧ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の平板状の窯業系板片を、該窯業系板片の側辺において略直角状に接合してなる出隅柱であって、
上記窯業系板片は、意匠面に凹部を部分的に有しており、
上記出隅柱は、上記2枚の窯業系板片の接合部の上記意匠面側に形成された頂部に、面取り部を設けてなり、
上記2枚の窯業系板片の接合部の裏側角部と上記面取り部との距離である角部厚みを、上記凹部が配された部分においては小さくすることにより、上記面取り部の幅を略一定にしていることを特徴とする出隅柱。
【請求項2】
請求項1において、上記面取り部は、最大幅と最小幅との差が2mm以下であることを特徴とする出隅柱。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記面取り部は、平均の幅が3〜12mmであることを特徴とする出隅柱。
【請求項4】
意匠面に凹部を部分的に有する2枚の平板状の窯業系板片を、該窯業系板片の側辺において略直角状に接合して接合体を形成し、上記2枚の窯業系板片の接合部の上記意匠面側に形成された上記接合体の頂部に面取り部を形成して出隅柱を製造する方法であって、
切削カッターが配設された切削基台上において上記接合体を長手方向に移動させて、上記切削カッターによって上記頂部を切削することにより、上記面取り部を形成するに当り、
上記接合体を弾性変形させると共にその弾性変形量を被削部分ごとに調整し、上記凹部が配された上記被削部分を含めて切削深さを略一定とすることにより、一定幅の上記面取り部を形成することを特徴とする出隅柱の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、上記切削基台は、下方に配設され上記接合体の一方の意匠面を支承する複数の水平ガイドロールと、側方に配され上記接合体の他方の意匠面をガイドする複数の垂直ガイドロールと、上記水平ガイドロールの上方から、上記窯業系板片を押圧しつつ上記接合体を送り出す押圧ロールとを有し、
上記水平ガイドロール及び上記垂直ガイドロールのうち、上記切削カッターによる切削加工点付近に配された上下調整用ガイドロール及び左右調整用ガイドロールは、他の上記水平ガイドロール及び上記垂直ガイドロールよりも大きい半径を有し、
上記上下調整用ガイドロール及び上記左右調整用ガイドロールによって、上記接合体の被削部分を上記切削カッターから遠ざける方向に押圧して上記接合体を弾性変形させ、上記切削カッターによる上記頂部への切削深さを略一定とすることを特徴とする出隅柱の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5において、上記面取り部は、最大幅と最小幅との差が2mm以下となるように形成されることを特徴とする出隅柱の製造方法。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項において、上記面取り部は、平均の幅が3〜12mmとなるように形成されることを特徴とする出隅柱の製造方法。
【請求項8】
2枚の平板状の窯業系板片を、該窯業系板片の側辺において略直角状に接合してなる出隅柱に、面取り部を形成するための面取り加工装置であって、
該面取り加工装置は、上記2枚の窯業系板片を接合してなる接合体を載置して搬送するための切削基台と、該切削基台に取付けられ、上記窯業系板片の意匠面側に形成された上記接合体の頂部を切削して面取り部を形成するための切削カッターとからなり、
上記切削基台は、下方に配設され上記接合体の一方の意匠面を支承する複数の水平ガイドロールと、側方に配され上記接合体の他方の意匠面をガイドする複数の垂直ガイドロールと、上記水平ガイドロールの上方から、上記窯業系板片を押圧しつつ上記接合体を送り出す押圧ロールとを有し、
上記水平ガイドロール及び上記垂直ガイドロールのうち、上記切削カッターによる切削加工点付近に配された上下調整用ガイドロール及び左右調整用ガイドロールは、他の上記水平ガイドロール及び上記垂直ガイドロールよりも大きい半径を有し、
上記上下調整用ガイドロール及び上記左右調整用ガイドロールは、上記接合体の被削部分を上記切削カッターから遠ざける方向に押圧して上記接合体を弾性変形させ、上記切削カッターによる上記頂部への切削深さを略一定とすることができるよう構成してあることを特徴とする面取り加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−70455(P2006−70455A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251676(P2004−251676)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【出願人】(500136935)株式会社ヤマグチ (2)
【Fターム(参考)】