説明

刃物用研ぎ機

【課題】包丁等の刃物の刃先を容易に研磨することができる電動構造の刃物用研ぎ機であって、刃物の研磨痕を刃先の辺に対して垂直方向に形成することによって切れ味の鋭い研磨痕を形成するようにした刃物用研ぎ機を提供する。
【解決手段】電動モータによって移動する研磨材が左右の傾斜板の間の離間部に露呈することによって、何れかの傾斜板の上面に刃面を当てた刃物の刃先を一対のガイドローラに摺動自在に当てた状態で、該刃物の刃先を傾斜板の角度調整による所定角度で研磨材に接触させ、左右の傾斜板の何れに刃物を載置したかによって、電動モータに接続された操作スイッチを正転又は逆転の状態に切り替えることにより、刃物の刃先を接触させた研磨材を刃先から遠ざかる方向へ垂直方向に回転するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包丁等の調理用刃物の他に、縫製用鋏、大工用ノミ、鉄鋼用ドリル等を容易に研ぐことができる刃物用研ぎ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、砥石等を用いて包丁等の調理用刃物等を手作業で研磨するには、砥石の上面に刃物等の刃先を当て、その当てた角度を一定に保った状態で研磨する必要がある。しかしながら、そのような研磨作業に習熟していない者が、手作業で、刃先を切れ味の良い状態に研磨することは非常に困難であり、研いだ刃先が丸くなったり、反ったりして、調理の際に十分な切れ味を発揮することが困難であった。
【0003】
このような刃物の研磨を良好且つ容易に行うため、従来から、砥石の研ぎ面をV字状の形状にしたり、回転砥石を電動化したりする等の改善が行われていた。そのような従来の技術として、特許文献1及び2を参照する。
【0004】
特許文献1に記載されている刃物研ぎ器は、複数の砥石片を組み合わせた研磨体の取付け角度を調整可能に設け、台座に載置した刃物の刃先を研磨体の上面に当てて、刃物を手作業で移動することにより刃先を研磨するようにしたものである。
【0005】
また、特許文献2に記載されている電動包丁研ぎ機は、円形の回転砥石の回転平面に包丁等の刃先を導くための差入溝が設けられ、この差入溝に差し込んだ包丁等の刃先を回転砥石の回転平面に対して一定の角度で当てながら研磨するようにしたものである。
【0006】
ところが、特許文献1の刃物研ぎ器においては、砥石の上面に対して、刃物の刃先を平行に当てて前後に移動しつつ研磨するため、その刃先の研磨痕となる凹凸形状は、刃先の辺に沿って平行に形成される。
【0007】
従って、このように研磨された刃物の刃先には、刃先の辺に対して垂直方向の凹凸が形成されていないため、例えばトマトの表皮のように滑りやすい表面に覆われている野菜や変形しやすいスポンジゴム等を切る際に、刃先が滑って良く切れないという不都合があった。
【0008】
また、従来の砥石や特許文献1のような砥石片を用いた場合、砥石に水又は油を含ませることによって砥石と刃物の摩擦係数を最適な条件にする必要があり、研磨作業に手間を要するため、研磨作業を直ぐに始めることができないという不都合があった。
【0009】
さらに、特許文献2の電動包丁研ぎ機においても、その刃先の研磨痕となる凹凸形状は、刃先の辺に沿って略平行に形成される。このため、特許文献2の構造においても、特許文献1と同様に、調理物が滑りやすい表面に覆われている野菜等を切る場合に、刃先が滑って良く切れないという問題があった。
【0010】
また、上記の特許文献1及び2のみならず、砥石を使用した刃物の研磨作業においては、砥石による刃先の切削量が大であるため、刃物の寿命が短く、また研磨作業に時間を要するという問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開平2−53370
【特許文献2】実開平3−33050
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、包丁等の刃物の刃先を容易に研磨することができる電動構造の刃物用研ぎ機を提供するものであり、刃物の研磨痕を刃先の辺に対して垂直方向に形成することによって切れ味の鋭い研磨痕を形成するようにした刃物用研ぎ機を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、包丁等の刃物を研ぐ技術に習熟してない者であっても簡単且つ短時間に刃物の研磨を行うことができ、刃先の切削量を少なくすることによって、刃物を長期間使用することができるようにした刃物用研ぎ機を提供することを目的とする。
【0014】
さらに、本発明は、包丁等の調理用刃物の他にも、縫製用鋏、大工用ノミ、鉄鋼用ドリル等の多くの刃物を容易且つ切れ味も良好に研磨することができる刃物用研ぎ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明における請求項1の刃物用研ぎ機は、電動モータを内蔵した筐体の上部に間隔をあけて一対のガイドローラが回転自在に立設され、これらのガイドローラの左右の各接線に近接した一対の傾斜板の間に離間部を形成すると共に、各傾斜板が傾斜角度を可変にした状態で回動自在に枢設され、
各傾斜板の端部の下面を支持した偏心形状の角度調整ノブには傾斜板の角度を示す目盛が設けられ、これらの傾斜板間の離間部の下部に露呈された研磨材が、電動モータによって各ガイドローラの左右の接線に対して垂直方向に移動するように駆動され、何れか一方の傾斜板の上面に刃面を当てて載置した刃物の刃先を一対のガイドローラに当てた状態を保って、該刃物の刃先を傾斜板の角度調整による所定角度で研磨材に接触させ、左右の傾斜板の何れに刃物を載置したかによって、電動モータに接続された操作スイッチを正転又は逆転の状態に切り替えることにより、刃物の刃先を接触させた研磨材を刃先から遠ざかる方向へ垂直方向に回転するようにしたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項2の刃物用研ぎ機は、請求項1において、電動モータによって回動する一対の駆動ローラに張設された研磨ベルトの外周に研磨材が設けられ、各ガイドローラの下部には研磨ベルトが滑る状態で該研磨ベルトを支持する滑り板が設けられたことにより、回転する研磨ベルトの上下動を規制すると共に、刃先が安定した角度で研磨される状態を維持するようにしたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項3の刃物用研ぎ機は、請求項1又は2において、電動モータによって回動する夫々の駆動ローラの外周の中央が膨らんだ状態に形成され、研磨ベルトを交換する際、回転する両方の駆動ローラの外周に新しい研磨ベルトを差し込むことによって、該研磨ベルトが両方の駆動ローラの外周にセットされることを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明の請求項4の刃物用研ぎ機は、請求項1において、一対の傾斜板間の離間部の下部に露呈されるシート状研磨材を取換え可能に固定する研磨台が一対の傾斜板の間の下部にて水平移動するように案内され、該研磨台の下部に垂設された案内板に垂直縦長の案内孔が形成されると共に、該案内板がバネで下方向に付勢され、駆動モータによって回転する回転盤が半円周ごとに半径の大きさをやや異なる径に形成してなる異径外周を備え、該異径外周の段差を傾斜状連結部で滑らかに連結すると共に、該回転盤の外周付近の側面に突設された突出軸が案内板の案内孔に倣って摺動自在に嵌合され、研磨台の移動範囲の略中央位置の下方にて回転可能に設けられた案内軸が研磨台を支持すると共に回転盤の外周に当接された構成により、駆動モータの駆動によって回転盤が回転すると、突出軸が案内板の案内孔に倣って移動することにより研磨台が一方向に水平移動し、案内軸が回転盤の大径側の異径外周に倣う範囲においては案内軸が研磨台を上方に押上げた状態で一方向に水平移動する一方、案内軸が回転盤の小径側の異径外周に倣う範囲においては案内軸が研磨台を下方に沈ませた状態で反対方向に水平移動するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上記の構成において、本発明の刃物用研ぎ機は、上記のように構成されているため、傾斜板の傾斜角度を角度調整ノブの目盛によって調整する。そして、研磨すべき包丁等の刃物を何れかの傾斜板に載置すると共に、刃物の刃先を一対のガイドローラに当てながら、刃物を刃元から刃先に向かってゆっくりと手前に引く。
【0020】
このような研磨作業により、刃物の刃先は予め設定した傾斜板の傾斜角度によって一定の角度で研磨材に押し付けられると共に、操作スイッチの切替えによって、研磨材を刃先から遠ざかる方向へ垂直方向に回転することができる。
【0021】
上記の本発明による刃物用研ぎ機によれば、研磨材を挟む両側の位置に間隔をあけて立設された一対のガイドローラが回転自在に取り付けられている。この研磨機を用いて包丁等の刃物の刃先を研磨する際には、刃物の刃先を一対のガイドローラに同時に当て前後に移動させるものであり、各ガイドローラが回転するため、刃物の刃先が損傷することがない。
【0022】
また、刃物の刃先がどのように湾曲していても、刃物の刃先を共に両方のガイドローラに当てた状態で移動させるため、刃先は研磨材の移動方向に対して常に略垂直をなす状態を保って研磨することが可能となる。このため、研磨ベルトによる研磨痕は、刃物の刃先に対して略垂直方向の微細な凹凸を形成することとなり、滑り易い表面を有する調理物等に対しても良好な切れ味を有する刃物に研磨することが可能となる。
【0023】
また、本発明の刃物用研ぎ機は、簡単な構成であって、場所を選ばず手軽に取り扱うことができ、研磨ベルトに対して事前に水や油を浸す必要がないため、研磨作業に直ちに取りかかることができる。また、専門職人だけでなく、素人であっても、刃先の研磨仕上がりに差が出ることがなく、短時間に研磨することができる。また、刃先の研磨量が僅かであっても切れ味のよい刃先に研ぐことができるため、刃物の切削量が少なく、刃物を長期間使用することが可能となる。
【0024】
さらに、本発明の刃物用研ぎ機は、包丁等の刃物を載置する左右の傾斜板は、その上方が開放された構造であるため、包丁等の調理用刃物だけでなく、縫製用鋏、大工用ノミ、鉄鋼用ドリルなど多くの刃物の研磨に使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1における刃物用研ぎ機の全体斜視図であり、ケースカバーを取り外した状況を示す。
【図2】本発明の実施例1における刃物用研ぎ機の全体斜視図であり、ケースカバーを取り付けた状況を示す。
【図3】本発明の実施例1における刃物用研ぎ機の側面方向からの斜視図である。
【図4】本発明の実施例1における刃物用研ぎ機の平面図である。
【図5】本発明の実施例1における刃物用研ぎ機の底面図である。
【図6】(a)、(b)は、本発明の実施例1における刃物用研ぎ機の側面図である。
【図7】本発明の実施例1における刃物用研ぎ機の使用状況を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施例1における刃物用研ぎ機の使用状況を示す平面図である。
【図9】(a)、(b)は、本発明の実施例1における刃物用研ぎ機の使用状況を示す側面図である。
【図10】(a)、(b)は、本発明の実施例1における刃物用研ぎ機の使用状況を示す側面図である。
【図11】本発明の刃物用研ぎ機を使用して刃物を研いでいるときの作用効果を説明するための平面図である。
【図12】本発明の実施例2における刃物用研ぎ機の側面図である。
【図13】(a)は本発明の実施例2における刃物用研ぎ機の駆動構造の内部を示す側面図、(b)は別方向から見た側面図である。
【図14】(a)〜(h)は、本発明の実施例2における刃物用研ぎ機の動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は、本実施例の刃物用研ぎ機1を構成する筐体2の内部構造を露呈した状況を示すものである。この図に示すように、筐体2の内部には、乾電池等の電池B及びこの電池Bで駆動する駆動ギヤモータ等の電動モータ4が内蔵され、図2に示すようにケースカバー3を被せてネジ3aで固定することにより、電池B及び電動モータ4等がケースカバー3の内部に収納された状態となる。
【0028】
なお、ケースカバー3は、電動モータ4を収納する部分と電池Bを収納する部分とで高さが異なる段差を有する形状に形成されている。また、図2に示すように、ケースカバー3の段差の低い側の上面3bであって、ケースカバー3の幅方向の略中央の端部には操作スイッチ7が取り付けられている。さらに、操作スイッチ7の操作レバー7aを倒す方向に応じて研磨ベルト8の回転方向をコントロールするように、操作スイッチ7の近傍に、回転方向を示す矢印等の案内が表示されている。
【0029】
上記の構成において、ケースカバー3の内部に収納された乾電池等は交換可能に設けられるほか、充電式電池を使用し、この充電式電池に外部から充電補給をする構成とすることも可能である。
【0030】
また、図1、3に示すように、筐体2は、底枠9の側端から立ち上げられた矩形の壁板6が形成されると共に、壁板6の上端には外側に水平状に延長された張出部10が形成されている。また、この張出部10は所定幅を有し、張出部10の端部から下方に垂下する支持板22が形成されると共に、支持板22の下端に沿って外側に支持枠23が形成され、支持枠23の外周には立上げ枠23aが形成されている。なお、これらの筐体2を構成する底枠9、壁板6、張出部10、支持板22、支持枠23及び立上げ枠23aは、一枚の金属板等を折曲げることによって形成することが可能である。
【0031】
上記の筐体2の構成において、図1に示すように、壁板6の片側には電動モータ4が固定され、この電動モータ4の駆動軸4aが支持板22の外側に突出されると共に、この駆動軸4aに一対の駆動ローラ5a、5bの片側の駆動ローラ5aが結合されている。
【0032】
さらに、図1に示す筐体2の張出部10の中央には、図6に示すように、補強片19aで支持されたL字形状の滑り板19がネジ19bで支持板22に固定されている。なお、この滑り板19は後述する研磨ベルト8の下側を摺動自在に支持するものであり、この滑り板19によって回転中の研磨ベルト8の上下方向へのブレを防止することが可能とされている。
【0033】
また、図1又は図4に示すように、上記の張出部10と滑り板19の先端には、研磨ベルト8を挟む両側の位置に間隔をあけて立設された一対のガイドローラ11a、11bがネジ25で回転自在に取り付けられている。これら一対のガイドローラ11a、11bは、包丁等の刃物20の刃先21を当てて移動させるものであり、各ガイドローラ11a、11bが回転可能であるため、包丁等の刃物20の刃先21を夫々のガイドローラ11a、11bに当てて移動させたときでも、刃物20の刃先21が損傷することがない。なお、ガイドローラ11a、11bは、刃物20の刃先21の保護を考慮して、硬質合成樹脂を用いるのが好ましい。
【0034】
そして、図1、2に示すように、これらのガイドローラ11a、11bの左右の各接線S1、S2(図4参照)に近接して傾斜角度を可変にした傾斜板12a、12bが間隔をあけて回動自在に設けられている。即ち、上記の左右の傾斜板12a、12bは、矩形の平板形状に形成されると共に、各傾斜板12a、12bの端部には下方に折曲形成された折曲片12c、12cが形成され、各傾斜板12a、12bの平面形状を補強すると共に、各折曲片12c、12cは張出部10の両側に形成された壁板6と支持板22の上部中央の左右に離間する位置に傾斜板軸13a、13bで回動自在に支承されている。このような構成により、左右の傾斜板12a、12bをガイドローラ11a、11bを挟んで傾斜板軸13a、13bの周りに自在に回動可能にし、夫々の傾斜板12a、12bの傾きを可変としている。
【0035】
なお、各傾斜板軸13a、13bは、図5に示すように、筐体2の底部において両方の傾斜板軸13a、13bを軸固定板14で押さえ付け、この軸固定板14を筐体2の底部に対してネジ14aで固定することによって、各傾斜板12a、12bの傾斜角度を固定する構成としている。なお、ネジ14aの頭部は、上方へ向けて突出し、図1又は図4に示すように、筐体2の上部からネジ14aの頭部にドライバー等を差し込むことによって締め付け力を調整可能としている。
【0036】
さらに、図6(a)、(b)に示すように、各傾斜板12a、12bの端部の下面を支持する偏心形状の角度調整ノブ15a、15bが支持板22及び壁板6に延長された角度調整軸16a、16bで支承されている。夫々の角度調整ノブ15a、15bは外形が角度調整軸16a、16bに対して偏心した形状に形成され、その外側面には傾斜板12a、12bの角度を示す目盛が設けられている。また、この目盛に対する指標線15cが支持板22に表示されている。このような構成により、夫々の傾斜板12a、12bが所望の角度となるように角度調整ノブ15a、15bを回動することにより、その外周形状に倣って、各傾斜板12a、12bが角度調整軸16a、16bを中心に回動しながら傾斜角度を変えることとなる。
【0037】
また、図5に示すように、夫々の角度調整軸16a、16bは筐体2の底部にてネジ17aで固定された角度固定板17によって押さえ付けられている。そして、夫々のネジ17aの締め付け調整によって、角度調整ノブ15a、15bの角度調整軸16a、16bが回動するのを規制し、所定角度に調整された各傾斜板12a、12bの傾斜角度を固定状態に保つようにしている。なお、このネジ17aにおいても、その頭部は上方へ向けて突出し、図1又は図4に示すように、各傾斜板12a、12bに形成されたネジ用穴24の下方に露呈するようにし、その上部からネジ17aの頭部にドライバー等を差し込むことによって締め付け力を調整可能としている。
【0038】
さらに、上記の電動モータ4によって回動する一対の駆動ローラ5a、5bに張設された研磨ベルト8が回転可能に設けられている。即ち、本実施例においては、図6(a)に示すように、電動モータ4の駆動軸4aに結合された一方の駆動ローラ5aに離間して他方の駆動ローラ5bが設けられ、この駆動ローラ5bに結合されたローラ軸4bが支持板22から壁板6に延長されると共に、回動自在に軸支されている。また、双方の駆動ローラ5a、5bの外周には輪形状の研磨ベルト8が張設されている。なお、この研磨ベルト8は、ゴム又布製等によるベルトの外周に紙やすり(サンドペーパとも云う)等を固定した構成のほか、各種の研磨材をベルト材の外表面に付設した構成とすることにより形成する。
【0039】
このような構成において、双方の駆動ローラ5a、5bは外周の中央が膨らんだ状態に形成したことにより、駆動ローラ5a、5bの回転に伴って研磨ベルト8が回動する際に、この研磨ベルト8が駆動ローラ5a、5bから脱落し難いものとされている。また、両方の駆動ローラ5a、5bの外周の中央が膨らんだ形状により、研磨ベルト8を交換する際、回転する両方の駆動ローラ5a、5bの外周に新しい研磨ベルト8を差し込むことによって、該研磨ベルト8が両方の駆動ローラ5a、5bの外周に吸込まれるようにして容易にセットされる。
【0040】
さらに、本実施例においては、両側の傾斜板12a、12bの対向した一部を切り欠いてなる離間部18の内方に、研磨ベルト8の上面が露呈する構成としている。また、ガイドローラ11a、11bの下部には、研磨ベルト8が滑り易いような摩擦係数の小さな材料による滑り板19が、該研磨ベルト8を下方から支持するように設けられている。このような構成により、滑り板19が回転する研磨ベルト8の上下動を規制すると共に、包丁等の刃物20の刃先21が安定した所定の角度で研磨される状態を維持することが可能となる。
【0041】
なお、図1〜図3に示すように、本実施例において筐体2の支持板22の下端部には、外方に折曲形成された支持枠23が形成され、筐体2全体の設置バランスを平衡に保った状態で設置され、傾斜板12a、12bの何れかの上面に包丁等の刃物20を載置して研磨作業を行う際にも筐体2の設置バランスを安定状態に保つことが可能とされている。また、支持枠23の外周に形成された立上げ枠23aによって、その上方で研磨ベルト8によって研磨された際に生じる研磨粉を受け止めることが可能とされている。
【0042】
上記のように構成された本実施例の刃物用研ぎ機1を使用するには、図7〜図10に示すように、包丁等の刃物20の研磨すべき側の刃先21を下方に向けた状態で、例えば片側の傾斜板12bの上面に載置する。このとき、図7に示すように、刃物20を載置した右側の傾斜板12bの方向へ操作スイッチ7の操作レバー7aを倒すことにより、研磨ベルト8が刃物20の刃先21から遠ざかる方向であって、刃物20の刃先21の辺に対して垂直方向へ回転する。
【0043】
また、手作業で、包丁等の刃物20の片面を片側の傾斜板12bの上面に当てると共に、刃物20の刃先21を一対のガイドローラ11a、11bに当てた状態を保ちながら、刃元から刃先に向かって、刃物20をゆっくりと手前に引く。この際、刃物20の刃先21は一対のガイドローラ11a、11bを回転させながら移動すると同時に、刃物20の刃先21が離間部18の内方に露呈した研磨ベルト8の上面に接触する。このとき、手作業で、上記のように刃物20を一対のガイドローラ11a、11bに沿って移動すると共に、刃物20の刃先21を研磨ベルト8に対して押圧する力を調整することにより、傾斜板12bの角度調整による一定角度を保ちながら刃物20の刃先21を研磨することができる。
【0044】
また、上記とは反対側の刃物20の刃先21を研磨するには、操作スイッチ7の操作レバー7aを反対方向に倒すことによって、研磨ベルト8の回転方向を反転させる。そして、上記の他方の傾斜板12aに載置した包丁等の刃物20の刃先21を一対のガイドローラ11a、11bに当てながら、上記と同様にゆっくりと手前に引く。こうすることによって、刃物20の刃先21は一対のガイドローラ11a、11bに沿って摺動し、同時に刃物20の刃先21を研磨ベルト8の上面に押圧することにより、刃物20の刃先21を研磨することができる。
【0045】
ところで、図11に示すように、包丁等の刃物20の刃先21は、刃物の種類等に応じて様々な曲率半径で湾曲しているが、刃物20の刃先21を共に両方のガイドローラ11a、11bに当てた状態においては、ガイドローラ11a、11bの半径rの中心Oからガイドローラ11a、11bの中間点における刃先21の接線tに対して常に直角(α=90°)を保つ状態で、刃先20を動かすことができる。そして、ガイドローラ11a、11bを結ぶ線は研磨ベルト8の移動方向に対して常に略垂直をなすため、各ガイドローラ11a、11bに刃物20の刃先21を当てた状態において、刃先21は研磨ベルト8の移動方向に対して常に略垂直をなす状態を保って研磨することが可能となる。
【0046】
従って、上記のように本実施例の刃物用研ぎ機1を使用した包丁等の刃物20の研磨方法によれば、研磨ベルト8は刃物20の刃先21に対して垂直方向の微細な凹凸状の研磨痕を形成することが可能となる。
【0047】
また、本実施例の刃物用研ぎ機1によれば、上記のように包丁等の刃物20を左右の傾斜板12a、12bの何れに載置したかによって、電動モータ4に接続された操作スイッチ7を正転又は逆転の状態に切り替え、刃物20の刃先21を接触させた研磨ベルト8を刃先21から遠ざかる方向へ垂直方向に回転することが可能となる。
【0048】
さらに、本実施例の刃物用研ぎ機1の構造においては、包丁等の刃物20を載置する左右の傾斜板12a、12bは、その上方が開放された構造であり、包丁等の調理用刃物だけでなく、縫製用鋏、大工用ノミ、鉄鋼用ドリルなど多くの刃物の研磨に使用することが可能である。
【実施例2】
【0049】
本実施例の刃物用研ぎ機は、上記の実施例1の刃物用研ぎ機において使用した研磨ベルト8ではなく、シート状研磨材27、即ち市販の紙やすり(サンドペーパーとも云う)等を適用可能として、廉価に使用可能に構成したものである。従って、このシート状研磨材27を載置する研磨台28や該研磨台28を往復移動する機構等が実施例1の構造と異なるもので、他の構造は実施例1の構造と同様である。
【0050】
従って、以下の説明においては、シート状研磨材27を載置する研磨台28の駆動構造のみを説明する。また、この実施例2の構造は、実施例1を示す図6の側面図において、研磨ベルト8を回転する駆動ローラ5a、5bの部分に、本実施例2の駆動構造を設けることによって構成されるものであり、図12に示すようになる。
【0051】
なお、図12においては、実施例2の駆動構造を収納したケース26の蓋部(不図示)を取ることによって、内部の機構を露呈した状態で示している。また、図13(a)、(b)及び図14(a)〜(h)は、実施例2の駆動構造をケース26に収納した状態で示したものであり、他の構造は省略している。
【0052】
図12及び図13(a)、(b)において、刃物研ぎ機の支持板22の側部には矩形のケース26が固定され、該ケース26の上部に研磨台28が一対の傾斜板12a、12bの間の下部にて水平移動するように案内されている。
【0053】
即ち、図13(b)に示すように、ケース26の上部を開口すると共に、この開口部26aに長方形状を成す板状の研磨台28を収納する。また、研磨台28は支持板32に固定支持されると共に、ケース26の上部の両側に固設された長尺の案内部材33、33に支持されることによって、研磨台28を図13(a)の左右の水平方向に移動することが可能とされている。なお、ケース26の上部の両側に固設された案内部材33、33は研磨台28の支持板32を上下方向に微小幅だけ上下動することができる遊びを有して設けられ、研磨台28を微小幅だけ上下動することが可能とされている。このような構成において、研磨台28の上面に固定されたシート状研磨材27は一対の傾斜板12a、12b間の離間部18(図1、図4等参照)の下部に露呈されることとなる。
【0054】
また、研磨台28の上面に、市販の紙やすり等のシート状研磨材27を取換え可能に両面接着テープ、その他の固定手段で固定することができるようにされている。この研磨台28の下部には案内板29が垂設され、案内板29に垂直縦長の案内孔30が形成されている。この案内板29の下部は、ケース26の下方に設けられた水平板34の不図示の長形穿孔部に挿通され、該案内板29の下端に設けられた係止部29aを水平板34の下面に係止した状態とし、水平板34の両端の下部に引張りバネ35の両端を固定することにより、案内板29を下方向に付勢した構成としている。
【0055】
また、筐体2に固定された電動モータ4(図1参照)の駆動軸4aには回転盤36が固定され、この回転盤36は、半円周ごとに半径の大きさをやや異なる径に形成してなる異径外周を備えている。ここで小径側の異径外周を37aで示し、大径側の異径外周を37bで示すこととする。さらに、小径と大径の異径外周37a、37bの段差を傾斜状連結部38で連結すると共に、該回転盤36の外周付近の側面に突設された突出軸39が案内板29の案内孔30に倣って摺動自在に嵌合されている。
【0056】
一方、研磨台28の移動範囲の略中央位置の下方にて回転可能に案内軸31が設けられ、この案内軸31が研磨台28を支持すると共に、回転盤36の外周に当接されている。この案内軸31は、図示を省略してあるが、ケース26の両側に案内軸31を上下方向に移動可能に嵌合する長い穴を形成することによって、回転可能かつ微小幅だけ上下方向に移動することが可能となる。
【0057】
上記のように構成された駆動構造によれば、案内軸31が回転盤36の大径側の異径外周37bに倣う範囲においては案内軸31が研磨台28を上方に押上げた状態で一方向に水平移動する。一方、案内軸31が回転盤36の小径側の異径外周37aに倣う範囲においては案内軸31が研磨台28を下方に沈ませた状態で反対方向に水平移動することとなる。
【0058】
上記の動作について図14(a)〜(h)を参照しながら説明する。図14(a)に示すように、研磨台28が図示の右端側にあって、案内軸31が小径側の異径外周37aの外周に当接した状態のとき、研磨台28は下方に沈んだ状態にある。そして、電動モータ4(図1参照)の駆動により、回転盤36が矢印の方向(図面の反時計周り)に回転すると、図14(b)に示すように、案内軸31は大径側の異径外周37bの外周に当接して研磨台28を上方に微小幅だけ押上げる。
【0059】
これによって、研磨台28の上面のシート状研磨材27をケース26の開口部から上方に露出し、図12に示すように、シート状研磨材27に刃物20の刃先21を当てることが可能となる。また、回転盤36の回転により、突出軸39が案内板29の案内孔30に倣って移動することにより、研磨台28が矢印で示す一方向に水平移動する。
【0060】
本実施例において、研磨台28の上面のシート状研磨材27に包丁等の刃物20の刃先21を当てる際には、実施例1と同様に、傾斜角度を調整したいずれか一方の傾斜板12a、12b(図7、8等参照)に刃物20の刃面を当てると同時に、刃物20の刃先21を一対のガイドローラ11a、11b(図7、8等参照)に同時に当てて前後に移動することとなる。この際の刃物20の刃先21を研磨する効果は実施例1と同様である。
【0061】
続いて、回転盤36が上記の矢印方向に回転することにより、図14(c)に示すように、研磨台28が上方に押上げられた状態を保って矢印で示す方向に水平移動する。
【0062】
さらに、図14(d)に示す案内軸31が回転盤36の大径側の異径外周37bから、図14(e)に示す回転盤36の小径側の異径外周37aに当接したとき、図示の左端側に到った研磨台28が下方に沈み込むと共に、連続的に回転する回転盤36の突出軸39が図示の左方の水平位置から半時計方向へ回り込むことによって、研磨台28を反対方向に水平移動する。
【0063】
そして、案内軸31が回転盤36の小径側の異径外周37aに当接する状態を維持する限り、図14(f)に示すように研磨台28を下方に沈み込ませた状態で反対方向へ水平移動する。さらに、図14(g)及び図14(h)に示すように、研磨台28を元の右端位置に復帰させ、回転盤36を回転し続ける限り、上記の状態を繰り返すこととなる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の刃物用研ぎ機は、包丁等の刃物の刃先を容易に研磨することができる電動構造の刃物用研ぎ機であって、刃物の研磨痕を刃先の辺に対して垂直方向に形成することによって切れ味の鋭い研磨痕を形成するようにした刃物用研ぎ機として利用可能である。
【0065】
また、本発明の刃物用研ぎ機は、包丁等の刃物を研ぐ技術に習熟してない者であっても簡単且つ短時間に刃物の研磨を行うことができ、刃先の切削量を少なくすることによって、刃物を長期間使用することができるようにした刃物用研ぎ機として利用可能である。
【0066】
さらに、本発明の刃物用研ぎ機は、包丁等の調理用刃物の他にも、縫製用鋏、大工用ノミ、鉄鋼用ドリル等の多くの刃物を容易且つ切れ味も良好に研磨することができる刃物用研ぎ機として利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 刃物用研ぎ機
2 筐体
3 ケースカバー
3a ネジ
3b 段差の低い側の上面
4 電動モータ
4a 駆動軸
4b ローラ軸
5a、5b 駆動ローラ
6 壁板
7 操作スイッチ
7a 操作レバー
8 研磨ベルト
9 底枠
10 張出部
11a、11b ガイドローラ
12a、12b 傾斜板
12c 折曲片
13a、13b 傾斜板軸
14 軸固定板
14a ネジ
15a、15b 角度調整ノブ
15c 指標線
16a、16b 角度調整軸
17 角度固定板
17a ネジ
18 離間部
19 滑り板
19a 補強片
19b ネジ
20 包丁等の刃物
21 刃先
22 支持板
23 支持枠
23a 立上げ枠
24 ネジ用穴
25 ネジ
26 ケース
26a 開口部
27 シート状研磨材
28 研磨台
29 案内板
29a 係止部
30 案内孔
31 案内軸
32 支持板
33 案内部材
34 水平板
35 引張りバネ
36 回転盤
37a 小径側の異径外周
37b 大径側の異径外周
38 傾斜状連結部
39 突出軸
B 電池
S1、S2 一対のガイドローラの左右の接線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータを内蔵した筐体の上部に間隔をあけて一対のガイドローラが回転自在に立設され、
これらのガイドローラの左右の各接線に近接した一対の傾斜板の間に離間部を形成すると共に、各傾斜板が傾斜角度を可変にした状態で回動自在に枢設され、
各傾斜板の端部の下面を支持した偏心形状の角度調整ノブには傾斜板の角度を示す目盛が設けられ、
これらの傾斜板間の離間部の下部に露呈された研磨材が、電動モータによって各ガイドローラの左右の接線に対して垂直方向に移動するように駆動され、
何れか一方の傾斜板の上面に刃面を当てて載置した刃物の刃先を一対のガイドローラに当てた状態を保って、該刃物の刃先を傾斜板の角度調整による所定角度で研磨材に接触させ、
左右の傾斜板の何れに刃物を載置したかによって、電動モータに接続された操作スイッチを正転又は逆転の状態に切り替えることにより、刃物の刃先を接触させた研磨材を刃先から遠ざかる方向へ垂直方向に回転するようにしたことを特徴とする刃物用研ぎ機。
【請求項2】
電動モータによって回動する一対の駆動ローラに張設された研磨ベルトの外周に研磨材が設けられ、各ガイドローラの下部には研磨ベルトが滑る状態で該研磨ベルトを支持する滑り板が設けられたことにより、回転する研磨ベルトの上下動を規制すると共に、刃先が安定した角度で研磨される状態を維持するようにしたことを特徴とする請求項1記載の刃物用研ぎ機。
【請求項3】
電動モータによって回動する夫々の駆動ローラの外周の中央が膨らんだ状態に形成され、研磨ベルトを交換する際、回転する両方の駆動ローラの外周に新しい研磨ベルトを差し込むことによって、該研磨ベルトが両方の駆動ローラの外周にセットされることを特徴とする請求項1又は2記載の刃物用研ぎ機。
【請求項4】
一対の傾斜板間の離間部の下部に露呈されるシート状研磨材を取換え可能に固定する研磨台が一対の傾斜板の間の下部にて水平移動するように案内され、
該研磨台の下部に垂設された案内板に垂直縦長の案内孔が形成されると共に、該案内板がバネで下方向に付勢され、
駆動モータによって回転する回転盤が半円周ごとに半径の大きさをやや異なる径に形成してなる異径外周を備え、該異径外周の段差を傾斜状連結部で滑らかに連結すると共に、該回転盤の外周付近の側面に突設された突出軸が案内板の案内孔に倣って摺動自在に嵌合され、
研磨台の移動範囲の略中央位置の下方にて回転可能に設けられた案内軸が研磨台を支持すると共に回転盤の外周に当接された構成により、
駆動モータの駆動によって回転盤が回転すると、突出軸が案内板の案内孔に倣って移動することにより研磨台が一方向に水平移動し、案内軸が回転盤の大径側の異径外周に倣う範囲においては案内軸が研磨台を上方に押上げた状態で一方向に水平移動する一方、案内軸が回転盤の小径側の異径外周に倣う範囲においては案内軸が研磨台を下方に沈ませた状態で反対方向に水平移動するようにしたことを特徴とする請求項1記載の刃物用研ぎ機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−81555(P2012−81555A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229775(P2010−229775)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【特許番号】特許第4753059号(P4753059)
【特許公報発行日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(502436613)株式会社藤森電機製作所 (3)
【Fターム(参考)】