説明

分光光度計および試料保持装置

【課題】ステージの上下動に頼ることなく、1つの試料保持装置で大きさ形状の異なる複数の試料に対して、測定光が中心に位置する試料保持装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の試料保持装置は、回転しながら上下動する第2のベース12と、試料を両側から挟み持つ試料押え19とを有し、第2のベース12の上下動と連動して試料押え19がスライドして試料を保持する保持間隔が変化し、試料が小さいほど回転台が上方へ移動し、試料が小さいほど試料を保持する保持間隔が小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光光度計およびそれに用いる試料保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分光光度計は、複数の試料保持装置を保有し、測定する試料の形状および大きさに依り適切な試料保持装置を選択していた。図8(a)〜(c)に3つの試料保持装置の例を示す。これらの図から分かるように、試料を挟み込む間の距離が短いほど、試料の台の高さが高くなっている。正しい測定をするには測定光に対して試料を試料の中心位置へ移動させる必要があるからである。従来は、試料の大きさに応じて試料保持装置を取り替えて使っていた。
【0003】
また、分光光度計本体へ上下移動するステージを備えさせ、前記ステージの上へ試料保持装置を設置して、前記ステージの上下移動により測定光に対して試料を試料の中心位置へ移動させていた。図9はステージの上へ設置された試料保持装置の例を示す図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−170984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大きさや形状の異なる個々の試料に対して試料保持装置を取り替えるのは面倒であり、また、わざわざこのためだけに上下動させるステージを設けるというのもコストアップにつながった。
【0006】
本発明の目的は、ステージの上下動に頼ることなく、1つの試料保持装置で大きさ形状の異なる複数の試料に対して、測定光が中心に位置する試料保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の試料保持装置は、回転しながら上下動する回転台と、試料を両側から挟み持つ試料保持部とを有し、回転台の上下動と連動して試料保持部がスライドして試料を保持する保持間隔が変化し、試料が小さいほど回転台が上方へ移動し、試料が小さいほど試料を保持する保持間隔が小さくなることを特徴としている。
【0008】
一つの試料保持装置を用いて、異なる大きさの試料の中心へ光を照射する(光源の位置は動かさない)ことが本願の目的である。そのためには、小さい試料ほど試料を保持する保持間隔を小さくし、光が照射される物体をなるべく上方へ移動させる必要がある。これは、試料が大きければ大きいほど中心から下端までの距離が長く、試料が小さければ小さいほど中心から下端までの距離が短いからである。従って、上記構成によれば、上記の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、ステージの上下動に頼ることなく、1つの試料保持装置で大きさ形状の異なる複数の試料に対して、測定光が中心に位置する試料保持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態の試料保持装置の構成を示す分解斜視図である。
【図2】本実施の形態の分光光度計の概要図である。
【図3】図1の試料保持装置に設けた試料押えの構成を示す斜視図である。
【図4】図1の試料保持装置に設けた歯車の構成を示す斜視図である。
【図5】図1に示す試料保持装置を組み立てた図である。
【図6】第3のベースを押し下げた状態の試料押えの位置を示す、試料保持装置の図である。
【図7】試料を押えた状態の試料押えの位置を示す、試料保持装置の図である。
【図8】(a)〜(c)は、従来の試料保持装置を示す図である。
【図9】ステージに載せた状態の従来の試料保持装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔分光光度計の概略構成〕
本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。図2は本実施の形態の分光光度計の概要図である。本実施の形態の分光光度計は、光源1,分光器2,試料室3,検知器5を備えている。光源1から出た測定光6は、分光器2へ導かれる。分光器2によって、光はスペクトル分光され任意の波長が選択可能となり、波長走査が行われる。分光器2でスペクトル分光された測定光6は、試料室3に設置した試料保持装置4で保持された試料を通り、検知器5へ導かれる。ここで、試料保持装置4で保持された試料は、測定光6が試料の中心に照射される位置に設置される必要がある。以下、具体的に説明するが、特徴は、異なる大きさ,形状を有する試料であっても、分光光度計にステージを設け、該ステージの上下動をさせることなく試料の中心に測定光を導くような構成の試料保持装置を有することである。
【0012】
〔試料保持装置の構成〕
試料保持装置4の構成を図1を用いて説明をする。図1は、試料保持装置4の構成を示す分解斜視図である。試料保持装置4は、第1のベース(基台)11,第2のベース(回転台)12,第3のベース(板)13,3つの第1のピン14,2つの第2のピン(突起部)15,バネ(弾性体)16,歯車17,ナット18,2つの試料押え(試料保持部)19を備えている。
【0013】
第1のベース11は、円筒状に形成されている。円筒の円周に傾斜させた楕円型の穴(切り欠き)21が左右対称に2箇所開けられている。円筒の一端には第1のピン14が3本、円筒の側面と平行に固定されている。図に示すように、円筒の端部から3本の第1のピン14が突き出るように配置されている。
【0014】
第2のベース12は、円筒状に形成されている。少なくとも一方側が閉口面となっており、該閉口面の中心に円型の穴22が開けられており円筒外側からこの穴22へ歯車17の軸が挿入され、歯車17が円筒内側からナット18で固定されている。また、第2のピン15が左右対称に2本固定されている。この第2のピン15は、円筒の側面から外側へ突き出るように固定される。なお、第2のベース12の外径は、第1のベース11の内径とほぼ同じ大きさで構成される。
【0015】
第3のベース13は、円形の板状に形成されている。円型の穴23が円形の中心と3本の第1のピン14が挿入できる位置の4箇所開けられている。また、楕円型の穴(細長い貫通穴)24が4箇所開けられている。この楕円型の穴24は、中心を通る直線の両脇に設けられている。
【0016】
試料押え19は、図3に示すように、試料形状と同一形状のU字状の先端7と歯車17の歯のピッチと同一ピッチの溝8と突起9とを備えている。
【0017】
図4は歯車17の拡大図である。
【0018】
〔試料保持装置の組立方法〕
次に、これら各構成を用いた、試料保持装置の製造方法について説明する。
【0019】
第1のピン14を上方へ向けた状態で第1のベース11の内側にバネ16を設置する。歯車17と第2のピン15が固定されている第2のベース12をバネ16に被せる。ここで、第2のベース12は第1のベース11に空けられている傾斜させた楕円型の穴21に第2のピン15が挿入できる位置に被せる。第3のベース13を、第2のベース12の上方へ設置する。第3のベース13は、円型の穴23に歯車17の軸と第1のピン14が挿入できる位置に設置する。試料押え19を、第3のベース13の上に設置する。試料押え19を、第3のベース13に空けられている楕円型の穴24に突起9が挿入できる位置に2つ左右対称に設置する。以上のように組み立てた完成図を図5に示す。
【0020】
〔試料保持方法〕
次に、この試料保持装置を用いて試料を保持する動作を説明する。バネ16に押し上げられている第3のベース13を押し下げる。歯車17と第2のピン15が固定されている第2のベース12は、第3のベース13に押され、第2のピン15が第1のベース11の傾斜させた楕円型の穴21に沿って移動するため回転しながら下がる。
【0021】
2つの試料押え19の先端7は、回転した歯車17と試料押え19の溝8により試料保持装置4の中心より遠くなる方向へ広がりながら下がる。先端7が広がった一例を図6に示す。広がった試料押え19の先端7の間に試料を第3のベース13の上へ設置する。下方へ押し下げていた、第3のベース13を離す。
【0022】
歯車17と第2のピン15が固定されている第2のベース12は、バネ16に押され、第2のピン15と第1のベース11の傾斜させた楕円型の穴21に沿って移動するため回転しながら上がる。第3のベース13は、歯車17と第2のピン15が固定されている第2のベース12に押されて上がる。
【0023】
2つの試料押え19の先端7は、歯車17と試料押え19の溝8に依り試料保持装置4の中心方向へ狭まくなりながら上がる。図7は2つの試料押え19が狭まった図である。2つの試料押え19は、試料と先端7が接触する位置で止り、試料を保持することができる。バネ16による第3のベース13の動作と歯車17と試料押え19の溝8により試料押え19の先端7の動作を同期させることにより試料を保持することと同時に測定光に対して試料を試料の中心位置へ移動させることが可能となる。なお、最初に行う第3のベース13の押し下げは、手動で行ってもよいし、自動で押し下がるように構成してもよい。
【0024】
大きな試料ほど第3のベース13はより下方で止り、小さな試料ほど第3のベース13はより上方まで移動する。このことを利用して異なる大きさの試料を載せた場合でも試料の中心位置へ測定光が照射される。所定のピッチの歯車17と試料押え19の組に対して、試料の中心へ照射できる試料は限られているが、例えばピッチの大きさを変えることにより、あらゆる大きさの試料に対応することができる。
【0025】
本発明の実施形態により、試料を保持する手段と測定光に対して試料を試料の中心位置へ移動させる手段とを同期させていることを特徴とする試料保持装置が開示される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の試料保持装置は、例えば分光光度計に用いることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 光源
2 分光器
3 試料室
4 試料保持装置
5 検出器
6 測定光
7 先端
8 溝
9 突起
11 第1のベース(基台)
12 第2のベース(回転台)
13 第3のベース(板)
14 第1のピン
15 第2のピン(突起部)
16 バネ(弾性体)
17 歯車
18 ナット
19 試料押え(試料保持部)
21 楕円型の穴(切り欠き)
22,23 円型の穴
24 楕円型の穴(細長い貫通穴)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しながら上下動する回転台と、試料を両側から挟み持つ試料保持部とを有し、
回転台の上下動と連動して試料保持部がスライドして試料を保持する保持間隔が変化し、
試料が小さいほど回転台が上方へ移動し、試料が小さいほど試料を保持する保持間隔が小さくなることを特徴とする試料保持装置。
【請求項2】
前記回転台と共に回転する歯車を有し、
試料保持部は前記歯車のピッチと同じピッチの溝を有し、
前記試料保持部は、前記歯車と前記溝がかみ合ってスライドすることを特徴とする請求項1に記載の試料保持装置。
【請求項3】
前記試料保持部は、2つの部材から成り、これらの部材が独立してスライドすることを特徴とする請求項1または2に記載の試料保持装置。
【請求項4】
回転しながら上下動する回転台と、回転台の下方に位置し回転台を上方へ押し上げる弾性体と、回転台上に設けられ回転台と共に回転する板と、回転台と板との間に設けられ回転台の回転と共に回転する歯車と、歯車のピッチと同ピッチの溝を有する2つの試料保持部材とを備え、
前記板には、細長い貫通穴が設けられており、
2つの試料保持部は独立してスライドし、試料を両側から挟み持つものであり、
2つの試料保持部は前記板の上方に位置し、溝が上記細長い貫通穴を抜けて該溝と歯車とがかみ合うように設けられており、
試料が小さいほど回転台が上方へ移動し、試料が小さいほど試料を保持する保持間隔が小さくなることを特徴とする試料保持装置。
【請求項5】
前記弾性体はバネであることを特徴とする請求項4に記載の試料保持装置。
【請求項6】
回転台を保持する円筒状の基台を有し、
基台には側面に傾斜して設けられた切り欠きが設けられ、
回転台には外側に突出した突起部が設けられており、
前記突起部が前記切り欠きに沿って移動することにより、前記回転台が上下動することを特徴とする請求項3に記載の試料保持装置。
【請求項7】
上下運動を回転運動に変換する手段と、前記回転運動を歯車で直線運動に変換する手段と、前記直線運動を試料保持部品へ伝達する手段とを有することを特徴とする試料保持装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の試料保持部と、光源と、光源からの測定光の波長選択する分光器と、試料からの測定光を検知する検知器を有する、分光光度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−21958(P2011−21958A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166267(P2009−166267)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】