説明

分割電極構造を備える液晶ディスプレイ

【課題】PDLC層とEL層に対する駆動電圧を最適化でき、かつコスト削減、均一性向上、かつ構造が簡単なPDLC光シャッターおよびディスプレイを提供する。
【解決手段】
第1の電極と、第2の電極と、第3の電極とを備え、第1の電極および第2の電極は、第3の電極によって、互いに容量結合される光シャッターが開示される。第1の電極および第2の電極は、複数のセグメント電極に分割可能であり、各セグメント電極は、独立してアドレス可能である。基板の同一面側に積層配置された光シャッターとELパネルを備えるディスプレイにおいては、光シャッターとELパネルの動作のために、共通フロント電極と分割された複数のリア電極とが配置される。共通フロント電極は電気的にフローティングになされ、複数のリア電極は、共通フロント電極を介して互いに容量結合される。リア電極は複数に分割され、かつそれぞれ独立してアドレス可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイに関し、特に、分割され、かつ共通電極に対して容量的に結合する分割電極を有する液晶ディスプレイに関する。
【0002】
[用語解説]
ここで使用される用語は以下の通りである。すなわち、“ディスプレイ”とは、ビジュアル形式で見る人に対して情報を提供するデバイスである。
【0003】
“グラフィック”とは、テキスト、記号、任意の形状、或いはこれらの内の幾つかの組み合わせである。グラフィックは、半透明、散光性、陰影性、色彩性、シルエット、或いは輪郭、若しくはこれらの内の幾つかの組み合わせから形成されていても良い。グラフィックは、ポジティブ表示(ホワイト地の上のブラック)或いは、ネガティブ表示(ブラック地の上のホワイト)であっても良く、ここでホワイトは、散光性、陰影性など表現されていても良い。
【0004】
“蛍光体(phosphor)”は、単一型の蛍光体に限定されず、ドーパント型であっても良く、かつカスケード型蛍光体、カラー色素増感のための色素であっても良い。
【0005】
“EL層”は、蛍光体および誘電体あるいは蛍光体および誘電体の分割された層を含む層である。
【0006】
“ELランプ”は、すくなくとも一方が透明な2つの電極間に配置されたEL層を含む厚膜、容量性デバイスである。蛍光体は、電圧が電極に印加されたとき発光する。“ELパネル”は、共通基板上に配置された複数のELランプからなる。ELランプは、互いに独立に動作されていても良く、或いは一斉に動作されていても良い。ELランプの駆動には、交流を用いる必要がある。
【0007】
“厚膜”ELランプは、ELランプの一つの形式に対して使用され、“薄膜”ELランプは、ELランプの別の形式に対して使用される。その用語は、単に広く、実際上の厚さに関係して使用され、かつ実際上明確な規律を表す。薄い、厚膜ELランプという表現は用語上矛盾するものではなく、このようなランプは、薄膜ELランプよりもずっと厚さが厚い。
【0008】
“不透明(Opaque)”とは、光が伝搬しないということを意味するものではなく、伝搬される光の量が実質的に低減され、例えば、入射光の15%に低減されることを意味する。
【0009】
“オーバーレイ配置(Overlying)”或いは、“アンダーレイ配置(underlying)”という用語は、方向性を意味するものではなく、単に材料の層が、コンタクトの有無にかかわらず、互いに対向する主表面を有することを意味する。しかも、その表面は、必ずしも平坦でなくても良い。
【背景技術】
【0010】
液晶ディスプレイは、すくなくとも一方の電極が透明な2つの電極間に挟まれた誘電体(液晶)を有する容量的構造として構成される。2つの電極はともに透明電極であってもよい。この場合、例えば、寸法的に安定で透明なプラスティックのシート状の透明基板上に、スパッタリングで形成されたITO(Indium Tin Oxide)が典型的な材料として用いられる。グラフィック情報、若しくは数値情報を提供するためには、少なくとも一方の電極は、パターン形成されている必要がある。典型的には、このパターン形成には、マスクをスクリーン印刷し、ITO層をエッチングする工程が含まれる。このエッチング工程は化学的な処理であり、それに伴う問題点があり、コスト、操作性及び浪費的な処理のために問題点が発生する。
【0011】
最近の20年間では、例えば、パールマンによる特許文献1に開示されたように、特定のクラスの材料、すなわち、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)として知られている材料が、液晶ディスプレイ用に開発されている(例えば、特許文献1参照。)。PDLC材料を用いる液晶ディスプレイでは、ピークツウピ−クで60〜120Vの交流で動作し、初期の液晶材料がずっと低い電圧で動作していたのと比べると、大きく異なり、しかも、PDLC材料を用いる液晶ディスプレイでは、偏光板が不要である。時として、“オプティカルシャッター”と呼ばれるPLDCは、従来型ディスプレイの領域外に応用分野を広げている。
【0012】
一方、例えば、エイキンスらによる特許文献2には、エレクトロルミネッセンス(EL)バックライトおよびタッチスクリーンと組み合わされた構成の液晶ディスプレイも開示されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2においては、液晶ディスプレイはキーパッドの一部を構成し、キーパッドは、0−9、*および #などの電話のボタン及び他のコントロールボタンのイメージを有するマスク層を備える。液晶ディスプレイおよびELバックライトは、共通の基板を共有することができることも開示されている。
【0013】
例えば、特許文献3には、基板の同一面側に液晶ディスプレイとELバックライトを備える構成の液晶ディスプレイが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。同様の構成は、アドリアン・エイチ・キタイらにより特許文献4においても開示されている(例えば、特許文献4参照。)。他の組み合わせ構成も技術的に知られている。すなわち、例えば、クーセラによる特許文献5および阿部らによる特許文献6には、基板の反対面側に液晶ディスプレイとELバックライトを備える構成の液晶ディスプレイも開示されている(例えば、特許文献5および特許文献6参照。)。カラー性能、反射率、光の分散性能など光学的な性能に影響を及ぼすために、さまざまな中間層或いは外部の層を配置することが技術的に知られている。このような液晶ディスプレイは、典型的には、前面(フロント)から裏面(リア)に形成されている。すなわち、基板上に配置された第1層が透明なフロント電極となる。引続き形成される複数の層は、フロント電極を被覆するため、フロント電極に対して電気的なコンタクトを取ることが難しくなる。また、フロント電極からコンタクトの接続点までの抵抗値を低減するためには、バスバー電極を使用する必要があるが、このようなバスバー電極は、その配置と厚さが平坦でないということに関して、付加的な問題引き起こす。特に、マルチセグメント型の液晶ディスプレイにおいて、顕著となる。
【0014】
ELデバイスは、任意の印加電圧に対して、その値に応じて発光する。有効な量の光を得るためには、一般的には、実効値60V以上の電圧を印加する必要がある。液晶デバイスは、スイッチにむしろ近い動作をする。すなわち、液晶デバイスは、印加電圧が、例えば、実効値80Vのような特定のしきい値電圧に到達するまでは、内部状態を変化させることはない。PDLCの場合には、しきい値電圧の値は、実効値10−40Vである。しきい値応答特性は、完全な矩形応答にはならない。PDLCの構成材料の厚みに印加される電圧は、ある傾きを有するからであり、完全な矩形応答となることは不可能だからである。しかしながら、例えば、クッチャ−らによる特許文献7に開示されたように、特に、ELランプの電圧に対する粗い線形応答特性と比べれば、PLDCのしきい値応答変化は、相対的に急峻である(例えば、特許文献7参照。)。
【0015】
特許文献5および特許文献6に開示されたように、一対の電極間に配置されたEL素子とPDLCを駆動することは、必ずしも直接的な解決方法ではない。幾つかの応用例に対して、その回答は簡単なものである。PDLCに十分に大きな電圧を印加してオプティカルシャッターを開くことによって、ELランプは発光する。マルチセグメント型ディスプレイに対しては、EL素子とPLDCを同時に駆動することは、導電性ラインを引き回すルート設定の問題点から、単純な解決法は得られていない。
【0016】
特定のディスプレイに対してある技術を選択することは、コストの問題ではなく、競合する利点とのバランスの問題である。携帯電話の場合には、使用時にユーザが室内で使用するかすくなくとも直射日光のもとでは使用しないという仮定に基づいて、特定の技術を選択する。換言すれば、ディスプレイの可視可能性は、液晶のバックライト輝度に依存しているため、強い光の下では、ディスプレイの内容は、ほとんど失われてしまう。数多くの液晶ディスプレイは、反射型バックライト照射機能に依存している。すなわち、周辺光に応じて、バックライト照射量を増減することによって、ディスプレイの内容を見えるように維持している。ある種のディスプレイにおいては、バックライト機構と液晶モジュール間に、“透過反射(transflective)”層を備えることによって、バックライト照射量の増減に対応する両方の機能を最大限に実現する試みが行われている。
【0017】
スクリーン印刷とロールコーティングは、ELランプやその他のデバイスの製造方法として、ともによく知られた処理方法である。スクリーン印刷の問題点は、少しずつ個別の形式で製品を取り扱うため、そのコストが係り、またハンドリングが煩雑となるという点にある。液晶材料をロールコーティングする処理上の問題点は、最初に堆積された電極に対して電気的なコンタクトを取るためのアクセス手段を提供する必要があるという点にある。エッチング処理は、数多くのステップを要する点と環境上不都合な材料がエッチングに対して用いられる可能性があるという点で、コストを要する。リッチ−らによる特許文献8に開示されているような他の有用な解決方法も存在するが、第1の電極の配置が限定されている(例えば、特許文献8参照。)。
【0018】
例えば、マッシュによる特許文献9に開示されたように、ELランプの技術においては、第1の堆積電極に対して、パネルの反対側に配置された分割電極を用いて、容量結合することが知られている(例えば、特許文献9参照。)。しかし、例えば、バットらによる特許文献10に開示されているように、この方法では、輝度が面積に比例するために問題点があるということが知られている(例えば、特許文献10参照。)。すべての他のファクタが同じであるとして、ELランプの輝度を等しくするためには、2個以上の電極が面積的に等しくなければならないということを意味するからである。
【0019】
例えば、ディーコンによる特許文献11は、PLDC材料の一方の面側に2個の電極を備え、PLDC材料の他方の面側に第3の電極を備えるPLDC材料の光導波路について開示されている(例えば、特許文献11参照。)。ここで、第3の電極は電気的にフローティング状態ではないため、第3の電極を介して、2つの電極が互いに容量結合されることはない。ここで、透明電極についても開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第4,992,201号明細書
【特許文献2】米国特許第6,842,170号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/121878号
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0163606号明細書
【特許文献5】米国特許第5,121,234号明細書
【特許文献6】米国特許第6,441,551号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0250534号明細書
【特許文献8】米国特許第5,821,691号明細書
【特許文献9】米国特許第2,928,974号明細書
【特許文献10】米国特許第5,508,585号明細書
【特許文献11】米国特許第6,934,313号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述の記載に鑑みて、本発明の目的の1つは、一方の電極が分割されているPLDC光シャッターを提供することにある。
【0022】
本発明の他の目的は、フローティング電極に容量結合され、PLDC層を制御するための分割電極を提供することにある。
【0023】
さらに本発明の目的は、光シャッターのフロント電極をロールコーティングによって実現することにある。
【0024】
本発明の別の目的は、積層されたPLDCおよびEL層に対して電気的に共通・フローティングなフロント電極を提供することにある。
【0025】
さらに本発明の目的は、PLDCおよびEL層に対して容量結合された複数の電極を提供することにある。
【0026】
本発明の別の目的は、PLDC層とEL層を含む積層構造において、各層に対する最適な駆動電圧を提供することにある。
【0027】
さらに本発明の目的は、ディスプレイの一部として、光シャッターを備えるディスプレイの構造を簡単化することにある。
【0028】
本発明の別の目的は、共通のフロント電極と分割されたリア電極を備える基板の同一面側に配置された光シャッターとELパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記の目的を達成するための本発明の一態様によれば、第1の電極と、第2の電極と、第3の電極とを備え、第1の電極および第2の電極は、第3の電極によって、互いに容量結合されている光シャッターが提供される。
【0030】
第1の電極および第2の電極は、それぞれ複数のセグメント電極に分割可能であり、しかも各セグメント電極は、それぞれ独立してアドレス可能である。
【0031】
基板の同一面側に積層配置された光シャッターとELパネルを備えるディスプレイにおいては、光シャッターとELパネルの動作のために、共通のフロント電極と分割された複数のリア電極とが配置される。共通のフロント電極は電気的にフローティングになされ、分割された複数のリア電極は、共通のフロント電極を介して互いに容量結合されている。リア電極は複数にセグメント化され、かつ各セグメントリア電極は、それぞれ独立してアドレス可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明のより完全な理解は、添付の図面と共に以下の詳細な説明を考慮することによって得ることができる。
【図1】本発明の望ましい実施の形態にしたがって構成された光シャッターの断面構造図である。
【図2】図1に示された本発明の望ましい実施の形態に対応する回路図である。
【図3】本発明の実施の形態にしたがって構成された液晶ディスプレイの動作を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態にしたがって構成された液晶ディスプレイの動作を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態にしたがって構成された液晶ディスプレイの動作を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態にしたがって構成された液晶ディスプレイの動作を説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態にしたがって構成された液晶ディスプレイの動作を説明する図である。
【図8】PDLC材料の層の動作特性を説明する図である。
【図9】本発明の望ましい実施の形態にしたがって構成されたバックライト照射型光シャッターの断面構造図である。
【図10】本発明の別の実施の形態にしたがって構成されたバックライト照射型光シャッターの断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
第1図は、本発明の望ましい実施の形態に係る光シャッターの構成を示す。特に、光シャッター10は、透明基板11と、透明基板11の一方の主表面にオーバーレイ配置される透明電極12とを備える。液晶層13は、透明電極12上にオーバーレイ配置されている。さらに、電極15、電極16および電極17が、液晶層13上にオーバーレイ配置されている。電極15と電極16との間には、交流電源18が結合され、電極15と電極16は、互いに反対極性に駆動される。電極17は、スイッチ19を介して、交流電源18が接続された電極16と同じ端子に接続される。
【0034】
透明基板11は、ガラス、若しくは、例えばポリカーボネート或いはポリエチレンテレフタレート(PET)のような任意の透明ポリマー材料によって形成可能である。透明基板11は、透明で、かつ透明・導電性材料の接着層で被覆可能でありさえすれば良い。透明基板11の厚さは、特に重要ではなく、応用面に応じて選定される。透明電極12は、望ましくは、ITOで形成されると良い。また、液晶層13は、PDLCで形成されると良い。
【0035】
本発明の一態様によれば、液晶層13は、ロールコーティングされ、かつ液晶層13には、透明電極12に対するコンタクトを開孔するためのパターンを形成する必要性はない。本発明の別の態様によれば、透明電極12はフローティングになされている。すなわち、透明電極12に対するオーミック接続は形成されていない。本発明の第3の態様によれば、液晶層13の上面に配置される電極15、電極16、および電極17は、透明電極12を介して、互いに容量結合されている。
【0036】
第2図は、第1図に対応する回路図を示す。第2図において、対応する構成要素には、第1図と同じ参照符号が配置されている。電極15を有するキャパシタ21は、電極16を有するキャパシタ22と直列接続されている。電極17を有するキャパシタ23は、キャパシタ22と並列接続されている。
【0037】
スイッチ19が開放状態になると、キャパシタ21とキャパシタ22は、電圧分配器を構成し、キャパシタ21とキャパシタ22の接続点である透明電極12上には容量の比に逆比例する電圧が発生する。キャパシタ21とキャパシタ22の容量が実質的に等しい場合にのみ、電圧分配器によって、交流電源18からの電圧は1/2になる。
【0038】
容量は、面積に比例し、プレートすなわち電極間の距離に逆比例することは、技術上知られている。第1図から明らかなように、透明電極12は、他の電極よりもはるかに大きな面積を有するが、一次近似として、特定のキャパシタにおけるプレートの面積は等しいものと仮定する。
【0039】
容量結合効果は、液晶材料を選択的にスイッチングするためにのみ利用され得るのではなく、容量結合効果によって、共通電極から液晶層とEL層を共に制御するために利用可能であり、このため、ディスプレイのフロント・透明電極に対してオーミックコンタクトを取る必要がないということが見出されてきた。このオーミックコンタクトを取る必要がない点によって、コストを大幅に低減可能であり、厚さを低減し、かつディスプレイに対する光源の光シャッター構造を簡単化することができる。複数の層を透明基板の同一面側に形成することができるため、透明基板は、ディスプレイの露出された外表面となり得る。このため、保護層や特別な操作性の必要性その他の問題点を回避することができる。
【0040】
第3図は、電気的には、第1図と基本的に同じであるが、共通電極が幾つかの電気的に接続された小さなセグメント電極に分割され、スイッチ19は取り除かれているという点が異なる。共通電極はフローティングになされている。説明を簡単にするために、電極は全て同一面積を有するものと仮定する。
【0041】
第4図においては、構造のわずかな変形例が開示されている。電極41および電極43が、第3図の電極31および電極33の位置に比べて下方に配置されている。この構成によって、電極41および電極43からそれぞれ電極46および電極48に対する距離が減少し、電極間のキャパシタの容量が増加する。
【0042】
第5図においては、電極51が電極32から変位して配置されている。電界は、電極51から電極32まで延伸するということは明らかであるが、ここでは、少なくともあまり意味のある見方ではない。容量は、電極間のオーバーラップ面積によって決まる。電極51と電極55間の容量は、電極32と電極55間の容量よりもはるかに大きい。よって、交流電流は、電極51から電極55に流れ、また電極56から電極32に流れる(ここで、他の電極は無視している)。
【0043】
電極間の変位は、2つのチャンバー58およびチャンバー59によって形成される。もしも、これら2つのチャンバー58およびチャンバー59が、例えば、空気で満たされている場合には、これら2つのチャンバー58およびチャンバー59の誘電体定数は等しくなり、電極51と電極55間の容量は、電極32と電極56間の容量よりもはるかに大きい。
【0044】
第6図においては、下方のセグメント電極は、電気的に等電位の連続した共通電極61で置換されている。この結果、図面が簡単化される。電極32および電極34と、電極51および電極53との間には、誘電体層63が介在される。同様に、電極51および電極53と、共通電極61との間には、誘電体層64が介在される。
【0045】
電極32および共通電極61間に形成されるキャパシタと、電極34と共通電極61間に形成されるキャパシタは、2つの誘電体層を電極間に介在させているが、一方、電極51と共通電極61間に形成されるキャパシタと、電極53と共通電極61間に形成されるキャパシタは、1つの誘電体層のみを電極間に介在させている。もしも、誘電体層63および誘電体層64の材料が同じであるならば、この点は少しも重要ではないが、本発明の別の態様により、もしも、誘電体層63および誘電体層64の材料が異なるならば、全く新しい可能性の世界が開かれる。
【0046】
特に、誘電体層63はEL層であることが望ましく、誘電体層64はPDLC層であることが望ましい。EL層の誘電体定数は、一般的には、PDLC層の誘電体定数よりも低い。電極51から電極32までの経路は、2つのキャパシタと3つの誘電体層を含む。電圧降下は、ちょうど3つのキャパシタが直列に接続されたものとして計算することができる。
【0047】
技術上良く知られているように、3つの直列接続されたキャパシタの容量Cは、次式に示すように、各キャパシタンスの逆数の和の逆数に等しい。
【数1】

【0048】
電圧は、容量の逆数の比で分割される。したがって、面積が等しく、誘電体定数が等しく、かつ厚さが等しい場合には、各々の誘電体層に印加される電圧は等しい。したがって、電極51と共通電極61間の電圧は、供給電圧の1/3になり、共通電極61と電極32間の電圧は、供給電圧の2/3になる。誘電体定数、距離、および面積が変化する場合には、その状況は複雑なものとなるが、同じルールが適用される。本発明によれば、このようなルールは、新しいディスプレイを提供するために利用される。
【0049】
例えば、第7図において、電極71は、電極72、電極73、或いは電極74よりも実質的に大きい。このことは、電極71と共通電極75間の容量が、電極73と共通電極75間の容量よりも大きいということを意味する。したがって、スイッチ76およびスイッチ78がオンになると、電極71と共通電極75間の電圧は、電極73と共通電極75間の電圧よりも低くなる。上記に注意を喚起したように、液晶材料は、スイッチのように動作する。すなわち、電極71と共通電極75間のPDLC層の体積部分は、より暗い点刻で示されるように不透明が維持されており、一方、電極73と共通電極75間のPDLC層の体積部分は、透明である。このような選択性は、EL層にも適用可能であり、ディスプレイの設計において、かなりの精巧な技術を提供することが可能となる。
【0050】
第8図は、代表的なPDLC材料の層の動作特性を示す。曲線で示されるように、PDLC材料の層に印加される電圧が、あるしきい値、例えば、実効値20Vを越えるまでは、PDLC材料の層は不透明のままである。その後、実効値20Vを越えると、PDLC材料の層は、実質的に透明となる。破線との比較で示されるように、しきい値電圧以上の電圧が印加されたとしても、透明度は、著しく変化することはない。通常、透明材料は、逆の動きをする。
【0051】
第7図において、幾つかの電極は、効流電源70の一方の端子側に結合され、幾つかの電極は、効流電源70の他方の端子側に結合される。任意の数の電極が、効流電源70のいずれか一方の端子側に接続可能である。これらの電極は、スイッチを介して、効流電源70に結合される。一つのスイッチは、各電極に対して直列に接続される。このような構成は、ディスプレイの性能によっては、実際上当てはまらない場合もあり得る。電極は、すべての電極を含む必要はないが、いくつかのサブの組み合わせで選択可能である。換言すれば、所望のディスプレイを実現するために、任意数のサブの組み合わせの中で、あらゆる電極の組み合わせが選択可能である。
【0052】
ディスプレイの物理的な構成によって、特定の設計が固定されるように思われるかもしれないが、この点は当てはまらない。一度ディスプレイが構成されると、間隔や誘電体定数は変更することはできないが、実際上、面積の組み合わせを選択することができる。すなわち、スイッチ76、スイッチ77、スイッチ78およびスイッチ79を開閉することによって、面積を変更することができる。その結果、容量を増加させて電圧を減少させたり、或いは、容量を減少させて電圧を増加させたり、EL層、或いはPDLC層の一方の層若しくは両方の層に影響を与えることが可能となる。
【0053】
例えば、誘電体層63がEL層で、誘電体層64がPDLC材料の層であると仮定する。スイッチ76およびスイッチ78を閉にすると(ここでは、電極の相対的な面積を無視する)、電極73の領域において、誘電体層64は透明になり、入射光は、EL層によって反射される。よって、第7図に示すように構成されたデバイスは、可視光線に関しては、“デイタイム”モードで動作可能であり、不可視光線に関しては、“ナイトタイム”モードで動作可能である。
【0054】
以下の複数例においては、電圧を調整するために面積を変更することによって、様々な変形が実効的に行われる。マルチセグメント型ディスプレイにおいて、フロント電極にアクセスすることなしに、このようなそして数多くの他の組み合わせが可能である。構造が簡単で、しかも高度に可変型のディスプレイが、本発明によって形成可能である。
【0055】
スイッチ77およびスイッチ79が閉になると仮定する。EL層63は、電極72および電極74の下側の領域において発光し、PDLC層64は、電極72および電極74の下側の領域において透明になる。スイッチ76が閉になると、効流電源70の左側の端子には大きなキャパシタンスが加わり(効流電源70の左側の端子は、図示されているように、相対的に大きな面積を有するものと仮定すると)、電圧が減少する。電極71および電極72の下側の領域は不透明となる。電極72の下側のEL層63の領域は薄暗くなり、一方、電極74の下側のEL層63の領域は明るくなる。
【0056】
スイッチ77およびスイッチ79が閉になると仮定する。EL層63は、電極72および電極74の下側の領域において発光し、PDLC層64は、電極72の下側の領域において透明になる。スイッチ78が閉になると、効流電源70の右側の端子には大きなキャパシタンスが加わり、電極74と共通電極75間の電圧が減少し、電極74の下側のEL層63の領域は薄暗くなり、一方、電極72の下側のEL層63の領域は明るくなる。
【0057】
相対的な面積に依存するが、PDLC層64は、その上のEL層63の領域が発光している場合においても、電圧を低下させることによって、不透明にすることができる。電圧に対するEL層の相対的にリニアな応答と、電圧に対するPDLC層の極めてノンリニアな応答によって、アンダーレイ配置されたシャッター層が不透明になる場合においても、EL層63は、発光状態を維持することができるからである。したがって、一組の電極或いは電極のサブの組み合わせにおいて、他のELランプおよび光シャッターの正味の容量を変化させるために、電極74或いは任意の電極を利用することができる。
【0058】
すべての可能性のある組み合わせを尽そうと試みる必要はない。共通電極の動作は、シーソーの支点の動作に擬えることができる。一方の側で輝度或いは不透明度を減少させると、他方の側で輝度或いは不透明度は増加するからである。この特徴から、ディスプレイ上の影響を受けた領域から離れた領域に影響を及ぼすことができるため、ディスプレイの設計上の自由度を大きく向上させることができる。
【0059】
第9図は、本発明の望ましい実施の形態の断面図である。第7図に示された基本構造に対して、分離層81とバスバー電極83、バスバー電極84およびバスバー電極85が付加されている。分離層81は、ELランプ用の電極間の誘電体定数を修正し、グラフィック層87のようなグラフィックを包含することができる。分離層81は、随意のものであるが、蛍光体層或いは誘電体層に対するインク組成を再調整することなしに、誘電体定数を修正する便利な方法を提供することができる。分離層81は、またグラフィックを付加する便利な方法を提供することができる。
【0060】
第10図は、本発明の別の実施の形態の断面図である。第10図は、分離層91を配置する点が、第9図と異なる。第9図においては、分離層81は、蛍光体層とフロント電極との間に配置されている。一方、第10図においては、分離層91は、誘電体層とリア電極との間に配置されている。
【0061】
したがって、本発明は、一方の電極が分割され、かつ分割された電極はフローティング電極に対して容量的に結合されたPDLC光シャッターを提供することができる。
【0062】
他方の電極がフローティング電極であるため、このフローティング電極上に、PDLC層をロールコーティングすることができ、結果として、コストを削減し、均一性をより向上させ、かつ構造を簡単化することができる。2層の分割された電極によって、PDLCの層とEL材料の層を別々に制御することができる。また、容量を制御することによって、PDLC層とEL層に対する駆動電圧を最適化することができる。
【0063】
上記のように本発明を記載したが、本発明の範囲内で様々な修正が可能であることは、当業者には明らかである。例えば、いくつかの図面において、キャパシタの組み合わせは、直並列の組み合わせを備えていてもよく、このような構成は、本発明の実際上の実施形態においてあり得ることである。複数の電極によってパターンを定義することが開示されているが、蛍光体層は、パターン形成された電極を用いる代わりに、もしくはそれに加えて、(例えば、スクリーン印刷などで)パターン形成されていても良い。パターンにおけるギャップは、容量および電圧を調整するための“ダミー”負荷として用いることができる。
【符号の説明】
【0064】
10…光シャッター、11…透明基板、12…透明電極、13…液晶層、15、16、17、31、32、33、34、41、43、46、48、51、53、55、56、71、72、73、74…電極、18、70…交流電源、19、76、77、78、79…スイッチ、21、22、23…キャパシタ、58、59…チャンバー、61、75…共通電極、63…誘電体層(EL層)、64…誘電体層(PDLC層)、81、91…分離層、83、84、85…バスバー電極、87…グラフィック層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子分散型液晶材料層と、
第1の電極と、
第2の電極と、
第3の電極と
を備え、前記第1の電極および前記第2の電極は、前記第3の電極を介して、互いに容量結合されることを特徴とする光シャッター。
【請求項2】
前記第1の電極および前記第2の電極は、前記高分子分散型液晶材料層の第1の表面側に配置され、前記第3の電極は、前記第1の電極および前記第2の電極に対向し、前記高分子分散型液晶材料層の第2の表面側に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の光シャッター。
【請求項3】
前記第1の電極および前記第2の電極は、電圧源に接続され、前記第3の電極は、電気的にフローティングであることを特徴とする請求項2に記載の光シャッター。
【請求項4】
前記高分子分散型液晶材料層の第1の表面側に配置された第4の電極を更に備え、かつ前記第4の電極は、前記第1の電極および前記第2の電極の内の一方に選択的に接続されることを特徴とする請求項2に記載の光シャッター。
【請求項5】
透明基板と、
前記透明基板上にオーバーレイ配置された光シャッターと、
前記光シャッター上にオーバーレイ配置されたEL層と、
共通フロント電極と、
前記光シャッターと前記EL層との間に配置された第1のリア電極と、
前記EL層上にオーバーレイ配置された第2のリア電極と
を備えることを特徴とするディスプレイ。
【請求項6】
前記共通フロント電極は、電気的にフローティングであることを特徴とする請求項5に記載のディスプレイ。
【請求項7】
前記第1のリア電極と前記第2のリア電極は、電圧源に接続され、かつ前記共通フロント電極に容量的に結合されることを特徴とする請求項6に記載のディスプレイ。
【請求項8】
前記第2のリア電極は、複数のセグメント電極を備えることを特徴とする請求項5に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記セグメント電極は、独立してアドレス可能であることを特徴とする請求項8に記載のディスプレイ。
【請求項10】
前記第1のリア電極は、複数のセグメント電極を備えることを特徴とする請求項5に記載のディスプレイ。
【請求項11】
前記セグメント電極は、独立してアドレス可能であることを特徴とする請求項10に記載のディスプレイ。
【請求項12】
前記第1のリア電極および前記第2のリア電極は、共に、それぞれ複数のセグメント電極を備えることを特徴とする請求項5に記載のディスプレイ。
【請求項13】
前記セグメント電極は、独立してアドレス可能であることを特徴とする請求項12に記載のディスプレイ。
【請求項14】
前記セグメント電極の内の特定の組み合わせを選択して、前記EL層の第1の領域を発光させ、前記光シャッターの前記EL層の第1の領域に対応する領域を不透明にして、前記第1の領域からの光をブロックすることを特徴とする請求項13に記載のディスプレイ。
【請求項15】
前記セグメント電極の内の特定の組み合わせを選択して、前記EL層の第2の領域の輝度を増加させ、前記光シャッターの前記EL層の第2の領域に対応する領域を透明にすることを特徴とする請求項14に記載のディスプレイ。
【請求項16】
前記EL層は、パターン形成された蛍光体層を備えることを特徴とする請求項5に記載のディスプレイ。
【請求項17】
透明基板と、
前記透明基板上にオーバーレイ配置された光シャッターと、
前記光シャッター上にオーバーレイ配置されたELパネルと、
前記光シャッターを制御する第1の電極と、
前記ELパネルを制御する第2の電極と、
電気的にフローティングになされた第3の電極と
を備え、前記第1の電極および前記第2の電極は、前記第3の電極を介して、互いに容量結合されていることを特徴とするディスプレイ。
【請求項18】
前記第3の電極は、前記透明基板上にオーバーレイ配置され、前記光シャッターは、前記第3の電極上にオーバーレイ配置されたことを特徴とする請求項17に記載のディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−49254(P2010−49254A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−189353(P2009−189353)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(500105311)ワールド・プロパティーズ・インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】