説明

分娩後由来細胞を用いた末梢血管疾患の治療

【課題】本発明は、末梢血管疾患患者、特に末梢虚血を有する患者のための、細胞に基づいた再生治療の分野に関する。
【解決手段】臍帯および胎盤のような分娩後組織に由来する細胞を用いる組成物および方法を提供する。その組成物および方法は、末梢血管疾患患者における、血管形成を刺激し、補助するための、血流を改善するための、末梢虚血事象によって損傷された骨格筋を再生し、修復し、改善するための、そして、虚血性損傷から骨格筋を保護するためのものである。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願に対するクロスリファレンス〕
本願は、2005年12月28日に出願した、米国特許仮出願第60/754,366号に対する利益を主張するものであり、参照により内容を全体的に組み入れる。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、末梢血管疾患患者、特に末梢虚血を有する患者のための、細胞に基づいた再生治療の分野に関する。具体的に、本発明は、血管形成を刺激し、補助する能力、血流を改善する能力、末梢虚血事象によって損傷された骨格筋を再生し、回復し、改善する能力、および、虚血性の損傷から骨格筋を保護する能力を有する分娩後組織に由来する細胞を提供する。
【0003】
〔発明の背景〕
特許、公開公報、技術文献、学術文献を含む様々な刊行物を、明細書全体を通じて引用する。これらの引用刊行物のそれぞれを、参照により、全体として本願に組み入れる。
【0004】
末梢血管疾患(peripheral vascular disease)(PVD)は、血管のアテローム性動脈硬化による閉塞の結果、特に、手足および心臓から遠位の場で生じる可能性があり、その結果、血流の減少、ならびに、閉塞の近傍および下流の組織に対して不十分な酸素灌流を引き起こす。PVDはしばしば、腸骨血管、大腿部および膝窩部の血管、鎖骨下部の血管に顕在的であり、その影響は、血栓、塞栓、もしくは、外傷によって激化することがありうる。米国では、約800万〜1,200万人の人々、特に高齢で糖尿病である人々が、PVDに苦しんでいると予測されている。
【0005】
PVDの一般的症状は、上肢下肢および四肢の痙攣、手足および四肢のしびれ、虚弱、筋肉疲労、痛み、手足および四肢の低体温、四肢の変色、乾性もしくは鱗状皮膚、ならびに、高血圧を含む。最も一般的症状は、跛行、すなわち、歩くことといった何らかの形の運動の間に起こるが、休息期間後に自己回復するような、閉塞血管の下流の筋肉における痛み、圧迫感、疲労の感覚である。
【0006】
病態生理学的な観点では、閉塞血管は、閉塞の部位およびその遠位において、組織の虚血を引き起こす。この虚血は、概して、末梢虚血と呼ばれ、心臓から遠位の場所で起こることを意味する。虚血の重症度は、閉塞の大きさおよび数の作用、閉塞が筋肉もしくは臓器の近くであるかどうか、ならびに、十分な重複性の脈管構造であるかどうか、である。より重症な場合には、虚血は結果的に患部組織の死をもたらし、そして、結果的に患部手足の切断、もしくは、患者の死さえもたらすことがある。
【0007】
より重症な場合のPVDを治療するための現行の方法は、化学療法措置、血管形成術、ステントの挿入、再建手術、バイパス移植、患部組織の切除もしくは切断を含む。不幸にも、多くの患者にとって、このような介入治療は、限定的な成功のみを示し、多くの患者は、状態もしくは症状の悪化を経験する。
【0008】
現在、組織損傷を修復し、逆転することを助けるために、分裂し、分化することのできる幹細胞、もしくは、平滑筋細胞、骨格筋細胞を含む他の原料由来の筋肉細胞を使用することに対する関心がある。標的組織を再構成するための臨床上の道具として、幹細胞の移植を利用することができ、それによって、生理学上、解剖学上の機能性を回復する。幹細胞技術の適用は広範囲にわたり、組織工学、遺伝子治療送達、および、細胞治療、すなわち、これらの薬剤を産生するか、これらの薬剤を含む外因的に供給された生細胞もしくは細胞成分を経由して、生物治療薬を標的位置へと送達することを含む[概説については、Tresco, P.A. 他, (2000) Advanced Drug Delivery Reviews 42: 2-37を参照されたい]。幹細胞の同定は、再生医療のための特定の細胞型を選択的に生成することをねらいとした研究を刺激してきた。
【0009】
幹細胞の治療上の潜在能力の実現に対する1つの障害は、十分な数の幹細胞を入手することの困難性であった。胚組織もしくは胎児組織は、幹細胞の1つの原料である。胚性幹細胞および胚性前駆細胞は、ヒトを含むいくつかの哺乳類種から単離されてきたし、いくつかのこのような細胞型は、自己再生し、増殖することができることが示されてきたし、いくつかの異なる細胞系統へ分化することが示されてきた。しかし、胚性原料もしくは胎児性原料由来の幹細胞の導出は、他の分化多能性細胞もしくは分化万能性細胞の原料を同定することによって避けることが望ましい、多くの倫理上、道徳上の課題を提起してきた。
【0010】
臍帯、胎盤のような分娩後組織は、幹細胞の代替原料として関心を生んできた。例えば、胎盤を灌流することによって、または、臍帯血もしくは臍帯組織を収集することによって、幹細胞を回収するための方法が説明されてきた。これらの方法から幹細胞を調達することを制限するものは、臍帯血の不十分な量もしくは入手された細胞の量であり、これらの原料から入手された細胞集団の不均一性、もしくは、特徴づけの欠如であった。
【0011】
骨格筋の修復、再生、改善のための、血管形成の刺激および/もしくは補助のための、ならびに、特にPVD患者における、末梢虚血事象後の血流の改善のための様々な診断上、治療上の適用において、骨格筋系統、周皮細胞系統、もしくは、血管系統へと分化する能力を有するこのような細胞の実質的に均一な集団についての、信頼可能で、よく特徴づけられた、豊富な量の供給には、利点がある。
【0012】
〔発明の概要〕
本発明の1つの態様は、末梢血管疾患を有する患者を治療する方法であって、分娩後由来細胞を、末梢血管疾患を治療するために有効な量で、患者に投与することを含み、分娩後由来細胞は、実質的に血液を含まないヒトの胎盤組織もしくは臍帯組織に由来し、細胞は、培養中で自己再生し、増加することができ、少なくとも、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮の表現型の細胞へと分化する能力を有し、細胞は、成長のためにL−バリンを要求し、少なくとも約5%の酸素中で成長することができ、細胞は、以下の特徴、
(a)培養中で、少なくとも約40回倍加する能力があること、
(b)コートされた組織培養容器、もしくは、コートされていない組織培養容器上に、付着し、増加することであって、前記コートされた組織培養容器は、ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオルニチン、ビトロネクチン、もしくは、フィブロネクチンのコーティングを備える、容器上に、付着し、増加すること、
(c)組織因子、ビメンチン、および、α平滑筋アクチンのうちの少なくとも1つを産生すること、
(d)CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr-alpha、PD-L2、HLA-A、HLA-B、および、HLA-Cのうちの少なくとも1つを産生すること、
(e)フローサイトメトリーによって検出されたときに、CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7-H2、HLA-G、HLA-DR、HLA-DP、および、HLA-DQのうちの少なくとも1つを産生していないこと、
(f)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、interleukin 8、reticulon 1、chemokine (C-X-C motif) ligand 1 (melanoma growth stimulating activity, alpha)、chemokine (C-X-C motif) ligand 6 (granulocyte chemotactic protein 2)、chemokine (C-X-C motif) ligand 3、tumor necrosis factor, alpha-induced protein 3、C-type lectin superfamily member 2、Wilms tumor 1、aldehyde dehydrogenase 1 family member A2、renin、oxidized low density lipoprotein receptor 1、Homo sapiens clone IMAGE:4179671、protein kinase C zeta、hypothetical protein DKFZp564F013、downregulated in ovarian cancer 1、および、Homo sapiens gene from clone DKFZp547k1113のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について増加すること、
(g)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは、腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、short stature homeobox 2、heat shock 27kDa protein 2、chemokine (C-X-C motif) ligand 12 (stromal cell-derived factor 1)、elastin (supravalvular aortic stenosis, Williams-Beuren syndrome)、Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp586M2022 (from clone DKFZp586M2022)、mesenchyme homeobox 2 (growth arrest-specific homeobox)、sine oculis homeobox homolog 1 (Drosophila)、crystallin, alpha B、disheveled associated activator of morphogenesis 2、DKFZP586B2420 protein、similar to neuralin 1、tetranectin (plasminogen binding protein)、src homology three (SH3) and cysteine rich domain、cholesterol 25-hydroxylase、runt-related transcription factor 3、interleukin 11 receptor, alpha、procollagen C-endopeptidase enhancer、frizzled homolog 7 (Drosophila)、hypothetical gene BC008967、collagen, type VIII, alpha 1、tenascin C (hexabrachion)、iroquois homeobox protein 5、hephaestin、integrin, beta 8、synaptic vesicle glycoprotein 2、neuroblastoma, suppression of tumorigenicity 1、insulin-like growth factor binding protein 2, 36kDa、Homo sapiens cDNA FLJ12280 fis, clone MAMMA1001744、cytokine receptor-like factor 1、potassium intermediate/small conductance calcium-activated channel, subfamily N, member 4、integrin, beta 7、transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、sine oculis homeobox homolog 2 (Drosophila)、KIAA1034 protein、vesicle-associated membrane protein 5 (myobrevin)、EGF-containing fibulin-like extracellular matrix protein 1、early growth response 3、distal-less homeobox 5、hypothetical protein FLJ20373、aldo-keto reductase family 1, member C3 (3-alpha hydroxysteroid dehydrogenase, type II)、biglycan、transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、fibronectin 1、proenkephalin、integrin, beta-like 1 (with EGF-like repeat domains)、Homo sapiens mRNA full length insert cDNA clone EUROIMAGE 1968422、EphA3、KIAA0367 protein、natriuretic peptide receptor C/guanylate cyclase C (atrionatriuretic peptide receptor C)、hypothetical protein FLJ14054、Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp564B222 (from clone DKFZp564B222)、BCL2/adenovirus E1B 19kDa interacting protein 3-like、AE binding protein 1、cytochrome c oxidase subunit VIIa polypeptide 1 (muscle)、similar to neuralin 1、B cell translocation gene 1、hypothetical protein FLJ23191、および、DKFZp586L151のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について減少すること、
(h)MCP-1、IL-6、IL-8、GCP-2、HGF、KGF、FGF、HB-EGF、BDNF、TPO、MIP1a、RANTES、および、TIMP1のうちの少なくとも1つを分泌すること、ならびに、
(i)ELISAによって検出されたときに、TGF-beta2、ANG2、PDGFbb、MIP1b、I309、MDC、および、VEGFのうちの少なくとも1つを分泌していないこと、
のうちの少なくとも1つを更に含む、方法を特色とする。
【0013】
具体的な実施態様では、末梢血管疾患は、末梢虚血である。ある実施態様では、細胞は、投与に先立って、試験管内で、骨格筋系統、血管平滑筋系統、周皮細胞系統、もしくは、血管内皮系統の細胞へと分化するように誘導される。他の実施態様では、細胞は、末梢血管疾患の治療を推進する遺伝子産物を産生するように遺伝子操作される。
【0014】
方法のいくつかの実施態様では、細胞は、少なくとも1つの他の細胞型とともに投与され、それらは、骨格筋細胞、骨格筋前駆細胞、血管平滑筋細胞、血管平滑筋前駆細胞、周皮細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、または、他の分化多能性幹細胞もしくは分化万能性幹細胞を含んでもよい。他の細胞型は、分娩後由来細胞と同時に、分娩後由来細胞の前に、分娩後由来細胞の後に、投与されうる。
【0015】
他の実施態様では、細胞は、少なくとも1つの他の薬剤とともに投与され、それらは、例えば、抗血栓形成薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、免疫調節薬、前血管形成薬(pro-angiogenic)、もしくは、抗アポトーシス薬であってもよい。他の薬剤は、分娩後由来細胞と同時に、分娩後由来細胞の前に、分娩後由来細胞の後に、投与されうる。
【0016】
細胞は、好ましくは、末梢虚血の部位もしくはその近位に投与されるが、末梢虚血に対して遠位の部位にも投与されうる。それらは、注射、輸液、患者に埋め込まれた装置、または、細胞を含むマトリックスもしくは足場の埋め込みによって、投与されうる。細胞は、患者の骨格筋、血管平滑筋、もしくは、血管内皮における増殖のような栄養作用を及ぼしてもよい。細胞は、末梢虚血のような末梢血管疾患の部位への、骨格筋細胞、血管平滑筋細胞、血管内皮細胞、骨格筋前駆細胞、周皮細胞、血管平滑筋前駆細胞、もしくは、血管内皮前駆細胞の遊走を誘導してもよい。
【0017】
本発明のその他の態様は、末梢血管疾患を有する患者を治療するための、製薬組成物およびキットを特色とし、それらは、製薬上許容できるキャリアと、上記で説明した分娩後由来細胞、もしくは、このような分娩後由来細胞から作られる準備物(preparations)と、を含む。いくつかの好まれる実施態様では、準備物は、FGFおよびHGFを含む。製薬組成物およびキットは、上記に概略を述べたような本発明の方法を実践するために、設計され、および/もしくは、処方される。
【0018】
本発明のその他の態様に従って、上記で説明した方法は、分娩後由来細胞から作られた準備物を用いて、実践されてもよい。その準備物は、分娩後由来細胞の細胞可溶化物、分娩後由来細胞の細胞外マトリックス、もしくは、分娩後由来細胞が成長した馴化培地を含む。このような準備物は、FGFおよびHGFを含むことが好まれる。
【0019】
本発明の他の態様は、分娩後由来細胞の細胞可溶化物、細胞外マトリックス、もしくは、馴化培地を含む準備物を含有する、製薬組成物およびキットを特色とする。
【0020】
本発明の他の特色および利点は、以下の詳細な説明および実施例を参照することによって理解されるだろう。
【0021】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、内皮細胞の増殖におけるhUTCロット番号120304、MSC、および、線維芽細胞の効果を示す。共培養培地(ヘイフリック培地80%+EGM-2MV培地20%、もしくは、ヘイフリック培地50%+EGM-2MV培地50%)中、24ウェル組織培養皿の底の上に、内皮細胞を5,000細胞/cm(10,000細胞/ウェル)の密度で接種し、トランスウェルインサート(transwell insert)の内側に、hUTCロット番号120304、MSC、もしくは、線維芽細胞を5,000細胞/cm(1,650細胞/インサート)で接種した。共培養7日後、細胞を採取し、Guava装置を用いてカウントした。また、EGM-2MV培地中に、内皮細胞を陽性対照として維持した。A:HUVEC、B:HCAEC、C:HIAEC。
【0022】
図2は、内皮細胞の増殖におけるhUTCロット番号120304および中和抗体の効果を示す。共培養培地(ヘイフリック培地50%+EGM-2MV培地50%)中、24ウェル組織培養皿の底の上に、HUVECもしくはHCAECを5,000細胞/cm(10,000細胞/ウェル)の密度で接種し、トランスウェルインサートの内側に、hUTCロット番号120304を、5,000細胞/cm(1,650細胞/インサート)で接種した。また、この時、FGF(7μg/mL)、HGF(1μg/mL)、もしくは、VEGF(1μg/mL)に対する中和抗体を加えた。共培養7日後、細胞を採取し、Guava装置を用いてカウントした。また、EGM-2MV培地中に、内皮細胞を陽性対照として維持した。成長因子単独で処理した細胞、ならびに、成長因子と中和抗体で処理した細胞について示す。A:HUVEC、B:HCAEC。
【0023】
図3は、HUVECの増殖におけるhUTCロット番号120304細胞可溶化物および中和抗体の効果を示す。EGM-2MV培地中、24ウェル組織培養皿の底の上に、HUVECを5,000細胞/cm(10,000細胞/ウェル)の密度で、8時間、接種した。その後、0.5%FBSを含み成長因子を含まないEGM-2MV培地0.5mL中で、一晩インキュベーションすることによって、細胞を血清枯渇した。その後に、FBS、新たに準備したhUTCロット番号120304細胞可溶化物、FGF(7μg/mL)もしくはHGF(1μg/mL)に対する中和抗体を加えた。培養4日後、細胞を採取し、Guava装置を用いてカウントした。明灰色の棒:培地対照、中間の灰色の棒:タンパク質62.5μgを含む可溶化物とともにインキュベーションしたHUVEC、暗灰色の棒:タンパク質125μgを含む可溶化物とともにインキュベーションしたHUVEC。
【0024】
図4は、内皮細胞の遊走におけるhUTCおよびMSCの効果を示す。共培養培地(ヘイフリック培地50%+EGM-2MV培地50%)中、トランスウェルインサートの内側に、HUVECもしくはHCAECを5,000細胞/cm(23,000細胞/インサート)の密度で接種し、6ウェル組織培養皿の底の上に、hUTCロット番号120304もしくはMSCを5,000細胞/cm(48,000細胞/ウェル)の密度で接種した。共培養7日後、トランスウェルインサートの下側にある細胞を採取し、Guava装置を用いてカウントした。また、EGM-2MV培地中に、内皮細胞を対照として維持した。A:HUVEC、B:HCAEC。
【0025】
図5は、内皮細胞の遊走におけるhUTCロット番号120304 および中和抗体の効果を示す。共培養培地(ヘイフリック培地50%+EGM-2MV培地50%)中、トランスウェルインサートの内側に、HUVECもしくはHCVECを5,000細胞/cm(23,000細胞/インサート)の密度で接種し、6ウェル組織培養皿の底の上に、hUTCロット番号120304を5,000細胞/cm(48,000細胞/ウェル)の密度で接種した。この時、FGF(7μg/mL)、もしくは、HGF(1μg/mL)に対する中和抗体を加えた。共培養7日後、トランスウェルインサートの下側にある細胞を採取し、Guava装置を用いてカウントした。また、EGM-2MV培地中に、内皮細胞を対照として維持した。A:HUVEC、B:HCAEC。
【0026】
〔発明の詳細な説明〕
明細書および特許請求の範囲全体を通じて、様々な用語を用いる。このような用語は、他に指示しない限り、本分野における通常の意味が与えられる。他の特別に定義した用語は、本願で提示した定義と整合した方法で解釈される。
【0027】
「幹細胞」は、自己再生することができ、子孫細胞を産生するように分化することができるという単一細胞の両能力によって規定される未分化細胞であり、その細胞は、自己再生性前駆細胞、非再生性前駆細胞、最終分化細胞を含む。また、幹細胞は、試験管内で多様な胚葉(内胚葉、中胚葉、外胚葉)から様々な細胞系統の機能性細胞へと分化する能力によっても特徴づけられるし、移植後、多様な胚葉の組織を生じ、胚盤胞への注入後、すべてとは限らないが、実質的にほとんどの組織に寄与する能力によっても特徴づけられる。
【0028】
幹細胞は、発生能力に応じて、(1)「分化全能性(totipotent)」、(2)「分化万能性(pluripotent)」、(3)「分化多能性(multipotent)」、(4)「複分化能性(oligopotent)」、(5)「単分化能性(unipotent)」に分類される。「分化全能性」細胞は、すべての胚細胞型および胚外細胞型を生じさせることができる。「分化万能性」細胞は、すべての胚細胞型を生じさせることができる。「分化多能性」細胞は、細胞系統の部分集合ではあるが、特定の組織、臓器、もしくは、生理系内にあるすべての細胞を生じさせることができるものを含む。例えば、造血幹細胞(hematopoietic stem cell)(HSC)は、HSC(自己再生性)、血液細胞に制限された複分化能性の前駆体、および、血液の正常成分であるすべての細胞型および要素(例えば、血小板)を含む子孫細胞を産生することができる。「複分化能性」である細胞は、分化多能性幹細胞よりも、より制限された細胞系統の部分集合を生じさせることができる。「単分化能性」である細胞は、単一の細胞系統を生じさせることができる(例えば、精子形成幹細胞)。
【0029】
幹細胞は、それらが入手される原料を基礎としても、類別される。「成体幹細胞」は、概して、多様に分化した細胞型を含む組織で見られる、分化多能性の未分化細胞である。成体幹細胞は、それ自体で再生することができる。通常環境下では、起源した組織の特殊化した細胞型、および、可能ならば他の組織型を生産するために分化することができる。「胚性幹細胞」は、胚盤胞期の胚の内細胞塊由来の分化万能性細胞である。「胎生」幹細胞は、胎児組織もしくは胎膜から起源する細胞である。「分娩後幹細胞(postpartum stem cell)」は、出生後利用可能な胚外組織、すなわち、胎盤および臍帯から実質的に起源する分化多能性細胞もしくは分化万能性細胞である。これらの細胞は、急速増殖および多くの細胞系統への分化能を含む分化万能性幹細胞を特徴づける特色を有することが、見出されてきた。分娩後幹細胞は、血液由来(たとえば、臍帯血から入手されるような)であっても、非血液由来(たとえば、臍帯および胎盤の非血液組織から入手されるような)であってもよい。
【0030】
「胚組織」は、一般的に、胚から起源する組織として定義される(ヒトでは、受精から発生約6週までの時期をいう)。「胎児組織」は、胎児起源の組織をいい、ヒトでは、発生約6週から分娩までの時期をいう。「胚外組織」は、胚もしくは胎児からは起源しないが、それらに関連する組織である。胚外組織は、胚外膜(絨毛膜、羊膜、卵黄嚢、尿膜)、臍帯、胎盤(それ自身が絨毛膜、母体脱落膜底部から形成される)を含む。
【0031】
「分化」は、非特殊化した(「コミットしていない」)細胞、もしくは、あまり特殊化していない細胞が、例えば、神経細胞もしくは筋細胞のような特殊化した細胞の特色を獲得するプロセスである。「分化」細胞は、細胞系統内でより特殊化した(「コミットした」)地位につく細胞である。用語「コミットした」は、分化のプロセスに適用する場合、通常環境下で、特定の細胞型もしくは細胞型の部分集合へと分化し続けるであろう時点まで、そして、通常環境下で、異なる細胞型へと分化することができず、もしくは、あまり分化していない細胞に戻ることができない時点まで、分化の経路を進んできた細胞をいう。「脱分化」は、細胞が、細胞系統内で、あまり特殊化(すなわち、コミット)していない地位に戻るプロセスをいう。本願で用いる、細胞「系統」は、細胞の遺伝的性質、すなわち、細胞がどの細胞から生じたか、どんな細胞を生じさせることができるかということを規定する。細胞系統は、発生および分化の遺伝的スキームの中に、その細胞を位置付ける。
【0032】
広義には、「前駆細胞」は、それ自身よりも更に分化した子孫細胞を作り出す能力を有し、更に、前駆細胞の集合を補充する能力を保持する細胞である。その定義によると、幹細胞それ自体もまた、前駆細胞である。というのは、幹細胞は、最終分化細胞のまさに直接の前駆体であるからである。本発明の細胞についていえば、以下により詳細に説明するように、この広義の前駆細胞を用いることがある。より狭義には、前駆細胞はしばしば、分化経路における中間体であると定義される。すなわち、前駆細胞は幹細胞から生じ、成熟した細胞型もしくは細胞型の部分集合の産生における中間体である。この型の前駆細胞は概して、自己再生することができない。したがって、本願で、この型の細胞について言及する場合、「非自己再生性前駆細胞」あるいは「中間前駆細胞」もしくは「中間前駆体細胞」と呼ぶだろう。
【0033】
本願で用いるような、表現「中胚葉系統、外胚葉系統、もしくは、内胚葉系統へと分化する」は、特定の中胚葉系統、外胚葉系統、もしくは、内胚葉系統それぞれにコミットした細胞についていう。内胚葉系統へと分化し、もしくは、特定の内胚葉細胞を生じる細胞の例は、限定されないが、脂肪原性、軟骨原性、心原性、皮膚原性、造血性、血管原性(hemangiogenic)、筋原性、腎原性、尿生殖器原性(urogenitogenic)、骨原性、周心原性(pericardiogenic)、もしくは、間質性である細胞を含む。外胚葉系統へと分化する細胞の例は、限定されないが、表皮細胞、神経原性細胞、神経膠原性細胞を含む。内胚葉系統へと分化する細胞の例は、限定されないが、胸膜原性細胞、肝原性細胞、腸の裏層を生じる細胞、膵原性細胞および内臓原性細胞を生じる細胞を含む。
【0034】
本発明で使用する細胞は概して、「分娩後細胞(postpartum cell)」もしくは「分娩後由来細胞(postpartum-derived cell)(PPDC)」と呼ばれる。また、それらは時折、より具体的に、「臍由来細胞(umbilicus-derived cell)(UDC)」もしくは「胎盤由来細胞(placenta-derived cell)(PDC)」と呼ばれてもよい。その上、細胞を、幹細胞もしくは前駆細胞として説明してもよく、後者の用語は広義に用いられる。用語「由来した」は、細胞を、その生物由来原料から入手し、成長させ、もしくは、別に試験管内で操作してきた(例えば、集団を増加し、および/もしくは、細胞株を産生するために、成長培地中で培養してきた)ことを示すために用いられる。臍幹細胞の試験管内操作、および、本発明の臍由来細胞特有の特色を、以下に詳細に説明する。
【0035】
「周皮細胞」は、本分野では、ルージェ細胞(Rouget cell)もしくは壁細胞としても知られており、一般的に微小血管の血管基底膜内に包埋されていることが見られる細胞をいい[Armulik A et al. (2005) Circ. Res. 97: 512-23]、とりわけ、内皮細胞との情報交換/シグナル伝達、血管収縮、血管拡張、血流調節、脈管構造の形成と発生、血管形成、および、内皮の分化と成長停止において、役割を果たしていると考えられている[Bergers G et al. (2005) Neuro-Oncology 7: 452-64]。
【0036】
培養中の細胞を説明するために、様々な用語を用いる。「細胞培養」は、概して、生きている生物から採取され、制御条件下(「培養中で」もしくは「培養された」)で成長する細胞をいう。「初代細胞培養」は、生物から直接採取された細胞、組織、もしくは、臓器を、最初の二次細胞前に培養することである。細胞増殖および/もしくは細胞分裂を促進する条件下で、細胞培地中に播かれる場合、細胞は培養中で「増加」し、その結果、より大きな細胞集団を形成する。細胞が培養中で増加した場合、細胞増殖速度は、時折、細胞が数において倍加するために必要な時間の長さによって測定される。これを「倍加時間」という。
【0037】
「細胞株」は、初代細胞培養の1回以上の二次培養によって形成された細胞集団である。二次培養の各ラウンドは、「継代」と呼ばれる。細胞を二次培養する場合、それらの細胞は「継代されて」きたといわれる。特定の細胞集団、すなわち、細胞株は、時折、継代されてきた回数で呼ばれるか、またはその回数によって特徴づけられる。例えば、10回継代されてきた細胞培養集団は、「P10」培養と呼ばれうる。初代培養、すなわち、組織から細胞単離後の最初の培養は、P0と表される。最初の二次培養後、細胞は、2度目の培養(P1、または、1代継代)と説明される。2度目の二次培養後、細胞は3度目の培養(P2、または、2代継代)になる、等である。継代期間中、多くの集団倍加があるかもしれないことが、当業者に理解されるだろう。それゆえに、培養物の集団倍加数は、継代数よりも大きくなる。継代の期間中、細胞の増加(すなわち、集団倍加数)は、多くの要因に依存する。その要因は、限定されないが、接種密度、基質、培地、成長条件、および、継代間の時間を含む。
【0038】
「馴化培地」は、特定の細胞もしくは細胞集団を培養してきて、その後、それらを取り除いた培地である。細胞を培地中で培養する場合、他の細胞に栄養的補助を提供することのできる細胞因子を分泌するかもしれない。このような栄養因子は、限定されないが、ホルモン、サイトカイン、細胞外マトリックス(extracellular matrix)(ECM)、タンパク質、小胞、抗体、小粒を含む。その細胞因子を含む培地が馴化培地である。
【0039】
概して、「栄養因子」は、細胞の生存、成長、増殖、および/もしくは、成熟を推進するか、または細胞の活性を高めるように刺激する物質として定義される。
【0040】
培養脊椎動物細胞について言及する場合、用語「老化」(「複製老化」「細胞老化」とも)は、有限の細胞培養に起因する特性、すなわち、集団倍加の有限数を超えて成長することができないこと(時折、「ヘイフリック限界」と呼ばれる)についていう。細胞老化は、最初に線維芽様細胞を用いて説明されたが、培長中でうまく成長しうる正常なヒト細胞のほとんどが、細胞老化を経験する。異なる細胞型の試験管内での寿命は変動するが、最大寿命は一般的に100回の集団倍加より少ない(これは、培養中で老化し、それゆえに分裂できないようになったすべての細胞に対する倍加数のことである)。老化は経過時間には依存しないが、むしろ、細胞分裂数、すなわち、培養物が経験してきた集団倍加数によって測定される。このように、必須成長因子を除去することによって休眠した細胞は、成長因子を再導入する場合に、成長および分裂を再開することができ、その後、継続的に成長した細胞と同等の、同数の倍加を実行する。同様に、様々な回数の集団倍加後、細胞を液体窒素で凍結、その後、解凍し培養した場合、細胞は、培養中で未凍結のままに維持された細胞と、実質的に同数の倍加を経験する。老化細胞は、死んでいる細胞でも、死につつある細胞でもない。それらは、実際にプログラム細胞死(アポトーシス)に耐えているし、3年間は分裂しない状態で維持されてきた。これらの細胞は、まさに生存しており、代謝的には活性であるが、分裂しない。老化細胞の非分裂状態は、任意の生物学的因子、化学的因子、もしくは、ウイルス性因子によって、元には戻ることは、まだ分かっていない。
【0041】
本願で用いるように、用語「成長培地」は概して、分娩後由来細胞を培養するために十分な培地をいう。具体的には、本発明の細胞を培養するために、現在好まれる1つの培地は、ダルベッコ変法必須培地(Dulbecco's Modified Essential Media)(DMEM)を含む。特に好まれるのは、DMEM低グルコース(DMEM-low glucose)(DMEM-LG)(Invitrogen, Carlsbad, CA)である。DMEM-LGは、好ましくは、血清、最も好ましくは、ウシ胎仔血清もしくはヒト血清を補完される。一般的に、15%(v/v)ウシ胎仔血清(例えば、規定ウシ胎仔血清;Hycone, Logan UT)を、抗生物質/抗真菌薬(好ましくは、ペニシリン100U/mL、ストレプトマイシン100mg/mL、アンフォテリシンB0.25μg/mL;Invitrogen, Carlsbad, CA)、0.001%(v/v)2−メルカプトエタノール(Sigma, St. Louis MO)とともに加える。いくつかの場合では、異なる成長培地が用いられ、異なる補完物が提供される。これらは通常、成長培地への補完物として、文章で指定される。ある既知組成培地では、細胞は、血清が全く存在することがない中で成長してもよい。このような場合、細胞は、細胞を補助し持続するために培地に加えることのできる、特定の成長因子を要求してもよい。血清を含まない培地に成長のために添加することが現在好まれる因子は、bFGF、EGF、IGF-1、PDGFのうちの1つ以上を含む。より好まれる実施態様では、2、3、もしくは、4つすべての因子を、血清を含まない培地、もしくは、既知組成培地に添加する。他の実施態様では、細胞の成長を補助するため、もしくは、改善するために、LIFを、血清を含まない培地に添加する。
【0042】
また、本発明に関連して本願で用いるような用語「標準成長条件」は、5%COを含む標準大気中、37℃で、細胞を培養することをいう。相対湿度は約100%で維持される。このような条件は培養に有用であるが、細胞を培養するための分野において利用できる選択肢を十分に理解できるであろう当業者によって、変更されうることが理解される。
【0043】
用語「有効な量」は、本願で説明するように、特定の生物学的結果を達成するために有効である化合物、材料、もしくは、組成物の、濃度もしくは量をいう。このような結果は、限定されないが、末梢虚血患者における、骨格組織の再生、修復、もしくは、改善、血流の改善、ならびに/または、血管形成の刺激および/もしくは補助を含む。このような有効な活性を、例えば、本発明の細胞および/もしくは組成物を、末梢虚血患者に投与することによって、達成してもよい。生体内で患者に投与するようなPPDCに関して、有効な量は、数百個以下の範囲から数百万個以上の範囲であってもよい。具体的な実施態様では、有効な量は、10〜1011個の範囲であってよいし、より具体的には、少なくとも約10個の細胞であってよい。投与する細胞数は、治療する疾患の特質に応じて変動するだろうことが理解されるだろう。その特質は、限定されないが、医薬生物学者によく知られた他の因子のうち、治療する大きさ、もしくは、全体量/表面積を含むし、治療する領域の位置に対する投与部位の近さを含む。
【0044】
用語「治療する」「治療すること」もしくは「治療」は、傷害、病態、もしくは、病状の減弱もしくは改良における、任意の成功もしくは成功の兆候をいい、任意の客観的もしくは主観的なパラメータを含む。そのパラメータは、例えば、変性速度もしくは衰微速度を低下させ、変性の最終時点をあまり衰弱しないものにし、被験者の肉体的安静もしくは精神的安静を改善し、または、生存期間を延長することによって、症状の減退、鎮静、消滅、または、傷害、病状、もしくは、病態を患者に対してより耐えうるものにするようなものである。症状の治療もしくは改良は、客観的もしくは主観的なパラメータに基づきうる。そのパラメータは、身体検査、神経検査、および/または精神学的評価の結果を含む。
【0045】
用語「有効な期間(もしくは、有効な時間)」および「有効な条件」は、意図した結果を達成するための薬剤もしくは製薬組成物に対して、必要とされるか、または好まれる期間もしくは他の制御可能条件(例えば、試験管内法のための温度、湿度)をいう。
【0046】
用語「患者」もしくは「被験者」は、本願ではほとんど同じ意味で用いられ、製薬組成物もしくは治療組成物で治療する、あるいは、本願で説明する方法にしたがって治療する動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトをいう。
【0047】
「虚血」は、脈管構造の任意の狭窄もしくは閉塞によって引き起こされる、任意の身体器官、組織、もしくは、部分への血液供給の任意の減少もしくは停止をいう。「虚血発作」もしくは「虚血事象」は、本願ではほとんど同じ意味で用いられ、一時的な、もしくは、永続的な任意の期間の虚血をいう。「末梢虚血」は、脈管構造の任意の狭窄もしくは閉塞によって引き起こされる、心臓を除く任意の身体器官、組織、もしくは、部分への血液供給の任意の減少もしくは停止をいう。「末梢血管疾患」は、心臓および脳の外側の血管の疾患をいう。それはしばしば四肢へ血液を運搬する血管が狭くなることを伴い、2種類の循環器疾患の結果起こる。すなわち、(1)血管を細くする短期の痙攣を伴う機能性末梢血管疾患、(2)例えば、炎症もしくは脂肪性の封鎖によって引き起こされるような、血管の構造変化を伴う器質性末梢血管疾患、である。
【0048】
用語「製薬上許容できるキャリア、もしくは、培地」は、本願では、「生物学上適合性のあるキャリア、もしくは、培地」とほとんど同じ意味で用いられてもよく、治療上投与する細胞および他の薬剤と適合性があるだけではなく、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な損益率に見合うように、過度の毒性、炎症、アレルギー反応、もしくは、他の合併症なしに、ヒトおよび動物の組織に接触して用いるのに適当な試薬、細胞、化合物、材料、組成物、および/もしくは、剤形についてもいう。本願でより詳細に説明するように、本発明で使用するために適当な製薬上許容できるキャリアは、液体材料、半固体材料(例えば、ゲル)、および、固体材料(例えば、細胞足場およびマトリックス、チューブシート、ならびに、本分野において既知であり、本願においてより詳細に説明する他の材料)を含む。このような半固体材料および固体材料を、体内での分解に耐えるように設計してもよいし(非生分解性)、体内で分解するように設計してもよい(生分解性、生侵食性)。生分解性材料は更に、「生吸収性」もしくは「生体吸収性」であってもよい。すなわち、体液中に溶解され、吸収されてもよいし(水溶性インプラントはその一例である)、他の材料への変換、もしくは、天然経路を通じた分解、排出のいずれかによって、分解され、最終的に体から排出されてもよい。生分解速度は、一度体に埋め込まれた、望まれる放出速度にしたがって変動しうる。また、マトリックスは望ましくは、新たに成長する骨格筋、周皮細胞、血管平滑筋、もしくは、血管内皮組織によって置換されるまで、一時的な足場として作用する。それゆえに、1つの実施態様では、マトリックスは、分娩後由来細胞とあわせて用いられる他の薬剤の持続される放出を提供する。他の実施態様では、マトリックスは単に、発生している組織のための一時的な足場を提供する。マトリックスは、微粒子形態(直径10ミクロンより大きいマクロ粒子、もしくは、直径10ミクロンより小さいマクロ粒子)でありうるし、または、構造的に安定な、三次元インプラントの形態(例えば、足場)でありうる。インプラントは、例えば、立方体、円柱、チューブ、ブロック、フィルム、シート、もしくは、適切な解剖学的形態でありうる。
【0049】
本願では、細胞移植もしくは組織移植に関して、様々な用語を用いる。用語「自家移転」「自家移植」「自家移植片」および同様の用語は、移植提供者が移植受容者でもある移植についていう。用語「同種移転」「同種移植」「同種移植片」および同様の用語は、移植提供者が、移植受容者と同じ種であるが、同じ個体ではない移植についていう。提供者の細胞が被移植者と組織適合性適合である細胞移植は、時折、「同系移転」と呼ばれる。用語「異種移転」「異種移植」「異種移植片」および同様の用語は、移植提供者が移植受容者と異なる種である移植についていう。
【0050】
本願で説明する様々な実施態様では、本発明は、分娩後組織、特に臍組織に由来する前駆細胞および細胞集団を利用する末梢血管疾患を治療するための方法および製薬組成物を特色とする。これらの方法および製薬組成物は、血管形成を刺激、補助するために、血流を改善するために、末梢虚血事象によって損傷された骨格筋を再生、修復、改善するために、および/もしくは、虚血損傷から骨格筋を保護するために設計される。本発明の製薬準備物および方法で用いられる細胞、細胞集団、ならびに、細胞可溶化物、馴化培地、および、同様のものを含む準備物は、米国特許公開第2005/0058631号、同第2005/0054098号で詳細に説明されており、本願でも以下のとおり説明する。
【0051】
本願で説明する方法にしたがって、哺乳類の胎盤もしくは臍帯を、満期妊娠もしくは早産妊娠のいずれかの分娩中、または、分娩直後に(例えば、後産後に)回収する。フラスコ、ビーカー、培養皿、袋といった滅菌容器で、分娩後組織を、分娩室から研究所に輸送してもよい。容器は、溶液もしくは培地を有してもよく、限定されないが、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(ダルベッコ最小必須培地としても知られる)、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline)(PBS)のような食塩水、もしくは、ウィスコンシン大学溶液、ペルフルオロ化合物溶液のような、移植用の臓器輸送のために用いる任意の溶液を含む。限定されないが、ペニシリン、ストレプトマイシン、アンフォテリシンB、ゲンタマイシン、ナイスタチンのような、1つ以上の抗生物質、および/もしくは、抗真菌薬を、培地もしくはバッファーに加えてもよい。ヘパリンを含む溶液のような抗凝結溶液で、分娩後組織をすすいでもよい。PPDC抽出に先立って、組織を約4〜10℃に保つことが好ましい。更により好ましくは、PPDC抽出に先立って、組織を凍結しないことである。
【0052】
好ましくは、PPDC単離は無菌環境で行う。本分野において既知の手段によって、胎盤から臍帯を分離してもよい。または、臍帯および胎盤を分離することなく用いる。好ましくは、PPDC単離に先立って、血液および壊死組織片を分娩後組織から除去する。例えば、限定されないが、リン酸緩衝生理食塩水のようなバッファー溶液で、分娩後組織を洗浄してもよい。また、洗浄バッファーは、限定されないが、ペニシリン、ストレプトマイシン、アンフォテリシンB、ゲンタマイシン、ナイスタチンのような、1つ以上の真菌剤、および/もしくは、抗生物質を含んでもよい。
【0053】
胎盤全体、または、その断片もしくは切片を含む分娩後組織を、機械的な力(刻む力、もしくは、せん断力)によって、ばらばらにしてもよい。現在好まれる実施態様では、単離方法は、酵素的消化プロセスをも利用する。本分野では、培養中で成長を促進するために、複合組織マトリックスから個々の細胞を単離するために有用な、多くの酵素が知られている。消化酵素は、弱い消化酵素[例えば、デオキシリボヌクレアーゼ、中性プロテアーゼのディスパーゼ(dispase)]から強い消化酵素(例えば、パパイン、トリプシン)にまで及び、このような酵素は市販されている。本願に相性のよい酵素の非限定的な一覧は、粘液溶解酵素活性、メタロプロテアーゼ、中性プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ(例えば、トリプシン、キモトリプシン、もしくは、エラスターゼ)、および、デオキシリボヌクレアーゼを含む。現在好まれるものは、メタロプロテアーゼ、中性プロテアーゼ、粘液溶解活性から選択される酵素活性である。例えば、コラーゲナーゼは、組織から様々な細胞を単離するために有用なことが知られている。デオキシリボヌクレアーゼは、一本鎖DNAを消化することができ、単離中、細胞凝集を最小にすることができる。好まれる方法は、例えば、コラーゲナーゼおよびディスパーゼ、もしくは、コラーゲナーゼ、ディスパーゼ、および、ヒアルロニダーゼによる酵素処理を伴う。ある実施態様において、解離ステップにおいて、コラーゲナーゼ、および、中性プロテアーゼのディスパーゼの混合液が用いられる。より特異的な実施態様では、少なくとも1つのヒストリチクム菌(Clostridium histolyticum)由来のコラーゲナーゼ、ならびに、プロテアーゼ活性、ディスパーゼ、および、サーモリシンのいずれかの存在下での消化を採用する。更に他の実施態様は、コラーゲナーゼとディスパーゼ酵素活性との両方による消化を採用する。また、コラーゲナーゼとディスパーゼ活性に加えて、ヒアルロニダーゼ活性による消化を含む方法も利用される。当業者は、様々な組織原料から細胞を単離するために、多くのこのような酵素処理が、本分野において既知であることを十分に理解するだろう。例えば、商標名LIBERASE(Roche, Indianapolis, IN)で販売されている組織分解のための酵素ブレンドは、まさにこの方法において用いるのに適している。他の酵素原料も知られており、当業者は、それらの天然原料から直接このような酵素を入手してもよい。当業者は、本発明の細胞を単離するにあたって有効な、新規の、もしくは、追加的な、酵素、もしくは、酵素の組み合わせを再評価するための知識も、十分に備えている。好まれる酸素処理は、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、もしくは、それ以上の時間である。他の好まれる実施態様では、解離ステップの酵素処理の間、37℃で組織をインキュベーションする。
【0054】
本発明のいくつかの実施態様では、分娩後組織を、組織の様々な態様、例えば、胎盤の、新生児の、新生児/母体の、および、母体の態様を含む切片に分離する。その後、本願で説明する方法に従って、機械的解離、および/もしくは、酵素的解離によって、分離された切片を解離する。本分野において知られる任意の手段、例えば、核型分析、もしくは、Y染色体に対する本来の位置での(in situ)ハイブリダイゼーションによって、新生児系統、もしくは、母体系統の細胞を同定してもよい。
【0055】
PPDCが由来する単離細胞もしくは単離分娩後組織を、細胞培養を開始、すなわち、接種するために用いてもよい。コートされていない滅菌組織培養容器、または、細胞外マトリックスもしくはリガンド[例えば、ラミニン、コラーゲン(天然コラーゲン、変性コラーゲン、架橋コラーゲン)、ゼラチン、フィブロネクチン、他の細胞外マトリックスタンパク質]でコートされている滅菌組織培養容器のいずれかに、単離細胞を移す。PPDCを、細胞の成長を持続することができる任意の細胞培地中で培養する。例えば、その細胞培地は、限定されないが、DMEM(高グルコース、低グルコース)、改良DMEM、DMEM/MCDB201、イーグル基本培地、ハムF10培地(F10)、ハムF12培地(F12)、ヘイフリック培地、イスコブ変法ダルベッコ培地(Iscove's modified Dulbecco's medium)、間充織幹細胞成長培地(Mesenchymal Stem Cell Growth Medium)(MSCGM)、DMEM/F12、RPMI1640、商標名CELL-GRO-FREE(Mediatch, Inc., Herndon, VA)で販売されている血清/培地不含有培地である。培養培地は1つ以上の成分を補完してもよい。例えば、その成分には、ウシ胎仔血清(fetal bovine serum)(FBS)好ましくは約2〜15%(v/v)、ウマ血清(equine serum)(ES)、ヒト血清(human serum)(HS)、β−メルカプトエタノール(BME、2-ME)好ましくは約0.001%(v/v)、1つ以上の成長因子[例えば、血小板由来成長因子(platelet-derived growth factor)(PDGF)、上皮細胞成長因子(epidermal growth factor)(EGF)、線維芽細胞成長因子(fibroblast growth factor)(FGF)、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor)(VEGF)、インスリン様成長因子1(insulin-like growth factor-1)(IGF-1)、白血球阻害因子(leukocyte inhibitory factor)(LIF)、および、エリスロポエチン(erythropoietin)(EPO)]、L−バリンを含むアミノ酸、ならびに、微生物汚染を制御するための1つ以上の抗生物質(例えば、ペニシリンG、硫酸ストレプトマイシン、アンフォテリシンB、ゲンタマイシン、ナイスタチンの単独、もしくは、組み合わせのいずれか)を含む。培養培地は、好ましくは、以下の実施例に規定するような成長培地を含む。
【0056】
細胞を培養容器中に細胞が成長できる密度で接種する。好まれる実施態様では、空気中に約0%〜約5%のCO量で、細胞を培養する。いくつかの好まれる実施態様では、空気中に約2〜約25%のO、好ましくは、空気中約5〜約20%のOで細胞を培養する。好ましくは、約25〜約40℃で細胞を培養し、より好ましくは37℃で培養する。好ましくは、インキュベータ中で、細胞を培養する。培養容器中の培地は、静止状態でありうるし、もしくは、例えば、バイオリアクタを用いて、かき混ぜられうる。好ましくは、低酸化ストレス下で(例えば、グルタチオン、ビタミンC、カタラーゼ、ビタミンE、N−アセチルシステインを添加して)、PPDCを成長させる。本願で用いる「低酸化ストレス」は、培養細胞にフリーラジカルによる損傷を全く与えない条件、もしくは、損傷を最小限にする条件についていう。
【0057】
最も適切な培養培地、培養準備物、細胞培養技術を選択するための方法は、本分野において周知であり、様々な情報源で説明されている。その情報源は、Doyle 他, (編集), 1995, CELL & TISSUE CULTURE: LABORATORY PROCEDURES, John Wiley & Sons, Chichester;および、Ho and Wang (編集), 1991, ANIMAL CELL BIOREACTORS, Butterworth-Heinemann, Bostonを含み、参照により本願に組み入れる。
【0058】
単離細胞もしくは単離組織断片を十分な期間培養した後、PPDCは、分娩後組織からの遊走もしくは細胞分裂、あるいは、その両方のいずれかの結果として、生じるだろう。本発明のいくつかの実施態様では、PPDCを継代し、もしくは、細胞の集団が有糸分裂的に増加することができるような、最初に用いられたのと同一の型、もしくは、異なる型の新鮮な培地を含む別々の培養容器へと、PPDCを取り除く。本発明の細胞を、0代継代と老化との間の、任意の時点で用いてもよい。好ましくは、細胞を約3〜約25回継代し、より好ましくは、約4〜約12回継代し、好ましくは、10回もしくは11回継代する。細胞のクローン集団を単離したことを確認するために、クローニングおよび/もしくはサブクローニングを実施してもよい。
【0059】
本発明のいくつかの態様では、分娩後組織中に存在する異なる細胞型を、PPDCを単離することのできる亜集団に分画する。分割もしくは選択を、細胞分離のための標準技術を用いることで達成してもよい。その技術は、限定されないが、分娩後組織を構成細胞に解離するための酵素処理、その後のクローニングおよび特有の細胞型の選択(限定されないが、形態マーカーおよび/もしくは生化学マーカーに基づく選択を含む);望まれる細胞の選択的な成長(陽性選択)、および、望ましくない細胞の破壊(陰性選択);混合集団中の差異のある細胞凝集能に基づく分離(例えば、ダイズ凝集素による);凍結解凍法;混合集団中での細胞の差異のある固着特性;ろ過;従来型ゾーン遠心分離;遠心分離による懸濁分離法(カウンターストリーミング遠心分離);単位重力分離;逆流分離;電気泳動;蛍光活性化細胞選別(fluorescence activated cell sorting)(FACS)を含む。クローン選択および細胞分離技術の概説については、Freshney, 1994, CULTURE OF ANIMAL CELLS: A MANUAL OF BASIC TECHNIQUES, 3rd Ed., Wiley-Liss, Tnc., New Yorkを参照されたい。また、これは参照により本願に組み入れる。
【0060】
必要に応じて、例えば、ピペットで、例えば、注意深く皿から培地を吸引し、新鮮な培地を補充することによって、培養培地を交換する。細胞の十分な数もしくは密度が皿中に蓄積するまで、インキュベーションを続ける。標準技術もしくは細胞スクレーパーを用いて、元々の外植組織切片を取り除いてもよいし、残りの細胞をトリプシン処理してもよい。トリプシン処理後、細胞を収集し、新鮮な培地へと除去し、上記のとおりインキュベーションする。いくつかの実施態様では、任意の浮遊細胞を除去するために、約24時間の後トリプシン処理で少なくとも1回、培地を交換する。培養中に残っている細胞がPPDCであるとみなされる。
【0061】
PPDCを低温保存してもよい。したがって、以下のとおり詳細に説明する好まれる実施態様では、(母か子かのいずれかについての)自家移転のためのPPDCは、子の誕生後の適切な分娩後組織に由来し、その後、移植のために後に必要とされる事象で利用可能なように、低温保存される。
【0062】
PPDCは、例えば、成長特徴(例えば、継代から老化までの集団倍加能力、倍加時間)、核型分析(例えば、正常な核型、母体系統もしくは新生児系統)、フローサイトメトリー(例えば、FACS分析)、免疫組織化学および/もしくは免疫細胞化学(例えば、エピトープ検出)、遺伝子発現プロファイリング[例えば、遺伝子チップアレイ、ポリメラーゼ連鎖反応(例えば、逆転写PCR、リアルタイムPCR、従来型PCR)]、タンパク質アレイ、タンパク質分泌[例えば、血漿凝固解析、もしくは、例えば、酵素免疫測定法(ELISA)によるPDC馴化培地分析]、混合リンパ球反応(例えば、PBMCの刺激を測定するような)、ならびに/または、本分野で既知の他の方法によって、特徴づけられてもよい。
【0063】
胎盤組織に由来するPPDCの例は、American Type Culture Collection(ATCC;Manassas, VA)に寄託され、ATCC番号を以下のとおり割り当てられた。
(1)系統番号PLA 071003 (P8)、2004年6月15日寄託、ATCC番号PTA-6074
(2)系統番号PLA 071003 (P11)、2004年6月15日寄託、ATCC番号PTA-6075
(3)系統番号PLA 071003 (P16)、2004年6月16日寄託、ATCC番号PTA-6079
臍組織に由来するPPDCの例は、American Type Culture Collectionに2004年6月10日に寄託され、ATCC番号を以下のとおり割り当てられた。
(1)系統番号UMB 022803 (P7)、ATCC番号PTA-6067
(2)系統番号UMB 022803 (P17)、ATCC系統番号PTA-6068
【0064】
様々な実施態様では、PPDCは以下の成長特色を1つ以上有する。
(1)培養中で、成長のためにL−バリンを要求すること
(2)約5%から少なくとも約20%の酸素を含む空気中で成長できること
(3)老化に達する前に、培養中で、少なくとも約40回倍加する能力を有すること
(4)コートされた組織培養容器、もしくは、コートされていない組織培養容器上に付着し、増加することであって、コートされた組織培養容器は、ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオルニチン、ビトロネクチン、もしくは、フィブロネクチンのコーティングを備える、容器上に、付着し、増加すること
【0065】
ある実施態様では、PPDCは、正常な核型を有し、細胞が継代されても維持される。核型分析は、特に、胎盤由来の母体細胞から新生児細胞を同定し、区別するために有用である。核型分析の方法は、本分野の当業者には利用可能であり、既知である。
【0066】
他の実施態様では、PPDCは、特定のタンパク質の産生によって特徴づけられてもよい。それは、フローサイトメトリーで検出されるように、
(1)組織因子、ビメンチン、α平滑筋アクチンのうちの少なくとも1つの産生、
(2)CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr-alpha、PD-L2、HLA-A、HLA-B、HLA-Cという細胞表面マーカーのうちの少なくとも1つの産生、
を含む。他の実施態様では、PPDCは、フローサイトメトリーで検出されたときに、CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7-H2、HLA-G、HLA-DR、HLA-DP、HLA-DQという細胞表面マーカーのうちの少なくとも1つが産生していないことによって、特徴付けられてもよい。特に好まれるのは、組織因子、ビメンチン、α平滑筋アクチンのうちの少なくとも2つを産生する細胞である。より好まれるのは、組織因子、ビメンチン、α平滑筋アクチンの3つタンパク質すべてを産生する細胞である。
【0067】
他の実施態様では、PPDCは、遺伝子発現によって特徴づけられてもよい。その遺伝子発現は、線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは、腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関係するものであり、interleukin 8、reticulon 1、chemokine (C-X-C motif) ligand 1 (melanoma growth stimulating activity, alpha)、chemokine (C-X-C motif) ligand 6 (granulocyte chemotactic protein 2)、chemokine (C-X-C motif) ligand 3、tumor necrosis factor, alpha-induced protein 3、C-type lectin, superfamily member 2、Wilms tumor 1、aldehyde dehydrogenase 1 family member A2、renin、oxidized low density lipoprotein receptor 1、Homo sapiens clone IMAGE:4179671、protein kinase C zeta、hypothetical protein DKFZp564F013、downregulated in ovarian cancer 1、Homo sapiens gene from clone DKFZp547k1113のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について、発現が増加する。
【0068】
更に他の実施態様では、PPDCは、遺伝子発現によって特徴づけられてもよい。その遺伝子発現は、線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは、腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関係するものであり、short stature homeobox 2、heat shock 27kDa protein 2、chemokine (C-X-C motif) ligand 12 (stromal cell-derived factor 1)、elastin (supravalvular aortic stenosis, Williams-Beuren syndrome)、Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp586M2022 (from clone DKFZp586M2022)、mesenchyme homeobox 2 (growth arrest-specific homeobox)、sine oculis homeobox homolog 1 (Drosophila)、crystallin, alpha B、disheveled associated activator of morphogenesis 2、DKFZP586B2420 protein、similar to neuralin 1、tetranectin (plasminogen binding protein)、src homology three (SH3) and cysteine rich domain、cholesterol 25-hydroxylase、runt-related transcription factor 3、interleukin 11 receptor, alpha、procollagen C-endopeptidase enhancer、frizzled homolog 7 (Drosophila)、hypothetical gene BC008967、collagen, type VIII, alpha 1、tenascin C (hexabrachion)、iroquois homeobox protein 5、hephaestin、integrin, beta 8、synaptic vesicle glycoprotein 2、neuroblastoma, suppression of tumorigenicity 1、insulin-like growth factor binding protein 2, 36kDa、Homo sapiens cDNA FLJ12280 fis, clone MAMMA1001744、cytokine receptor-like factor 1、potassium intermediate/small conductance calcium-activated channel, subfamily N, member 4、integrin, beta 7、transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、sine oculis homeobox homolog 2 (Drosophila)、KIAA1034 protein、vesicle-associated membrane protein 5 (myobrevin)、EGF-containing fibulin-like extracellular matrix protein 1、early growth response 3、distal-less homeobox 5、hypothetical protein FLJ20373、aldo-keto reductase family 1, member C3 (3-alpha hydroxysteroid dehydrogenase, type II)、biglycan、transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、fibronectin 1、proenkephalin、integrin, beta-like 1 (with EGF-like repeat domains)、Homo sapiens mRNA full length insert cDNA clone EUROIMAGE 1968422、EphA3、KIAA0367 protein、natriuretic peptide receptor C/guanylate cyclase C (atrionatriuretic peptide receptor C)、hypothetical protein FLJ14054、Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp564B222 (from clone DKFZp564B222)、BCL2/adenovirus E1B 19kDa interacting protein 3-like、AE binding protein 1、cytochrome c oxidase subunit VIIa polypeptide 1 (muscle)のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について、発現が減少する。
【0069】
他の実施態様では、PPDCは、MCP-1、IL-6、IL-8、GCP-2、HGF、KGF、FGF、HB-EGF、BDNF、TPO、MIP1a、RANTES、TIMP1のうちの少なくとも1つの分泌によって特徴づけられてもよい。いくつかの実施態様では、PPDCは、ELISAで検出されたときに、TGF-beta2、ANG2、PDGFbb、MIP1b、I309、MDC、VEGFのうちの少なくとも1つを分泌していないことによって、特徴づけられてもよい。
【0070】
いくつかの好まれる実施態様では、PPDCは、実質的に血液を含まない臍帯組織に由来し、培養中で自己再生し、増加することができ、成長のためにL−バリンを要求し、少なくとも約5%の酸素中で成長でき、以下の特徴のうちの少なくとも1つを含む。その特徴とは、培養中で、少なくとも約40回倍加する能力があること;コートされた組織培養容器、もしくは、コートされていない組織培養容器上に付着し、増加することであって、コートされた組織培養容器は、ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオルニチン、ビトロネクチン、もしくは、フィブロネクチンのコーティングを備える、容器上に、付着し、増加すること;ビメンチン、α平滑筋アクチンを産生すること;CD10、CD13、CD44、CD73、CD90を産生すること、および;線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは、腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関係する遺伝子の発現が、interleukin 8、reticulon 1をコードする遺伝子について増加することである。いくつかの実施態様では、このようなPPDCは、CD45、CD117を産生しない。本段落で説明したPPDCを、末梢血管疾患を有する患者を治療するための方法において用いることができ、末梢血管疾患を治療するための製薬組成物(例えば、このような組成物は、これらの特徴を有する細胞と、製薬上許容できるキャリアとを含む)において用いることができ、本願で説明し例示するような方法や製薬組成物を製造し、使用し、実践するためのキットにおいて用いることができる。その上、本段落で説明したPPDCを、馴化細胞培養培地を生成するために用いることができ、あるいは、本願で説明し例示するような方法や製薬組成物を製造し、使用し、実践するために用いられうる細胞抽出物、細胞内区画のような準備物を製造するために用いることができる。
【0071】
好まれる実施態様では、細胞は、上記の成長特徴、タンパク質/表面マーカー産生特徴、遺伝子発現特徴、もしくは、物質分泌特徴のうちの少なくとも2つ以上を含む。より好まれるものは、3つ、4つ、5つ、もしくは、それ以上の特徴を含む細胞である。更により好まれるものは、6つ、7つ、8つ、もしくは、それ以上の特徴を含むPPDCである。更に、現在、より好まれるものは、上記の特徴のすべてを含む細胞である。
【0072】
様々な態様で本発明とともに用いるのに現在好まれる細胞は、上記で説明した特徴を有する分娩後細胞であり、より具体的には、その細胞は、正常な核型を有し、継代において正常な核型を維持し、更に、その細胞は、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr-alpha、HLA-A、HLA-B、HLA-Cのマーカーのそれぞれを発現し、その細胞は、列記したマーカーに対応する免疫学的に検出可能なタンパク質を産生する。更により好ましいものは、上記のものに加えて、フローサイトメトリーによって検出されたときに、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、HLA-DR、HLA-DP、HLA-DQのマーカーのいずれかに対応するタンパク質を産生していない細胞である。
【0073】
様々な表現型を導く細胞株へと分化する能力を有する特定の細胞は、不安定であり、それゆえに自発的に分化することができる。現在、本発明とともに用いるのに好まれるのは、例えば、筋原細胞株、骨格筋細胞株、血管平滑筋細胞株、周皮細胞株、血液脈管形成(hemangiogenic)細胞株、血管形成(angiogenic)細胞株、血脈管形成(vasculogenic)細胞株、もしくは、血管内皮細胞株へと自発的に分化することのない細胞である。好まれる細胞は、成長培地中で成長する場合、その表面上で産生される細胞マーカーについて、そして、例えば、商標名GENECHIP(Affymetrix, Inc., Santa Clara, CA)で販売されている医療診断試験を用いて決定されるような、様々な遺伝子の発現パターンについて、実質的に安定である。細胞は、例えば、多様な集団倍加を通じた継代における表面マーカー特徴において、実質的に不変なままである。
【0074】
発明のその他の態様は、上記で説明したPPDCの集団を用いることを特色とする。いくつかの実施態様では、細胞集団は不均一である。本発明の不均一な細胞集団は、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは、95%の、本発明に係るPPDCを含んでもよい。本発明の不均一な細胞集団は、筋原細胞もしくは筋肉前駆細胞、血管芽細胞、または、血管前駆細胞のような、幹細胞もしくは他の前駆細胞を更に含んでもよいし、十分に分化した骨格筋細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、もしくは、血管内皮細胞を更に含んでもよい。いくつかの実施態様では、集団は実質的に均一である。すなわち、実質的にPPDCのみ(好ましくは、少なくとも約96%、97%、98%、99%、あるいは、それより多いPPDC)を含む。本発明の均一な細胞集団は、臍由来細胞もしくは胎盤由来細胞を含んでもよい。均一な臍由来細胞集団は、好ましくは、母体系統の細胞を含まない。均一な胎盤由来細胞集団は、新生児系統もしくは母体系統であってもよい。細胞集団の均一性は、例えば、細胞選別(例えば、フローサイトメトリー)、もしくは、既知の方法に従ったクローン増加による、本分野で既知の任意の方法によって達成されてもよい。したがって、好まれる均一なPPDC集団は、分娩後由来細胞のクローン細胞株を含んでもよい。このような集団は、非常に望ましい機能性を有する細胞クローンが単離された場合、特に有用である。
【0075】
本願で提供されるのは、血管平滑筋経路、血管内皮経路、周皮細胞経路、もしくは、骨格筋経路への幹細胞分化を刺激する1つ以上の因子の存在下、もしくは、そのような条件下で、インキュベーションされる細胞集団を使用することである。このような因子は、本分野では既知であり、当業者は、適当な分化条件の決定を所定の実験で達成しうることを十分理解するだろう。このような条件を最適化することは、統計的な実験設計および分析によって達成されることができ、例えば、応答曲面法は、例えば生物学的培養における、多重変数を同時に最適化することができる。現在好まれる因子は、限定されないが、例えば、血管形成、血液脈管形成、血脈管形成、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮の、経路もしくは系統への幹細胞の分化を刺激することが現在知られており、将来決定される成長因子もしくは栄養因子、ケモカイン、サイトカイン、細胞産物、脱メチル化剤、および、他の刺激を含む。
【0076】
また、治療上有用な遺伝子産物を産生するために、追加的な血管形成もしくは血管成長を促進し、もしくは、補助するための血管形成薬剤を産生するために、または、虚血性損傷の場へ内皮前駆細胞を補充するための因子を産生するために、PPDCを遺伝子操作してもよい。内皮前駆細胞は、特に虚血事象の後に、血管形成および血流を促進する[Urbich C and Dimmeler S (2004) Circ. Res. 95: 343-53]。内皮細胞補充に役割を果たす因子は、限定されないが、VEGF、ストローマ細胞由来因子1(stromal derived factor-1)(SDF-1)、エリスロポエチン(EPO)、G-CSF、スタチン、エストロゲン、PPARγ、CXCR4、FGF、HGFを含む。遺伝子操作は、任意の様々なベクターを用いて達成されうる。そのベクターは、限定されないが、組み込みウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、もしくは、アデノ随伴ウイルスベクター)、非組み込み複製ベクター(例えば、パピローマウイルスベクター、SV40ベクター、アデノウイルスベクター)、もしくは、複製欠陥ウイルスベクターを含む。DNAを細胞に導入する他の方法は、リポソーム、エレクトロポレーション、パーティクルガンを用いて、もしくは、直接のDNA注入によることを含む。
【0077】
宿主細胞は好ましくは、1つ以上の適切な発現調節要素(例えば、とりわけ、プロモーター配列もしくはエンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位)によって調節され、もしくは、それらと操作的関連性があるDNA、および、選択マーカーで、形質転換、もしくは、形質移入される。任意のプロモーターを、挿入遺伝子の発現を駆動するために用いてもよい。例えば、ウイルスプロモーターは、限定されないが、CMVプロモーター/エンハンサー、SV40、パピローマウイルス、エプスタイン・バーウイルス、エラスチン遺伝子プロモーターを含む。いくつかの実施態様では、目的の遺伝子の発現を調節するために用いられる調節要素は、遺伝子の発現を制御することができ、そのために生体内で必要とされる場合にのみ、産物を合成する。一時的な発現を望むならば、非組み込みベクターおよび/もしくは複製欠陥ベクターとともに、好ましくは、構成的プロモーターを用いる。または、もし必要ならば、誘導プロモーターを、挿入遺伝子の発現を駆動するために用いることができる。誘導プロモーターは、限定されないが、メタロチオネイン、もしくは、ヒートショックタンパク質と関連したものを含む。
【0078】
外来DNA導入後、操作された細胞を、強化培地で成長させ、その後、選択培地に切り換えてもよい。外来DNA中の選択マーカーは、選択物に対する耐性を与え、細胞に(例えば、プラスミド上の)外来DNAを染色体中に安定的に組み込むことができ、そして、クローン化し、細胞株中で増加できるような、増殖巣を形成するまで成長させることができる。この方法は、遺伝子産物を発現するような細胞株を操作するために、有利に用いることができる。
【0079】
発明の細胞は、炎症および埋め込み部位の拒絶反応を推進する因子の発現を「ノックアウト」もしくは「ノックダウン」するように遺伝子操作されてもよい。標的遺伝子の発現レベルもしくは標的遺伝子産物の活性レベルを低減するための陰性調節技術を、以下で説明する。本願で用いられるような「陰性調節」は、調節処理の不存在下の標的遺伝子産物のレベルおよび/もしくは活性に対する、標的遺伝子産物のレベルおよび/もしくは活性の低減をいう。骨格筋細胞、血管平滑筋細胞、周皮細胞、血管内皮細胞、もしくは、それらの前駆細胞に元々存在する遺伝子発現を、例えば、相同組み換え技術を使用した遺伝子の不活性化による発現抑制を含む、いくつかの技術を使用することで、低減するか、またはノックアウトすることができる。一般的に、標的遺伝子の正常なmRNAの産生を阻害し、結果的に遺伝子の不活性化を生じる陽性選択マーカー(例えば、neo)によって、タンパク質の重要な領域をコードするエキソン(すなわち、その領域の5’側エキソン)が、割り込まれる。また、遺伝子の一部に欠失を作り出すことで、もしくは、全体の遺伝子を欠失することによって、遺伝子を不活性化してもよい。ゲノム中で、離れた、標的遺伝子と相同な2つの領域の構築物を用いることによって、2つの領域に介在する配列を欠失することができる(Mombaerts他, 1991, Proc. Nat. Acad. Sd. U.S.A. 88: 3084)。また、アンチセンス、DNAザイム、リボザイム、低分子干渉RNA(small interfering RNA)(siRNA)、および、標的遺伝子の発現を抑制する他のこのような分子を、標的遺伝子活性のレベルを低減するために用いることができる。例えば、主要組織適合性遺伝子複合体(HLA)の発現を抑制するアンチセンスRNA分子は、免疫反応について、最も多用途であることが示されてきた。更に、三重らせん分子を、標的遺伝子活性のレベルを低減するために利用することができる。これらの技術は、L.G. Davis他 (編集), 1994, BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, 2nd ed., Appleton & Lange, Norwalk, CNに詳細に説明されている。
【0080】
他の態様では、本発明は、PPDC、または、PPDCを含む不均一もしくは均一な細胞集団から準備された細胞可溶化物および細胞可溶性区画を利用するし、遺伝的に操作されたPPDCもしくはその細胞集団から準備された細胞可溶化物および細胞可溶性区画、または、骨格筋経路、血管平滑筋経路、周皮細胞経路、もしくは、血管内皮経路へと分化するよう刺激されたPPDCもしくはその細胞集団から準備された細胞可溶化物および細胞可溶性区画も利用する。このような可溶化物およびその区画には、多くの実用性がある。PPDC可溶化物の可溶性区画(すなわち、実質的に、膜を含まない)の生体内での使用は、例えば、拒絶反応もしくは他の逆免疫反応の誘因となる可能性が最も高い細胞表面タンパク質の相当量を導入することなしに、患者に対して、有利な細胞内環境を同種的に用いることを可能にする。細胞を可溶化する方法は、本分野では周知であり、機械的破砕、酵素的破砕、化学的破砕、それらの組み合わせといった様々な手段を含む。このような細胞可溶化物は、直接に成長培地中の細胞から準備されてもよく、したがって、分泌された成長因子および同様のものを含んでもよいし、洗浄され培地を含まない細胞から、例えば、PBSもしくは他の溶液中で準備されてもよい。洗浄された細胞は、もし好まれるならば、元々の集団密度よりも高い濃度で再懸濁されてもよい。
【0081】
1つの実施態様では、例えば、細胞区画をその後に分離することなく、細胞を破砕することによって、全体の細胞可溶化物が準備される。その他の実施態様では、細胞膜区画は、本分野において既知の所定の方法(例えば、遠心分離、ろ過、もしくは、同様の方法)によって、細胞の可溶性区画から分離される。
【0082】
分娩後由来細胞集団から準備された細胞可溶化物もしくは細胞可溶性区画をそのままで用いてもよいし、更に、例えば、限外ろ過もしくは凍結乾燥によって濃縮して、あるいは、更に、乾燥して、部分的に精製して、本分野において既知の製薬上許容できるキャリアもしくは希釈剤と組み合わせて、または、例えば、製薬上有用なタンパク質組成物といった生物由来製剤のような他の化合物と組み合わせてもよい。細胞可溶化物もしくはその区画を、試験管内もしくは生体内で用いてもよいし、単独で、または、例えば、自家もしくは同系の生細胞とともに用いてもよい。可溶化物を、もし生体内で導入するならば、治療部位に局所的に導入してもよいし、例えば、患者に必要とされる細胞成長因子を提供するために、離れた部位に導入してもよい。
【0083】
更なる実施態様では、生物由来産物を高い収量で産生するために、PPDCを試験管内で培養することができる。目的の特定の生物由来産物(例えば、栄養因子)を天然で産生するか、生物由来産物を産生するよう遺伝子操作したPPDCは、本願で説明する培養技術を用いて、クローン的に増加することができる。または、細胞を、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮系統への分化を誘導する培地中で、増加させてもよい。いずれの場合も、細胞によって産生され、培地中に分泌された生物由来産物を、標準的分離技術(例えば、数例挙げると、差異のあるタンパク質沈殿、イオン交換クロマトグラフィ、ゲルろ過クロマトグラフィ、電気泳動、および、HPLC)を用いて、馴化培地から直ちに単離することができる。「バイオリアクタ」を、フィーディング(feeding)のためのフロー法、例えば、試験管内での三次元培養の利点を得るために用いてもよい。基本的に、新鮮な培地が三次元培養を通過するので、生物由来産物が培養物から洗い出され、その後、上記のように流出物から単離されてもよい。
【0084】
あるいは、目的の生物由来産物は、細胞の中に存在したままであってもよい。したがって、その収集は、上記で説明したように、細胞を可溶化する必要があるかもしれない。生物由来産物を、その後、1つ以上の上記に列記した技術を用いて、精製してもよい。
【0085】
他の実施態様では、本発明は、以下で説明するように、試験管内および生体内での使用のために培養されたPPDC由来の馴化培地を利用する。PPDC馴化培地の使用は、拒絶反応もしくは他の逆免疫反応の誘因となりうる無処理細胞を導入することなしに、PPDCによって分泌された有利な栄養因子を、患者に同種的に用いることを可能にする。培養培地中で細胞を培養し、その後、培地から細胞を取り除くことによって、馴化培地を準備する。
【0086】
分娩後由来細胞集団から準備された馴化培地をそのまま用いてもよいし、更に、例えば、限外ろ過もしくは凍結乾燥によって濃縮して、あるいは、更に、乾燥して、部分的に精製して、本分野において既知の製薬上許容できるキャリアもしくは希釈剤と組み合わせて、または、製薬上有用なタンパク質組成物といった生物由来製剤のような他の化合物と組み合わしてもよい。馴化培地を、試験管内もしくは生体内で用いてもよいし、単独で、または、例えば、自家もしくは同系生細胞とともに用いてもよい。馴化培地を、もし生体内で導入するならば、治療部位に局所的に導入してもよいし、患者に必要とされる細胞成長もしくは栄養因子を提供するために、離れた部位に導入してもよい。
【0087】
その他の実施態様では、液体、固体、半固体の基質上でPPDCを培養することによって産生された細胞外マトリックス(ECM)を、組織修復もしくは置換を必要とする被験者に生細胞を埋め込む代替物として、準備し、収集し、利用する。試験管内において、本願において他で説明するような三次元骨格の上で、ECMの望ましい量を骨格上で分泌するような条件下で、PPDCを培養する。新組織を含む細胞を取り除き、例えば注入可能な準備物として更に使用するために、ECMを加工した。これを達成するために、骨格上の細胞を殺し、骨格から任意の細胞壊死組織片を取り除いた。このプロセスは、いくつかの異なる方法で実行されてもよい。例えば、生組織を低温保存することなしに液体窒素中で急速冷凍することができるし、また、組織を無菌蒸留水に浸すことができ、それにより細胞を浸透反応で破裂させる。
【0088】
一度細胞を殺すと、細胞膜は破砕されて、EDTA、CHAPS、もしくは、双性イオン洗剤のような中性洗剤によるすすぎ処理をすることによって、細胞壊死組織片を取り除いた。または、細胞膜を破壊し、細胞内容物を除去することのできる試薬によって、組織を酵素的に消化し、かつ/もしくは抽出することができる。このような酵素の例は、限定されないが、ヒアルロニダーゼ、ディスパーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼを含む。洗剤の例は、例えば、アルキルアリルポリエーテルアルコール(TRITON X-100)、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Rohm and Haas, Philadelphia, PA)、BRIJ-35、ポリエトキシエタノールラウリルエーテル(Atlas Chemical Co., San Diego, CA)、ポリソルベート20(TWEEN 20)、ポリエトキシエタノールソルビタンモノラウレート(Rohm and Haas, Philadelphia, PA)、ポリエチレンラウリルエーテル(Rohm and Haas, Philadelphia, PA)のような非イオン性洗剤、および、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、硫酸化高級脂肪族アルコール、スルホン酸化アルカン、枝分かれ鎖もしくは非枝分かれ鎖中に7〜22個の炭素原子を含むスルホン酸化アルキルアーレンのようなイオン性洗剤を含む。
【0089】
少なくとも部分的に、新しい組織が、生分解性もしくは非生分解性の三次元骨格上で形成されたかどうかに応じて、金属の場合のように、様々な方法で、ECMの収集を達成することができる。例えば、骨格が非生分解性の場合、超音波処理、高圧力水噴流、機械的剥離、または、洗剤もしくは酵素で軽く処理すること、あるいは、上記の任意の組み合わせに従って、ECMを取り除くことができる。
【0090】
もし骨格が生分解性ならば、例えば、骨格を溶液中に分解もしくは溶解させることによって、ECMを収集することができる。または、もし生分解性骨格を、ECMとともに注入することが可能な材料から構成するならば、骨格およびECMはあわせて、その後の注射のために加工することができる。または、上記で説明した非生分解性骨格からECMを収集するための任意の方法によって、生分解性骨格からECMを取り除くことができる。好ましくは、ECMを変性することがないように、全収集プロセスが設計される。
【0091】
収集後、ECMを更に加工してもよい。例えば、超音波処理のような本分野で周知の技術を用いて、ECMを細かい粒子に均質化することができ、それにより、外科用針を通過することが可能である。また、もし望まれるならば、ガンマ線照射によって、ECMの成分を架橋することができる。好ましくは、ECMを滅菌し架橋するために、0.25〜2メガラドで、ECMを照射することができる。グルタルアルデヒドのような有毒な薬剤を用いた化学的架橋は可能であるが、概して好まれない。
【0092】
本発明の細胞によって産生されたECMを1つ以上の他の細胞型のECMと混ぜることによって、ECM中に存在するコラーゲンの様々な型のような、タンパク質の量および/もしくは割合を調整してもよい。その上、タンパク質、成長因子、および/もしくは、薬剤のような生物活性物質を、ECM中に取り込むことができる。例示的な生物活性物質は、注射部位での治癒および組織修復を推進する組織成長因子(例えば、TGF-betaおよび同様のもの)を含む。このような追加的な薬剤は、本願において上記で説明したような任意の実施態様、例えば、PPDCによって産生された全細胞可溶化物、可溶性細胞区画、もしくは、更に精製した成分および産物とともに利用してもよい。
【0093】
その他の態様では、本発明は、末梢虚血発作によって引き起こされた傷害もしくは損傷を治療するための様々な方法で、PPDC、PPDC集団、PPDCの成分および産物を利用する製薬組成物を提供する。ある実施態様は、生細胞(PPDC単独、他の細胞型と混合されたPPDC)を含む製薬組成物を包含する。他の実施態様は、PPDC細胞成分(例えば、細胞溶解物、可溶性細胞区画、馴化培地、ECM、上記の任意の成分)、もしくは、産物(例えば、PPDCによって天然に、もしくは、遺伝子操作を通じて産生された栄養および生物由来因子、PPDC培養由来の馴化培地)を含む製薬組成物を包含する。いずれの場合も、製薬組成物は、本分野で既知の抗炎症薬、抗アポトーシス薬、抗酸化剤、成長因子、筋栄養因子、筋再生薬、筋産生薬のような他の活性薬剤を更に含んでもよい。
【0094】
PPDC製薬組成物に加えてもよい他の成分の例は、限定されないが、数例挙げると、以下のものを含む。
(1)他の筋有益(myobeneficial)薬、筋保護(myoprotective)薬、もしくは、血管有益(angiobeneficial)薬、血管保護(angioprotective)薬
(2)選択された細胞外マトリックス成分(例えば、本分野で既知の1つ以上の型のコラーゲン、および/もしくは、成長因子)、血小板豊富な血漿、ならびに、薬剤(あるいは、PPDCを、成長因子を発現し産生するように、遺伝子操作してもよい)
(3)抗アポトーシス薬[例えば、エリスロポエチン(EPO)、EPOミメティボディ(mimetibody)、トロンボポエチン、インスリン様成長因子(insulin-like growth factor)(IGF)1(IGF-I)、IGF-II、肝細胞成長因子、カスパーゼ阻害剤]
(4)抗炎症化合物[例えば、p38 MAPキナーゼ阻害剤、TGF-beta阻害剤、スタチン、IL-6とIL-1の阻害剤、ペミロラスト、トラニラスト、レミケード(Centocor, Inc., Malvern, PA)、シロリムス、および、非ステロイド抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs)(NSAIDS)(例えば、テポサリン、トルメチン、スプラフェン)]
(5)免疫抑制薬もしくは免疫調節薬(例えば、カルシニューリン阻害剤、mTOR阻害剤、抗増殖薬、副腎皮質ステロイド、様々な抗体)
(6)抗酸化剤(例えば、プロブコール、ビタミンC・E、コエンザイムQ10、グルタチオン、L−システイン、N−アセチルシステイン)
(7)局所麻酔薬
(8)栄養因子(例えば、アグリン、VEGF、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、NEGF-1、NEGF-2、PDGF、GDF、IGF1、IGF2、EGF3、FGF)
(9)虚血性組織へ内皮前駆細胞を補充し、取り込むよう作用する因子(例えば、VEGF、SDF-1、EPO、G-CSF、スタチン、エストロゲン、PPARγ、CXCR4)
【0095】
本発明の製薬組成物は、製薬上許容できるキャリアもしくは培地とともに処方した、PPDC、PPDCから作られた準備物を含むそれらの成分もしくは産物を含む。適当な製薬上許容できるキャリアは、水、塩溶液(例えば、リンガー溶液)、アルコール、オイル、ゼラチン、ポリビニルピロリジン、炭水化物(例えば、ラクトース、アミロース、デンプン)、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロースを含む。このような準備物を滅菌することができ、望ましくは、補助的な薬剤(例えば、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、バッファー、着色剤)とともに混ぜることができる。本発明での使用に適当な製薬キャリアは、本分野で既知であり、例えば、Pharmaceutical Sciences (17th Ed., Mack Pub. Co., Easton, PA)、および、国際特許出願公開第96/05309号で説明されている。
【0096】
一般に、限定的ではないが、PPDC成分もしくは産物を含み生細胞を含まない製薬組成物を、液体(もしくは、経口送達が適切な場合、固体タブレット、カプセル、および同様のもの)として処方する。標的の骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮組織への薬剤、および、生物由来分子の送達を達成するための分野で既知であり、任意の許容できる経路によって投与するように、これらを処方してもよい。それは、限定されないが、経口、経鼻、点眼、静脈内を含む非経口のものを含む。非経口投与の特定の経路は、限定されないが、筋内、皮下、腹膜内、髄膜下、槽内、または、ポンプ機器を伴った、もしくは、伴わない針もしくはカテーテルを有する注射器を経由するものを含む。
【0097】
PPDC生細胞を含む製薬組成物を、一般的に液体、半固体(例えば、ゲル)、もしくは、固体(例えば、血管もしくは骨格筋に適切なマトリックス、足場、および、同様のもの)として処方する。標的の血管もしくは骨格筋組織への生細胞の送達を達成するための分野で既知であり、任意の許容できる経路によって投与するように、液体組成物を処方する。一般的に、これらは、ポンプ機器を伴った、もしくは、伴わない針および/もしくはカテーテルを有する注射器を経由して、筋内送達、静脈送達、動脈内送達を含む投与経路によって、拡散性の方法、または、末梢虚血性の傷害、損傷、もしくは、苦痛に係る部位を標的とした注射もしくは輸液を含む。
【0098】
半固体もしくは固体キャリア中に生細胞を含む製薬組成物は、一般的に、虚血性の傷害、損傷、もしくは、苦痛に係る部位への外科的な埋め込みのために処方される。液体組成物もまた、外科的手法によって投与されてもよいことが、十分に理解されるだろう。特定の実施態様では、半固体もしくは固体製薬組成物は、非生分解性もしくは生分解性であってもよい半透過性のゲル、格子、細胞足場、および、同様のものを含んでもよい。例えば、ある実施態様では、周囲の骨格筋もしくは血管細胞に対して、細胞が生物由来分子(例えば、筋栄養因子、血管栄養因子、内皮前駆細胞補充因子)を分泌し送達することができるが、周囲からは外因性の細胞を隔絶することが望まれるか、または適切であるかもしれない。これらの実施態様では、細胞を、自律性インプラントとして、処方してもよい。そのインプラントは、移植細胞を宿主組織から物理的に分離するような、非分解性の選択透過性障壁によって囲まれた、生きたPPDCもしくはPPDCを含む細胞集団を含む。このようなインプラントは、薬理学的に誘導された免疫抑制が存在することなく、免疫細胞および巨大分子が移植細胞を殺すことを妨げることができるため、時折「免疫保護性」と呼ばれる[このような装置および方法の概説については、例えば、P.A. Tresco他, (2000) Adv. Drug Delivery Rev. 42: 3-27を参照されたい]。
【0099】
他の実施態様では、本発明の製薬組成物のために、異なる分解性ゲルおよびネットワークを利用する。例えば、持続的な放出処方に特に適当な分解性材料は、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、メチルセルロース、ヒアルロン酸、コラーゲン、および、同様のもののような生物適合性ポリマーを含む。薬剤送達媒体における分解性ポリマーの構造、選択、使用は、A. Domb他, 1992, Polymers for Advanced Technologies 3: 279を含む、いくつかの刊行物に概説されてきた。
【0100】
他の実施態様では、生分解性、好ましくは、生体再吸収性もしくは生体吸収性の、足場もしくはマトリックスの上、もしくは、それらの中で、細胞を送達することが望まれるか、または適切であるかもしれない。このような一般的に三次元の生物材料は、足場に付着するか、足場内に拡散するか、または足場の中に取り込まれた生体外マトリックスを取り込むような生細胞を含む。ひとたび、体の標的領域に埋め込まれたならば、これらのインプラントは、宿主組織に統合されるようになり、移植細胞は段階的に定着するようになる[例えば、Tresco, PA,他. (2000)、上述を参照されたい;また、Hutmacher, DW (2001) J. Biomater. Sci. Polymer Edn. 12: 107-174も参照されたい]。
【0101】
生物適合性マトリックスは、天然の生分解性ポリマー、修飾された天然の生分解性ポリマー、合成の生分解性ポリマーで構成されてもよい。そのポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、それらの組み合わせを含む。概して、ポリマーは合成されるモノマーに基づいて命名されることに留意する。
【0102】
適当な生分解性ポリマーもしくはポリマークラスの例は、フィブリン、コラーゲン、エラスチン、ゼラチン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニン、トロンビン、ポリ(アミノ酸)、酸化セルロール、トロポエラスチン、絹、リボ核酸、デオキシリボ核酸、タンパク質、ポリヌクレオチド、再構成規定膜マトリックス、デンプン、テキストラン、アルギン酸、ヒアルロン、キチン、キトサン、アガロース、多糖類、ヒアルロン酸、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリエチレングリコール、脱細胞化組織、自己集合性ペプチド、ポリペプチド、グリコサミノグリカン、それらの誘導体、および、それらの混合物を含む。グリコール酸、乳酸の両方の中間環状二量体は、一般に、重合に先行して準備され、精製される。これらの中間二量体は、それぞれ、グリコリド、ラクチドと呼ばれる。他の有用な生分解性ポリマーもしくはポリマークラスは、限定されないが、脂肪族ポリエステル、ポリ(シュウ酸アルキレン)、ポリカーボネート由来チロシン、ポリイミノカーボネート、ポリオルトエステル、オイルオキサエステル、ポリアミドエステル、アミノ基を含むポリオキサエステル、ポリ(フマル酸プロピレン)、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、ポリシュウ酸、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(エステル)、ポリウレタン、ポリ(ウレタンエステル)、ポリ(ウレタンエーテル)、ポリ無水物、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリアミノ酸、ポリアミド、ならびに、その混合物およびそのコポリマーを含む。追加的な有用な生分解性ポリマーは、限定されないが、L−乳酸およびD−乳酸のステレオポリマー、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンとセバシン酸とのコポリマー、セバシン酸コポリマー、カプロラクトンのコポリマー、ポリ(乳酸)/ポリ(グリコール酸)/ポリエチレングリコールコポリマー、ポリウレタンとポリ(乳酸)とのコポリマー、α−アミノ酸のコポリマー、α−アミノ酸とカプロン酸とのコポリマー、α−ベンジルグルタミン酸塩とポリエチレングリコールとのコポリマー、コハク酸塩とポリ(グリコール)とのコポリマー、ポリフォスファゼン、ポリ(ヒドロキシアルカノアート)、および、それらの混合物を含む。二成分系、三成分系もまた考えられる。
【0103】
概して、マトリックスとして用いられる適切な生分解性ポリマーは、望ましく設定され、そのため、意図された適用に適切であり、組織が成長し治癒されるまで十分無処理のままであり、炎症反応もしくは有毒反応を引き起こさず、目的を果たした後に体内で代謝され、形成されるべき望ましい最終産物へと容易に加工され、許容できる品質保持期間を示し、容易に滅菌されるような機械的な特性を有する。
【0104】
本発明の1つの態様では、マトリックスを形成するために用いられる生物適合性ポリマーは、ヒドロゲルの形態である。概して、ヒドロゲルは、架橋ポリマー材料であり、明らかな三次元構造を維持しながら、その重量の20%より多く給水することのできる材料である。この定義は、水で膨脹した材料と同様に、水を含む環境下で膨脹するだろう乾燥した架橋ポリマーも含む。多くの親水性ポリマーは、ポリマーが生物起源、半合成性、全合成性であっても、ヒドロゲルを作るために架橋されることが可能である。ヒドロゲルを、合成ポリマー材料から作ってもよい。このような合成ポリマーは、特性の範囲および予想できるロット間の一様性にあわせて調整されることが可能であり、概して免疫原性の心配がないような信頼できる原料を示すことができる。マトリックスは、自己集合ペプチドから形成されるヒドロゲルを含んでもよい。これらのことは、米国特許第5,670,483号、同第5,955,343号、米国出願公開第2002/0160471号、国際出願公開第02/062969号で論じられている。
【0105】
薬剤送達に係る適用において、ヒドロゲルを価値のあるものにする特性は、平衡膨張度、吸着動力学、溶質透過性、生体内での実行特性を含む。化合物に対する透過性は、一部には、膨張度もしくは含水量、生分解速度に依存する。ゲル減退の機械的強度は膨張度に正比例するため、合成方式が機械的強度を高めるように、ヒドロゲルが基質に付着することが可能なことは、本発明の意図の範囲内である。いくつかの実施態様では、ヒドロゲルは、ヒドロゲルの有用な送達特性に従って、基質の機械的強度を得るために、多孔性基質内に含浸することができる。
【0106】
本発明で用いてもよい足場もしくはマトリックス(時折、全体で「骨格」と呼ばれる)の非限定的例は、織物、編み物、組み物、メッシュ、不織、ねじれ編みのような織物構造、多孔性フォーム、半多孔性フォーム、有孔フィルムもしくはシート、微粒子、ビーズ、球、上記の構造を組み合わせた複合構造を含む。不織性マットを、例えば、商標名VICRYL縫合糸(Ethicon, Inc., Smomerville, NJ)で販売されているグリコール酸と乳酸との合成吸収性コポリマー(PGA/PGA)から構成される繊維を用いて、形成してもよい。例えば、ポリ(ε−カプロラクトン)/ポリ(グリコール酸)(PCL/PGA)コポリマーから構成され、フリーズドライすなわち凍結乾燥のようなプロセスによって形成され、米国特許第6,355,699号で論じられているようなフォームをも利用してよい。自己集合ペプチド(例えば、RAD16)のようなヒドロゲルをも使用してよい。本来の位置での形成性分解ネットワーク(in situ-forming degradable network)もまた、本発明での使用に適切である[例えば、Anseth, KS他. (2002) J. Controlled Release 78: 199-209;Wang, D.他., (2003) Biomaterials 24: 3969-3980;He 他.の米国特許出願公開第2002/0022676号を参照されたい]。これらの本来の位置での形成性の材料を、注射に適当な液体として処方し、その後、本来の位置もしくは生体内での温度、pH、光照射のような様々な手段によってヒドロゲルを形成するよう誘導してもよい。
【0107】
その他の実施態様では、骨格は、生体吸収性材料(例えば、PGA、PLA、PCLコポリマーもしくは混合物、または、ヒアルロン酸)から作られたマルチフィラメント糸から構成されることが可能なフェルトである。糸は、圧着、裁断、梳綿、穿刺から成る標準的な繊維加工技術を用いて、フェルトへと製造される。その他の実施態様では、複合構造であってもよいフォーム足場上に、細胞を接種する。
【0108】
上記の実施態様の多くでは、骨格を、血管のような有用な形状に成型してもよい。更に、前形成され、非分解性の外科的な、もしくは、埋め込み可能な装置の上で、例えば、線維芽細胞を含むGDC血管内コイルを準備するために用いられるものに関連するやり方で、PPDCを培養してもよい[Marx, WF他., (2001) Am. J. Neuroradiol. 22: 323-333]ことが理解されるであろう。
【0109】
細胞の植え込みに先立って、マトリックス、足場、もしくは、装置を、細胞付着を高めるために処理してもよい。例えば、植え込みに先立って、ナイロンマトリックスを、ナイロンをコートするために、0.1モル酢酸で処理し、ポリリジン、PBS、および/もしくは、コラーゲン中でインキュベーションすることができる。ポリスチレンは同様に、硫酸を用いて処理することができる。細胞の付着もしくは成長、および、組織の分化を改善するために、例えば、骨格をプラズマコーティングすることによって、または、1つ以上のタンパク質(例えば、コラーゲン、弾性線維、細網線維)、糖タンパク質、グリコサミノグリカン(例えば、硫酸ヘパリン、コンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、ダルマタン硫酸、ケラチン硫酸)、サイトカインおよび成長因子といった遺伝的材料、細胞マトリックス、ならびに/または、他の材料(限定されないが、細胞の生存および分化に影響を与える他の因子のうち、ゼラチン、アルギン酸塩、寒天、アガロース、植物ゴム、を含む)を添加することによって、骨格の外側表面を修飾してもよい。
【0110】
PPDCを含む骨格を、本分野で既知の方法に従って準備する。例えば、細胞を、培養容器中でサブコンフルエンスもしくはコンフルエンスまで、自由に成長させ、培養から引き上げ、骨格上に植え込むことができる。成長因子を、もし望まれるならば、分化および組織形成の誘因となる細胞の植え込みの前に、その最中に、もしくは、その後、培養物に加えてもよい。または、骨格自体を、骨格上での細胞成長を高め、インプラントの拒絶反応の危険率が減少するように、改変してもよい。したがって、限定されないが、抗炎症化合物、免疫抑制剤、もしくは、成長因子を含む1つ以上の生物活性化合物を、局所的放出のために骨格上に加えてもよい。
【0111】
特に末梢血管疾患患者において、骨格筋細胞および組織の修復、再生、改善を補助し、促進するための、血流を改良するための、そして、血管形成を刺激し、および/もしくは、補助するための様々な方法で、PPDC、PPDCの一部、もしくは、PPDCを含む細胞集団、または、PPDCの成分およびPPDCによって産生された産物を用いてもよい。このような実用性は、試験管内法、生体外法、生体内法を包含する。
【0112】
1つの実施態様では、上記で説明したように、生物由来産物を産生するために、PPDCを試験管内で培養することができる。その生物由来産物は、細胞によって天然に産生されるか、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮系統へと分化するように誘導された細胞によって産生され、または、遺伝子操作経由の細胞によって産生されるものである。例えば、TIMP1、TPO、KGF、HGF、FGF、HBEGF、BDNF、MIP1b、MCP1、RANTES、I309、TARC、MDC、IL-8は、成長培地中で成長した臍由来細胞から分泌されることがわかった。TIMP1、TPO、KGF、HGF、HBEGF、BDNF、MIP1a、MCP-1、RANTES、TARC、Eotaxin、IL-8は、成長培地中で培養された胎盤由来PPDCから分泌されることがわかった(実施例参照)。その上、内皮前駆細胞を補充するための因子、例えば、VEGF、SDF-1、EPO、G-CSF、スタチン、エストロゲン、PPARγ、CXCR4は、PPDCによって産生されてよく、成長培地中に分泌されてもよい。まだ検出されておらず、試験されていない、骨格筋もしくは血管の修復および再生において使用される他の栄養因子は、PPDCによって産生されると思われ、かつ培地中へ分泌される可能性がある。
【0113】
この点において、本発明のその他の実施態様は、未分化PPDC、または、骨格筋系統もしくは血管系統への分化を刺激する条件下でインキュベーションしたPPDCのいずれかから、馴化培地を産生するために、PPDCを使用することを特色とする。例えば、試験管内もしくは生体外での、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮前駆細胞の培養における使用に関して、このような馴化培地は考慮されるし、生体内での、均一なPPDC集団、または、PPDCと、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮前駆体とを含む不均一な集団を含む移植細胞を補助するための、あるいは、虚血性傷害の部位へ内皮前駆細胞を補充するための使用に関して、このような馴化培地は考慮される。
【0114】
更に他の実施態様は、様々な目的のために、PPDC細胞可溶化物、可溶性細胞区画、もしくは、それらの成分、または、ECM、もしくは、それらの成分の使用を含む。上記のように、これらの成分のうちのいくつかを、製薬組成物中で用いてもよい。他の実施態様では、細胞可溶化物もしくはECMを、外科的に用いる、すなわち、埋め込みのために、もしくは、生体外の目的のために、基材もしくは装置をコートするか、または別様に処理するために用いて、そのような処理の過程で接触される細胞もしくは組織の治癒もしくは生存を促進する。いくつかの好まれる実施態様では、このようなPPDCから作られる準備物は、FGFおよびHGFを含む。
【0115】
その他の実施態様では、他の細胞、特に、骨格筋細胞、骨格筋前駆細胞、血管平滑筋細胞、血管平滑筋前駆細胞、周皮細胞、血管内皮細胞もしくは血管内皮前駆細胞に、栄養的補助を提供するための試験管内での共培養において、PPDCは有利に用いられる。いくつかの好まれる実施態様では、栄養的補助は、細胞の増殖である。共培養のために、2つの細胞型を接触した条件下で共培養することが、PPDCおよび所望の他の細胞のために望ましいかもしれない。このことは、例えば、不均一な細胞集団のような細胞を、培養培地中に、もしくは、適当な培養基質上に接種することによって達成される。または、PPDCをまずコンフルエンスまで成長させ、その後、培養中で、2番目の所望の細胞型の基質として役立つ。この後者の実施態様では、共培養期間後、他の細胞型を取り除き、別個に用いてもよいような、例えば、膜もしくは同様の装置によって、細胞を更に物理的に分離してもよい。骨格筋もしくは血管細胞型の増殖および分化を推進するための共培養におけるPPDCの使用には、研究および臨床上/治療上の分野において、妥当性が見出される。例えば、PPDC共培養を、例えば、基礎研究の目的で、もしくは、薬剤スクリーニング解析の目的で、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、血管内皮細胞の成長や分化を培養中で促進するために利用してもよい。また、後に治療目的で投与するように、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、血管内皮前駆体を生体外で増加するために、PPDC共培養を利用してもよい。例えば、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮前駆細胞を、生体外でのPPDCの共培養で増加した個人のものから採取し、その後、その個人(自家移転)もしくは他の個人(同系もしくは同種移転)に戻してもよい。これらの実施態様では、当然のことながら、生体外の増加後、PPDC、および、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮前駆体を含む混合細胞集団を、治療が必要な患者に投与することができた。または、自家移植が適切か、望ましい状況では、共培養された細胞集団を、患者に投与するために、培養中で物理的に分離してよく、自家の骨格筋、血管平滑筋、血管内皮前駆体を取り除くことができる。
【0116】
米国特許出願公開第2005/0058631号、同第2005/0054098号、同第2005/0058630号で説明されるように、PPDCは体の中に効果的に移植され、受け入れられた動物モデルにおいて、血流を改善し、組織壊死を低減することが示されてきた。本発明で説明した発見とともに、これらの見解は、本発明の好まれる実施態様を援護する。ここで、PPDCは、末梢血管疾患患者における骨格筋および/もしくは血管組織を修復し、再生することによって、または、末梢血管疾患患者における血流を改良し、血管形成を刺激し、および/もしくは、補助することによって、虚血性傷害もしくは損傷を治療するための細胞治療において用いられる。1つの実施態様では、PPDCを、体の標的位置、特に、虚血性発作の位置もしくはその近位に移植する。ここで、PPDCは、とりわけ、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮表現型のうち1つ以上へと分化することができ、PPDCは、骨格筋細胞、血管平滑筋細胞、周皮細胞、もしくは、血管内皮細胞前駆体、ならびに/または、本来の位置での骨格筋細胞、血管平滑筋細胞、周皮細胞、もしくは、血管内皮細胞に栄養的補助を提供することができ、PPDCは、虚血性傷害の部位へ内皮前駆細胞を補充する因子を産生することができ、あるいは、PPDCは、2つ以上のこれらの方法における有利な効果を及ぼすことができる。PPDCは、限定されないが、GFGFm、IL-6、IL-8、HGF、IGF-1、TPOおよび同様のものを含む栄養因子を分泌する。PPDCは、新しい血管形成を刺激するための血管芽細胞のような、血管前駆細胞の補充を助けることができる。
【0117】
PPDCは、投与された患者の体に、栄養作用を及ぼすことができる。例えば、PPDCは、骨格筋細胞、血管平滑筋細胞、血管内皮細胞、周皮細胞、もしくは、それらの前駆細胞に栄養作用を及ぼすことができる。いくつかの好まれる実施態様では、栄養作用は、このような細胞の増殖である。また、PPDCは、投与された患者の体内で、細胞の遊走を誘導することができる。このような遊走は、末梢虚血のような末梢血管疾患の修復、再生、治療を促進することができる。例えば、末梢血管疾患の部位もしくはその部位の近くに投与されたPPDCは、異常な組織およびその周囲を、修復し、再生し、さもなくば治療するために、末梢血管疾患の部位へと細胞の遊走を誘導することができる。ここで投与されたPPDCは、骨格筋細胞、血管平滑筋細胞、血管内皮細胞、周皮細胞、もしくは、それらの前駆体の遊走を誘導することができる。好まれる実施態様では、PPDCは、末梢血管疾患の部位、もしくは、少なくともその部位の近くに、血管内皮細胞および/もしくは血管内皮前駆細胞の遊走を誘導する。いくつかの実施態様では、遊走は、FGFおよび/もしくはHGFによって、好ましくは、PPDCによって発現されたFGFおよびHGFによって、誘導され、もしくは、補助される。また、細胞可溶化物、細胞内区画、および、同様のものを含むPPDCから作られた準備物を、末梢血管疾患を治療するために用いることができる。このような準備物を、本願で説明され、例示されるような製薬上許容できるキャリアとともに処方することができ、末梢血管疾患を治療するために有効な量で、患者に投与することができる。好まれる実施態様では、PPDCから作られた準備物は、FGFおよびHGFを含む。
【0118】
本発明の特定の実施態様により、末梢虚血性傷害もしくは損傷のための、血管の直接の修復、再生、置換、もしくは、修復、再生、置換の補助を指定する。
【0119】
PPDCを、単独で(例えば、実質的に均一な集団として)投与してもよいし、他の細胞とともに混合剤として投与してもよい。上記で説明したように、PPDCを、マトリックスもしくは足場とともに、または、従来の製薬上許容できるキャリアとともに、製薬準備物の中に処方するように、投与してもよい。PPDCを他の細胞と投与した場合、他の細胞と同時に投与してもよいし、他の細胞と連続して投与してもよい(他の細胞の前後どちらでも)。PPDCと関連して投与してもよい細胞は、限定されないが、筋細胞、骨格筋細胞、骨格筋前駆細胞、血管平滑筋細胞、血管平滑筋前駆細胞、周皮細胞、血管内皮細胞、もしくは、血管内皮前駆細胞、ならびに/または、他の分化多能性もしくは分化万能性幹細胞を含む。異なる型の細胞を、投与に先立って直ちに、もしくは、即座にPPDCと混合してもよいし、投与に先立つ期間に、ともに共培養してもよい。
【0120】
PPDCを、本分野で既知の、抗炎症薬、抗アポトーシス薬、抗酸化剤、成長因子、血管形成因子、または、筋再生薬もしくは筋保護薬のような、他の有益な薬剤もしくは生物由来分子または他の活性薬剤とともに投与してもよい。PPDCを他の薬剤とともに投与する場合、単一の製薬組成物の中でともに投与してもよいし、別々の製薬組成物の中で、他の薬剤と同時に、もしくは、連続して投与してもよい(他の薬剤の投与の前後どちらでも)。他の薬剤は、本分野の内科医が適切であると判断するように、移植前および回復コース全体で連続して始まる治療措置の一部であってもよいし、移植の時点もしくは移植の後でさえ開始してもよい。
【0121】
PPDCとともに投与してもよい他の成分の例は、限定されないが、数例挙げると、以下のものを含む。
(1)他の血管形成因子、血管形成薬、筋再生性もしくは筋保護性の因子もしくは薬剤
(2)選択された細胞外マトリックス成分(例えば、本分野で既知の1つ以上の型のコラーゲン、および/もしくは、成長因子)、血小板豊富な血漿、ならびに、薬剤(あるいは、PPDCが、成長因子を発現し産生するように、遺伝子操作されてもよい)
(3)抗アポトーシス薬[例えば、エリスロポエチン(EPO)、EPOミメティボディ、トロンボポエチン、インスリン様成長因子(IGF)1(IGF-I)、IGF-II、肝細胞成長因子、カスパーゼ阻害剤]
(4)抗炎症化合物[例えば、p38 MAPキナーゼ阻害剤、TGF-beta阻害剤、スタチン、IL-6とIL-1の阻害剤、ペミロラスト、トラニラスト、レミケード(Centocor, Inc., Malvern, PA)、シロリムス、および、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDS)(例えば、テポサリン、トルメチン、スプラフェン)
(5)免疫抑制薬もしくは免疫調節薬(例えば、カルシニューリン阻害剤、mTOR阻害剤、抗増殖薬、副腎皮質ステロイド、様々な抗体)
(6)抗酸化剤(例えば、プロブコール、ビタミンC・E、コエンザイムQ10、グルタチオン、L−システイン、N−アセチルシステイン)
(7)局所麻酔薬
【0122】
1つの実施例では、PPDCを、未分化細胞、すなわち、成長培地の中で培養したような細胞として投与する。または、PPDCを、培養中で、望まれる骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮の表現型への分化を刺激する条件にさらした後に、投与してもよい。
【0123】
本発明の細胞を、外科的に埋め込み、注入し、送達し(例えば、カテーテル、注射器、シャント、ステント、マイクロカテーテル、ポンプによって)、さもなくば、虚血性の傷害、損傷、苦痛に係る部位へ直接的に、もしくは、間接的に投与してもよい。本発明の細胞、もしくは、その組成物の投与経路は、限定されないが、静脈内、筋内、皮下、鼻内、髄膜下、槽内、または、ポンプ機器を伴った、もしくは、ポンプ機器を伴わない、針もしくはカテーテルを有する注射器を経由することを含む。
【0124】
細胞を半固体もしくは固体装置に投与する場合、体の正確な位置への外科的な埋め込みが、一般的に適当な投与手段である。しかしながら、液体もしくは流体の製薬組成物を、血液を通じて、もしくは、罹患した筋肉組織に(例えば、拡散性虚血傷害の場合、拡散性患部全体に)直接投与してもよい。PPDCの遊走は、化学的シグナル、成長因子、もしくは、カルパインによって、導かれる。
【0125】
分娩後由来細胞、もしくは、組成物、ならびに/または、分娩後由来細胞を含むマトリックスを、マイクロカテーテル、カテーテル法(intracatheterization)、ミニポンプを経由して部位に送達してもよい。媒体賦形剤もしくはキャリアは、患者、特に、細胞分化が誘導されるべき部位に局所的に、投与するために製薬上許容できることが既知である任意のものでありうる。例としては、液体培地、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、滅菌生理食塩水、滅菌リン酸緩衝生理食塩水、リーボビッツ培地(L15;試験管内gen, Carlsbad, CA)、滅菌ブドウ糖液、および、任意の生理学上許容できる液体を含む。
【0126】
他の実施態様は、製薬上許容できるキャリアおよびPPDC細胞成分(例えば、細胞可溶化物もしくはその成分)、もしくは、産物(例えば、PPDCによって天然に、もしくは、遺伝子操作を通じて産生された栄養因子および他の生物由来因子、ならびに、PPDC培養由来の馴化培地)、または、PPDC成長培地、もしくは、成長培地から精製された産物を投与することによって、末梢虚血傷害もしくは損傷を治療する方法を包含する。好まれる実施態様では、生物由来因子はFGFおよびHGFである。これらの方法は、本分野で既知の、成長因子、血管形成因子、筋再生薬、もしくは、筋保護薬のような、他の活性薬剤を更に含んでもよい。
【0127】
PPDCを投与するための剤形および方法、または、本願で説明されている任意の他の治療組成物もしくは製薬組成物は、個々の患者の病状(例えば、末梢虚血事象に由来する傷害もしくは損傷の本質および程度、性別、体重、一般的医療状態、および、開業医に既知である他の因子)を考慮して、正しい医療行為に従って開発される。このように、患者に投与されるべき製薬組成物の有効な量は、本分野において既知のこれらの考察によって決定される。
【0128】
PPDCは混合リンパ球反応における同種のPBMCを刺激しないことが、示されてきた。したがって、同種、もしくは、異種による移植でさえ、PPDCは、いくつかの例で、耐性であるかもしれない。いくつかの実施態様では、PPDC自体が免疫抑制効果を提供し、それによって、移植されたPPDCの宿主拒絶反応を妨げる。このような例では、細胞治療中の薬理学的な免疫抑制は、必ずしも必要でないかもしれない。
【0129】
しかしながら、他の例において、細胞治療の開始に先立って、患者を薬理学的に免疫抑制することが望まれるか、または適切であるかもしれない。このことは、全身性、もしくは、局所性の免疫抑制薬の使用を通じて達成されてもよいし、上記で説明したように、封入された装置中の細胞を送達することで達成されてもよい。移植細胞に対する免疫反応を低減し消滅させるためのこれらの手段および他の手段は、本分野において既知である。代わりに、PPDCを、上記で述べたように、免疫原性を低減するように、遺伝子操作してもよい。
【0130】
生きている患者における移植されたPPDCの生存を、様々なスキャン技術を用いて決定することができる[例えば、コンピュータ断層撮影(computerized axial tomography)(CAT、またはCT)スキャン、磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging)(MRI)、陽電子放出断層撮影(positron emission tomography)(PET)スキャン]。また、移植片生存の決定は、死後に、骨格筋もしくは血管組織を取り除き、可視的に、もしくは、顕微鏡下で試験することによって、なされることが可能である。または、骨格筋細胞、血管平滑筋細胞、周皮細胞、血管内皮細胞に特異的な染色で、細胞を処理することが可能である。また、例えば、ローダミンもしくはフルオレセイン標識したミクロスフィア、ファストブルー(fast blue)、三価鉄微粒子、ビスベンザミド、または、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼのような遺伝的に導入されたレポーター遺伝子産物のような、追跡染料の前もった取り込みによって、移植細胞を同定することができる。
【0131】
他の態様では、本発明は、血管形成を刺激し、および/もしくは、補助するための、血流を改良するための、そして、末梢虚血事象によって傷つけられ、損傷された骨格筋を再生し、修復し、改善するための様々な方法で、PPDC、PPDC集団、PPDCの成分および産物を利用するキットを提供する。虚血事象によって引き起こされた損傷もしくは傷害の治療、もしくは、他の予定された治療のために用いられる場合、キットは、少なくともPPDCおよび製薬上許容できるキャリア(液体、半固体、固体)を含む1つ以上の細胞集団を含んでもよい。また、キットは、選択的に、例えば注射によって、細胞を投与する手段を含んでもよい。キットは、細胞の使用のための使用説明書を、更に含んでもよい。軍用などの野戦病院用に準備されたキットは、急性損傷の回復と関連付けて細胞を用いるような、組織足場、外科縫合、および、同様のものを含む完全な手順の供給物を含んでもよい。本願で説明された解析および試験管内法のためのキットは、(1)PPDCまたはPPDCの成分もしくは産物、(2)試験管内法を実践するための試薬、(3)適切な、他の細胞もしくは細胞集団、(4)試験管内法を実行するための使用説明書、のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0132】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明する。この実施例は、本願で説明した発明の態様の更なる例示を提供するが、限定するものではない。
【0133】
〔実施例1〕
マウス後肢末梢虚血モデルにおける臍由来分娩後細胞の効力
≪材料と方法≫
<臍細胞の培養と単離>
米国特許公開第2005/0058631号もしくは同第2005/0054098号で説明されたように、臍由来細胞(UDC)を準備した。細胞を10代継代もしくは11代継代(約20〜25回の集団倍加)まで培養し、その後、低温で保存した。
【0134】
<虚血モデル治療群>
1.PBS、陰性対照
2.血管内皮成長因子に対する発現プラスミド(plasmid for vascular endothelial growth factor)(pVEGF)、陽性対照
3.細胞株1の細胞、全体で5×10個の細胞
4.細胞株1の細胞、全体で1×10個の細胞
5.細胞株2の細胞、全体で1×10個の細胞
6.培養された細胞株1の細胞、全体で1×10個の細胞
細胞株1:U120304 p10
細胞株2:U072804A p11
【0135】
<注射のためのサンプル準備>
細胞を注射直前に解凍するか(群3〜5)、もしくは、細胞を24〜30時間培養した(群6)。トリパンブルー染色および血球計でカウントすることによって、細胞をカウントし、生存力を決定した。細胞もしくはプラスミド(100μg)の全体用量をPBS100μLに再懸濁し、マウスに注射するために、27ゲージの300μLツベルクリン注射器に充填した。
【0136】
<手術>
0日目、胸腺欠損ヌードマウスにおいて、左大腿動脈の片側連結、切除することによって、急性後肢虚血を外科的に誘導した。UDC処理または対照のために、少なくともn=8の6つの群に、マウスを分けた。マウスを無作為に、群1〜5のための処理群に割り当てた。本研究において、群6は後で追加したため、無作為性は生じなかった。その上、予定の調整がつかなかったために、元々の研究と同時にmicroCT/PETを実施することできなかった。この分析を、21日の研究が完了した後に登録された8つの追加的な動物(4つの対照、4つの培養細胞1)の群で実施した。
【0137】
<細胞注射>
手術後1日目、足底領域のレーザードップラー造影分析(laser Doppler imaging analysis)のために、マウスを麻酔した。マウスがまだ麻酔状態である間に、細胞を左の(虚血性の)肢の5つの部位、すなわち、(1)前脛骨筋に20μL、(2)腓腹筋に20μL、2ヶ所、(3)四頭筋束の大腿直筋に20μL、2ヶ所に注射した。
【0138】
<分析>
レーザードップラー造影を、1、4、8、14、21日目に実行した。21日目に、薄切片形成およびCD31抗体による免疫組織化学染色のために、マウスを屠殺し、前脛骨筋(tibialis anterior)(TA)、腓腹筋、四頭筋を摘出し、低温固定した。8日目に、筋肉の灌流状態を決定するために、フルオロメタンガスを使用したMicroCT/PET分析を実施した。これらのマウスをその直後に屠殺し、低温固定の薄切片上のCD31免疫組織化学法のために、後肢筋肉を加工した。
【0139】
<除外基準>
手術後1日目に重度のつま先壊死を示したマウスを、注射の前に研究から除外した。また、重度の壊死(例えば、足全体の壊死)のために、または、重度の体重低下を経験するか、もしくはさもなくば、激痛の兆しを示したならば、そのマウスを研究の任意の時に除外した。
【0140】
≪結果≫
これらの実験のねらいは、げっ歯類後肢虚血モデルにおいて、UDCが細胞を傷害から保護するかどうか決定することであった。このモデルは、大腿部の血流に傷害を作り出し、傷害の約24時間後、その範囲に細胞を注射することによって、実施された。これらの動物の手足の灌流を推定し、これと、傷害のない反対側の手足とを比較することによって、結果を評価した。また、動物の脈管構造および傷害を評価するための研究の終わりに、これらの動物から組織を収集した。この研究は、移植細胞の異種間の拒絶反応を回避するために、ヌードマウスにおけるヒト細胞でも実施された。
【0141】
図1に示す結果は、UDCはマウスに利益を与えることを示す。これは、培養細胞で処理して4日目および8日目の動物では、灌流が改善され、また、8日目の注射の前に即座に解凍した120304細胞で処理した動物でも、血流は改善されたからである。細胞072804Aは、任意の時点で利益を示さなかった。このことは、2つの細胞ロット間の違いを示唆している。概して、動物は、この動物系統がある程度自然に修復する可能性を有している時間以上の改善を示した。また、これらの動物は、比較的若く、それは生得的な再生可能性における1つの要素なのかもしれない。
【0142】
TA筋肉を研究の終わりに収集し、抗CD31抗体により血管内皮細胞を検出するために、切片を探査した。代表的な結果を図2に示す。結果は、PBS対照動物が全体的な壊死を示し、虚血性手足において脈管構造を制限し(例えば、マウス番号26、43)、一方、UDC処理手足が、CD31染色の相対的に高いレベルを示し、壊死のレベルを低減したことを示している。また、結果は、培養UDCで処理した動物が、対照物[PBS対照、および、いくつかの場合では、正常な(損傷していない)手足]と比較して改善された脈管構造を示したことを示唆している。正常手足と比較して、虚血性であるが処理された手足において、増加したCD31染色が観察された。VEGFプラスミド、Umb072804Aで処理された動物は、PBS対照と同様の結果を示した。
【0143】
≪概要≫
これらの結果は、げっ歯類後肢虚血モデルにおいて、臍帯由来細胞は血流を改善し、組織壊死を低減するのに有効であるという証拠を提示する。研究は注射の前に即座に解凍された2つの異なるロットの臍細胞を含み、結果は、ロット間で違いが存在するかもしれないことを示唆した。また、いくつかの活性を有すると思われる細胞を、注射の前に約48時間培養し、その他の処理群の中に入れた。これらの細胞は最も効果的であると思われ、これは、培養することが細胞の活性プロファイルを変えることを示唆している。また、組織学的な結果は、処理が保護的な効果を提供することができるという証拠を提示している。結果は、UDCが効果を及ぼすメカニズムについて、十分な情報を提示していない。任意の機能に係る特定の理論もしくはメカニズムと結合することを意図することなしに、新しい血管の成長を刺激し、損傷の進行から筋肉組織を保護することによって、例えば、アポトーシスから保護すること、もしくは、外因性の活性薬剤を補充することによって、細胞が効果を及ぼすのかもしれないと考えられている。機能の正確なメカニズムを調査するために、更なる研究が必要である。
【0144】
≪参照文献≫
(1)Rehman, J.他. (2004) Circulation 109: 1292-1298
【0145】
〔実施例2〕
内皮ネットワーク形成解析
血管形成、すなわち、新しい脈管構造の形成は、新しい組織の成長のために必要である。血管形成の誘導は、多くの病理学上の病状における重要な治療上のねらいである。試験管内解析における分娩後由来細胞の潜在的な血管形成活性を同定するために、基底膜抽出物である商標名MATRIGEL(BD Discovery Labware, Bedford, MA)の生物由来細胞培養基質でコートされた培養プレート上に内皮細胞を接種するという、よく確立された方法を行った[Nicosia and Ottinetti (1990) 試験管内 Cell Dev. Biol. 26(2): 119-28]。MATRIGEL(BD Discovery Labware, Bedford, MA)上で内皮細胞を血管形成因子とともに処理することによって、細胞を毛細血管と同様のネットワークを形成するように刺激するだろう。このことは、血管形成の刺激因子および阻害因子を試験するための共通の試験管内解析である[Ito他. (1996) Int. J. Cancer 67(l): 148-52]。実験は、培養ウェルインサート上に接種した分娩後由来細胞とともに共培養するシステムを用いた。これらの透過性インサートは、内皮細胞培養培地と分娩後由来細胞培養培地との間の培地成分の受動的交換を可能にする。
【0146】
≪方法および材料≫
細胞培養
<分娩後由来細胞>
ヒト臍帯および胎盤を受領し、細胞を以前に説明したように単離した(実施例1)。細胞をゼラチンコート組織培養プラスチックフラスコ上の成長培地[ダルベッコ変法必須培地(DMEM;試験管内gen, Carlsbad, CA)、15%(v/v)ウシ胎仔血清(Hyclone, Logan UT)、ペニシリン100U/mL、ストレプトマイシン100μg/mL、0.001%(v/v)2−メルカプトエタノール(Sigma, St. Louis, MO)]の中で培養した。培養物を5%COとともに37℃でインキュベーションした。実験に使用した細胞は、4代継代〜12代継代の間のものであった。
【0147】
活発に成長している分娩後細胞をトリプシン処理し、カウントし、COSTAR TRANSWELL6.5mm直径組織培養インサート(Corning, Corning, NY)上に、15,000細胞/インサートで接種した。細胞を、標準的成長条件下、37℃、成長培地中で、48〜72時間、インサート上で培養した。
【0148】
<ヒト間充織幹細胞(human mesenchymal stem cells)(hMSC)>
hMSCをCambrex(Walkersville, MD)から購入し、MSCGM(Cambrex)中で培養した。培養物を標準的成長条件下でインキュベーションした。
【0149】
活発に成長しているMSCをトリプシン処理し、カウントし、COSTAR TRANSWELL6.5mm直径組織培養インサート(Corning, Corning, NY)上に、15,000細胞/インサートで接種した。細胞を、標準的成長条件下、37℃、成長培地中で、48〜72時間、インサート上で培養した。
【0150】
<ヒト臍静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cell)(HUVEC)>
HUVECをCambrex(Walkersville, MD)から入手した。細胞を、EBMもしくはEGM内皮細胞培地(Cambrex)のいずれかの中、別個の培養中で成長させた。細胞を、標準的成長条件下、標準組織培養プラスチック上で成長させた。解析で用いた細胞は、4代継代〜10代継代の間のものであった。
【0151】
<ヒト冠状動脈内皮細胞(human coronary artery endothelial cell)(HCAEC)>
HCAECをCambrex Incorporated(Walkersville, MD)から購入した。これらの細胞もまた、EBMもしくはEGM培地処方のいずれかの中、別個の培養中で維持した。細胞を、標準的成長条件下、標準組織培養プラスチック上で成長させた。実験のために使用した細胞は、4代継代〜8代継代の間のものであった。
【0152】
<内皮ネットワーク形成(MATRIGEL)解析>
培養プレートを、業者の仕様書に従って、MATRIGEL(BD Discovery Labware, Bedford, MA)でコートした。簡単に言うと、MATRIGEL(BD Discovery Labware, Bedford, MA)を4℃で解凍し、約250μLに分注し、凍らせた24ウェル培養プレート(Corning)の各ウェル上に等しく分配した。その後、材料を凝固させるために、プレートを、37℃、30分間、インキュベーションした。活発に成長している内皮細胞培養物をトリプシン処理し、カウントした。細胞を2%FBSの入った成長培地中で、遠心分離し、再懸濁し、上澄みを吸引することによって、2回洗浄した。コートウェル上、2%(v/v)FBSの入った成長培地約0.5mLの中に、細胞を20,000細胞/ウェルで接種した。その後、細胞を定着させるように、約30分間インキュベーションした。
【0153】
その後、内皮細胞培養物を、内皮細胞反応の陽性対照とするために、10nmolヒトbFGF(Peprotech, Rocky Hill, NJ)、もしくは、10nmolヒトVEGF(Peprotech, Rocky Hill, NJ)のいずれかで処理した。分娩後由来細胞を接種したトランスウェルインサートを、インサートチャンバー中に2%FBSを含む成長培地の入った適切なウェルに加えた。培養物を、5%COとともに37℃で、約24時間インキュベーションした。ウェルプレートをインキュベータから取り除き、内皮細胞培養物像をOlympus倒立顕微鏡(Olympus, Melville, NY)で収集した。
【0154】
≪結果≫
胎盤由来細胞もしくは臍帯由来細胞とともに共培養した系では、HUVECは細胞ネットワークを形成した(データ不図示)。HUVEC細胞は、hMSCおよび10nmolbFGFによる共培養実験において、限られた細胞ネットワークを形成する(不図示)。任意の処理なしのHUVEC細胞は、ネットワーク形成がほとんどないか、もしくは、全くないことが示された(データ不図示)。これらの結果は、分娩後由来細胞がHUVECを刺激する血管形成因子を放出することを示唆する。
【0155】
胎盤由来細胞もしくは臍帯由来細胞による共培養システムでは、CAECは細胞ネットワークを形成する(データ不図示)。
【0156】
表2−1は、成長培地中に分娩後由来細胞によって放出された既知の血管形成因子の濃度を示している。上記で説明したように、分娩後由来細胞をインサート上に接種した。細胞を、37℃、大気酸素中、インサート上で、48時間培養し、その後、2%FBS培地に切り換え、37℃、24時間に戻した。培地を取り除き、即座に凍結し、−80℃で保存し、サーチライト多重ELISA解析(Pierce Chemical Company, Rockford, IL)によって分析した。示した結果は、2回の測定の平均である。結果は、分娩後由来細胞が、検出できる濃度の血小板由来成長因子-bb(platelet-derived growth factor-bb)(PDGF-bb)、もしくは、ヘパリン結合表皮成長因子(heparin-binding epidermal growth factor)(HBEGF)を放出しないことを示す。細胞は、測定可能な量の、メタロプロテアーゼ組織阻害因子1(tissue inhibitor of metalloprotease-1)(TIMP-1)、アンジオポエチン2(angiopoietin 2)(ANG2)、トロンボポエチン(thrombopoietin)(TPO)、ケラチノサイト成長因子(keratinocyte growth factor)(KGF)、肝細胞成長因子(hepatocyte growth factor)(HGF)、線維芽細胞成長因子(fibroblast growth factor)(FGF)、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor)(VEGF)を放出する。
【0157】
【表1】

分娩後由来細胞を、大気酸素中、2%FBSを含む培地中で、24時間培養した。培地を取り除き、サーチライト多重ELISA解析(Pierce)によって解析した。結果は、2回の分析の平均である。値は、培養培地mL当たりのpgで報告された培地中の濃度である。Plac:胎盤由来細胞、Umb cord:臍帯由来細胞。
【0158】
表2−2は、分娩後由来細胞によって放出された既知の血管形成因子の濃度を示している。上記で説明したように、分娩後由来細胞をインサート上に接種した。細胞を、5%酸素、成長培地中、インサート上で、48時間培養し、その後、2%FBS培地に切り換え、5%Oインキュベーション、24時間に戻した。培地を取り除き、即座に凍結し、−80℃で保存し、サーチライト多重ELISA解析(Pierce Chemical Company, Rockford, IL)によって分析した。示した結果は、2回の測定の平均である。結果は、分娩後由来細胞が、検出できる濃度の血小板由来成長因子-bb(PDGF-bb)、もしくは、ヘパリン結合表皮成長因子(HBEGF)を放出しないことを示す。細胞は、測定可能な量の、メタロプロテアーゼ組織阻害因子1(TIMP-1)、アンジオポエチン2(ANG2)、トロンボポエチン(TPO)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、肝細胞成長因子(HGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)を放出する。
【0159】
【表2】

分娩後由来細胞を、5%酸素中、2%FBSを含む培地中で、24時間培養した。培地を取り除き、サーチライト多重ELISA解析(Pierce)によって解析した。結果は、2回の分析の平均である。値は、培養培地mL当たりのpgで報告された培地中の濃度である。Plac:胎盤由来細胞、Umb cord:臍帯由来細胞。
【0160】
≪概要≫
結果は、試験管内でのMATRIGEL(BD Discovery Labware, Bedford, MA)解析中で、分娩後由来細胞が、ヒト臍静脈細胞と冠動脈内皮細胞との両方を、ネットワークを形成するよう刺激することができることを示す。この効果は、この解析システムにおいて、既知の血管形成因子とともに見られたものと同様である。これらの結果は、分娩後由来細胞が、生体内での血管形成を刺激するために有用であることを示唆する。
【0161】
〔実施例3〕
内皮細胞の試験管内での増殖および遊走におけるhUTCの効果
本研究は、ヒト臍組織由来細胞(hUTC)の、試験管内での内皮細胞の増殖および遊走に係る効果を決定するために取り組まれた。hUTCおよび内皮細胞を共培養することによって、そして、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)の培養物をhUTC可溶化物とともにインキュベーションすることによって、これらの効果を検査した。本願で示した結果は、hUTCが内皮細胞の増殖および遊走を誘導することを示す。更に、データは、これらの効果が部分的に、線維芽細胞成長因子(FGF)、および、肝細胞成長因子(HGF)によって仲介されることを示唆する。
【0162】
≪材料と方法≫
細胞培養
低温保存したヒト臍組織由来細胞(hUTC)ロット番号120304を、8〜9代継代で解凍し、ゼラチンコートフラスコ上に接種し、ヘイフリック成長培地[DMEM低グルコース(Gibco;カタログ番号11885-084)、15%v/vウシ胎仔血清(FBS;Hyclone;カタログ番号SH30070.03)、0.001%v/vβ−メルカプトエタノール(Sigma;カタログ番号M7154)、50U/mLペニシリン、50μg/mLストレプトマイシン(Gibco;カタログ番号3810-74-0)]中で培養した。本願で詳説された研究のために、用いた細胞は、10代継代もしくは11代継代であった。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC;カタログ番号C2517A)、ヒト冠動脈内皮細胞(HCAEC;カタログ番号CC2585)、ヒト腸骨動脈内皮細胞(human iliac artery endothelial cell)(HIAEC;カタログ番号CC2545)をCambrexから入手し、内皮成長培地(EGM-2MV;カタログ番号3202)中で、業者の提案に従って培養した。また、ヒト間充織幹細胞(MSC;カタログ番号PT-2501)をCambrexから購入し、間充織幹細胞成長培地(MSCGM;カタログ番号PT-3001)中で、業者の提案に従って維持した。ヒト皮膚線維芽細胞(CCD9)はATCCからであり、10%FBS、1U/mLペニシリン−ストレプトマイシンを含むDMEM/F12培地中で維持した。
【0163】
所定の継代の間、細胞を、一度リン酸緩衝生理食塩水(PBS;試験管内gen;カタログ番号14190)で洗浄し、トリプシン処理(0.25%トリプシン−EDTA;試験管内gen;カタログ番号25200-056)によって引き離した。細胞をGuava装置(Guava Technologies, Hayward, CA)を用いてカウントし、5,000細胞/cmの密度で接種した。細胞を定期的に3〜4日ごとに継代した。
【0164】
<成長因子と抗体>
組み換えヒト塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor)(bFGF;カタログ番号100-18B)、および、組み替えヒト肝細胞成長因子(HGF;カタログ番号100-39)は、Peprotech製であり、組み換えヒト血管内皮成長因子(VEGF;カタログ番号293-VE)は、R and D Systems製であった。bFGFに対する抗体(カタログ番号ab11937)、HGFに対する抗体(カタログ番号ab10678)、VEGFに対する抗体(カタログ番号ab9570)をAbeam(Cambridge, MA)から購入した。
【0165】
<細胞可溶化物の準備>
細胞可溶化物を、以前に成長させた凍結hUTCロット番号120304細胞ペレットから準備した。簡単に言うと、hUTCロット番号120304を4日間培養し、トリプシン処理で採取し、遠心分離によってペレットにした。その後、細胞をPBSで3回洗浄し、PBS中に1×10細胞/mLで再懸濁した。分注した懸濁液1mLを、1.5mL滅菌シリコン化微小遠心チューブ中に入れ、300rcfで5分間遠心分離した。PBSを吸引し、細胞ペレットを、使用するまで−80℃で保存した。
【0166】
細胞可溶化物を準備するために、細胞ペレットを含むチューブを、液体窒素(liquid nitrogen)(LN2)中に60秒間浸し、その後、即座に37℃の水浴に、60秒間、もしくは、解凍されるまでであるが3分未満、浸した。このステップを3回くり返した。このステップの後、凍結解凍サンプルを13,000rcf、4℃で、10分間遠心分離し、その後、氷上に置いた。上澄みを注意深く取り除き、新しい滅菌シリコン化1.5mLチューブに移した。遠心分離ステップを3回繰り返し、結果的に生じた上澄みを集めた。タンパク質濃度を、Quickstart Bradfordタンパク質解析キット(Bio-rad;カタログ番号500-0201)を用いて、HUVECの増殖に係る細胞可溶化物の効果を研究するために決定した。
【0167】
<細胞増殖の測定>
細胞を採取し、指定された培地処方に直接、5,000細胞/cmの濃度で播いた。共培養実験のために、24ウェルトランスウェル(Corning;カタログ番号3413)を、ウェルの底の上に播いた内皮細胞(10,000細胞/ウェル)とともに用い、hUTC、MSC、もしくは、線維芽細胞を、トランスウェルインサート(1,650細胞/トランスウェルインサート)の内側に播いた。指定された期間で、hUTC、MSC、もしくは、線維芽細胞を含むインサートを取り除き廃棄した。各ウェルに90μLのトリプシンを加えることによって、内皮細胞を採取した。ピペッティングで上下することによって、細胞を引き離し、その後、96ウェルプレートに移した。培地90μLを加えることによって、トリプシンを抑制した。染色溶液20μL(培地18μL+Guava Viacount Flex試薬1μL+DMSO1μL)を加えることによって、細胞を染色し、Guava装置(Guava Technologies, Hayward, CA)を用いて定量した。
【0168】
HUVECの増殖におけるhUTCロット番号120304細胞可溶化物の効果を研究するために、HUVECを、EGM-2MV培地の入った24ウェル組織培養皿上に10,000細胞/ウェルの密度で、8時間、接種した。その後、0.5%FBSを含み成長因子を含まないEGM-2MV培地0.5mL中で、一晩インキュベーションすることで、細胞を血清枯渇した。その後、FBS、新たに準備したタンパク質を含むhUTCロット番号120304細胞可溶化物62.5μgもしくは125μg、および、FGF(7μg/mL)もしくはHGF(1μg/mL)に対する中和抗体を加えた。培養4日後、細胞を採取し、Guava装置を用いてカウントした。
【0169】
内皮細胞増殖におけるhUTC介在性増加の潜在的なメカニズムの研究のために、FGF(7μg/mL)、HGF(1μg/mL)、VEGF(1μg/mL)に対する中和抗体を、HUVECおよびHCAECと、hUTCとの共培養中に含めた。細胞を最初に播いた時に、抗体を細胞培養培地に加えた。共培養7日後、細胞を採取し、Guava装置を用いてカウントした。
【0170】
<細胞遊走の検査>
細胞遊走を測定するために、6ウェルトランスウェル(Corning;カタログ番号3428)設定を用いた。指定された培地処方に直接、5,000細胞/cmの密度で、細胞を接種した。トランスウェルインサートの内側に、内皮細胞を接種し(23,000細胞/トランスウェルインサート)、ウェルの底に、hUTCロット番号120304もしくはMSCを播いた(48,000細胞/ウェル)。共培養7日後に、トランスウェルの下側の細胞数をカウントすることによって、遊走を検査した。簡単に言うと、トランスウェルを、清潔なウェルへ移し、PBSで洗浄した。ウェルの底にトリプシンを加えることによって、ウェルの下側の細胞を採取した。完全成長培地を加えることによって、トリプシンを抑制し、遠心分離によって、細胞を収集した。その後、細胞を培地25μLで再懸濁し、このうちの20μLを、Guava装置を用いて細胞カウントを達成するために用いた。
【0171】
内皮細胞遊走におけるhUTC介在性増加の潜在的なメカニズムの研究のために、FGF(7μg/mL)、HGF(1μg/mL)に対する中和抗体を、HUVECおよびHCAECと、hUTCロット番号120304との共培養中に入れた。細胞を最初に播いた時に、細胞培養培地中に抗体を加えた。共培養7日後、トランスウェルインサートの下側にある細胞を採取し、Guava装置を用いてカウントした。
【0172】
≪結果≫
<内皮細胞の増殖におけるhUTCの効果>
内皮細胞の増殖におけるhUTCの効果を研究するために、共培養システムを利用した。このことは、24ウェル組織培養皿の底に播いた内皮細胞、および、トランスウェルインサートの内側に播いたhUTCのトランスウェル設定を用いて実施された。これらの実験では、2つの異なる培地処方(材料と方法で詳説された培地組成物)、すなわち、ヘイフリック培地80%+EGM-2MV培地20%(H80)、もしくは、ヘイフリック培地50%+EGM-2MV培地50%(H50)を用いた。共培養6日または7日後、トランスウェルインサートを取り除き、内皮細胞をトリプシン処理によって採取し、Guava装置を用いてカウントした。
【0173】
H50と比較して、H80中で培養された内皮細胞の増殖におけるhUTCロット番号120304の効果を、図1に示す。H50中で維持されたHUVECの増殖は、H80中で維持されたものよりも高かった(図1A)が、HCAECおよびHIAEC は、これらの共細胞培地処方中で同様の成長を示している(図1B、および図1C)。両方の培地処方において、内皮細胞と、hUTCロット番号120304との共培養は、7日後に細胞数の顕著な増加を示す結果となった。hUTCおよび内皮細胞のその後の共培養研究を、すべて、ヘイフリック培地50%+EGM-2MV培地50%(H50)培地処方で実施した。
【0174】
また、他の細胞型が内皮細胞増殖に影響を与える能力を有するかどうか決定するために、内皮細胞との共培養中で、MSCおよび線維芽細胞を試験した。図1Aに示したように、共培養培地(H50またはH80)中のHUVECの増殖、および、MSCもしくは線維芽細胞とともに共培養したものには、全く違いがなかった。同じことが、hUTCロット番号120304との共培養で、結果的に増加した細胞増殖を生じたHCAEC(図1B)およびHIAEC(図1C)についても真であったが、共培養培地(H50またはH80)中の細胞とMSCとともに共培養した細胞間では、違いは見られなかった。
【0175】
内皮細胞増殖におけるhUTC介在性増加の潜在的なメカニズムを調査するために、FGF(7μg/mL)、HGF(1μg/mL)、VEGF(1μg/mL)に対する中和抗体を、HUVECおよびHCAECと、hUTCとの共培養中に入れた。図2Aおよび図2Bの結果は、FGFおよびHGFに対する中和抗体を添加することが、HUVECおよびHCAECの両方において、hUTCロット番号120304によって誘導された細胞数の増加を低減させたことを示している。これらの研究のために用いた濃度で、これらの中和抗体は、成長因子によって誘導されたHUVECの増殖をブロックした(図2A)。興味深いことに、VEGFに対する中和抗体は、HUVEC(図2A)およびHCAEC(図2B)と、hUTCロット番号120304との共培養によって誘導された細胞増殖について、有意な効果を有さないことがわかる。別の研究では、FGFおよびVEGFに対する中和抗体の培養培地へ加えることによって、hUTCロット番号120304の増殖は影響されない。
【0176】
<HUVECの増殖におけるhUTCロット番号120304細胞可溶化物の効果>
また、本研究は、HUVECの増殖における細胞可溶化物の効果を決定するために実行された。EGM-2MV培地の入った24ウェルプレート上に、5,000細胞/cmの密度で、HUVECを接種した。その後、0.5%ウシ胎仔血清(FBS)を含み成長因子を含まないEGM-2MV培地0.5mL中で、一晩インキュベーションすることによって、細胞を血清枯渇した。インキュベーション後、新たに準備されたhUTCロット番号120304細胞可溶化物を様々な濃度で加えた。いくつかの例では、FGF、HGF、中和抗体もまた含まれる。培養4日後、HUVECを採取し、Guava装置を用いてカウントした。
【0177】
図3は、細胞可溶化物を加えることによって、低血清(0.5%FBS)で維持されている細胞と比較して、HUVECの細胞数の増加が導かれ、細胞数の増加が細胞可溶化物の添加量に比例したということを示す。用いた細胞可溶化物のより低い濃度(6.25μg/mL)により、結果的に、最適な培地条件(10%FBS)中でインキュベーションした細胞と同程度の細胞数になった。更に、FGFもしくはHGFのいずれかに対する中性抗体を加えることにより、2つの異なる濃度の細胞可溶化物によって誘導された細胞数の増加を緩和した。これらの結果は、HUVECと、hUTCロット番号120304との共培養で得られた結果と一致する。
【0178】
<内皮細胞の遊走におけるhUTCの効果>
トランスウェル膜(孔の大きさ=8ミクロン)を通って移動してきた細胞の数を決定することによって、内皮細胞の遊走を検査した。反応細胞、すなわち、内皮細胞を、6ウェルトランスウェルインサート上に接種し、hUTCをウェルの底に播いた。共培養後、トランスウェルの下側の細胞を採取し、カウントした。図4Aは、hUTCおよびMSCとともに共培養されたHUVECの遊走を示す。hUTCロット番号120304は、トランスウェルの下側へのHUVECの移動を誘導したが、MSCは誘導しなかった(図4A)。同じ結果が、hUTCロット番号120304との共培養で、培地対照と比較して、結果的により多くのトランスウェルを通過した細胞移動が生じたHCAECにおいて観察された(図4B)。
【0179】
FGFおよびHGFに対する中和抗体を使用することによって、HUVECおよびHCAECの遊走行動におけるhUTCロット番号120304の効果を、更に試験した。図5Aで示したように、これらの抗体によって、hUTCロット番号120304によって誘導されたHUVECの遊走が低減された。HCAECと、hUTCロット番号120304との共培養において、HGFに対する中和抗体は、細胞遊走におけるhUTCロット番号120304介在性の増加を妨げたが、FGFに対する中和抗体は、増加を妨げなかった(図5B)。
【0180】
≪概要≫
本願で概説された結果は、試験管内での内皮細胞の増殖行動および遊走行動におけるhUTCの効果を説明する。hUTCロット番号120304および内皮細胞の共培養、もしくは、hUTCロット番号120304から準備された細胞可溶化物とともに内皮細胞を直接インキュベーションすることを用いて、本研究を実施した。
【0181】
増殖の研究のために、hUTCロット番号120304の効果を試験し、異なる血管床由来の3つの内皮細胞型を、反応細胞として用いた。hUTCとの共培養は、結果的に内皮細胞の増殖を高めた。MSCもしくは線維芽細胞との共培養は、結果的に、培養対照と同程度の細胞数を生じた。FGFおよびHGFに対する中和抗体を加えることによって、hUTCロット番号120304に対するHUVECの増殖反応を弱めたが、VEGFに対する中和抗体では、そうではなかった。このことは、hUTCロット番号120304による増殖の誘導が、FGFおよびHGFによって仲介されることを暗示する。hUTCロット番号120304可溶化物とのHUVECのインキュベーションが、共培養で観察された結果と同じであることは、注目に値する。
【0182】
トランスウェルの下側にある細胞の数をカウントすることによって、遊走を定量し、反応細胞として、HUVECおよびHCAECの両方を用いた。増殖についての研究と異なり、これらの細胞の遊走反応は、わずかに異なっている。hUTCロット番号120304は、HUVECおよびHCAEC両方の遊走を誘導した。MSCは、HUVECの遊走を誘導しなかった。このことは、この反応がhUTC特異的であることを示唆する。FGFおよびHGFに対する抗体は、HUVECの遊走におけるhUTCロット番号120304の効果を打ち消したが、HGFに対する抗体のみが、HCAECの遊走に影響を与えた。このことは、2つの内皮細胞型間の違いを示唆している。
【0183】
要約すると、データは、hUTCが、試験管内で内皮細胞の増殖および遊走を誘導することを示す。これらの観察された効果において、中和抗体の使用は、FGFおよびHGF両方に関係する。しかしながら、他の因子もまた、内皮細胞の増殖および遊走行動に関わっているかもしれない。
【0184】
本発明は、上記で説明され、例示された実施態様に限定されない。添付された特許請求の範囲内で、変更および修正が可能である。
【0185】
〔実施の態様〕
(1)末梢血管疾患を有する患者を治療する方法において、
前記方法は、
分娩後由来細胞を、前記末梢血管疾患を治療するために有効な量で、前記患者に投与すること、
を含み、
前記分娩後由来細胞は、実質的に血液を含まないヒトの胎盤組織もしくは臍帯組織に由来し、
前記細胞は、培養中で自己再生し、増加することができ、少なくとも、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮の表現型の細胞へと分化する能力を有し、
前記細胞は、成長のためにL−バリンを要求し、少なくとも約5%の酸素中で成長することができ、
前記細胞は、以下の特徴、
(a)培養中で、少なくとも約40回倍加する能力があること、
(b)コートされた組織培養容器、もしくは、コートされていない組織培養容器上に、付着し、増加することであって、前記コートされた組織培養容器は、ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオルニチン、ビトロネクチン、もしくは、フィブロネクチンのコーティングを備える、容器上に、付着し、増加すること、
(c)組織因子、ビメンチン、および、α平滑筋アクチンのうちの少なくとも1つを産生すること、
(d)CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr-alpha、PD-L2、HLA-A、HLA-B、および、HLA-Cのうちの少なくとも1つを産生すること、
(e)フローサイトメトリーによって検出されたときに、CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7-H2、HLA-G、HLA-DR、HLA-DP、および、HLA-DQのうちの少なくとも1つを産生していないこと、
(f)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、
interleukin 8、
reticulon 1、
chemokine (C-X-C motif) ligand 1 (melanoma growth stimulating activity, alpha)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 6 (granulocyte chemotactic protein 2)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 3、
tumor necrosis factor, alpha-induced protein 3、
C-type lectin superfamily member 2、
Wilms tumor 1、
aldehyde dehydrogenase 1 family member A2、
renin、
oxidized low density lipoprotein receptor 1、
Homo sapiens clone IMAGE:4179671、
protein kinase C zeta、
hypothetical protein DKFZp564F013、
downregulated in ovarian cancer 1、および、
Homo sapiens gene from clone DKFZp547k1113
のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について増加すること、
(g)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは、腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、
short stature homeobox 2、
heat shock 27kDa protein 2、
chemokine (C-X-C motif) ligand 12 (stromal cell-derived factor 1)、
elastin (supravalvular aortic stenosis, Williams-Beuren syndrome)、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp586M2022 (from clone DKFZp586M2022)、
mesenchyme homeobox 2 (growth arrest-specific homeobox)、
sine oculis homeobox homolog 1 (Drosophila)、
crystallin, alpha B、
disheveled associated activator of morphogenesis 2、
DKFZP586B2420 protein、
similar to neuralin 1、
tetranectin (plasminogen binding protein)、
src homology three (SH3) and cysteine rich domain、
cholesterol 25-hydroxylase、
runt-related transcription factor 3、
interleukin 11 receptor, alpha、
procollagen C-endopeptidase enhancer、
frizzled homolog 7 (Drosophila)、
hypothetical gene BC008967、
collagen, type VIII, alpha 1、
tenascin C (hexabrachion)、
iroquois homeobox protein 5、
hephaestin、
integrin, beta 8、
synaptic vesicle glycoprotein 2、
neuroblastoma, suppression of tumorigenicity 1、
insulin-like growth factor binding protein 2, 36kDa、
Homo sapiens cDNA FLJ12280 fis, clone MAMMA1001744、
cytokine receptor-like factor 1、
potassium intermediate/small conductance calcium-activated channel, subfamily N, member 4、
integrin, beta 7、
transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、
sine oculis homeobox homolog 2 (Drosophila)、
KIAA1034 protein、
vesicle-associated membrane protein 5 (myobrevin)、
EGF-containing fibulin-like extracellular matrix protein 1、
early growth response 3、
distal-less homeobox 5、
hypothetical protein FLJ20373、
aldo-keto reductase family 1, member C3 (3-alpha hydroxysteroid dehydrogenase, type II)、
biglycan、
transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、
fibronectin 1、
proenkephalin、
integrin, beta-like 1 (with EGF-like repeat domains)、
Homo sapiens mRNA full length insert cDNA clone EUROIMAGE 1968422、
EphA3、
KIAA0367 protein、
natriuretic peptide receptor C/guanylate cyclase C (atrionatriuretic peptide receptor C)、
hypothetical protein FLJ14054、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp564B222 (from clone DKFZp564B222)、
BCL2/adenovirus E1B 19kDa interacting protein 3-like、
AE binding protein 1、
cytochrome c oxidase subunit VIIa polypeptide 1 (muscle)、
similar to neuralin 1、
B cell translocation gene 1、
hypothetical protein FLJ23191、および、
DKFZp586L151
のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について減少すること、
(h)MCP-1、IL-6、IL-8、GCP-2、HGF、KGF、FGF、HB-EGF、BDNF、TPO、MIP1a、RANTES、および、TIMP1のうちの少なくとも1つを分泌すること、ならびに、
(i)ELISAによって検出されたときに、TGF-beta2、ANG2、PDGFbb、MIP1b、I309、MDC、および、VEGFのうちの少なくとも1つを分泌していないこと、
のうちの少なくとも1つを更に含む、方法。
【0186】
(2)実施態様1の方法において、
前記末梢血管疾患は、末梢虚血である、方法。
(3)実施態様1の方法において、
前記細胞は、投与に先立って、試験管内で、骨格筋系統、血管平滑筋系統、周皮細胞系統、もしくは、血管内皮系統の細胞へと分化するように誘導される、方法。
(4)実施態様1の方法において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の治療を推進する遺伝子産物を産生するように遺伝子操作される、方法。
(5)実施態様1の方法において、
前記細胞は、少なくとも1つの他の細胞型とともに投与される、方法。
(6)実施態様5の方法において、
前記他の細胞型は、骨格筋細胞、骨格筋前駆細胞、血管平滑筋細胞、血管平滑筋前駆細胞、周皮細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、または、他の分化多能性もしくは分化万能性の幹細胞である、方法。
【0187】
(7)実施態様5の方法において、
前記少なくとも1つの他の細胞型は、前記分娩後由来細胞と同時に、前記分娩後由来細胞の前に、もしくは、前記分娩後由来細胞の後に、投与される、方法。
(8)実施態様1の方法において、
前記細胞は、少なくとも1つの他の薬剤とともに投与される、方法。
(9)実施態様8の方法において、
前記薬剤は、抗血栓形成薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、免疫調節薬、前血管形成薬、もしくは、抗アポトーシス薬である、方法。
(10)実施態様8の方法において、
前記薬剤は、前記分娩後由来細胞と同時に、前記分娩後由来細胞の前に、もしくは、前記分娩後由来細胞の後に、投与される、方法。
(11)実施態様2の方法において、
前記細胞は、前記末梢虚血の部位に投与される、方法。
(12)実施態様1の方法において、
前記分娩後由来細胞は、注射、輸液、前記患者に埋め込まれた装置、または、前記細胞を含むマトリックスもしくは足場の埋め込みによって、投与される、方法。
【0188】
(13)実施態様1の方法において、
前記細胞は、前記患者の骨格筋に対して栄養作用を及ぼす、方法。
(14)実施態様1の方法において、
前記細胞は、前記患者の血管平滑筋に対して栄養作用を及ぼす、方法。
(15)実施態様14の方法において、
前記栄養作用は、前記血管平滑筋細胞の増殖である、方法。
(16)実施態様1の方法において、
前記栄養作用は、前記患者の血管内皮に対して栄養作用を及ぼす、方法。
(17)実施態様16の方法において、
前記栄養作用は、前記血管内皮細胞の増殖である、方法。
【0189】
(18)実施態様1の方法において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の部位への血管内皮細胞の遊走を誘導する、方法。
(19)実施態様1の方法において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の部位への血管内皮前駆細胞の遊走を誘導する、方法。
(20)実施態様1の方法において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の部位への血管平滑筋細胞の遊走を誘導する、方法。
(21)実施態様1の方法において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の部位への血管平滑筋前駆細胞の遊走を誘導する、方法。
(22)実施態様1の方法において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の部位への周皮細胞の遊走を誘導する、方法。
【0190】
(23)末梢血管疾患を有する患者を治療するための製薬組成物において、
製薬上許容できるキャリアと、
前記末梢血管疾患を治療するために有効な量の分娩後由来細胞と、
を含み、
前記分娩後由来細胞は、実質的に血液を含まないヒトの胎盤組織もしくは臍帯組織に由来し、
前記細胞は、培養中で自己再生し、増加することができ、少なくとも、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮の表現型の細胞へと分化する能力を有し、
前記細胞は、成長のためにL−バリンを要求し、少なくとも約5%の酸素中で成長することができ、
前記細胞は、以下の特徴、
(a)培養中で、少なくとも約40回倍加する能力があること、
(b)コートされた組織培養容器、もしくは、コートされていない組織培養容器上に、付着し、増加することであって、前記コートされた組織培養容器は、ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオルニチン、ビトロネクチン、もしくは、フィブロネクチンのコーティングを備える、容器上に、付着し、増加すること、
(c)組織因子、ビメンチン、および、α平滑筋アクチンのうちの少なくとも1つを産生すること、
(d)CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr-alpha、PD-L2、HLA-A、HLA-B、および、HLA-Cのうちの少なくとも1つを産生すること、
(e)フローサイトメトリーによって検出されたときに、CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7-H2、HLA-G、HLA-DR、HLA-DP、および、HLA-DQのうちの少なくとも1つを産生していないこと、
(f)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、
interleukin 8、
reticulon 1、
chemokine (C-X-C motif) ligand 1 (melanoma growth stimulating activity, alpha)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 6 (granulocyte chemotactic protein 2)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 3、
tumor necrosis factor, alpha-induced protein 3、
C-type lectin superfamily member 2、
Wilms tumor 1、
aldehyde dehydrogenase 1 family member A2、
renin、
oxidized low density lipoprotein receptor 1、
Homo sapiens clone IMAGE:4179671、
protein kinase C zeta、
hypothetical protein DKFZp564F013、
downregulated in ovarian cancer 1、および、
Homo sapiens gene from clone DKFZp547k1113
のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について増加すること、
(g)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは、腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、
short stature homeobox 2、
heat shock 27kDa protein 2、
chemokine (C-X-C motif) ligand 12 (stromal cell-derived factor 1)、
elastin (supravalvular aortic stenosis, Williams-Beuren syndrome)、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp586M2022 (from clone DKFZp586M2022)、
mesenchyme homeobox 2 (growth arrest-specific homeobox)、
sine oculis homeobox homolog 1 (Drosophila)、
crystallin, alpha B、
disheveled associated activator of morphogenesis 2、
DKFZP586B2420 protein、
similar to neuralin 1、
tetranectin (plasminogen binding protein)、
src homology three (SH3) and cysteine rich domain、
cholesterol 25-hydroxylase、
runt-related transcription factor 3、
interleukin 11 receptor, alpha、
procollagen C-endopeptidase enhancer、
frizzled homolog 7 (Drosophila)、
hypothetical gene BC008967、
collagen, type VIII, alpha 1、
tenascin C (hexabrachion)、
iroquois homeobox protein 5、
hephaestin、
integrin, beta 8、
synaptic vesicle glycoprotein 2、
neuroblastoma, suppression of tumorigenicity 1、
insulin-like growth factor binding protein 2, 36kDa、
Homo sapiens cDNA FLJ12280 fis, clone MAMMA1001744、
cytokine receptor-like factor 1、
potassium intermediate/small conductance calcium-activated channel, subfamily N, member 4、
integrin, beta 7、
transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、
sine oculis homeobox homolog 2 (Drosophila)、
KIAA1034 protein、
vesicle-associated membrane protein 5 (myobrevin)、
EGF-containing fibulin-like extracellular matrix protein 1、
early growth response 3、
distal-less homeobox 5、
hypothetical protein FLJ20373、
aldo-keto reductase family 1, member C3 (3-alpha hydroxysteroid dehydrogenase, type II)、
biglycan、
transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、
fibronectin 1、
proenkephalin、
integrin, beta-like 1 (with EGF-like repeat domains)、
Homo sapiens mRNA full length insert cDNA clone EUROIMAGE 1968422、
EphA3、
KIAA0367 protein、
natriuretic peptide receptor C/guanylate cyclase C (atrionatriuretic peptide receptor C)、
hypothetical protein FLJ14054、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp564B222 (from clone DKFZp564B222)、
BCL2/adenovirus E1B 19kDa interacting protein 3-like、
AE binding protein 1、
cytochrome c oxidase subunit VIIa polypeptide 1 (muscle)、
similar to neuralin 1、
B cell translocation gene 1、
hypothetical protein FLJ23191、および、
DKFZp586L151
のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について減少すること、
(h)MCP-1、IL-6、IL-8、GCP-2、HGF、KGF、FGF、HB-EGF、BDNF、TPO、MIP1a、RANTES、および、TIMP1のうちの少なくとも1つを分泌すること、ならびに、
(i)ELISAによって検出されたときに、TGF-beta2、ANG2、PDGFbb、MIP1b、I309、MDC、および、VEGFのうちの少なくとも1つを分泌していないこと、
のうちの少なくとも1つを更に含む、製薬組成物。
【0191】
(24)実施態様23の製薬組成物において、
前記末梢血管疾患は、末梢虚血である、製薬組成物。
(25)実施態様23の製薬組成物において、
前記細胞は、前記組成物の処方に先立って、試験管内で骨格筋系統へと分化するように誘導される、製薬組成物。
(26)実施態様23の製薬組成物において、
前記細胞は、前記組成物の処方に先立って、試験管内で血管平滑筋系統へと分化するように誘導される、製薬組成物。
(27)実施態様23の製薬組成物において、
前記細胞は、前記組成物の処方に先立って、試験管内で血管内皮系統へと分化するように誘導される、製薬組成物。
(28)実施態様23の製薬組成物において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の治療を推進する遺伝子産物を産生するように遺伝子操作される、製薬組成物。
【0192】
(29)実施態様23の製薬組成物において、
少なくとも1つの他の細胞型、
を含む、製薬組成物。
(30)実施態様29の製薬組成物において、
前記他の細胞型は、骨格筋細胞、骨格筋前駆細胞、血管平滑筋細胞、血管平滑筋前駆細胞、周皮細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、または、他の分化多能性もしくは分化万能性の幹細胞である、製薬組成物。
(31)実施態様23の製薬組成物において、
少なくとも1つの他の薬剤、
を含む、製薬組成物。
(32)実施態様31の製薬組成物において、
前記薬剤は、抗血栓形成薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、免疫調節薬、もしくは、抗アポトーシス薬である、製薬組成物。
(33)実施態様23の製薬組成物において、
注射もしくは輸液による投与のために処方される、製薬組成物。
【0193】
(34)実施態様23の製薬組成物において、
前記細胞は、埋め込み可能な装置の中に封入される、製薬組成物。
(35)実施態様23の製薬組成物において、
前記細胞は、マトリックスもしくは足場の中に含まれる、製薬組成物。
(36)実施態様23の製薬組成物において、
前記細胞は、前記患者の骨格筋に対して栄養作用を及ぼす、製薬組成物。
(37)実施態様23の製薬組成物において、
前記細胞は、前記患者の血管平滑筋に対して栄養作用を及ぼす、製薬組成物。
(38)実施態様37の製薬組成物において、
前記栄養作用は、前記血管平滑筋細胞の増殖である、製薬組成物。
【0194】
(39)実施態様23の製薬組成物において、
前記細胞は、前記患者の血管内皮に対して栄養作用を及ぼす、製薬組成物。
(40)実施態様39の製薬組成物において、
前記栄養作用は、前記血管内皮細胞の増殖である、製薬組成物。
(41)実施態様23の製薬組成物において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の部位への血管内皮細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
(42)実施態様23の製薬組成物において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の部位への血管内皮前駆細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
(43)実施態様23の製薬組成物において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の部位への血管平滑筋細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
【0195】
(44)実施態様23の製薬組成物において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の部位への血管平滑筋前駆細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
(45)実施態様23の製薬組成物において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の部位への周皮細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
【0196】
(46)末梢血管疾患を有する患者を治療するためのキットにおいて、
前記キットは、
製薬上許容できるキャリアと、
分娩後由来細胞の集団と、
前記患者を治療する方法で、前記キットを使用するための使用説明書と、
を含み、
前記分娩後由来細胞は、実質的に血液を含まないヒトの胎盤組織もしくは臍帯組織に由来し、
前記細胞は、培養中で自己再生し、増加することができ、少なくとも、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮の表現型の細胞へと分化する能力を有し、
前記細胞は、成長のためにL−バリンを要求し、少なくとも約5%の酸素中で成長することができ、
前記細胞は、以下の特徴、
(a)培養中で、少なくとも約40回倍加する能力があること、
(b)コートされた組織培養容器、もしくは、コートされていない組織培養容器上に、付着し、増加することであって、前記コートされた組織培養容器は、ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオルニチン、ビトロネクチン、もしくは、フィブロネクチンのコーティングを備える、容器上に、付着し、増加すること、
(c)組織因子、ビメンチン、および、α平滑筋アクチンのうちの少なくとも1つを産生すること、
(d)CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr-alpha、PD-L2、HLA-A、HLA-B、および、HLA-Cのうちの少なくとも1つを産生すること、
(e)フローサイトメトリーによって検出されたときに、CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7-H2、HLA-G、HLA-DR、HLA-DP、および、HLA-DQのうちの少なくとも1つを産生していないこと、
(f)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、
interleukin 8、
reticulon 1、
chemokine (C-X-C motif) ligand 1 (melanoma growth stimulating activity, alpha)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 6 (granulocyte chemotactic protein 2)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 3、
tumor necrosis factor, alpha-induced protein 3、
C-type lectin superfamily member 2、
Wilms tumor 1、
aldehyde dehydrogenase 1 family member A2、
renin、
oxidized low density lipoprotein receptor 1、
Homo sapiens clone IMAGE:4179671、
protein kinase C zeta、
hypothetical protein DKFZp564F013、
downregulated in ovarian cancer 1、および、
Homo sapiens gene from clone DKFZp547k1113
のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について増加すること、
(g)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは、腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、
short stature homeobox 2、
heat shock 27kDa protein 2、
chemokine (C-X-C motif) ligand 12 (stromal cell-derived factor 1)、
elastin (supravalvular aortic stenosis, Williams-Beuren syndrome)、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp586M2022 (from clone DKFZp586M2022)、
mesenchyme homeobox 2 (growth arrest-specific homeobox)、
sine oculis homeobox homolog 1 (Drosophila)、
crystallin, alpha B、
disheveled associated activator of morphogenesis 2、
DKFZP586B2420 protein、
similar to neuralin 1、
tetranectin (plasminogen binding protein)、
src homology three (SH3) and cysteine rich domain、
cholesterol 25-hydroxylase、
runt-related transcription factor 3、
interleukin 11 receptor, alpha、
procollagen C-endopeptidase enhancer、
frizzled homolog 7 (Drosophila)、
hypothetical gene BC008967、
collagen, type VIII, alpha 1、
tenascin C (hexabrachion)、
iroquois homeobox protein 5、
hephaestin、
integrin, beta 8、
synaptic vesicle glycoprotein 2、
neuroblastoma, suppression of tumorigenicity 1、
insulin-like growth factor binding protein 2, 36kDa、
Homo sapiens cDNA FLJ12280 fis, clone MAMMA1001744、
cytokine receptor-like factor 1、
potassium intermediate/small conductance calcium-activated channel, subfamily N, member 4、
integrin, beta 7、
transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、
sine oculis homeobox homolog 2 (Drosophila)、
KIAA1034 protein、
vesicle-associated membrane protein 5 (myobrevin)、
EGF-containing fibulin-like extracellular matrix protein 1、
early growth response 3、
distal-less homeobox 5、
hypothetical protein FLJ20373、
aldo-keto reductase family 1, member C3 (3-alpha hydroxysteroid dehydrogenase, type II)、
biglycan、
transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、
fibronectin 1、
proenkephalin、
integrin, beta-like 1 (with EGF-like repeat domains)、
Homo sapiens mRNA full length insert cDNA clone EUROIMAGE 1968422、
EphA3、
KIAA0367 protein、
natriuretic peptide receptor C/guanylate cyclase C (atrionatriuretic peptide receptor C)、
hypothetical protein FLJ14054、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp564B222 (from clone DKFZp564B222)、
BCL2/adenovirus E1B 19kDa interacting protein 3-like、
AE binding protein 1、
cytochrome c oxidase subunit VIIa polypeptide 1 (muscle)、
similar to neuralin 1、
B cell translocation gene 1、
hypothetical protein FLJ23191、および、
DKFZp586L151
のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について減少すること、
(h)MCP-1、IL-6、IL-8、GCP-2、HGF、KGF、FGF、HB-EGF、BDNF、TPO、MIP1a、RANTES、および、TIMP1のうちの少なくとも1つを分泌すること、ならびに、
(i)ELISAによって検出されたときに、TGF-beta2、ANG2、PDGFbb、MIP1b、I309、MDC、および、VEGFのうちの少なくとも1つを分泌していないこと、
のうちの少なくとも1つを更に含む、キット。
【0197】
(47)実施態様46のキットにおいて、
分娩後由来細胞を培養するための、少なくとも1つの試薬、および使用説明書、
を更に含む、キット。
(48)実施態様46のキットにおいて、
少なくとも1つの他の細胞型の集団、
を更に含む、キット。
(49)実施態様46のキットにおいて、
前記末梢血管疾患を治療するための、少なくとも1つの他の薬剤、
を更に含む、キット。
【0198】
(50)末梢血管疾患を有する患者を治療するための製薬組成物において、
製薬上許容できるキャリアと、
分娩後由来細胞から作られた準備物と、
を含み、
前記分娩後由来細胞は、
実質的に血液を含まないヒトの胎盤組織もしくは臍帯組織に由来し、
培養中で自己再生し、増加することができ、
少なくとも、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮の表現型の細胞へと分化する能力を有し、
成長のためにL−バリンを要求し、少なくとも約5%の酸素を含む大気中で成長することができ、
以下の特徴、
(a)培養中で、少なくとも約40回倍加する能力があること、
(b)コートされた組織培養容器、もしくは、コートされていない組織培養容器上に、付着し、増加することであって、前記コートされた組織培養容器は、ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオルニチン、ビトロネクチン、もしくは、フィブロネクチンのコーティングを備える、容器上に、付着し、増加すること、
(c)組織因子、ビメンチン、および、α平滑筋アクチンのうちの少なくとも1つを産生すること、
(d)CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr-alpha、PD-L2、HLA-A、HLA-B、および、HLA-Cのうちの少なくとも1つを産生すること、
(e)フローサイトメトリーによって検出されたときに、CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7-H2、HLA-G、HLA-DR、HLA-DP、および、HLA-DQのうちの少なくとも1つを産生していないこと、
(f)interleukin 8、
reticulon 1、
chemokine (C-X-C motif) ligand 1 (melanoma growth stimulating activity, alpha)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 6 (granulocyte chemotactic protein 2)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 3、および、
tumor necrosis factor, alpha-induced protein 3
のうちの少なくとも1つを発現すること、
(g)C-type (calcium dependent, carbohydrate-recognition domain) lectin superfamily member 2 (activation-induced)、
Wilms tumor 1、
aldehyde dehydrogenase 1, family member A2、
renin、
oxidized low density lipoprotein (lectin-like) receptor 1、
Homo sapiens, clone IMAGE:4179671, mRNA, partial cds、
protein kinase C, zeta、
hypothetical protein DKFZp564F013、
downregulated in ovarian cancer 1、および、
Homo sapiens mRNA; and cDNA DKFZp547K1113 (from clone DKFZp547K1113)
のうちの少なくとも1つを発現すること、
(h)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは、腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、
short stature homeobox 2、
heat shock 27kDa protein 2、
chemokine (C-X-C motif) ligand 12 (stromal cell-derived factor 1)、
elastin (supravalvular aortic stenosis, Williams-Beuren syndrome)、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp586M2022 (from clone DKFZp586M2022)、
mesenchyme homeobox 2 (growth arrest-specific homeobox)、
sine oculis homeobox homolog 1 (Drosophila)、
crystallin, alpha B、
dishevelled associated activator of morphogenesis 2、
DKFZP586B2420 protein、
similar to neuralin 1、
tetranectin (plasminogen binding protein)、
src homology three (SH3) and cysteine rich domain、
B-cell translocation gene 1, antiproliferative、
cholesterol 25-hydroxylase、
runt-related transcription factor 3、
hypothetical protein FLJ23191、
interleukin 11 receptor, alpha、
procollagen C-endopeptidase enhancer、
frizzled homolog 7 (Drosophila)、
hypothetical gene BC008967、
collagen, type VIII, alpha 1、
tenascin C (hexabrachion)、
iroquois homeobox protein 5、
hephaestin、
integrin, beta 8、
synaptic vesicle glycoprotein 2、
Homo sapiens cDNA FLJ12280 fis, clone MAMMA1001744、
cytokine receptor-like factor 1、
potassium intermediate/small conductance calcium-activated channel, subfamily N, member 4、
integrin, alpha 7、
DKFZP586L151 protein、
transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、
sine oculis homeobox homolog 2 (Drosophila)、
KIAA1034 protein、
early growth response 3、
distal-less homeobox 5、
hypothetical protein FLJ20373、
aldo-keto reductase family 1, member C3 (3-alpha hydroxysteroid dehydrogenase, type II)、
biglycan、
fibronectin 1、
proenkephalin、
integrin, beta-like 1 (with EGF-like repeat domains)、
Homo sapiens mRNA full length insert cDNA clone EUROIMAGE 1968422、
EphA3、
KIAA0367 protein、
natriuretic peptide receptor C/guanylate cyclase C (atrionatriuretic peptide receptor C)、
hypothetical protein FLJ14054、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp564B222 (from clone DKFZp564B222)、
vesicle-associated membrane protein 5 (myobrevin)、
EGF-containing fibulin-like extracellular matrix protein 1、
BCL2/adenovirus E1B 19kDa interacting protein 3-like、
AE binding protein 1、
cytochrome c oxidase subunit VIIa polypeptide 1 (muscle)、
neuroblastoma, suppression of tumorigenicity 1、および、
insulin-like growth factor binding protein 2, 36kDa
のうちの少なくとも1つについて減少すること、
(i)MCP-1、IL-6、IL-8、GCP-2、HGF、KGF、FGF、HB-EGF、BDNF、TPO、MIP1a、RANTES、および、TIMP1のうちの少なくとも1つを分泌すること、ならびに、
(j)ELISAによって検出されたときに、TGF-beta2、ANG2、PDGFbb、MIP1b、I309、MDC、および、VEGFのうちの少なくとも1つを分泌していないこと、
のうちの少なくとも1つを含み、
前記準備物は、前記分娩後由来細胞の細胞可溶化物、前記分娩後由来細胞の細胞外マトリックス、もしくは、前記分娩後由来細胞が成長した馴化培地を含む、製薬組成物。
【0199】
(51)実施態様50の製薬組成物において、
分娩後由来細胞から作られた前記準備物は、血管内皮に対して栄養作用を及ぼす、製薬組成物。
(52)実施態様51の製薬組成物において、
前記栄養作用は、血管内皮細胞の増殖である、製薬組成物。
(53)実施態様50の製薬組成物において、
分娩後由来細胞から作られた前記準備物は、前記末梢血管疾患の部位への血管内皮細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
(54)実施態様50の製薬組成物において、
分娩後由来細胞から作られた前記準備物は、前記末梢血管疾患の部位への血管内皮前駆細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
(55)実施態様50の製薬組成物において、
分娩後由来細胞から作られた前記準備物は、前記末梢血管疾患の部位への血管平滑筋細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
【0200】
(56)実施態様50の製薬組成物において、
分娩後由来細胞から作られた前記準備物は、前記末梢血管疾患の部位への血管平滑筋前駆細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
(57)実施態様50の製薬組成物において、
前記末梢血管疾患は、末梢虚血である、製薬組成物。
(58)実施態様50の製薬組成物において、
前記組成物は、FGFおよびHGFを含む、製薬組成物。
(59)末梢血管疾患を有する患者を治療する方法において、
実施態様42の製薬組成物を、前記末梢血管疾患を治療するために有効な量で、前記患者に投与すること、
を含む、方法。
(60)末梢血管疾患を有する患者を治療するためのキットにおいて、
製薬上許容できるキャリアと、
実施態様42の製薬準備物と、
前記末梢血管疾患を治療するためのキット構成物を使用するための使用説明書と、
を含む、キット。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】内皮細胞の増殖におけるhUTCロット番号120304、MSC、および、線維芽細胞の効果を示す。
【図2】内皮細胞の増殖におけるhUTCロット番号120304および中和抗体の効果を示す。
【図3】HUVECの増殖におけるhUTCロット番号120304細胞可溶化物および中和抗体の効果を示す。
【図4】内皮細胞の遊走におけるhUTCおよびMSCの効果を示す。
【図5】内皮細胞の遊走におけるhUTCロット番号120304 および中和抗体の効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末梢血管疾患を有する患者を治療する方法において、
前記方法は、
分娩後由来細胞を、前記末梢血管疾患を治療するために有効な量で、前記患者に投与すること、
を含み、
前記分娩後由来細胞は、実質的に血液を含まないヒトの胎盤組織もしくは臍帯組織に由来し、
前記細胞は、培養中で自己再生し、増加することができ、少なくとも、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮の表現型の細胞へと分化する能力を有し、
前記細胞は、成長のためにL−バリンを要求し、少なくとも約5%の酸素中で成長することができ、
前記細胞は、以下の特徴、
(a)培養中で、少なくとも約40回倍加する能力があること、
(b)コートされた組織培養容器、もしくは、コートされていない組織培養容器上に、付着し、増加することであって、前記コートされた組織培養容器は、ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオルニチン、ビトロネクチン、もしくは、フィブロネクチンのコーティングを備える、容器上に、付着し、増加すること、
(c)組織因子、ビメンチン、および、α平滑筋アクチンのうちの少なくとも1つを産生すること、
(d)CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr-alpha、PD-L2、HLA-A、HLA-B、および、HLA-Cのうちの少なくとも1つを産生すること、
(e)フローサイトメトリーによって検出されたときに、CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7-H2、HLA-G、HLA-DR、HLA-DP、および、HLA-DQのうちの少なくとも1つを産生していないこと、
(f)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、
interleukin 8、
reticulon 1、
chemokine (C-X-C motif) ligand 1 (melanoma growth stimulating activity, alpha)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 6 (granulocyte chemotactic protein 2)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 3、
tumor necrosis factor, alpha-induced protein 3、
C-type lectin superfamily member 2、
Wilms tumor 1、
aldehyde dehydrogenase 1 family member A2、
renin、
oxidized low density lipoprotein receptor 1、
Homo sapiens clone IMAGE:4179671、
protein kinase C zeta、
hypothetical protein DKFZp564F013、
downregulated in ovarian cancer 1、および、
Homo sapiens gene from clone DKFZp547k1113
のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について増加すること、
(g)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは、腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、
short stature homeobox 2、
heat shock 27kDa protein 2、
chemokine (C-X-C motif) ligand 12 (stromal cell-derived factor 1)、
elastin (supravalvular aortic stenosis, Williams-Beuren syndrome)、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp586M2022 (from clone DKFZp586M2022)、
mesenchyme homeobox 2 (growth arrest-specific homeobox)、
sine oculis homeobox homolog 1 (Drosophila)、
crystallin, alpha B、
disheveled associated activator of morphogenesis 2、
DKFZP586B2420 protein、
similar to neuralin 1、
tetranectin (plasminogen binding protein)、
src homology three (SH3) and cysteine rich domain、
cholesterol 25-hydroxylase、
runt-related transcription factor 3、
interleukin 11 receptor, alpha、
procollagen C-endopeptidase enhancer、
frizzled homolog 7 (Drosophila)、
hypothetical gene BC008967、
collagen, type VIII, alpha 1、
tenascin C (hexabrachion)、
iroquois homeobox protein 5、
hephaestin、
integrin, beta 8、
synaptic vesicle glycoprotein 2、
neuroblastoma, suppression of tumorigenicity 1、
insulin-like growth factor binding protein 2, 36kDa、
Homo sapiens cDNA FLJ12280 fis, clone MAMMA1001744、
cytokine receptor-like factor 1、
potassium intermediate/small conductance calcium-activated channel, subfamily N, member 4、
integrin, beta 7、
transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、
sine oculis homeobox homolog 2 (Drosophila)、
KIAA1034 protein、
vesicle-associated membrane protein 5 (myobrevin)、
EGF-containing fibulin-like extracellular matrix protein 1、
early growth response 3、
distal-less homeobox 5、
hypothetical protein FLJ20373、
aldo-keto reductase family 1, member C3 (3-alpha hydroxysteroid dehydrogenase, type II)、
biglycan、
transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、
fibronectin 1、
proenkephalin、
integrin, beta-like 1 (with EGF-like repeat domains)、
Homo sapiens mRNA full length insert cDNA clone EUROIMAGE 1968422、
EphA3、
KIAA0367 protein、
natriuretic peptide receptor C/guanylate cyclase C (atrionatriuretic peptide receptor C)、
hypothetical protein FLJ14054、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp564B222 (from clone DKFZp564B222)、
BCL2/adenovirus E1B 19kDa interacting protein 3-like、
AE binding protein 1、
cytochrome c oxidase subunit VIIa polypeptide 1 (muscle)、
similar to neuralin 1、
B cell translocation gene 1、
hypothetical protein FLJ23191、および、
DKFZp586L151
のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について減少すること、
(h)MCP-1、IL-6、IL-8、GCP-2、HGF、KGF、FGF、HB-EGF、BDNF、TPO、MIP1a、RANTES、および、TIMP1のうちの少なくとも1つを分泌すること、ならびに、
(i)ELISAによって検出されたときに、TGF-beta2、ANG2、PDGFbb、MIP1b、I309、MDC、および、VEGFのうちの少なくとも1つを分泌していないこと、
のうちの少なくとも1つを更に含む、方法。
【請求項2】
末梢血管疾患を有する患者を治療するための製薬組成物において、
製薬上許容できるキャリアと、
前記末梢血管疾患を治療するために有効な量の分娩後由来細胞と、
を含み、
前記分娩後由来細胞は、実質的に血液を含まないヒトの胎盤組織もしくは臍帯組織に由来し、
前記細胞は、培養中で自己再生し、増加することができ、少なくとも、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮の表現型の細胞へと分化する能力を有し、
前記細胞は、成長のためにL−バリンを要求し、少なくとも約5%の酸素中で成長することができ、
前記細胞は、以下の特徴、
(a)培養中で、少なくとも約40回倍加する能力があること、
(b)コートされた組織培養容器、もしくは、コートされていない組織培養容器上に、付着し、増加することであって、前記コートされた組織培養容器は、ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオルニチン、ビトロネクチン、もしくは、フィブロネクチンのコーティングを備える、容器上に、付着し、増加すること、
(c)組織因子、ビメンチン、および、α平滑筋アクチンのうちの少なくとも1つを産生すること、
(d)CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr-alpha、PD-L2、HLA-A、HLA-B、および、HLA-Cのうちの少なくとも1つを産生すること、
(e)フローサイトメトリーによって検出されたときに、CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7-H2、HLA-G、HLA-DR、HLA-DP、および、HLA-DQのうちの少なくとも1つを産生していないこと、
(f)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、
interleukin 8、
reticulon 1、
chemokine (C-X-C motif) ligand 1 (melanoma growth stimulating activity, alpha)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 6 (granulocyte chemotactic protein 2)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 3、
tumor necrosis factor, alpha-induced protein 3、
C-type lectin superfamily member 2、
Wilms tumor 1、
aldehyde dehydrogenase 1 family member A2、
renin、
oxidized low density lipoprotein receptor 1、
Homo sapiens clone IMAGE:4179671、
protein kinase C zeta、
hypothetical protein DKFZp564F013、
downregulated in ovarian cancer 1、および、
Homo sapiens gene from clone DKFZp547k1113
のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について増加すること、
(g)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは、腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、
short stature homeobox 2、
heat shock 27kDa protein 2、
chemokine (C-X-C motif) ligand 12 (stromal cell-derived factor 1)、
elastin (supravalvular aortic stenosis, Williams-Beuren syndrome)、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp586M2022 (from clone DKFZp586M2022)、
mesenchyme homeobox 2 (growth arrest-specific homeobox)、
sine oculis homeobox homolog 1 (Drosophila)、
crystallin, alpha B、
disheveled associated activator of morphogenesis 2、
DKFZP586B2420 protein、
similar to neuralin 1、
tetranectin (plasminogen binding protein)、
src homology three (SH3) and cysteine rich domain、
cholesterol 25-hydroxylase、
runt-related transcription factor 3、
interleukin 11 receptor, alpha、
procollagen C-endopeptidase enhancer、
frizzled homolog 7 (Drosophila)、
hypothetical gene BC008967、
collagen, type VIII, alpha 1、
tenascin C (hexabrachion)、
iroquois homeobox protein 5、
hephaestin、
integrin, beta 8、
synaptic vesicle glycoprotein 2、
neuroblastoma, suppression of tumorigenicity 1、
insulin-like growth factor binding protein 2, 36kDa、
Homo sapiens cDNA FLJ12280 fis, clone MAMMA1001744、
cytokine receptor-like factor 1、
potassium intermediate/small conductance calcium-activated channel, subfamily N, member 4、
integrin, beta 7、
transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、
sine oculis homeobox homolog 2 (Drosophila)、
KIAA1034 protein、
vesicle-associated membrane protein 5 (myobrevin)、
EGF-containing fibulin-like extracellular matrix protein 1、
early growth response 3、
distal-less homeobox 5、
hypothetical protein FLJ20373、
aldo-keto reductase family 1, member C3 (3-alpha hydroxysteroid dehydrogenase, type II)、
biglycan、
transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、
fibronectin 1、
proenkephalin、
integrin, beta-like 1 (with EGF-like repeat domains)、
Homo sapiens mRNA full length insert cDNA clone EUROIMAGE 1968422、
EphA3、
KIAA0367 protein、
natriuretic peptide receptor C/guanylate cyclase C (atrionatriuretic peptide receptor C)、
hypothetical protein FLJ14054、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp564B222 (from clone DKFZp564B222)、
BCL2/adenovirus E1B 19kDa interacting protein 3-like、
AE binding protein 1、
cytochrome c oxidase subunit VIIa polypeptide 1 (muscle)、
similar to neuralin 1、
B cell translocation gene 1、
hypothetical protein FLJ23191、および、
DKFZp586L151
のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について減少すること、
(h)MCP-1、IL-6、IL-8、GCP-2、HGF、KGF、FGF、HB-EGF、BDNF、TPO、MIP1a、RANTES、および、TIMP1のうちの少なくとも1つを分泌すること、ならびに、
(i)ELISAによって検出されたときに、TGF-beta2、ANG2、PDGFbb、MIP1b、I309、MDC、および、VEGFのうちの少なくとも1つを分泌していないこと、
のうちの少なくとも1つを更に含む、製薬組成物。
【請求項3】
請求項2の製薬組成物において、
前記末梢血管疾患は、末梢虚血である、製薬組成物。
【請求項4】
請求項2の製薬組成物において、
前記細胞は、前記組成物の処方に先立って、試験管内で骨格筋系統へと分化するように誘導される、製薬組成物。
【請求項5】
請求項2の製薬組成物において、
前記細胞は、前記組成物の処方に先立って、試験管内で血管平滑筋系統へと分化するように誘導される、製薬組成物。
【請求項6】
請求項2の製薬組成物において、
前記細胞は、前記組成物の処方に先立って、試験管内で血管内皮系統へと分化するように誘導される、製薬組成物。
【請求項7】
請求項2の製薬組成物において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の治療を推進する遺伝子産物を産生するように遺伝子操作される、製薬組成物。
【請求項8】
請求項2の製薬組成物において、
少なくとも1つの他の細胞型、
を含む、製薬組成物。
【請求項9】
請求項8の製薬組成物において、
前記他の細胞型は、骨格筋細胞、骨格筋前駆細胞、血管平滑筋細胞、血管平滑筋前駆細胞、周皮細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、または、他の分化多能性もしくは分化万能性の幹細胞である、製薬組成物。
【請求項10】
請求項2の製薬組成物において、
少なくとも1つの他の薬剤、
を含む、製薬組成物。
【請求項11】
請求項10の製薬組成物において、
前記薬剤は、抗血栓形成薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、免疫調節薬、もしくは、抗アポトーシス薬である、製薬組成物。
【請求項12】
請求項2の製薬組成物において、
注射もしくは輸液による投与のために処方される、製薬組成物。
【請求項13】
請求項2の製薬組成物において、
前記細胞は、埋め込み可能な装置の中に封入される、製薬組成物。
【請求項14】
請求項2の製薬組成物において、
前記細胞は、マトリックスもしくは足場の中に含まれる、製薬組成物。
【請求項15】
請求項2の製薬組成物において、
前記細胞は、前記患者の骨格筋に対して栄養作用を及ぼす、製薬組成物。
【請求項16】
請求項2の製薬組成物において、
前記細胞は、前記患者の血管平滑筋に対して栄養作用を及ぼす、製薬組成物。
【請求項17】
請求項16の製薬組成物において、
前記栄養作用は、前記血管平滑筋細胞の増殖である、製薬組成物。
【請求項18】
請求項2の製薬組成物において、
前記細胞は、前記患者の血管内皮に対して栄養作用を及ぼす、製薬組成物。
【請求項19】
請求項18の製薬組成物において、
前記栄養作用は、前記血管内皮細胞の増殖である、製薬組成物。
【請求項20】
請求項2の製薬組成物において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の部位への血管内皮細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
【請求項21】
請求項2の製薬組成物において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の部位への血管内皮前駆細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
【請求項22】
請求項2の製薬組成物において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の部位への血管平滑筋細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
【請求項23】
請求項2の製薬組成物において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の部位への血管平滑筋前駆細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
【請求項24】
請求項2の製薬組成物において、
前記細胞は、前記末梢血管疾患の部位への周皮細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
【請求項25】
末梢血管疾患を有する患者を治療するためのキットにおいて、
前記キットは、
製薬上許容できるキャリアと、
分娩後由来細胞の集団と、
前記患者を治療する方法で、前記キットを使用するための使用説明書と、
を含み、
前記分娩後由来細胞は、実質的に血液を含まないヒトの胎盤組織もしくは臍帯組織に由来し、
前記細胞は、培養中で自己再生し、増加することができ、少なくとも、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮の表現型の細胞へと分化する能力を有し、
前記細胞は、成長のためにL−バリンを要求し、少なくとも約5%の酸素中で成長することができ、
前記細胞は、以下の特徴、
(a)培養中で、少なくとも約40回倍加する能力があること、
(b)コートされた組織培養容器、もしくは、コートされていない組織培養容器上に、付着し、増加することであって、前記コートされた組織培養容器は、ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオルニチン、ビトロネクチン、もしくは、フィブロネクチンのコーティングを備える、容器上に、付着し、増加すること、
(c)組織因子、ビメンチン、および、α平滑筋アクチンのうちの少なくとも1つを産生すること、
(d)CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr-alpha、PD-L2、HLA-A、HLA-B、および、HLA-Cのうちの少なくとも1つを産生すること、
(e)フローサイトメトリーによって検出されたときに、CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7-H2、HLA-G、HLA-DR、HLA-DP、および、HLA-DQのうちの少なくとも1つを産生していないこと、
(f)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、
interleukin 8、
reticulon 1、
chemokine (C-X-C motif) ligand 1 (melanoma growth stimulating activity, alpha)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 6 (granulocyte chemotactic protein 2)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 3、
tumor necrosis factor, alpha-induced protein 3、
C-type lectin superfamily member 2、
Wilms tumor 1、
aldehyde dehydrogenase 1 family member A2、
renin、
oxidized low density lipoprotein receptor 1、
Homo sapiens clone IMAGE:4179671、
protein kinase C zeta、
hypothetical protein DKFZp564F013、
downregulated in ovarian cancer 1、および、
Homo sapiens gene from clone DKFZp547k1113
のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について増加すること、
(g)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは、腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、
short stature homeobox 2、
heat shock 27kDa protein 2、
chemokine (C-X-C motif) ligand 12 (stromal cell-derived factor 1)、
elastin (supravalvular aortic stenosis, Williams-Beuren syndrome)、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp586M2022 (from clone DKFZp586M2022)、
mesenchyme homeobox 2 (growth arrest-specific homeobox)、
sine oculis homeobox homolog 1 (Drosophila)、
crystallin, alpha B、
disheveled associated activator of morphogenesis 2、
DKFZP586B2420 protein、
similar to neuralin 1、
tetranectin (plasminogen binding protein)、
src homology three (SH3) and cysteine rich domain、
cholesterol 25-hydroxylase、
runt-related transcription factor 3、
interleukin 11 receptor, alpha、
procollagen C-endopeptidase enhancer、
frizzled homolog 7 (Drosophila)、
hypothetical gene BC008967、
collagen, type VIII, alpha 1、
tenascin C (hexabrachion)、
iroquois homeobox protein 5、
hephaestin、
integrin, beta 8、
synaptic vesicle glycoprotein 2、
neuroblastoma, suppression of tumorigenicity 1、
insulin-like growth factor binding protein 2, 36kDa、
Homo sapiens cDNA FLJ12280 fis, clone MAMMA1001744、
cytokine receptor-like factor 1、
potassium intermediate/small conductance calcium-activated channel, subfamily N, member 4、
integrin, beta 7、
transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、
sine oculis homeobox homolog 2 (Drosophila)、
KIAA1034 protein、
vesicle-associated membrane protein 5 (myobrevin)、
EGF-containing fibulin-like extracellular matrix protein 1、
early growth response 3、
distal-less homeobox 5、
hypothetical protein FLJ20373、
aldo-keto reductase family 1, member C3 (3-alpha hydroxysteroid dehydrogenase, type II)、
biglycan、
transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、
fibronectin 1、
proenkephalin、
integrin, beta-like 1 (with EGF-like repeat domains)、
Homo sapiens mRNA full length insert cDNA clone EUROIMAGE 1968422、
EphA3、
KIAA0367 protein、
natriuretic peptide receptor C/guanylate cyclase C (atrionatriuretic peptide receptor C)、
hypothetical protein FLJ14054、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp564B222 (from clone DKFZp564B222)、
BCL2/adenovirus E1B 19kDa interacting protein 3-like、
AE binding protein 1、
cytochrome c oxidase subunit VIIa polypeptide 1 (muscle)、
similar to neuralin 1、
B cell translocation gene 1、
hypothetical protein FLJ23191、および、
DKFZp586L151
のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子について減少すること、
(h)MCP-1、IL-6、IL-8、GCP-2、HGF、KGF、FGF、HB-EGF、BDNF、TPO、MIP1a、RANTES、および、TIMP1のうちの少なくとも1つを分泌すること、ならびに、
(i)ELISAによって検出されたときに、TGF-beta2、ANG2、PDGFbb、MIP1b、I309、MDC、および、VEGFのうちの少なくとも1つを分泌していないこと、
のうちの少なくとも1つを更に含む、キット。
【請求項26】
請求項25のキットにおいて、
分娩後由来細胞を培養するための、少なくとも1つの試薬、および使用説明書、
を更に含む、キット。
【請求項27】
請求項25のキットにおいて、
少なくとも1つの他の細胞型の集団、
を更に含む、キット。
【請求項28】
請求項25のキットにおいて、
前記末梢血管疾患を治療するための、少なくとも1つの他の薬剤、
を更に含む、キット。
【請求項29】
末梢血管疾患を有する患者を治療するための製薬組成物において、
製薬上許容できるキャリアと、
分娩後由来細胞から作られた準備物と、
を含み、
前記分娩後由来細胞は、
実質的に血液を含まないヒトの胎盤組織もしくは臍帯組織に由来し、
培養中で自己再生し、増加することができ、
少なくとも、骨格筋、血管平滑筋、周皮細胞、もしくは、血管内皮の表現型の細胞へと分化する能力を有し、
成長のためにL−バリンを要求し、少なくとも約5%の酸素を含む大気中で成長することができ、
以下の特徴、
(a)培養中で、少なくとも約40回倍加する能力があること、
(b)コートされた組織培養容器、もしくは、コートされていない組織培養容器上に、付着し、増加することであって、前記コートされた組織培養容器は、ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオルニチン、ビトロネクチン、もしくは、フィブロネクチンのコーティングを備える、容器上に、付着し、増加すること、
(c)組織因子、ビメンチン、および、α平滑筋アクチンのうちの少なくとも1つを産生すること、
(d)CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr-alpha、PD-L2、HLA-A、HLA-B、および、HLA-Cのうちの少なくとも1つを産生すること、
(e)フローサイトメトリーによって検出されたときに、CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7-H2、HLA-G、HLA-DR、HLA-DP、および、HLA-DQのうちの少なくとも1つを産生していないこと、
(f)interleukin 8、
reticulon 1、
chemokine (C-X-C motif) ligand 1 (melanoma growth stimulating activity, alpha)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 6 (granulocyte chemotactic protein 2)、
chemokine (C-X-C motif) ligand 3、および、
tumor necrosis factor, alpha-induced protein 3
のうちの少なくとも1つを発現すること、
(g)C-type (calcium dependent, carbohydrate-recognition domain) lectin superfamily member 2 (activation-induced)、
Wilms tumor 1、
aldehyde dehydrogenase 1, family member A2、
renin、
oxidized low density lipoprotein (lectin-like) receptor 1、
Homo sapiens, clone IMAGE:4179671, mRNA, partial cds、
protein kinase C, zeta、
hypothetical protein DKFZp564F013、
downregulated in ovarian cancer 1、および、
Homo sapiens mRNA; and cDNA DKFZp547K1113 (from clone DKFZp547K1113)
のうちの少なくとも1つを発現すること、
(h)線維芽細胞、間充織幹細胞、もしくは、腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞に関連する遺伝子の発現が、
short stature homeobox 2、
heat shock 27kDa protein 2、
chemokine (C-X-C motif) ligand 12 (stromal cell-derived factor 1)、
elastin (supravalvular aortic stenosis, Williams-Beuren syndrome)、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp586M2022 (from clone DKFZp586M2022)、
mesenchyme homeobox 2 (growth arrest-specific homeobox)、
sine oculis homeobox homolog 1 (Drosophila)、
crystallin, alpha B、
dishevelled associated activator of morphogenesis 2、
DKFZP586B2420 protein、
similar to neuralin 1、
tetranectin (plasminogen binding protein)、
src homology three (SH3) and cysteine rich domain、
B-cell translocation gene 1, antiproliferative、
cholesterol 25-hydroxylase、
runt-related transcription factor 3、
hypothetical protein FLJ23191、
interleukin 11 receptor, alpha、
procollagen C-endopeptidase enhancer、
frizzled homolog 7 (Drosophila)、
hypothetical gene BC008967、
collagen, type VIII, alpha 1、
tenascin C (hexabrachion)、
iroquois homeobox protein 5、
hephaestin、
integrin, beta 8、
synaptic vesicle glycoprotein 2、
Homo sapiens cDNA FLJ12280 fis, clone MAMMA1001744、
cytokine receptor-like factor 1、
potassium intermediate/small conductance calcium-activated channel, subfamily N, member 4、
integrin, alpha 7、
DKFZP586L151 protein、
transcriptional co-activator with PDZ-binding motif (TAZ)、
sine oculis homeobox homolog 2 (Drosophila)、
KIAA1034 protein、
early growth response 3、
distal-less homeobox 5、
hypothetical protein FLJ20373、
aldo-keto reductase family 1, member C3 (3-alpha hydroxysteroid dehydrogenase, type II)、
biglycan、
fibronectin 1、
proenkephalin、
integrin, beta-like 1 (with EGF-like repeat domains)、
Homo sapiens mRNA full length insert cDNA clone EUROIMAGE 1968422、
EphA3、
KIAA0367 protein、
natriuretic peptide receptor C/guanylate cyclase C (atrionatriuretic peptide receptor C)、
hypothetical protein FLJ14054、
Homo sapiens mRNA; cDNA DKFZp564B222 (from clone DKFZp564B222)、
vesicle-associated membrane protein 5 (myobrevin)、
EGF-containing fibulin-like extracellular matrix protein 1、
BCL2/adenovirus E1B 19kDa interacting protein 3-like、
AE binding protein 1、
cytochrome c oxidase subunit VIIa polypeptide 1 (muscle)、
neuroblastoma, suppression of tumorigenicity 1、および、
insulin-like growth factor binding protein 2, 36kDa
のうちの少なくとも1つについて減少すること、
(i)MCP-1、IL-6、IL-8、GCP-2、HGF、KGF、FGF、HB-EGF、BDNF、TPO、MIP1a、RANTES、および、TIMP1のうちの少なくとも1つを分泌すること、ならびに、
(j)ELISAによって検出されたときに、TGF-beta2、ANG2、PDGFbb、MIP1b、I309、MDC、および、VEGFのうちの少なくとも1つを分泌していないこと、
のうちの少なくとも1つを含み、
前記準備物は、前記分娩後由来細胞の細胞可溶化物、前記分娩後由来細胞の細胞外マトリックス、もしくは、前記分娩後由来細胞が成長した馴化培地を含む、製薬組成物。
【請求項30】
請求項29の製薬組成物において、
分娩後由来細胞から作られた前記準備物は、血管内皮に対して栄養作用を及ぼす、製薬組成物。
【請求項31】
請求項30の製薬組成物において、
前記栄養作用は、血管内皮細胞の増殖である、製薬組成物。
【請求項32】
請求項29の製薬組成物において、
分娩後由来細胞から作られた前記準備物は、前記末梢血管疾患の部位への血管内皮細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
【請求項33】
請求項29の製薬組成物において、
分娩後由来細胞から作られた前記準備物は、前記末梢血管疾患の部位への血管内皮前駆細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
【請求項34】
請求項29の製薬組成物において、
分娩後由来細胞から作られた前記準備物は、前記末梢血管疾患の部位への血管平滑筋細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
【請求項35】
請求項29の製薬組成物において、
分娩後由来細胞から作られた前記準備物は、前記末梢血管疾患の部位への血管平滑筋前駆細胞の遊走を誘導する、製薬組成物。
【請求項36】
請求項29の製薬組成物において、
前記末梢血管疾患は、末梢虚血である、製薬組成物。
【請求項37】
請求項29の製薬組成物において、
前記組成物は、FGFおよびHGFを含む、製薬組成物。
【請求項38】
末梢血管疾患を有する患者を治療する方法において、
請求項21の製薬組成物を、前記末梢血管疾患を治療するために有効な量で、前記患者に投与すること、
を含む、方法。
【請求項39】
末梢血管疾患を有する患者を治療するためのキットにおいて、
製薬上許容できるキャリアと、
請求項21の製薬準備物と、
前記末梢血管疾患を治療するためのキット構成物を使用するための使用説明書と、
を含む、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−522024(P2009−522024A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548849(P2008−548849)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/062667
【国際公開番号】WO2007/076522
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(507209506)エシコン・インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】Ethicon Incorporated
【住所又は居所原語表記】Rt. 22 West,P.O.Box 151,Somerville,NJ 08876−0151 United States of America
【Fターム(参考)】