説明

分子トーチ(torch)

【課題】「分子トーチ」および標的核酸配列の存在を検出するための分子トーチの使用を提供すること。
【解決手段】本発明は、「分子トーチ」および標的核酸配列の存在を検出するための分子トーチの使用を特徴とする。分子トーチは標的結合ドメイン、標的閉鎖ドメイン、およびジョイニング領域を含む。標的結合ドメインは、同一のハイブリダイゼーション条件下で、標的結合ドメインが標的閉鎖ドメインとよりも標的配列と、より安定なハイブリッドを形成するように、標的配列の方に偏向している。ジョイニング領域は、閉じたトーチの形成または維持を助長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1998年7月2日に提出された、米国仮特許出願第60/091
,616号の利益を請求する。
発明の分野
本発明は、試料中の標的核酸配列の存在または量を検出するための方法および
組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本明細書に記載される参考文献はいずれも、請求された発明に対し先行技術で
あると認められていない。
【0003】
標的核酸配列は、試料に存在する可能性がある他の配列よりも、標的配列に優
先的にハイブリダイズするように設計された核酸プローブを用いた多様な方法に
より、検出することが可能である。標的配列の例には、元来試料に存在している
可能性がある配列、または増幅法の一部として産生された配列である、微生物、
ウイルス、植物遺伝子、またはヒト遺伝子などの動物遺伝子に特徴的な配列など
が含まれる。標的配列の存在下で検出法の一部として産生されるが標的配列に依
存しない配列を有する、レポーター配列を検出することもまた可能である。
【0004】
標的核酸配列に対するプローブのハイブリダイゼーションは、適切な条件下で
、検出可能なプローブ:標的二重鎖を形成することが可能である。こうした二重
鎖の検出は、標識化プローブを用い、助長される。標的配列にハイブリダイズし
ていない標識化プローブからのシグナルによるバックグラウンドを減少させるた
めの異なる技術が利用可能である。こうした技術には、物理的分離工程、ハイブ
リダイズしていないプローブに比べてプローブ:標的二重鎖において優先的に変
化させられる標識、および/または相互作用標識の使用が含まれる。
【0005】
相互作用標識は2つ以上の標識であり、互いに近接している際には、これらの
標識が遠く離れておりしたがって協同作用が減少している際に生じるシグナルと
は異なるシグナルを協同で生じる。標識は1つ以上の分子実体と関連していても
よい。検出系は、標識が、標的配列の存在下または標的配列の非存在下いずれか
で相互作用するよう設計してもよい。
【0006】
Taubら、米国特許第4,820,630号は、標的核酸配列の存在下で、
協同で、検出可能なシグナルを生じる、2つの異なる核酸分子上に存在する相互
作用標識を記載する。標的配列に対する両分子のハイブリダイゼーションにより
、標識が近接し、したがって、近接して協同作用しない標識とは異なるシグナル
を、協同で生じることが可能である。
【0007】
Morrison、欧州特許出願第87300195.2号、公告番号第0
232 967号は、2つの相補的な核酸プローブで構成される試薬を含む検出
系を記載する。相補的なプローブの一方は第一の標識を含み、そして他の相補的
プローブは第二の標識を含む。第一および第二の標識は、互いに相互作用するこ
とが可能である。標的配列および2つの相補的プローブの一方の間の複合体の形
成は、2つの標識の間の相互作用を変化させる。
【0008】
Lizardiら、米国特許第5,118,801号および第5,312,7
28号は、互いに相補的な「スイッチ」配列が隣接する標的相補的配列を含む核
酸プローブを記載する。標的配列の非存在下では、スイッチ配列が共にハイブリ
ダイズする。標的配列の存在下では、プローブが標的配列にハイブリダイズし、
スイッチ配列を物理的に分離し、そしてそれにより「開いたスイッチ」を生じる
。スイッチ配列の状態は、開いていても閉じていても、プローブが標的配列にハ
イブリダイズしているか、検出可能なシグナルを、選択的に生成するのに有用で
あることが示されている。
【0009】
Lizardi、国際出願第PCT/US94/13415号、国際公告WO
95/13399は、「単一の(unitary)」ハイブリダイゼーション
プローブを記載する。該プローブは、標的相補的配列、標的配列の非存在下でプ
ローブを閉じたコンホメーションに保持するアフィニティー対、およびプローブ
が閉じたコンホメーションにある際、相互作用する標識対を含む。標的配列に対
するプローブのハイブリダイゼーションは、プローブを開いたコンホメーション
にシフトさせ、該コンホメーションは、標識対間の相互作用を減少させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は「分子トーチ」および標的核酸配列の存在を検出するための分子トー
チの使用を特徴とする。分子トーチは、標的結合ドメイン、標的閉鎖ドメイン、
およびジョイニング(joining)領域を含む。標的結合ドメインは、同一
のハイブリダイゼーション条件下では、標的閉鎖ドメインとよりも標的配列との
方が安定なハイブリッドを形成するように、標的配列の方に偏向している。ジョ
イニング領域は、閉じたトーチの形成または維持を助長する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) 標的核酸配列が試料に存在するか決定するための方法であ
って:
a)前記試料を、
前記標的配列が存在する場合に、前記標的配列にハイブリダイズして開いたト
ーチを産生するための標的検出手段、
前記標的配列の非存在下で、前記標的検出手段にハイブリダイズして閉じたト
ーチを産生するためのトーチ閉鎖手段、および
前記標的検出手段および前記トーチ閉鎖手段を連結するためのジョイニング手
段、ここで前記ジョイニング手段は、前記標的配列の非存在下で、前記の閉じた
トーチの形成を助長する、
を含む分子トーチと接触させる工程;および
b)前記試料中の前記標的配列の存在の指標として、前記の開いたトーチの存在
を検出する工程;
を含む前記方法。
(項目2) 前記標的配列が転写関連増幅を用い生成され、前記分子ト
ーチが前記増幅前に前記試料に添加される、項目1の方法。
(項目3) 標的核酸配列が試料に存在するか決定するための方法であ
って:
a)前記試料を、
標的結合ドメイン、
標的閉鎖ドメイン、および
前記標的結合および標的閉鎖ドメインを連結するジョイニング領域、ここで前
記ジョイニング領域は、前記標的配列の非存在下で、閉じたトーチの形成を助長
する、
を含む分子トーチと接触させる工程;および
b)前記試料中の前記標的配列の存在の指標として、前記の開いたトーチの存在
を検出する工程;
を含む前記方法。
(項目4) 前記標的結合ドメインまたは前記標的閉鎖ドメインが標識
を含み、そして前記標識が、標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッド
が形成された際に、前記標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドが形
成されない際に生じるシグナルとは異なるシグナルを生じる、項目3の方法。
(項目5) 前記標的結合ドメインが第一の標識を含み、前記標的閉鎖
ドメインが第二の標識を含み、そして前記標的結合ドメインおよび前記標的閉鎖
ドメインが標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドを形成する際に、
前記の第一および第二の標識が相互作用して、前記標的開放および前記標的閉鎖
ドメインが前記標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドを形成しない
際に生じるシグナルとは異なるシグナルを生じる、ここで前記工程b)が、第一
および第二の標識間の相互作用変化を前記の開いたトーチおよび前記試料中の前
記標的配列の存在の指標として検出する、項目3の方法。
(項目6) 前記の第一および第二の標識が発光剤/消光剤対である、
項目5の方法。
(項目7) 前記の第一および第二の標識がフルオロフォア/消光剤対
である、項目5の方法。
(項目8) 前記の第一および第二の標識が発光剤/付加物対である、
項目5の方法。
(項目9) 前記の第一および第二の標識がForresterエネル
ギー移動対である、項目5の方法。
(項目10) 前記の第一および第二の標識が色素二量体対である、請
求項5の方法。
(項目11) 前記標的配列が転写関連増幅を用い生成され、前記分子
トーチが前記増幅前に前記試料に添加される、項目5の方法。
(項目12) 前記ジョイニング領域が、ポリヌクレオチド、多糖類お
よびポリペプチドからなる群より独立に選択される1つ以上の基からなる、請求
項5の方法。
(項目13) 前記ジョイニング領域が、第一および第二のポリヌクレ
オチドまたはその誘導体を含み、前記の第一および第二のポリヌクレオチドまた
はその誘導体が実質的に一方に相補的である、項目5の方法。
(項目14) 前記標的配列がRNAであり、前記標的結合ドメインが
独立に選択される2’−メトキシまたは2’−フルオロ置換リボヌクレオチドで
実質的に構成され、ここで前記標的閉鎖ドメインが独立に選択されるデオキシリ
ボヌクレオチドで実質的に構成される、項目13の方法。
(項目15) 前記標的結合ドメインが、独立に選択される2’−メトキシ置換リボヌクレオチドで実質的に構成される、項目13の方法。
(項目16) 標的核酸配列が試料に存在するか決定する方法であって:
a)前記試料を、
標的結合ドメイン、
標的閉鎖ドメイン、および
前記標的結合および標的閉鎖ドメインを連結するジョイニング領域、ここで前
記ジョイニング領域は、前記標的配列の非存在下で、閉じたトーチの形成を助長
する
を含む分子トーチと接触させる工程;
b)前記標的結合ドメインおよび前記標的閉鎖ドメインが安定な標的結合ドメイ
ン:標的閉鎖ドメインハイブリッドを形成しないように、前記試料および前記ト
ーチを含む混合物を変性条件に曝露する工程;
c)前記標的配列の非存在下で標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインが形成され
るように、そして前記標的配列の存在下で標的結合ドメイン:標的配列ハイブリ
ッドが工程b)またはc)で形成されて開いたトーチを生じ、そして前記標的結
合ドメイン:標的配列ハイブリッドが前記標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメイン
ハイブリッドより安定であるように、前記混合物をハイブリダイゼーション条件
に曝露する工程;および
d)前記試料中の前記標的配列の存在の指標として、前記の開いたトーチの存在
を検出する工程;
を含む前記方法。
(項目17) 前記工程b)が前記混合物の温度を上昇させ、そして前
記工程c)が前記混合物の温度を下降させる、項目16の方法。
(項目18) 前記標的結合ドメインまたは前記標的閉鎖ドメインが標
識を含み、そして前記標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドが形成
された際に、前記標識が前記標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッド
が形成されない際に生じるシグナルとは異なるシグナルを生じる、項目17の
方法。
(項目19) 前記標的結合ドメインが第一の標識を含み、前記標的閉
鎖ドメインが第二の標識を含み、そして前記標的結合ドメインおよび前記標的閉
鎖ドメインが標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドを形成する際に
は、前記の第一および第二の標識が相互作用して、前記標的開放および前記標的
閉鎖ドメインが前記標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドを形成し
ない際に生じるシグナルとは異なるシグナルを生じる、ここで前記工程c)が前
記の第一および第二の標識間の相互作用変化を前記の開いたトーチおよび前記試
料中の前記標的配列の存在の指標として検出する、項目17の方法。
(項目20) 前記の第一および第二の標識が発光剤/消光剤対である
、項目19の方法。
(項目21) 前記の第一および第二の標識がフルオロフォア/消光剤
対である、項目19の方法。
(項目22) 前記の第一および第二の標識が発光剤/付加物対である
、項目19の方法。
(項目23) 前記の第一および第二の標識がForresterエネ
ルギー移動対である、項目19の方法。
(項目24) 前記の第一および第二の標識が色素二量体対である、請
求項19の方法。
(項目25) 前記標的配列が転写関連増幅を用い生成され、前記分子
トーチが前記増幅前に前記試料に添加される、項目16の方法。
(項目26) 前記ジョイニング領域が、ポリヌクレオチド、多糖類お
よびポリペプチドからなる群より独立に選択される1つ以上の基からなる、請求
項16の方法。
(項目27) 前記ジョイニング領域が第一および第二のポリヌクレオ
チドまたはその誘導体を含み、前記の第一および第二のポリヌクレオチドまたは
その誘導体が実質的に一方に相補的である、項目16の方法。
(項目28) 前記標的配列がRNAであり、そして前記標的結合ドメ
インが独立に選択される2’−メトキシまたは2’−フルオロ置換リボヌクレオ
チドで実質的に構成され、そして前記標的閉鎖ドメインが独立に選択されるデオ
キシリボヌクレオチドで実質的に構成される、項目16の方法。
(項目29) 前記標的結合ドメインが独立に選択される2’−メトキ
シ置換リボヌクレオチドで実質的に構成される、項目28の方法。
(項目30) 標的配列にハイブリダイズして開いたトーチを産生する
ための標的検出手段と、
前記標的配列の非存在下で、前記標的検出手段にハイブリダイズして閉じたト
ーチを産生するためのトーチ閉鎖手段と、および
前記標的配列の非存在下で、前記の閉じたトーチの形成を助長するためのジョ
イニング手段と、
を含む分子トーチ。
(項目31) 前記標的検出手段が第一の標識を含み、前記トーチ閉鎖
手段が第二の標識を含み、そして前記の第一および第二の標識が、前記の開いた
トーチに存在する際には相互作用して、前記の閉じたトーチに存在する際に生じ
るシグナルとは異なるシグナルを生じる、項目30の分子トーチ。
(項目32) 標的結合ドメインと、
標的閉鎖ドメインと、ここで前記標的結合ドメインは、前記標的閉鎖ドメイン
とよりも、前記標的結合ドメインの完全なDNAまたはRNA相補体と、より安
定な二重鎖を形成する、および
前記標的開放および標的閉鎖ドメインを連結するジョイニング領域と、ここで
前記ジョイニング領域は前記標的結合ドメインの前記標的閉鎖ドメインへのハイ
ブリダイゼーションを助長する
を含む分子トーチ。
(項目33) 前記標的結合ドメインが第一の標識を含み、前記標的閉
鎖ドメインが第二の標識を含み、そして前記の第一および第二の標識が、前記の
開いたトーチに存在する際には相互作用して、前記の閉じたトーチに存在する際
に生じるシグナルとは異なるシグナルを生じる、項目32の分子トーチ。
(項目34) 前記標的結合および標的閉鎖ドメインが、各々:
糖・ホスホジエステル型連結およびペプチド連結からなる群より独立に選択さ
れる1つ以上の基を含む骨格、および
前記骨格に連結している、アデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラ
シルに水素結合することが可能なヌクレオチド塩基認識基、
を含み、
前記ジョイニング領域がヌクレオチド塩基認識配列、多糖類、およびポリペプ
チドからなる群より独立に選択される1つ以上の基からなる
項目33のトーチ。
(項目35) 前記標的結合および標的閉鎖ドメインが各々、デオキシ
リボヌクレオチド、リボヌクレオチド、2’−メトキシ置換リボヌクレオチド、
2’−フルオロ置換リボヌクレオチドおよびペプチド核酸からなる群より独立に
選択される1つ以上の基を含み、そして
前記ジョイニング領域が、第一および第二のポリヌクレオチドまたはその誘導
体を含み、前記の第一および第二のポリヌクレオチドまたはその誘導体が実質的
に一方に相補的である
項目34のトーチ。
(項目36) 前記標的結合ドメインが2’−メトキシ置換リボヌクレ
オチドおよび2’−フルオロ置換リボヌクレオチドからなる群より独立に選択さ
れる実質的に1つ以上の基を含み、そして前記標的閉鎖ドメインがデオキシリボ
ヌクレオチドを実質的に含む、項目35のトーチ。
(項目37) 前記の第一および第二の標識がフルオロフォア/消光剤
対である、項目36のトーチ。
【0011】
標的配列の存在は、分子トーチを用い、該分子トーチが開いているかまたは閉
じているかを測定することにより、検出することが可能である。「閉じた(cl
osed)トーチ」において、標的結合ドメインには、標的閉鎖ドメインがハイ
ブリダイズしている。「開いた(open)トーチ」において、標的結合ドメイ
ンには、標的閉鎖ドメインがハイブリダイズしていない。
【0012】
分子トーチ標的結合ドメインの標的配列偏向、およびジョイニング領域は、(
1)標的結合ドメイン変性条件および標的結合ドメインハイブリダイズ条件、ま
たは(2)鎖置換(displacement)条件と組み合わせ、標的配列を
検出するのに好ましくは用いる。
【0013】
標的結合ドメイン変性条件下では、トーチは開いており、そして標的配列に対
するハイブリダイゼーションに容易に利用可能である。標的配列への標的結合ド
メインの偏向によって、標的配列の存在下では標的結合ドメイン:標的配列ハイ
ブリッドが形成されるため、試料ストリンジェンシー条件が低下した際であって
も、標的結合ドメインが開いたままになることが可能になる。
【0014】
鎖置換条件下では、標的配列は、閉じたトーチに存在する標的結合ドメインと
ハイブリダイズし、それにより該トーチを開くことが可能である。鎖置換条件を
用いて行うアッセイは、本質的に一定の環境条件下で実行することが可能である
。本質的に一定の環境条件下では、最初に変性を達成しその後ハイブリダイゼー
ションを達成するのに、例えば温度を上昇させそして低下させたりして環境を変
化させることはしない。
【0015】
ジョイニング領域は、以下の少なくとも1つを生じることにより、閉じたトー
チの産生または維持を助長する:(1)閉じたトーチの形成速度の増加;および
(2)閉じたトーチの安定性の増加。形成速度および/または安定性の増加は、
ジョイニング領域の非存在下でのこうした活性に関する。
【0016】
ジョイニング領域は、標的開放および標的閉鎖ドメインを共に、共有および/
または非共有結合させる、1つ以上の基で構成される。ジョイニング領域に存在
する個々の基は、共有および/または非共有相互作用、例えばイオン性相互作用
、疎水性相互作用、および水素結合により、共に連結される。
【0017】
開いたトーチの存在の検出には、開いたトーチが存在するか直接検出すること
、および/または閉じたトーチが存在するか検出することが含まれる。開いたト
ーチを検出するのに用いることが可能な技術の例には、以下が含まれる:(1)
トーチが開いているか閉じているかに応じ、異なるシグナルを生じる相互作用標
識の使用を伴うもの;(2)標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッド
にある際、標的閉鎖ドメインが標的結合ドメインにハイブリダイズしていない際
に生じるシグナルと異なるシグナルを生じる標識を含む、標的閉鎖ドメインの使
用を伴うもの;および(3)開いた標的結合ドメインに利用可能なものにした配
列情報の検出を伴うもの。
【0018】
好ましくは、相互作用標識は、開いたトーチの存在を検出するのに用いられる
。相互作用標識の使用を伴う技術は、閉じた標的結合ドメインによって互いに近
接して置かれた際、開いた標的結合ドメインにおけるように互いに近接していな
い際に生じるシグナルとは異なるシグナルを生じる標識を用いて、行うことが可
能である。相互作用標識の例には、酵素/基質、酵素/補因子、発光剤/消光剤
、発光剤/付加物、色素二量体(dye dimer)、およびフェレスター(
Forrester)エネルギー移動対が含まれる。
【0019】
標的結合ドメインおよび標的閉鎖ドメインは、互いに実質的に相補的なヌクレ
オチド塩基認識配列で構成される。「ヌクレオチド塩基認識配列」は、骨格によ
り共に共有結合されるヌクレオチド塩基認識基を指す。ヌクレオチド塩基認識基
は、少なくとも、アデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルに水素
結合することが可能である。ヌクレオチド塩基認識配列「骨格」は、共に共有連
結される1つ以上の基で構成され、ヌクレオチド塩基認識基を適切な配向で提供
することで核酸上に存在する相補的なヌクレオチドへのハイブリダイゼーション
を可能にする。
【0020】
「実質的に相補的な配列」は、使用される条件下で安定なハイブリッドを形成
することが可能な2つのヌクレオチド塩基認識配列である。実質的に相補的な配
列は、同一のまたは異なる分子上に存在してもよい。
【0021】
実質的に相補的な配列には、互いに完全に相補的な配列、およびより低い相補
性の配列(ミスマッチおよびリンカーを含むもの等)が含まれる。内部非相補的
ヌクレオチドによるものなどのふくらみ(bulge)、および共にハイブリダ
イズしている2つの認識基の間に置かれた非ヌクレオチドリンカーもまた、存在
してもよい。好ましくは、実質的に相補的な配列は、好ましくは、長さ少なくと
も10、少なくとも15、または少なくとも20基の領域を含む2つの配列で構
成される。好ましくは、2つの領域の一方に存在する基の少なくとも70%、少
なくとも80%、少なくとも90%、または100%が、2つの領域のもう一方
に存在する基と水素結合する。より好ましくは、水素結合は、相補的ヌクレオチ
ド塩基A−T、G−C、またはA−U間である。
【0022】
「リンカー」は、2つの基を共に共有結合させる原子の鎖を指す。この原子の
鎖は共に共有結合され、そして分枝および環状基などの異なる構造を含んでもよ
い。
【0023】
したがって、本発明の第一の側面は、標的核酸配列が試料に存在するか決定す
るための、分子トーチの使用を特徴とする。該分子トーチは:(1)もし標的配
列が存在するとすれば、標的配列にハイブリダイズして開いたトーチを産生する
ための標的検出手段;(2)標的配列の非存在下で、標的検出手段にハイブリダ
イズして閉じたトーチのコンホメーションを提供するためのトーチ閉鎖手段;お
よび(3)標的検出手段およびトーチ閉鎖手段を連結するジョイニング手段を含
む。開いたトーチの存在の検出は、標的配列の存在の指標を提供する。
【0024】
「標的検出手段」は、標的配列およびトーチ閉鎖手段にハイブリダイズするこ
とが可能な、本出願に記載される成分およびその同等物(equivalent
)を指す。標的検出手段は、標的配列の存在下では標的検出手段が標的配列に優
先的にハイブリダイズするように、トーチ閉鎖手段に比べて標的配列の方に偏向
している。
【0025】
「トーチ閉鎖手段」は、閉じたトーチを提供するために標的検出手段にハイブ
リダイズすることが可能な、本出願に記載される成分およびその同等物を指す。
「ジョイニング手段」は、標的検出手段およびトーチ閉鎖手段を連結し(jo
in)、そして標的配列の非存在下で、閉じたトーチの産生または維持を助長す
る、本出願に記載される成分およびその同等物を指す。
【0026】
本発明の別の側面は、標的配列が存在するか決定するための分子トーチの使用
であって、以下の工程:(a)試料を、ジョイニング領域により共に連結された
標的結合ドメインおよび標的閉鎖ドメインを含む分子トーチと接触させ;そして
(b)該標的配列の存在の指標として、トーチの存在を検出する工程を伴う、前
記使用を特徴とする。
【0027】
標的結合ドメインは、標的結合ドメイン:標的配列ハイブリッドが、標的結合
ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドより安定しているように、標的配列の
方に偏向している。標的配列が存在しない場合には、閉じたトーチのコンホメー
ションが有利である。
【0028】
試料に曝露される前には、分子トーチ標的結合ドメインは、維持されている環
境に応じ、開いていてもまたは閉じていてもよい。変性条件を用い、標的結合ド
メインを開くことが可能である。好ましくは、変性は熱を用い、達成される。
【0029】
あるいは、鎖置換条件を使用してもよい。鎖置換条件を使用する場合、分子ト
ーチは、標的配列への結合前に開いている必要はない。
本発明の別の側面は、試料および分子トーチを含む混合物をまず、変性条件に
曝露し、そしてその後ハイブリダイゼーション条件に曝露する、標的配列の存在
を検出する方法を記載する。開いたトーチの存在は、標的配列の存在の指標とし
て用いられる。
【0030】
「変性条件」は、標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドが安定で
なく、そしてトーチが開いている条件である。好ましい態様において、ジョイニ
ング領域は、変性条件下で損なわれない(intact)ままである。したがっ
て、この好ましい態様において、変性条件下で、標的結合ドメインは、標的配列
に対するハイブリダイゼーションに利用可能になるが、しかしまた、続く標的配
列の非存在下でのハイブリダイゼーションのために、標的閉鎖ドメインとも近接
したままである。
【0031】
「ハイブリダイゼーション条件」は、標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハ
イブリッドおよび標的結合ドメイン:標的配列ハイブリッドの両方が安定してい
る条件である。こうした条件下では、標的配列の非存在下で標的結合ドメインが
標的閉鎖ドメインとのハイブリッド中に存在することを、ハイブリダイズしてい
る標的配列が妨げることはない。
【0032】
本発明の別の側面は分子トーチを記載する。分子トーチは、(1)標的配列が
存在する場合には、標的配列にハイブリダイズして開いたトーチを産生するため
の標的検出手段;(2)、標的配列の非存在下で、標的検出手段にハイブリダイ
ズして閉じたトーチを提供するためのトーチ閉鎖手段;および(3)標的配列の
非存在下で、閉じたトーチのコンホメーションを助長するためのジョイニング手
段を含む。
【0033】
本発明の別の側面は、ジョイニング領域を通じ連結されている、標的結合ドメ
インおよび標的閉鎖ドメインを含む、分子トーチを記載する。標的結合および標
的閉鎖ドメインは、実質的に、互いに相補的である。標的結合ドメインは、標的
結合ドメインの完全なDNAまたはRNA相補体、好ましくはRNA相補体であ
る標的配列の方に偏向している。したがって、標的結合ドメインは、標的閉鎖ド
メインとよりも、その完全なDNAまたはRNA相補体と、より安定な二重鎖を
形成する。
【0034】
「標的結合ドメインの完全なDNAまたはRNA相補体」は、標的結合ドメイ
ンに存在する各認識基に向き合う相補的なプリンまたはピリミジンヌクレオチド
塩基を含む、DNAまたはRNAである。相補的なプリンまたはピリミジンヌク
レオチド塩基は、互いに水素結合することが可能である。
【0035】
多様な例が本明細書に記載される。これらの例は、いかなる点でも請求される
発明を限定するよう意図されない。
【0036】
本発明の他の特徴および利点は、以下の図、本発明の説明、実施例、および請
求項から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドの自由エネルギー(I)、標的結合ドメイン:標的配列ハイブリッドの安定性(II)、IおよびIIの自由エネルギーの相違(ΔG)、およびIのIIへの変換のための活性化自由エネルギー(ΔG*)の相違を例示する、エネルギー図を提供する。
【図2A】図2A−2Gは、異なる分子トーチ構造の例を提供する。「F」はフルオロフォアを指し、そして「Q」は消光剤を指す。
【図2B】図2A−2Gは、異なる分子トーチ構造の例を提供する。「F」はフルオロフォアを指し、そして「Q」は消光剤を指す。
【図2C】図2A−2Gは、異なる分子トーチ構造の例を提供する。「F」はフルオロフォアを指し、そして「Q」は消光剤を指す。
【図2D】図2A−2Gは、異なる分子トーチ構造の例を提供する。「F」はフルオロフォアを指し、そして「Q」は消光剤を指す。
【図2E】図2A−2Gは、異なる分子トーチ構造の例を提供する。「F」はフルオロフォアを指し、そして「Q」は消光剤を指す。
【図2F】図2A−2Gは、異なる分子トーチ構造の例を提供する。「F」はフルオロフォアを指し、そして「Q」は消光剤を指す。
【図2G】図2A−2Gは、異なる分子トーチ構造の例を提供する。「F」はフルオロフォアを指し、そして「Q」は消光剤を指す。
【図3A】図3A−図3Cは、鎖置換の例を提供する。「F」はフルオロフォアを指し、そして「Q」は消光剤を指す。標的配列は太線により示される。
【図3B】図3A−図3Cは、鎖置換の例を提供する。「F」はフルオロフォアを指し、そして「Q」は消光剤を指す。標的配列は太線により示される。
【図3C】図3A−図3Cは、鎖置換の例を提供する。「F」はフルオロフォアを指し、そして「Q」は消光剤を指す。標的配列は太線により示される。
【図4】図4は、共有結合であるジョイニング領域を含む分子トーチの作用を例示する。「F」はフルオロフォアを指し、そして「Q」は消光剤を指す。
【図5】図5は、2つのポリエチレングリコール(PEG)基で構成されるジョイニング領域、および加熱中融解しないように、十分に高いTmを有する、2つの実質的に相補的な核酸配列を含む分子トーチの機能を例示する。「F」はフルオロフォアを指し、そして「Q」は消光剤を指す。
【図6A】図6Aおよび6Bは、分子トーチ1−7を構成する鎖を例示する。「F」はフルオロフォアを指し、「Q」は消光剤を指し、「PEG」はポリエチレングリコールを指し、そして「ccc」は末端糖の3’位に位置するプロピル基を指す。斜字で示された塩基は、2’−メトキシ置換リボヌクレオチドである。
【図6B】図6Aおよび6Bは、分子トーチ1−7を構成する鎖を例示する。「F」はフルオロフォアを指し、「Q」は消光剤を指し、「PEG」はポリエチレングリコールを指し、そして「ccc」は末端糖の3’位に位置するプロピル基を指す。斜字で示された塩基は、2’−メトキシ置換リボヌクレオチドである。
【図7】図7は、鎖置換反応で用いることが可能な分子トーチを例示する。「F」はフルオロフォアを指し、そして「Q」は消光剤を指す。
【図8】図8は、鎖置換反応における分子トーチの作用を例示する。「F」はフルオロフォアを指し、そして「Q」は消光剤を指す。標的配列は太線により示される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な説明
分子トーチは、好ましくは、標的配列の存在を検出するアッセイにおいて、好
都合な動的および熱力学的構成要素を提供するよう、設計される。分子トーチを
伴うアッセイの動的および熱力学的構成要素を用い、標的配列の特異的な検出を
亢進してもよい。
【0039】
好ましい分子トーチの熱力学は、図1に例示される。図1に関し、「I」は標
的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドを示す一方、「II」は標的結
合ドメイン:標的配列ハイブリッドを示す。図1において、ΔG*は、標的結合
ドメイン:標的閉鎖ドメインを融解するのに必要な活性化の自由エネルギーを表
し、そしてΔGは、標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドおよび標
的結合ドメイン:標的配列ハイブリッドの間の自由エネルギーの相違を表す。
【0040】
本発明の熱力学的構成要素は、標的結合ドメイン:標的配列ハイブリッドが、
標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドより安定していることに基づ
く(ΔG<0)。ジョイニング領域は、標的配列の非存在下で、閉じたトーチの
コンホメーションを助長する。
【0041】
さらに、トーチ設計に応じ、ジョイニング領域を用い、以下の利点の1つ以上
を提供することもできる:(1)標的開放および閉鎖ドメイン上に存在する標識
が、標的の非存在下で、離れる可能性を減少させること;(2)ミスマッチして
いる標的への感度を亢進させるのに用いることが可能な、短い標的結合ドメイン
の使用を助長すること;(3)標的閉鎖ドメインおよび標的結合ドメインが、例
えばミスマッチまたは無塩基性(abasic)「ヌクレオチド」を含む際、閉
じたトーチのコンホメーションを助長すること;並びに(4)アデニンおよびチ
ミンが豊富な標的結合および標的閉鎖ドメインの相互作用を安定化させることに
より、アデニンおよびチミンが豊富な標的配列の検出を助長すること。
【0042】
変性条件
変性条件を用い、標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドを融解す
るのに十分なエネルギー(ΔG*)を提供してもよい。必要とされるエネルギー
の量は、分子トーチ組成および環境条件に応じ、異なるであろう。環境条件には
、アッセイ溶液組成および温度が含まれる。閉じた標的を開くのに必要とされる
エネルギーは、例えば、試料を加熱することにより、供給することが可能である

【0043】
ハイブリッドの安定性の有用な測定値は、融解温度(Tm)である。融解温度
では、存在するハイブリッドの50%が変性される。
特定のアッセイ組成を用いると、ハイブリッドは、アッセイ温度がTmを超え
た場合、安定でない。アッセイの組成に応じ、ハイブリッドのTmは異なるであ
ろう。塩濃度および変性剤の存在などの要因が、既定のハイブリッドのTmに影
響を及ぼす可能性がある。Tmは、特定のアッセイ組成を用い、そして温度を変
化させ、決定される。
【0044】
本明細書に記載されるものおよび当業に周知のものなど、Tmに影響を及ぼす
要因を考慮することにより、分子トーチは、望ましい標的結合ドメイン:標的閉
鎖ドメインTmおよび望ましい標的結合ドメイン:標的Tm、例えばΔG<0を有
するよう、容易に設計することが可能である。Tmは、例えばSambrook
ら, Molecular Cloning a Laboratory Ma
nual,第2版, Cold Spring Harbor Laborat
ory Press, 1989、およびHoganら、米国特許第5,547
,842号に記載されるもの(前記文献はどちらも、本明細書に援用される)な
どの技術を用い、測定することが可能である。
【0045】
図2は、いくつかの異なる分子トーチの立体配置(configration
)を示しているが、当業者は、本発明を実施するのに用いることが可能な他の分
子トーチ立体配置を、容易に認識するであろう。図2Aは、標的結合領域および
ジョイニング領域で構成される、二本鎖分子トーチを例示する。標的結合領域は
、標的配列に結合する標的結合ドメインおよび標的結合ドメインに結合する標的
閉鎖ドメインからなる。
【0046】
図2B−2Dは、標的結合およびジョイニング領域で構成される一本鎖分子ト
ーチを例示する一方、図2Eは、三本鎖分子トーチを例示する。
図2Fは、ジョイニング領域および2つの標的結合領域を含む分子トーチを例
示する。2つの標的結合領域は、同一のまたは異なる標的配列に結合することが
可能であり、そして同一のまたは異なる相互作用標識を有することが可能である
。例えば、各標的結合領域上に、独立に検出可能な、異なる発光特性を有する、
異なる種類のフルオロフォアを配置することにより、単一の分子トーチを用い、
異なるフルオロフォアのシグナル特性を探すことにより、異なる標的配列の存在
を検出することが可能である。
【0047】
図2Gは、標的結合領域およびジョイニング領域で構成される2本鎖分子トー
チを例示する。該ジョイニング領域は、例えばPEGまたはポリヌクレオチドで
構成されるリンカーにより、標的結合または標的閉鎖ドメインに連結している相
補的ポリヌクレオチドを含む。
【0048】
鎖置換条件
鎖置換条件下では、標的結合ドメイン:標的配列ハイブリッドは、標的結合ド
メイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドより安定しており、そして標的配列が存
在する場合、標的結合ドメイン:標的配列ハイブリッドの産生が有利である。
【0049】
鎖置換は、好ましくは、標的へのハイブリダイゼーションに利用可能なヌクレ
オチド塩基認識基を有するトーチを用い、行われる。こうしたトーチは、好まし
くは、利用可能である標的配列に相補的な、1ないし約10のヌクレオチド塩基
認識基を含む。好ましくは、10未満、5または3ヌクレオチド塩基認識基が利
用可能である。
【0050】
異なる立体配置が可能であり、一本鎖領域が末端領域であるもの、または一本
鎖領域がループ領域などの内部領域であるものが含まれる。あるいは、例えば5
’または3’末端トーチ領域を「休息(breath)」させる、鎖置換条件を
使用してもよい。トーチの休息は、領域の安定性が、標的結合ドメイン:標的配
列ハイブリッドの形成が有利となるように、該トーチが一本鎖になって標的核酸
にハイブリダイズすることを可能にする条件下で起こる。
【0051】
図3A−3Cは、鎖置換の異なる例を提供する。図3Aおよび3Cは、標的ハ
イブリダイゼーションに利用可能な、3つの末端ヌクレオチドを有する分子トー
チを例示する。図3Bは、2つの末端ヌクレオチドの休息および標的ハイブリダ
イゼーションを例示する。
【0052】
標的配列偏向
標的結合ドメインは、核酸ハイブリッド安定性に影響を及ぼす異なる設計考察
を用いて、標的配列の方に偏向させることが可能である。こうした考察には、相
補性の度合い、相補的認識基の種類、およびヌクレオチド塩基認識配列骨格が含
まれる。これらの異なる要因の影響は、環境条件に応じ異なる。
【0053】
相補性の度合いは、標的閉鎖ドメイン上に存在する認識基と水素結合し標的配
列と水素結合する、標的結合ドメイン上に存在する認識基の数を考慮する。標的
結合ドメインは、標的閉鎖ドメインに対してよりも標的配列に対して、より高い
相補性の度合いを有するように、異なる技術を用い設計してもよい。こうした技
術には、例えば、標的閉鎖ドメインとのミスマッチを有するが、標的配列とのミ
スマッチを持たない標的結合ドメインを設計すること、および標的閉鎖ドメイン
における非ヌクレオチドリンカーの使用が含まれる。
【0054】
ヌクレオチド塩基認識配列に存在する非ヌクレオチドリンカーの例は、無塩基
性「ヌクレオチド」である。無塩基性「ヌクレオチド」は、ヌクレオチド塩基認
識基を欠く。
【0055】
非ヌクレオチドリンカーの他の例には、多糖類、ペプチド、およびポリペプチ
ドが含まれる。本明細書に援用される、Arnoldら、国際出願第PCT/U
S88/03173号、国際公告WO 89/02439、および米国特許第5
,585,481号もまた、非ヌクレオチドリンカーの例を提供する。
【0056】
存在する認識基の種類を利用して、異なるヌクレオチドプリンおよびピリミジ
ン塩基の間の水素結合の度合いなどの要因を考慮することにより、標的結合ドメ
インを、標的配列の方に偏向させてもよい。例えば、G−C対形成または2,6
ジアミノプリン−チミンは、A−T対形成およびイノシンなどの普遍的塩基と
の対形成より強い。標的結合ドメインは、標的閉鎖ドメインに比べ、標的配列に
存在するヌクレオチドと、増加したGまたはC対形成を有するよう設計してもよ
い。
【0057】
ヌクレオチド塩基認識配列骨格の組成を異なる方式で調整し、標的結合ドメイ
ンを標的配列の方に偏向させてもよい。好ましい分子トーチ骨格は、糖・ホスホ
ジエステル型結合、例えばリボおよびデオキシリボ核酸に存在するものである。
別の種類の結合は、ペプチド結合、例えばペプチド核酸に存在するものである。
【0058】
ペプチド核酸は、一般的に対応するDNA配列よりRNAと、より安定した二
重鎖を形成する。したがって、例えば、標的結合ドメインがペプチド核酸基を含
み、そして標的閉鎖ドメインがDNAで構成される分子トーチを用いることによ
り、標的結合ドメインをRNA標的配列の方に偏向させてもよい。
【0059】
糖・ホスホジエステル型結合の場合、糖基および2つの糖基を連結する結合が
ハイブリッド安定性に影響を及ぼすであろう。糖が有する可能性がある影響の例
は、2’−メトキシ置換RNAで見られるものである。2’−メトキシ含有核酸
は、一般的に、対応するDNA配列とよりも、RNAと、より安定した二重鎖を
形成する。別の例は、2’−メトキシ置換RNAと同じ種類の影響を有する、2
’−フルオロ置換RNAである。
【0060】
骨格結合基がハイブリッド安定性に影響を及ぼす可能性がある方式の例には、
2つの鎖の間の荷電密度および物理的関連に影響を及ぼすことが含まれる。大き
い基由来の立体相互作用はハイブリッド安定性を減少させる可能性がある。ホス
ホロチオエート類などの基がハイブリッド安定性を減少させる可能性がある一方
、メチルホスホネート類などの非荷電基はハイブリッド安定性を増加させる可能
性がある。
【0061】
標的結合ドメイン:標的配列ハイブリッド
標的結合ドメイン:標的配列ハイブリッドの形成は、閉じたトーチより安定な
開いたトーチの産生を生じる。トーチを開くための、または鎖置換のための条件
を用い、標的配列の存在下で開いたトーチの産生を助長してもよい。
【0062】
トーチの開放および閉鎖は、使用する検出法の環境条件を変化させることによ
り、達成することが可能である。トーチを開くそして閉じるための環境条件の変
化の例には、加熱および冷却;pHの上昇および低下;並びに変性剤の添加後の
該剤の希釈が含まれる。
【0063】
標的結合ドメイン:標的配列ハイブリッドは、標的結合ドメイン:標的閉鎖ド
メインハイブリッドより安定である。好ましくは、検出法に用いられる条件下で
、標的結合ドメイン:標的Tmは、標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインTmより
、少なくとも2℃、より好ましくは少なくとも5℃、さらにより好ましくは少な
くとも10℃高い。
【0064】
標的配列の非存在下での閉じたトーチは、分離工程の必要なしに、標的配列に
ハイブリダイズしていない分子トーチからのバックグラウンドを減少させる。好
ましくは、トーチが最初に開いているアッセイにおいて、標的配列の非存在下で
トーチを閉鎖するハイブリダイゼーション条件は、標的結合ドメイン:標的閉鎖
ドメインハイブリッドのTmより、少なくとも2℃低く、より好ましくは少なく
とも5℃低く、そしてより好ましくは少なくとも10℃低い温度を使用する。
【0065】
必要であれば、分離工程を使用し、標的配列にハイブリダイズしていない分子
トーチから、標的配列にハイブリダイズしている分子トーチを物理的に分離して
もよい。分離工程は、例えば開いた標的結合ドメインにより利用可能にされてい
る配列情報を用い、行ってもよい。例えば標的閉鎖ドメインに相補的な核酸配列
を有する捕捉プローブを用い、標的配列にハイブリダイズしている分子トーチを
捕捉してもよい。捕捉プローブ自体は、直接、あるいはビーズまたはカラム上に
間接的に提供されてもよい。
【0066】
捕捉プローブ、または標的閉鎖ドメインに相補的な他の種類の核酸プローブを
用いる場合、こうしたプローブが、標的結合ドメイン:標的配列ハイブリッドの
非存在下で、安定な標的閉鎖ドメイン:プローブハイブリッドが形成されない条
件下で、設計されて用いられることが重要である。好ましくは、標的閉鎖ドメイ
ン:プローブハイブリッドは、標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッ
ドより、少なくとも5℃、そしてより好ましくは少なくとも10℃低いTmを有
する。
【0067】
標的配列の検出
分子トーチを用い、標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドが安定
な条件下で、該トーチが開いているか決定することにより、標的配列の存在を検
出することが可能である。開いたトーチは、(1)トーチが開いているかまたは
閉じているかに応じ異なるシグナルを生じる、相互作用標識の使用を伴うもの;
(2)標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッド中にある際は、標的閉
鎖ドメインが標的結合ドメインにハイブリダイズしていない際に生じるシグナル
と異なるシグナルを生じる標識を含む、標的閉鎖ドメインの使用を伴うもの;お
よび(3)開いた標的結合ドメインにより利用可能にされている配列情報の検出
を伴うものなど、異なる技術を用い、検出してもよい。
【0068】
異なる種類の相互作用標識を用い、トーチが開いているか決定してもよい。好
ましくは、相互作用標識は、発光剤/消光剤対、発光剤/付加物対、Forre
sterエネルギー移動対または色素二量体のいずれかである。1つ以上の標識
、および1つ以上の種類の標識が、特定の分子上に存在してもよい。
【0069】
発光剤/消光剤対は、1つ以上の発光標識、例えば化学発光または蛍光標識、
および1つ以上の消光剤で構成される。好ましくは、蛍光剤/消光剤対を用い、
開いたトーチを検出する。蛍光標識は、特定の波長、または波長範囲の光を吸収
し、そして特定の発光波長、または波長範囲の光を放出する。消光剤は、励起蛍
光標識から放出されるシグナルを、部分的にまたは完全に鈍らせる。消光剤は、
異なるフルオロフォアからのシグナル産生を鈍らせることが可能である。例えば
4−(4’−ジメチル−アミノ−フェニルアキソ)安息香酸(DABCYL)は
、5−(2’−アミノエチル)アミノアフサリン−1−スルホン酸(EDANS
)、ローダミンおよびフルオレセインから生じるシグナルの約95%を消光する
ことが可能である。
【0070】
異なる数および種類の蛍光および消光標識を用いてもよい。例えば、多数の蛍
光標識を用い、開いたトーチからのシグナル産生を増加させてもよいし、そして
多数の消光剤を用い、標的配列の非存在下では、励起蛍光分子がほとんどまたは
まったくシグナルを生じないことを確実にするのを補助してもよい。フルオロフ
ォアの例には、アクリジン、フルオレセイン、スルホローダミン101、ローダ
ミン、EDANS、テキサスレッド、エオジン、Bodipyおよびルシファイ
エローが含まれる。(例えば、本明細書に援用される、Tyagiら, Nat
ure Biotechnology 16:49−53, 1998を参照さ
れたい)。消光剤の例には、DABCYL、タリウム、セシウム、およびp−キ
シレン−ビス−ピリジニウムブロミドが含まれる。
【0071】
発光剤/付加物対は、1つ以上の発光標識、および発光分子と付加物を形成し
、そしてそれにより発光分子からのシグナル産生を減少させることが可能な、1
つ以上の分子で構成される。溶液中に遊離のリガンドを用い、発光分子から生じ
るシグナルを改変するための付加物形成の使用は、本明細書に援用される、Be
ckerおよびNelson、米国特許第5,731,148号に記載されてい
る。付加物はまた、付加物形成因子を分子トーチに、または開いたトーチにおい
て利用可能にされている配列情報とハイブリダイズする核酸プローブに結合させ
ることにより、形成してもよい。
【0072】
Forresterエネルギー移動対は2つの標識で構成されており、第一の
標識の発光スペクトルが第二の標識の励起スペクトルと重複する。第一の標識を
励起させ、そして第二の標識に特徴的な発光を測定し、標識が相互作用している
か決定してもよい。Forresterエネルギー移動対の例には、フルオレセ
インおよびローダミン;ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾールおよび
ローダミン;フルオレセインおよびテトラメチルローダミン;フルオレセインお
よびフルオレセイン;IAEDANSおよびフルオレセイン;並びにBODIP
YFLおよびBIODIPYFLを含む対が含まれる。
【0073】
色素二量体は、二量体の形成に際し、相互作用し、色素が二量体コンホメーシ
ョンにない場合とは異なるシグナルを生じる2つの色素で構成される。色素二量
体相互作用は、例えばPackardら, Proc. Natl. Sci.
USA 93:11640−11645, 1996(本明細書に援用される
)に記載される。
【0074】
検出工程中に生じる、標的配列の存在に特徴的な、観察されるシグナルを、標
的配列を含まないまたは既知の量の標的配列を含むコントロール反応に対し、比
較してもよい。既知の量の標的配列を用い、検量線を得てもよい。コントロール
反応は、好ましくは、実験反応と同時に行われるが、コントロール反応は実験反
応と同時に行う必要はなく、そして以前の実験から得たデータに基づいていても
よい。
【0075】
標的配列を検出するための、相互作用標識を有する分子トーチの使用例は、図
4および5に提供される。両図は、標的配列の存在を例示する。標的配列の非存
在下では、分子トーチ標的結合ドメインは閉じており、シグナルの消光を生じる

【0076】
図4は、小さいジョイニング領域を含む一本鎖分子トーチの使用を例示する。
熱を用い、標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドを融解する。該ト
ーチは、例えば、標的結合ドメインに存在する2’−メトキシ置換リボヌクレオ
チドの存在により、RNA標的配列の方に偏向している。標的配列の存在下では
、消光剤(Q)はもはやフルオロフォア(F)の近くに保持されておらず、した
がって、フルオロフォア蛍光に影響を及ぼす消光剤の能力は減少している。
【0077】
図5は、2つの部分、非ヌクレオチドPEGリンカーおよび高いTmがアッセ
イ中の融解を妨げる配列で構成されるジョイニング領域を含む二本鎖分子の使用
を例示する。
【0078】
本発明の別の態様は、標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドにあ
る際に、標的閉鎖ドメインが標的結合ドメインにハイブリダイズしていない際に
生じるシグナルとは異なるシグナルを生じる標識を使用し、開いたトーチを検出
することを伴う。こうした標識には、発光分子、および異なる環境に存在する際
に異なる安定性を有する標識が含まれる。
【0079】
1つのヌクレオチド塩基認識配列上に存在する発光分子から生じるシグナルは
、別のヌクレオチド塩基認識配列により影響を受ける可能性がある。例えば、1
つのヌクレオチド塩基認識配列上のヌクレオチドを用い、別のヌクレオチド塩基
認識配列上に存在するフルオロフォアを消光し、または該フルオロフォアの回転
運動を達成することが可能である。
【0080】
特定の標識の安定性に影響を及ぼすことが可能な環境には、ワトソン・クリッ
ク塩基対形成で形成されている核酸二重鎖が含まれる。こうした標識およびその
使用の例は、共に本明細書に援用される、BeckerおよびNelson、米
国特許第5,731,148号、並びにArnoldら、米国特許第5,283
,174号に記載される。
【0081】
アクリジニウムエステルおよびその誘導体は、標識の環境に基づき、開いたト
ーチを検出するための、好ましい標識の例である。アクリジニウムエステルは、
異なる技術(例えば核酸二重鎖に存在しない標識を選択的に不活性化するなど)
を用いて、検出することが可能である。1つ以上のアクリジニウムエステル標識
の使用例は、こうした標識を標的閉鎖ドメインに結合させ、そして一本鎖標的閉
鎖ドメイン上に存在するアクリジニウムエステル標識の選択的不活性化によるシ
グナルの減少を、標的配列の存在の指標として用いることを伴う。
【0082】
開いた標的結合ドメインにより利用可能にされている配列情報を用いた開いた
トーチの検出は、標的閉鎖ドメインにハイブリダイズする検出プローブを用い、
実行することが可能である。好ましい検出プローブには、検出可能標識が含まれ
る。検出可能標識は、例えば、標的閉鎖ドメイン上に存在する標識と相互作用す
る標識であってもよいし、または標的閉鎖ドメイン上の相互作用標識の非存在下
でシグナルを生じる標識であってもよい。好ましいプローブ標識は、アクリジニ
ウムエステルである。
【0083】
標的配列数の増加
標的配列が、少ない数で試料に存在する場合、増幅を行い、標的配列数を増加
させてもよい。多くの増幅技術が当業に周知であり、転写関連増幅、ポリメラー
ゼ連鎖反応(PCR)およびリガーゼ連鎖反応(LCR)を伴うものを含む。
【0084】
好ましくは、分子トーチは、転写関連増幅と共に用いる。転写関連増幅は、二
本鎖DNAプロモータ領域を認識するRNAポリメラーゼを用い、RNA転写物
を生成することを伴う。
【0085】
転写関連増幅を記載する参考文献の例には、Burgら、米国特許第5,43
7,990号;Kacianら、米国特許第5,399,491号;Kacia
nら、米国特許第5,554,516号;Kacianら、国際出願第PCT/
US93/04015号、国際公告WO 93/22461;Gingeras
ら、国際出願第PCT/US87/01966号、国際公告WO 88/013
02;Gingerasら、国際出願第PCT/US88/02108号、国際
公告WO 88/10315;DaveyおよびMalek、EPO出願第88
113948.9号、欧州公告第0 329 822 A2号;Malekら、
米国特許第5,130,238号;Urdea、国際出願第PCT/US91/
00213号、国際公告WO 91/10746;McDonoughら、国際
出願第PCT/US93/07138号、国際公告WO 94/03472;並
びにRyderら、国際出願第PCT/US94/08307号、国際公告WO
95/03430(各々本明細書に援用される)が含まれる。
【0086】
RNアーゼH活性を伴う転写関連増幅法の使用が好ましい。より好ましくは、
該方法は、鎖分離を助長する逆転写酵素に存在するRNアーゼH活性を利用する
。Kacianら、米国特許第5,399,491号は、外因性RNアーゼH活
性の添加を伴わない、本質的に一定の条件下で起こる増幅を記載する。該方法は
、鎖分離を助長する逆転写酵素に存在するRNアーゼH活性を利用する。
【0087】
本発明を転写関連増幅と共に使用する、1つの利点は、分子トーチを増幅前に
添加することが可能であり、そしてさらなる試薬を添加することなく、検出を実
行することが可能であることである。標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイ
ブリッドのTmを、増幅中に使用される温度より高く調整することが容易に可能
であるため、分子トーチは、転写関連増幅における使用によく適している。閉じ
た標的結合ドメインは、増幅により生成された標的配列に、分子トーチが時期尚
早に結合することを妨げる。
【0088】
増幅後、溶液を加熱し、標的結合ドメインを開き、分子トーチが標的配列にハ
イブリダイズすることを可能にしてもよい。溶液をその後冷却し、標的配列にハ
イブリダイズしていないトーチの標的結合ドメインを閉じてもよい。例えばフル
オロフォア/消光剤対を有する、開いたトーチの存在を、その後、試料に適切な
励起光を照射し、そしてその後、放出光を測定することにより、測定してもよい

【0089】
他の増幅法に言及する参考文献の例には、PCR増幅を記載するもの、例えば
Mullisら、米国特許第4,683,195号、第4,683,302号、
および第4,800,159号、並びにMethods in Enzymol
ogy,第155巻, 1987, 335−350ページ;並びにリガーゼ連
鎖反応を記載するもの、例えばBackman、欧州特許出願第8831174
1.8号、欧州公告第0 320 308号(これらの参考文献の各々は、本明
細書に援用される)が含まれる。
【0090】
分子トーチ構築
分子トーチは、標的結合ドメイン、標的閉鎖ドメインおよびジョイニング領域
を含む。標的結合および閉鎖ドメインは各々ヌクレオチド塩基認識基である。
【0091】
ヌクレオチド塩基認識配列は、核酸に存在するヌクレオチド窒素含有塩基と水
素結合することが可能なヌクレオチド認識基を含む。ヌクレオチド認識基は、核
酸上に存在するヌクレオチドに該基を水素結合するのを可能にする、適切なコン
ホメーションおよび間隔を提供する骨格により、共に連結される。
【0092】
既定のヌクレオチド認識基は、特定のヌクレオチド(例えばアデニン、グアニ
ン、シトシン、チミン、およびウラシル)に相補的であってもよく、そしてした
がって核酸に存在するヌクレオチドと水素結合することが可能であってもよい。
ヌクレオチド認識基はまた、異なる複数のヌクレオチドと水素結合することが可
能であってもよい。例えば、イノシンがヌクレオチド塩基認識基である場合、異
なる複数のヌクレオチド塩基と水素結合することが可能である。
【0093】
好ましいヌクレオチド塩基認識基は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン
またはウラシルのいずれかと水素結合することが可能な、窒素含有プリンまたは
ピリミジン塩基、あるいはその誘導体である。こうした認識基の例には、アデニ
ン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、およびその誘導体が含まれる。誘
導体の例には、修飾プリンまたはピリミジン塩基、例えばN4−メチルデオキシ
グアノシン、天然プリンおよびピリミジン塩基の代わりに用いられるデアザまた
はアザプリンおよびピリミジン類、5または6位に置換基を有するピリミジン塩
基、並びに2、6または8位に改変されたまたは置き換えられた置換基を有する
プリン塩基が含まれる。例えばCook、国際出願第PCT/US92/113
39号、国際公告WO 93/13121(本明細書に援用される)を参照され
たい。さらなる例には、2−アミノ−6−メチルアミノプリン、O6−メチルグ
アニン、4−チオ−ピリミジン類、4−アミノ−ピリミジン類、4−ジメチルヒ
ドラジン−ピリミジン類およびO4−アルキル−ピリミジン類が含まれる(例え
ばThe Glen Report第1巻、1993を参照されたい)。
【0094】
ヌクレオチド塩基認識配列骨格は、異なる基で構成されていてもよい。異なる
骨格の例には、糖・ホスホジエステル型骨格およびペプチド核酸骨格が含まれる

【0095】
構造Iは、糖基がペントフラノシル基である、糖・ホスホジエステル型骨格を
例示する。糖基は、ホスホジエステル結合または他の適切な結合などの結合によ
り、共に連結されている。
【0096】
構造I
【0097】
【化1】

【0098】
Xは2つの糖を連結する基を表す。Xの例には、−OP(O)2O−、−NH
P(O)2O−、OC(O)2O−、−OCH2C(O)2NH−、−OCH2C(
O)2O−、−OP(CH3)(O)O−、−OP(S)(O)O−および−OC
(O)2NH−が含まれる。本明細書に提供される他の例のように、当業に周知
のまたは入手可能となる、他の同等物もまた用いてもよい。
【0099】
1およびY2は、独立に選択される基である。Y1およびY2の例には、H、O
H、C1−C4アルコキシ、ハロゲン、およびC1−C6アルキルが含まれる。好ま
しくは、Y1およびY2は、独立に、H、OH、F、またはOCH3のいずれかで
ある。C1−C6アルキルおよびC1−C4アルコキシは直鎖、分枝、または環状で
ある基であっても、該基を含んでもよい。
【0100】
塩基1および塩基2は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、ま
たは隣接する塩基と相補的な核酸との相補的塩基対形成を阻害しない基からなる
群より、独立に選択される。相補的塩基対形成を阻害しない基の例には、より小
さい基、例えば水素、OH、C1−C6アルキル、およびC1−C4アルコキシが含
まれる。好ましくは、ヌクレオチド塩基認識配列は:アデニン、グアニン、シト
シン、チミン、およびウラシルからなる群より独立に選択される、約7ないし約
40、より好ましくは約10ないし約30塩基を含む。
【0101】
1およびR2は独立に選択される基を表す。R1およびR2の例には、さらなる
糖・ホスホジエステル型基、水素、ヒドロキシ、ペプチド核酸、および無塩基性
「ヌクレオチド」など配列情報を提供しない分子、多糖類、ポリペプチド、ペプ
チド、および他の非ヌクレオチド結合が含まれる。
【0102】
ヌクレオチド塩基認識配列の構成要素となることが可能な構造Iの誘導体は、
当業に周知であり、そして例えば、異なる種類の糖を有する分子が含まれる。例
えば、ヌクレオチド塩基認識配列は、結合部分により連結しているシクロブチル
部分を有してもよく、ここで該シクロブチル部分は、それに結合する複素環塩基
を有する。たとえばCookら、国際出願第PCT/US93/01579号、
国際公告WO 94/19023(本明細書に援用される)を参照されたい。
【0103】
本発明の態様において、ヌクレオチド塩基認識分子は、ポリヌクレオチドまた
はその誘導体である。「ポリヌクレオチドまたはその誘導体」は、Xが−OP(
O)2O−であり;Y1およびY2がH、OH、OCH3、およびFからなる群より
独立に選択され;塩基1および塩基2が、アデニン、グアニン、シトシン、チミン
、ウラシル、または隣接する塩基と相補的な核酸との相補的塩基対形成を阻害し
ない基からなる群より独立に選択される、構造I反復単位で構成されるヌクレオ
チド塩基認識分子であり;そして該分子は、アデニン、グアニン、シトシン、チ
ミン、およびウラシルからなる群より独立に選択される、約5ないし約35塩基
を含む。分子の末端部分は、OH、C1−C6アルキル、およびリン酸からなる群
より独立に選択されるR1およびR2を含む。
【0104】
ペプチド核酸はDNA類似体であり、デオキシリボースリン酸骨格が、偽ペプ
チド骨格により置き換えられている。ペプチド核酸は、各々本明細書に援用され
る、HyrupおよびNielsen, Bioorganic & Medi
cinal Chemistry 4:5−23, 1996、並びにHydi
g−HielsenおよびGodskesen、国際出願第PCT/DK95/
00195号、国際公告WO 95/32305に記載されている。
【0105】
好ましくは、ペプチド核酸は、構造IIに例示されるようなN−(2−アミノ
エチル)グリシン単位で構成される。
構造II
【0106】
【化2】

【0107】
式中、R1、R2、および塩基1は、構造I型分子に関し記載された通りである。
ヌクレオチド塩基認識配列は、標準的技術を用い、産生することが可能である
。オリゴヌクレオチドおよび修飾オリゴヌクレオチドの有機合成を記載する刊行
物には、オリゴヌクレオチドの有機合成を概説する、Eckstein, F.
, Oligonucleotides and Analogues, A
Practical Approach,第1−5章, 1991;標準的ホス
ホロアミダイト固相化学反応を用いたオリゴヌクレオチドの有機合成法を記載す
る、Caruthersら, Methods In Enzymology,
第154巻,p.287(1987);ホスホロチオエート結合を含む修飾オリ
ゴヌクレオチドの有機合成法を記載する、Bhatt、米国特許第5,252,
723号;並びにメチルホスホネート結合を含む、異なる結合を有する修飾オリ
ゴヌクレオチドの有機合成を記載する、Klemら、WO 92/07864(
これらの参考文献は各々本明細書に援用される)が含まれる。
【0108】
異なる種類のヌクレオチド塩基認識配列を産生するのに用いることが可能な技
術を記載するさらなる参考文献には、Cook、国際出願第PCT/US92/
11339号、国際公告WO 93/13121;Millerら、国際出願第
PCT/US94/00157号、国際公告WO 94/15619;McGe
eら、国際出願第PCT/US93/06807号、国際公告WO 94/02
051;Cookら、国際出願第PCT/US93/01579号、国際公告W
O 94/19023;HyrupおよびNielsen, Bioorgan
ic & Medicinal Chemistry 4:5−23, 199
6;並びにHydig−HielsenおよびGodskesen、国際出願第
PCT/DK95/00195号、国際公告WO 95/32305(これらの
参考文献は各々本明細書に援用される)が含まれる。
【0109】
共有結合、キレート化、およびイオン性相互作用を含む多様な手段により、分
子トーチに標識を結合させてもよい。好ましくは、標識は共有結合される。
増幅プロトコル中に存在する分子トーチは、好ましくは、プライマー伸長に利
用可能な末端3’OHを含まない。核酸ポリメラーゼによるプライマー伸長を阻
害することが可能なブロッキング基を、核酸分子トーチの3’端にまたはその近
傍に配置してもよい。3’端「にまたはその近傍に」は、3’末端の5塩基以内
に存在するブロッキング基を指す。ブロッキング基が核酸分子トーチの3’末端
に置かれていない場合には、DNAポリメラーゼがトーチに結合するのを達成す
るくらい、十分に大きいものであるべきである。
【0110】
好ましくは、核酸分子トーチは、3’末端に位置するブロッキング基を含む。
ブロッキング基を末端3’OHに結合させることにより、3’OH基は、もはや
重合反応においてヌクレオシド三リン酸を受け入れるのに利用可能ではない。
【0111】
多くの異なる化学基を用い、核酸配列の3’端をブロッキングしてもよい。こ
うした基の例にはアルキル基、非ヌクレオチドリンカー、アルカン−ジオールジ
デオキシヌクレオチド残基、およびコルジセピンが含まれる。
【0112】
標的結合領域は、望ましい標的に特異的に結合するため、十分に長くなければ
ならない。細菌標的結合領域は、好ましくは、少なくとも約10認識基、より好
ましくは、少なくとも12認識基である。ヒトなどの多細胞生物のための複雑な
標的結合領域は、好ましくは、少なくとも約16認識基、より好ましくは、少な
くとも18認識基である。
【0113】
標的結合ドメインに関する本発明の態様において、標的結合ドメインは、各々
標的閉鎖ドメインの認識基と向き合う、約7ないし約40認識基、および0ない
し約4の非ヌクレオチド単量体基で構成される。好ましい態様において、少なく
とも約8、より好ましくは少なくとも約10認識基が存在し;約30以下、約2
5以下、そして約15以下の認識基が存在し;そして2以下、好ましくは1以下
、そして最も好ましくは0の非ヌクレオチド単量体基が存在する。好ましくは、
各非ヌクレオチド単量体基は、無塩基性「ヌクレオチド」である。
【0114】
非ヌクレオチド単量体基は、ヌクレオチド塩基を含む付加基(adjunct
groups)間に、核酸分子におけるのとおおよそ同じ長さの距離を提供す
る。したがって、2つのヌクレオチド位を連結する非ヌクレオチド単量体基は、
核酸における相補的なヌクレオチドに水素結合することが可能であるように、該
ヌクレオチドを配置する。
【0115】
標的閉鎖ドメインに関する本発明の態様において、標的閉鎖ドメインは、約7
ないし約40の認識基、および0ないし約6の非ヌクレオチド単量体基または標
的結合ドメインとのミスマッチで構成される。異なる態様において、少なくとも
約8、または少なくとも約10認識基が存在し;約30以下、約25以下、そし
て約15以下の認識基が存在し;そして0、1、2、3、4、5または6の非ヌ
クレオチド単量体基または標的結合ドメインとのミスマッチが存在する。好まし
くは、各非ヌクレオチド単量体基は、無塩基性「ヌクレオチド」である。無塩基
性ヌクレオチオドよりはミスマッチが存在することの方が好ましい。
【0116】
好ましくは、標的結合ドメインは、実質的に、独立に選択される2’−メトキ
シまたは2’−フルオロ置換リボヌクレオチドで構成され、そして標的閉鎖ドメ
インは、実質的に、独立に選択されるデオキシリボヌクレオチドで構成される。
「実質的に構成される」または「実質的に含む」は、言及される構成要素が、標
的開放ドメインまたは標的閉鎖ドメインの、少なくとも70%、少なくとも80
%、少なくとも90%、または100%を構成することを示す。
【0117】
ジョイニング領域は、ジョイニング領域の組成を考慮し、当業に周知の技術を
用い、産生してもよい。好ましくは、ジョイニング領域は、共に結合することが
可能な、異なるメンバーの結合セットを含み、ここで標的結合ドメインに、結合
セットの1つのメンバーが連結し、そして標的閉鎖領域に、結合セットの別のメ
ンバーが連結する。いくつかの結合セットは、同一結合セットの別のメンバーに
結合することが可能である。結合セットの例には、実質的に相補的なヌクレオチ
ド塩基認識配列、抗体/抗原、酵素/基質、並びにビオチン/アビジンが含まれ
る。
【0118】
標的開放および標的閉鎖ドメインの隣に、またはその近傍に配置された結合セ
ットのメンバーは、標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドの安定性
に影響を及ぼす可能性がある。影響があまりにも大きいと、広い範囲の条件下で
、標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドがそのままであるため、開
いたトーチを生じるのが困難になる可能性がある。標的結合ドメイン:標的閉鎖
ドメインハイブリッドの安定性に対する結合セットの影響は、例えばハイブリッ
ドのTmを測定することにより、決定することが可能である。
【0119】
結合セットのメンバーは、1つ以上のリンカーを用いて共有結合させてもよい
。リンカーの例には、置換されていてもよいアルキル基、ポリヌクレオチドおよ
び非ヌクレオチドリンカーが含まれる。非ヌクレオチドリンカーには、多糖類、
ポリペプチド、および無塩基性「ヌクレオチド」が含まれる。
【0120】
標的開放および標的閉鎖ドメインの間のリンカー基として用いられるポリヌク
レオチドは、好ましくは、標的配列または試料に存在する可能性がある他の核酸
にハイブリダイズしないよう、設計される。例えば鎖置換条件が用いられる場合
等は、標的に対しある程度結合した方が有利かもしれないが。好ましいポリヌク
レオチドリンカー基は、ポリT、ポリA、および混合ポリA−Tである。ポリヌ
クレオチドリンカー基は、好ましくは5ないし25ヌクレオチドである。
【0121】
分子トーチには、標的配列に相補的な一本鎖領域を含んでもよく、該領域は、
例えば標的結合ドメインの隣においてもよく、ジョイニング領域の一部であって
もよい。好ましくは、こうした一本鎖領域は、標的配列に相補的なヌクレオチド
塩基認識基を、約10より多く含まない。より好ましくは、こうした一本鎖領域
が存在する場合、標的配列に相補的な、10、5、3、2、または1以下のヌク
レオチド塩基認識基である。
【0122】
リンカー基は、結合セットメンバー並びに標的開放および標的閉鎖ドメインの
間に配置し、標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドへの結合セット
メンバーの影響を減少させてもよい。例えば、結合セットメンバーおよび標的結
合ドメインの間にリンカー基を置くと、標的結合ドメインから結合セットメンバ
ーが物理的に離され、それにより、標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブ
リッドに対する結合セットメンバーの影響が減少する。
【0123】
さらなる実施例が以下に提供され、本発明の異なる側面および態様を例示する
。これらの実施例は、いかなる点でも、開示される発明を限定することを意図し
ない。
【実施例】
【0124】
実施例1:標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインTmの調整
本実施例は、望ましい標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメインハイブリッドTm
を得るための、異なる分子トーチ設計要因の使用を例示する。本実施例において
、4つの異なる分子トーチのTmを、非ヌクレオチド、ポリエチレングリコール
(PEG)リンカー、ミスマッチ塩基の組み合わせ、無塩基性「ヌクレオチド」
(すなわちふくらみ)、および2’−メトキシ置換リボヌクレオチドを用い、調
整した。
【0125】
本実施例で用いられる異なる分子トーチは、図6Aおよび6Bに示されるよう
に、4つの異なる鎖から構築した。これらの図において、「F」はEDANSフ
ルオロフォアを指し、「Q」はDABCYL消光剤を指し、そして各トーチの1
つの鎖の3’端の「ccc」基はプライマー伸長ブロッキング基として機能する
3つの炭素基を指す。これらの分子トーチのヌクレオチドは、デオキシリボヌク
レオチドまたは2’−メトキシ置換リボヌクレオチド(太字/斜字で示される)
のいずれかである。本実施例に用いられる分子トーチはすべて、非ヌクレオチド
、20Å PEG基および単独で非常に高いTm(>90℃)を示す、二本鎖の
2’−メトキシ置換リボヌクレオチド二重鎖で構成されるジョイニング領域を含
む。
【0126】
図6Bに示されるように、トーチ1は鎖2および3で構成され;トーチ2は鎖
2および4で構成され;トーチ3は鎖1および3で構成され;そしてトーチ4は
鎖1および4で構成される。鎖1−4の各々(図6Aに示される)は、PEG基
により分離される2つのヌクレオチド塩基認識配列を含み、ここで鎖1は配列番
号1(5’−cagugcagng gaaag−3’)および配列番号2(5
’−gguggacugc gugcg−3’)のヌクレオチド塩基認識配列を
含み;鎖2は配列番号2および配列番号3(5’−cagugcaggg ga
aag−3’)のヌクレオチド塩基認識配列を含み;鎖3は配列番号4(5’−
cttttccttg ctctg−3’)および配列番号5(5’−cgca
cgcagu ccagcc−3’)のヌクレオチド塩基認識配列を含み;そし
て鎖4は配列番号5および配列番号6(5’−ctttnncccc tgcn
nactg−3’)のヌクレオチド塩基認識配列を含んだ。
【0127】
4つの分子トーチすべてにおいて、標的結合ドメインは2’−メトキシ置換リ
ボヌクレオチドで構成され、そして標的閉鎖ドメインはデオキシリボヌクレオチ
ドで構成された。下線の基はミスマッチを示し、「n」は無塩基性ふくらみを表
す。
【0128】
350μlのKEMPS緩衝液に添加された500 pmolの各鎖を含む混
合物を用い、異なるハイブリッドの安定性を測定した。(KEMPSは100
mM KCl、0.1 mM EDTA、10 mM MgCl2、50 mM
PIPES(pH 6.85)、および1 mM スペルミンで構成される。
)混合物を80℃に15分間加熱し、そしてその後、Tm解析に供した。Bec
kman DU−640融解装置を用い、0.5℃/分で45−95℃の範囲に
渡り、260 nmで光学的にTmを測定した。
【0129】
表1は、試験した4つの分子トーチにおける標的結合ドメイン:標的閉鎖ドメ
インハイブリッドの安定性を要約する。表1はまた、ハイブリッド安定性に影響
を及ぼす設計要因のいくつかを強調する。
【0130】
表1
【0131】
【表1】

【0132】
:「デオキシ」はデオキシリボヌクレオチドを指し、そして「メトキシ」は2
’−メトキシ置換リボヌクレオチドを指す。
表1に例示されるように、ハイブリッド安定性に影響を及ぼす異なる要因を用
い、分子トーチのTmを調整してもよい。ハイブリッド安定性に影響を及ぼす他
の要因、例えば本明細書に記載されるようなものおよび当業に周知のものもまた
、異なる溶液中で望ましいハイブリッドTmを得るのに用いてもよい。
【0133】
実施例2:標的配列に結合する分子トーチ
トーチ5は、図6Bに示されるように、鎖2および3のPEGリンカーがそれ
ぞれ5’−tttcttttcttt−3’および5’−ttttcttctt
tc−3’のデオキシリボヌクレオチド配列で置き換えられ、したがってトーチ
5のヌクレオチド塩基認識配列が、配列番号7(5’−cagugcaggg
gaaagtttct tttctttggc uggcacugcgu gc
g−3’)および配列番号8(5’−cgcacgcagu ccagcctt
tt cttctttcct tttccttgct ctg−3’)となる以
外、トーチ1と同じである。トーチ5はまた、合成RNA標的配列の存在を検出
するのに用いられる、EDANSフルオロフォア(「F」)およびDABCYL
消光剤(「Q」)も含んだ。トーチ5は、2’−メトキシ置換リボヌクレオチド
(太字/斜字で示される)、およびデオキシリボヌクレオチドで構成される標的
閉鎖ドメイン(配列番号4)で構成される、標的結合ドメイン(配列番号3)を
有した。標的結合ドメインは、標的配列に完全に相補的であったが、標的閉鎖ド
メインに対し3つのミスマッチを有した。
【0134】
トーチ5は、まず、pH 6.85のKEMPS緩衝液(上の実施例1に記載
されるようなもの)中にEDANSおよびDABCYL鎖を含む混合物を産生す
ることにより、生成した。混合物を60℃に10分間加熱し、そしてその後、室
温に冷却した。
【0135】
およそ80pmolのトーチ5を、増加する量のRNA標的分子とインキュベ
ーションした。試料を60℃に20分間加熱し、トーチを開き、そして標的結合
ドメインおよび標的配列の間のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてその
後、室温に冷却し、標的配列にハイブリダイズしていないトーチを閉じた。コン
トロール試料は90 mMの標的を含み、そして60℃に加熱しなかった(試料
は室温に保持した)。
【0136】
Spex Fluorolog−2分光光度計(ISA Jobin Yvo
n−Spex;ニュージャージー州エジソン)を用い、蛍光を測定した。発光波
長は495 nmであり、そして励起波長は360 nmだった。表2は実験の
結果を要約する。
【0137】
表2
【0138】
【表2】

【0139】
結果は、本分子トーチが標的配列にほぼ化学量論的に結合することを示す。そ
して、使用した条件下では、標的結合ドメインは、熱の非存在下で標的配列に結
合するのに利用不可能であり、したがって標的配列の存在下であってもほとんど
シグナルを生じなかった。
【0140】
実施例3:異なる環境の影響
本実施例は、異なる溶液環境および異なるトーチ構築の使用および影響を例示
する。本実施例に用いられた異なる溶液は、転写関連増幅反応のための異なる構
成要素を含んだ。
【0141】
本実施例において、トーチ1、6および7(トーチ1および6は図6に示され
、トーチ7は示されていない)を用いた。トーチ1は上の実施例1に記載され、
トーチ6は、2’−メトキシ置換リボヌクレオチド標的結合ドメイン(配列番号
3)(太字/斜字で示される)およびデオキシリボヌクレオチド標的閉鎖ドメイ
ン(配列番号4)に連結している20Å PEGジョイニング領域を含んだ。ト
ーチ6はまた、フルオレセイン・フルオロフォア(「F」)およびDABCYL
消光剤(「Q」)も含んだ。トーチ7は、標的閉鎖ドメイン(配列番号4)が、
ホスホロチオエート結合と置き換えられているホスホジエステル結合を有する修
飾ヌクレオチドで構成される、トーチ6の類似体であった。
【0142】
あるとすれば明記される量の合成RNA標的配列および25 pmolの分子
トーチを、以下に記載される条件A、B、CおよびDを生成するのに用いられる
溶液100μl中で共に混合した。条件A、B、CおよびDを生成した後、各溶
液を65℃に20分間加熱し、そしてその後室温に10分間冷却した。
【0143】
条件A、B、CおよびDは、以下の群の試薬から選択される試薬を含んだ:
試薬1:40 mM トレハロース、4 mM HEPES、25 mM N
alc、0.02 mM EDTA、0.04% Triton(登録商標)X
−102、および0.02 mM 酢酸亜鉛、pH 7.0;
試薬2:12.5 mM MgCl2、17.5 mM KCl、0.15
mM 酢酸亜鉛、5% グリセロール、6.25 mM ATP、2.5 mM
CTP、6.25 mM GTP、2.5 mM UTP、0.2 mM d
ATP、0.2 mM dCTP、0.2 mM dGTP、0.2 mM d
TTP、50 mM Trizma塩基、53 mM トレハロース、100μ
M デスフェロキサミン、および2 mM スペルミジン、pH 8.0;
試薬3:18 mM KCl、4% グリセロール、4 mM HEPES、
0.1 mM EDTA、および0.0002% フェノールレッド、pH 7
.0;並びに
試薬4:40 mM トレハロース、4 mM HEPES、25 mM N
alc、0.02 mM EDTA、0.04% Triton(登録商標)X
−102、0.02 mM 酢酸亜鉛、18 mM KCl、4% グリセロー
ル、4 mM HEPES、0.1 mM EDTA、および0.0002%
フェノールレッド、pH7.0。
【0144】
条件Aは、25μlの試薬2、20μlの試薬4、50μlの試料、逆転写酵
素(〜33.4μg)、T7 RNAポリメラーゼ(〜540 ng)およびプ
ライマーで構成された。条件Bは、20μlの試薬3、25μlの試薬2、50
μlの試料、およびプライマーで構成された。条件Cは、プライマーが存在しな
い以外、条件Aと同一であった。条件Dは、プライマーが存在しない以外、条件
Bと同一であった。
【0145】
Spex MicroMaxマイクロタイタープレート読み取り装置およびF
luorolog−2分光光度計を用い、励起モノクロメーター上のバンド通過
フィルター(485 nm)を用い、蛍光を測定した。491 nmの励起波長
および522 nmの発光波長を用い、蛍光を測定した。結果を表3に示す。
【0146】
表3
【0147】
【表3】

【0148】
異なる環境で調べた異なる分子トーチの各々に関し、増加した標的配列の量と
して、シグナルの増加を観察した。バックグラウンドシグナルの量は、トーチ組
成および環境に応じ変化した。
【0149】
実施例4:増幅RNA転写物の検出
本実施例は、標的RNA転写物の産生を検出するための転写関連増幅法(上に
論じられる)中に存在する分子トーチの使用を例示する。転写関連増幅は、分子
トーチの存在下で行い、そして増幅後、RNA転写物の存在をトーチ6または一
本鎖アクリジニウムエステル標識ポリヌクレオチドプローブのいずれかを用い測
定した。
【0150】
本実施例に関し、20 pmolのトーチ6の存在下で、そして5つの異なる
RNA標的配列レベルの各々(すなわち標的RNA配列の0、100、500、
1000および5000コピー)で、上の実施例3に条件Aとして特定される条
件(試薬2に関し示される0.2 mMの代わりに各dNTPを1 mM使用し
たことを除く)を使用し、8つの別個の転写複製物を生成し、そして各標的配列
レベルに関し、8つの複製物を、各々4つの複製物の2つの別個の群にプールし
た。増幅は42℃で行った。増幅後、350μlの各プール反応溶液を60℃に
20分間加熱し、分子トーチを開き、それにより標的転写物に対する標的結合ド
メイン(配列番号3)のハイブリダイゼーションを可能にした。標的にハイブリ
ダイズしていないトーチが閉じるであろうように、試料をその後室温に冷却した

【0151】
Spex MicroMaxマイクロタイタープレート読み取り装置およびS
pex Fluorolog−2分光光度計を用い、標的配列に結合しているト
ーチ6を測定した。491 nmの励起波長および522 nmの発光波長を用
い、蛍光を測定した。
【0152】
標的配列に完全に相補的であるアクリジニウムエステル標識プローブを、増幅
の度合いを決定するコントロールとして用いた。均質保護アッセイ(homog
eneous protection assay)(「HPA」)形式を用い
、アクリジニウムエステル標識プローブを使用した。約3,000,000総R
LUのアクリジニウムエステル標識プローブおよび400 pmolの未標識(
cold)プローブを含むプローブ混合物を用い、50μlの各プール反応溶液
に対し、HPAを行った。
【0153】
標的配列を検出するためのアクリジニウムエステル標識プローブを用いたHP
A形式は、異なる参考文献に記載され、例えば、各々本明細書に援用される、A
rnoldら、米国特許第5,283,174号、Nelsonら、“Dete
ction Of Acridinium Esters By Chemil
uminescence”: Nonisotopic DNA Probe
Techniques中(Kricka監修, Academic Press
, 1992)275−311ページ、およびNelsonら, Clin.
Chem. Acta 194:73−90, 1990がある。
【0154】
表4および5は2つの異なる実験からの結果を提供する。
表4
【0155】
【表4】

【0156】
表5
【0157】
【表5】

【0158】
これらの両実験において、アクリジニウムエステル標識プローブを用いたHP
Aにより検出される標的RNA転写物の量および分子トーチにより検出される標
的RNA転写物の量の間に、全体的な直線関係があった。実験1において、アッ
セイの感度は標的配列500コピーであった。実験2において、RNA転写物は
、標的配列100コピーで始まる増幅反応からバックグラウンドより上に検出さ
れた。
【0159】
実施例5:標的配列による分子トーチの鎖置換
本実施例は、分子トーチを、本質的に一定の環境条件下で標的配列に結合しそ
して該配列を検出するよう設計することが可能であることを立証する。本実験の
ため、トーチ8(図7を参照されたい)を設計し、そしてその能力に関し試験し
、溶液中のRNA標的配列を検出した。トーチ8は配列番号9(5’−cggc
ugcagg ggaaagaaua gttttttccc ctgcagc
cg−3’)のヌクレオチド塩基認識配列で構成され、ここで5’−ugcag
gggaaagaauag−3’部分は標的結合ドメインを表し、5’−tcc
cctgcagccg−3’部分は標的閉鎖ドメインを表し、5’−cggc−
3’部分は標的閉鎖ドメイン配列の一部に結合するための「クランプ」領域を表
し、そして5’−ttttt−3’部分はデオキシリボヌクレオチドジョイニン
グ領域であった。標的結合ドメインの部分(5’−aagaauag−3’)は
標的による標的閉鎖ドメインの鎖置換を助長するため未結合のままであった。標
的結合ドメインは、標的配列に完全に相補的であり、そして標的開放ドメインお
よびクランプ領域はどちらも、2’−メトキシ置換リボヌクレオチド(太字/斜
字で示される)で構成された。標的閉鎖ドメインはデオキシリボヌクレオチドで
構成された。トーチ8はまた、フルオレセイン・フルオロフォア(「F」)およ
びDABCYL消光剤(「Q」)も含んだ。
【0160】
本実験において、100μlのKrammer緩衝液(20 mM Tris
Cl、pH 8.0、5 mM MgCl、および0.2% Tween(登録
商標)−20)を、白いCliniplate(Labsystems, In
c.;マサチューセッツ州フランクリン)の10マイクロタイターウェルの各々
に添加した。増加する濃度の標的配列を、以下の表6に示されるような増加する
量で、10の緩衝剤含有ウェルに添加し、その後、30 pmolのトーチ8を
10のウェルの各々に添加した。プレートをその後、手動で10−15秒攪拌し
た後、各ウェルの流体表面を、蒸発および汚染を制限するのに用いる50μlの
油で被覆した。プレートを室温で10分間保持し、標的配列が標的閉鎖ドメイン
を置き換え、そして標的結合ドメインに結合するのに十分な時間置いた。各ウェ
ルからの蛍光シグナルをその後、Spex MicroMaxプレート読み取り
装置およびSpex Fluorolog−2分光光度計を用い、495 nm
の発光波長および525 nmの励起波長で測定した。表6は本実験の結果を提
供する。
【0161】
表6
【0162】
【表6】

【0163】
本実験の結果は、標的配列がトーチ8に鎖侵入し、そして室温で標的結合ドメ
インに結合することが可能であったことを示す。さらに、この結果は、ウェル中
でトーチに結合した標的配列の量が、ウェルに存在する標的配列の量と共に増加
したことを示し、本発明のトーチがまた、試料に存在する可能性がある標的の量
を定量化するのに有用である可能性があることも示す。
【0164】
他の態様は、請求項の範囲内である。したがって、いくつかの態様が示され、
そして記載されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、さま
ざまな修飾を作成することが可能である。
【0165】
(配列表)
【数1】

【数2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−252817(P2010−252817A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186702(P2010−186702)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【分割の表示】特願2000−558240(P2000−558240)の分割
【原出願日】平成11年7月1日(1999.7.1)
【出願人】(500169900)ジェン−プローブ・インコーポレーテッド (32)
【Fターム(参考)】