説明

分子交換器具

本発明は、分子交換器具に関する。特に、本発明は、分析・制御器械用の分子交換器具及び分子交換器具の製造方法に関する。分子交換器具は、近位端から遠位端まで延びていて、近位端から遠位端まで延びる少なくとも2つの流体通路を支持するケーシングを有し、ケーシングは、近位端と遠位端との間に延びる少なくとも1つの交換孔を有し、交換孔によって露出された流体通路の部分は、多孔質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子交換器具に関する。特に、本発明は、分析・制御機械用の分子交換器具及び分子交換器具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子交換器具、例えば分析プローブが、当該技術分野において知られている。かかるプローブは、被験体内の物質の透析又は物質のレベルの検出に利用できる、被験体、例えば血管内への挿入用途に関する。かかるプローブは、一般に、多孔質メンブレンを有し、灌流流体はこの多孔質メンブレンを通過して供給され、抜き出される。灌流流体からの分子は、メンブレンを通過して被験体内に入ることができ、又この逆の関係が成り立つ。後者の場合、分析は、或る特定の分子の存在及びこれらの濃度を確かめるための内部又は外部装置を用いて実施できる。
【0003】
透析管に用いられるメンブレン、例えば先行技術のプローブのメンブレンは、典型的には、効果的な拡散を促進するために非常に薄い壁を有し、このことは、かかる非常に薄い壁が極めて僅かな構造的支持作用しか提供せず、したがって、薄い壁が、使用中、これらの形状を維持しないことを意味する。メンブレンに追加の支持を提供するため、第1のプローブは、被験体中への挿入中、メンブレンの支持体となると共にメンブレンが曲げられたときにメンブレンの壁がへたるのを阻止するために管の中心に配置された細いワイヤを有する。
【0004】
しかしながら、細いワイヤの追加にもかかわらず、かかるプローブは、依然として、挿入中、特に曲げられたときに金属ワイヤに当たってへたりがちである。この問題を解決しようとして、ワイヤに代えてメンブレン内に、典型的には、プローブの長手方向軸線に沿って位置決めされた中空管を用いた。中空管は、灌流流体の供給又は戻しラインとしての役目も果たす細長い支持体と成る。
【0005】
メンブレンの内部支持体のかかる形状物を用いた場合の大きな欠点のうちの1つは、内部支持体の挿入中及び被験体中への挿入中、メンブレンの損傷が生じることにあった。
【0006】
メンブレンに十分な支持を提供する問題を解決する別の試みでは、支持構造体、例えば中空ステンレス鋼管に接着された短い長さのメンブレン管を有するプローブが形成された。ステンレス鋼管は、伸びを提供し、器具の挿入を助ける。かかるプローブの欠点は、生理学的条件下において、かかるプローブの組み立てに用いられたグルーが、流体との接触に起因して弱くなり、その結果、被験体内において支持構造体からのメンブレン管の断片化が生じるということにある。かかる中空管のメンブレン管材も又、被験体内への挿入中に生じる機械的損傷に起因して断片化する場合がある。
【0007】
被験体(即ち、人体又は動物の体)内でのかかるプローブの使用に鑑みて、メンブレンの断片化は、潜在的な損傷が生じる恐れがあるので望ましくないことは明らかである。これが例えば筋肉のような組織中で起こると、それは不運であるが、メンブレンの材料は比較的生体適合性があるので、このことは悲惨ではない。しかしながら、これが被験体内の系統、例えば循環系内で生じると、失われた断片は、これらが生命を脅かす場合のある領域(例えば、心臓)内に移動する場合がある。深刻な損傷が起こりうる前にかかる断片の所在を突き止めた場合であっても、かかる断片の取り出しにより、外傷が更に生じる。
【0008】
欧州特許第0675695号明細書は、透析メンブレンがプローブの近位端のところに取り付けられて固定領域が被験体内に存在しないことに起因して、プローブがそのアンカから緩くなる恐れが生じないようにしている透析プローブを開示している。これは、ほどほどに効果があるが、製造するのに比較的手が込んでいて且つ費用のかかるプローブである。さらに、先端部は、何ら保護されていないので、先端部は、損傷を受けやすい状態になっている。
【0009】
上述の欠点を解決しようとして、欧州特許出願公開第1105045号明細書は、透析メンブレンで形成された管が比較的剛性の高い支持部材に取り付けられた構成例を開示している。特に、支持部材は、細長く、管状透析メンブレンは、一方の長手方向側部に沿って延び、U字形の状態で折り返され、支持部材の遠位端部のところのアイ又は切欠きを通り、そして戻って反対側の長手方向側部に当たっている。支持部材は、管状メンブレンの支持体となり、したがって、プローブは、その従来型プローブよりも頑丈であり且つ費用効果が高い。
【0010】
しかしながら、支持部材は、メンブレンの外壁に対しては何ら保護をもたらしていない。特に、メンブレンの壁を使用中、定位置に維持し、管状メンブレン内の流体の流れが損なわれないようにするための手段は設けられていない。さらに、メンブレンをU字形に折り曲げることにより、プローブの先端部のところのメンブレンにキンク及び(又は)折り目が生じる場合があり、これらは、管状メンブレン内の流体の流れを損なう場合があり、その結果、プローブの効率及び精度を損なう。さらに、このプローブは、依然として比較的複雑であり、製造プロセスの複雑さに起因して、製造するのに費用がかかる。管状メンブレンを予備処理しなければ、メンブレンを支持部材周りに挿入することは困難であり、それにより、製造プロセスを更に複雑にすることが必要になる。さらに、管状メンブレンを支持体に当てて定位置に維持することは、困難であることが判明した。
【0011】
国際公開第99/45982号パンフレットは、物質を検出するために血管内に挿入可能なカテーテルを開示している。この特許文献に開示されたカテーテルは、微量透析溶液を流通させることができる2つのチャネルを備えた細長い本体を有する。開口部が、カテーテル本体に形成されている。微量透析メンブレンが、カテーテル本体の外部に取り付けられており、この微量透析メンブレンは、メンブレンによる微量透析が行われる場合のある開口部を覆っている。透析メンブレンをプローブ本体の外部に結合することは、微量透析メンブレンがカテーテル本体から断片化する恐れが高く、その結果、断片化に関して上述した欠点が生じることを意味している。
【0012】
米国特許7,008,398号明細書は、透析が透析メンブレンの全長に沿って起こることができる微量透析プローブを開示している。プローブの壁によってしか保護が行われないので、透析メンブレンの全体的表面積が減少し、かくしてメンブレン全体にわたる透析の効率が低下する。
【0013】
米国特許出願公開第2005/0251087号明細書は、管状メンブレンを所望の形態に保持するために細長い外部フレームによって支持された微量透析プローブを開示している。しかしながら、管状メンブレンは、フレームによってしっかりとは保持されず、もろい構造は使用中、容易に破断する恐れが高い。さらに、この構成では管状メンブレンの保護は殆ど行われず、その結果、被験体内に挿入されたときに管状メンブレンがばらばらになり又は損傷することがある。さらに、十分な強度のフレームを形成するのに多量の材料が必要であり、したがって、かかる大量の材料により、器具に通すことができる流体の量に対して器具全体のサイズが増大し、それにより、器具は、被験体内への挿入時に侵襲性が高くなると共に製造するのに費用が高くつく。
【0014】
本発明の目的は、上述の欠点のうちの幾つか又は全てを解決し又は軽減する分子交換器具を提供することにある。
【0015】
疑念をなくすため、次の用語は、以下に概要が述べられているような定義を有するようになっている。
【0016】
分子交換は、器具から外部環境への、又外部環境から器具への任意適当な分子又は組成物の選択的交換であり、かかる交換としては、透析、限外濾過、薬剤投与等が挙げられる。
【0017】
ケーシングは、これが持ち上がるようになった環境内においてその壁を通る流体又は分子の実質的な流れが阻止されるよう任意適当な材料で作られている。それ故、分子交換器具が人体又は動物の体内に挿入されるようになった生物学的用途では、ケーシングは、生物学的生体適合性環境に対して耐性があり、且つ物質がケーシングを通って侵入するのを阻止する材料で作られる。ケーシングの材料は又、器具が挿入中、容易な損傷を受けないようにするほど剛性であるが、使用中、器具の或る程度の曲げを可能にするほど可撓性でなければならない。好ましくは、ケーシングは、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリアミド、炭素繊維、ステンレス鋼又はこれらに類似した材料で作られる。
【0018】
ケーシングの遠位端(遠位端部)は、分子交換が望ましい環境中に挿入されるようになった器具の端(端部)である。
【0019】
ケーシングの近位端(近位端部)は、分子交換が望ましい環境中に挿入されるようになってはいない器具の端(端部)である。ケーシングの遠位端及び近位端は、流体通路に対する灌流流体の注入/抜き出しを可能にするようになっている。
【0020】
遠位端及び近位端は又、モニタ/分析システム等への追加のコンポーネント、例えばプローブ、センサ、コネクタの挿入/取り出しを可能にするようになっている。
【0021】
少なくとも1つの交換孔は、流体通路の隣接の部分を露出させるケーシングの部分である。交換孔は、キャビティの外壁に設けられた開口部であるのが良い。変形例として、交換孔は、流体通路への/からの且つ(或いは)器具の外部の環境からの/への選択された分子の交換を可能にする多孔質領域であっても良い。
【0022】
多孔質部分は、これらが流体通路及び(又は)ケーシングを横切る分子の選択的交換を可能にする程度まで多孔質である。当業者であれば理解されるように、種々のサイズの分子は、分子の選択的交換を可能にするのに種々の多孔度を必要とするであろう。
【0023】
流れチャンバは、少なくとも1つの流体通路から別の少なくとも1つの流体キャビティへの流体の通過を可能にする。例えば、流れチャンバは、例えば連結管又は開放チャンバを介する1つの流体通路から別の流体通路への通過を行うことができる。
【0024】
被験体は、器具を利用できる任意適当な環境である。例えば、被験体は、人体又は動物の体であるのが良い。変形例として、被験体は、工業プロセス、化学的プロセス又は発酵プロセスの一部であっても良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】欧州特許第0675695号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1105045号明細書
【特許文献3】国際公開第99/45982号パンフレット
【特許文献4】米国特許7,008,398号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0251087号明細書
【発明の概要】
【0026】
本発明の第1の観点では、分子交換器具であって、近位端から遠位端まで延びていて、近位端から遠位端まで延びる少なくとも2つの流体通路を支持するケーシングを有し、ケーシングは、近位端と遠位端との間に延びる少なくとも1つの交換孔を有し、交換孔によって露出された流体通路の部分は、多孔質であることを特徴とする分子交換器具が提供される。
【0027】
本発明の分子交換器具により提供される顕著な利点は、ケーシングが少なくとも2つの流体通路を支持すると共にこれらを保護することにある。ケーシングは、さらに、通路の多孔質部分が使用中、断片化せず、他方、通路がその形状を維持し、通路内の流体の流れを最大にするようにする。
【0028】
本発明の有利な実施形態では、セパレータが、交換孔の長さの少なくとも一部分にわたってケーシングに沿って延び、少なくとも2つの流体通路を分離する。別の有利な実施形態では、セパレータは、ケーシングに実質的に全長に沿って遠位端から近位端まで延び、少なくとも2つの流体通路を分離する。好ましくは、セパレータは、ケーシングの中心軸線に沿って延びる。セパレータは、2つ又は3つ以上の流体通路相互間では流体の交換が行われないようにし、それにより透析効率が向上するという利点を提供する。セパレータは又、特に2つ又は3つ以上の流体通路の多孔質部分のところでこれら流体通路の支持体となる。セパレータは、ケーシングと一体であっても良く、これと一体でなくても良い。
【0029】
有利には、2つの流体通路を中央セパレータの互いに整列状態にある側部に設けるのが良い。有利には、2つ又は3つ以上の流体通路を中央セパレータの周りに設けるのが良い。好ましくは、互いに流体連通関係をなす流体通路の対は、一器具内において分子交換の多数の組を可能にするために中央セパレータの周りに配置されるのが良い。分子交換は、例えば、物質の透析、投与、回収及び抽出等であるのが良い。被験体内での使用中、例えば、1つの組をなす流体通路は、薬剤を器具の外部環境に投与することができ、これに対し、別の組をなす流体通路は、全薬剤含有量を測定するために器具の周りの環境から通路中への物質の回収、抽出又は分析のために使用できる。流体通路の各組が特定の機能に合わせて選択されることが想定される。
【0030】
有利な実施形態では、少なくとも2つの流体通路は、ケーシング及び(又は)セパレータによって構成される。変形例として、少なくとも2つの流体通路は、ケーシング及び(又は)セパレータによっては構成されていない。例えば、流体通路は、ケーシング内に保持された少なくとも1本の管である。本発明の一実施形態では、流体通路の多孔質領域は、交換孔の近位端及び遠位端のところでケーシングに結合された多孔質メンブレンである。好ましくは、少なくとも1本の管は、多孔質メンブレンである。より好ましくは、多孔質メンブレンは、透析メンブレンである。
【0031】
本発明の実施形態では、管の実質的に全領域は、多孔質である。この実施形態では、管は、単一種類の材料で作られるのが良く、それにより交換孔に隣接して導管に別個の多孔質部分を形成する必要がなくなり、しかも分子交換器具は、製造するのが一層安価になる。この実施形態は又、多孔質部分をケーシングの少なくとも1つの交換孔に注意深く位置合わせする必要がないという利点を提供する。中空管は、ケーシングの交換孔のところで外部環境にさらされるに過ぎないので、分子交換は、ケーシングのこれら所望の箇所でのみ生じることになる。
【0032】
好ましい実施形態では、少なくとも1本の管は、ケーシングの近位端から遠位端から延び、遠位端のところで折り返され、そしてケーシングの遠位端から近位端まで延び、それにより2つの流体通路を構成している。
【0033】
有利には、少なくとも1本の管は、断面が円形又は非円形である。これにより中空管をケーシング内で正確な向きに位置決めすることができる。例えば、断面は、1つ又は2つ以上の真っ直ぐな縁を有しても良く、D字形であっても良く、或いは、中空管がその交換効率を最適化するような仕方で中空管を差し向けるよう形作られても良い。
【0034】
好ましい実施形態では、流体を流体通路のうちの1つに供給して他方の流体通路から引き出して器具内における流体の流れを保証するのが良い。
【0035】
有利には、交換孔は、好ましくはケーシングの一領域を除去することにより、例えば切除することにより形成された開口部である。変形実施形態では、交換孔は、好ましくはケーシングを加工してケーシングの一部分を多孔質にすることにより形成された多孔質領域である。
【0036】
好ましい実施形態では、2つ以上の交換孔は、同一の流体通路を露出させる。
【0037】
一実施形態では、2つ以上の交換孔の多孔質部分は、互いに異なる多孔度を有する。各多孔質部分の多孔度は、特定の多孔質部分の意図した機能で決まることになる。
【0038】
2つ又は3つ以上の流体通路又は1つの流体通路に設けられた2つ又は3つ以上の多孔質部分を有する好ましい実施形態では、多孔質部分は、互いに異なる多孔度を有する。多孔質部分及び(又は)互いに異なる多孔度を有する流体通路を用いることにより、ケーシングに沿う互いに異なる交換孔のところでの分子交換の互いに異なる選択が可能になる。
【0039】
例えば、器具が、薬剤を被験体の血流中に投与し、血流中の薬剤の濃度をモニタするために用いられている場合、少なくとも1つの多孔質部分は、薬剤が多孔質領域を通って血流中に入ることができるようにする多孔度を必要とすると共に少なくとも1つの多孔質部分は、キャリヤ(担体)、例えば血漿蛋白、例えばアルブミンに結合された薬剤が中空領域を通ってそれぞれの流体通路中に流れることができるようにする多孔度を有する。後者の多孔質部分は、少なくとも2つの流体通路内の流体の流れに対して他の多孔質部分の更に下流側に配置され、かかる多孔質部分は、大きな粒子、即ち薬剤単独ではなく、キャリヤに結合された薬剤の通過を可能にする多孔度を有することが必要であろう。当業者であれば理解されるように、流体通路の多孔質部分の所望の多孔度は、交換孔に隣接した多孔質部分を横切って交換されるようになった分子のサイズで決まることになろう。この構成により、薬剤の自由(キャリヤに結合されていない状態の)濃度と全体的(キャリヤに結合されていない状態及びキャリヤに結合された状態の)濃度との両方を求めることができる。
【0040】
好ましい実施形態では、少なくとも2つの流体通路は、互いに整列状態にある交換孔を有する。使用にあたり、交換孔は、血管の内壁に当たったままでいることができ、それにより、器具が血管の中央に挿入されなかった場合にしばしば生じる交換孔に隣接した流体通路の多孔質部分への接近が阻止される。互いに整列状態にある交換孔を設けることにより、交換孔のうちの少なくとも1つが血管内の流体の流れと接触状態にあることが見込まれる。
【0041】
変形例として、交換孔は、これら孔が互いに整列しないようにそれぞれの流体通路に沿って位置決めされても良い。かかる構成は、交換孔が互いに異なる目的に用いられることが意図されている場合には有利である。
【0042】
好ましい実施形態では、ケーシングは、管の形態の少なくとも2つの流体通路を支持し、これら流体通路は、交換孔の長さに沿って中央セパレータにより分離される。セパレータは、管に対する支持を行う一方で、流体通路への実質的に大きな露出度を可能にする。かかる実施形態では、分子の交換は、露出された管の実質的に周囲全体にわたって起こることができ、それにより、最大表面積が提供されて分子の交換効率が増大する。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも2つの流体通路は、中空管が多孔質部分に入ったり出たりするところが密封されている結果として、多孔質部分内でセパレータから離されて保持され、それにより流体通路の多孔質部分の周囲の実質的に100%を露出させることができる。これにより、器具の外部の環境と接触状態にある多孔質領域の表面積が最大になるという利点が得られる。好ましくは、少なくとも2つの流体通路は、グルーは密封される。
【0044】
有利には、分子交換器具の遠位端は、ケーシングの端部に嵌め込まれた栓を有する。より有利には、この実施形態では、セパレータは、ケーシングの遠位端まで延び、セパレータは、1つの流体通路から別の流体通路への流れを可能にする流体孔を有する。
【0045】
有利には、ケーシングの遠位端は、少なくとも1つの流体通路の一端から別の流体通路の一端への流れを可能にする流れチャンバを備えた先端部として形成される。有利には、流体通路の端部は、流れチャンバ内に位置し、したがって、流体通路の端部とケーシングの遠位端部との間の結合部が、交換孔から見て遠くに位置し、それによりケーシングの内部に取り付けられた管/多孔質メンブレンの断片化が回避されるようになる。
【0046】
好ましくは、流れチャンバは、物質を検出するセンサ装置を有する。例えば、センサ装置は、光ファイバ及びレフレクタであり、光ファイバ及びレフレクタは、分光分析測定、例えば分光光度的測定を可能にするよう器具の遠位端部のところに位置決めされる。変形例として、センサは、導波路、導体、光電感知器、電気活性センサ又は電気化学センサである。
【0047】
有利には、分子交換器具は、ケーシングの近位端からケーシングの遠位端まで延びていて、追加の物質をケーシングの遠位端の内部及び(又は)外部に提供するチャネルを更に有する。好ましくは、チャネルは、セパレータと一体である。より好ましくは、チャネルは、セパレータの中心軸線内に形成される。
【0048】
チャネルは、流体をケーシングの遠位端部に、特に流れチャンバ内に供給することができる。かかる実施形態では、流体は、次に、流体通路のうちの1つ又は2つ以上の中に流入することができる。当然のことながら、この逆も可能であり、流体は、流体通路に沿ってケーシングの遠位端部内に導入され、次にチャネルを通ってケーシングの近位端部に向かって抜き出される。
【0049】
有利な実施形態では、チャネルは、器具によって投与されている特定の薬剤を活性化させる組成物を送り込む。
【0050】
チャネルは又、追加のコンポーネントを受け入れるために使用できる。例えば、分子交換器具を被験体内の所望の位置に位置決めするためのガイドワイヤを挿入することができる。有利には、プローブ、例えば検出及び(又は)分析のために使用できる電気プローブ、音波プローブ又は光学プローブをチャネル内に設けることができる。好ましい実施形態では、チャネルは、かかるプローブが器具の外部の環境と直接的な接触関係をなすことができるようにかかる外部環境に対して露出されるのが良い。例えば、被験体中への挿入中、器具の誘導を可能にするための光ファイバ又は光源を分子交換器具の外端部のところに設けるのが良い。
【0051】
好ましくは、被験体中への分子交換器具の挿入を許容するようケーシングの近位端は、カテーテル又はカニューレに取り付けられるようになっている。カテーテル又はカニューレを用いた器具の挿入は、低侵襲手技である。
【0052】
より好ましくは、ケーシングの近位端は、侵襲性ポートへの連結のためのロック可能な嵌合構造体及び(又は)固定部材である。医療用途では、被験体は、既に挿入可能な既存の侵襲性ポートを有することが可能である。したがって、好ましくは、近位端部は、既存の侵襲性ポートに連結できるロック可能な嵌合構造体又は固定部材であり、それにより、被験体内への分子交換器具の挿入により生じる損傷が減少する。
【0053】
より好ましくは、ケーシングの近位端は、ポンプに取り付けられるようになっている。ポンプにより、流体を流体通路中に圧送することができると共に(或いは)流体通路から引き出すことができ、それにより器具を通る流体の流れを保証することができる。流体は、器具の流体通路を通って両方向に流れることができる。個々の流体通路の意図した使用により、ポンプが流体通路を通る流体の流れを一方向にもたらすか両方向にもたらすかが決定されることになる。理解されるように、器具が2つ又は3つ以上の流体通路を備えている場合、流体通路の各々への流体の供給及び(又は)流体通路の各々からの流体の戻りは、その所要の機能で決まる。
【0054】
有利には、ケーシングの近位端は、外部装置に取り付けられるようになっている。より有利には、ケーシングの近位端部は、2つ又は3つ以上の外部装置に取り付けられるようになっている。1つ又は2つ以上の外部装置は、器具の近位端部のところで流体通路の端部に直接又は連結管を介して流体通路に間接的に取り付け可能である。
【0055】
好ましい実施形態では、外部装置は、流体通路のうちの1つ又は2つ以上から引き出された流体の組成を分析する。有利には、外部装置は、流体通路からの流体中に1つ又は2つ以上の分子があるかどうかを判定すると共に(或いは)流体中の1つ又は2つ以上の分子の量/濃度を測定する。より有利には、外部装置は、分子交換器具を通る患者の体内への薬剤の投与を制御する。
【0056】
有利な実施形態では、器具は、薬剤の濃度を所定レベルに維持するために薬剤投与のための自続機構を提供することができる。
【0057】
本発明は、更に、分子交換器具の流体通路内の第1の物質の濃度を制御するシステムであって、分子交換器具と、分子交換器具に結合された制御装置とを有し、制御装置は、流体通路内の第2の物質の濃度を測定し、好ましくは測定濃度に応答して流体通路中への第1の物質の供給量を制御することを特徴とするシステムを提供する。次に、これにより、分子交換器具の外部の環境中の組成物の濃度が維持される。第1の物質と第2の物質は、互いに同種であっても良く異種であっても良い。
【0058】
本発明の別の観点によれば、分子交換器具を製造する方法であって、
i)ケーシングを形成するステップと、
ii)ケーシング内に少なくとも2つの流体通路を設けるステップと、
iii)ケーシングに少なくとも1つの交換孔を形成するステップとを有することを特徴とする方法が提供される。
【0059】
有利には、ステップi)、ii)及び(又は)iii)は、同時に起こる。例えば、ケーシングは、押出し法により形成でき、この押出し法は、ケーシングの成形中、少なくとも2つの流体通路及び(又は)少なくとも1つの交換孔をもたらす。
【0060】
有利には、この方法は、 少なくとも2つの流体通路を分離するためのセパレータを形成するステップを更に有する。
【0061】
好ましくは、ケーシングは、成形によって形成される。より好ましくは、少なくとも1つの交換孔は、ケーシングの成形によって形成される。有利には、ケーシングは、押出し法によって形成される。より有利には、交換孔は、ケーシングの一部分を切除することによって形成される。変形例として、交換孔は、ケーシングの製造中、例えば押出し法の実施中、開口部に形成される。変形実施形態では、交換孔は、好ましくはケーシングを加工してケーシングの一部分を多孔質にすることより形成された多孔質領域である。ケーシングは、ケーシングの成形中及び(又は)ケーシングの成形後に加工されるのが良い。加工は、流体通路の内部から器具の外部の環境への分子の移送及びこの逆の関係の移送を可能にするようレーザ、例えばレーザアブレーション、X線、放電加工、エッチング、酸化、押出し法の実施中における塩処理(salt treatment)の利用又は他の微細加工によるのが良い。
【0062】
好ましい実施形態では、少なくとも2つの流体通路は、交換孔成形後にケーシング内に挿入される。より好ましくは、流体通路は、ケーシングの遠位端部の密封後にケーシング内に挿入される。有利には、流体通路は、正確な向きでケーシング内への挿入を保証するような形状の断面を有する。より有利には、流体通路は、ルーメン内への配向が可能な円形又は非円形の断面を有する。好ましい実施形態では、流体通路の断面は、少なくとも1つの真っ直ぐな縁を有する。より好ましくは、流体通路の断面は、D字形である。
【0063】
好ましい実施形態では、ケーシングの遠位端部は、成形法の一部として密封状態に形成される。変形例として、本方法は、ケーシングの遠位端部を密封するステップを更に有する。有利には、ケーシングの遠位端部は、遠位端部の粒子が一緒に流動させる任意の方法、例えばヒートシール法、コールドシール法又は圧着法によって密封される。
【0064】
本発明を一層容易に理解できるようにするために、次に、添付の図面を参照して例示として本発明の非限定的な実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の分子交換器具の第1の実施形態及びこの器具を使用中、定位置に保持するための固定ユニットの全体的略図である。
【図2】本発明の分子交換器具の第1の実施形態の遠位部分の拡大図である。
【図3】本発明の分子交換器具の第1の実施形態の切除平面図である。
【図4】AAに沿って取った分子交換器具の第1の実施形態の断面図である。
【図5】BBに沿って取った分子交換器具の第1の実施形態の断面図である。
【図6】CCに沿って取った分子交換器具の第1の実施形態の断面図である。
【図7】本発明の分子交換器具の第2の実施形態の断面図である。
【図8】本発明の分子交換器具の変形実施形態の切除図である。
【図9】本発明の分子交換器具の変形実施形態を示す図である。
【図10】本発明の分子交換器具の変形実施形態を示す図である。
【図11】本発明の分子交換器具の変形実施形態を示す図である。
【図12】本発明の分子交換器具の変形実施形態を示す図である。
【図13】本発明の分子交換器具の変形実施形態の断面図である。
【図14】本発明の分子交換器具の変形実施形態の断面図である。
【図15】本発明の機械の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1には、本発明の第1の実施形態としての分子交換器具(1)が示されており、この分子交換器具は、近位端(3)から遠位端(4)まで延びるHDPE製のケーシング(2)と、器具(1)を使用中、定位置に保持するための固定ユニット(15)とを有している。
【0067】
図2に詳細に示されているように、ケーシング(2)は、近位端(3)から遠位端(4)まで延びる2つの流体通路(7a,7b)と、ケーシング(2)の長さに沿って延びていて、2つの流体通路を分離するセパレータ(6)と、ケーシングの近位端(3)とケーシングの遠位端(4)との間に設けられていて、流体通路(7a,7b)を露出させる2つの整列状態の交換孔とを有している。互いに反対側に位置する交換孔により露出された流体通路(7a,7b)の部分は、多孔質である。
【0068】
この実施形態では、ケーシング(2)は、ケーシング内に設けられていて、近位端(3)から遠位端(4)まで延びる2つの内部ルーメン(5a,5b)を備えている。ケーシング(2)と一体のセパレータ(6)は、ケーシング(2)の中心軸線に沿って延びていて、ケーシング(2)内に2つのルーメン(5a,5b)を形成している。また、セパレータ(6)は、ケーシング(2)と一体ではなく、これにしっかりと取り付けられても良いことが想定される。
【0069】
この実施形態では、ルーメン(5a,5b)は各々、管の形態の流体通路(7a,7b)を保持している。管(7a,7b)は、流体が通路内を進むのに適している。流体を管(7a,7b)の近位端(3)のところで供給し又は取り出すことができる。管は、メンブレンを横切って一方向又は両方向に分子の選択的交換を可能にする多孔質メンブレンで作られている。多孔質メンブレンの多孔性レベル又は多孔度は、分子交換器具(1)の意図した使用で決まる。管(7a,7b)は、分子交換器具(1)の特定の使用のために、特定の分子又は組成物がメンブレンを横切って管(7a,7b)の外部の環境から管(7a,7b)中に入り、又この逆の関係が成り立つようにすることができる多孔度を有している。
【0070】
図2又は図3に示されているように、ケーシング(2)は、各々が管(7a,7b)を露出させる互いに整列状態にある交換孔(9a,9b)を有している。また、孔(9a,9b)は、ケーシング(2)の長さに沿って整列していなくても良いことが想定される。この実施形態では、交換孔(9a,9b)に隣接して位置する(管(7a,7b)の周囲全体は、図5に示されているように外部環境に対して露出している。管(7a,7b)は、例えばグルーによってケーシング(2)に封着されており、この構成により、管は、セパレータ(6)の表面から遠ざかって保持され、その結果、交換孔に隣接して位置する周囲を含む管(7a,7b)の周囲の100%又は実質的に100%が、外部環境に対して露出するようになっている。
【0071】
この実施形態では、図3に示されているように、ケーシング(2)の遠位端部(4)は、流体を管のうちの一方(7a)から他方の管(7b)に通すことができる流れチャンバ(10)を有している。流体は、各管(7a,7b)内でいずれの方向にも流れることができ、したがって、流れチャンバ(10)は、流体を両方向に、即ち一方の管(7a)から他方の管(7b)に、又他方の管(7b)から一方の管(7a)に通すことができるということが想定される。図2に示されているように、流れチャンバ(10)の外形は、被験体中への分子交換器具(1)の容易な挿入を可能にするようテーパしている。
【0072】
図3に詳細に示されているように、管(7a,7b)は、流れチャンバ(10)内に延びていて、この中で終端している。管(7a,7b)は、例えば熱処理又はグルー、例えばUV硬化性グルー、シアノアクリレート、二液型エポキシ樹脂及び機械的手段を含む任意他の適当な方法によってケーシング内に封入されている。この実施形態では、分子交換器具(1)は、図7に示されているように、ケーシング(2)の近位端(3)から遠位端(4)まで延び、セパレータ(6)の内部を貫通して延びるチャネル(11)を更に備えている。
【0073】
この実施形態では、図7に示されているように、管(7a,7b)は、チャネル(11)を収容するよう形作られている。管(7a,7b)の形状により、ルーメン(5a,5b)内での管(7a,7b)の正確な配向が可能になる。
【0074】
チャネル(11)は、分子交換器具(1)が被験体内の所望の位置にいったん配置されると、例えば薬剤のような物質を流れチャンバ内に入れたりこれから出したりする手段となる。
【0075】
この実施形態では、センサを管(7a,7b)の端部のうちの一方又は両方に設けるのが良く、センサは、例えば、流れチャンバ(10)内の薬剤を測定する。器具(1)内への薬剤の送り込み量は、メンブレンを横切る薬剤の濃度に従って変更可能である。器具内に導入される薬剤の量を変化させることにより薬剤の送り込み量を制御することができる。透析メンブレン前後の濃度勾配が設定されている場合、器具(1)内に送り込まれる薬剤の量が多ければ多いほど、器具(1)の外部の環境への薬剤の投与量がそれだけ一層増大する。
【0076】
図3に示されているように、使用にあたり、流体を分子交換器具(1)の管(7a,7b)のうちの一方の中に流入させるのが良い。流体を管(7a)に沿って流れチャンバ内に流入させ、第2の管(7b)内に流入させ、そして第2の管(7b)に沿って器具(1)の近位端(3)のところの通路の開口部まで至らせるのが良い。ケーシング(2)の材料の性質に起因して、流体及びこの中の任意の組成物は、交換孔のところを除き、管(7)内に維持されることになる。ケーシング(2)のそれぞれのルーメン(5a,5b)の交換孔の各々のところでは、それぞれの管(7a,7b)内で運搬される流体は、分子交換器具(1)を包囲している環境に対して露出することになる。種々の要因、例えば分子/組成物の相対的内部及び外部濃度、管(7a,7b)の多孔質領域の比多孔度及び分子交換器具(1)の意図した使用に応じて、管(7a,7b)内に存在する分子/組成物を、多孔質メンブレンを横切って器具(1)の外部の環境中に送ることができ又は外部環境中に存在する分子/組成物を、多孔質メンブレンを横切って管(7a,7b)内に引き込むことができる。
【0077】
第1の管(7a)は、他方の管(7b)と同一の特性(例えば、多孔度)を有するのが良く、かかる第1の管は、同一の機能を発揮するために用いられる。変形例として、第1の管(7a)は、種々の分子/組成物を供給すると共に(或いは)吸収するために使用でき、したがって、種々の特性を有しても良い。
【0078】
図8に示されているように、変形例として、ケーシング(2)の遠位端(4)は、栓(12)を有しても良い。管(7a,7b)相互間の流れを可能にするため、セパレータ(6)は、一方の管(7a)から他方の管(7b)への流れ及び他方の管(7b)から一方の管(7a)への流れを可能にする流れ孔(13)を有する。
【0079】
図9に示されているように、本発明の別の実施形態は、ケーシング(2)を有し、このケーシング(2)は、ケーシング(2)との近位端(3)から遠位端(4)まで延びる一体形セパレータ(6)を有している。管の形態の流体通路が、ルーメンのうちの一方(5a)内でケーシングの近位端(3)からケーシングの遠位端(4)まで延び、そしてケーシングの遠位端を越えて延び、曲げられて折り返され、そして第2のルーメン(5b)内に戻り、ケーシング(2)の遠位端(4)からケーシング(2)の近位端(3)まで延びて単一の途切れのない管(7a,7b)を提供し、少なくともケーシング(2)の近位端(3)のところで固定されている。したがって、管(7a,7b)の断片化は、使用中、阻止される。管は又、ケーシング(2)の長さに沿って結合されるのが良いが、結果的に、追加の結合を提供するのではなく、その向きを保持するだけである。
【0080】
本発明の実施形態(図示せず)は、ケーシングの遠位端(4)のところの管が、ケーシング(2)内に完全に収容されることを除き、図9を参照して上述した実施形態と同一であり、ケーシングは、図2及び図3に示されているのと同様な形態をしている。
【0081】
使用にあたり、流体を第1の通路(7a)に沿って流し、遠位端を通り、そして第2の通路(7b)に沿って器具(1)の近位端のところの通路の開口部に至らせるのが良い。この場合も又、流体は、ケーシングに沿う各交換孔のところで外部環境に対して露出し、管(7a,7b)の多孔質部分を横切る分子/組成物の選択的交換を可能にする。
【0082】
図10に示されているように、2本の管(7a,7b)は、2つの別々のルーメン(5a,5b)内に配置されている。管(7a,7b)の各々は、管内で同心配置関係をなしており、したがって、流体は、内部の管に沿って流れ、外部の管に沿って戻ることができ、又この逆の関係が成り立つ。2つの流体通路(7a,7b)相互間には流体結合は存在しない。かかる構成は、例えば、管のうちの一方(7a)が、透析メンブレンとなり、他方の管(7b)が外部環境中の分子/組成物の濃度レベルをモニタする場合に用いるのに適している。後者に関し、分子/組成物は、管(7b)の多孔質部分を横切って外部環境から器具(1)の管(7b)内に入り、そして管(7b)に沿ってケーシング(2)の近位端(3)まで移動し、そして図15に示されているように分析のための外部装置(14)まで運ばれる。
【0083】
変形例として、図11に示されているように、一方の管は、2つの流体通路(7a,7b)を備えている。
【0084】
図12に示されているような本発明の別の実施形態は、ケーシング(2)の外壁が凹状孔(9a)を形成するよう交換孔(9)のところに配置された器具(1)から成っている。
【0085】
図13及び図14に示されているように、本発明の分子交換器具(1)は、セパレータ(6)によって分離された2つ又は3つ以上の流体通路(7a,7b,7c,7d)を有するケーシング(2)を備えるのが良い。これにより、1つの器具を用いて多数回の分子交換を実施することができる。例えば、分子交換は、分析、透析、投与等のためであるのが良い。図13に示されているように、器具(1)は、4つの流体通路(7a,7b,7c,7d)を有している。変形例として、図14に示されているように、器具(1)は12個の流体通路(7a,7b,7c,7d)等を有する。
【0086】
図15は、本発明を具体化した機械を概略的に示している。分子交換器具(1)が、固定ユニット(15)、例えばルアーロックに連結されており、管(16)によって外部装置(14)と流体連通状態にある。外部装置(14)は、例えば或る特定の分子/組成物又は分子/組成物の濃度を検出するために器具(1)から受け取った流体を分析するのが良く、又は、例えば流体通路中の組成物の濃度を維持するために器具(1)に供給可能な流体中に分子/組成物を供給するのが良い。
【0087】
本発明の分子交換器具(1)は、中央セパレータ(6)及び複数個の交換孔(9)を備えたケーシング(2)を射出成形し、次に中空管(7)の挿入前か後かのいずれかにおいて遠位端(4)をヒートシールし又は圧着することによって製造される。しかしながら、当業者に知られている製造業者の他の方法も又可能である。例えば、ケーシング(2)は、押出し法により形成されるのが良く、ケーシング(2)の壁は、交換孔(9)を形成するために除去される。変形例として、交換孔を形成するのに、当業者には理解されるように、ケーシング(2)の材料を適当に加工してケーシングの壁を多孔質にしても良い。
【0088】
本発明の分子交換器具及び1つ又は2つ以上の外部装置を用いると、工業的組成物、化学的組成物、発酵組成物、動物又は植物用組成物を分析し、測定し又は投与することができる。分子交換器具を工業プロセス、化学的プロセス又は発酵プロセス及び人体又は動物の体内に用いることができる。
【0089】
本発明の分子交換器具は、循環系を含む(これには限定されない)人体又は動物の体内に使用され、血管、リンパ系、筋肉、耳、口、組織脂肪及び内部臓器内に挿入されることが意図されている。
【0090】
原文明細書及び特許請求の範囲に用いられている“comprises”(翻訳文では、「〜を有する」と訳してある場合が多い)及び“comprising”並びにこれらの活用語は、特定の特徴、ステップ又は整数が含まれることを意味している。これらの用語は、他の特徴、ステップ又はコンポーネントの存在を排除するものと理解されてはならない。
【0091】
上記説明及び添付の特許請求の範囲又は添付図面に特定の形態で又は開示した機能を実行する手段によって或いは開示した結果を達成するための方法又はプロセスとして表された状態で開示された特徴は、該当する場合には、別々に又はかかる特徴の任意の組み合わせの状態で本発明をその種々の形態で具体化するために利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子交換器具であって、
近位端から遠位端まで延びていて、前記近位端から前記遠位端まで延びる少なくとも2つの流体通路を支持するケーシングを有し、前記ケーシングは、前記近位端と前記遠位端との間に延びる少なくとも1つの交換孔を有し、前記交換孔によって露出された流体通路の部分は、多孔質である、分子交換器具。
【請求項2】
セパレータが、前記交換孔の長さの少なくとも一部分にわたって前記ケーシングに沿って延び、前記少なくとも2つの流体通路を分離している、請求項1記載の分子交換器具。
【請求項3】
前記セパレータは、前記ケーシングに実質的に全長に沿って前記遠位端から前記近位端まで延び、前記少なくとも2つの流体通路を分離している、請求項1又は2記載の分子交換器。
【請求項4】
前記セパレータは、前記ケーシングの中心軸線に沿って延びている、請求項2又は3記載の分子交換器具。
【請求項5】
2つの流体通路が、中央セパレータの互いに整列状態にある側部に設けられている、請求項4記載の分子交換器具。
【請求項6】
2つ又は3つ以上の流体通路が、中央セパレータの周りに設けられている、請求項4記載の分子交換器具。
【請求項7】
前記少なくとも2つの流体通路は、前記ケーシング及び(又は)前記セパレータによって構成されている、請求項1乃至6の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項8】
前記少なくとも2つの流体通路は、前記ケーシング及び(又は)前記セパレータによっては構成されていない、請求項1乃至7の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項9】
前記少なくとも2つの流体通路は、前記ケーシング内に保持された少なくとも1本の管である、請求項8記載の分子交換器具。
【請求項10】
前記少なくとも1本の管は、多孔質メンブレンである、請求項9記載の分子交換器具。
【請求項11】
前記流体通路の前記多孔質領域は、前記交換孔の前記近位端及び前記遠位端のところで前記ケーシングに結合された多孔質メンブレンである、請求項1乃至7の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項12】
前記多孔質メンブレンは、透析メンブレンである、請求項10又は11記載の分子交換器具。
【請求項13】
前記少なくとも1本の管は、前記ケーシングの前記近位端から前記遠位端から延び、前記遠位端のところで折り返され、そして前記ケーシングの前記遠位端から前記近位端まで延び、それにより2つの流体通路を構成している、請求項9乃至12の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項14】
前記少なくとも1本の管は、断面が円形又は非円形であり、好ましくは、断面が1つの真っ直ぐな縁を有し、より好ましくは、断面がD字形である、請求項9又は10記載の分子交換器具。
【請求項15】
前記交換孔は、好ましくは前記ケーシングの一部分を切除することにより形成された開口部である、請求項1乃至14の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項16】
前記交換孔は、好ましくは前記ケーシングを加工して前記ケーシングの一部分を多孔質にすることにより形成された開口部である、請求項1乃至14の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項17】
2つ以上の交換孔は、同一の流体通路を露出させている、請求項1乃至16の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項18】
前記2つ以上の交換孔の前記多孔質部分は、互いに異なる多孔度を有する、請求項1乃至17の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項19】
前記少なくとも2つの流体通路は、互いに整列状態にある又は互いに整列状態にはない交換孔を有する、請求項1乃至18の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項20】
前記分子交換器具の前記遠位端は、前記ケーシングの端部に嵌め込まれた栓を有する、請求項1乃至19の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項21】
前記セパレータは、前記ケーシングの前記遠位端まで延び、前記セパレータは、1つの流体通路から別の流体通路への流れを可能にする流体孔を有する、請求項2乃至15の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項22】
前記ケーシングの前記遠位端は、少なくとも1つの流体通路の一端から別の流体通路の一端への流れを可能にする流れチャンバを備えた先端部として形成されている、請求項1乃至21の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項23】
前記少なくとも1つの流体通路の端部は、前記流れチャンバ内に延びている、請求項22記載の分子交換器具。
【請求項24】
前記流れチャンバは、好ましくは分光分析測定を可能にするセンサ装置を有する、請求項22又は23記載の分子交換器具。
【請求項25】
前記分光分析測定は、分光光度的測定である、請求項24記載の分子交換器具。
【請求項26】
前記センサ装置は、レフレクタ、導波路、導体、光電感知器、電気活性センサ、又は電気化学センサである、請求項24又は25記載の分子交換器具。
【請求項27】
前記ケーシングの前記近位端から前記ケーシングの前記遠位端まで延びていて、追加の物質を前記ケーシングの前記遠位端の内部及び(又は)外部に提供するチャネルを更に有する、請求項1乃至26の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項28】
前記チャネルは、前記セパレータと一体である、請求項27記載の分子交換器具。
【請求項29】
前記チャネルは、前記セパレータの中心軸線内に形成されている、請求項28記載の分子交換器具。
【請求項30】
前記チャネルは、光プローブ、音波プローブ及び(又は)電気プローブへの接近を可能にしたり、光プローブ、音波プローブ及び(又は)電気プローブのための接近を可能にしたりする、請求項27又は28記載の分子交換器具。
【請求項31】
前記ケーシングの前記近位端は、カテーテル及び(又は)カニューレに取り付けられるようになっている、請求項1乃至30の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項32】
前記ケーシングの前記近位端は、侵襲性ポートへの連結のためのロック可能な嵌合構造体及び(又は)固定部材である、請求項1乃至31の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項33】
前記ケーシングの前記近位端は、ポンプに取り付けられるようになっている、請求項1乃至32の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項34】
前記ケーシングの前記近位端は、外部装置に取り付けられるようになっている、請求項1乃至33の何れか1項に記載の分子交換器具。
【請求項35】
分子交換器具の流体通路内の第1の物質の濃度を制御するシステムであって、分子交換器具と、前記分子交換器具に結合された制御装置とを有し、前記制御装置は、流体通路内の第2の物質の濃度を測定し、好ましくは前記測定濃度に応答して流体通路中への前記第1の物質の供給量を制御する、システム。
【請求項36】
前記第1の物質と前記第2の物質は、互いに同種であっても良く異種であっても良い、請求項35記載のシステム。
【請求項37】
薬剤の濃度を所定レベルに維持するために薬剤投与のための自続機構体を提供するシステム。
【請求項38】
請求項1乃至37の何れか1項に記載の分子交換器具を製造する方法であって、
i)ケーシングを形成するステップと、
ii)前記ケーシング内に少なくとも2つの流体通路を設けるステップと、
iii)前記ケーシングに少なくとも1つの交換孔を形成するステップとを有する、方法。
【請求項39】
前記ステップi)、前記ステップii)及び(又は)前記ステップiii)は、同時に行われる、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも2つの流体通路を分離するためのセパレータを形成するステップを更に有する、請求項38記載の方法。
【請求項41】
前記ケーシングは、成形によって形成される、請求項38乃至40の何れか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの交換孔は、前記ケーシングの前記成形によって形成される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記ケーシングは、押出し法によって形成される、請求項38乃至42の何れか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記交換孔は、前記ケーシングの一部分を切除することによって形成される、請求項38乃至43の何れか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記交換孔は、前記ケーシングを多孔質にするために前記ケーシングをレーザ、例えばレーザアブレーション、X線、放電加工、エッチング、酸化、押出し法の実施中における塩処理の利用、又は他の微細加工によって加工することにより形成される、請求項38乃至43の何れか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記ケーシングは、前記ケーシングの形成中及び(又は)形成後に加工される、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも2つの流体通路は、前記交換孔の成形後に前記ケーシング内に挿入される、請求項38乃至46の何れか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記流体通路は、前記ケーシングの前記遠位端の密封後に前記ケーシング内に挿入される、請求項38乃至47の何れか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも1つの流体通路は、ルーメン内に配向可能であるように、断面が円形又は非円形であり、好ましくは、断面が1つの真っ直ぐな縁を有し、より好ましくは、断面がD字形である、請求項38乃至48の何れか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記ケーシングの前記遠位端は、密封される、請求項38乃至49の何れか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記ケーシングの前記遠位端は、ヒートシール法、コールドシール法、圧着法又は機械的方法によって密封される、請求項38乃至50の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−504787(P2010−504787A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529765(P2009−529765)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003695
【国際公開番号】WO2008/038015
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(509087830)プローブ サイエンティフィック リミテッド (1)
【Fターム(参考)】