説明

分岐部保護具

【課題】ワイヤハーネスの分岐部の分岐方向を制限することなく、省スペースで該分岐部を保護できる分岐部保護具を提供すること。
【解決手段】ワイヤハーネス100,200,300の分岐部130,230,330を保護する分岐部保護具10,20,30であって、屈曲性を有し、短冊形状に形成された保護具本体11,21,31と、保護具本体11,21,31の少なくとも一部に設けられ、保護具本体11,21,31を分岐部130,230,330に巻き回した状態に保持する保持手段12,22,32とで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスの分岐部を保護する分岐部保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等には、車両に搭載されている電子機器等の接続用にワイヤハーネスが車両各所に配索されている。このワイヤハーネスは、予め設定された配索経路に応じた分岐形状に設計され、車両へ取り付けられる。
【0003】
詳しくは、ワイヤハーネスは、通常、開発の初期段階において、車両に配索される際に、車両を構成している部品と、ワイヤハーネスとが接触しないように設計される。
【0004】
しかしながら、車両を構成する多数の部品やワイヤハーネスの配置や形状の改良に伴う変更等により、ワイヤハーネスを実際に配索すると、ワイヤハーネスと他の部品とが接触することがある。そのため、上記接触によって、電線の保護能力が乏しいワイヤハーネスの分岐部が破損しないように、分岐部を保護することが必要となる。
【0005】
そこで、従来から、例えば、特許文献1及び2に示すようなワイヤハーネスの分岐部を保護する様々な分岐部保護具が提案されている。
ところが、例えば、特許文献1に示された分岐部保護具は、片面に接着剤が塗布された方形のシート状に構成され、該分岐部保護具の各角部を直角三角形状に折り曲げて分岐部に装着するため、T字状の分岐部にしか対応していないという問題があった。
【0006】
従って、元々T字状に分岐していない分岐部に、特許文献1に示す分岐部保護具を装着すると、分岐の方向をT字状に制限して無理な配索となる場合が発生する。このような配索形状が変更される無理な配索により、ワイヤハーネスの耐久性が悪化する懸念がある。
【0007】
また、特許文献2に示された分岐部保護具は、柔軟性のない樹脂製であり、ボックス型に構成されており、狭い車両内に配索されているワイヤハーネスに装着したときに、広い装着スペースを必要とする問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−135173号公報
【特許文献2】特開2000−139015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、ワイヤハーネスの分岐部の分岐方向を制限することなく、省スペースで分岐部を保護できる分岐部保護具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、ワイヤハーネスの分岐部を保護する分岐部保護具であって、屈曲性を有し、短冊形状に形成された保護具本体と、前記保護具本体の少なくとも一部に設けられ、前記保護具本体を前記分岐部へ巻き回した状態に保持する保持手段とで構成したことを特徴とする。
上述の分岐部は、例えば、十字、T字状、Y字状、L字状といった様々な分岐数及び分岐形状を含む概念である。
【0011】
この発明により、前記ワイヤハーネスの前記分岐部の分岐方向を制限することなく、省スペースで前記分岐部を保護できる。
詳しくは、前記分岐部保護具は、前記保護具本体を屈曲性を有すると共に短冊形状で形成した構成であるため、前記保護具本体を前記分岐部の形状に沿って、ワイヤハーネスの分岐方向を制限することなく、分岐部に密着させて巻き回すことができる。
【0012】
また、前記分岐部保護具は、前記保護具本体を前記分岐部へ巻き回した状態に保持する前記保持手段を前記保護具本体に備えていることにより、前記保護具本体を巻き回した状態にしっかりと保持することができるため、前記分岐部保護具を前記分岐部に装着することができる。
【0013】
従って、前記分岐部保護具は、ワイヤハーネスの分岐方向を制限することなく、省スペースで前記ワイヤハーネスの前記分岐部を保護することができる。
さらに、前記分岐部保護具は、様々な巻き回し状態をとることができるため、例えば、T字状、十字状、Y字状、L字状といった様々な分岐数及び分岐形状の前記分岐部に対して前記分岐部保護具を装着することができる。
【0014】
この発明の態様として、前記保持手段を、シート状に形成した基材と該基材の両面に接着剤を塗布した接着面とで構成される両面接着手段とし、前記両面接着手段における一方の前記接着面を、前記保護具本体側に接着する本体側接着面に設定し、前記保護具本体の長手方向の端部のみに前記本体側接着面を接着して構成することができる。
【0015】
この発明により、前記分岐部への前記分岐部保護具の巻き回しの途中において、前記保護具本体の長手方向の中央部は前記ワイヤハーネスや前記保護具本体自身に接着することがない。このため、最終的に前記両面接着手段を前記保護具本体に接着させて巻き回した状態を保持するまでは、巻き回しに失敗しても前記分岐部保護具を何度でも巻き直すことができる。
【0016】
また、この発明の態様として、前記両面接着手段における他方の前記接着面を、前記保護具本体を前記分岐部に巻き回した状態に保持する外側接着面として設定し、前記接着面の接着力を保持したまま剥離可能な剥離紙を、前記外側接着面の全面に貼り付けて備えることができる。
【0017】
この発明により、前記分岐部保護具を前記分岐部に巻き回した後に、前記外側接着面の全面を覆う前記剥離紙を剥がすことで、巻き回しの途中において、誤って前記外側接着面が前記ワイヤハーネスや前記保護具本体に接触してこれらと接着することを防止できる。従って、スムーズかつ容易に前記分岐部保護具を前記分岐部に巻き回すことができる。
【0018】
また、この発明の態様として、前記保護具本体と前記剥離紙とを、互いに異なる色で形成することができる。
この発明により、前記分岐部保護具における前記両面接着手段の位置を容易に認識することができる。従って、前記分岐部保護具の巻き回した状態における内側面と外側面、或いは、巻き回し始端部分と巻き回し終端部分とを間違えて巻き回してしまうことを防止できる。
【0019】
また、この発明の態様として、分岐部保護具シートを、保護具本体シートと両面接着テープとで構成し、前記保護具本体シートを、互いに平行に対向する一方の対向辺と、前記一方の対向辺に対して所定の角度をなし、互いに平行な対向する他方の対向辺とを有する四辺形状のシートで構成し、前記一方の対向辺の長さを、前記保護具本体の長手方向の長さと略同等に形成すると共に、前記他方の対向辺の長さを、前記保護具本体の幅方向の長さの所定本数分と略同等に形成し、前記両面接着テープを、両面に接着剤が塗布され、前記他方の対向辺のうち少なくとも一辺に沿って前記保護具本体シートの端部に接着する構成とし、前記分岐部保護具シートを、前記他方の対向辺の方向において前記保護具本体の幅方向の長さで等間隔に、前記一方の対向辺に平行な直線に沿って切断し、切断された前記保護具本体シートで前記保護具本体を構成すると共に、切断された前記両面接着テープで前記両面接着手段を構成する前記分岐部保護具を製造することができる。
【0020】
上述の四辺形状は、長方形状、正方形状、菱形状及び一般的な平行四辺形状を含む概念である。
この発明により、前記分岐部保護具シートを短冊形状に等間隔に切断するだけで、同じ構成の前記分岐部保護具を容易に効率良く製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明により、ワイヤハーネスの分岐部の分岐方向を制限することなく、省スペースで分岐部を保護できる分岐部保護具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】分岐部保護具の説明図。
【図2】図1におけるE部拡大図。
【図3】分岐部保護具シートの正面図。
【図4】T字状の分岐部に対する分岐部保護具の装着についての説明図。
【図5】T字状の分岐部に対する分岐部保護具の装着についての説明図。
【図6】十字状の分岐部に対する分岐部保護具の装着についての説明図。
【図7】Y字状の分岐部に対する分岐部保護具の装着についての説明図。
【図8】Y字状の分岐部に対する分岐部保護具の装着についての説明図。
【図9】第2実施形態の分岐部保護具の説明図。
【図10】T字状の分岐部に対する第2実施形態の分岐部保護具の装着についての説明図。
【図11】十字状の分岐部に対して第2実施形態の分岐部保護具を装着した状態の正面図。
【図12】第3実施形態の分岐部保護具の説明図。
【図13】Y字状の分岐部に対する第3実施形態の分岐部保護具の装着についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の第1実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は第1実施形態の分岐部保護具10の説明図を示している。詳しくは、図1(a)は分岐部保護具10の正面図を示し、図1(b)は図1(a)におけるA−A断面図を示している。さらに、図2は図1(b)における分岐部保護具10の巻き回し終端部分10dの拡大図を示している。
【0024】
また、図3は切断されることで分岐部保護具10となる分岐部保護具シート50の正面図を示している。
また、図4及び図5はT字状の分岐部130に対する分岐部保護具10の装着についての説明図を示している。詳しくは、図4(a)はワイヤハーネス100のT字状の分岐部130の正面図を示し、図4(b)及び図5(a)は分岐部保護具10をT次状の分岐部130へ巻き回して装着する方法の正面図を示し、図5(b)は分岐部保護具10をT次状の分岐部130へ巻き回して装着した状態の正面図を示している。
【0025】
また、図6は十字状の分岐部230に対する分岐部保護具10の装着についての説明図を示している。詳しくは、図6(a)はワイヤハーネス200の十字状の分岐部230の正面図を示し、図6(b)は分岐部保護具10を十次状の分岐部230へ巻き回して装着した状態の正面図を示している。
【0026】
また、図7及び図8はY字状の分岐部330に対する分岐部保護具10の装着についての説明図を示している。詳しくは、図7(a)は分岐部保護具10をワイヤハーネス300の幹線310へ巻き回した状態の正面図を示し、図7(b)は分岐部保護具10を分岐線320へ巻き回した状態の正面図を示している。さらに、図8(a)は分岐部保護具10をY字状の分岐部330へ装着した状態の正面図を示し、図8(b)は図8(a)におけるB−B拡大断面図を示している。
【0027】
分岐部保護具10は、図1及び図2に示すように、保護具本体11と両面接着部12と剥離紙13とで構成している。
保護具本体11は、屈曲性を有するPVC(ポリ塩化ビニル)製であり、後述するワイヤハーネス100,200,300の分岐部130,230,330への巻き回しを許容する長さを有する短冊形状に形成している。
【0028】
また、両面接着部12は、シート状で屈曲性を有する基材12aと、該基材12aの両面に備えられ接着剤が塗布されている接着面12bとで構成している。さらに、両面接着部12は、幅方向Yの長さを上記保護具本体11の幅方向Yの長さと等しく形成される。
【0029】
ここで、基材12aの両面に備えられた上記接着面12bのうち、一方の接着面を、保護具本体11と接着する本体側接着面12baに設定し、他方の接着面を、分岐部130,230,330に対して分岐部保護具10を巻き回した状態に保持する外側接着面12bbに設定する。
【0030】
そして、図2に示すように、本体側接着面12baは、分岐部保護具10をワイヤハーネス100,200,300に巻き回した状態において、内側の面となる保護具本体11の内側面10aにおける長手方向Xの巻き回し終端部分10dに接着している。
【0031】
さらに、剥離紙13は、両面接着部12と面の寸法及び形状が同一であり、両面接着部12を完全に覆うように外側接着面12bbに貼り付けられている。また、剥離紙13の表面を、保護具本体11の表面と異なる色で構成している。なお、剥離紙13は、外側接着面12bbの接着力を保持したまま、剥離することができる構成である。
【0032】
上述の分岐部保護具10は、図3に示すように、分岐部保護具シート50を長手方向Xに沿って幅方向Yに等間隔に切断することで製造される。分岐部保護具シート50は、保護具本体シート51と両面接着テープ52と剥離紙テープ53とで構成されている。
【0033】
保護具本体シート51は、保護具本体11と同一の材質、すなわち、屈曲性を有するPVC(ポリ塩化ビニル)製である。さらに、保護具本体シート51は、長方形に形成されていて、図3における長手方向Xの長さは分岐部保護具10の長手方向Xの長さと同一であり、図3における幅方向Yの長さは所定の本数の分岐部保護具10が得られる長さに設定されている。
【0034】
また、両面接着テープ52は、後述する工程において切断されることで両面接着部12として用いられるテープであり、テープ状で屈曲性を有する基材52aと、該基材52aの両面に接着剤を塗布した接着面52bとで構成されている。
【0035】
そして、基材52aの両面に備えられた上記接着面52bのうち、一方の接着面52bを、保護具本体シート51と接着する本体シート側接着面52baに設定し、該本体シート側接着面52baを、保護具本体シート51の内側面50aにおける長手方向Xの他端部分50dに沿って接着している。
【0036】
さらに、剥離紙テープ53は、後述する切断工程を経て切断されることで剥離紙13として用いられるテープであり、面の寸法及び形状を上記両面接着テープ52と同一に形成すると共に、両面接着テープ52を完全に覆うように両面接着テープ52の外側の接着面に貼り付けている。
【0037】
分岐部保護具10は、上記分岐部保護具シート50を上述したように図3に示す長手方向Xと平行な直線状の破線に沿って幅方向Yに等間隔に切断することで所定の本数製造される。図3に示す例では、1枚の分岐部保護具シート50から8本分の分岐部保護具10が製造される。
【0038】
続いて、上述のように分岐部保護具シート50を切断して製造された分岐部保護具10をワイヤハーネス100のT字状の分岐部130に巻き回して装着する装着方法について説明する(図4及び図5参照)。ここで、ワイヤハーネス100のT次状の分岐部130は、図4(a)に示すように、直線状に延びる幹線110と、該幹線110に対して直交する方向に分岐する分岐線120とでT字状に形成している。
【0039】
また、ワイヤハーネス100は、多数の被覆電線90をビニルテープ等の結束部材(図示省略)によって長手方向の所定箇所で適宜束ねて一体化している。なお、本明細書において、図4(a)における分岐部130の左側角部を130Lとし、右側角部を130Rとして説明する。
【0040】
分岐部保護具10は、分岐部130にたすき掛け状に巻き回した後、剥離紙13を剥がして、両面接着部12で巻き回し状態を保持することで分岐部130に装着される。
具体的には、先ず、分岐部保護具10の長手方向Xの巻き回し始端部分10uを、分岐部130の右側角部130Rと幹線110を挟んで反対側の外周に配置する。このとき、分岐部保護具10の内側面10aが分岐部130と接触した状態となる。
【0041】
そして、図4(b)に示すように、上述の位置に配置した巻き回し始端部分10uを巻き回しの開始端として、左側角部130Lを通過する斜め方向へ分岐部130の外周に巻き回す。このとき、分岐部保護具10によって分岐部130のより広い範囲を覆うために、分岐部保護具10の巻き回し位置を図4(b)における左斜め上方へ少しずつずらしながら巻き回すとよい。さらに、図4(b)に示すように、分岐部保護具10を幹線110における分岐部130の左側角部130L側の外周に幹線110に対して垂直に数周巻き回す。
【0042】
続いて、図4(b)に示された状態から、図5(a)に示すように、分岐部130の右側角部130Rを通過するように斜め方向に巻き回す。このときも、分岐部130を分岐部保護具10によって、より広い範囲を覆うために分岐部保護具10の巻き回し位置を右斜め上方へ少しずつずらしながら巻き回すとよい。
【0043】
その後、幹線110における右側角部130R側の外周に、幹線110に対して分岐部保護具10を垂直に数周巻き回す。この様にして分岐部保護具10を分岐部130にたすき掛け状に巻き回すことができる。なお、上述した巻き回しを行なう際には、常に、分岐部保護具10を長手方向Xに引っ張りながら、分岐部130に対して巻き回すことでしっかりと巻き回すことができる。
【0044】
次に、図5(a)に示すように、両面接着部12がある巻き回し終端部分10dを残して、分岐部保護具10をほぼ全て巻き回した後、剥離紙13を両面接着部12の外側接着面12bbから剥離する。
【0045】
最後に、図5(b)に示すように、長手方向Xの巻き回し終端部分10dまで分岐部保護具10を全て巻き回して、両面接着部12の露出している外側接着面12bbを保護具本体11の外側面10bに接着させることで、分岐部130へ分岐部保護具10を巻き回した状態に保持する。
以上の装着方法により、分岐部保持具10をT字状の分岐部130に装着することができる。
【0046】
また、分岐部保護具10を、上述の装着方法により、図6に示すように、ワイヤハーネス200の十字状の分岐部230に対しても巻き回して装着することができる。ここで、ワイヤハーネス200の十字状の分岐部230は、図6(a)に示すように、直線状に延びる幹線210と、該幹線210の同じ位置から幹線210に直交する方向に分岐する2本の分岐線220,221とで十字状に形成している。
【0047】
なお、十字状の分岐部230にたすき掛け状に巻き回す際に、上述のT字状の分岐部130に巻き回す場合に比べて少し幹線210の長手方向に分岐部保護具10を傾けて巻き回すことで、図6(b)に示すように、分岐部保護具10を十字状の分岐部230に対して装着することができる。
【0048】
また、上述と同様の装着方法により、直線状に延びる幹線と、該幹線の同じ位置から幹線に直交する方向に分岐する3本或いは4本の分岐線とで形成される分岐部に対しても分岐部保護具10を装着することができる。
【0049】
また、上述の分岐部保護具10を、例えば、以下に説明する方法によりワイヤハーネス300のY字状の分岐部330に巻き回して装着する。ここで、ワイヤハーネス300のY字状の分岐部330は、図7(a)に示すように、直線状に延びる幹線310と、該幹線310から分岐する分岐線320とでY字状に形成している。
【0050】
先ず始めに、分岐部保護具10を、図7(a)に示すように、長手方向Xの巻き回し始端部分10uを巻き回しの開始端としてワイヤハーネス300の幹線310の分岐部330を挟んだ一方の側(図7(a)における右側)から分岐部330を通って他方の側(図7(a)における左側)へ巻き回す。
【0051】
さらに、図7(b)に示すように、折り返して幹線310の上記他方の側から分岐部330を通って分岐線320へ、分岐部保護具10を長手方向Xの巻き回し終端部分10d付近まで引き続き巻き回していく。
次に、両面接着部12がある巻き回し終端部分10dを残して分岐部保護具10をほぼ全て巻き回した後、剥離紙13を両面接着部12の外側接着面12bbから剥離する。
【0052】
最後に、図8(a)及び図8(b)に示すように、分岐部保持具10の長手方向Xの巻き回し終端部分10dまで分岐部保護具10を全て巻き回して、両面接着部12の露出している外側接着面12bbを保護具本体11の外側面10bに接着させることで、分岐部330へ分岐部保護具10を巻き回した状態に保持する。
以上の装着方法により、分岐部保持具10をY字状の分岐部330に装着することができる。
【0053】
上述のワイヤハーネス100,200,300の分岐部130,230,330を保護する分岐部保護具10の構成、及び、装着方法により、以下に述べる作用効果を奏する。
分岐部保護具10は、ワイヤハーネス100,200,300の分岐部130,230,330の分岐方向を制限することなく、省スペースで分岐部130,230,330を保護することができる。
【0054】
詳しくは、分岐部保護具10は、保護具本体11が屈曲性を有すると共に短冊形状で形成したため、保護具本体11を分岐部130,230,330の形状に沿って、ワイヤハーネス100,200,300の分岐方向を制限することなく、分岐部130,230,330に密着させて巻き回すことができる。
【0055】
さらに、分岐部保護具10は、分岐部130,230,330へ保護具本体11を巻き回した状態に保持する保持手段である両面接着部12を保護具本体11に備えたことにより、保護具本体11を巻き回した状態にしっかりと保持することができ、分岐部130,230,330に装着することができる。
【0056】
従って、分岐部保護具10は、ワイヤハーネス100,200,300の分岐部130,230,330の分岐方向を制限することなく、省スペースで分岐部130,230,330を保護することができる。
【0057】
さらに、分岐部保護具10は、様々な巻き回し状態で装着することができるため、例えば、T字状、十字状、Y字状といった様々な分岐数及び分岐形状の分岐部130,230,330に対して分岐部保護具10を装着することができる。
【0058】
また、保持手段として両面接着部12を保護具本体11の巻き回し終端部分10dのみに設けたことにより、両面接着部12における外側接着面12bbも巻き回し終端部分10dのみに有する。
【0059】
従って、分岐部130,230,330への分岐部保護具10の巻き回しの途中において、保護具本体11の長手方向Xの中央部はワイヤハーネス100,200,300や保護具本体11自身に接着することがない。このため、最終的に両面接着部12を保護具本体11に接着させて巻き回した状態を保持するまでは、巻き回しに失敗しても何度でも巻き直すことができる。
【0060】
また、分岐部保護具10に両面接着部12における外側接着面12bbの全面を覆う剥離紙13を備えていることにより、分岐部保護具10を分岐部130,230,330に巻き回した後に剥離紙13を剥がすことで、巻き回しの途中において、誤って外側接着面12bbがワイヤハーネス100,200,300や保護具本体11に接触してこれらと接着することを防止できる。従って、スムーズかつ容易に分岐部保護具10を分岐部130,230,330に巻き回すことができる。
【0061】
また、保護具本体11と剥離紙13とは互いに異なる色で構成しているので、分岐部保護具10における両面接着部12の位置を容易に認識することができる。従って、分岐部保護具10の巻き回した状態における内側面10aと外側面10b、或いは、巻き回し始端部分10uと巻き回し終端部分10dとを間違えて巻き回してしまうことを防止できる。
【0062】
さらに、上述の分岐部保護具10の製造方法により、分岐部保護具シート50を長手方向Xに沿って幅方向Yに等間隔に切断するだけで、同じ構成の分岐部保護具10を容易に効率良く製造することができる。
【0063】
なお、上述の第1実施形態における分岐部保護具10は、剥離紙13を備えているが、剥離紙13を備えていなくてもよい。また、分岐部保護具10は、両面接着部12を備えているが、両面接着部12の代わりに保護具本体11に接着剤を直接塗布してもよい。
【0064】
次に、第2実施形態として、図9及び図10に示す実施形態を説明する。
図9は第2実施形態の分岐部保護具20の説明図を示している。詳しくは、図9(a)は分岐部保護具20の正面図を示し、図9(b)は分岐部保護具20の背面図を示し、図9(c)は図9(a)おけるC−C断面図を示している。
【0065】
また、図10はT字状の分岐部130に対する分岐部保護具20の装着についての説明図を示している。詳しくは、図10(a)は分岐部保護具20をワイヤハーネス100のT字状の分岐部130へ巻き回して装着する方法の正面図を示し、図10(b)は分岐部保護具20をT字状の分岐部130へ装着した状態の正面図を示している。
また、図11はワイヤハーネス200の十字状の分岐部230に対して分岐部保護具10を装着した状態の正面図を示している。
【0066】
分岐部保護具20は、図9に示すように、保護具本体21と面ファスナ22とで構成される。
保護具本体21は、上述のワイヤハーネス100,200の分岐部130,230への巻き回し可能な長さを有する短冊形状に形成すると共に、長手方向X及び幅方向Yに伸縮性、並びに、クッション性、屈曲性を有するメリヤス布帛で構成する。
【0067】
また、面ファスナ22は、図9に示すように、一対の鉤状面ファスナ22aとループ状面ファスナ22bとで構成する。
鉤状面ファスナ22aは、非伸縮性の素材で構成され、保護具本体21に縫着されている。一方、ループ状面ファスナ22bは、長手方向X及び幅方向Yに伸縮性を有し、伸縮糸でもって保護具本体21と共に伸縮するように縫着されている。
【0068】
また、鉤状面ファスナ22aは、図9(a)に示すように、保護具本体21の内側面20aの長手方向Xにおける巻き回し終端部分20d、すなわち、図9中の分岐部保護具20の下端部分に設けられている。一方、ループ状面ファスナ22bは、図9(b)に示すように、保護具本体21の外側面20bのほぼ全面に設けられている。
【0069】
上述の分岐部保護具20を、例えば、以下に説明する方法により上述のワイヤハーネス100のT字状の分岐部130にたすき掛け状に巻き回して装着する(図10参照)。
先ず、分岐部保護具20の長手方向Xの巻き回し始端部分20uを、分岐部130の右側角部130Rと幹線110を挟んで反対側の外周に配置する。このとき、分岐部保護具20の内側面20aが分岐部130と接触した状態となる。
【0070】
そして、上述の位置に配置した巻き回し始端部分20uを巻き回しの開始端として、左側角部130Lを通過する斜め方向へ分岐部130の外周に巻き回す。さらに、図10(a)に示すように、分岐部保護具20を分岐部130において左側角部130L側の幹線110の外周に幹線110に対して垂直に一周巻き回す。
【0071】
続いて、図10(a)に示された状態から、右側角部130Rを通過するように斜め方向に巻き回す。その後、幹線110における右側角部130R側の外周に巻き回す。
【0072】
この様にして分岐部保護具20を分岐部130にたすき掛け状に巻き回すことができる。なお、上述した巻き回しを行なう際には、常に、分岐部保護具20を長手方向Xに引き伸ばしながら、分岐部130に対して巻き回すことでしっかりと巻き回すことができる。
【0073】
最後に、長手方向Xの巻き回し終端部分20dまで分岐部保護具20を巻き回した後、巻き回し終端部分20dに設けられた面ファスナ22の鉤状面ファスナ22aをループ状面ファスナ22bに係着させることで、分岐部130へ分岐部保護具20を巻き回した状態に保持する。
【0074】
以上の装着方法により、分岐部保持具20をT字状の分岐部130に装着することができる。また、上記装着方法は、T字状の分岐部130に限らず、図11に示すように、十字状の分岐部230にも対しても用いることができ、さらに多分岐の分岐部、或いは、Y字状の分岐部330に対しても用いることができる。
【0075】
次に、第3実施形態として、図12及び図13に示す実施形態を説明する。
図12は第3実施形態の分岐部保護具30の説明図を示している。詳しくは、図12(a)は分岐部保護具30の正面図を示し、図12(b)は分岐部保護具30の背面図を示し、図12(c)は図12(a)におけるD−D断面図を示している。
【0076】
また、図13はY字状の分岐部330に対する分岐部保護具30の装着についての説明図を示している。詳しくは、図13(a)は分岐部保護具30をワイヤハーネス300の幹線310へ巻き回した状態の正面図を示し、図13(b)は分岐部保護具30をY字状の分岐部330へ装着した状態の正面図を示している。
【0077】
分岐部保護具30は、図12に示すように、保護具本体31と面ファスナ32(32a,32b,32c,32d)とで構成する。
保護具本体31は、上述のワイヤハーネス300の分岐部330への巻き回しを許容する長さを有する短冊形状に形成され、屈曲性、長手方向X及び幅方向Yに伸縮性、及び、クッション性を有するメリヤス布帛で構成する。
【0078】
また、面ファスナ32は、図12に示すように、分岐部保護具30の両面、すなわち、内側面30a及び外側面30bにおける長手方向Xの両端部分、すなわち、巻き回し始端部分30u及び巻き回し終端部分30dにそれぞれ設ける。面ファスナ32aから面ファスナ32dまでの全てがループ・フック混在型、すなわち、ループ状の起毛とフック状の起毛とが混在している。また、長手方向X及び幅方向Yに伸縮性を有し、保護具本体31と共に伸縮可能な構成である。
【0079】
上述の分岐部保護具30を、例えば、以下に説明する方法により上述のワイヤハーネス300のY字状の分岐部330に巻き回して装着する(図13参照)。
先ず、分岐部保護具30を、図13(a)に示すように長手方向Xの巻き回し始端部分30uを巻き回しの開始端として幹線310の分岐部330を挟んだ一方の側(図13(a)における右側)から分岐部330を通って他方の側(図13(a)における左側)へ巻き回す。
【0080】
さらに、図13(b)に示すように、折り返して幹線310の他方の側から分岐部330を通って分岐線320へ分岐部保護具30を長手方向Xの巻き回し終端部分30dまで引き続き巻き回すことで分岐部330に装着する。
【0081】
なお、分岐部保護具30の巻き回し始端部分30uにおいて、面ファスナ32aと面ファスナ32bとを係着し、また、分岐部保護具30の巻き回し終端部分30dにおいて、面ファスナ32cと面ファスナ32dとを係着することで、分岐部保護具30を分岐部330へ巻き回した状態に保持する。
【0082】
上述のワイヤハーネス100,200,300の分岐部130,230,330を保護する分岐部保護具20,30の構成、及び、装着方法により、以下に述べる作用効果を奏する。
分岐部保護具20,30は、上述の分岐部保護具10と同様、ワイヤハーネス100,200,300の分岐方向を制限することなく省スペースで分岐部130,230,330を保護することができる。さらに、分岐部保護具20,30は、T字状、十字状、Y字状といった様々な分岐数及び分岐形状の分岐部に対して巻き回して分岐部保護具20,30を装着することができる。
【0083】
また、分岐部130,230,330の形状に沿って装着して、分岐部130,230,330をより確実に保護することができる。詳しくは、保護具本体21,31は伸縮性を有するため、保護具本体21,31を引き伸ばしながら分岐部130,230,330に巻き回すことにより、分岐部保護具20,30を分岐部130,230,330に強固に装着することができる。従って、分岐部保護具20,30の装着位置が振動等により、ずれることを防止できる。
【0084】
また、保護具本体21,31は、伸縮性に加えて、クッション性を有するため、装着状態において、例えば分岐部130,230,330と、車両の構成部品等とが接触した場合であっても、接触による衝撃を吸収することができる。従って、分岐部保護具20,30による分岐部130,230,330の保護性能が向上すると共に、接触によって生じる接触音を低減することができる。
【0085】
また、保持手段を面ファスナ22,32としたことにより、分岐部保護具20,30を分岐部130,230,330に簡単に着脱することができる。詳しくは、ボタンホック等の固定手段に比べ、面ファスナ22,32は係着位置を調整できるため、様々な径のワイヤハーネスであっても、分岐部保護具20,30を容易且つ確実に分岐部130,230,330に装着することができる。
【0086】
また、例えば、ボタンホック等の変形性を有さない固定手段である場合、保護具本体21,31が屈曲しても、変形しない固定手段によって、分岐部130,230,330と保護具本体21,31との間に隙間が生じる。
【0087】
これに対し、一般的に面ファスナ22,32自体に変形性を有するため、保護具本体21,31を分岐部130,230,330に密着させることができ、分岐部130,230,330を保護することができる。また、面ファスナ22,32は容易に着脱できるため、容易に密着させて、保護具本体21,31で分岐部130,230,330を保護することができる。
【0088】
しかも、分岐部保護具20,30は、着脱自在な面ファスナ22,32により巻き回し状態を保持する構成であるため、分岐部保護具20,30を分岐部130,230,330に繰り返し着脱することができる。
【0089】
従って、分岐部保護具20,30を分岐部130,230,330に装着する際に失敗しても、同じ分岐部保護具20,30を分岐部130,230,330に装着し直すことができる。また、一度古いワイヤハーネス100,200,300の分岐部130,230,330に装着した分岐部保護具20,30を、別の新たなワイヤハーネスの分岐部に装着することもできる。
【0090】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の保持手段は、両面接着部12及び面ファスナ22,32に対応し、
両面接着手段は、両面接着部12に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0091】
例えば、上述の第1実施形態において、分岐部保護具シート50の保護具本体シート51は、長方形に形成されているが、正方形、菱形、或いは、一般的な平行四辺形に形成されていてもよい。
また、例えば、分岐部への装着方法は、上述した方法に限らずワイヤハーネスの分岐部を保護できればいかなる装着方法であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
10,20,30…分岐部保護具
50…分岐部保護具シート
11,21,31…保護具本体
51…保護具本体シート
12…両面接着部
12a…基材
12b…接着面
12ba…本体側接着面
12bb…外側接着面
52…両面接着テープ
13…剥離紙
53…剥離紙テープ
22,32…面ファスナ
100,200,300…ワイヤハーネス
130,230,330…分岐部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスの分岐部を保護する分岐部保護具であって、
屈曲性を有し、短冊形状に形成された保護具本体と、
前記保護具本体の少なくとも一部に設けられ、前記保護具本体を前記分岐部に巻き回した状態に保持する保持手段とで構成した
分岐部保護具。
【請求項2】
前記保持手段を、シート状に形成した基材と該基材の両面に接着剤を塗布した接着面とで構成される両面接着手段とし、
前記両面接着手段における一方の前記接着面を、前記保護具本体側に接着する本体側接着面に設定し、
前記保護具本体の長手方向の端部のみに前記本体側接着面を接着して構成した
請求項1に記載の分岐部保護具。
【請求項3】
前記両面接着手段における他方の前記接着面を、前記保護具本体を前記分岐部に巻き回した状態に保持する外側接着面に設定し、
前記接着面の接着力を保持したまま剥離可能な剥離紙を、前記外側接着面の全面に貼り付けて備えた
請求項2に記載の分岐部保護具。
【請求項4】
前記保護具本体と前記剥離紙とを、互いに異なる色で形成した
請求項3に記載の分岐部保護具。
【請求項5】
分岐部保護具シートを、保護具本体シートと両面接着テープとで構成し、
前記保護具本体シートを、
互いに平行に対向する一方の対向辺と、前記一方の対向辺に対して所定の角度をなし、互いに平行な対向する他方の対向辺とを有する四辺形状のシートで構成し、
前記一方の対向辺の長さを、前記保護具本体の長手方向の長さと略同等に形成すると共に、前記他方の対向辺の長さを、前記保護具本体の幅方向の長さの所定本数分と略同等に形成し、
前記両面接着テープを、
両面に接着剤が塗布され、前記他方の対向辺のうち少なくとも一辺に沿って前記保護具本体シートの端部に接着する構成とし、
前記分岐部保護具シートを、前記他方の対向辺の方向において前記保護具本体の幅方向の長さで等間隔に、前記一方の対向辺に平行な直線に沿って切断し、
切断された前記保護具本体シートで前記保護具本体を構成すると共に、切断された前記両面接着テープで前記両面接着手段を構成する
請求項2から4のいずれかに記載の分岐部保護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−196036(P2012−196036A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57599(P2011−57599)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】