説明

分岐配管保持具

【課題】主管の管壁から枝管を直接的に分岐させる場合に、該主管の管壁を深く溶融させるような溶接を必要とせずにその分岐部を補強し得る、分岐配管保持具を提供すること。
【解決手段】環状本体1に、装着対象の主管の胴体を周方向に取り巻いて締付け得るように少なくとも1つの分断部11を設け、該分断部11に生じている2つの端部(11a、11b)に、装着対象の枝管に沿うことができるように枝管保持部(2a、2b)を設け、これら枝管保持部で枝管の基部を挟み込むことができるようにし、かつ、分断部の2つの端部同士を互いに密着させる方向に締付け得るよう構成した締付け手段(3a、3b)を設け、これによって、環状本体が主管の胴体を締め付けながら、枝管保持部が枝管を保持し得る構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概しては、配管の分岐部を補強する技術に関するものであって、薄肉管胴体からの枝管の分岐を可能とする新規な補強器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス(DRAM、LSI、発光ダイオード、半導体レーザーなど)や、有機薄膜素子などの製造工程では、気相成長、成膜、エッチング、熱処理などの加工において、基板が配置された槽内を低圧または真空にしなければならない場合がある。
例えば、特許文献1のように、ウエハ上に種々の多層膜を形成する際に使用される熱処理装置などの場合では、中央の処理槽である反応管は、排気管を通じて高真空へと真空引きされる。また、特定のガス雰囲気下で結晶成長や反応性の加工を行う場合であっても、処理槽内の気体を入れ替える際には、一時的に槽内を真空にしなければならない場合もある。
【0003】
上記のような半導体デバイス等を製造するための装置には、処理槽へのガス供給用、槽内を真空にするための排気用の種々の配管が接続される。これらの配管では、管内が真空へと減圧されても耐えられるように、通常、十分な肉厚をもった頑丈な金属製パイプが用いられる。
また、その配管には、管内の状態(気圧、温度、酸素濃度、膜厚、パーティクルなど)を測定するための各種のゲージが接続される。
【0004】
管路を構成する厚肉の配管(主管)から、ゲージへの細い枝管を分岐するためには、T字形やY字形の分岐用管継手が利用可能であるが、単純な方法として、図9に模式的に示すように、主管100の胴体に貫通孔を設け、そこに保持用部材(ゲージポートなどと呼ばれる管部材)200を、接合部を全周にわたって溶接することで直接的に取り付けて枝管の基部とし、その保持用部材にゲージへの細い枝管(図示せず)を差し込んで気密に保持し、分岐構造とするという方法が挙げられる。
保持用部材は、短い筒状のソケットであって、その先端側には、ゲージへの細い枝管を気密にかつ着脱自在に保持するための構造が設けられ(図9では、図示を省略している)、自体は全体として枝管の基部(分岐の根元部分)となり、ゲージの自重やゲージへの意図せぬ外力が作用しても、細い枝管が分岐の根元部分で折れるといった破損を防止するものである。
よって、主管と保持部材との溶接部分は、単なる密封ではなく、外力に耐える十分な機械的強度を有する必要がある。そして、そのような大きな強度を必要とする溶接を可能にするためには、溶加材を用いる場合であっても、主管が十分に厚肉であることが前提になる。
【0005】
一方、本発明者等が、上記した従来の半導体デバイス等の製造装置の配管について、配管の取り扱いや組み立てにおける作業性の面での検討を行ったところ、管内が高真空になるという理由から、過度に厚い管が配管全体に用いられており、管の適正な肉厚やさらなる薄肉化については十分な検討が加えられていないことがわかった。
また、配管に用いられる厚肉の金属製パイプが重いために、さらには、配管用の管フランジ等の鉄塊が重いために、現状では、配管の取り扱いや組み立てが非常に困難になっていることがわかった。
【0006】
そこで、本発明者等は、配管全体の重量を軽減すべく研究を行ない、肉厚0.2mm〜1.0mm程度の薄肉の管であっても、該管にその管胴体を周方向に取り巻くリブ(稜線状の突起)を設けて補強すれば、高真空用途に対して十分安全に利用し得ることを知見した。
【0007】
しかしながら、主管の肉厚を上記のように薄くすると、ゲージ用の枝管を接続するための上記保持部材の溶接が困難になるという問題が生じる。即ち、溶接時の加熱によって、薄い管の肉が簡単に溶けて管壁に貫通孔が開いてしまうために、溶接が困難であったり、また、うまく溶接を行っても、保持部材に比較的強い力が加わると、該保持部材を根元で支持している薄い管壁が変形してしまうという問題である。
このような問題は、枝管がゲージポートであるような場合のみならず、どのような枝管であっても、薄肉の主管から枝管を分岐させる場合には生じ得る問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−195648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、主管の管壁から枝管を直接的に分岐させる場合に、該主管の管壁を深く溶融させるような溶接を必要とせずにその分岐部を補強し得る、分岐配管保持具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行ない、分岐部に対して着脱自在に装着可能な補強具の構成に想到し、上記課題を解決するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、次の特徴を有するものである。
(1)主管から枝管が分岐する分岐配管の分岐部を補強するための分岐配管保持具であって、当該分岐配管保持具は、
分岐部の位置またはその近傍の位置において該主管の胴体を周方向に取り巻いて締付け得る環状本体を有し、該環状本体は、主管の胴体に対し着脱可能なように少なくとも1つの分断部において分断されており、
該分断部に分断で生じている2つの端部には、それぞれに、枝管に沿うことができるように所定長さの枝管保持部が突起しており、これら2つの枝管保持部は、2つで枝管の基部を挟み込むことができるように構成され、かつ、
当該分岐配管保持具には、前記分断部の2つの端部同士を互いに密着させる方向に締付け得るよう構成された締付け手段が設けられ、該締付け手段によって、環状本体が主管の胴体を締め付けながら、2つの枝管保持部が枝管を保持し得る構成となっている、
分岐配管保持具。
(2)環状本体が帯状の板材からなり、2つの枝管保持部が、それぞれ、枝管の外径と等しい内径を持った管を中心軸に沿って2つに割った形状となっており、2つの枝管保持部の凹面が、該枝管の胴体を抱き込んで保持し得るように、互いに向かい合って設けられている、上記(1)記載の分岐配管保持具。
(3)締付け手段が、分断部の2つの端部からそれぞれ外側へ突起した締付け用突起板と、これら2つの締付け用突起板を連結して両者を締付けるネジ部品とによって構成されている、上記(1)または(2)記載の分岐配管保持具。
(4)枝管が、主管から片持ち梁の状態で突き出した特定長さの短管であって、該枝管の先端部には、主管内の流体の状態を測定するためのゲージが接続されている、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の分岐配管保持具。
【発明の効果】
【0012】
本発明の分岐配管保持具は、分断部を持った環状本体を有しており、その分断部の2つの端部に枝管保持部を設けている。この構造によって、配管された状態の主管に対して、環状本体を着脱自在に装着することができ、かつ、その装着の際に、枝管を2つの枝管保持部で挟み込んで保持し、分岐部(即ち、枝管の基部とその周囲の主管の薄肉)を補強することが可能である。
よって、主管に対する枝管の溶接部には大きな力が作用することがないため、主管と枝管との溶接には、接合面のシールを目的としたTIG溶接等を用いることができるようになる。
【0013】
当該分岐配管保持具によって、半導体デバイスの製造装置に対して薄肉の配管を用いたとしても、枝管の分岐が簡単にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明による分岐配管保持具の一実施例の構造を概略的に示した斜視図である。
【図2】図2は、本発明による分岐配管保持具の装着対象となる分岐部の一例を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明による分岐配管保持具を分岐部に装着し補強した状態を示す図である。図3(a)は、当該分岐配管保持具を枝管の中心軸に沿って見た図であり、図3(b)は、主管の中心軸に沿って見たときの部分拡大図である。
【図4】図4は、締付け手段の他の構成を示す部分拡大図である。
【図5】図5は、締付け手段の他の構成を示す部分拡大図である。
【図6】図6は、締付け手段の他の構成を示す図である。
【図7】図7は、本発明による分岐配管保持具における環状本体の他の態様を例示する図である。
【図8】図8は、本発明による分岐配管保持具における、分断部の態様を模式的に示した図である。
【図9】図9は、厚肉の配管(主管)から、細い枝管を分岐するための、従来の分岐構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、具体的な態様例を参照しながら、本発明を説明する。尚、以下に示す各部の寸法の範囲は、あくまでも好ましい態様の例であって、本発明を限定するものではなく、要求に応じて下記に例示する法範囲外の寸法を有するもの(例えば、より大口径で肉厚を厚くしたものなど)を適宜製作してもよい。
【0016】
図1は、本発明による分岐配管保持具の一実施例を模式的に示した斜視図である。同図では、構成を分かりやすく見せるために、当該分岐配管保持具の装着に用いるボルトやナットは、図示を省略している。図2は、当該分岐配管保持具の装着対象となる分岐部の一例を示す断面図であり、図3は、当該分岐配管保持具を分岐部に装着し補強した状態を示す図である。図3では、締め付けるためのボルトおよびナットを描いている。
図1、図3に示すように、当該分岐配管保持具は、環状本体1を有し、該環状本体1は、主管(図3のP1)に対して、分岐部の位置またはその近傍の位置において該主管の胴体を周方向に取り巻いて締付け得るよう、少なくとも1つの分断部11において分断されている。この分断によって、環状本体1は、主管が配管された状態であっても、該主管の胴体に対して着脱可能となっている。
【0017】
環状本体1を分断したことで分断部11に生じた2つの端部(11a、11b)には、図3に示すように、それぞれ、枝管P2に沿うことができるように所定長さの枝管保持部(2a、2b)が突起している。これら2つの枝管保持部(2a、2b)は、図3(a)、(b)に示すように、2つで枝管P2の基部を挟み込むことができる構成となっている。また、当該分岐配管保持具には、2つの端部(11a、11b)同士を互いに連結し密着させる方向に締め付け得るための締付け手段が設けられている。締付け手段のより具体的な種々の態様は後述するが、図3の例では、該締付け手段は、締付け用突起板と、ボルトとナットである。この締付け手段を用いて、図3に示すように、2つの端部(11a、11b)を互いに連結し密着させる方向に締め付ける。それによって、環状本体1は、主管P1の胴体を周方向に取り巻き締め付けて、主管に固定された状態で取り付くことができ、同時に、この締め付けによって、2つの枝管保持部(2a、2b)が枝管P2を挟み込んで締め付ける。このようにして、当該分岐配管保持具は、主管と枝管とを一体的に抱え込み、分岐部を補強し得る構成となっている。
【0018】
当該分岐配管保持具の適用対象となる分岐配管を構成する主管・枝管の肉厚や外径は、特に限定されず、主管は厚肉管であってもよい。主管が厚肉管の場合には、十分な溶接が可能であるが、当該分岐配管保持具を用いれば、溶接は、封止だけを目的とした簡単なTIG溶接などでよいという利点がある。
当該分岐配管保持具の有用性が最も顕著になるのは、主管が薄肉の場合であって、従来では行うことができなかった薄肉の主管の胴体への穴あけと直接的な枝管の取り付けが、接合部の密封を目的とした溶接だけで可能となり、上記背景技術の説明において提起した問題を解消することができる。
【0019】
当該分岐配管保持具の適用対象となる分岐配管の主管の外径は、特に限定はされないが、一般的に流通する金属管素材の呼び寸法や、半導体デバイス製造装置などで多用される汎用的な管寸法を考慮すると、21.7mm(一般的な管外径規定のB呼称でいう1/2)〜165.2mm(=前記B呼称でいう6)が、管状素材の外径として有用な範囲である。
また、主管の肉厚も、特に限定はされないが、例えば、次のような薄肉であれば、配管の軽量化には好ましく、本発明の有用性が顕著になる。
(a)主管の外径が21.7mm以上42.7mm未満では、肉厚は、0.2mm〜0.5mm、特に、0.4mm〜0.5mmが好ましい範囲である。
(b)主管の外径が42.7mm以上76.3mm未満では、肉厚は、0.3mm〜0.6mm、特に、0.4mm〜0.5mmが好ましい範囲である。
(c)主管の外径が76.3mm以上165.2mm以下では、肉厚は0.4mm〜1.0mm、特に、0.5mm〜0.6mmが好ましい範囲である。
装着対象の主管の材料は、限定はされないが、半導体デバイス等の製造装置では、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅合金などが用いられ、高真空に耐える機械的強度や耐蝕性の点では、ステンレス鋼が好ましく用いられる。
また、当該分岐配管保持具は、プラスチックやガラス製の配管に対しても、その分岐部の補強に用いることができる。
【0020】
当該分岐配管保持具の適用対象となる分岐配管の枝管の種類に限定はなく、主管から分岐する一般的な配管、主管の胴体から片持ち状に突起させて取り付けられるゲージへの細管(通常、外径3.2mm〜12.7mm程度)または該細管を接続するための基部となるソケットなど、あらゆる分岐管であってよい。
枝管の外径は、上記した主管の外径以下であればよい。
枝管の根元部分の外径は、特に限定はされないが、汎用的なものとして外径6.35mm〜19.05mm程度のものが例示される。
好ましい態様の一例として、枝管が先端で荷重を受ける場合などでは、枝管全体が片持ち状になり、先端の荷重によって、枝管の根元には比較的大きな曲げ力が作用する。従って、そのような状況において枝管を主管の胴体に直接的にTIG溶接する場合には、本発明の有用性がより顕著となる。
主管と枝管とが成す角度は、90度が一般的であるが、用途に応じて、任意の角度をなした分岐であってよい。
【0021】
環状本体は、分岐部の位置とは異なる位置において、該主管の胴体を周方向に取り巻いていてもよい。
図3(a)の態様では、環状本体1が「分岐部の位置」において該主管の胴体を周方向に取り巻いている。即ち、環状本体を周方向にたどると、分岐部の枝管P2と交差する。
一方、図7の態様では、環状本体1が、「分岐部の近傍の位置」において該主管P1の胴体を周方向に取り巻いている。即ち、環状本体1の周上には分岐部の枝管P2は無く、枝管保持部2a、2bが片持ち状にて、環状本体1から張り出して枝管P2を保持している。
図3(a)の態様であれば、分断部での締付けが、主管を締め付けながら、そのまま枝管の締付けに直結し、また、枝管保持部が大きな強度と剛性を持って環状本体と一体化しているので、補強具として好ましい態様である。
【0022】
環状本体は、主管を取り巻くことが可能であればよく、線状であってもよいが、図1のように、枝管保持部を一体的に形成し得る点からは、帯状板が好ましい態様である。
また、環状本体が帯状板であれば、主管が薄肉であっても、締付け力を比較的分散させて加えることができるので、主管を局所的に変形させることがなく好ましい。また、環状本体と主管表面との間の接触面積(摩擦力が作用する面積)をより大きく取れているので、適度な締付け力で環状本体を主管の表面に固定することが可能である。
【0023】
環状本体を帯状板とする場合、その幅(図3(a)に示した、寸法W)と厚さ(板厚)は、枝管の規模に合わせて適宜決定すればよい。以下に、一例を挙げる。
(a)枝管の外径が6.35mm以上9.52mm未満では、幅寸法Wは、20mm〜30mm、特に、22mm〜28mmが好ましい範囲である。また、厚さは、1mm〜3mm、特に、2mm〜3mmが好ましい範囲である。
(b)枝管の外径が9.52mm以上19.05mm未満では、幅寸法Wは、30mm〜60mm、特に、35mm〜55mmが好ましい範囲である。厚さは、2mm〜4mm、特に、2.5mm〜3.5mmが好ましい範囲である。
(c)枝管の外径が19.5mm以上25.4mm以下では、幅寸法Wは、55mm〜75mm、特に、58mm〜70mmが好ましい範囲である。厚さは、3mm〜5mm、特に、3.5mm〜4.5mmが好ましい範囲である。
上記の数値はあくまで一例であって、上記範囲外のものについては、適切な寸法を適宜選択すればよい。
【0024】
環状本体の材料は、主管の胴体に巻き付けることができ、かつ、強い張力に耐えることができるものであればよく、高い機械的強度を有するプラスチックや、鋼(特にステンレス)などが好ましいものとして挙げられる。
【0025】
分断部は、環状本体を主管の胴体に対して着脱可能なように、該環状本体の周上に少なくとも1つ設けられ、この部分において環状本体の閉じた環が分断されている。
分断によって無駄に部品の数を多くしないことや、主管部への装着作業性が良好であることなどを考慮すると、装着すべき分岐部側に格別な事情がない限りは、分割の数は1または2が適当である。
図1、図8(a)の例では、分断部は2箇所であり、第1の分断部11は分岐部に位置するように形成され、第2の分断部12は、第1の分断部から周方向に180度おいた位置に設けられており、環状本体は、別個の部品として半分に分かれるようになっている。
図8(b)の例では、第2の分断部13が、フックによる引っ掛け構造となっており、環状本体は半分に分離するようになっているが、締付けは第1の分断部11だけで行うようになっている。この態様では、フックによる引っ掛け構造を、蝶番などのリンク構造に置き換えるなどの変更を加えてもよい。
図8(c)の例では、分断部は1箇所だけ設けられており、環状本体を主管に着脱する場合は、環状本体を大きく開く必要があるが、部品点数が少ないという利点がある。
【0026】
環状本体が主管を締付けるためには、図3(b)に示すように、主管を周方向に全周完全に取り巻くのではなく、分断部にシメシロとして適当な隙間tを設けておくことが好ましい。
隙間tの値は、主管の外径の規模に応じて適宜決定すればよいが、概ね、3mm〜5mm程度であればよい。
【0027】
分断部11に設けられる2つの枝管保持部(2a、2b)は、互いに平行な平板であってもよく、2つで枝管の基部を挟み込むことができるが、枝管にどの方向に外力が作用しても、常に好ましく支持するためには、図1、図3(a)に示すように、凹部によって枝管の胴体周囲を抱き込むように保持する形状が好ましい。
図1、図3(a)の態様では、2つの枝管保持部(2a、2b)は、それぞれ、枝管の外径と略等しい内径を持った管をその中心軸に沿って2つに割った形状となっている(ただし、図3(b)のとおり、シメシロtの分がさらに除去されている)。そして、図3(a)に示すように、2つの枝管保持部(2a、2b)のそれぞれの内側の凹面が枝管P2の胴体を抱き込むようにフィットし挟んで保持し得るようになっている。
【0028】
環状本体の外面からの枝管保持部の突き出し高さは、保持すべき枝管の外径にもよるが5mm〜50mm程度が好ましく、特に、5mm〜30mm程度がより好ましい範囲である。
【0029】
締付け手段は、図1に示した分断部11の2つの端部11a、11bを、互いに密着させる方向に締付け得るような機構であればよく、従来公知のあらゆる締付け機構を採用してよい。
2つの端部(11a、11b)を、より簡単に互いに締付けるための好ましい構成例としては、図1に示すように、各端部(11a、11b)に外側へ折れ曲がって突起した締付け用突起板と貫通孔f1を設け、この締付け用突起板をネジ部品によって互いに密着する方向へと締付ける構成が挙げられる。このような構成は、簡単でありかつ強い締付け力を発生させ得る。図1の例では、第2の分断部12の端部(12a、12b)にも、外側へ折れ曲がって突起した締付け用突起板(4a、4b)と貫通孔が設けられ、ネジ部品によって締め付け得る構成となっている。
図3の例では、2つの締付け用突起板(3a、3b)を、ボルトとナット20とによって締付ける構成となっている。図1、図3の例では、2つの締付け用突起板(3a、3b)は、それぞれ、2つの枝管保持部(2a、2b)と一体的に構成され、環状本体が主管を締付けると同時に、締付け用突起板が枝管を締付ける構成となっている。
【0030】
ネジ部品によって互いに締付ける構成としては、図3の例のように、2つの締付け用突起板(3a、3b)の貫通孔をボルトが貫通し、ナットを用いて両者を締付ける態様や、2つの締付け用突起板のいずれか一方にメネジを形成し、ボルトが他方を貫通して該メネジに螺合されて両者を締付ける態様、ボルトなどを利用して万力のように締め付ける別個の締付け装置を用いて、2つの締付け用突起板(3a、3b)を互いに密着する方向に締め付ける態様などが挙げられる。
締付け用突起板は、図1、図3、図7に示すように、枝管保持部の両側に設ける態様が好ましく、バランスのとれた締め付けを達成することができる。
【0031】
締付け手段の構成は、例えば、トグル機構を含んだ万力によって2つの締付け用突起板(3a、3b)を互いに強く締付ける態様、ワンタッチで絞め付け固定と解除とが可能な止め金具(一般に、「パッチン錠」や「引っ掛けパッチン錠」などと呼ばれる止め金具)であってもよい(図示せず)。
また、2つの締付け用突起板の一方にリベットを突起させ、他方に穴を設け、該リベットを他方の穴に貫通させてカシメによって締め付ける態様であってもよい(図示せず)。
図4(a)の態様では、2つの締付け用突起板の両方に切り欠きを設け、一方の切り欠きに回転シャフトS1を固定し、該シャフトS1を中心として回転可能なようにボルト部材S2を設け、該ボルト部材S2を回転させて、他方の締付け用突起板の切り欠きS4内にボルト部材を挿入し、蝶ねじS3で2つの締付け用突起板を締め付ける構成としている。
図4(b)の態様は、図4(a)の態様の変形であって、2つの締付け用突起板の一方に、回転シャフトS1を中心として回転可能にレバーS21を設け、他方の締付け用突起板には切り欠きS4を設け、レバーS21の先端に、切り欠きS4を通過し得ない大きさのヘッド部(図の例では先端に行くほど広がったクサビ)S31を設け、該レバーを回転させて、相手の切り欠きS4に挿入し、該ヘッド部によって2つの締付け用突起板を締め付ける構成としている。
図5(a)の態様では、2つの締付け用突起板の両方に切り欠きS51、S52を設け、これら切り欠きを通過し得ない大きさのヘッド部S61、S62を両端に備えた止め部材S60を別途用意し、2つの締付け用突起板を近づけた状態で、止め部材S60を両方の切り欠きに挿入し、ヘッド部によって2つの締付け用突起板を締め付ける構成としている。
図5(b)の態様では、2つの締付け用突起板4a、4bは、単なる突起板であり、それら締付け用突起板を互いに接近させるようにテーパー状の内面S70を持った筒状器具を別途用意し、2つの締付け用突起板を近づけた状態で該筒状器具の内部に挿入し、テーパー状の内面S70によって2つの締付け用突起板を締め付ける構成としている。
図6の態様では、締付け用突起板は特に設けられてはおらず、管の外側に巻き付けて用いるヒータージャケット(ジャケットヒーターとも呼ばれる)S80が用意され、該ヒータージャケットを当該分岐配管保持具の外側に巻き付けて、その止め部S81の締め付け機能を利用して、当該分岐配管保持具をも締め付ける態様としている。図6では、説明のために、枝管保持部(2a、2b)だけが、該ヒータージャケットの合わせ目から外へ突起している様に描いている。ヒータージャケットの止め部は、ひも、マジックテープ(登録商標)として知られるパイル・アンド・フック・ファスナー、スナップ等が挙げられ、その締め付け構成に限定はない。
【0032】
当該分岐配管保持具は、あらゆる用途の配管の分岐部に適用することができるが、特に、半導体デバイスの製造装置では、高真空を作り出す必要があり、かつ、装置全体の軽量化が求められているので、主管の薄肉化を助ける部材として有用である。
当該分岐配管保持具の有用性がより顕著となる。
【実施例】
【0033】
実施例1
本実施例は、図1に示した当該分岐配管保持具を実際に製作し、薄肉の主管であっても、その胴体に枝管を十分な強度にて接合し得ることを確認した事例である。
(1)主管
外径;114.3mm、肉厚;0.5mm、材料;SUS316L
(2)枝管
外径12.7mm、肉厚1mm、長さ100mmの円筒管、材料;SUS316L
(3)当該分岐配管保持具の仕様
材料;SUS316L、厚さ2mm、幅40mmの帯状の板材を、図1、図3に示すように、主管の胴体に装着可能に取り巻くように湾曲させた。分断部の数は2であり、互いに勝って違いとなるように形成した2つの部品を、1つにあわせて主管の胴体を取り巻き、ボルトとナットで締め付ける構造とした。2つの分断部のうちの1つは、枝管の基部を抱き込んで保持する枝管保持部を兼用しており、該枝管保持部の突き出し高さは10mmとした。
【0034】
(4)主管と枝管との接合、当該分岐配管保持具の装着
図2に示すように、主管P1の胴体側面に分岐配管のための貫通孔を設け、さらに、該貫通孔に対して、バーリング加工を施して、該貫通孔の開口部周囲を主管の内側から外側へと短い筒状に突起させた。
図2に示すように、この筒状の突起部の外径は、枝管P2の外径と等しくしている。この筒状の突起部に対して、枝管の基部をつき合わせ(より詳細には、枝管の基部端面に段差を設け、基部端面の内周側をバーリング加工の突起部内にはめ込み)、接合部分の外周全周にわたってTIG溶接を施し、両者を気密に接合した。
得られた分岐構造に対して、図1に示した態様の分岐配管保持具を装着し、ボルトとナットとで充分に締め付けた。
【0035】
(5)評価
先ず、分岐構造体への当該分岐配管保持具の装着作業性は良好であり、すでに配管が完了した現場の主管に対しても、当該分岐配管保持具は、何ら障害なく、後付けで簡単に装着することができる。
また、当該分岐配管保持具を装着すると、枝管の先端側に10kgの外力を枝管の軸線に直角に作用させても、バーリング加工による突起部分やTIG溶接部分には、変形は生じないことがわかった。
これに対して、当該分岐配管保持具を外した場合、図2に示すような、薄肉の主管胴体からのバーリング加工による突起へのTIG溶接だけでは、枝管の先端側(主管から離れた末端側)に同様の外力を作用させると、バーリング加工による突起部分の付近に大きな曲げ応力が生じ、薄肉の突起だけでは耐えることができず、主管の壁部が変形することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によって、主管の管壁から枝管を直接的に分岐させる場合に、その分岐部を簡単に補強することが可能になった。当該分岐配管保持具は、薄肉の主管の胴体から細い管を分岐させる場合に有用となる。
【符号の説明】
【0037】
1 環状本体
11 分断部
11a、11b 端部
12 第2の分断部
12a、12b 端部
2a、2b 枝管保持部
3a、3b 締付け用突起板
4a、4b 締付け用突起板
f1 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主管から枝管が分岐する分岐配管の分岐部を補強するための分岐配管保持具であって、当該分岐配管保持具は、
分岐部の位置またはその近傍の位置において該主管の胴体を周方向に取り巻いて締付け得る環状本体を有し、該環状本体は、主管の胴体に対し着脱可能なように少なくとも1つの分断部において分断されており、
該分断部に分断で生じている2つの端部には、それぞれに、枝管に沿うことができるように所定長さの枝管保持部が突起しており、これら2つの枝管保持部は、2つで枝管の基部を挟み込むことができるように構成され、かつ、
当該分岐配管保持具には、前記分断部の2つの端部同士を互いに密着させる方向に締付け得るよう構成された締付け手段が設けられ、該締付け手段によって、環状本体が主管の胴体を締め付けながら、2つの枝管保持部が枝管を保持し得る構成となっている、
分岐配管保持具。
【請求項2】
環状本体が帯状の板材からなり、2つの枝管保持部が、それぞれ、枝管の外径と等しい内径を持った管を中心軸に沿って2つに割った形状となっており、2つの枝管保持部の凹面が、該枝管の胴体を抱き込んで保持し得るように、互いに向かい合って設けられている、請求項1記載の分岐配管保持具。
【請求項3】
締付け手段が、分断部の2つの端部からそれぞれ外側へ突起した締付け用突起板と、これら2つの締付け用突起板を連結して両者を締付けるネジ部品とによって構成されている、請求項1または2記載の分岐配管保持具。
【請求項4】
枝管が、主管から片持ち梁の状態で突き出した特定長さの短管であって、該枝管の先端部には、主管内の流体の状態を測定するためのゲージが接続されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分岐配管保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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