説明

分散スラリーの調製方法及び分散スラリー製造装置

【課題】所定の粒度の分散スラリーを安定して製造できる分散スラリーの調製方法及び分散スラリーの製造装置を提供すること。
【解決手段】固形成分を溶媒に分散させてなる分散スラリーの調製方法及び分散スラリーの製造装置である。調製方法においては、分散スラリーの粒度及び/又は分散度を検出すると共に、分散スラリーのpH及びゼータ電位を検出し、分散スラリーが所望の粒度及び/又は分散度になるように、pH及び/又はゼータ電位を制御する。製造装置1は、貯蔵容器2と容器内撹拌手段21と酸・アルカリ添加手段22と分散剤添加手段23と粒度検出手段4及び/又は分散度検出手段45とpH検出手段5及び/又はゼータ電位検出手段6と演算・制御手段7とを備える。演算・制御手段7は、粒度及び/又は分散度とpH及び/又はゼータ電位に基づいて、酸・アルカリ添加手段22及び/又は分散剤添加手段23の作動及び添加量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック粒子等の固形成分を溶媒中に分散させてなる分散スラリーの調製方法及び分散スラリーの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナを主成分とするアルミナ焼結体は、絶縁性及び耐電圧性に優れるため、例えば自動車の内燃機関用のスパークプラグ、エンジン部品、及びIC基板等の絶縁材料として広く実用化されている。
従来、アルミナ焼結体としては、アルミナのみからなるものではなく、熱的、化学的、及び機械的な安定化のために、アルミナ以外の副成分が添加されたものが用いられていた。例えばアルミナを主成分とするSiO2−MgO−CaO系の焼結体がある(特許文献1参照)。
このようなアルミナ焼結体は、アルミナ等からなる原料粉末等の固形成分を水等の溶媒中で混合し、分散させてスラリーを調製し、これを乾燥・成形した後、焼成されて製造されていた。
【0003】
【特許文献1】特許第2564842号公報明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような製造方法においては、固形成分を溶媒に分散させて分散スラリーを得る分散工程が、アルミナ焼結体の材料組成の均一性を支配する工程として非常に重要であるが、従来、分散工程においては、分散スラリー中の粒子の粒度や粗大粒子の存在を実際に確認することなく、分散工程の操作時間の管理によって混合・分散工程を行っていた。
【0005】
即ち、実際の製造においては、原料ロット間の粒度変動、調製時の気温の変動、分散装置の経年変化によるトルク・回転数の変動、及びこれに伴う例えば分散スラリー粘度の変動などのように、粒度のバラツキ要因が多数存在する。そのため、単に操作時間の管理のみでは、目的の分散状態の分散スラリーを安定に供給することが困難であった。その結果、最終的に得られるアルミナ焼結体の品質が安定せず、耐電圧性などの品質が低下したり、ロット毎の品質の変動が大きくなったりするという問題があった。また、大量の不良品を製造してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、所定の粒度の分散スラリーを安定して製造できる分散スラリーの調製方法及び分散スラリーの製造装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、固形成分を溶媒に分散させて分散スラリーを調製する方法において、
上記溶媒中への上記固形成分の分散時に、上記分散スラリーの粒度及び/又は分散度を検出すると共に、上記分散スラリーのpH及びゼータ電位を検出し、
上記分散スラリーが所望の粒度及び/又は分散度になるように、上記分散スラリーのpH及び/又はゼータ電位を制御することを特徴とする分散スラリーの調製方法にある(請求項1)。
【0008】
第1の発明においては、上記溶媒中への上記固形成分の分散時に、上記分散スラリーが所望の粒度及び/又は分散度になるように、上記分散スラリーのpH及び/又はゼータ電位を制御する。即ち、例えば粒度及び/又は分散度を常時モニタリングし、その情報を基にpH及び/又はゼータ電位を制御することができる。
【0009】
pH及び/又はゼータ電位は、上記分散スラリーの分散状態を支配する因子の一つであり、上記分散スラリーのpH及び/又はゼータ電位は、上記分散スラリーに例えば酸・アルカリ又は分散剤を添加することにより任意に調製することができる。
そのため、pH及び/又はゼータ電位を調製することにより、分散スラリーの分散状態を任意に制御でき、例え原料ロット間、気温、及び分散装置の動力等に変動が起こっても、分散スラリーの分散状態バラツキを解消することができる。その結果、分散不良状態の分散スラリーの製造を抑制し、所望の分散状態の分散スラリーを安定して製造することができる。
【0010】
また、本発明においては、上記分散スラリーの分散状態(粒度・分散度)を常時監視することができる。そして、所望の粒度・分散度になるように、pH及び/又はゼータ電位を調製することができる。かかる調製は、コンピュータによる自動化が可能である。そのため、無人化を可能にし、上記分散スラリーの製造コストを抑えることができる。
【0011】
このように、上記第1の発明によれば、所定の粒度の分散スラリーを安定して製造できる分散スラリーの調製方法を提供することができる。
【0012】
第2の発明は、固形成分を溶媒中に分散させてなる分散スラリーを製造する製造装置において、
上記分散スラリーを貯蔵する貯蔵容器と、
該貯蔵容器内の上記分散スラリーを撹拌する容器内撹拌手段と、
上記分散スラリーに、酸及び/またはアルカリを添加する酸・アルカリ添加手段と、
上記分散スラリーに、分散剤を添加する分散剤添加手段と、
上記分散スラリーの粒度を検出する粒度検出手段及び/又は上記分散スラリーの分散度を検出する分散度検出手段と、
上記分散スラリーのpHを検出するpH検出手段及び/又は上記分散スラリーのゼータ電位を検出するゼータ電位検出手段と、
上記粒度検出手段によって検出される粒度及び/又は上記分散度検出手段によって検出される分散度と、上記pH検出手段によって検出されるpH及び/又は上記ゼータ電位検出手段によって検出されるゼータ電位とを収集し、上記粒度及び/又は上記分散度と上記pH及び/又は上記ゼータ電位とに基づいて、上記酸・アルカリ添加手段及び/又は上記分散剤添加手段の作動及び添加量を制御する演算・制御手段とを備えることを特徴とする分散スラリー製造装置にある(請求項11)。
【0013】
第2の発明の製造装置は、上記演算・制御手段を有し、該演算・制御手段が上記分散スラリーの粒度及び/又は分散度とpH及び/又はゼータ電位とに基づいて、上記酸・アルカリ添加手段及び/又は上記分散剤添加手段の作動及び添加量を制御する。そのため、上記分散スラリーのpH/及び/又はゼータ電位を調製し、上記分散スラリーの粒度及び/又は分散度を所望の範囲に制御することができる。
【0014】
そのため、上記分散スラリーの分散状態を任意に制御でき、例え原料ロット間、気温、及び分散装置の動力等に変動が生じても、上記分散スラリーの分散状態のバラツキを解消することができる。その結果、分散不良状態の分散スラリーの製造を抑制し、所望の分散状態の分散スラリーを安定して調製できる。
また、本発明の製造装置においては、コンピュータによる品質(粒度・分散度)の制御が可能になり、上記分散スラリーの製造工程における無人化が可能になる。そのため、上記分散スラリーの製造コストを削減することができる。
【0015】
このように、上記第2の発明によれば、所定の粒度の分散スラリーを安定して製造できる分散スラリーの製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本発明においては、溶媒中での上記固形成分の分散時に、上記分散スラリーの粒度及び/又は分散度を検出すると共に、上記分散スラリーのpH及びゼータ電位を検出する。
粒度及びpH(水素イオン濃度指数)は、それぞれ本出願までに公知の粒度計及びpH計を利用して測定することができる。
【0017】
分散度は、例えば近赤外透過光及び近赤外反射光を演算処理することによって測定することができる。分散度を計測する分散度計(分散度測定手段)は、溶媒中における固形成分の分散・凝集を定量計測できる分散度モニターで、例えば石英セル中を通過する分散スラリーに近赤外線を照射し、分散スラリー中に分散している固形成分の粒度(サイズ)や濃度(量)に応じて反射する光量の違いを測定し、分散度を定量(電気出力)表示することができる。分散度(%)は、分散度100%の平衡飽和に達した完全分散スラリーの電圧出力を分母にし、サンプルの電圧出力値を分子とした値を%表示(100倍)して表すことができる。
ゼータ電位は、ゼータ電位計を用いて測定することができる。ゼータ電位計の測定メカニズムにはいくつか種類がある。
例えば,外部から電場を与えて,各分散液内の固形成分(分散粒子)の表面電位に対応する泳動速度を計測し,泳動速度と電場から電気移動度を算出し,smoiuhowskiの式等を用いて電気移動度からゼータ電位を得る方法(電位泳動法)がある。
【0018】
また、ゼータ電位は電気音響法により測定することもできる。
具体的には、まず、分散スラリーのサンプルセルの両電極間に交流電圧をかけ粒子を振動させ、音波を発生させる。このとき、大きい固形成分(粒子)は小さい固形成分(粒子)に比べ遅い速度で動き電場の変化に遅れが生じる。この位相のずれにより粒度分布を測定することができる。即ち、大きなゼータ電位を持った固形成分(粒子)は小さなゼータ電位を持った固形成分(粒子)に比べ速く動き又強い音波を発生するため、音波の強弱によりからゼータ電位を得ることができる(電気音響法)。
【0019】
また、ゼータ電位は、コロイド振動電流法により測定することもできる。
具体的には、まず、分散スラリーへ超音波を照射する。その結果、固形成分(粒子)と溶媒の密度の違いにより、固形成分(粒子)が相対的に振動し、荷電粒子とその周囲のカウンターイオンの分極を生じ、コロイド振動電位(CVP)と呼ばれる電場を発生する。この電場はスラリー中に設置された電極表面の電位を変化させ、これを電流として検出することができる。この電流がコロイド振動電流(CVI)で、このコロイド振動電流(CVI)をもとにゼータ電位を算出することができる(コロイド振動電流法)。
【0020】
好ましくは、ゼータ電位は電気音響法又はコロイド振動電流法で測定することがよい。
この場合には、高濃度(約50wt%)の分散スラリーを再現性よく計測することができる。
【0021】
上記分散スラリーのpH及び上記ゼータ電位の制御には、上記分散スラリーに、酸、アルカリ、及び分散剤から選ばれる少なくとも1つを添加することが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記分散スラリーのpH及び上記ゼータ電位を容易に調製することができる。
具体的には、酸又はアルカリを添加することにより、pHを調製することができ、これに伴って、ゼータ電位も調製することができる。
また、分散剤を添加することにより、固形成分(粒子)の表面に吸着層を形成し、粒子表面の表面電荷を変化させることにより、ゼータ電位を調製することができる。
【0022】
アルカリとしては、例えばアンモニウム塩溶液等を用いることができ、酸としては例えば酢酸溶液等を用いることができる。
また、分散剤としては、例えばノニオン系、アニオン系、カチオン系等の分散剤溶液を用いることができる。
【0023】
上記溶媒中への上記固形成分の分散時には、上記分散スラリーの粘度を検出することが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記分散スラリーの粘度を所望の範囲に調製することが可能になる。そのため、上記分散スラリーの調製後に、例えば上記分散スラリーを造粒乾燥する際に、造粒粉中の粒子の分散性を向上させることができる。
【0024】
また、上記溶媒中への上記固形成分の分散時には、上記分散スラリー中に含まれる上記固形成分の濃度を検出することが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記分散スラリーを所望の濃度に調製することが可能になる。
【0025】
また、上記固形成分としては、互いに材質及び平均粒径が異なる少なくとも2種類のセラミック粒子を採用することが好ましい(請求項5、請求項20)。
この場合には、材質及び平均粒径が異なるセラミック粒子が均一に分散した分散スラリーを安定に製造することができる。
【0026】
上記固形成分としては、第1セラミック粒子と、該第1セラミック粒子よりも平均粒径が小さく、かつその平均粒径が1〜500nmである第2セラミック粒子との少なくとも2種類のセラミック粒子を採用することが好ましい(請求項6、請求項21)。
この場合には、比較的粒径の大きな第1セラミック粒子と、粒径が小さくナノ粒子サイズの第2セラミック粒子とが均一に分散した上記分散スラリーを安定に製造することができる。上記第2セラミック粒子のように500nm以下という平均粒径の小さな粒子は、分散スラリー中で凝集が起こりやすく、上記第1セラミック粒子のような他の固形成分とともに溶媒中で分散させたときに、分散状態にバラツキが起こりやすくなる傾向にある。本発明においては、かかる組合せにおいても分散状態のバラツキを軽減することができるため、この場合には、バラツキを小さくできるという本発明の作用効果がより顕著になる。より好ましくは上記第2セラミック粒子の平均粒径は300nm以下がよく、さらに好ましくは150nm以下がよい。
【0027】
上記第1セラミック粒子としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ムライト、カオリン、及びタルクから選ばれる少なくとも1種を主成分とする粒子を採用し、上記固形成分は、上記第1セラミック粒子を主成分とすることが好ましい(請求項7、請求項22)。
この場合には、上記分散スラリーのpHとゼータ電位の関係を安定化させることができ、粒度・分散度をより制御し易くなる。
【0028】
また、上記固形成分の上記溶媒への分散にあたっては、まず、上記第2セラミック粒子を溶媒中に分散させて、所望の粒度及び/又は分散度になるようにpH及び/又はゼータ電位を制御し、次いで上記第1セラミック粒子を分散させて、所望の粒度及び/又は分散度になるようにpH及び/又はゼータ電位を制御することが好ましい(請求項8)。
この場合には、所謂ナノ粒子サイズの上記第2セラミック粒子の凝集を第1セラミック粒子との混合の前に予め解消することができる。そのため、第1セラミック粒子と第2セラミック粒子との分散性も向上し、セラミック粒子の粒度・分散度のバラツキの小さな分散スラリーを調製することができる。
【0029】
上記固形成分の一つとして、樹脂材料からなるバインダを採用することが好ましく、該バインダは、上記第2セラミック粒子の上記溶媒への分散後に添加して分散させることが好ましい(請求項9、請求項23)。
また、上記固形成分の一つとして、SiO2及び/又はCaCO3からなる焼結助剤を採用することが好ましく、該焼結助剤は、上記第2セラミック粒子の上記溶媒への分散後に添加して分散させることが好ましい(請求項10、請求項24)。
これらの場合には、バインダ及び/又は焼結助剤を含有する分散スラリーを調製することができ、上記分散スラリーの成形性や焼結性を向上させることができる。また、上記のごとく、第2セラミック粒子の分散後に添加することにより、上記第2セラミック粒子の凝集を予め解消することができ、上記第1セラミック粒子及び上記第2セラミック粒子だけでなく、バインダ及び/又は焼結助剤を含む固形成分の分散性をより向上させることができる。
バインダとしては、ポリビニルアルコール、アクリル等の樹脂材料を採用することができる。
【0030】
次に、上記分散スラリーの製造装置について説明する。
上記分散スラリー製造装置は、上記貯蔵容器内の上記分散スラリーを上記貯蔵容器の外部に送出させ、再度上記貯蔵容器内に注入させる循環用配管を有することが好ましい(請求項12)。
この場合には、上記粒度検出手段、上記分散度検出手段、上記pH検出手段、及び上記ゼータ電位検出手段等を上記貯蔵容器外の上記循環用配管に配置することができる。また、この場合には、上記貯蔵容器外にも撹拌手段を配置することができる。
【0031】
上記粒度検出手段及び/又は上記分散度検出手段は、上記循環用配管内を通過する上記分散スラリーの粘度及び/又は分散度を検出するように構成されていることが好ましい(請求項13)。
また、上記pH検出手段及び/又は上記ゼータ電位検出手段は、上記循環用配管内を通過する上記分散スラリーのpH及び/又はゼータ電位を検出するように構成されていることが好ましい(請求項14)。
これらの場合には、上記循環用配管を通過する流動状態の分散スラリーを計測することができるので、より正確な計測値を得ることができる。特に、分散度計の計測部である石英セルにおいては、気泡による影響をできるだけ小さくするため、大流量の分散スラリーを通過させることが望ましい。
【0032】
上記循環用配管には、上記貯蔵容器から送出された上記分散スラリーを撹拌する容器外撹拌手段が設けられていることが好ましい(請求項15)。
この場合には、上記分散スラリーの粒度をより小さくし、分散度をより高くすることができる。即ち、より分散状態の優れた上記分散スラリーを製造することができる。
【0033】
上記分散スラリー製造装置は、上記分散スラリーの粘度を検出する粘度検出手段を備えていることが好ましい(請求項16)。
この場合には、上記分散スラリーの粘度を測定することができ、その粘度を所望の範囲に調製することが可能になる。そのため、上記分散スラリーの調製後の次工程において、例えば上記分散スラリーを造粒乾燥する際に、そのスプレー造粒が容易になる。
【0034】
上記分散スラリー製造装置は、上記分散スラリー中に含まれる上記固形成分の濃度を検出する濃度検出手段を備えていることが好ましい(請求項17)。
この場合には、上記分散スラリー中に含まれる上記固形成分の濃度を検出することができ、その濃度を所望の範囲に調製することが可能になる。
【0035】
上記酸・アルカリ添加手段は、上記貯蔵容器内の上記分散スラリーに、酸及び/またはアルカリを添加するように構成されていることが好ましい(請求項18)。
この場合には、上記貯蔵容器内の分散スラリーを撹拌する容器内撹拌手段により、上記分散スラリーに添加された酸及び/又はアルカリを均一に混合することができる。そのため、バラツキなく迅速に上記分散スラリーのpH及び/又はゼータ電位を調製することができる。
【0036】
上記分散剤添加手段は、上記貯蔵容器内の上記分散スラリーに、分散剤を添加するように構成されていることが好ましい(請求項19)。
この場合には、上記貯蔵容器内の分散スラリーを撹拌する容器内撹拌手段により、上記分散スラリーに添加された分散剤を均一に混合することができる。そのため、バラツキなく迅速に上記分散スラリーのゼータ電位及び/又はpHを調製することができる。
【0037】
また、上記分散スラリー製造装置は、上記貯蔵容器内に上記固形成分を所定量添加する供給手段を有していることが好ましい。
この場合には、上記貯蔵容器内に、所定量の固形成分を供給することができる。
上記セラミック粒子供給手段は、上記セラミック粒子の重量を計測する計測手段と、計測された上記セラミック粒子を上記貯蔵容器内に供給する供給手段とにより構成することができる。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
次に、本発明の実施例につき、図1を用いて説明する。
本例においては、固形成分を溶媒中に分散させて分散スラリーを調製する。本例においては、溶媒中への固形成分の分散時に、分散スラリーの粒度を検出すると共に、分散スラリーのpH及びゼータ電位を検出し、分散スラリーが所望の粒度になるように、分散スラリーのpH及び/又はゼータ電位を制御する。
【0039】
本例においては、図1に示すごとく、貯蔵容器2、容器内撹拌手段21、酸・アルカリ添加手段22、分散剤添加手段23、粒度検出手段4、pH検出手段5、ゼータ電位検出手段6、及び演算・制御手段7を備えた分散スラリー製造装置1を用いて分散スラリーを製造する。
貯蔵容器2は、分散スラリー2を貯蔵し、溶媒中に固形成分を分散させるための容器である。この貯蔵容器2内には、分散スラリー8を撹拌する容器内撹拌手段21が設けられており、この容器内撹拌手段21は、撹拌翼を備えた攪拌機からなる。
【0040】
また、貯蔵容器2には、酸・アルカリ添加手段22と分散剤添加手段23とが設けられており、これらはそれぞれ貯蔵容器2内の分散スラリー8に、酸・アルカリ及び分散剤を所定量添加することができる。また、貯蔵容器2内には、分散スラリー8の粘度を検出する粘度計(図示略)及び粒子濃度を検出する濃度計(図示略)が設けられている。
【0041】
そして、貯蔵容器2には、循環用配管25が連結されており、輸送ポンプ29により、貯蔵容器内の分散スラリー8が循環用配管25内に送り出される。循環用配管25内に送出された分散スラリー8は、矢印aの方向(図1参照)に輸送され、容器外撹拌手段3、粒度検出手段4、ゼータ電位検出手段6、及びpH検出手段5を通過して、再び貯蔵容器2内に送り込まれる。
【0042】
容器外撹拌手段3は、高速ロータミキサであり、混合室と、混合室内に設けられた少なくとも1個以上のロータとを備えている。ロータは、周速20m/秒以上で高速旋回するため、混合室内では、分散スラリーの高速旋回流が形成される。そして、ロータに形成された0.3〜1mm程度の間隙を分散スラリーが通過する際に衝撃波が発生し、この衝撃波により、分散スラリー8中の固形成分の凝集体が破壊され、固形成分の微粒子化を図ることができる。
【0043】
容器外撹拌手段3を通過した分散スラリー8は、粒度検出手段(粒度計)4、及びゼータ電位検出手段(ゼータ電位計)6、及びpH検出手段(pHメータ)5において、粒度、ゼータ電位、及びpHが測定される。これらの測定されたデータは、各検出手段4、5、6から演算・制御手段7に送信される。
【0044】
演算・制御手段7は、粒度、ゼータ電位、pH等の各データを収集及び保存し、内蔵された演算手段(コンピュータ)により各データを解析する。演算・制御手段7は、解析結果を基に、酸・アルカリ添加手段22、分散剤添加手段23に制御値を与える。これにより、貯蔵容器2内の分散スラリー8に酸・アルカリ添加手段22から酸又はアルカリが添加されたり、分散剤添加手段23から分散剤が添加される。そして、演算・制御手段7は、分散スラリーの粒度が所望の値に到達したときに、スラリーの調製が完了した内容のデータを送出し、例えばモニタ(図示略)などに表示させることができる。
また、演算・制御手段7は、粘度計及び濃度計から粘度及び濃度のデータを収集し、粘度及び濃度を制御することも可能である。
【0045】
以下、本例の製造装置を用いた分散スラリーの調製方法につき、図1を用いて詳細に説明する。
本例においては、固形成分として、純度99.9%以上のアルミナからなり、平均粒径0.45μmの第1セラミック粒子(アルミナ粒子)の粉末と、Y23からなり、平均粒径100nmの第2セラミック粒子(イットリア粒子)の粉末を準備した。平均粒径は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy;TEM)で観察した100個の粒子について算術平均した平均粒径である。第2セラミック粒子の最大径は1μm未満であった。
【0046】
本例においては、まず、第2セラミック粒子を水に分散させて第2セラミック粒子分散スラリーを調製し、これに第1セラミック粒子等を分散させて分散スラリーを調製する。
即ち、図1に示すごとく、まず、貯蔵容器2内の水100重量部に、第2セラミック粒子0.2重量部を添加し、容器内撹拌手段21により分散させた。これにより、第2セラミック粒子が水に分散された第2セラミック粒子分散スラリー81を得た。
【0047】
第2セラミック粒子分散スラリー81は、輸送ポンプ29により、貯蔵容器2から循環用配管25に送出され、容器外撹拌手段3において、さらに混合・分散される。容器外撹拌手段3を通過した分散スラリー8は、粘度検出手段4、ゼータ電位検出手段6、及びpH検出手段5を順に通過して、再度貯蔵容器内2に送られる。本例においては、pH検出手段5において検出されるpHが約11となるように、演算制御手段7による制御を行った。これにより、平均粒径100nmというナノ粒子レベルの第2セラミック粒子の粒子同士が互いに反発して凝集しないように、粒子のゼータ電位を制御することができる。なお、ゼータ電位は、分散液のpHを選択することにより任意に選定できる。本例においては、ゼータ電位を−50mV以下に制御した。
【0048】
次に、貯蔵容器2内の第2セラミック粒子分散スラリー81に、第1セラミック粒子と焼結助剤との混合粉100重量部(このうち焼結助剤は2重量部)と、適量のバインダとを添加し、60分間撹拌混合した。焼結助剤としては、炭酸カルシウム(CaCO3)及び二酸化珪素(SiO2)を用いた。バインダとしては、ポリビニルアルコールを用いた。
【0049】
第1セラミック粒子、第2セラミック粒子、焼結助剤、及びバインダが分散された分散スラリー8は、上述の第2セラミック粒子分散スラリー81の場合と同様に、貯蔵容器2から循環用配管25に送出され、循環用配管25に設けられた容器外撹拌手段3でさらに分散される。容器外撹拌手段3において、分散スラリー8に発生する衝撃波により、第2セラミック粒子と焼結助剤と凝集体が破壊されてさらに微粒化を図ることができる。その後分散スラリーは、粒度検出手段4、ゼータ電位検出手段6、pH検出手段5を通って再度貯蔵容器2内に送られる。分散スラリー製造装置1においては、貯蔵容器2から容器外撹拌手段3、粒度検出手段4、ゼータ電位検出手段6、及びpH検出手段5を通過して再度貯蔵容器2へと戻る循環が繰り返される。
上述の分散スラリー製造装置1を用いた分散を約30分間行った結果、第1セラミック粒子、第2セラミック粒子等の固形成分が均一に分散された粒度0.48μmの分散スラリーを得た。
【0050】
なお、演算・制御手段7において収集・保存された分散スラリーのpHとゼータ電位と粒度との関係を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
このようにして得られた分散スラリーを造粒スプレー乾燥により造粒乾燥させて、造粒粉を得た。この造粒粉を所望の碍子形状に成形し、成形体を得た。次いで、成形体を焼成し、アルミナを主成分とする複合材料焼結体を得た。
この複合材料焼結体の耐電圧を測定したところ、45kV/mmという優れた耐電圧を示した。
【0053】
(実施例2)
本例は、実施例1とは異なる平均粒径の第1セラミック粒子を用い、制御するpH値を変更して分散スラリーを調製する例である。
具体的には、本例においては、第1セラミック粒子として、純度99.9%以上のアルミナからなり、平均粒径2.5μmのアルミナ粒子を用い、pHを約11.2、ゼータ電位を−50mV以下に制御して、その他は上記実施例1と同様にして分散スラリーを調製した。
その結果、第1セラミック粒子、第2セラミック粒子等の固形成分が均一に分散された粒度2.8μmの分散スラリーを得た。
本例における分散スラリーのpHとゼータ電位と粒度との関係を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
次に、実施例1と同様に、得られた分散スラリーを造粒乾燥させて、成形し、その後、焼成することにより、アルミナを主成分とする複合材料焼結体を得た。
この複合材料焼結体の耐電圧を測定したところ、45kV/mmという優れた耐電圧を示した。
【0056】
(実施例3)
本例は、実施例1とは異なる焼結助剤を用い、制御するpH値を変更して分散スラリーを調製する例である。
具体的には、本例においては、焼結助剤としてジルコン(ZrSiO4)を用い、pHを約11.1、ゼータ電位を−50mV以下に制御して、その他は上記実施例1と同様にして分散スラリーを調製した。
その結果、第1セラミック粒子、第2セラミック粒子等の固形成分が均一に分散された粒度0.47μmの分散スラリーを得た。
本例における分散スラリーのpHとゼータ電位と粒度との関係を表3に示す。
【0057】
【表3】

【0058】
次に、実施例1と同様に、得られた分散スラリーを造粒乾燥させて、成形し、その後、焼成することにより、アルミナを主成分とする複合材料焼結体を得た。
この複合材料焼結体の耐電圧を測定したところ、45kV/mmという優れた耐電圧を示した。
【0059】
(実施例4)
本例は、分散スラリーの分散度を検出する分散度検出手段を備えた製造装置を用いて、分散スラリーを調製する例である。
本例においては、粒度検出手段の代わりに、分散度検出手段45を備えた分散スラリー製造装置を用いて分散スラリーの調製を行った(図1参照)。本例の分散スラリー製造装置1は、粒度検出手段の代わりに分散度検出手段45を備えている点を除いては、実施例1と同様の構成を有している。
【0060】
この分散スラリー製造装置1を用いて、その他は実施例1と同様にして、分散スラリーを調製した。
即ち、まず、イットリア粒子からなる第2セラミック粒子(平均粒径100nm)を水に分散させて第2セラミック粒子分散スラリーを調製した。
図1に示すごとく、実施例1と同様に、第2セラミック粒子分散スラリー81は、輸送ポンプ29により、貯蔵容器2から循環用配管25に送出され、容器外撹拌手段3において、さらに混合・分散される。そして、容器外撹拌手段3を通過した分散スラリー8は、分散度検出手段45、ゼータ電位検出手段6、pH検出手段5を通過して、再度貯蔵容器内2に送られる。この循環が連続的に繰り返される。
本例においては、分散度検出手段45において検出される分散度が99%になるように、pH検出手段5において検出されるpHを演算制御手段7により制御した。このときのpH値は約11.1であった。ゼータ電位は−50mV以下に制御した。
【0061】
次いで、実施例1と同様に、貯蔵容器2内の第2セラミック粒子分散スラリー81に、アルミナ粒子よりなる第1セラミック粒子(平均粒径0.45μm)と焼結助剤(CaCO3、SiO2)との混合粉と、バインダ(ポリビニルアルコール)とを添加し、60分間撹拌混合した。第1セラミック粒子、第2セラミック粒子、焼結助剤、及びバインダが分散された分散スラリー8は、上述の第2セラミック粒子分散スラリーの場合と同様に、貯蔵容器2から循環用配管25に送出され、循環用配管25に設けられた容器外撹拌手段3でさらに分散される。その後分散スラリー8は、分散度検出手段4、ゼータ電位検出手段6、pH検出手段5を通って再度貯蔵容器2内に送られる。この循環が連続的に繰り返される。
その後、上述の分散スラリー製造装置を用いた分散を約30分間行った結果、第1セラミック粒子、第2セラミック粒子等の固形成分が均一に分散された粒度0.48μmの分散スラリーを得た。
本例において、演算・制御手段において収集・保存された分散スラリーのpHとゼータ電位と分散度との関係を表4に示す。
【0062】
【表4】

【0063】
次に、実施例1と同様に、得られた分散スラリーを造粒乾燥させて、成形し、その後、焼成することにより、アルミナを主成分とする複合材料焼結体を得た。
この複合材料焼結体の耐電圧を測定したところ、45kV/mmという優れた耐電圧を示した。
【0064】
(実施例5)
本例は、実施例4と同様の分散スラリー製造装置を用い、第1セラミック粒子として平均粒径2.5μmのアルミナ粒子を用いて分散スラリーを調製する例である。
具体的には、本例においては、実施例4と同様の分散度検出手段を備えた分散スラリー製造装置を用いた。そして、第1セラミック粒子として、純度99.9%以上のアルミナからなる平均粒径2.5μmのアルミナ粒子を用い、分散度が99%になるように、pHを約11.1、ゼータ電位を−53mV以下に制御した。その他は上記実施例1と同様にして分散スラリーを調製した。
その結果、第1セラミック粒子、第2セラミック粒子等の固形成分が均一に分散された粒度2.8μmの分散スラリーを得た。
本例における分散スラリーのpHとゼータ電位と分散度との関係を表5に示す。
【0065】
【表5】

【0066】
次に、実施例1と同様に、得られた分散スラリーを造粒乾燥させて、成形し、その後、焼成することにより、アルミナを主成分とする複合材料焼結体を得た。
この複合材料焼結体の耐電圧を測定したところ、45kV/mmという優れた耐電圧を示した。
【0067】
(実施例6)
本例は、実施例4と同様の分散スラリー製造装置を用い、焼結助剤としてジルコン(ZrSiO4)を用いて分散スラリーを調製する例である。
具体的には、本例においては、実施例4と同様の分散度検出手段を備えた分散スラリー製造装置を用いた。そして、焼結助剤として、ジルコン(ZrSiO4)を用い、分散度が99%になるように、pHを約11.1、ゼータ電位を−50mV以下に制御した。その他は上記実施例1と同様にして分散スラリーを調製した。
その結果、第1セラミック粒子、第2セラミック粒子等の固形成分が均一に分散された粒度0.47μmの分散スラリーを得た。
本例における分散スラリーのpHとゼータ電位と分散度との関係を表6に示す。
【0068】
【表6】

【0069】
次に、実施例1と同様に、得られた分散スラリーを造粒乾燥させて、成形し、その後、焼成することにより、アルミナを主成分とする複合材料焼結体を得た。
この複合材料焼結体の耐電圧を測定したところ、48kV/mmという優れた耐電圧を示した。
【0070】
(実施例1〜6についての検討)
実施例1〜6においては、pH及びゼータ電位を調製することにより、粒度又は分散度の制御を行った。表1〜6より知られるごとく、pH及びゼータ電位と粒度及び分散度には相関性があり、pH及びゼータ電位を調製することにより、粒度及び分散度を制御することができる。
即ち、製造装置1に設けられたインラインの粒度検出手段4又は分散度検出手段45により、分散スラリー8の粒度及び分散度を常時モニタリングし、pH検出手段5及びゼータ電位検出手段6によって検出されるpH及びゼータ電位を演算・制御手段7により調製し、所望の粒度及び分散度の分散スラリー8を製造することができる(図1参照)。実施例1〜6においては、設定粒度に対して±0.3μm以内という非常にバラツキの少ない分散スラリーを安定して製造することができた。
【0071】
(比較例)
本例は、pH値及びゼータ電位での制御を行わずに、分散時の時間調製によって分散スラリーを作製する例である。
本例においては、実施例1と同様の装置及び実施例1と同様の第1セラミック粒子、第2セラミック粒子、焼結助剤、及びバインダを用いてセラミックスラリーを作製した。このとき、演算・制御手段によるpH、ゼータ電位の制御を行わずにセラミックスラリーを作製した。
【0072】
その結果、分散スラリーの粒度は、30分では安定せず、150〜200分で安定したが、目標粒度に対して±0.8μm程度のバラツキが観察された。
【0073】
また、実施例1と同様に、得られた分散スラリーを造粒乾燥させて、成形し、その後、焼成することにより、アルミナを主成分とする複合材料焼結体を作製し、その耐電圧を測定したところ、31kV/mmであり、実施例1に比べて耐電圧が不十分であった。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施例にかかる、分散スラリー製造装置の構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0075】
1 分散スラリー製造装置
2 貯蔵容器
21 容器内撹拌手段
22 酸・アルカリ添加手段
23 分散剤添加手段
25 循環用配管
3 容器外撹拌手段
4 粒度検出手段
45 分散度検出手段
5 pH検出手段
6 ゼータ電位検出手段
7 演算・制御手段
8 分散スラリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形成分を溶媒に分散させて分散スラリーを調製する方法において、
上記溶媒中への上記固形成分の分散時に、上記分散スラリーの粒度及び/又は分散度を検出すると共に、上記分散スラリーのpH及びゼータ電位を検出し、
上記分散スラリーが所望の粒度及び/又は分散度になるように、上記分散スラリーのpH及び/又はゼータ電位を制御することを特徴とする分散スラリーの調製方法。
【請求項2】
請求項1において、上記分散スラリーのpH及び上記ゼータ電位の制御には、上記分散スラリーに、酸、アルカリ、及び分散剤から選ばれる少なくとも1つを添加することを特徴とする分散スラリーの調製方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記溶媒中への上記固形成分の分散時には、上記分散スラリーの粘度を検出することを特徴とする分散スラリーの調製方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記溶媒中への上記固形成分の分散時には、上記分散スラリー中に含まれる上記固形成分の濃度を検出することを特徴とする分散スラリーの調製方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記固形成分としては、互いに材質及び平均粒径が異なる少なくとも2種類のセラミック粒子を採用することを特徴とする分散スラリーの調製方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記固形成分としては、第1セラミック粒子と、該第1セラミック粒子よりも平均粒径が小さく、かつその平均粒径が1〜500nmである第2セラミック粒子との少なくとも2種類のセラミック粒子を採用することを特徴とする分散スラリーの調製方法。
【請求項7】
請求項6において、上記第1セラミック粒子としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ムライト、カオリン、及びタルクから選ばれる少なくとも1種を主成分とする粒子を採用し、上記固形成分は、上記第1セラミック粒子を主成分とすることを特徴とする分散スラリーの調製方法。
【請求項8】
請求項6又は7において、上記固形成分の上記溶媒への分散にあたっては、まず、上記第2セラミック粒子を溶媒中に分散させて、所望の粒度及び/又は分散度になるようにpH及び/又はゼータ電位を制御し、次いで上記第1セラミック粒子を分散させて、所望の粒度及び/又は分散度になるようにpH及び/又はゼータ電位を制御することを特徴とする分散スラリーの調製方法。
【請求項9】
請求項8において、上記固形成分の一つとして、樹脂材料からなるバインダを採用し、該バインダは、上記第2セラミック粒子の上記溶媒への分散後に添加して分散させることを特徴とする分散スラリーの調製方法。
【請求項10】
請求項8又は9において、上記固形成分の一つとして、SiO2及び/又はCaCO3からなる焼結助剤を採用し、該焼結助剤は、上記第2セラミック粒子の上記溶媒への分散後に添加して分散させることを特徴とする分散スラリーの調製方法。
【請求項11】
固形成分を溶媒中に分散させてなる分散スラリーを製造する製造装置において、
上記分散スラリーを貯蔵する貯蔵容器と、
該貯蔵容器内の上記分散スラリーを撹拌する容器内撹拌手段と、
上記分散スラリーに、酸及び/またはアルカリを添加する酸・アルカリ添加手段と、
上記分散スラリーに、分散剤を添加する分散剤添加手段と、
上記分散スラリーの粒度を検出する粒度検出手段及び/又は上記分散スラリーの分散度を検出する分散度検出手段と、
上記分散スラリーのpHを検出するpH検出手段及び/又は上記分散スラリーのゼータ電位を検出するゼータ電位検出手段と、
上記粒度検出手段によって検出される粒度及び/又は上記分散度検出手段によって検出される分散度と、上記pH検出手段によって検出されるpH及び/又は上記ゼータ電位検出手段によって検出されるゼータ電位とを収集し、上記粒度及び/又は上記分散度と上記pH及び/又は上記ゼータ電位とに基づいて、上記酸・アルカリ添加手段及び/又は上記分散剤添加手段の作動及び添加量を制御する演算・制御手段とを備えることを特徴とする分散スラリー製造装置。
【請求項12】
請求項11において、上記分散スラリー製造装置は、上記貯蔵容器内の上記分散スラリーを上記貯蔵容器の外部に送出させ、再度上記貯蔵容器内に注入させる循環用配管を有することを特徴とする分散スラリー製造装置。
【請求項13】
請求項11又は12において、上記粒度検出手段及び/又は上記分散度検出手段は、上記循環用配管内を通過する上記分散スラリーの粘度及び/又は分散度を検出するように構成されていることを特徴とする分散スラリー製造装置。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項において、上記pH検出手段及び/又は上記ゼータ電位検出手段は、上記循環用配管内を通過する上記分散スラリーのpH及び/又はゼータ電位を検出するように構成されていることを特徴とする分散スラリー製造装置。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか一項において、上記循環用配管には、上記貯蔵容器から送出された上記分散スラリーを撹拌する容器外撹拌手段が設けられていることを特徴とする分散スラリー製造装置。
【請求項16】
請求項11〜15のいずれか一項において、上記分散スラリー製造装置は、上記分散スラリーの粘度を検出する粘度検出手段を備えていることを特徴とする分散スラリー製造装置。
【請求項17】
請求項11〜16のいずれか一項において、上記分散スラリー製造装置は、上記分散スラリー中に含まれる上記固形成分の濃度を検出する濃度検出手段を備えていることを特徴とする分散スラリー製造装置。
【請求項18】
請求項11〜17のいずれか一項において、上記酸・アルカリ添加手段は、上記貯蔵容器内の上記分散スラリーに、酸及び/またはアルカリを添加するように構成されていることを特徴とする分散スラリー製造装置。
【請求項19】
請求項11〜18のいずれか一項において、上記分散剤添加手段は、上記貯蔵容器内の上記分散スラリーに、分散剤を添加するように構成されていることを特徴とする分散スラリー製造装置。
【請求項20】
請求項11〜19のいずれか一項において、互いに材質及び平均粒径が異なる少なくとも2種類のセラミック粒子を採用することを特徴とする分散スラリー製造装置。
【請求項21】
請求項11〜20のいずれか一項において、上記固形成分としては、第1セラミック粒子と、該第1セラミック粒子よりも平均粒径が小さく、かつその平均粒径が1〜500nmである第2セラミック粒子との少なくとも2種類のセラミック粒子を採用することを特徴とする分散スラリー製造装置。
【請求項22】
請求項21において、上記第1セラミック粒子としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ムライト、カオリン、及びタルクから選ばれる少なくとも1種を主成分とする粒子を採用し、上記固形成分は、上記第1セラミック粒子を主成分とすることを特徴とする分散スラリー製造装置。
【請求項23】
請求項21又は22において、上記固形成分の一つとして、樹脂材料からなるバインダを採用することを特徴とする分散スラリー製造装置。
【請求項24】
請求項21〜23のいずれか一項において、上記固形成分の一つとして、SiO2及び/又はCaCO3からなる焼結助剤を採用することを特徴とする分散スラリー製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−37146(P2010−37146A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202103(P2008−202103)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】