説明

分散処理システム、車載端末、及び分散処理システムにおける管理ノード決定方法

【課題】 車載端末から構成される分散処理システムにおいて、管理ノードを適切に決定する技術を提供する。
【解決手段】 無線通信によって互いに接続され車群を形成する複数の車載端末から構成される分散処理システムに、車載端末のそれぞれから予定走行経路情報を取得する走行経路取得手段と、取得した予定走行経路情報に基づいて、車群内の車載端末のうちから、車群が走行中の道路を最も遠くまで走行する車載端末を管理ノードとして機能させる管理ノード決定手段とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散処理システムに関し、特に、分散処理システムにおける管理ノードを決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分散処理システムの一形態としてグリッドコンピューティングシステムが知られている。グリッドコンピューティングシステムにおいては、ネットワークを介して複数の情報処理装置を接続し、これらの各情報処理装置に並列して処理を行わせることで、一台一台の情報処理装置の処理能力は低くても、全体として高速な処理が可能となる。あるいは、CPU使用率が低い情報処理装置に処理を割り当てることにより、利用されていない情報処理装置を活用することが可能となる。
【0003】
このようなグリッドコンピューティングシステムにおいては、演算資源として利用可能な情報処理装置に関する情報や、これら情報処理装置の稼働状況などを管理し、適切な情報処理装置に処理を割り当てる管理ノードが必要である。
【0004】
また、このようなグリッドコンピューティングシステムを車載端末で構成し、道路の合流地点における適切な車速を予測するシステムの研究がなされている(非特許文献1)。
【0005】
非特許文献1に記載のグリッドコンピューティングシステムでは、アドホック無線通信によって車載端末がネットワークを形成している。アドホック無線通信とは、アクセスポイントなどのインフラを利用せずに車載端末(無線端末)同士が直接接続する通信方式である。
【非特許文献1】Joey Anda 他4名、"VGrid: Vehicular Ad Hoc Networking and Computing Grid for Intelligent Traffic Control", IEEE Vehicular Technology Conference, Spring 2005, インターネット<http://www.ece.ucdavis.edu/~chuah/paper/2005/vtc05-vgrid.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように車車間アドホック通信を用いて車載端末でグリッドコンピューティングシステムを構築する場合には、以下のような問題が生じるおそれがある。
【0007】
すなわち、グリッドコンピューティングシステム(分散処理システム)では、演算資源を管理し処理を割り当てる計算ノードを特定する管理ノードが必要であるが、このような管理ノードがネットワーク(車群)から突然離脱してしまう可能性がある(逆に、大部分の計算ノードが、管理ノードの通信可能範囲から離脱するともいえる)。管理ノードが車群から離脱すると、新たに管理ノードを作成するために演算資源についての情報を、改めて収集し直す必要がある。また、それまでに他の車載端末に割り当てていた処理についての情報も失われてしまう。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、車載端末から構成される分散処理システムにおいて、管理ノードを適切に決定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明では、以下の手段又は処理によって分散処理システムにおいて管理ノードの決定を行う。
【0010】
本発明に係る分散処理システムは、無線通信によって互いに接続され車群を形成する複数の車載端末から構成される。なお、車群とは、無線通信によって、直接あるいは他の無線端末を介して通信可能な車両(車載端末)の集まりをいう。また、車載端末は車両に搭載されているので、「車載端末を搭載した車両が走行する」などの意味で「車載端末が走行する」という表現を用いる。
【0011】
本発明に係る分散処理システムを構成する車載端末は、計算ノードとして機能する複数の車載端末と、管理ノードとして機能する車載端末とを含む。ここで、管理ノードは、計算ノードが有する演算資源に関する情報である資源情報を記憶し、処理を実行させる計算ノードを、資源情報に基づいて複数の計算ノードの内から特定し、特定した計算ノードに処理を実行させる。すなわち、本発明に係る分散処理システムは、管理ノードが処理の実行依頼を受け付け、受け付けた処理を実行させる計算ノードを、資源情報に基づいて特定する分散処理システムである。なお、資源情報は、例えば、各車載端末が有する、CPUの能力、CPUの稼働状況、空きメモリ容量、通信速度などである。
【0012】
本発明に係る分散処理システムは、走行経路取得手段と管理ノード決定手段を有する。本発明における走行経路取得手段は、車載端末のそれぞれから、その車載端末が今後走行する経路に関する情報である予定走行経路情報を取得する。そして、管理ノード決定手段が、取得した予定走行経路情報に基づいて、システム内の複数の車載端末のうちから、車群が走行中の道路を最も遠くまで走行する車載端末を管理ノードとして機能させる。
【0013】
このように、本発明に係る分散処理システムでは、車群内の車載端末が走行予定の経路に関する情報を取得し、車群が走行している道路を最も遠くまで走行する車載端末を管理ノードとして選択する。こうすることで、本発明に係る分散処理システムでは、最も長い間車群に留まると推測される車載端末を管理ノードとすることができ、管理ノードとして機能している車載端末が車群から突然離脱する可能性を最小限にできる。したがって、本発明における分散処理システムでは、長時間にわたって安定的な処理を実現することが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る分散処理システムは、新たな車載端末が分散処理システムに参加する場合に、以下のような方法で管理ノードとして機能する車載端末を変更することも好適である。
【0015】
すなわち、走行経路取得手段は、新たに参加する車載端末から予定走行経路情報を取得する。そして、管理ノード決定手段は、新たに参加する車載端末が、車群が走行中の道路を管理ノードよりも遠くまで走行する場合には、新たな車載端末に資源情報を送信するとともに、この新たな車載端末を新たな管理ノードとして機能させる。
【0016】
このように、現在の管理ノードよりも、車群に長く留まると推測される車載端末が本発明に係る分散処理システムに参加した場合には、この車載端末を新たな管理ノードとすることで、より適切な車載端末を管理ノードとすることができる。
【0017】
管理ノードを変更する判断は、上記のように新たな車載端末が参加するときのみではなく、例えば、車群内の車載端末が予定走行経路を変更した場合に行うことも好適である。予定走行経路を変更した車載端末が、最も車群に長く留まるようになる場合もあるからである。
【0018】
また、上述した予定走行経路情報は、入力された目的地情報に基づいて取得された、この目的地までの経路であることが好適である。このような経路は、ナビゲーション装置から取得することができる。これ以外にも、車載端末が走行する経路を推測できる情報であればどのような情報を予定走行経路情報として用いてもかまわない。例えば、走行経路が定まったバスなどの車両であれば、その走行経路を用いることができる。また、車両に搭載されている荷物に行き先情報を含むRF−ID(Radio Frequency Identification)を添付し、このRF−IDから取得される行き先情報を予定走行経路情報として利用しても良い。また、迎車に向かうタクシーの行き先指示情報を予定走行経路情報として利用しても良い。
【0019】
なお、本発明は、上記手段の少なくとも一部を有する車載端末として捉えることができる。
【0020】
例えば、本発明の一態様としての車載端末は、無線通信によって互いに接続される他の車載端末とともに分散処理システムを構成する車載端末であって、前記他の車載端末から予定走行経路情報を取得する走行経路取得手段と、取得した予定走行経路情報と自端末の予定走行経路情報に基づいて、自端末と前記他の車載端末を含む複数の車載端末のうちから、自端末が走行中の道路を最も遠くまで走行する車載端末を選択し、該選択した車載端末を管理ノードとして機能させ、他の車載端末を計算ノードとして機能させる管理ノード決定手段とを有する。
【0021】
また、本発明の一態様としての車載端末は、管理ノードとして機能しているときに、走行経路取得手段は、前記分散処理システムに新たに参加する車載端末から予定走行経路情報を取得し、前記管理ノード決定手段は、自端末が走行中の道路を前記新たに参加する車載端末が自端末よりも遠くまで走行する場合には、前記新たに参加する車載端末に計算ノードが有する演算資源に関する情報(資源情報)を送信するとともに、該新たに参加する車載端末を新たな管理ノードとして機能させる。
【0022】
また、本発明の一態様としての車載端末は、入力された目的地情報に基づいて、前記目的地までの経路を取得する経路探索手段を有し、前記予定走行経路情報は、前記目的地までの前記経路であることが好適である。
【0023】
さらに、本発明は、上記処理の少なくとも一部を有する、分散処理システムにおける管理ノード決定方法として捉えることもできる。
【0024】
本発明の一態様としての、分散処理システムにおける管理ノード決定方法は、無線通信によって互いに接続され車群を形成する複数の車載端末から構成され、計算ノードとして機能する複数の車載端末と、管理ノードとして機能する車載端末とを含む分散処理システムにおける管理ノード決定方法であって、前記車載端末のそれぞれから、予定走行経路情報を取得し、取得した走行経路情報に基づいて、前記車載端末のうちから、前記車群が走行中の道路を最も遠くまで走行する車載端末を前記管理ノードとして機能させる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、車載端末から構成される分散処理システムにおいて、管理ノードを適切に決定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0027】
<システム概要>
本実施形態は、複数の車両が無線通信によって形成したアドホック無線ネットワーク(自律分散協調ネットワーク)内におけるグリッドコンピューティングシステム(分散処理システム)である。なお、以下では、アドホック無線通信ネットワークによって接続された車両(車載端末)の集まりのことを、「車群」といい、車群によって構成されるグリッドコンピューティングシステムを「車群グリッド」という。
【0028】
本車群グリッドでは、車群内の1台又は複数台の車両が管理ノード及び計算ノードとして機能し、他の車両が計算ノードとして機能する。また、車群内のいずれの車両も、本車群グリッドに対して処理の実行を依頼する、処理依頼ノードとしても機能する。
【0029】
管理ノードは、計算ノードが有する演算資源に関する情報や、稼働状況などを把握し、処理依頼ノードから依頼された処理を適切な計算ノードに割り当てる。計算ノードは、管理ノードから割り当てられた処理を実行して、処理結果を管理ノードへ送る。このようにして、本車群グリッドは、処理依頼ノードから割り当てられた処理を、車群内で利用可能な計算ノードに割り当てることで、効率的な処理を実行することが可能である。
【0030】
<車載端末の構成>
図1は、車両1に搭載される車載端末2の構成を示す図である。車載端末2は、CPU11、RAMなどの主記憶装置12、ハードディスクなどの補助記憶装置13を有する。また、車載端末2は、車両内のナビゲーション装置14や通信部15と接続されており、車両1の目的地までの経路を取得したり、他の車両や路側機などと通信を行うことが可能である。
【0031】
CPU11は、補助記憶装置13に格納されたプログラムを主記憶装置12に読み出して、そのプログラムを実行する。
【0032】
ナビゲーション装置14は、ユーザから入力された目的地までの経路を探索する。CPU11は、ナビゲーション装置14から、目的地及び目的地までの経路を取得することができる。
【0033】
通信部15は、他の車載端末と無線通信を行う。他の車載端末との間の無線通信の方式は、IEEE802.11x等の無線LANや、DSRC(Dedicated Short Range Communication)など、どのような方式であってもかまわない。
【0034】
次に、図2及び図3を用いて、車載端末の機能について説明する。
【0035】
図2は、車載端末2の有するグリッドコンピューティングに係る機能に関する機能ブロック図である。図2においては、処理依頼ノード兼計算ノードとして機能する車載端末2a、管理ノード兼計算ノードとして機能する車載端末2b、及び計算ノードとして機能する車載端末2cの機能ブロックが示されている。しかしながら、本実施形態において各車載端末2は、図2に示される各機能を全て備えており、処理依頼ノード、管理ノード、及び計算ノードのいずれとしても機能できる。図2では、説明のために、各車載端末の役割に応じて必要とされる機能のみが描かれている。
【0036】
資源管理部22は、計算ノードとして機能する車載端末の演算資源に関する情報を、資源提供部23を介して取得する。資源管理部22が取得する演算資源に関する情報は、例えば、各車載端末のCPUに関する情報、CPUの稼働状況、空きメモリ容量、通信速度などである。資源管理部22が取得したこれらの資源情報は、資源情報記憶部26に格納される。
【0037】
また、資源管理部22は、後述するスケジューラ21からの指示に従って、演算ジョブを指示された計算ノードの資源提供部に送信する。
【0038】
資源提供部23は、資源管理部22から与えられた演算ジョブを実行する。演算ジョブの実行は、アプリケーション24を計算ノードのCPUが実行することによって行われる。そして、実行結果を資源管理部22に対して送信する。また、資源提供部23は、その車載端末が有する演算資源に関する情報を資源管理部22に通知する。
【0039】
車載端末(処理依頼ノード)2aの処理依頼部25は、車載端末(管理ノード)2bのスケジューラ21に対して実行すべき処理を依頼する。処理の依頼を受けたスケジューラ21は、可能であれば、その処理を複数の演算ジョブに分割する。1つの演算ジョブは、1台の計算ノードで独立して計算可能であり、依頼された処理を複数の演算ジョブに分割できる場合には、分割することによって並列処理が可能となる。
【0040】
また、スケジューラ21は、資源情報記憶部26に格納された各計算ノードの資源情報に基づいて、各演算ジョブを割り当てる計算ノードを特定する。そして、上述したように、特定した計算ノードに、資源管理部22を介して演算ジョブを実行させる。
【0041】
なお、上述した各機能部は、メモリに格納されたプログラムをCPU11が実行することによって実現される。
【0042】
次に、図3を用いて、本車群グリッドにおける管理ノード決定処理に係る機能について説明する。図3では、管理ノード決定処理を行う車載端末2bと、それ以外の車載端末2a、2cとが描かれている。なお、各車載端末は、管理ノード決定処理を行う車載端末としても、それ以外の車載端末としても機能できる。つまり、各車載端末は、図3に示される各機能を全て備えているが、図3では、説明のために、各車載端末の役割に応じて必要とされる機能のみが描かれている。
【0043】
経路探索部31は、ナビゲーション装置14から、目的地及び目的地までの経路を取得する。走行経路取得部32は、各車載端末の経路探索部31から、その車載端末の目的地及び目的地までの経路を取得する。
【0044】
管理ノード決定部33は、取得した目的地及び経路に基づいて、車群が走行中の道路を最も遠くまで走行する車載端末(車両)を選択する。このような車載端末は、ダイクストラ法を用いて目的地までの経路を求め、経路上に含まれる通過地点を比較することによって求めることができる。そして、選択した車載端末が管理ノードとして機能するように、その車載端末のグリッドミドルウェア34に対して通知する。また、選択された車載端末以外は、計算ノードとして機能するように、その車載端末のグリッドミドルウェア34に対して通知する。なお、グリッドミドルウェア34は、資源管理部22、資源提供部23、及び資源情報記憶部26からなる機能部である。
【0045】
<管理ノード決定処理フロー>
次に、図4〜図6を用いて、本車群グリッドにおいて管理ノードを決定する際の処理を説明する。
【0046】
(車群グリッド形成時の処理)
図4は、新たに車群グリッドを形成するときの、管理ノード決定処理の流れを示すフローチャートである。
【0047】
ステップS101で、車群内の車載端末が、車群グリッドを形成する形成要求を、通信
部15を介して車群内の他の車載端末に対して送信する。この形成要求を受け取った車載端末のうち、車群グリッドに参加する車載端末は、形成要求を送信した車載端末に、車群グリッドに参加する旨の登録通知を行う。この際、自車の目的地及び予定走行経路情報も合わせて通知する。ステップS102で、システム形成要求を送信した車載端末は、車群グリッドに参加する車両から登録通知を受信する。なお、登録通知には、図5に示すように、参加する車載端末が有する演算資源に関する情報、演算資源を提供する期間、目的地及び目的地までの予定走行経路情報が含まれる。
【0048】
ステップS103で、取得した目的地及び予定走行経路情報を基に、車群グリッドに参加する車載端末のうちから、車群に最も長く留まる車載端末を選択する。この選択は、車群が走行する道路を最も遠くまで走行する車載端末を選択することにより行われる。
【0049】
ステップS104で、上記選択した車載端末に対して管理ノードとして機能するように通知を行い、車群内のその他の車載端末に対しては計算ノードとして機能するように通知を行う。
【0050】
このようにして管理ノードを選択することで、車群内に最も長く留まる車載端末を管理ノードとして選択することが可能となる。すなわち、車群グリッドから管理ノードが離脱してしまい、管理ノードが保有していた各計算ノードが有する資源情報などが失われることを防ぐことが可能となる。
【0051】
なお、システム形成要求を送信した車載端末は、管理ノードとして機能することになった車載端末に対して、各車載端末から登録通知として取得した情報、すなわち、資源情報、資源の有効期限、目的地及び予定走行経路情報を送信すると良い。管理ノードはこれらの情報を各車載端末から取得する処理を省くことが可能となる。
【0052】
(新たな車載端末が車群グリッドに参加したときの処理)
図6は、すでに形成されている車群グリッドに新たな車載端末が参加したときの処理の流れを示すフローチャートである。
【0053】
ステップS201で、新たに車群グリッドに参加する車載端末(以下、新規車載端末という)は、車群グリッドに参加する旨の新規登録要求を管理ノードに対して行う。ステップS202で、管理ノードは、新規車載端末からの新規登録要求を受け付ける。
【0054】
この新規登録要求には、図5に示されるように、新規車載端末が有する演算資源に関する情報、演算資源を提供する期間、目的地及び予定走行経路が含まれる。
【0055】
ステップS203で、管理ノードは、新規車載端末の目的地及び予定走行経路情報と、自端末の目的地及び予定走行経路情報を比較する。すなわち、新規車載端末の方が管理ノードよりも、車群に長く留まるかどうか判断を行う。具体的には、新規車載端末の方が、管理ノードが走行中の道路(車群が走行中の道路)を管理ノードよりも遠くまで走行するか否か判断する。
【0056】
ステップS204で、管理ノードの方が、車群が走行中の道路を遠くまで走行すると判断された場合には、ステップS205に進み、現在の管理ノードがそのまま管理ノードとして機能を続ける。この場合、新規車載端末は、計算ノードとして機能することになる。
【0057】
ステップS204で、新規車載端末の方が、車群が走行中の道路を遠くまで走行すると判断された場合には、ステップS206に進み、管理ノードは新規車載端末に対して、資源情報記憶部26に格納された資源情報を送信する。また、スケジューラ21がどの演算
ジョブをどの計算ノードに対して割り当てたかという情報や、計算ノードから受け取った演算ジョブの処理結果なども、新規車載端末に対して送信する。
【0058】
新規車載端末は、ステップS207で、管理ノードから資源情報などの管理情報を受信する。ステップS208で、新規車載端末は管理ノードとしての機能を有効にする。すなわち、スケジューラ21や資源管理部22の機能を有効にし、新規車載端末が管理ノードに移行する。
【0059】
新規車載端末が管理ノードとして機能できる状態になると、ステップS209で、車群内の他の車載端末に対して、自端末が管理ノードになったことを通知する。これ以降は、本車群グリッドに処理を依頼する処理依頼ノードは、新たな管理ノードに対して処理の依頼を行えばよいことが分かる。また、管理ノードが変更される前に受け付けた演算ジョブを実行中の計算ノードは、処理結果を新たな管理ノードに対して送信すればよいことが分かる。
【0060】
ステップS210で、当初の管理ノードは、新規車載端末が管理ノードになった旨の通知を受けた後に、管理ノードとしての機能を停止し、計算ノードに移行する。すなわち、スケジューラ21や資源管理部22の機能を停止する。
【0061】
上述した処理により、車群グリッドに新たな車載端末が参加したときに、現在の管理ノードと新たな車載端末とのうち、より車群に長く留まる車載端末を管理ノードとすることができる。すなわち、より適切な車載端末を管理ノードとすることができる。
【0062】
なお、ここでは車群グリッドに新たな車載端末が参加したときに管理ノードを変更するか否か判断したが、車群グリッド内の車載端末が目的地又は目的地までの経路を変更したときに、同様の処理を行うことも好ましい。
【0063】
<動作例>
図7及び図8を用いて、車群グリッドにおいて管理ノードを決定する処理の例を説明する。
【0064】
(車群グリッド形成時)
図7は、幹線道路60を走行中の車両A〜Dが、車群グリッドを形成するときの各車両の予定走行経路を示す図である。なお図7は、説明のための図であり、その縮尺は正確に表されているわけではない。
【0065】
図中で車両Dが車群グリッドを形成する旨のシステム形成要求を周囲の車両に対して発信し、車両A〜Cが車群グリッドに参加したものとする。この際、各車載端末は、自車の予定走行経路を車両Dに対して通知する。
【0066】
図7には、各車両の予定走行経路が車両から延びる矢印として示されている。なお、図中では車群が走行中の道路60をはずれる所までしか予定走行経路が示されていないが、実際には目的地までの予定走行経路を通知する。
【0067】
車群グリッドを形成する車両A〜Dのうち、車群が走行中の道路60を最も遠くまで走行する車両は車両Aである。したがって、システム形成要求を通知した車両Dは、車両Aが管理ノードとして機能するように、車両Aに対して通知する。また、それ以外の車両B、Cには、計算ノードとして機能するよう通知する。車両D自身も計算ノードとして機能する。
【0068】
(新たな車載端末が車群グリッドに参加したとき)
図8は、幹線道路60を走行中の車両A〜Dで構成される車群グリッドに新たな車両Eが参加するときの各車両の予定走行経路を示す図である。
【0069】
車両Eが車群グリッドに参加する時点では、車両A〜Dから構成される車群グリッドの管理ノードは、車群が走行中の道路60を最も遠くまで走行する車両Aである。ここで、車両Eが車群グリッドに新たに参加する際に、新規登録要求を車両Aに対して通知する。この新規登録要求には、車両Eの目的地及び予定走行経路が含まれる。
【0070】
車両Eの新規登録要求を受け付けた管理ノードである車両Aは、自車と車両Eとのどちらが、車群が走行中の道路60を遠くまで走行するか判断する。図8の場合では、車両Eの方が、車群が走行中の道路60を遠くまで走行するため、車両Eを新しい管理ノードとして機能させる。つまり、車両Aが有する車群グリッド内の演算資源情報を車両Eに送信し、車両Eはスケジューラ21や資源管理部22の機能を有効にし、管理ノードとなる。
【0071】
なお、管理ノードである車両Aの方が、新規に参加する車両Eよりも、車群が走行する道路を遠くまで走行する場合には、車両Aが管理ノードを続けることになる。
【0072】
<実施形態の効果>
車群グリッドにおいて、車群に最も長く留まる車載端末を管理ノードとして選択することにより、管理ノードが車群グリッドから突然離脱することを防ぐことができる。つまり、管理ノードが消失した場合に生じる、演算資源情報の再収集などの処理を行わないようにすることができる。このようにすることで、長距離(長時間)にわたって安定的なグリッドコンピューティングシステムを、無線通信によって接続された車載端末から構成することが可能となる。
【0073】
<変形例>
上述した実施形態では、予定走行経路情報としてナビゲーション装置14から取得した経路情報を用いたが、予定走行経路情報はこれに限られるものではない。例えば、走行経路があらかじめ定まっているバスや長距離トラックなどの車両の場合であれば、この走行経路を予定走行経路情報として用いることができる。また、車両に搭載された荷物に行き先情報を示すRF−IDが付されている場合には、この行き先情報を予定走行経路情報として用いることができる。また、迎車に向かうタクシーに行き先指示情報が与えられる場合には、この行き先指示情報を予定走行経路情報として用いることができる。
【0074】
また、上述した実施形態では、車群グリッドを構成する全ての車載端末は、処理依頼ノード、管理ノード、計算ノードのいずれとしても機能できたが、これは必ずしも必要ではない。例えば、管理ノードにはならず計算ノードとしてのみ機能する車載端末が存在しても良い。この場合、その車載端末には、スケジューラ21や資源管理部22の機能が不要となる。
【0075】
上記の実施形態では、車両1内に車載端末2が1台しか存在しなかったが、図9に示すように複数存在しても良い。また、車載端末はプログラムを実行することによってグリッドコンピューティングシステムを構成できるものであれば、どのような種類のものであってもかまわない。例えば、パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話やカーナビゲーション装置、ECU(Electronic Control Unit)などが
考えられる。
【0076】
各車載端末のうちグリッドコンピューティングシステムにおいて管理ノードとなる機能を有するものが1台のみであっても良く、全ての車載端末が管理ノードとなる機能を有し
ても良い。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施形態における車載端末の構成を示す図である。
【図2】本実施形態における車載端末のグリッドコンピューティング処理に係る機能の機能ブロックを示す図である。
【図3】本実施形態における車載端末の管理ノード決定処理に係る機能の機能ブロックを示す図である。
【図4】本実施形態における車群グリッド形成時の管理ノード決定処理についてのフローチャートである。
【図5】本実施形態における車群グリッドに参加する際に行う登録通知のデータ構造を示す図である。
【図6】本実施形態における車群グリッドに新たな車載端末が参加したときの処理についてのフローチャートである。
【図7】本実施形態における車群グリッド形成時の状況を説明する図である。
【図8】本実施形態における車群グリッドに新たな車載端末が参加したときの状況を説明する図である。
【図9】変形例としての車両の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1 車両
2 車載端末
11 CPU
12 主記憶装置
13 補助記憶装置
14 ナビゲーション装置
15 通信部
21 スケジューラ
22 資源管理部
23 資源提供部
24 アプリケーション
25 処理依頼部
26 資源情報記憶部
31 経路探索部
32 走行経路取得部
33 管理ノード決定部
34 グリッドミドルウェア
A、B、C、D、E 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信によって互いに接続され車群を形成する複数の車載端末から構成される分散処理システムであって、
前記複数の車載端末は、
計算ノードとして機能する複数の車載端末と、
管理ノードとして機能する車載端末と、
を含み、
前記分散処理システムは、
前記車載端末のそれぞれから、予定走行経路情報を取得する走行経路取得手段と、
取得した予定走行経路情報に基づいて、前記車載端末のうちから、前記車群が走行中の道路を最も遠くまで走行する車載端末を管理ノードとして機能させる管理ノード決定手段と、
を有することを特徴とする分散処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の分散処理システムであって、
新たな車載端末が前記分散処理システムに参加する場合に、
前記走行経路取得手段は、前記新たに参加する車載端末から予定走行経路情報を取得し、
前記管理ノード決定手段は、前記新たに参加する車載端末が、前記車群が走行中の道路を前記管理ノードよりも遠くまで走行する場合には、前記新たな車載端末に計算ノードが有する演算資源に関する情報を送信するとともに、該新たな車載端末を新たな管理ノードとして機能させる
ことを特徴とする分散処理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の分散処理システムであって、
前記予定走行経路情報は、入力された目的地情報に基づいて取得された、該目的地までの経路である
ことを特徴とする分散処理システム。
【請求項4】
無線通信によって互いに接続される他の車載端末とともに分散処理システムを構成する車載端末であって、
前記他の車載端末から予定走行経路情報を取得する走行経路取得手段と、
取得した予定走行経路情報と自端末の予定走行経路情報に基づいて、自端末と前記他の車載端末を含む複数の車載端末のうちから、自端末が走行中の道路を最も遠くまで走行する車載端末を選択し、該選択した車載端末を管理ノードとして機能させ、他の車載端末を計算ノードとして機能させる管理ノード決定手段と、
を有することを特徴とする車載端末。
【請求項5】
請求項4に記載の車載端末であって、
管理ノードとして機能しているときに、
前記走行経路取得手段は、前記分散処理システムに新たに参加する車載端末から予定走行経路情報を取得し、
前記管理ノード決定手段は、自端末が走行中の道路を前記新たに参加する車載端末が自端末よりも遠くまで走行する場合には、前記新たに参加する車載端末に計算ノードが有する演算資源に関する情報を送信するとともに、該新たに参加する車載端末を新たな管理ノードとして機能させる
ことを特徴とする車載端末。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の車載端末であって、
入力された目的地情報に基づいて、前記目的地までの経路を取得する経路探索手段を有し、
前記予定走行経路情報は、前記目的地までの前記経路である
ことを特徴とする車載端末。
【請求項7】
無線通信によって互いに接続され車群を形成する複数の車載端末から構成され、
計算ノードとして機能する複数の車載端末と、
管理ノードとして機能する車載端末と、
を含む分散処理システムにおける管理ノード決定方法であって、
前記車載端末のそれぞれから、予定走行経路情報を取得し、
取得した走行経路情報に基づいて、前記車載端末のうちから、前記車群が走行中の道路を最も遠くまで走行する車載端末を管理ノードとして機能させる
ことを特徴とする分散処理システムにおける管理ノード決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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