説明

分散型エレクトロルミネッセンス

【課題】プラスチックを基板としたフレキシブルな材料構成が可能な粒子分散型エレクトロルミネッセンス素子において、低電圧で高輝度が得られ、かつ耐久性に優れる分散型エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】背面電極及び透明電極からなる一対の電極の間に少なくとも蛍光体粒子を含有する発光層を有する分散型エレクトロルミネッセンス素子において、該蛍光体粒子が少なくとも銅をドープした硫化亜鉛もしくはセレン化亜鉛またはそれらの混晶を含み、さらに該蛍光体粒子が周期律表の第13族の元素から選ばれる少なくとも一種と第15族の元素から選ばれる少なくとも一種の元素とを含有し、且つ該蛍光体粒子を分散させるバインダーの軟化温度が70℃以上であることを特徴とする分散型エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度で長寿命のエレクトロルミネッセンス(EL)粉末粒子を分散塗布した発光層を有する分散型エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子は、高誘電性バインダーに蛍光体粒子を分散してなる粒子分散型素子と、誘電体層間に蛍光体薄膜を挟んでなる薄膜型素子等の無機エレクトロルミネッセンス素子と有機エレクトロルミネッセンス素子に大別される。本発明は、主に、分散型エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【0003】
分散型エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも一方が光透過性の透明導電膜を有するフィルム状電極と対を成す導電性電極シート間に、フッソ系ゴムあるいはシアノ基を有するポリマー等の高誘電性ポリマー中に蛍光体粉末を含んで成る発光層が設置された素子である。さらに絶縁破壊を防ぐ為に高誘電性ポリマー中にチタン酸バリウムのような強誘電体の粉末を含んで成る誘電体層が設置されるのが通常の形態である。
【0004】
分散型エレクトロルミネッセンス素子は、素子構成時に高温プロセスを用いない為、プラスチックを基板としたフレキシブルな材料構成が可能であること、真空装置を使用しなくても比較的簡便な工程で、低コストで製造が可能であること、また発光色の異なる複数の蛍光体粒子を混合することや色変換に蛍光染料を用いて素子の発光色の調節が容易であるという特長を有し、バックライト、表示素子へ応用されている。
【0005】
この素子の特徴は、大面積を均一に発光できることや、フィルム状の光源として、薄く軽量で、ある程度の曲げ等が可能なこと、さらには加工形状の自由度が高いことから設置場所を選ばず、簡便な方法で、壁、円柱、床、天井等に設置できることにあり、これらの使用法が、期待されている。
【0006】
分散型エレクトロルミネッセンス素子を用いたEL素子の発光原理に関しては、硫化亜鉛中に銅をドープした蛍光体粒子において、硫化亜鉛中の積層欠陥上に析出した硫化銅針状結晶間でのPN接合を形成する考え方と金属的な特性を有する硫化銅針状結晶からの固体内電界電子放出による発光現象とする考え方が知られている。(特許文献1、2)
【0007】
【特許文献1】特開2005−336275号公報
【特許文献2】特開2005−339924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、素子自身は、前述の構成から類推される様に、容量性負荷素子であり、十分な輝度に発光させるためには、少なくとも実効値で100V以上、400Hz以上の交流電圧の印加が必要であり、高輝度化を実現するためには、電圧及び周波数をおのおの100V以上、1KHz以上にすることが好ましい。
【0009】
しかしながら、高電圧化や高周波化は、機器の安全性保障及び電磁ノイズの除去等の新たな問題を発生させることから、出来るだけ低電圧で高輝度を実現しうることが望まれている。
【0010】
また、素子を大面積化しやすいことが分散型エレクトロルミネッセンス素子の特徴であるが、大面積での均一発光を高輝度で実現しようとすると、容量性素子と言えども電極間を流れる電流値は大きくなり、特にフィルムやプラスチック基板上に素子を形成した場合、成膜温度の制約から透明導電膜の劣化や発熱によるバインダーの劣化の問題が顕在化する。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、上記従来における問題を解決し、低電圧で高輝度が得られ、かつ耐久性に優れる分散型エレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子と称することもある)を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従来広く用いられてきた蛍光体粒子はZnS:Cu、Cl系の材料であり、硫化亜鉛中の積層欠陥上の転位にそって析出した硫化銅がP型半導体として機能し硫化亜鉛母体がN型半導体とし機能するPN接合と考えられている。従来は、このP型N型半導体のキャリア濃度を増やすことで、発光効率を上げる試みは、なされてこなかった。本発明者らは、鋭意検討の結果、N型半導体と考えられる硫化亜鉛もしくはセレン化亜鉛またはそれらの混晶(以下「母体」と記載することがある)のキャリア濃度を上げるためには、ドナーとして特定の元素をドープすることが好ましく、そして耐久性を向上させるためには該蛍光体を分散させるバインダーの軟化温度を70℃以上とすることが有用であることを見出した。
すなわち、本発明は下記の構成により達成された。
【0012】
(1)
背面電極及び透明電極からなる一対の電極の間に少なくとも蛍光体粒子を含有する発光層を有する分散型エレクトロルミネッセンス素子において、該蛍光体粒子が少なくとも銅をドープした硫化亜鉛もしくはセレン化亜鉛またはそれらの混晶を含み、さらに該蛍光体粒子が周期律表の第13族の元素から選ばれる少なくとも一種と第15族の元素から選ばれる少なくとも一種の元素とを含有し、且つ該蛍光体粒子を分散させるバインダーの軟化温度が70℃以上であることを特徴とする分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【0013】
(2)
前記第13族の元素がInであり、前記第15族の元素としてN、P、AsおよびSbから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする(1)に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【0014】
(3)
前記バインダーの軟化温度が100℃以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【0015】
(4)
前記蛍光体粒子を含有する発光層の厚みが1μm以上25μm未満であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【0016】
(5)
蛍光体粒子の平均粒子サイズが0.05μm以上10μm以下であり、且つ粒子サイズの変動係数が3%以上40%以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0017】
本発明の分散型エレクトロルミネッセンス素子は、低電圧で高輝度が得られ、かつ耐久性に優れるものである。また、本発明の無機EL素子は大画面化が可能であり、発光輝度、耐久性に優れ、長寿命を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明は、背面電極及び透明電極からなる一対の電極の間に少なくとも蛍光体粒子を含有する発光層を有する分散型エレクトロルミネッセンス素子において、該蛍光体粒子が少なくとも銅をドープした硫化亜鉛もしくはセレン化亜鉛またはそれらの混晶を含み、さらに該蛍光体粒子が周期律表の第13族(旧IIIB族)の元素から選ばれる少なくとも一種と第15族(旧VB族)の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を含有し、且つ該蛍光体粒子を分散させるバインダーの軟化温度が70℃以上であることを特徴とする分散型エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
混晶を用いる場合の組成比に関しては、特に制約は無い。結晶として安定であれば良い。
【0019】
本発明に用いる蛍光体粒子は、ドナーとして周期律表の13族の元素であるB、Al、Ga、In、およびTlから選ばれる少なくとも一種の元素と、硫化銅のアクセプターとして15族の元素であるN、P、As、Sb、およびBiから選ばれる少なくとも一種の元素とを含有する。好ましくは、13族の元素としてInを含有し、15族の元素としてN、P、AsおよびSbから選ばれる少なくとも1種を含有する。
これらのドーパントのドープ方法は、例えば焼成での粒子形成時に無機塩の形で混入させても良いし、焼成条件下で溶融または昇華可能なら化合物結晶の形で添加しても良い。これらのドーパントは結晶内に取り込まれた部分以外の結晶表面への析出分や、結晶表面への吸着分は、エッチングや洗浄等で取り除くことが好ましい。
さらに発光効率を上げるためには、以下の手段が有効であることを見出した。
【0020】
〔1〕本発明における硫化亜鉛もしくはセレン化亜鉛またはそれらの混晶への銅のドープ量に特に制限は無いが、好ましくは0.1モル%以上、0.3モル%以下である。ドープ量は、固溶限界で決まる。固溶限界以上の銅は粒子表面に付着するため着色し光取り出し効率が下がる場合があるため、注意を要する。また対となるドーパントとしてClが好ましく用いられる。
【0021】
〔2〕第13族及び第15族の元素の蛍光体粒子へのドープ量に関しては、母体に対し10-6モル%以上10-0モル%以下であることが好ましい。より好ましい量は、母体に対し10-5モル%以上10-1モル%以下が好ましい。特に好ましくは、母体に対し10-4モル%以上10-1モル%以下が好ましい。
【0022】
〔3〕蛍光体粒子中にAg及びAuをドープすることが好ましく、そのドープ量は母体に対し10-6モル%以上10-0モル%以下であることが好ましい。より好ましい量は、母体に対し10-5モル%以上10-1モル%以下が好ましい。特に好ましくは、母体に対し10-4モル%以上10-1モル%以下が好ましい。
【0023】
〔4〕蛍光体粒子中にPd及びPtをドープすることが好ましく、そのドープ量は母体に対し10-6モル%以上10-0モル%以下であることが好ましい。より好ましい量は、母体に対し10-5モル%以上10-1モル%以下が好ましい。特に好ましくは、母体に対し10-4モル%以上10-1モル%以下が好ましい。
【0024】
蛍光体粒子中への硫化銅の析出量を上げる技術に関し重要なことは、粒子の表面積を上げることと母体中の積層欠陥密度を上げることである。
【0025】
その他、本発明の素子構成において、基板、背面電極、反射絶縁層、各種保護層、フィルター、光散乱層などを必要に応じて付与することができる。特に基板に関しては、ガラス基板やセラミック基板に加え、プラスチック並びにフレキシブルな透明樹脂シートを用いることができる。
【0026】
(蛍光体粒子)
本発明に用いられる蛍光体粒子の母体材料は、硫化亜鉛またはセレン化亜鉛もしくはそれらの混晶である。
本発明に用いる蛍光体粒子の平均サイズは0.05μm以上10μmが好ましく、より好ましくは0.1μ以上8μm以下、さらには0.2μm以上5μm以下であることが好ましい。また粒子サイズの変動係数は3%以上40%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以上35%以下、さらには10%以上30%以下が好ましい。
【0027】
その調製方法としては、焼成法、尿素溶融法、噴霧熱分解法、水熱合成法(Hydrothermal method)を好ましく用いることができる。
粒子サイズ、分布をコントロールする具体的方法としては、例えば焼成法では、フラックスの使用方法や篩がけによる。水熱合成法では、過飽和度を制御することで再核発生を防止し、粒子サイズ分布を狭く保ちながら、サイズを上げ下げすることができる。
【0028】
本発明の蛍光体粒子の平均サイズや変動係数は、例えば堀場製作所製・レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920のような、レーザー散乱による方法を用いて測定することができる。ここで、平均粒子サイズはメジアン径を指すものとする。
合成された粒子は、多重双晶構造を有することが好ましい。硫化亜鉛の場合、多重双晶(積層欠陥構造)の面間隔は、1nm〜10nmが好ましく、より好ましくは、2nm〜5nmが好ましい。この評価には、高倍率の透過電子顕微鏡を用いることができる。
【0029】
本発明に利用可能な蛍光体粒子は、当業界で広く用いられる焼成法(固相法)で形成することができる。例えば、硫化亜鉛の場合、液相法で10nm〜50nmの微粒子粉末(通常生粉とも呼ぶ)を作成し、これを一次粒子として用い、これに付活剤と呼ばれる不純物を混入させて融剤とともに坩堝にて900℃〜1300℃の高温で30分〜10時間、第1の焼成をおこない、粒子を得る。
第1の焼成によって得られる中間蛍光体粉末をイオン交換水で繰り返し洗浄してアルカリ金属、アルカリ土類金属及び過剰の付活剤、共付活剤を除去する。
次いで、得られた中間体蛍光体粉末に第2の焼成をほどこす。第2の焼成は、第1の焼成より低温の500〜800℃で、また短時間の30分〜3時間の加熱(アニーリング)をする。
これら焼成により蛍光体粒子内には多くの積層欠陥が発生するが、微粒子でかつより多くの積層欠陥が蛍光体粒子内に含まれるように、第1の焼成と第2の焼成の条件を適宜選択することが好ましい。
【0030】
また、第1の焼成物に、ある範囲の大きさの衝撃力を加えることにより、粒子を破壊することなく、積層欠陥の密度を大幅に増加させることができる。衝撃力を加える方法としては、中間蛍光体粒子同士を接触混合させる方法、アルミナ等の球体を混ぜて混合させる(ボールミル)方法、粒子を加速させ衝突させる方法、超音波を照射する方法、静水圧を利用する方法などを好ましく用いることができる。
【0031】
これらの方法により、5nm以下の間隔で10層以上の積層欠陥を有する粒子を形成することができる。この頻度の評価法としては、粒子を乳鉢ですりつぶし、ほぼ0.2μm以下の厚みの砕片に砕いたものを加速電圧200kVの電子顕微鏡で観察した際に、5nm以下の間隔で10層以上の積層欠陥を含む破片粒子の頻度で評価することができる。もちろん粒子サイズが、0.2μmを下回る厚みの粒子は、破砕の必要は無く、そのまま観察する。
本発明の粒子は、この頻度が50%を超えるものが好ましく、さらに好ましくは、70%を超えるものが好ましい。頻度は高いほど良い。積層欠陥の間隔は、狭いほど良い。
ここで言う頻度とは、全観測粒子数で5nm以下の間隔で10層以上の積層欠陥を含む破片粒子の観測個数を割った値に100を乗じたものである。
【0032】
その後、該中間蛍光体を、HCl等の酸でエッチングして表面に付着している金属酸化物を除去し、さらに表面に付着した硫化銅を、KCNで洗浄して除去する。続いて該中間蛍光体を乾燥して蛍光体粒子を得ることができる。
【0033】
蛍光体粒子は、特許第2756044号公報や米国特許第6458512号明細書に記載のごとく0.01μm以上の金属酸化物や金属窒化物で構成される非発光シェル層で被覆されることにより、防水性・耐水性を付与することを好ましく行うことができる。
またWO02/080626号パンフレットに記載のごとく、発光中心を含むコア部と非発光のシェル部からなる2重構造化することで、光取り出し効率を高める技術を好ましく用いることができる。
【0034】
蛍光体粒子は、粒子の表面に非発光シェル層を有することがより好ましい。このシェル層形成は、蛍光体粒子のコアとなる半導体微粒子の調製に引き続いて化学的な方法を用いて0.01μm以上の厚みで設置するのが好ましい。好ましくは0.01μm以上1.0μm以下である。
非発光シェル層は、酸化物、窒化物、酸窒化物や、母体蛍光体粒子上に形成した同一組成で発光中心を含有しない物質から作成することができる。また、母体蛍光体粒子材料上にエピタキシャルに成長させた異なる組成の物質により形成することができる。
【0035】
非発光シェル層の形成方法として、レーザー・アブレーション法、CVD法、プラズマCVD法、スパッタリングや抵抗加熱、電子ビーム法などと、流動油面蒸着を組み合わせた方法などの気相法と、複分解法、ゾルゲル法、超音波化学法、プレカーサーの熱分解反応による方法、逆ミセル法やこれらの方法と高温焼成を組み合わせた方法、水熱合成法、尿素溶融法、凍結乾燥法などの液相法や噴霧熱分解法なども用いることができる。
特に、蛍光体の粒子形成で好適に用いられる、水熱合成法、尿素溶融法や噴霧熱分解法は、非発光シェル層の合成にも適している。
【0036】
(発光層)
発光層は、蛍光体粒子を軟化点(軟化温度)70℃以上のバインダー、好ましくは100℃以上のバインダーに分散したものを用いる。使用するバインダーの軟化点が高いほど、EL素子の連続駆動による輝度劣化が少なく好適である。例えば、比較的誘電率の高いシアノエチルプルランやシアノエチルセルロース、ポリフッ化ビニリデンなどがあり、それらのうちの一種もしくは混合物を使用しても良い。さらに軟化温度の高いポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリエーテルスルホン類、フッ素ゴム、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸アミド類、ポリメタクリル酸アミド類、シリコーン樹脂、または多官能アクリル酸エステル化合物から得られる紫外光硬化型樹脂やエポキシ化合物やシアネート化合物から得られる熱硬化型樹脂から選ばれるものが好ましく用いることができる。このようなバインダーに蛍光体粒子を分散させて発光層を形成する。分散方法としては、ホモジナイザー、遊星型混練機、ロール混練機、超音波分散機などを用いることができる。
軟化温度の測定には針進入試験を用いる。1mm丸型針を用い200gfの荷重をかけ、昇温速度0.8℃/minで35℃から150℃まで昇温する。このとき針が10μm沈んだときの温度を軟化点とする。測定片は100μmのアルミ板上に測定しようとするバインダーを溶剤を用いて塗布し、残留溶剤がなくなるまで十分に乾燥させて100μmとしたものを使用する。
バインダーが混合物の場合も上記と同様に、測定しようとする2種以上のバインダーを溶剤に溶解し混合したあと塗布し、残留溶媒がなくなるまで十分に乾燥させて100μmとしたものを測定片とし、測定する。
【0037】
発光層は、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法、あるいはスプレー塗布法などを用いて塗布することが好ましい。特に、スクリーン印刷法のような印刷面を選ばない方法やスライドコート法のような連続塗布が可能な方法を用いることが好ましい。例えば、スクリーン印刷法は、蛍光体や誘電体の微粒子を高誘電率のポリマー溶液に分散した分散液を、スクリーンメッシュを通して塗布する。メッシュの厚さ、開口率、塗布回数を選択することにより膜厚を制御できる。さらにスクリーンの大きさを変えることで大面積化が容易である。
本発明の分散型エレクトロルミネッセンス素子においては、発光層の厚みは1μm以上20μm以下が好ましい。特に好ましいのは、5μm以上15μm以下である。
発光層に蛍光体粒子を含有させる方法としては、ホモジナイザー、遊星型混練機、ロール混練機、超音波分散機などを用いることができる。
【0038】
(誘電体層)
本発明のEL素子は、発光層と背面電極の間に誘電体物質を含む誘電体層を有していてもよい。誘電体物質は、薄膜結晶層であっても粒子形状であってもよい。またそれらの組合せであっても良い。誘電体物質を含む誘電体層は、蛍光体粒子層の片側に設けてもよく、また蛍光体粒子層の両側に設けることが好ましい。誘電体層に用いる材料としては、誘電率と絶縁性が高く、且つ高い絶縁破壊電圧を有する材料であれば任意のものが用いられる。これらは金属酸化物、窒化物から選択され、例えばBaTiO、KNbO、LiNbO、LiTaO、Ta、BaTa、Y、Al、AlONなどが用いられる。これらは均一な膜として設置されても良いし、また有機バインダーを含有する粒子構造を有する膜として用いても良い。粒子形状の場合は、蛍光体粒子の大きさに対し十分に小さいことが好ましい。具体的には蛍光体粒子サイズの1/3〜1/1000の大きさが好ましい。バインダー及びその分散方法、膜形成方法とも発光層と同一の材料及び方法を選択することもできる。
【0039】
(透明電極)
透明電極とは可撓性を有する透明基材上に透明導電層を有するものである。
本発明に好ましく用いられる透明導電層の表面抵抗率は、0.01Ω/□〜10Ω/□が好ましい。特に0.01Ω/□〜1Ω/□が好ましい。
透明導電層の表面抵抗率は、JIS K6911に記載の方法に準じて測定することができる。
可撓性を有する透明基材としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロースベース等の可撓性ポリマーが挙げられ、厚さは10〜250μm、特に50〜200μmが好ましい。
透明導電性物質の好ましい付着量は、透明導電層に対して、100質量%〜1質量%、より好ましくは、70質量%〜5質量%、さらに好ましくは、40質量%〜10質量%である。
【0040】
透明電導層の調製法はスパッター、真空蒸着等の気相法であっても良い。ペースト状のITOや酸化錫を塗布やスクリーン印刷で作成したり、膜全体を過熱したりレーザーにて加熱して成膜しても良い。この場合の透明フィルムには、耐熱性の高いものほど好ましく用いることが出来る。
本発明のEL素子において、透明導電層には一般的に用いられる任意の透明電極材料が用いられる。例えば錫ドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、亜鉛ドープ酸化錫、フッ素ドープ酸化錫、酸化亜鉛などの金属酸化物、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造、ポリアニリン、ポリピロールなどの共役系高分子などが挙げられる。この場合、耐久性を上げる目的で透明導電層表面を酸化錫を主体の層とすることが、好ましい。
【0041】
更に低抵抗化するには、例えば櫛型あるいはグリッド型等の網目状ないしストライプ状金属細線を配置して通電性を改善することが、好ましい。金属や合金の細線としては、銅や銀、アルミニウム、ニッケル等が好ましく用いられる。この金属細線の太さは、任意であるが、0.5μm程度から20μmの間が好ましい。金属細線は、50μmから400μmの間隔のピッチで配置されていることが、好ましく、特に100μmから、300μmピッチが、好ましい。金属細線を配置することで、光の透過率が減少するが、この減少は出来るだけ小さいことが重要で、好ましくは、80%以上100未満の透過率を確保することが、好ましい。
【0042】
金属細線は、メッシュを透明導電層である金属酸化物上に張り合わせてもよいし、予めマスク蒸着ないしエッチングによりフィルム上に形成した金属細線上に金属酸化物等を塗布、蒸着しても良い。また、予め形成した金属酸化物薄膜上に上記の金属細線を形成してもよい。
これとは、異なる方法となるが、金属細線の代わりに、100nm以下の平均厚みを有する金属薄膜を金属酸化物と積層して本発明に適した透明導電膜とすることができる、金属薄膜に用いられる金属としては、AuやIn、Sn、Cu、Niなど耐腐食性が高く、天延性等に優れたものが好ましいが、特にこの限りではない。
これらの複層膜は、高い光透過率を実現することが好ましく、70%以上が好ましい。特に好ましくは、80%以上の光透過率を有することが特に好ましい。光透過率を規定する波長は、550nmである。
光の透過率に関しては、干渉フィルターを用いて550nmの単色光を取り出し、一般に用いられる白色光源を用いた積分型光量測定やスペクトル測定装置を用いて測定することが出来る。
【0043】
(中間層)
本発明の分散型エレクトロルミネッセンス素子は、透明電極層と発光層及び/又は、背面電極と誘電体層との間に少なくとも1層の中間層を有することが好ましい。
中間層は有機高分子化合物または無機化合物、またはこれらが複合されていても良いが、有機高分子化合物を含む層を少なくとも1層有することが好ましい。
中間層の厚みは10nm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは100nm以上10μm以下であり、特に好ましくは100nm以上1μ以下である。
【0044】
中間層を形成する材料が有機高分子化合物である場合、使用できる高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリエーテルスルホン類、ポリビニルアルコール、プルランやサッカロース、セルロース等の多糖類、塩化ビニル、フッ素ゴム、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸アミド類、ポリメタクリル酸アミド類、シリコーン樹脂、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルサッカロース、または多官能アクリル酸エステル化合物から得られる紫外光硬化型樹脂やエポキシ化合物やシアネート化合物から得られる熱硬化型樹脂が挙げられる。またこれらの混合物であってもよい。またここで使用する高分子化合物は絶縁体であっても導電体で有っても良い。
【0045】
これら有機高分子化合物またはその前駆体は、適当な有機溶媒(例えばジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレンなど)に溶解し透明導電層上あるいは発光粒子含有層に塗布して形成することができる。
中間層は実質的な透明性(好ましくは波長550nmの透過率が70%以上、より好ましくは80%以上)を有する範囲で、種々の機能を付与するための添加物を有していても良い。例えばチタン酸バリウム粒子などの誘電体、または酸化スズ、酸化インジウム、酸化スズ−インジウム、金属粒子などの導電体、または染料、蛍光染料、蛍光顔料、または本発明の効果を失わない程度(分散型エレクトロルミネッセンス素子全体の輝度のうち30%以下)の発光体粒子を存在させても良い。
【0046】
中間層は二酸化ケイ素、その他金属酸化物、金属窒化物などの無機化合物で有っても良い。無機化合物で中間層を形成する方法としては、スパッタ法、CVD法などが採用できる。中間層が無機化合物で形成されている場合、膜厚は10nm以上1μm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上200nm以下である。
また中間層が無機化合物の層と有機高分子化合物の層の組み合わせで構成されているものも好ましい。
【0047】
本発明においては少なくとも1層の有機高分子化合物を含んでなる厚み0.5μ以上10μ以下の中間層を有することが好ましく、該有機高分子化合物はポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリエーテルスルホン類、フッ素ゴム、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸アミド類、ポリメタクリル酸アミド類、シリコーン樹脂、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルサッカロース、または多官能アクリル酸エステル化合物から得られる紫外光硬化型樹脂やエポキシ化合物やシアネート化合物から得られる熱硬化型樹脂から選ばれるものが好ましく、更にこれらのうち軟化点が70℃以上(より好ましくは100℃以上)のものが好ましい。これらから選ばれる複数の高分子化合物が組み合わされていることも好ましい。
【0048】
中間層の有機高分子化合物が軟化点の高い(例えば200℃以上)化合物である場合、透明電極層や発光層との密着性を改良するなどの目的で、軟化点の低い有機高分子化合物を含む別な中間層を併用することも好ましい。
【0049】
(白色・蛍光染料)
本発明の用途は、特に限定されるものではないが、光源としての用途を考えると、発光色は白色が好ましい。
発光色を白色とする方法としては、3原色または補色関係に発光する複数の蛍光体を混合する方法が好ましい。(青−緑−赤の組み合わせや、青緑−オレンジの組み合わせなど)また、特開平7−166161号公報、特開平9−245511号公報、特開2002−62530号公報に記載の青色や青緑色発光の蛍光体と蛍光顔料や蛍光染料を用いて発光の一部を緑色や赤色に波長変換(発光)させて白色化する方法も好ましい。さらに、CIE色度座標(x,y)は、x値が0.30〜0.4の範囲で、かつy値が0.30〜0.40の範囲が好ましい。
【0050】
好ましい色温度は、4000K以上6500K以下であるが、より好ましくは、4500K以上6000K以下が好ましい。色温度に関しては、日本理工出版会刊、照明学会編、「光の計測マニュアル」の第6章8節「測色」に詳しく記載されている。
本発明における白色の実現は、主な発光ピークとして2つのピーク波長を有する2波長ピーク型の発光を指す。具体的には、青緑領域の発光ピークと赤領域の発光ピークを持つ発光パターンを有することになる。この場合、青緑領域の発光ピークは、520nm以下にあることが好ましく、また赤色領域の発光は、590nm以上にあることが好ましいが、特に赤色発光のピークは、600nm以上にあることがより好ましい。
この赤色発光のピーク強度に対し、650nmに置ける発光強度は、相対的に0.40以上0.75あることが好ましい。特に好ましくは、0.45以上0.60以下が好ましい。
【0051】
(光散乱層)
本発明の分散型エレクトロルミネッセンス素子の発光層の上部には、発光層からの光線透過率が70%以上であり、外部からの光線に対するヘイズ値が、30%以上に設計された光散乱層を有することができる。特に光線透過率は、80%以上が好ましい。ヘイズ値は、50%以上がより好ましい。光線透過率を規定する波長は、550nmの光に対する値で定義される。
これらの光散乱層は、フィルム状で本発明の分散型エレクトロルミネッセンス素子上に貼り合せて用いても良いし、透明導電層の支持体の反対側に設定されてもよい。通常最外層となる防湿フィルム上に設定されても良い。
【0052】
(背面電極)
光を取り出さない側の背面電極は、導電性の有る任意の材料が使用出来る。金、銀、白金、銅、鉄、アルミニウムなどの金属、グラファイトなどの中から、作成する素子の形態、作成工程の温度等により適時選択されるが、その中でも熱伝導率が高いことが重要で、2.0W/cm・deg以上であることであることが好ましい。
また、EL素子の周辺部に高い放熱性と通電性を確保するために、金属シートや金属メッシュを用いることも好ましい。
【0053】
(封止・吸水)
本発明のEL素子は、適当な封止材料を用いて、外部環境からの湿度の影響を排除するよう加工することが好ましい。素子の基板自体が十分な遮蔽性を有する場合には、作成した素子の上方に遮蔽性のシートを重ね、周囲をエポキシ等の硬化材料を用いて封止することが好ましい。また、面状素子をカールさせないために両面に遮蔽性シートを配しても良い。素子の基板が、水分透過性を有する場合は、両面に遮蔽性シートを配することが好ましい。
このような遮蔽性のシートは、ガラス、金属、プラスチックフィルム等の中から目的に応じて選択されるが、例えば特開平2003−249349に開示されているような酸化珪素からなる層と有機高分子化合物からなる多層構成の防湿フィルムを好ましく用いることができるし、3フッ化塩化エチレン等も好ましく用いることができる。
【0054】
上記封止工程は、特許公報63―27837に記載の如く、真空ないし不活性ガス置換された雰囲気下で行うことが好ましく、封止工程実施前には、特開平5−166582に記載の如く、含水分量を十分に低減することが重要である。
これらのEL素子を作成する際に、防湿フィルムより内部に、吸水層を設けることも可能である。給水層は、ナイロンやポリビニルアルコール等の吸水性が高く、水分保持能力が高い素材からなることが、好ましい。透明性が、高いことも重要である。透明性さえ高ければ、セルロースや紙の様な素材も好ましく用いることが出来る。
特開平4−230996や特開平11−260557に記載の如くフィルムによる防湿だけでなく蛍光体粒子を金属酸化物や窒化物で被覆することで、防湿性を向上させることも好ましく併用することが出来る。
【0055】
(紫外線吸収剤)
本発明には、特開平9−22781に記載されている酸化セリウム等の無機化合物を用いることができる。また有機化合物を用いることができる。
本発明においては紫外線吸収剤としてモル吸光係数の高いトリアジン骨核を有する化合物を用いることが好ましく、例えば、以下の公報に記載の化合物を用いることができる。
【0056】
これらは、写真感光材料に好ましく添加されるが、本発明でも有効である。例えば、特開昭46−3335号、同55−152776号、特開平5−197074号、同5−232630号、同5−307232号、同6−211813号、同8−53427号、同8−234364号、同8−239368号、同9−31067号、同10−115898号、同10−147577号、同10−182621号、独国特許第19739797A号、欧州特許第711804A号及び特表平8−501291号等に記載されている化合物を使用できる。
【0057】
これらの紫外線吸収剤は、蛍光体粒子ならびに蛍光染料が、紫外線を吸収しない様に配置されることが重要であり、蛍光体粒子ならびに蛍光染料を分散したバインダー中に添加、分散したり、また透明電極層より外側の防湿フィルムや吸水フィルム中に添加して用いることができる。もちろんこれらのフィルム面上に紫外線吸収層として塗布して用いることもできる。
【0058】
(電源)
本発明の電源の態様として好ましいものの例としては、特願2006−005318、特願2005−04442、特願2005−04443、特許第3236236号、特開2005−62924、特開平6−225546、特開平7−65952、特開平7−170760、特開平8−45663、特開平8−250280、特開平9−322560等に記載のものが挙げられる。
【実施例】
【0059】
[実施例1]
平均粒子サイズ30nmの硫化亜鉛(ZnS)粒子粉末25gと、硫酸銅をZnSに対し0.2モル%と塩化金酸を0.003モル%とNa2[Pt(OH)6]を0.005モル%添加した乾燥粉末に、融剤としてNaClおよびMgClと塩化アンモニウム(NH3Cl)粉末を適量、並びに酸化マグネシウム粉末を蛍光体粉末に対し20質量%アルミナ製ルツボに入れて1200℃で1.0時間焼成した(第一焼成)のち降温した。そののち粉末を取り出し、ボールミルにて粉砕分散した。さらに超音波分散を行ったのち、ZnCl25gと硫酸銅をZnSに対し0.05モル%添加したのちMgCl2を1g加え、乾燥粉末を作成し、再度アルミナルツボに入れて650℃で6時間焼成した(第二焼成)。このとき雰囲気として10%の酸素ガスをフローさせながら焼成を行なった。
焼成後の粒子は、再度粉砕し、40℃のHOに分散・沈降、上澄み除去を行なって洗浄したのち、塩酸10%液を加えて分散・沈降、上澄み除去を行い、不要な塩を除去して乾燥させた。さらに10%のKCN溶液を70℃に加熱して表面のCuイオン等を除去した。
さらに6Nの塩酸で粒子全体の10質量%に相当する表面層をエッチング除去した。
これにより平均粒子サイズが12μm、変動係数が35%の比較用蛍光体A−1を得た。
第二焼成時に表1の如くドーパントとなる化合物を添加し、蛍光体粒子A−1〜A−7を得た。
【0060】
【表1】

【0061】
さらに上記蛍光体粒子を用いて、以下に記載のごとくEL素子を作製した。
(発光層の形成)
上記A−1〜A−7の蛍光体粒子を表2にあるようなバインダーに分散し、発光層の厚みが25μmになるように誘電体層上に塗布した。
【0062】
(誘電体層の形成)
平均粒子サイズが0.02μmのBaTiO微粒子を、発光層で使用したバインダーと同じバインダーで分散し、誘電体層厚みが20μmになるように厚み100μmのアルミシート上に塗布し、温風乾燥機を用いて120℃で1時間乾燥した。
【0063】
(透明導電膜)
ITO(インジウムジンクオキサイド)をスパッター蒸着し、20Ω/□の導電性フィルムを作製し、背面電極上に塗布した誘電体層及び発光層を熱圧着した。透明電極部とアルミの背面電極部から、それぞれ厚み80μmの銅アルミシートを用いて外部接続用の端子を取り出した。
【0064】
(防湿フィルム)
上記素子を凸版印刷社製の防湿フィルムであるGXフィルムと挟んで真空脱気しながら熱圧着した。素子のサイズは、発光面積が、0.5m2となる様に四角形成型した。
【0065】
【表2】

【0066】
この様にして作成した分散型エレクトロルミネッセンス素子を100V400Hzで駆動した際の初期輝度を測定した。こののち素子を流れる電流を一定に保つべく電圧と周波数を調製しながら、連続して500時間駆動した後の初期輝度に対する相対輝度を調べた。
EL素子−1〜3は初期輝度はそれぞれ同等であったがそれに対して、EL素子−4〜12はいずれも初期輝度が10%以上高いことが確認されたものの、EL素子−4はバインダーの軟化温度が低いため、連続500時間の駆動後の輝度が低く、耐久性の観点から本発明の効果が得られていない。EL素子−5〜12のうち、EL素子−9、10がEL素子−1〜3に対して20%以上初期輝度が高く、そのうちEL素子−10が連続500時間の駆動後の輝度が最も高かった。
EL素子−1の初期輝度を100としたときの、各素子の相対輝度を下記表3に示す。
【0067】
【表3】

【0068】
[実施例2]
発光層の膜厚を20μmとして形成したこと以外、実施例1と同様に行い、EL素子−13〜24を作製し、評価した。
その結果、いずれも実施例1と比較して15%程度、初期輝度が高く、連続500時間駆動後の輝度も高かった。実施例1のEL素子−1の初期輝度を100としたときの各素子の初期輝度および連続500時間の駆動後の輝度を表4に示す。
【0069】
【表4】

【0070】
[実施例3]
実施例1で作製した蛍光体粒子のうちA−1及びA−5に関し篩をかけることでいずれも平均粒子サイズ9.1μm、変動係数30%の粒子を抽出し、実施例1とまったく同様にして分散型エレクトロルミネッセンス素子を作成したところ蛍光体A−1をベースにした素子に対しA−5をベースにした素子は、初期輝度が25%以上高く、連続500時間の駆動後の輝度も高かった。
実施例1のEL素子−1の初期輝度を100としたときの各素子の初期輝度、および連続500時間の駆動後の輝度を表5に示す。
【0071】
【表5】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面電極及び透明電極からなる一対の電極の間に少なくとも蛍光体粒子を含有する発光層を有する分散型エレクトロルミネッセンス素子において、該蛍光体粒子が少なくとも銅をドープした硫化亜鉛もしくはセレン化亜鉛またはそれらの混晶を含み、さらに該蛍光体粒子が周期律表の第13族の元素から選ばれる少なくとも一種と第15族の元素から選ばれる少なくとも一種の元素とを含有し、且つ該蛍光体粒子を分散させるバインダーの軟化温度が70℃以上であることを特徴とする分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記第13族の元素がInであり、前記第15族の元素としてN、P、AsおよびSbから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記バインダーの軟化温度が100℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記蛍光体粒子を含有する発光層の厚みが1μm以上25μm未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記蛍光体粒子の平均粒子サイズが0.05μm以上10μm以下であり、且つ粒子サイズの変動係数が3%以上40%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。

【公開番号】特開2007−299606(P2007−299606A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126064(P2006−126064)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】