説明

分散型最大パワーポイントトラッキングを具備する光起電力システムの過剰電圧保護システム及び方法

【課題】 太陽電池パワーシステムに使用するソラーパネルアレイが提供される。
【解決手段】 ソラーパネルアレイは、複数のソラーパネル(205a−205d、205)からなるストリング、及び複数の電圧変換器(225)を包含している。各電圧変換器は該複数のソラーパネルからなるストリングにおける対応するソラーパネルに結合されている。該ソラーパネルアレイは、又、複数の最大パワーポイントトラッキング(MPPT)制御器(230)を包含している。各MPPT制御器は該複数のソラーパネルからなるストリング内の対応するソラーパネルに結合されている。各MPPT制御器は、該対応するソラーパネルとインバータ(235)との間の瞬間的なパワー不均衡を検知する形態とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年4月17日に出願した米国仮特許出願第61/170,582号に対して米国特許法第35USC119(e)条の下での優先権を主張しており、それを引用によりここに組み込んでいる。
【0002】
本願は、大略、電気的パワーシステムに関するものであって、更に詳細には、太陽電池パワーシステムにおける過剰電圧保護システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
光起電力(PV)パネル(ここでは、「ソラーパネル」とも呼称する)は、太陽からの照射エネルギを使用して電気的エネルギを発生させる。ソラーパネルは、太陽光を電気的エネルギへ変換させるための多数のPVセルを包含している。大多数のソラーセルは、ウエハを基礎とした結晶性シリコンセル、又はテルル化カドミウム又はシリコンに基く薄膜セルを使用する。PVセルにおいてはウエハ形態で一般的に使用される結晶性シリコンは、一般的に半導体において使用されるシリコンから派生される。PVセルは、光を直接的にエネルギへ変換させる半導体装置である。光がPVセル上に照射されると、該セルを横断して電圧が発生し、且つ負荷に接続された場合には該セルを介して電流が流れる。その電圧及び電流は、該セルの物理的寸法、該セルに照射される光の量、該セルの温度、及び外部要因を含む幾つかの要因に基いて変化する。
【0004】
ソラーパネル(「PVモジュール」とも呼称される)は、直列及び並列に配列された複数のPVセルから構成される。例えば、PVセルは、最初に、一つのグループ内において直列に結合される。次いで、多数のグループが並列に一体的に結合される。同様に、PVアレイ(「ソラーアレイ」とも呼称される)が直列及び並列に配列された複数のソラーパネルから構成される。
【0005】
各ソラーパネルによって発生される電気的パワーは、ソラーパネルの電圧及び電流によって決定される。ソラーアレイにおいて、電気的接続が直列に構成されて所望の出力ストリング電圧を達成し、及び/又は、並列に構成されて所望量のストリング電流源能力を与える。幾つかの場合において、各パネル電圧はDC−DC変換器でブースト即ち昇圧されるか又はバック即ち降圧される。
【0006】
ソラーアレイは電気的負荷、配電網、又は電池(これに制限されるものではない)などの電気的パワー格納装置へ接続される。ソラーパネルは直流(DC)電気的パワーを送給する。電気的負荷、配電網、又は電気的パワー格納装置が交流(AC)を使用して動作する場合(例えば、60Hz)、ソラーアレイは、DC−ACインバータを介して、電気的負荷、配電網、又は電気的パワー格納装置へ接続される。
【0007】
ソラーパネルは、それらのI−V曲線によって記述される電圧及び電流特性を示し、その1例を図1に示してある。ソラーセルが負荷に接続されていない場合には、それらの端子間の電圧は開回路電圧VOCである。該端子が一体的に接続されて短絡回路を形成している場合には、短絡回路電流ISCが発生される。両方の場合において、パワーは電圧と電流との積によって与えられるので、パワーが発生されることはない。最大パワーポイント(MPP)はソラーパネルが最大パワーで動作している点を画定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しばしば、ソラーパネルは大きく且つ高速のパワー過渡的状態となる場合がある。これらの過渡的状態期間中に、ソラーパネルによって発生されるパワーとインバータによって配電網上に与えられるパワー(例えば、配電網に接続されているソラーアレイの場合において)との間の差異は、電気的エネルギ格納装置(例えば、インバータ入力コンデンサ)によって格納され且つ解放される。ストリング過剰電圧と呼称される或る条件下において、そのパワーの差異は、インバータ入力電圧をしてインバータの最大定格を越えさせて、インバータに対して厳しく且つ永続的な損傷を発生させる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、分散型最大パワーポイントトラッキングを具備する光起電力システムの過剰電圧保護システム及び方法を提供している。
【0010】
ソラーパネルパワーシステムにおいて使用するソラーパネルアレイが提供される。該ソラーパネルアレイは、複数のソラーパネル及び複数の電圧変換器からなるストリングを包含している。該電圧変換器の各々は該複数のソラーパネルからなるストリングにおける対応するソラーパネルへ結合されている。付加的に、該ソラーパネルアレイは、複数の最大パワーポイントトラッキング(MPPT)制御器を包含している。該MPPT制御器の各々は、該複数のソラーパネルからなるストリングにおける対応するソラーパネルへ結合されている。該MPPT制御器の各々は、対応するソラーパネルとインバータとの間の瞬間的なパワー不均衡を検知する形態とされている。
【0011】
太陽電池パワーシステムに使用する装置も提供される。該装置は、複数のソラーパネルからなるストリングにおける1個のソラーパネルに結合されるべく適合されている電圧変換器を包含している。該装置は、又、MPPT制御器を包含している。該MPPT制御器は該電圧変換器へ結合されている。付加的に、該MPPT制御器はソラーパネルとインバータとの間の瞬間的なパワー不均衡を検知する形態とされている。
【0012】
光起電力アレイにおける過剰電圧を回避する方法が更に提供される。該方法は、複数のパワー変数の内の少なくとも一つを検知することを包含している。該方法は、更に、複数のソラーパネルからなるストリング内の1個のソラーパネルとソラーパネルアレイに結合されているインバータとの間のパワー不均衡を検知することを包含している。該方法は、又、電圧変換器の出力を調整することを包含している。
【0013】
以下の詳細な説明を行う前に、本特許文書において使用される或る単語及び用語の定義について説明することが有益的である。「結合(couple)」という用語及びその派生語は、物理的に互いに接触しているか否かに拘わらずに、2個又はそれ以上の要素の間の任意の直接的又は間接的な通信のことを意味している。「送信(transmit)」、「受信(receive)」、及び「通信(communicate)」という用語及びそれらの派生語は、直接及び間接の両方の通信を包含している。「含む(include)」及び「有する(comprise)」という用語及びそれらの派生語は、制限無しでの包含を意味している。「又は(or)」という用語は、包括的であって、及び/又は、を意味している。「と関連する(associated with)」及び「それと関連する(associated therewith)」という句、及びそれらの派生語は、包含すること、その中に包含されていること、それと相互接続すると、含有すること、その中に含有されていること、それに対して又はそれと共に接続すること、それに対して又はそれと共に結合すること、それと通信可能であること、それと協働すること、インターリーブすること、並置すること、それに対して近接していること、それに対して又はそれと共に拘束されていること、持っていること、所有していること等を意味する場合がある。「制御器(controller)」という用語は、少なくとも一つの操作を制御する任意の装置、システム、又はその一部を意味している。制御器は、ハードウエア、ファームウエア、ソフトウエア、又はそれらの少なくとも2つの何らかの結合、で実現することが可能である。任意の特定の制御器と関連する機能性は、局所的であるか遠隔的であるかに拘わらずに、集中型又は分散型とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】光起電力(PV)パネルに対する例示的なI−V曲線を示している。
【図2】本開示の実施例に基く例示的なPVアレイシステムを示している。
【図3】本開示の実施例に基く例示的なソラーパネルを示している。
【図4】本開示の実施例に基く例示的なAC切断イベントを示している。
【図5】本開示の実施例に基くPVアレイにおける例示的な過剰電圧保護プロセスを示している。
【図6】本開示の実施例に基いてAC切断イベントが検知されない場合のPVアレイにおける例示的な過剰電圧保護プロセスを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に説明する図1乃至6及び本特許文書における本開示の原理を説明するために使用する種々の実施例は、単に例示的なものであって、本開示の範囲を制限するような態様で解釈されるべきではない。当業者が理解するように、本開示の原理は、任意の適宜構成された光起電力アレイシステムにおいて実現させることが可能である。
【0016】
図2は、本開示の実施例に基く例示的な光起電力(PV)アレイシステム200を例示している。図2に示されているPVアレイシステム200の実施例は、例示のためのみである。PVアレイシステム200のその他の実施例を、本開示の範囲を逸脱すること無しに、使用することが可能である。
【0017】
PVアレイシステム200は、多数のソラーパネル205a−205d(集約的にソラーパネル205として言及する)を包含している。ソラーパネル205は、直列的に、並列的に、又は両方で、配列されている。例えば、ソラーパネル205aはソラーパネル205bと直列に結合させることが可能であり、一方、ソラーパネル205cはソラーパネル205dと直列に結合されている。更に、ソラーパネル205a及び205bは、ソラーパネル205c及び205dと、並列に結合されている。直列に結合されているソラーパネル205(例えば、ソラーパネル205a及び205b)はストリングとして呼称される。従って、図2に示されている如く、パネル205c及び205dは第2ストリング215を形成している。更に、ストリング210又は215を横断しての電圧は、ストリング電圧と呼称され、且つストリング210又は215を介しての電流はストリング電流と呼称される。
【0018】
PVアレイシステム200は、DC−ACインバータ235を包含している。PVアレイシステム200(例えば、ソラーアレイ)はDC−ACインバータ235へ結合されている。ソラーパネル205は、DC−ACインバータ235に対して、1個又はそれ以上の付加的なソラーパネル205と直列に結合させることが可能である。付加的に、及び代替的に、ソラーパネル205は、DC−ACインバータ235に対して、1個又はそれ以上の付加的なソラーパネル205と並列に結合させることが可能である。DC−ACインバータ235は、PVアレイシステム200からパワーを抽出し、且つ該抽出したパワーをパワー配分網(「グリッド」)240と相互接続するためにDCからACへ変換させる。
【0019】
PVアレイシステム200の各ストリング210、215は、DC−ACインバータ235での動作のために特定した寸法に従って寸法形成されている。その特定した寸法は、ストリング210,215における全ソラーパネル205の開回路電圧の和がそのPVアレイ適用例によって特定される温度条件に対応する最大DC−ACインバータ235入力電圧レイティング即ち定格を越えることが不可能であるように、決定される。
【0020】
図3は本開示の実施例に基く例示的なソラーパネル205を例示している。図3に示したソラーパネル205の実施例は、単に例示的なものに過ぎない。ソラーパネル205のその他の実施例を本開示の範囲を逸脱すること無しに使用することが可能である。
【0021】
各ソラーパネル205は、直列に、並列に、又はその両方で、配列した多数のPVセル305a−305i(集約的にPVセル305として言及する)を包含している。例えば、複数のPVセルからなる第1ストリング310は、PVセル305a,305b,305cが直列に結合される場合に、形成される。複数のPVセルからなる第2ストリング315は、PVセル305d,305e,305fが直列に結合される場合に、形成される。複数のPVセルからなる第3ストリング320は、PVセル305g,305h,305iが直接に結合される場合に、形成される。その後に、第1ストリング310、第2ストリング315、第3ストリング320が並列に結合されてソラーパネル205を形成する。
【0022】
PVセル305は、光を直接的にエネルギへ変換させる半導体装置である。光がPVセル上に照射されると、該セルを横断して電圧が発生し、且つ負荷に接続された場合には、該セルを介して電流が流れる。該電圧及び電流は、該セルの物理的寸法、該セルに照射される光の量、該セルの温度、及び外部的要因、を含む幾つかの要因に従って変化する。PVモジュールは、各ソラーパネルが正の電位(例えば、電圧)を包含するように一体的に結合される。
【0023】
図2に戻ると、各ソラーパネル205は、その出力端子上にパネル専用コンバータ(PDC)220が結合されている。PDC220は、ソラーパネル205へ結合されているDC−DCコンバータ225を包含している。従って、直列結合されているDC−DCコンバータ225を横断しての電圧はストリング電圧であり、且つ直列結合されているDC−DCコンバータ225を介しての電流はストリング電流である。DC−DCコンバータ225は、ソラーパネル205に対してパワー変換(例えば、降圧及び昇圧)を与える形態とされている。DC−DCコンバータ225は、パワーをシステムが駆動することを設計されているどの様な負荷に対しても最も適切である電圧又は電流レベルへ変換させる。例えば、DC−DCコンバータ225は、ソラーパネル205から受取った電圧の2対1(2:1)のブースティング即ち昇圧を実施する。この例においては、ソラーパネル205は、30ボルト(30V)乃至50ボルト(50V)の範囲内の電圧を出力する形態とされている(例えば、出力電圧はソラーパネル205において受け取る太陽光の量に依存する場合がある)。DC−DCコンバータ225は、該電圧を60ボルト(60V)乃至100ボルト(100V)の対応する範囲へ昇圧させる(例えば、高電圧コンバータの場合)。付加的な例においては、ソラーパネルは1ボルト(1V)乃至30ボルト(30V)の範囲内の電圧を出力する形態とされている。DC−DCコンバータ225は、該電圧を2ボルト(2V)乃至60ボルト(60V)の対応する範囲へ昇圧させる(低電圧コンバータの場合)。理解されるように、これらの例は昇圧動作を例示するものであるが、DC−DCコンバータ225は降圧動作を実施することが可能である。
【0024】
PDC220は、DC−DCコンバータ225へ結合されている最大パワーポイントトラッキング(MPPT)制御器230を包含している。MPPT制御器230は各ソラーパネル205からの電流を検知する形態とされている。MPPT制御器230は、中央処理装置(「CPU」)、メモリユニット、入力/出力(「I/O」)装置、該DC−DCコンバータへ結合すべく形態とされている1個又はそれ以上のインターフェース、及びDC−DCコンバータ225の入力及び出力において電流及び電圧を測定する形態とされている1個又はそれ以上の検知入力端子(「センサ」)を包含している。該CPU、メモリ、I/O装置、インターフェース、及びセンサは1個又はそれ以上の通信リンク(例えば、バス)によって相互接続されている。理解されるように、MPPT制御器230は異なる形態とさせることが可能であり且つ該リストした部品の各々は実際には幾つかの異なる部品を表すことが可能である。例えば、該CPUは、実際には、マルチプロセッサ又は分散型処理システムを表す場合があり、該メモリユニットは異なるレベルのキャッシュメモリ、メモリメモリ、ハードディスク、及び遠隔格納位置を包含する場合があり、且つ該I/O装置はモニタ、キーボード等を包含する場合がある。付加的に、該メモリユニットは、以下に概説するMPPT制御器230の機能の内の1つ又はそれ以上を該CPUに実施させる形態とした複数個の命令を格納している。該メモリユニットは、又、センサ及び/又はインターフェースを介して受取られた1個又はそれ以上の検知した値を格納することが可能である。付加的に、該メモリユニットはスレッシュホールド値を格納することが可能である。
【0025】
PVセルは、該セルの電流(I)及び電圧(V)の値が最大パワー出力となる単一の動作点(最大パワーポイント105として言及される)を有している。PVセル(及び対応するPVモジュール305)は電流と電圧との間に指数関係を有しており、且つ最大パワーポイント(MPP)105はその曲線のニー(knee)即ち急激な屈曲部において発生し、そこでは、その抵抗値は負の差分抵抗値に等しい(V/I=−ΔV/ΔI)。MPPT制御器230は、最大パワーポイント105を探索する。次いで、MPPT制御器230はDC−DCコンバータ225のデューティサイクルを変化させる。従って、MPPT制御器230は、DC−DCコンバータ225がPVモジュール305から得られる最大パワーを抽出することを可能とさせる。
【0026】
従って、PDC220は高効率のDC対DCコンバータであり、それはソラーパネル205(又は全アレイに結合されている場合には、PVアレイシステム200)に対する最適な電気的負荷として機能し、且つそのパワーを該システムが駆動すべく設計されている負荷に対して一層適した電圧又は電流レベルへ変換させる。PDC220は、パネル毎に最大パワーポイントトラッキングを実施することが可能である。
【0027】
MPPで動作されるソラーパネル205は、発電機の記号を使用して、以下の式1によって記載される如く理想的なパワー供給源として定常状態においてモデル化することが可能である。
【0028】
【数1】

【0029】
式1において、Vpan(t)はソラーパネル205の電圧であり、Ipan(t)はソラーパネル205の電流であり、且つPMPPはMPPにおいてソラーパネル205によって発生されたパワーである。
【0030】
配電網に結合したDC−ACインバータ235は、負荷の記号を使用して、式2によって記載される理想的パワー吸い込みとして定常状態においてモデル化することが可能である。
【0031】
【数2】

【0032】
式2において、Vstring(t)はDC−ACインバータ235の入力電圧であり、Istring(t)はDC−ACインバータ235の入力電流であり、且つPstringは全入力パワーである。
【0033】
PVアレイシステム200によって発生される全パワーは、DC−ACインバータ235の入力パワーである。定常状態において、PVアレイシステム200によって発生される入力パワーはDC−ACインバータ235によって配電網240内に入れられるパワーに等しい。定常状態の適切なパワーバランスが、DC−ACインバータ235内に組み込まれているアクティブ制御器(不図示)によって達成される。過渡的状態期間中に瞬間的なパワーバランスを達成することを助けるために、DC−ACインバータ235は、又、エネルギ格納部品(不図示)を包含している。該エネルギ格納部品は、DC−ACインバータ235の入力端子に接続されているコンデンサとすることが可能であるが、それに制限されるものではない。
【0034】
PVアレイシステム200は、大型且つ高速のパワー過渡的状態が可能である。これらの過渡的状態期間中に、PVアレイシステム200によって発生されるパワーとDC−ACインバータ235によって配電網240へ出力されるパワーとの間の差異が格納され且つインバータコンデンサによって解放される。該パワーの差異がDC−ACインバータ235の入力電圧をしてDC−ACインバータ235の最大レイティングを越えさせると、ストリング過剰電圧が発生する場合がある。付加的に、ストリング過剰電圧は、MPPT下側で動作している間にDC−ACインバータ235における急激なAC側の切断の結果として発生する場合がある。この様な場合には、PDC220はPDC220が接続されているソラーパネル205の実時間MPPTを実施するので、PVアレイシステム200によって発生されるパワーは一定であると考えることが可能であり、一方DC−ACインバータ235によって配電網240上に出力されるパワーは急激にゼロへ降下する。従って、PVアレイシステム200からの全パワーは以下の式3及び4によって画定される如く、インバータ出力コンデンサへ転送される。
【0035】
【数3】

【0036】
【数4】

【0037】
式3及び4において、Cはインバータ入力コンデンサの容量であり、且つParrayはPVアレイシステム200によって発生される全パワーである。
【0038】
式3及び4は式5として書き換えることが可能である。
【0039】
【数5】

【0040】
式5は、ストリング電圧が無制限に成長することを示している。ストリング過剰電圧を回避するために、MPPT制御器230は、PVアレイシステム200とDC−ACインバータ235との間の瞬間的なパワー不均衡を検知する。MPPT制御器230は複数のパワー変数を検知する。該パワー変数は、入力電圧、入力電流、出力電圧、及び出力電流を包含するが、これらに制限されるものではない。MPPT制御器230は、入力電流及び入力電圧(即ち、DC−DCコンバータ225の入力端子における電流及び電圧)及び出力電流及び出力電圧(即ち、DC−DCコンバータ225の出力端子における電流及び電圧)を検知することが可能である。幾つかの実施例においては、MPPT制御器230は、検知した変数に基いて1つ又はそれ以上の変数を推定する。例えば、MPPT制御器230は、入力電圧、入力電流、及びDC−DCコンバータ225の対応するデューティサイクルに対する検知した値に基いて、出力電流及び出力電圧を推定することが可能である。付加的に、MPPT制御器230は検知し且つ推定した変数の勾配を測定する。
【0041】
1例として、AC切断イベントが時間t=0において発生する場合には、Vstring(0)=Vsteady−stateであり且つIstring(0)が以下の式6によって画定されると仮定した場合には、
【0042】
【数6】

【0043】
時間t=0における単一のソラーパネルのDC−DCコンバータ225の出力電圧の勾配は式7によって画定される。
【0044】
【数7】

【0045】
式7において、Nはストリング210内のソラーパネル205の数であり、且つVoutは単一のPDC220の出力電圧である。
【0046】
図4は、本開示の実施例に従う例示的なAC切断イベントを例示している。図4に示したAC切断イベントの実施例は例示のために過ぎない。AC切断イベントのその他の実施例を本開示の範囲を逸脱すること無しに使用することが可能である。
【0047】
図4は、PDC220の出力電圧が、ソラーパネル205の開回路電圧(この例においては65V405)をはるかに超えて上昇し、85Vの電圧410に到達している。このことは、ストリング電圧をしてインバータ235の最大入力電圧を容易に超えさせる場合がある。
【0048】
従って、ストリングにおけるソラーパネル205の与えられた数に対して且つCの与えられた値に対して、MPPT制御器230は、電流Isteady−stateが十分に高い限り、出力電圧415の勾配を測定することによって、AC切断イベントを検知することが可能である。MPPT制御器230は、出力電圧415の勾配を、正常な動作に影響を与えないようにシステムパラメータに従って選択された予め設定したスレッシュホールドと比較する。付加的に且つ代替的に、MPPT制御器230は、或る時間窓内のデューティサイクル上昇ステップ数を測定することによって、AC切断イベントを検知することが可能である。
【0049】
MPPT制御器230がAC切断イベントを検知すると、MPPT制御器230は、DC−DCコンバータ225のデューティサイクルを減少させることによって、ストリング過剰電圧を減少させるか又は回避する。これを行うことにより、MPPT制御器230はPDC220の動作点を最大パワーポイント105から離れる方向に移動させ且つ該パネルの出力パワーを減少させ、且つ、究極的に、「0」へ降下させる。MPPT制御器230は、デューティサイクルを特定の値に強制させ、DC−DCコンバータ225のデューティサイクルを制限し、DC−DCコンバータ225のデューティサイクルを出力電圧又は出力電圧スルーレートに比例する量だけ変化させ、DC−DCコンバータ225の出力を最大出力電圧に設定し、又は上述したものの任意の組合せによって、DC−DCコンバータ225の変換比を変化させることが可能である。
【0050】
1例として、MPPT制御器230は、DC−DCコンバータ225の変換比を特定の値、例えば、これに制限されるわけではないが、1(例えば、1:1)に設定することが可能である。従って、MPPT制御器230は、DC−DCコンバータ225がソラーパネル205からの電圧をブースト即ち昇圧しないように強制する。この条件において、ソラーパネル205が30V−50Vの範囲内の電圧を出力する形態とされている場合には、DC−DCコンバータ225は30V−50Vの範囲内の対応する電圧を出力する。付加的に、ソラーパネル205が1V−30Vの範囲内の電圧を出力する形態とされている場合には、DC−DCコンバータ225は1V−30Vの範囲内の対応する電圧を出力する。
【0051】
付加的に且つ代替的に、MPPT制御器230は、出力電圧又は出力電圧スルーレートに比例する量だけDC−DCコンバータ225のデューティサイクルを変化させることが可能である。或る電圧スルーレートスレッシュホールドが与えられると、MPPT制御器230は、電圧スルーレートスレッシュホールド未満の初期的出力電圧スルーレートに対応する電流においてシステムを動作させるために、DC−DCコンバータ225のデューティサイクルを調整する。付加的に、この様な条件において動作する危険性を回避するために、MPPT制御器230はAC切断イベントを検知するために最小パワー電流Istring_minを使用する。Istring_minは式7を使用して決定され、その電流はPDC220の出力電流であり、それはストリング210内の全てのPDC220に対して同じである。更に、PDC220の出力電流がIstring_minより低い場合から発生する検知不可能なAC切断イベントを回避するために、MPPT制御器230はDC−DCコンバータ225の変換比を制限する。PDC220の出力電流がIstring_min未満である場合には、MPPT制御器230は変換比を1(例えば、1:1)に制限する。従って、検知することが不可能なAC切断イベントが発生する場合には、MPPT制御器230は、最大ストリング電圧をして、ストリング210におけるソラーパネル205の開回路電圧の和、従って、DC−ACインバータ235の最大入力電圧を超えることが無いようにさせる。上述した技術は、PDC220の入力電流の適切な最小値を設定し且つ同様のプロセスを実施することによって実現させることも可能である。例えば、出力又は入力電流を使用することが可能である。
【0052】
更に、MPPT制御器230は、DC−DCコンバータ225の出力電圧を最大値に制限することが可能である。例えば、DC−DCコンバータ225の電圧は、30V−50Vの範囲内の電圧を出力する形態とされているソラーパネル205へ結合されている場合には、100Vの最大に制限させることが可能である。付加的に且つ代替的に、DC−DCコンバータ225の範囲は、1V−30Vの範囲内の電圧を出力する形態とされているソラーパネル205に結合されている場合には、50Vの最大へ制限させることが可能である。
【0053】
従って、MPPT制御器230はPDC220の一部としての個別的なソラーパネル205へ結合されているので、MPPT230はストリング210の電圧を検知するものではない。しかしながら、MPPT制御器230は、ソラーパネル205に関連する一つ又はそれ以上の変数を検知することによって、DC−ACインバータ235への入力電圧を調整することが可能である。
【0054】
図5は本開示の実施例に基くPVアレイにおける例示的な過剰電圧保護プロセス500を例示している。図5に示した過剰電圧保護プロセス500の実施例は例示的なものに過ぎない。過剰電圧保護プロセス500のその他の実施例を本開示の範囲を逸脱すること無しに使用することが可能である。
【0055】
MPPT制御器が、ステップ505において、複数のソラーパネルからなるストリングにおける1個のソラーパネルの一つ又はそれ以上のパワー変数を測定する。該パワー変数は、DC−DCコンバータ入力電流、入力電圧、出力電流及び/又は出力電圧、を包含している。幾つかの実施例においては、MPPT制御器230は測定したパワー変数及びDC−DCコンバータ225のデューティサイクルをメモリユニット内に格納する。
【0056】
ステップ510において、AC切断イベントが発生する。AC切断イベントの結果、インバータ235とソラーパネル205との間においてパワー不均衡が発生する。AC切断イベントの結果として、PVアレイによって発生されるパワーは実質的に一定であり、一方、DC−ACインバータ235によって配電網240へ出力されるパワーは急激にゼロへ降下する。幾つかの実施例においては、AC切断イベントは発生しないが、インバータとPVアレイとの間のパワーの差が発生する。
【0057】
MPPT制御器は、ステップ515において少なくとも1つのパワー変数を検知する。例えば、検知したパワー変数及びデューティサイクルを使用して、MPPT制御器は、ステップ515において、一つ又はそれ以上の付加的なパワー変数を推定する。従って、MPPT制御器230は、ステップ520において、DC−DCコンバータの出力電圧の勾配を測定することによって、AC切断イベントを検知する。
【0058】
MPPT制御器は、ステップ525において、DC−DCコンバータの出力電圧を調整する。幾つかの実施例においては、MPPT制御器230は、DC−DCコンバータ225のデューティサイクルを減少させる。例えば、MPPT制御器230は、変換比を特定の値に設定することが可能である。付加的に且つ代替的に、MPPT制御器230は、出力電圧又は出力電圧スルーレートに比例する量だけデューティサイクルを制限するか又はデューティサイクルを変化させることが可能である。幾つかの実施例においては、MPPT制御器230はDC−DCコンバータ225の出力電圧を最大値へ設定する。
【0059】
図6は、AC切断イベントが本開示の実施例に従って検知されない場合のPVアレイ内の例示的な過剰電圧保護プロセス600を示している。図6に示した過剰電圧保護プロセス600の実施例は例示的なものに過ぎない。過剰電圧保護プロセス600のその他の実施例を、本開示の範囲を逸脱すること無しに、使用することが可能である。図6において、過剰電圧保護プロセス600は、ストリング電流が十分に高いものではない事実に起因してAC切断イベントを検知することが不可能である場合を包含している。
【0060】
MPPT制御器は、ステップ605において、複数のソラーパネルからなるストリングにおける1個のソラーパネルの一つ又はそれ以上のパワー変数を測定する。該パワー変数は、DC−DCコンバータ入力電流、入力電圧、出力電流及び/又は出力電圧、を包含している。幾つかの実施例においては、MPPT制御器230は、測定したパワー変数及びDC−DCコンバータ225のデューティサイクルを、メモリユニット内に格納する。
【0061】
幾つかの実施例において、MPPT制御器は、AC切断イベントを検知するプロセスにおいて最小出力電流スレッシュホールドを使用する。AC切断イベントは、ストリング電流が十分に高いものではないという事実に起因して検知不可能である場合がある。例えば、ステップ615において、最小パワー電流スレッシュホールドIstring_minを使用して、AC切断イベントが検知されたか否かを判別する。出力電流IstringがIstring_min未満である場合(Istring<Istring_min)には、AC切断イベントは検知されない。従って、MPPT制御器は、ステップ635において、DC−DCコンバータのデューティサイクルを制限する。従って、コンバータ225はそれだけ昇圧することが許容されるものではない。MPPT制御器230は、最大ストリング電圧をして、ストリング内のソラーパネル205の開回路電圧の和、従って、DC−ACインバータ235の最大入力電圧を超えさせるものではない。
【0062】
出力電流IstringがIstring_minよりも大きい場合(Istring>Istring_min)には、本プロセスはステップ615へ移行する。ステップ615において、AC切断イベントが発生する。AC切断イベントの結果として、インバータ235とソラーパネル205との間においてパワー不均衡が発生する。AC切断イベントの結果、PVアレイによって発生されるパワーは実質的に一定であり、一方、DC−ACインバータ235によって配電網240へ出力されるパワーは急激にゼロへ降下する。
【0063】
MPPT制御器は、ステップ620において、少なくとも1個のパワー変数を検知する。例えば、検知したパワー変数及びデューティサイクルを使用して、MPPT制御器は、ステップ620において、一つ又はそれ以上の付加的なパワー変数を推定することが可能である。MPPT制御器は、ステップ625において、DC−DCコンバータの出力電圧の勾配を測定することによって、AC切断イベントを検知する。
【0064】
MPPT制御器は、ステップ630において、DC−DCコンバータの出力電圧を調整する。幾つかの実施例においては、MPPT制御器230はDC−DCコンバータ225のデューティサイクルを減少させる。例えば、MPPT制御器230は変換比を特定の値に設定することが可能である。付加的に且つ代替的に、MPPT制御器230は、出力電圧又は出力電圧スルーレートに比例する量だけデューティサイクルを制限するか又はデューティサイクルを変化させることが可能である。幾つかの実施例においては、MPPT制御器230はDC−DCコンバータ225の出力電圧を最大値に設定する。
【0065】
この開示は種々の例示的実施例を説明しているが、種々の変更及び修正が当業者に対して示唆されている場合がある。本開示は、この様な変更及び修正が本特許請求の範囲内に入るものとして包含するものであることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソラーセルパワーシステムに使用するソラーパネルアレイにおいて、
複数のソラーパネルからなるストリング、
各々が該複数のソラーパネルからなるストリング内の対応するソラーパネルに結合されている複数の電圧変化器、及び
複数の最大パワーポイントトラッキング(MPPT)制御器、
を有しており、各MPPT制御器が該複数のソラーパネルからなるストリングにける対応するソラーパネルに結合されており、各MPPT制御器が該対応するソラーパネルとインバータとの間の瞬間的なパワー不均衡を検知する形態とされている、ソラーパネルアレイ。
【請求項2】
請求項1において、該MPPT制御器の内の少なくとも1個が該電圧変換器の内の少なくとも1個のデューティサイクルを制限する形態とされているソラーパネルアレイ。
【請求項3】
請求項2において、該MPPT制御器の内の少なくとも1個が、該電圧変換器の内の少なくとも1個の変換比を特定した値に制限する形態とされているソラーパネルアレイ。
【請求項4】
請求項2において、該MPPT制御器の内の少なくとも1個が、デューティサイクルを固定した量に減少させる形態とされているソラーパネルアレイ。
【請求項5】
請求項2において、該MPPT制御器の内の少なくとも1個が、出力値に比例する量だけデューティサイクルを減少させる形態とされているソラーパネルアレイ。
【請求項6】
請求項1において、該MPPT制御器の内の少なくとも1個が、該電圧変換器の内の少なくとも1個の出力電流がスレッシュホールド電流未満である場合に、該少なくとも1個の電圧変換器の電圧を調整する形態とされているソラーパネルアレイ。
【請求項7】
請求項1において、該MPPT制御器の内の少なくとも1個が、検知した値に基いて少なくとも1個の変数を推定する形態とされているソラーパネルアレイ。
【請求項8】
ソラーセルパワーシステムに使用する装置において、
複数のソラーパネルからなるストリングにおける1個のソラーパネルに結合すべく適合されている電圧変換器、及び
該電圧変換器に結合されている最大パワーポイントトラッキング(MPPT)制御器、
を有しており、該MPPT制御器が該ソラーパネルとインバータとの間の瞬間的なパワー不均衡を検知する形態とされている装置。
【請求項9】
請求項8において、該MPPT制御器が該電圧変換器のデューティサイクルを制限する形態とされている装置。
【請求項10】
請求項9において、該MPPT制御器が該電圧変換器の変換比を特定した値に制限する形態とされている装置。
【請求項11】
請求項9において、該MPPT制御器が該電圧変換器のデューティサイクルを固定した量へ減少させる形態とされている装置。
【請求項12】
請求項9において、該MPPT制御器が、出力値に比例する量だけ該電圧変換器のデューティサイクルを減少させる形態とされている装置。
【請求項13】
請求項8において、該MPPT制御器が、該電圧変換器の出力電流がスレッシュホールド電流未満である場合に、該電圧変換器の変換比を調整する形態とされている装置。
【請求項14】
請求項8において、該MPPT制御器が、検知した値に基いて、少なくとも1個の変数を推定する形態とされている装置。
【請求項15】
光起電力アレイにおける過剰電圧回避方法において、
複数のパワー変数の内の少なくとも1個を検知し、
複数のソラーパネルからなるストリングにおける1個のソラーパネルとソラーパネルアレイに結合されているインバータとの間のパワー不均衡を検知し、
電圧変換器の出力を調整する、
ことを包含している方法。
【請求項16】
請求項15において、該電圧変換器の出力を調整する場合に、該電圧変換器のデューティサイクルを制限することを包含している方法。
【請求項17】
請求項16において、該電圧変換器のデューティサイクルを制限する場合に、該電圧変換器の変換比を特定した値に制限することを包含している方法。
【請求項18】
請求項16において、該電圧変換器のデューティサイクルが、該デューティサイクルを固定した量へ減少させること、該デューティサイクルを出力電圧に比例する量だけ減少させること、及び該デューティサイクルを出力電圧スルーレートに比例する量だけ減少させること、の内の少なくとも1個を包含している方法。
【請求項19】
請求項16において、更に、
該電圧変換器の出力電流がスレッシュホールド電流未満である場合に、該電圧変換器の変換比を減少させる、
ことを包含している方法。
【請求項20】
請求項15において、更に、
検知した値に基いて、少なくとも1個のパワー変数を推定する、
ことを包含している方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−524332(P2012−524332A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505988(P2012−505988)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/031505
【国際公開番号】WO2010/121211
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(591013469)ナショナル セミコンダクタ コーポレイション (64)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL SEMICONDUCTOR CORPORATION
【Fターム(参考)】