説明

分散型混合・造粒装置

【課題】強力な混合・分散作用が得られると共に、安価に機械加工ができ、保守点検も容易な分散型混合・造粒装置を提供する。
【解決手段】混合・造粒容器(1)と、該容器(1)の側部に着脱自在に取り付けられる駆動ユニット(10)とから構成する。前記容器(1)の軸方向の長さは直径の0.5〜1.0倍にし、その内部にはチョッパー(30)を設け、内周面は機械加工する。駆動ユニット(10)を構成している回転軸(15)には、円弧部分(18a)が機械加工されている二対の4枚の板状のフラット羽根(18’、18”)を、チョッパー(30)の両側に一対宛取り付ける。前記容器(1)の内周面と、フラット羽根(18’、18”)の円弧部分(18a)との間の間隔を3mm以下の微少クリアランスにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型混合・造粒装置に関し、さらに詳しくは水平方向に配置される円筒状の混合・造粒容器と、この混合・造粒装置内に回転駆動可能に設けられている回転軸に取り付けられている混合羽根と、前記混合・造粒容器の壁部から内部へ臨むように設けられて、前記混合羽根よりも高速で回転駆動されるチョッパーとからなる分散型混合・造粒装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
混合羽根とチョッパーとからなる混合装置あるいは混合・造粒装置は、本出願人によっても色々提案されているが、基本的には横型の混合容器、この混合容器内に設けられている回転軸、回転軸に取り付けられている両翼型のショベル羽根、混合容器の壁部から内部へ突き出るようにして設けられているチョッパーとから構成されている。
したがって、回転軸を回転駆動すると共に、チョッパーを別の電動モータにより回転軸の回転速度よりも高速で回転駆動し、そして被処理物を混合容器内に供給すると、被処理物は両翼型のショベル羽根により掬い上げられ、そして重力により落下しながら混合作用を受ける。混合作用を受ける被処理物は、両翼型のショベル羽根によりチョッパーの方へ移送され、そして高速回転駆動されているチョッパーにより強力な剪断、分散作用を受ける。これにより、被処理物は比較的短時間に混合・分散あるいは造粒される。
【0003】
【特許文献1】特許第3659915号公報
【0004】
混合羽根とチョッパーとからなる構造の混合・造粒装置は、上記のように従来周知であるが、本発明の直接的な先行技術文献として特許文献1を挙げることができる。特許文献1に示されている混合・造粒装置は、図4に示されているように構成されている。すなわち、横型の円筒状混合容器50、この容器内に回転駆動可能に設けられている回転軸51、回転軸に取り付けられている第1、2のリボン形状のフライト53、53’、前記円筒状混合容器50の壁部から内部へ臨むように設けられているチョッパー60等から概略構成されている。第1、2のリボン形状のフライト53、53’は、軸方向に所定の間隔をおいて、フライト53、53’間に分散・剪断位置が確保されるように配置され、そして被処理物を分散・剪断位置の方へ移送するように互いに逆方向に捻られている。チョッパー60は、前記分散・剪断位置に設けられ、第1、2のリボン形状のフライト53、53’よりも高速で回転駆動されるようになっている。
【0005】
したがって、回転軸51を所定速度で駆動し、チョッパー羽根60を回転軸51よりも高速で回転駆動し、排出口62を閉鎖して供給口63から所定量の被処理物を供給する。そうすると、供給された被処理物は、矢印K方向に回転駆動される第1のリボン形状のフライト53、53により連続的に掬い上げられ、そして所定高さから落下する。これにより、連続的に混合される。このように混合されながら混合・分散位置の方へ移送される。第2のフライト53’、53’によっても同様に連続的に混合される。そして、混合・分散位置の方へ移送される。このように、第1のリボン形状のフライト53、53により移送される被処理物と、第2のリボン形状のフライト53’、53’により移送される被処理物は、略中央部の混合・分散位置内で衝突し混合が促進される。この混合・分散位置へ移送される多量の被処理物は、チョッパー羽根60に衝突し強力な混合・分散作用を受け、短時間に混合あるいは造粒される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている発明によると、第1、2のリボン状のフライト53、53’により多量の被処理物がチョッパー60の方へ略連続的に移送され、チョッパー60により強力な混合・分散作用を受け、短時間にしかも均一に混合される効果が得られる。また、第1、2のリボン形状のフライト53、53’は互いに逆方向に捻られたフライトからなっているので、これらのフライトで移送される被処理物は、軸方向の略中心位置の混合・分散位置で互いに衝突する。これによっても、被処理物の混合が促進されるという優れた効果が得られ、現在も有効に実施されている。
【0007】
しかしながら、改良すべき点も認められる。例えば、被処理物は前処理として第1、2のリボン形状のフライト53、53’で混合され、そしてチョッパー60が設けられている混合・分散位置へ送られるようになっているので、第1、2のリボン形状のフライト53、53’は、ある程度長くならざるを得ず、回転軸51が軸方向に長くなっている。このように回転軸51あるいは第1、2のリボン形状フライト53、53’が長くなっているので、供給される被処理物がチョッパー60に達するまでに時間がかかり、結果として混合分散に時間がかかっている。また、第1、2のリボン形状のフライト53、53’が軸方向に長いので、円筒状混合容器50も長くなり、その内周面の機械加工がコストの面、精度の面等から困難になっている。精密な機械加工がなされていないと、円筒状混合容器50の内周面と、第1、2のリボン形状のフライト53、53’の外周部との間のクリアランスを大きく設定せざるを得ず、例えば5〜10mmとなっている。このように、隙間が大きいと被処理物の残留量が大きくなり、運転の効率低下の原因にもなっている。このような残留被処理物は保守・点検時には廃棄され、無駄になる。また、回転軸51が長いので、軸の両端を軸受けしなければならず、清掃時の主軸および混合羽根を含む混合ユニットを混合容器から取り外すことは困難である。
【0008】
さらには、第1、2のリボン形状のフライト53、53’の製作は、構造上あるいは形状上の理由によりコストがかかるという問題もある。また、リボン状に捻られているので、強度が劣る欠点もある。
本発明は、上記したような従来装置の改良すべき点を解決した分散型混合・造粒装置を提供することを目的とし、具体的には混合羽根とチョッパーとを備え、必要な混合・分散作用が得られ、しかも安価に機械加工ができ、強度的にも問題のない分散型混合・造粒装置を提供することを目的としている。さらには、残留被処理物の量が少なく、経済的に造粒することができる分散型混合・造粒装置を提供することを目的としている。また、他の発明は、上記目的に加えて分解・組立あるいは保守点検が容易な分散型混合・造粒装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、混合羽根には4枚の板状のフラット羽根が適用される。そして、回転軸からは望ましくは2本のアームが半径外方へ伸び、その先端部に4枚の板状のフラット羽根が1枚宛取り付けられる。1本のアームの両先端部にそれぞれ取り付けられた板状のフラット羽根は、円周方向に見て途切れ、隣接する板状のフラット羽根との間には所定の間隔がある。すなわち、板状のフラット羽根は、スクリュのように連続はしていない。これにより、板状のフラット羽根が回転するとき、被処理物は叩きつけられ、強力な混合作用を受けることになる。このように強力な混合作用が得られるので、混合羽根は4枚の板状のフラット羽根で足り、混合・造粒容器の軸方向の長さは短くなり、その幅あるいは軸方向の長さは、混合・造粒容器の直径の0.6〜1.0の範囲に構成される。このような混合作用を奏する板状のフラット羽根は、回転軸に対して所定角度偏らせて、あるいは所定角度振られて前記回転軸に軸方向に所定の間隔をおいて取り付けられる。したがって、板状のフラット羽根は被処理物を軸方向へ送る作用も奏することになる。
【0010】
混合・造粒容器は軸方向に短いので、その内周面は低コストで精密に機械加工されている。また、板状のフラット羽根は、平面形状が略扇形を呈すると共に、少なくともその外周部の円弧部分は高精度に機械加工されている。このように、混合・造粒容器の内周面と、板状のフラット羽根の円弧部分とが機械加工されているので、これらの間の隙間を小さくすることができ、その間隔は3mm以下の微少クリアランスになるように構成されている。
【0011】
また、他の発明は、板状のフラット羽根が取り付けられている回転軸と、この回転軸を駆動する電動モータはユニット化され、円筒状の混合・造粒容器の側部に着脱自在に取り付けられる。
【0012】
かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、水平方向に配置されている円筒状の混合・造粒容器と、該混合・造粒容器内に回転駆動可能に設けられている回転軸と、該回転軸に取り付けられている混合羽根と、前記混合・造粒容器の壁部から内部へ臨むようにして設けられて、前記回転軸よりも高速で回転駆動されるチョッパーとからなる分散型混合・造粒装置であって、前記チョッパーは、前記混合・造粒容器の軸方向の略中心部の混合・分散域に設けられ、前記混合・造粒容器の軸方向の長さは、直径の0.5〜1.0倍に選定されていると共に、少なくともその内周面は機械加工され、前記混合羽根は、平面形状が略扇形を呈すると共に、少なくともその外周部の円弧部分は機械加工されている二対の4枚の板状のフラット羽根からなり、前記二対の板状のフラット羽根の一対は、その面が前記回転軸に対して所定角度振られて前記混合・分散域の一方側に位置するように、他の一対は逆方向に振られて前記混合・分散域の他方側に位置するように、前記回転軸に取り付けられ、前記混合・造粒容器の内周面と、前記板状のフラット羽根の円弧部分との間の間隔は、3mm以下の微少クリアランスに選定されている。
【0013】
請求項2に記載の発明は、水平方向に配置されている円筒状の混合・造粒容器と、前記混合・造粒容器の壁部から内部へ臨むようにして、前記混合・造粒容器の軸方向の略中心部の混合・分散域に設けられて所定速度で回転駆動されるチョッパーと、前記混合・造粒容器の側部に着脱自在に取り付けられる駆動ユニットとからなり、前記駆動ユニットは、回転軸と、該回転軸に取り付けられている混合羽根と、前記回転軸を回転駆動する電動モータとを備え、前記駆動ユニットが前記混合・造粒容器に取り付けられると、前記駆動ユニットの回転軸が前記混合・造粒容器の内部の所定位置に収まるようになっている分散型混合・造粒装置であって、前記混合・造粒容器の軸方向の長さは、直径の0.5〜1.0倍に選定されていると共に、少なくとのその内周面は機械加工され、前記混合羽根は、平面形状が略扇形を呈すると共に、少なくともその外周部の円弧部分は機械加工されている二対の4枚の板状のフラット羽根からなり、前記二対の板状のフラット羽根の一対は、その面が前記回転軸に対して所定角度振られて、前記駆動ユニットを前記混合・造粒容器に取り付けると、前記混合・分散域の一方側に位置するように、他の一対は逆方向に振られて、同様に前記駆動ユニットを前記混合・造粒容器に取り付けると、前記混合・分散域の他方側に位置するように、前記回転軸に取り付けられ、前記混合・造粒容器の内周面と、前記板状のフラット羽根の円弧部分が機械加工されていることにより、前記駆動ユニットを前記混合・造粒容器の側部に取り付けると、前記混合・造粒容器の内周面と、前記板状のフラット羽根の円弧部分との間の間隔が3mm以下の微少クリアランスになるように構成されている。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によると、混合羽根は、平面形状が略扇形を呈すると共に、少なくともその外周部の円弧部分は機械加工されている二対の4枚の板状のフラット羽根からなり、前記二対の板状のフラット羽根の一対は、その面が前記回転軸に対して所定角度振られて前記混合・分散域の一方側に位置するように、他の一対は逆方向に振られて前記混合・分散域の他方側に位置するように、前記回転軸に取り付けられているので、換言すると混合・分散域の両側には一対の板状のフラット羽根があるだけで他に羽根がないので、混合・造粒容器の軸方向の長さを短くすることができ、直径の0.5〜1.0倍に選定されている。したがって、混合・造粒容器の内周面を安価に機械加工することができるという本発明に特有の効果が得られる。また、軸方向に短いので、供給される被処理物はチョッパーの方へ直ちに送られて強力な混合・分散作用を受け、短時間に例えば2〜10分という極めて短い時間で造粒される。さらには、混合羽根が板状のフラット羽根からなっているので、強度は大きく製作は容易という効果も得られる。
また、混合・造粒容器の内周面と、板状のフラット羽根の円弧部分は機械加工されているので、その間隔を3mm以下の微少クリアランスに選定することができ、造粒終了後に、破棄する被処理物の残存量が少ないという、経済的な効果も得られる。
【0015】
また、本発明によると、チョッパーは混合・分散域に設けられて、常に被処理物で埋められ強力な混合・分散作用を受けるので、少量の液体で造粒することができる。例えば、食品原料を造粒するとき、特許文献1に記載されている混合装置には12%程度の水分を必要とするのに対し、本発明によると7%程度の水分で造粒することもできる。このとき、添加する液体の量を調整して1〜0.1mmのような任意の微粒子の製品を得ることができる。また、添加する液体の量が少ないので、短時間で乾燥できる効果も得られる。さらには、被処理物は強力な混合・分散作用を受けるので、当初から液体を添加して造粒することもできる。また、円筒状の混合・造粒容器と、前記混合・造粒容器の側部に着脱自在に取り付けられる駆動ユニットとからなっている発明によると、上記のような効果に加えて、メンテナンスが容易であるという効果がさらに得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1〜4により本発明の実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態に係る分散型混合・造粒装置を示す図で、その(ア)は全体の、そしてその(イ)は(ア)において矢印イーイ方向に見た図に相当する断面図であるが、これらの図に示されているように、本実施の形態に係る分散型混合・造粒装置は、概略的には、軸芯が水平方向になるように配置される円筒状の混合・造粒容器1と、この混合・造粒容器1の側部に着脱自在に取り付けられている駆動ユニット10とからなっている。この駆動ユニット10が混合・造粒容器1の側部に取り付けられると、駆動ユニット10の方に設けられている回転軸15が混合・造粒容器1の内部へ片持梁的に突き出て、混合・造粒容器1内で回転駆動されるようになっている。また、混合・造粒容器1の壁部の斜め下方には、詳しくは後述するようにチョッパー30が設けられている。
【0017】
円筒状の混合・造粒容器1は、断面形状は円形を呈し、図1の(ア)において左方の側部は側板2で閉鎖されている。本実施の形態によると、混合・造粒容器1の他方の側部にはフランジ3が設けられている。このフランジ3に駆動ユニット10の側板11が、ボルトナットのような固着手段により着脱時税に取り付けられるようになっている。混合・造粒容器1の軸方向の略中心部において、換言すると軸方向の略中心部近傍の混合・分散域Xにおいて、その上方部に化学品例えば顔料・染料、薬品、食品、鉱工業品例えば建材、セメント等の被処理物を供給するための材料供給口4と、水等の添加液を供給するための液供給口5とが設けられている。また、下方部に造粒された製品排出口6が設けられている。この製品排出口6には、例えばピストンシリンダユニットで開閉される蓋が設けられているが、図1には示されていない。
【0018】
こように構成されている混合・造粒容器1の軸方向の幅あるいは長さLは、直径Dの0.6〜1.0になるように選定されている。本実施の形態によると、混合・造粒容器1の軸方向の長さLが直径に対してこのように短いので、混合・造粒容器1の内周面は機械加工によって安価に精密に仕上げられている。
【0019】
本実施の形態によると、前述した混合・造粒容器1は、図には示されていないが、架台に取り付けられている。そして、架台は図1の(ア)において右方へ延びてガイドレール12、12に連なっている。駆動ユニット10の下部には車輪13、13、…が設けられ、これらの車輪13、13、…が、ガイドレール12、12に乗り、図1の(ア)において矢印Aで示されているように水平方向に移動自在で、上記した混合・造粒容器1の側部に着脱自在になっている。このように、着脱自在に構成されている駆動ユニット10の内部に、回転軸15を回転駆動する電動モータ、この電動モータの回転速度を制御する制御装置等が設けられている。
【0020】
回転軸15は、駆動ユニット10の側部から片持梁的に出ている。この回転軸15は、混合・造粒容器1の軸方向の長さLと実質的に同じ長さになっている。したがって、駆動ユニット10を混合・造粒容器1の側部に側板11を利用して取り付けると、回転軸15は混合・造粒容器1内に片持梁的に支持されて収まる。この状態が図1の(ア)に示されている。また、駆動ユニット10を混合・造粒容器1から取り外すと、回転軸15を混合・造粒容器1から取り出すことができる。この取り外した状態が図2に示されている。さらには、図2には具体的には示されていないが、この回転軸15を駆動ユニット10から引き抜くこともできるようになっている。
【0021】
このように構成されている回転軸15に、第1の羽根アーム16、16が取り付けられ、この第1の羽根アーム16、16と軸方向に所定の間隔をおいて第2の羽根アーム17、17が取り付けられている。すなわち、第1、2の羽根アーム16、17は、混合・造粒容器1の軸方向の略中心部の混合・分散域Xを挟んで、両側にそれぞれ取り付けられている。これらの第1、2の羽根アーム16、17は互いに90度ずれている。換言すると、側面的にみるとクロス状に取り付けられている。そして、これらの羽根アーム16、17の、それぞれの先端部に混合羽根が取り付けられている。
【0022】
混合羽根は、本実施の形態では4枚とも同じ形状の板状のフラット羽根18から構成されている。さらに詳しく説明すると、図1の(イ)に示されているように、混合・造粒容器1の内周面1a側に位置する円弧部分18aは、混合・造粒容器1の内周面1aと略同じ曲率の円弧状に、そして第1、2の羽根アーム16、17に取り付けられる中心部18bは幅広に、全体として平面形状が略扇形を呈するように形成されている。このようなフラット羽根18の、少なくとも円弧部分18aは精密に機械加工されている。
【0023】
第1のフラット羽根18’、18’は、第1の羽根アーム16、16に、その円弧部分18aと混合・造粒容器1の内周面1aとのクリアランスが例えば3mm以下になるように近接して、かつ回転軸15が矢印B方向に回転駆動されるとき、被処理物が左方の混合・分散域Xの方へ送られるように所定の角度をつけて取り付けられている。また、第2のフラット羽根18”、18”は、第2の羽根アーム17、17に、その円弧部分18aと混合・造粒容器1の内周面1aとのクリアランスが同様に3mm以下になるように近接して、かつ回転軸15が矢印B方向に回転駆動されるとき、今度は被処理物が右方の混合・分散域Xの方へ送られるように所定の角度をつけて取り付けられている。このように取り付けられている隣り合うフラット羽根18’、18’の円周方向の間には、図1の(イ)に示されているように、比較的大きな間隔がある。このように大きな間隔があるので、第1、2のフラット羽根18’、18”が回転するとき、被処理物は、連続したスクリュとは異なり、叩かれるようにして混合・分散されることになる。
【0024】
チョッパー30の構造自体は、従来周知であるので詳しくは説明しないが、図1の(イ)に示されているように、複数段に設けられているチョッパー羽根31、31、…から構成されている。そして、チョッパー羽根31、31、…が混合・造粒容器1の内部に位置し、電動モータ32が外部に位置するようにして混合・造粒容器1の斜め下方に取り付けられている。また、チョッパー軸に取り付けられているチョッパー羽根31、31、…は、混合・造粒容器1の内部で分解でき、チョッパー軸のシールも取り外し可能になっている。このように構成されているチョッパー30は、電動モータ32により回転軸15の回転とは関係なく独立して比較的高速で回転駆動されるようになっている。
【0025】
チョッパー30の取り付け位置についてさらに詳しく説明する。チョッパー30は、第1、2のフラット羽根18’、18”と干渉しない混合・分散域Xで、次のような位置に設けられている。すなわち、被処理物は第1、2のフラット羽根18’、18”が所定速度で回転駆動されると、図1の(イ)に示されているような形状Tに堆積するが、一番厚くなる堆積する位置、換言すると垂直軸から回転方向に60度程度偏った位置に設けられている。
【0026】
次に、上記実施の形態の作用について説明する。混合・造粒容器1のフランジ3に駆動ユニット10の側板11を取り付ける。そうすると、図1の(ア)に示されているように組み立てられる。回転軸15を設定された比較的低速で駆動する。また、チョッパー30を電動モータ32により高速で回転駆動する。製品排出口6を閉鎖してバッチ運転する。材料供給口4から所定量の被処理物を供給する。また、所定時間経過後に必要に応じて液体供給口5から液体を供給する。供給された被処理物は、矢印B方向に回転駆動されている第1のフラット羽根18’、18’により混合され、そして混合・分散域Xの方へ送られる。第2のフラット羽根18”、18”により、回転方向に見て90度遅れて同様に混合され、そして混合・分散域Xの方へ送られる。
【0027】
このように、第1のフラット羽根18’、18’により送られる被処理物と、第2のフラット羽根18”、18”により送られる被処理物は、混合・分散域X内で互いに衝突し混合作用を受ける。そして、前述したような形状Tに堆積し、チョッパー羽根31、31、…に衝突し強力な混合・分散作用を受け、短時間に造粒される。上記のようにして造粒するとき、回転軸15の軸のトルクは、図3に示されているように変化し、所定量の液を添加して攪拌を続行すると「核」が生成され、そして適当な粒径の造粒物が生成される。造粒物が生成されると、攪拌トルクがピーク値となる。そして、徐々に低下する。これにより、造粒工程が終了したことを知って、製品排出口6の蓋を開いて製品を排出する。上記のようにして造粒するとき、添加する液体の量を調整して、所望の粒径の造粒部を得る。以下、同様にしてバッチ運転して造粒する。
【0028】
図4は、凝集粉体G・Fの造粒処理段階を模式的に示す図であるが、凝集粉体G・Fに液体を添加して混合分散するとき、本実施の形態によると第1、2のフラット羽根18’、18”とチョッパー30とにより強力に分散混合した後に液を添加するので、図4の(ア)に示されているように、液分は単一粉体に分散された粉体F、F、…の周りに付着する。したがって、微少の水分によって理想的な造粒物が得られる。これに対し、分散混合力が弱いと、図4の(イ)に示されているように、液分は凝集粉体G・Fの周りに付着した状態で造粒される。したがって、余剰残留水が多く、不完全な造粒物となる。
【0029】
本実施の形態に係る分散型混合・造粒装置は、上記のように構成されているので、被処理物と液体とを同時に加えて、液分の混合・分散を同時に行っても理想的な造粒物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態を模式的に示す図で、その(ア)は全体の、そしてその(イ)は、(ア)において矢印イーイ方向に見た図に相当する断面図である。
【図2】本実施の形態に係る分散型混合・造粒装置を、駆動ユニットを引き出して示す断面図である。
【図3】本実施の形態に係る分散型混合・造粒装置により造粒するときの時間と攪拌トルクとの関係を示すグラフである。
【図4】各処理段階にある被処理物の状態を示す図で、その(ア)は本実施の形態による造粒状態を、その(イ)は混合・分散の弱い状態での造粒状態を示す図である。
【図5】従来の混合・造粒装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 混合・造粒容器 4 材料供給口
6 製品排出口 10 駆動ユニット
15 回転軸 18’ 第1の板状のフラット羽根
18” 第2の板状のフラット羽根 18a 円弧部分
30 チョッパー
X 混合・分散域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に配置されている円筒状の混合・造粒容器と、該混合・造粒容器内に回転駆動可能に設けられている回転軸と、該回転軸に取り付けられている混合羽根と、前記混合・造粒容器の壁部から内部へ臨むようにして設けられて、前記回転軸よりも高速で回転駆動されるチョッパーとからなる分散型混合・造粒装置であって、
前記チョッパーは、前記混合・造粒容器の軸方向の略中心部の混合・分散域に設けられ、
前記混合・造粒容器の軸方向の長さは、直径の0.5〜1.0倍に選定されていると共に、少なくとのその内周面は機械加工され、
前記混合羽根は、平面形状が略扇形を呈すると共に、少なくともその外周部の円弧部分は機械加工されている二対の4枚の板状のフラット羽根からなり、前記二対の板状のフラット羽根の一対は、その面が前記回転軸に対して所定角度振られて前記混合・分散域の一方側に位置するように、他の一対は逆方向に振られて前記混合・分散域の他方側に位置するように、前記回転軸に取り付けられ、
前記混合・造粒容器の内周面と、前記板状のフラット羽根の円弧部分との間の間隔は、3mm以下の微少クリアランスに選定されていることを特徴とする分散型混合・造粒装置。
【請求項2】
水平方向に配置されている円筒状の混合・造粒容器と、前記混合・造粒容器の壁部から内部へ臨むようにして、前記混合・造粒容器の軸方向の略中心部の混合・分散域に設けられて所定速度で回転駆動されるチョッパーと、前記混合・造粒容器の側部に着脱自在に取り付けられる駆動ユニットとからなり、
前記駆動ユニットは、回転軸と、該回転軸に取り付けられている混合羽根と、前記回転軸を回転駆動する電動モータとを備え、
前記駆動ユニットが前記混合・造粒容器に取り付けられると、前記駆動ユニットの回転軸が前記混合・造粒容器の内部の所定位置に収まるようになっている分散型混合・造粒装置であって、
前記混合・造粒容器の軸方向の長さは、直径の0.5〜1.0倍に選定されていると共に、少なくともその内周面は機械加工され、
前記混合羽根は、平面形状が略扇形を呈すると共に、少なくともその外周部の円弧部分は機械加工されている二対の4枚の板状のフラット羽根からなり、前記二対の板状のフラット羽根の一対は、その面が前記回転軸に対して所定角度振られて、前記駆動ユニットを前記混合・造粒容器に取り付けると、前記混合・分散域の一方側に位置するように、他の一対は逆方向に振られて、同様に前記駆動ユニットを前記混合・造粒容器に取り付けると、前記混合・分散域の他方側に位置するように、前記回転軸に取り付けられ、
前記駆動ユニットを前記混合・造粒容器の側部に取り付けると、前記混合・造粒容器の内周面と、前記板状のフラット羽根の円弧部分との間の間隔が、3mm以下の微少クリアランスになるように構成されていることを特徴とする分散型混合・造粒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−229461(P2008−229461A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71515(P2007−71515)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000207724)大平洋機工株式会社 (7)
【Fターム(参考)】