説明

分散機およびペーストの製造方法

【課題】コロを有する分散機を用いてミルベースの分散する場合において、分散性能が高く、コロの摩耗や焼き付き、割れ、欠け、破損による問題発生の少ない分散機およびそれを用いたペーストの製造方法を提供する。
【解決手段】筒状容器1内に配置された中心軸を中心に回転可能で、かつ外周部に前記中心軸と平行な溝を複数個有するローター2、および前記溝に配置され、前記筒状容器1内の内壁に当接して自転しながら前記筒状容器内を公転可能に構成されたコロ5を有する分散機であって、前記ローター2のミルベース供給口側端部において、コロ5がローター2に接した状態における筒状容器内面とコロ5の隙間の最小値をG(mm)、前記ローター2のミルベース吐出口側端部において、コロ5がローター2に接した状態における前記円筒容器1内面と前記コロ5の隙間の最小値をG(mm)とした時、G>Gを満足することを特徴とする分散機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、印刷インキ、ペースト、磁性塗料等の高粘度材料(ミルベース)中の粒子等を微細に分散させるのに好適な分散機およびペーストの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路材料やディスプレイにおいて、ペーストを用いたパターン加工技術が多く用いられている。近年、前記分野では小型化・高精細化が進んでおり、それに対応することができるペースト分散技術が求められている。特に、プラズマディスプレイ部材においては、高精度のパターン加工が要求される。高精度のパターン加工を実施するためには、これらに用いられるペースト成分中に含まれる無機粒子や導電性粉末等の粒子がその要求される粒子径や表面特性などを維持しつつ、充分に分散されていることが必要となる。
【0003】
これらのペーストを処理する分散機として、3本ロールミルやサンドミル、ボールミル、ビーズミル等の媒体型分散装置が提案されている。
【0004】
このうち、3本ロールミル装置は開放型であるために溶媒が蒸発することによる作業環境の悪化、異物の混入等の問題があり、それらの問題に起因するロスが多く発生する。機械操作(ロール間隙調整)にも熟練を必要とし、ロールの間隙の不均一性に起因する分散不良の問題もある。一方、サンドミルは密封構造とすることができ、連続処理も可能であるが、分散媒体の摩耗や破壊による交換頻度が高く、高粘度ペーストでは出口部分に配置されているスクリーンやギャップセパレータに分散媒体が集中し、運転ができなくなる問題がある。分散媒体としてボールやビーズ等を充填したボールミルやビーズミルは分散媒体によりせん断、圧縮による力を付与して被分散処理ペースト中の無機微粒子等を分散させるもので、高分散性が得られる半面、媒体の衝突や衝撃による力が大きすぎて被分散粒子の粒子径の低下や比表面積の増大などの変化を招き、所定の特性を有するペーストを得ることが困難であった。
【0005】
これらに代わるものとして、コロを用いた分散機が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0006】
特許文献1記載の分散機においては、筒状容器と同軸上に配置した回転駆動軸に、半径方向外方に移動可能で、かつ自転可能なようにコロを支持し、このコロを遠心力で容器内壁面に押し付けて自転させながら筒状容器内を公転させることにより分散を行う。しかしながら、ペーストの通過部分が大きいため、コロが自転しながら容器内を公転することにより容器内壁の分散領域で捕捉分散される量よりもペーストが未処理のまま通過してしまう量の方が多く、充分に処理されないまま通過してしまうショートパスの問題が生じる。
【0007】
特許文献2、3、4は筒状容器と同軸状に回転可能で、中心軸と平行な溝を複数形成したローターを筒状容器内に配置し、前記溝内にコロを配置し、ローターの回転による遠心力でコロを筒状容器の内壁に当接させ、コロが自転しながら筒状容器内を公転するように構成された分散機が記載されている。この分散機においては、ローターが回転することによりペーストがコロと筒状容器の内壁面、及びコロとローターの溝間で圧縮、剪断作用を受ける。また、筒状容器、ローターおよびコロの間の隙間を小さくすることにより、ショートパスを解消させることができる。
【0008】
しかしながら、これらの装置を用いて分散を行った場合、ペースト中に含まれる粒子の凝集物、いわゆるダマが存在する場合、ダマがコロと筒状容器内壁との間に噛み込み、コロが自転することができない状態で筒状容器内壁に押さえつけられたままローターが回転する、いわゆるロックされた状態になる場合がある。この状態でローターを長時間回転させた場合、コロがローター溝内で自転していないため、溝とコロ、あるいはコロと筒状容器の間の摩擦力が極端に大きくなる。このため、筒状容器とコロ、溝とコロ、あるいはコロとローターとの間の摩擦熱により、コロ、ローター、筒状容器の表面温度が上昇し、コロが摩耗しやすくなり、コロの焼き付きや、内部と表面の熱膨張差によるコロの割れ、欠け、破損が起こる問題があった。また、それが引き金となってローターが破損する場合があり、長期運転が不可能であったり、さらには破損が起こった場合にコロ、ローターの交換に時間を要するといった問題があった。
【0009】
また、破損により生じた異物がペースト中に混入する事による品質の低下を引き起こすという問題があった。
【特許文献1】特開平5−96197号公報(請求項1等)
【特許文献2】特開平11−197479号公報(請求項1等)
【特許文献3】特開2004−905号公報(請求項1等)
【特許文献4】特開2004−306027号公報(請求項1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、コロを有する分散機を用いてミルベースを分散する場合において、分散性能が高く、コロの摩耗や焼き付き、割れ、欠け、破損による問題発生の少ない分散機およびそれを用いたペーストの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、中心軸に垂直な方向の断面が円形となる内面を有する筒状容器、前記筒状容器の前記中心軸方向の一方の端部付近に配置されたミルベース供給口、前記筒状容器の前記中心軸方向の他方の端部付近に配置されたミルベース吐出口、前記筒状容器内に配置された、前記中心軸を中心に回転可能で、かつ外周部に前記中心軸と平行な溝を複数個有するローター、および前記溝に配置され、前記筒状容器内の内壁に当接して自転しながら前記筒状容器内を公転可能に構成されたコロを有する分散機であって、前記ローターのミルベース供給口側端部において、コロがローターに接した状態における筒状容器内面とコロの隙間の最小値をG(mm)、前記ローターのミルベース吐出口側端部において、コロがローターに接した状態における前記円筒容器内面と前記コロの隙間の最小値をG(mm)とした時、G>Gであるコロを用いた分散機とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、供給口側端部付近において、ペースト中の粉末の凝集物(ダマ)を荒粉砕することができるため、コロの摩耗や焼き付き、割れ、欠け、破損による問題発生の少ない分散機およびそれを用いたペーストを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の分散機の構成を、図面に基づいて詳細に説明する。本発明におけるコロを用いた分散機の概略を示した横面図を図1、筒状容器の中心軸に垂直な方向の断面図を図2に示す。中心軸に垂直な方向の内面の断面が円形である筒状容器1を設け、その中心軸方向の一方の端部付近にミルベース供給口9を、他方の端部付近にミルベース吐出口10を設ける。、さらに、前記筒状容器1内に、前記中心軸を中心に回転可能なローター2を配置する。ローターは1個でも良いが、図1の様に複数個のローターを前記中心軸方向に並べて配置しても良い。ローター2の最外周には前記中心軸と平行な溝4が複数個あり、その溝にコロ5が配置されている。なお、コロ5が溝4から脱落しないように、筒状容器1の中心軸方向両端を円盤状の覆板16で閉じておく。複数個のローターを設ける場合は、さらにローターとローターの間にも円盤状の仕切り板17を設け、コロが隣接しているローター溝内への進入を防止する。
【0014】
本発明に用いる分散機は、ローター2のうち、ミルベース供給口側端部において、コロ5がローター2に接した状態における筒状容器内面とコロの隙間の最小値をG(mm)、ミルベース吐出口側端部において、コロ5がローター2に接した状態における前記円筒容器内面と前記コロの隙間の最小値をG(mm)とした時、G>Gとなるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
図3にローター2が静止しているときのミルベース供給口側端部におけるコロ5近傍の拡大図を、図4にローター2が静止しているときの吐出口側端部におけるコロ近傍の拡大図をそれぞれ示す。本発明においては、図3、図4に示すようにG>Gとすることが、コロの摩耗や焼き付き、割れ、欠け、破損を抑制するために必要である。
【0016】
図7はG>Gを満たさない従来の分散機において、ローター2が回転している状態を示した模式図である。分散機内の供給口側端部付近ではペーストの分散はほとんど進んでいないために、ペースト中には粉末の凝集物(ダマ)8が多く含まれている。そのため、凝集物(ダマ)8がローター2と筒状容器内壁との間に噛み込み、コロが筒状容器内壁に押さえつけられたままローターが回転する、いわゆるロックされた状態となり、コロが摩耗しやすくなったり、焼き付いたり、コロの内部と表面の熱膨張差により割れ、欠け、破損が生じていた。
【0017】
図5は本発明の分散機のローター2のミルベース供給口側端部付近において、ローター2が回転している状態を示した模式図である。本発明ではコロがローターに接した状態における筒状容器内面とコロの隙間の最小値G(mm)が充分に大きいために、凝集物(ダマ)8が存在すると、コロ5はローター溝4側に移動する。このため、コロ5がロックされた状態となることがないため、コロ5が摩耗しやすくなったり、焼き付き、割れ、欠け、破損を生じにくくなる。さらに、ローターの回転を継続していると、凝集物(ダマ)8はローター最外周と筒状容器内壁との隙間7との間のズリ応力、およびコロ5の遠心力によって徐々に荒粉砕されする。その場合、再びコロ5は遠心力により、図6に示すように筒状容器内壁に当接しながら自転を始める。これによりミルベースはコロ5と筒状容器1の内面の間の隙間6、およびコロ5とローター2の間において、圧縮、せん断を受け、その結果ミルベース中で粒子が分散される。
一方、ミルベース吐出口側端部付近においては、ペーストの分散が進んでいるために、凝集物(ダマ)8がほとんど存在していない。そのため、図7に示したような凝集物(ダマ)8がローター2と筒状容器内壁との間に噛み込みロックされた状態になることはない。そのため、コロ5の摩耗、焼き付き、割れ、欠け、破損といった問題は生じにくい。
【0018】
本発明において、G>Gを満足する手段としては、以下のような方法がある。
(1)筒状容器内壁の形状を多段形状にする。
(2)筒状容器内壁の形状をテーパー形状にする。
(3)コロ形状を多段形状にする。
(4)コロ形状をテーパー形状にする。
(5)ローターの溝深さを変更する
このうち、(1)は筒状容器内壁の内径をミルベース供給口側から吐出口側方向に向かって段階的に狭くする方法である。(2)は筒状容器内壁の内径を連続的に狭くする方法である。(3)はコロの回転中心軸と平行方向に段階的にコロ直径を小さし、かつ直径の小さい方の一端をミルベース供給口側に配置する方法である。(4)はコロの回転中心軸と平行方向にコロ直径を連続的に小さし、かつ直径の小さい方の一端をミルベース供給口側に配置する方法である。(5)は供給口側のローターの溝深さをミルベース吐出口側に比べて、深くする方法である。
【0019】
ここで、(1)〜(4)の方法は、多段形状もしくはテーパー形状の加工を精度良く行うことが困難であったり、多段形状の角部分やコロのテーパー部分の強度が十分でないといった欠点がある。これらの理由から、(5)のローターの溝深さを変える方法が最も好ましい。ローターの溝深さを変える方法としては、複数のローターを設けて中心軸方向に配列した上で、ローター毎に溝深さを変える方法が好ましい。個々のローターにおける溝深さを一定とすることができるため、加工しやすいという利点がある。さらに、運転中の熱膨張起因の歪みがローター間の仕切り板によって吸収され、小さくなるという利点もある。ただし、加工精度や歪みの問題が解決できるなら、1つのローター内でミルベース供給口側とミルベース吐出口側の溝深さを変更してもよい。
【0020】
本発明においては、G>Gを満足すればよいが、GがGに比べて大きすぎる場合、ミルベース供給口側において、粒子の凝集物(ダマ)が完全に粉砕されないために、ミルベース中に大きな粒子の凝集物(ダマ)が多数存在した状態となり、吐出口側において、凝集物(ダマ)がローター2と筒状容器内壁との間に噛み込み、コロ5がロックした状態になり、コロの摩耗、焼き付き、割れ、欠け、破損が生じることがある。さらに、供給口側端部の筒状容器内面とコロの隙間の最小値G(mm)が大きすぎると、その隙間内をペーストがショートパスし、ペーストの分散性が悪化する場合がある。このため、良好な分散性能が得られ、かつミルベース吐出口側におけるローター2やコロ5の焼き付き、割れ、欠け、破損を防止するには、G(mm)は6.0mm以下であることが好ましい。6.0mmより大きい場合、凝集物(ダマ)が充分に粉砕されないため、ミルベース吐出口側のローター位置において、凝集物(ダマ)が噛み込み、コロ5がロックし、破損してしまう場合がある。また、Gが1.3mmより小さい場合、供給口側のローター位置において、ペースト中の凝集物(ダマ)が噛み込み、コロ5がロックし、破損する場合がある。これらのことを考慮すると、Gは1.3mm〜6.0mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1.6mm〜4.0mm、さらに好ましくは1.8mm〜3.0mmの範囲である。
【0021】
(mm)の範囲については、目的とする分散のペーストが得られてさえいれば、G>Gの範囲であれば特に限定しない。ただし、G(mm)が0.5mmより小さい場合、ローターのたわみや回転時の軸振れ、長時間の連続運転により、ローター2が熱膨張し、筒状容器内壁に接触し、ローター2や筒状容器1が破損する場合がある。これらのことを考慮すると、Gは0.5mm〜4.0mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.6mm〜3.0mm、さらに好ましくは0.7mm〜2.0mmの範囲である。
【0022】
ローターの溝深さについてはコロ5がローター溝4に収納できる深さであればよい。具体的にはコロの直径の0.6〜3.0倍、より好ましくは0.7〜2.5倍、さらに好ましくは0.8〜1.3倍の範囲である。溝深さがコロ直径の3.0倍より大きい場合、ローターが回転して円筒容器内壁にコロ5が接触している状態にある時にコロ5とローター溝底部までの隙間が大きくなり、ミルベースがその隙間内をショートパスし、分散性が悪化する場合がある。反対に溝深さがコロの直径の0.6倍より小さい場合、ローター溝4内でのコロ5の安定性が悪くなり、溝4の角部分やコロ5が破損する場合があるからである。
【0023】
コロ5は、円筒形状のコロを用いる場合は直径が5〜50mmであることが好ましく、より好ましくは7〜30mm、更に好ましくは8〜15mmの範囲である。コロ直径が5mmより小さい場合、剛性が弱くなり、破損しやすくなるからである。反対に直径が50mmより大きい場合、ミルベースが通過できる部分が大きくなるため、分散性能が悪化するからである。コロ5の長さは10〜200mmの範囲が好ましく、より好まし30〜150mmである。
【0024】
ローター最外周と筒状容器内壁との隙間については、0.5mm〜4.0mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.7mm〜3.0mm、さらに好ましくは0.8mm〜2.0mmの範囲である。4.0mmより大きい場合は、ペーストの分散性が低下する。反対に0.5mmより小さい場合、高速回転によるローター回転時の軸振れ、長時間の連続運転時によるローターの熱膨張などにより、筒状容器内壁に接触し、ローター2や筒状容器1が破損する場合がある。
【0025】
コロ5は1つの溝に対して1つ装入されている形でも良いが、溝の長さより短いコロを用いて、溝の長手方向に複数個装填することが、メンテナンスの面で有利である。一方、溝4は複数形成されていれば良いが、図2に示すように放射状に多数形成されていることが好ましい。溝と溝の間の間隔にもよるが、例えばローター直径250mm、コロ直径10mmとした時、ローター断面におけるローター1個当たりの溝形成本数は40個程度形成することができる。溝4の断面形状は図2に示すようなコ字形やU字形、円弧形としても良いが、C字型、台形、L字形としても構わない。割れ、欠けなどの問題が発生しにくく、高い分散性能を得るためには、コ字形、U字形または円弧形とすることが好ましい。
【0026】
さらに、複数のローターを設け、溝の深さを変更してG1、を調整する場合は、ミルベース供給口側端部のローターとミルベース供給口側端部のローターの間にG>G>Gを満足するGとなるような溝深さを有するローターを設けることもできる。この場合、供給口側から吐出口側に向かって、筒状容器内面とコロとの隙間が段階的に小さくなる構造となり、ペースト中の凝集物(ダマ)が徐々に粉砕されるため、分散性能を悪化させることなく、より効果的にコロの摩耗、焼き付き、割れ、欠け等の問題を抑制することができる。
【0027】
本発明において、ローター周速は20m/分〜500m/分の範囲内であることが好ましい。ここでローター周速とはローター最外周の地点における線速度を指す。20m/分以下の時はペーストの分散が充分に行うことができないからである。また、装置の耐久性、コロの摩耗の観点から500m/分より速い速度での運転は行わない方がよい。
【0028】
ローターの軸方向の合計長さについてはローターの歪みや成形精度やコロ、ローター、筒状容器の耐久性に問題がなければ、特に制限はない。ただし、軸の合計長さが長い場合、その重量や歪み、回転による軸振れを押さえるために、ローターの支えは片側のみではなく、両端から支える方が好ましい。
【0029】
本発明の分散機は、少なくとも筒状容器内壁およびコロ、ローターがジルコニア、サイアロンなどのセラミック材で作製されていることが、耐摩耗性を向上できるため好ましい。本発明で好適に用いられるセラミック材の具体例としては、ジルコニア、アルミナ、炭化珪素、窒化アルミ、サイアロンおよびジルコニア/アルミナ混合物などが挙げられる。特に、耐摩耗性、低熱伝導率および熱膨張性の観点から、ジルコニアやサイアロンが好ましく用いられる。セラミック材のコーティング方法の具体例としては、皮膜材料に熱を与えて溶融し、数十〜数百μmの大きさの液状微粒子として素材表面に噴霧させ、衝突・扁平化させて積み重ねていく溶射方式が好ましく用いられる。溶射の熱源としては、プラズマ、レーザー、アークおよびガスなどが挙げられる。
【0030】
また、セラミック材でコーティングされる部材の材質の具体例として、ステンレス鋼材やNi−Cr、Ni−Alなどの金属合金が挙げられる。
【0031】
また、図1に示すように、冷温媒導入口11および冷温媒排出口12を設け、筒状容器外周部やローター内に冷温媒を導入できる構造とし、冷温媒を導入することによりミルベースの温度を制御しながらミルベースを分散することが好ましい。
【0032】
ミルベースが反応性ペーストである場合は冷媒を導入することによって、分散時に発生する熱によって反応が進行しペースト品質が低下するのを防ぐことができる。また、ペーストが高粘度で分散が困難な場合は、温媒を導入することによりペースト粘度を低下させ、分散を容易にすることができる。
【0033】
これらの条件を満たす範囲で適正な剪断力が得られるペーストの粘度は、5〜100Pa・sの範囲であることが好ましい。本発明の分散機においては、ミルベース供給口9からミルベースを連続的に供給して連続分散処理を行うことが好ましい。
【0034】
連続処理の方法としては、ミルベース供給口9に定量ポンプを用いてミルベースを供給する方法が好ましい。定量ポンプの具体例としては、単段渦巻ポンプ、多段渦巻ポンプ、単段タービンポンプ、ボアーホールポンプなどの遠心ポンプ、軸流ポンプ、斜流ポンプなどのプロペラポンプ、単段渦流ポンプ、多段渦流ポンプなどの粘性ポンプ、横ピストンポンプ、堅ピストンポンプ、横型ブランヂャーポンプ、堅型ブランヂャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプ、ウイングポンプなどの往復動ポンプ、エクスターナルギアーポンプ、インターナルギアーポンプ、偏心ネジポンプ、ベーンポンプ、ローラーポンプなどの回転ポンプなどが挙げられる。粘度の高いペーストを供給するには、ダイヤフラムポンプ、偏心ネジポンプが好ましい。定量ポンプを用いることで、分散性の安定したペーストを得ることができる。また、これらのポンプの接液部は、アルミナ、ジルコニア、アルミナ/ジルコニア混合物、炭化珪素、サイアロンなどのセラミックス材で作製されていることが、耐摩耗性を向上できるため好ましい。
【0035】
また、本発明は、上記の分散方法を用いて分散を行うことを特徴とするペースト製造方法を提供する。
【0036】
本発明のペーストの製造方法によって得られるペーストの用途例としては例えば、印刷インキ、塗料、電子材料用ペーストなどを挙げることができる。
【0037】
電子材料用のペーストの内、特にプラズマディスプレイ部材形成用ペーストにおいては、ペースト中にガラス粉末、蛍光体粉末、金属粉末、顔料等の無機粒子を高濃度に含有し、1次粒子径や表面特性などを維持しつつ、かつ十分に分散されていることが必要であるため、本発明のペースト製造方法が好ましく用いられる。

以下、プラズマディスプレイ部材形成用途(以下、PDP用途とする)のペーストを例にとって説明する。
【0038】
PDP用途のペーストとは、塗布、乾燥後に少なくとも焼成を行うことによって、PDP部材上に設けられる電極パターン、誘電体層、隔壁、蛍光体層を形成するために用いるペーストを言う。なかでも電極パターン、隔壁等のパターンを得る場合は、感光性ペーストとし、露光、現像することによってパターンを形成する方法を用いることが好ましい。
【0039】
PDP用途のペーストを構成する成分は、無機粉末と有機成分とに大別することができる。
【0040】
無機粉末としては、ガラス粉末、蛍光体粉末、金属粉末、顔料などが挙げられる。また、耐火物フィラーを添加することも好ましい。
【0041】
ガラス粉末は、PDP用途の内、誘電体層形成用や隔壁形成用途において主成分として好適に用いられる。また、電極形成用途において副成分として用いられる。
【0042】
ガラス粉末としては、主として低融点ガラスからなるものが好ましい。低融点ガラスのガラス転移温度としては430〜500℃が好ましく、ガラス軟化点としては470〜620℃が好ましい。ガラス転移温度とガラス軟化点がこの範囲にあると、焼成時に基板の歪みが小さく、また、緻密な隔壁層が得られる。また、ガラスは、50〜400℃の熱膨張係数が50×10−7〜100×10−7−1であることが好ましい。また、ガラス中に酸化珪素を3〜60重量%、酸化硼素を5〜50重量%の範囲で配合することによって、電気絶縁性、強度、熱膨張係数、絶縁層の緻密性などの隔壁として要求される電気、機械および熱的特性を向上することができる。
【0043】
また、ガラス粉末の粒子のサイズは、所望の隔壁の線幅や高さを考慮して選べばよいが、体積基準分布の中心径(Dv)としては1〜6μm、最大粒子サイズとしては30μm以下、比表面積としては1.5〜4cm2/gが好ましい。
【0044】
蛍光体粉末は、PDP用途の内、蛍光体層形成用途に好適に用いられる。蛍光体粉末としては例えば、赤色では、Y23:Eu、YVO4:Eu、(Y,Gd)BO3:Eu、Y23S:Eu、γ−Zn3(PO42:Mn、(ZnCd)S:Ag+In23などが挙げられる。緑色では、Zn2GeO2:M、BaAl1219:Mn、Zn2SiO4:Mn、LaPO4:Tb、ZnS:(Cu,Al)、ZnS:(Au,Cu,Al)、(ZnCd)S:(Cu,Al)、Zn2SiO4:(Mn,As)、Y3Al512:Ce、CeMgAl1119:Tb、Gd22S:Tb、Y3Al512:Tb、ZnO:Znなどが挙げられる。青色では、Sr5(PO43Cl:Eu、BaMgAl1423:Eu、BaMgAl1627:Eu、BaMg2Al1424:Eu、ZnS:Ag+赤色顔料、Y2SiO3:Ceなどが挙げられる。また、蛍光体粉末のサイズは、面積平均径(Ds)としては1.0〜2.5μmが好ましく、1.2〜2.3μmがより好ましく、体積基準分布の中心径(Dv)としては1.8〜4.5μmが好ましく、2.0〜4.2μmがより好ましく、Ds/Dvとしては1.2〜2.5が好ましく、1.3〜2.3がより好ましい。Ds、DvおよびDs/Dvがこれらの範囲内にあることで、ペーストの濾過性が向上する。
【0045】
金属粉末は、PDP用途の内、電極形成用途に好適に用いられる。
【0046】
金属粉末としては、Ag、Au、Pd、Ni、Cu、AlおよびPtの群から選ばれる少なくとも1種を含むものが使用できる。これらは、それぞれを単独で用いてもよいし、合金として用いてもよいし、複数種類の金属粉末を混合して用いてもよい。
【0047】
金属粉末のサイズとしては、体積基準分布の中心径(Dv)としては0.7〜6μmが好ましく、より好ましくは1.3〜4μmである。体積基準分布の中心径(Dv)がこの範囲内にあることで、緻密な微細パターンの形成が可能となる。
【0048】
耐火物フィラーは、焼成時の形状を安定させるために好ましく添加される。耐火物フィラーとしては、500〜650℃程度の焼成温度で軟化しないものが広く使用でき、高融点ガラスやアルミナ、マグネシア、カルシア、コーディエライト、シリカ、ムライト、ジルコン、ジルコニア等のセラミックス粉末が例示できる。
【0049】
顔料は、PDPの背面板における隔壁の光反射特性を調整する上で、好ましく採用される。例えば、Co−Cr−Fe系、Co−Mn−Fe系、Co−Fe−Mn−Al系、Co−Ni−Cr−Fe系、Co−Ni−Mn−Cr−Fe系、Co−Ni−Al−Cr−Fe系、Co−Mn−AL−Cr−Fe−Ni系等の黒色顔料を用いると、外光反射を低減し、表示画像のコントラストを上げることができる。また、例えば、チタニアなどの白色顔料を用いると、蛍光体の発光を有効にパネル前面に導くことができ、より鮮やかな色彩を表示することができる。
【0050】
ペースト中の全固形分に対する無機粉末の含有量としては、35〜95重量%が好ましく、40〜90重量%がより好ましい。この範囲内とすることで、焼成時の収縮や、形状変化を抑えることができる。有機成分としては、バインダー樹脂、有機溶剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤などを挙げることができる。
【0051】
バインダー樹脂としては、焼成時に酸化、分解または気化し、炭化物が無機物中に残存しないものが好ましく、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等のセルロース系樹脂、または、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート等の重合体もしくはこれらの共重合体からなるアクリル樹脂、ポリ−α−メチルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリブテン等が好ましく用いられる。
【0052】
バインダー樹脂のペーストに対する含有量としては、5〜65重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましい。
【0053】
有機溶剤は、ペーストの粘度の調整のために使用される。有機溶剤としては例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、テルピネオール、ベンジルアルコール、1−ブトキシ−2−プロパン、1,2−ジアセトキシプロパン、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アセトキシ−1−エトキシプロパン、(1,2−メトキシプロポキシ)−2−プロパノール、(1,2−エトキシプロポキシ)−2−プロパノール、2−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、2−フェノキシエタノール、2−(ベンジルオキシ)エタノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラフルフリルアルコール、2,2’−ジヒドロキシジエチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−フェノキシエチルアセテート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、シクロヘキサンノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、1−メチルペンチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトンなどが挙げられる。
【0054】
また、有機溶剤は、その揮発性と使用するバインダー樹脂の溶解性を主に考慮して選定することができる。有機溶剤は、用いるバインダー樹脂に対して良溶媒であることが好ましい。バインダー樹脂の溶解性が高い有機溶剤を採用することにより、ペーストの粘度の調整が容易となり、良好な塗布特性を得ることができる。
【0055】
有機溶剤のペーストに対する含有率としては、35〜65重量%が好ましく、より好ましくは40〜60重量%である。35重量%以上とすることにより、粘度が高すぎず脱泡処理を容易に行うことができる。また65重量%以下とすることによって、安定な分散状態を得ることができ、またペーストを塗布した後に行う乾燥に要するエネルギーと時間を節約できる。
【0056】
また、ペーストを感光性ペーストとして用いる場合には、有機成分として、感光性ポリマー、感光性オリゴマー、感光性モノマーといった感光性成分や光重合開始剤、増感剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤などの添加物成分を前記バインダー樹脂に代えて、もしくは前記バインダー樹脂と併用して用いるることができる。
【0057】
感光性モノマーとしては、活性な炭素−炭素不飽和二重結合を有する官能基を有する化合物を好ましく採用することができる。活性な炭素−炭素不飽和二重結合を有する官能基としては、例えば、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基が利用できる。感光性モノマーとしては例えば、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0058】
感光性ポリマーおよび/または感光性オリゴマーは、感光性ペーストのバインダー樹脂として兼用することもできる。
【0059】
感光性ポリマーおよび感光性オリゴマーは、上記のような感光性モノマーの重合または共重合により得られる。
【0060】
上記のような感光性モノマーと共重合する他の共重合成分として、不飽和カルボン酸などの不飽和酸は、感光後のアルカリ水溶液による現像性を向上することができるので好ましい。不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸およびこれらの酸無水物などが挙げられる。 光重合開始剤の感光性ペーストに対する添加量としては、0.005〜5重量%が感光特性上好ましい。
【実施例】
【0061】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例に使用したミルベースにはプラズマディスプレイパネル用部材の製造に使用する隔壁ペーストを用いた。
[分散機]図1,2に示したもの。
円筒容器内壁直径:250mm、全長375mm、ローターを2個(実施例1、2、4、比較例1)または3個(実施例3)中心軸方向に並べて配置し、両端のローターの外側端部に円盤状覆板を、ローターとローターの間に円盤状の仕切り板を設けた。ローター直径:247mm(最外周間)、ローター1個当たりの溝形成本数:18本、ローター両端の円盤状の覆板の直径:236mm、厚さ25mm、ローターとローターの間の円盤状の仕切り板の直径:236mm、厚さ10mm。
筒状容器材質:ジルコニア/アルミナ=20/80の組成からなるセラミックで被覆した金属(ステンレス)。
ローター材質:ジルコニア/アルミナ=20/80の組成からなるセラミック。
コロ材質:ジルコニア/アルミナ=20/80の組成からなるセラミック。
円盤状の覆板および仕切り板の材質:ジルコニア/アルミナ=20/80の組成からなるセラミック。
[評価方法]
(1)コロの長さ
各位置の溝に配されたコロのうち、最も供給口側に配置されたコロ(18個)の直径、長さをノギスで測定し、その平均値を用いた。
(2)コロの径(最小値および最大値)
各位置の溝に配されたコロのうち、最も供給口側に配置されたコロ(18個)の径をノギスで測定し、同一コロにおいて、その最小値および最大値を求め、最小値/最大値が一番小さくなるコロの値を用いた。
(3)コロの割れ
ペースト分散後、それぞれのローターに配置されたコロを全数目視で観察し、コロが2つ以上に割れたコロのうち、その破断面のうちの少なくとも一つがコロの中心軸との交点を有するものを割れが発生したコロとし、その本数を求めた。
(4)コロの欠け
ペースト分散後、それぞれのローターに配置されたコロを全数目視で観察し、コロが2つ以上に割れたコロのうち、その破断面が全てコロの中心軸との交点を有しないものを欠けが発生したコロとし、その本数を求めた。
(5)コロの焼き付き
ペースト分散後、それぞれのローターに配置されたコロを全数目視で観察し、表面が黒く変色したコロ本数を数えた。
(6)コロの耐摩耗性
ペースト分散後、それぞれのローターで各溝に供えられたコロのうち、最も供給口側にある18個のコロをクリーン容器に入れ、特級アセトン(和光純薬)で浸し、超音波洗浄機を用いて30分間洗浄した。洗浄後、コロをクラス10,000のクリーンベンチオーブンを用いて23℃で24時間乾燥させた。コロの重量を精密天秤で測定し、分散前のコロ重量と比較した。割れ、欠け、焼き付いたコロを除いて、重量減少の最も大きかったコロの減少量を求め、下記の基準でコロの耐摩耗性を判定した)。
0〜30mg:○
31〜100mg:△
101mgを超えるもの:×
(7)分散度
装置:グラインドゲージ(エリクセン製、0〜50μm)
評価:ペースト中の粒子の凝集物の分布密度を観察し、密集した凝集物が現れた箇所の目盛りを読みとった。ただし、密集した凝集物の境界線が目盛りと目盛りの中間に現れたとき、または2本の溝の数値が異なるときは、数値の大きい方の目盛りを読みとり、3回の測定値の中央値をペーストの分散度とした。PDP隔壁形成用のペーストにおいては、分散度が15μm以上の場合、パターン加工・焼成後の隔壁表面の表面粗さが大きくなるため、前面板との密着性が悪くなり、充填しているガスが抜けたり、あるいは前面板との接触による隔壁の欠けが発生する場合がある。サンプリングは1バッチ当たりの仕込量を200kgとして10バッチ目(最終バッチ)の分散開始直後のペーストで行った。
(8)粘度
装置:フィールド型の粘度計(ブルックフィールド社製、モデルDV−II)
測定:回転数3rpm、測定温度25.0℃
サンプリング:1バッチ当たりの仕込量を200kgとして10バッチ目(最終バッチ)分散開始直後のペーストで行った。

[ペーストの製造] PDPの隔壁形成用ペーストとして、酸化鉛、酸化ホウ素、酸化亜鉛、酸化シリコン、および酸化バリウムを主成分とするガラスを粉砕して得た平均粒径2μmのガラス粉末52重量%、メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(重量組成比60/40、重量平均分子量32,000)12重量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート12重量%、ベンゾフェノン1.94重量%、1,6−ヘキサンジオール−ビス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.05重量%、有機染料(ベーシックブルー7)0.01重量%、有機溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)22重量%の組成のものを用いた。
【0062】
この組成のペーストを1バッチ当たり200kgの計量を行い、プラネタリーミキサー(井上製作所製)にて60rpmで60分間攪拌し、粗分散ペーストを作製した。この粗分散ペースト10バッチ分(合計2,000kg)をそれぞれ連続してコロを用いた分散機に通した。

[実施例1] 筒状容器内にミルベース供給口側のローター(最外周部直径:247mm、溝深さ:11.30mm、軸長さ:30mm)、吐出口側のローター(最外周部直径:247mm、溝深さ:9.80mm、軸長さ:270mm)を供え、ローターの外周部の溝内にコロ(直径:10.0mm、長さ:30.0mm)を配した分散機を用いた。この分散機のGは2.80mm、Gは1.30mmであった。粗分散ペーストを定量ポンプを介して、この分散機に供給し、供給速度を10kg/時間になるように定量ポンプを設定し、200時間の分散処理を行い、分散ペーストを得た。尚、冷温媒導入路には15℃の冷却水を循環させた。

[実施例2] 筒状容器内にミルベース供給口側のローター(最外周部直径:247mm、溝深さ:13.50mm、軸長さ:30mm)、吐出口側のローター(最外周部直径:247mm、溝深さ:9.80mm、軸長さ:270mm)を供え、ローターの外周部の溝内にコロ(直径:10.0mm、長さ:30.0mm)を配した分散機を用いた。この分散機のGは5.00mm、Gは1.30mmであった。粗分散ペーストを定量ポンプを介して、この分散機に供給し、供給速度を10kg/時間になるように定量ポンプを設定し、200時間の分散処理を行い、分散ペーストを得た。尚、冷温媒導入路には15℃の冷却水を循環させた。

[実施例3] 筒状容器内にミルベース供給口側のローター(最外周部直径:247mm、溝深さ:11.30mm、軸長さ:30mm)、吐出口側のローター(最外周部直径:247mm、溝深さ:9.30mm、軸長さ:240mm)、供給口側と吐出口側の中間部のローター(最外周部直径:247mm、溝深さ:10.30mm、軸長さ:30mm、)を供え、ローターの外周部の溝内にコロ(直径:10.0mm、長さ:30mm)を配した分散機を用いた。この分散機のGは2.80mm、Gは0.80mm、Gは1.80mmであった。粗分散ペーストを定量ポンプを介して、この分散機に供給し、供給速度を10kg/時間になるように定量ポンプを設定し、200時間の分散処理を行い、分散ペーストを得た。尚、冷温媒導入路には15℃の冷却水を循環させた。

[実施例4] 筒状容器内にミルベース供給口側のローター(最外周部直径:247mm、溝深さ:11.30mm、軸長さ:90mm)、吐出口側のローター(最外周部直径:247mm、溝深さ:9.80mm、軸長さ:210mm)を供え、ローターの外周部の溝内に自公転可能なコロ(直径:10.0mm、長さ:30mm)を配した分散機を用いた。この分散機のGは2.80mm、Gは1.30mmであった。粗分散ペーストを定量ポンプを介して、この分散機に供給し、供給速度を10kg/時間になるように定量ポンプを設定し、200時間の分散処理を行い、分散ペーストを得た。尚、冷温媒導入路には15℃の冷却水を循環させた。

[比較例1] 筒状容器内にミルベース供給口側のローター(最外周部直径:247mm、溝深さ:9.80mm、軸長さ:30mm)、吐出口側のローター(最外周部直径:247mm、溝深さ:9.80mm、軸長さ:270mm)を供え、ローターの外周部の溝内にコロ(直径:10.0mm、長さ:30.0mm)を配した分散機を用いた。この分散機のGは1.30mm、Gは1.30mmであった。粗分散ペーストを定量ポンプを介して、この分散機に供給し、供給速度を10kg/時間になるように定量ポンプを設定し、200時間の分散処理を行い、分散ペーストを得た。尚、冷温媒導入路には15℃の冷却水を循環させた。

[比較例2] 筒状容器内にミルベース供給口側のローター(最外周部直径:247mm、溝深さ:9.80mm、軸長さ:30mm)、吐出口側のローター(最外周部直径:247mm、溝深さ:13.00mm、軸長さ:270mm)を供え、ローターの外周部の溝内に自公転可能なコロ(直径:10.0mm、長さ:30.0mm)を配した分散機を用いた。この分散機のGは1.30mm、Gは4.50mmであった。粗分散ペーストを定量ポンプを介して、この分散機に供給し、供給速度を10kg/時間になるように定量ポンプを設定し、200時間の分散処理を行い、分散ペーストを得た。尚、冷温媒導入路には15℃の冷却水を循環させた。
【0063】
ここで、実施例1〜4に使用したペースト分散機の各種条件と分散処理後のコロの形状、割れ、欠け、焼き付け本数、コロの耐摩耗性、ペーストの粘度、分散性の結果を表1に、比較例1、2の各種条件、評価結果を表2にそれぞれ示した。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例1、3では分散性および分散後において、コロの耐摩耗性や形状には全く問題が見られなかった。実施例2、4では分散性はやや劣るが、コロの耐摩耗性や形状には全く問題が見られなかった。
【0066】
【表2】

【0067】
比較例1では、分散性は問題がなかったが、供給口側のコロの割れ、欠け、焼き付けが多数見られ、耐摩耗性も非常に悪かった。比較例2では供給口側のコロの割れ、欠け、焼き付けが多数見られ、耐摩耗性も非常に悪かった。また、分散性も劣っていた。
【図面の簡単な説明】
【0068】

【図1】本発明に用いる分散機の概略を示す横面図である。
【図2】本発明に用いる分散機の最良の形態を示す断面図である。
【図3】本発明の分散機において、ミルベース供給口側端部付近のローターおよびコロを示す模式図である。
【図4】本発明の分散機において、ミルベース吐出口側端部付近のローターおよびコロを示す模式図である。
【図5】本発明の分散方法において、粒子の凝集物(ダマ)が存在する場合のローターおよびコロの状態を示す模式図である。
【図6】本発明の分散機において、ミルベース供給口側端部付近の定常状態におけるローターおよびコロの回転状態を示す模式図である。
【図7】従来の分散機において、粒子の凝集物(ダマ)が存在する場合のローターおよびコロの状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0069】
1 筒状容器
2 ローター
3 回転軸
4 溝
5 コロ
6 隙間
7 ローター最外周と筒状容器内壁との隙間
8 凝集物(ダマ)
9 ミルベース供給口
10 ミルベース吐出口
11 冷温媒導入口
12 冷温媒排出口
13 動力源
14 ローター回転方向
15 コロ回転方向
16 円盤状の覆板
17 円盤状の仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に垂直な方向の断面が円形となる内面を有する筒状容器、前記筒状容器の前記中心軸方向の一方の端部付近に配置されたミルベース供給口、前記筒状容器の前記中心軸方向の他方の端部付近に配置されたミルベース吐出口、前記筒状容器内に配置された、前記中心軸を中心に回転可能で、かつ外周部に前記中心軸と平行な溝を複数個有するローター、および前記溝に配置され、前記筒状容器内の内壁に当接して自転しながら前記筒状容器内を公転可能に構成されたコロを有する分散機であって、前記ローターのミルベース供給口側端部において、コロがローターに接した状態における筒状容器内面とコロの隙間の最小値をG(mm)、前記ローターのミルベース吐出口側端部において、コロがローターに接した状態における前記円筒容器内面と前記コロの隙間の最小値をG(mm)とした時、G>Gを満足することを特徴とする分散機。
【請求項2】
請求項1に記載の分散機にペーストを供給して分散を行うことを特徴とするペーストの製造方法。
【請求項3】
ペーストがプラズマディスプレイ部材形成用ペーストであることを特徴とする請求項2に記載のペーストの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−7516(P2007−7516A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189202(P2005−189202)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】