説明

分散浄化システムのフィードバック及び分量制御

滅菌システムは、相互接続された制御器のネットワークによって制御される複数の蒸発器を含む。このネットワークは複数の制御部を含み、それぞれの制御部は、関連付けられた蒸発器が気化した滅菌剤をエンクロージャの様々な領域へと注入する速度を独立に調整するために、関連付けられた蒸発器を制御する。このネットワークはまた、滅菌剤の蒸気の注入を全体として調整するように、ネットワークを介してそれぞれの制御部を制御するように構成された主制御部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化システム及び浄化処理に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば気化(vaporous)過酸化水素(VHP)を生成するために用いられるような浄化剤(decontaminant)生成システムが、部屋及び建物(例えばホテルの部屋、病院の病室、科学系の研究室など)を、バクテリア、かび、菌類、酵母などの汚染物質から浄化するために用いられてきた。
【発明の概要】
【0003】
浄化される空間にわたって浄化剤を効果的かつ効率的に分配することを可能とするように、ネットワークへと統合された複数の浄化剤源を含む浄化システムが提供される。
【0004】
本開示の1つの態様によれば、滅菌システムは、液体滅菌剤源と、気化した滅菌剤を異なるように調整可能な速度でキャリアガス中に独立に注入する複数の蒸発器と、を備え、それぞれの前記蒸発器は、同時に、可変に、かつ独立に前記蒸発器への滅菌剤の注入速度を制御する個別の液体滅菌剤制御器を含み、前記滅菌システムはさらに、それぞれの前記蒸発器から、滅菌されるエンクロージャの別々の領域へと前記滅菌剤の蒸気を移送する、少なくとも1つの供給ラインと、相互接続された制御器のネットワークと、を備え、前記制御器のネットワークは、(a)複数の制御部と、(b)主制御部とを備え、前記複数の制御部のそれぞれは、選択された濃度の滅菌剤の蒸気を前記領域のそれぞれへと提供するように、関連付けられた蒸発器が気化した滅菌剤を注入する速度を独立に調整するように前記関連付けられた蒸発器を制御し、前記主制御部は、前記滅菌剤の蒸気の注入を全体として調整するように、前記ネットワークを介してそれぞれの前記制御部を制御するように構成されている。
【0005】
滅菌システムの一実施形態によれば、前記主制御部は前記複数の制御部のうちの1つである。
【0006】
滅菌システムの他の一実施形態によれば、前記主制御部は前記複数の制御部とは別個のユニットである。
【0007】
滅菌システムの一実施形態によれば、滅菌システムは前記エンクロージャの前記別々の領域のそれぞれにおける状況を検知する複数の監視器をさらに備え、前記相互接続された制御器の前記ネットワークは、前記別々の領域において前記検出された状況に応じて、前記蒸発器のそれぞれが前記キャリアガスへと気化した滅菌剤を注入する速度を制御する。前記検出される状況は、温度、圧力、相対湿度、気流速度、滅菌剤濃度、及びこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0008】
滅菌システムの一実施形態によれば、前記滅菌剤は過酸化水素を含む。
【0009】
滅菌システムの他の一実施形態によれば、それぞれの前記蒸発器がさらに、前記蒸発器へのキャリアガスの流速を個別に制御するキャリアガス流れ制御器を含む。
【0010】
本発明の1つの態様によれば、気化した滅菌剤をエンクロージャへと供給する方法が提供される。本方法は、第1の場所において、第1の気化速度で、液体滅菌剤を蒸発させて滅菌剤の蒸気を形成する工程と、第2の場所において、第2の気化速度で、液体滅菌剤を蒸発させて滅菌剤の蒸気を形成する工程と、キャリアガスの流れを前記第1及び第2の場所に提供する工程と、独立に調整可能な速度で、それぞれの場所において、気化した滅菌剤をキャリアガスに注入する工程と、それぞれの場所から、滅菌される前記エンクロージャの別々の領域へと、前記滅菌剤の蒸気を移送する工程と、複数の相互接続された制御部を介して蒸発を制御する工程と、を有し、それぞれの前記制御部は、それぞれの前記場所に選択された濃度の滅菌剤の蒸気を提供するように、関連付けられた蒸発器がそれぞれの場所において気化した滅菌剤を注入する速度を独立に調整するように、関連付けられた蒸発器を制御し、それぞれの前記制御部は、滅菌剤の蒸気の注入を全体として調整するように、前記相互接続された制御部のネットワークを介して、主制御部によって制御される。
【0011】
前述の及び関連する目的の達成のために、さらに本発明は、これから十分に説明され、請求の範囲において特に示される特徴を含む。続く説明及び添付の図面は、本発明の特定の説明的実施形態を詳細に説明する。しかしながらこれらの実施形態は、本発明の原理が採用されてもよい様々な方法のうちのいくつかのみを示す。本発明の他の目的、利点、及び新規な特徴が、図面と組み合わせて考察された際に、続く本発明の詳細な説明から明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付の図面において全ての部品及び特徴は同様の参照符号を有する。複数の添付の図面は概略的な表現であって、必ずしも正確に比例している又は一定の比例に応じて描かれているわけではない。
【0013】
【図1】本発明に従う気化過酸化水素浄化システムの実施形態の概略図である。
【図2】図1に示される局所浄化システムための制御システムの概略図である。
【図3】浄化システムのための制御システムネットワークの概略図である。
【図4】浄化システムのための制御システムネットワークの他の変形実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「浄化(decontamination)」との用語は、滅菌(sterilization)、殺菌(disinfection)、及び消毒(sanitization)を含むものとして理解される。本明細書において好適な実施形態を記述する目的で、議論される目的は滅菌とされる。これは、この用語が当業者に理解されるためである。「浄化」及び「滅菌」との語は本明細書において交換可能であるが、本発明のシステム及び方法は、滅菌、浄化、殺菌、又は他の呼び方をされても、生物学的汚染制御の様々なレベルに適用可能である。「滅菌剤(sterilant)」及び「浄化剤(decontaminant)」との語は、当業者には理解されるように、全ての液体及び気体の滅菌剤、浄化剤、殺菌剤、及び消毒剤を含むことが意図されている。
【0015】
本明細書及び請求の範囲に開示される全ての範囲及び比率の限定は、任意の方法で組み合わせられることができる。他に特別に述べられない限り、単数形の項目に対する言及は、複数形の項目をも含む。請求の範囲で特定される全ての組み合わせは、任意の方法で組み合わせられてもよい。
【0016】
大きいかヘテロジーニアスであるかの少なくとも一方であるエンクロージャ(囲い)の浄化は、VHPシステムにおいて複数の浄化剤注入サイトを用いることによって最もよく達成される。エンクロージャの大きさが大きくなるにつれ、過酸化水素の要求は増え、気化システムの効率がより重要となる。蒸発器の能力はいくつかの点で制限される。例えば、気化プロセスは圧力低下を引き起こし、蒸発器を通る気体の流量を減らす。このことは滅菌時間を増加させ、許容可能な時間間隔内で滅菌可能な大きさにまで、実質的にエンクロージャの大きさを制限する。さらに、滅菌効率を維持するために、過酸化水素が気化状態で安定な圧力にまで、蒸気が生成される圧力は制限される。
【0017】
さらに、大きいエンクロージャはそれ自身が問題を生み出す。チャンバ中にわたる温度差は、より冷たい表面上での凝縮を補償するために、滅菌剤の異なる濃度を要求する。エンクロージャ内の品物は、それらの相対的な吸収性のために、最適な暴露のためには滅菌剤の異なる濃度を要求する。エンクロージャ内のより遠い部分に蒸気を送り込むことは、蒸気供給ライン内での凝縮の程度を増加させ、効率を低下させる。
【0018】
蒸発器の大きさ及び蒸発器への過酸化水素の供給速度を増加させることが役に立つかもしれない。しかしながら、大きな蒸発器は依然として、濃度変化と凝縮の問題に遭遇する。代わりに、大きいかヘテロジーニアスであるかの少なくとも一方であるエンクロージャの浄化は、エンクロージャの外側から複数の位置で浄化剤を注入すること、又はエンクロージャ中にわたって複数のVHP生成システムを配置することによって、複数の浄化剤注入点を用いて達成されうる。個々の蒸発器による浄化剤の導入速度は、エンクロージャ内で調整可能である。
【0019】
気体状の蒸気滅菌/浄化システムは、目標の滅菌又は浄化保証レベルを達成するために、所定の処理パラメータを維持することに頼る。過酸化水素蒸気滅菌/浄化システムについて、これらのパラメータは、過酸化水素濃度、飽和度、温度、圧力及び暴露時間を含む。これらのパラメータを制御することにより、蒸気の飽和による過酸化水素の凝縮を防ぎながら、所望の滅菌保証レベルが成功裏に得られる。
【0020】
本発明の滅菌システムは、複数の浄化剤源を含む。この浄化剤源は、例えば、過酸化水素の蒸発器(VHP)であってもよい。それぞれの蒸発器はローカルに(局所的に)制御され、これらの蒸発器の制御器は通信ネットワークを介して相互接続される。それぞれの蒸発器は、処理条件を所望の制限内に維持するための浄化剤注入システムの調整を可能とするために、浄化剤濃度及び他の処理条件に関してフィードバックを与える局所センサ(ローカルのセンサ)を備える。さらに、処理条件と処理設定との少なくとも一方は、浄化される空間中にわたって適切な量の浄化剤が送達されるまで浄化工程が継続されることが可能なように、浄化剤濃度を積分することを可能とするように調整されうる。
【0021】
図1を参照すると、複数の蒸発器32が、気化過酸化水素をキャリアガス(移送ガス)へと注入する。単純化の目的で、2つの蒸発器が図示され、それぞれは局所制御器(ローカルな制御器)と関連付けられている。特定の浄化システムで用いられる蒸発器の数は、エンクロージャの大きさ及び構成に部分的に依存する。過酸化水素は、好ましくは調整可能な定量ポンプ44によって、カートリッジ又は貯蔵器42から送り込まれ、測定された速度で液滴状又は霧状で蒸発器32の加熱されたプレート(板)へと注入される。板と接触すると過酸化水素は蒸発し、キャリアガスの流れに乗る。プレートの温度は、過酸化水素の解離が起こる温度よりも下に維持される。キャリアガスの流れ制御器又はバッフル(調整装置)38は、キャリアガスの流れを調整可能に制御する。定量ポンプ44及びキャリアガス流れ制御器38の調節は、過酸化水素蒸気が生成される速度を制御する。
【0022】
キャリアガスは、過酸化水素との反応性がない他の気体もまた考えられるが、好ましくは空気である。例えばポンプ又は圧縮ガス容器のようなキャリアガス生成器22は、キャリアガスを蒸発器32へと供給する。大気空気がキャリアガスである場合、フィルタ36は汚染物質を除去する。好ましくは、キャリアガスが蒸発器32に到達する前に、ヒータ(加熱器)34がキャリアガスの温度を上昇させ、供給ライン内での凝縮を抑制し、過酸化水素蒸気の飽和濃度を上昇させる。任意的には、乾燥器24などがキャリアガスの湿度を制御し、プレヒータ(予熱器)26がキャリアガスを予め加熱する。
【0023】
供給ライン12は、キャリアガスと気化過酸化水素の混合物を、蒸発器32からエンクロージャ10へと移送する。凝縮のリスクを低下させるために、供給ライン12の長さは最低限にされる。凝縮のリスクをさらに低下させるために、断熱材とヒータとの少なくとも一方が供給ライン12を取り囲んでもよい。任意的には、2以上の供給ラインがそれぞれの蒸発器をエンクロージャ10の2以上の部分へと接続する。
【0024】
ベント(孔)62は、エンクロージャ内の余分な圧力の制御された放出を可能とする。任意的には、過酸化水素蒸気を導入するのに先立って、真空ポンプ64はエンクロージャから気体を抜く。気体を抜くことにより、チャンバ内に過酸化水素蒸気が入ってくる速度を増加させることができ、過酸化水素蒸気の供給圧力を減らし、これにより凝縮を防ぐことができる。触媒66などは、出ていく気体内に残っているどんな過酸化水素をも分解する。任意的にはヒータ14は、滅菌に先立って又は滅菌中に、エンクロージャ10の温度及びエンクロージャ10内の温度を上昇させる。エンクロージャ内の温度を上昇させるか、又は少なくともエンクロージャの表面の温度を上昇させることもまた、蒸気の凝縮を低減する。
【0025】
滅菌可能なエンクロージャは、微生物のない(微生物フリーの)作業区域、凍結乾燥器、及び医薬品若しくは食品処理設備を含む。高い滅菌温度と、滅菌中にエンクロージャから気体を抜くこととの少なくとも一方が容易であるか否かは、エンクロージャの構造及びエンクロージャの中身の性質に依存する。例えば滅菌可能な作業区域は典型的には、高温及び低圧に耐えない、堅くないプラスチック材料で構成されている。食品処理設備は対照的に、しばしば処理操作中に高温及び高圧に耐えることが要求され、気体を抜くこと及び加熱によってより最適な滅菌条件を達成するようにより容易に適合させる。
【0026】
過酸化水素蒸気は、滅菌が完了するまでエンクロージャ10内に保持される。任意的には、滅菌に続けて真空ポンプ64はエンクロージャから過酸化水素蒸気を抜く。このことは、過酸化水素が消滅するのにかかる時間を減らし、より速くエンクロージャを有用な活動へと戻す。
【0027】
図示された実施形態において、蒸発器はキャリアガス生成器から離れて、エンクロージャに密接に近接して配置される。個々の蒸発器による過酸化水素の導入速度は、エンクロージャ内の過酸化水素蒸気分布を最適化するように調整可能である。
【0028】
エンクロージャ内の材料の温度及び吸収性、エンクロージャ内の流れパターン、及びエンクロージャ形状は、最適な導入速度に影響を与える要因のいくつかである。制御システム50は、エンクロージャ内の局所条件(ローカル条件)と、予め決定された統合処理設定に従って、過酸化水素の導入速度を制御する。複数の監視器(モニタ)54は、エンクロージャ10内の条件を監視する。監視器は、温度センサ58、湿度センサ72、蒸気濃度センサ56、空気の流れ又は乱流センサ、圧力センサなどを含む。
【0029】
様々な検出技術(センシング技術)が、エンクロージャ内の処理条件を監視するために用いられうる。少なくとも1つのセンサが、浄化システム内の滅菌化学物質の濃度を判定するために用いられる。1つの実施形態において滅菌システムは、制御システムに統合された赤外線(IR)センサプローブを用い、これによって滅菌システムはエンクロージャ内の選択された位置又は部分における過酸化水素蒸気の濃度を監視することが可能となる。センサプローブは、滅菌エンクロージャ内での、浄化蒸気を通る赤外領域の電磁放射ビームの通り道を提供する。放射のいくらかは蒸気によって吸収され、電磁スペクトルのIR領域内の放射波長に感受性を有する放射検出器によって、吸収されなかった放射は検出される。放射検出器は蒸気によって吸収された放射量を判定し、エンクロージャ内の過酸化水素濃度を計算するマイクロプロセッサへと吸収信号を与える。IRセンサを用いる監視器及び制御システムの例が、本明細書に参照により組み込まれる米国特許第5872359号明細書に記載されている。
【0030】
1つの実施形態においては、滅菌/浄化システムにおいて過酸化水素濃度を測定するために、近赤外(NIR)分光が用いられる。気化過酸化水素を測定するこの方法の例は、本明細書に参照により組み込まれる、米国特許第5600142号明細書、米国特許第5847392号明細書、及び米国特許第5847393号明細書に記載されている。
【0031】
他の実施形態において、液体又は気体の浄化剤の濃度は、滅菌サイクルの間に、浄化剤と流体連絡する半導体ベースのセンサによって測定される。このセンサモジュールは、センサ要素と、統合電子機器とを含み、この統合電子機器はセンサ要素がさらされる特定の化学物質の濃度変化に反応する。この電子機器及びこのモジュールに関連するソフトウェアは、標的化学物質に反応するように構成されうる。浄化剤として用いられる特定の液体又は気体に選択的でありかつ感受性を有する、任意の半導体ベースのセンサモジュール及びそれに関連するソフトウェアが、本発明で用いるために適合されうる。
【0032】
半導体ベースのセンサは、エチレンオキシドガス、液体又は気体の過酸化水素、液体又は気体のホルムアルデヒド、液体又気体の過酸化物質、オゾン、アルコール、グルタルアルデヒド、アンモニア、及びこれらの組み合わせを含むがこれらには限定されない、半導体検出システムによって検出可能な任意の適した液体又は気体の滅菌剤と組み合わせて用いられうる。
【0033】
典型的なセンサが、本明細書に参照により組み込まれる米国特許第6844742号明細書に記載されている。このセンサは、検出要素(センシング要素)として働くコンデンサを含む。コンデンサの電気特性は、システムにおいて用いられる滅菌化学物質に応答する。この点において、コンデンサの誘電率は電子的「分極率」に依存することを理解すべきである。分極とは、電界下で分子が双極子を形成する能力、又は水分子のような生来の双極子を並べ又は回転させる電界の能力である。
【0034】
他の典型的なセンサが、本明細書に参照として組み込まれる米国特許第7232545号に記載されている。このセンサは、浄化システムにおいて用いられる滅菌化学物質と相互作用する又はこれと反応する材料の層又はコーティングを含み、要素の機械的な動き又は運動が電気信号へと変換される。この要素は動く又は停止している構成部品であるが、好適な実施形態においてはこの要素は圧電デバイスであり、より好適には水晶振動子である。他の圧電材料は、例えばロッシェル塩、他の圧電材料、チタン酸バリウム、トルマリン、ポリフッ化ビニリデン、及び対称中心を有さない結晶を含むが、これらには限定されない。
【0035】
制御システムは、滅菌剤のエンクロージャへの導入を制御する。それぞれの局所浄化システム(ローカル浄化システム)は、滅菌剤の供給源と、蒸発器と、流れ制御器と、監視器と、制御部とを含む。制御部は、局所浄化システムの動作を制御するようにプログラムされたシステムマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラである。制御部は、任意の従来の制御器(コントローラ)に合致してもよい。制御部は好適には、データを格納するデータ格納デバイスを含む(又はこれと接続されている)。
【0036】
図2を参照すると、局所浄化システムの動作を制御する制御システム50が概略的に図示されている。制御システム50は、ポンプ44を駆動するモータの動作を制御する制御器52を含む。制御器52はまた、VHPセンサ56、圧力スイッチ78、VHP温度センサ58、フローエレメント(流れ要素)38、及び湿度センサ72を監視する。制御器52はまた、加熱器54及び蒸発器32の動作を制御する。
【0037】
入力部74が、局所浄化システム30のユーザが動作パラメータを入力することを可能とするために備えられてもよい。入力部74は典型的には、複数の制御器のうちの主制御器(マスタコントローラ)として働く制御器に接続される。入力部74は、これらには限定されないが例えばキーパッド、キーボード、タッチスクリーン、スイッチ、又は信号のような、システム30のユーザによる制御器52へのデータ及び情報の入力を容易としうる任意のデバイスであってよい。システム30が動作する際に制御器52がユーザへと情報を提供することを可能とするために、出力部76が備えられてもよい。出力部76は、例えばプリンタ、ディスプレイ画面、LEDディスプレイ又は信号であってもよいが、これらには限定されない。制御器52は、システム30が特定の好適な動作条件を維持しながら特定の動作段階(フェーズ)で動作するようにプログラムされる。
【0038】
典型的な滅菌/浄化サイクルは、乾燥段階、調節段階(コンディショニングフェーズ)、浄化段階、及び通気段階を含む。滅菌/浄化サイクルの初期化に先立って、入力部74が制御器52に動作パラメータを与えるために用いられる。この動作パラメータは、乾燥段階についての目標湿度レベル、調節段階についての目標VHP濃度、浄化段階についての目標湿度レベル及び目標VHP濃度、並びに通気段階についての目標VHP濃度を含む。
【0039】
それぞれの浄化システム30は、単独で動作している場合、自身の制御システム50の下で動作することができる。制御部52を通信ケーブルなどを介して接続することにより、システムは統合ネットワークを作り出し、協力して動作する。
【0040】
それぞれの局所浄化システム30に、主な局所浄化条件(ローカル浄化条件)に反応させることは、浄化剤を送達することに難題があまり存在しない領域には過剰量の浄化剤が送達されないことを保証しながら、処理される空間又はエンクロージャの全体にわたる完全な浄化を保証する。
【0041】
図3を参照すると、局所制御部52のそれぞれはネットワーク80を介して接続されている。本実施形態においてネットワークは、n個の制御部C〜Cのそれぞれと接続された主制御器82を含み、n個の制御部C〜Cは主制御部82を介して互いに通信する。このネットワーク構成は、「マスタ−スレーブ」構成と呼ばれてもよく、ここで主制御器82はマスタであり、制御器C〜Cはスレーブを表す。
【0042】
図4を参照すると、他の実施形態において、局所制御部52は互いに続けて(シリアル的に)接続されており、ここで一連の端末のうちの1つにある制御インタフェースは、自動的に、ネットワークを介して接続された制御部52の全てについての主制御器となり、残る制御部の全ては主制御器からの制御を受ける。このネットワーク構成は、「ピア」構成と呼ばれてもよい。例えば、制御部Cは主制御器として動作してもよい。もし制御器Cが止まる、電力を失う、信号計算に困難を体験する、又はその他の方法で動作不能になったならば、制御部Cが、主制御器となって、バックアップとして働いてもよい。他の制御部のどれもが主制御器として働いてもよい。どの制御部52が主制御器として最も適しているかを判定することを助けるために、制御部は、自己診断データ及び交互診断データを含む、健康(ヘルス)情報及び状態(ステータス)情報を互いに共有してもよい。1つの実施形態において、主制御器としての責任とバックアップ制御器としての責任とを入れ替えることの判断は、現在主制御器となっている制御部によってなされる。ネットワーク化された制御器に、どの制御器がマスタであるかを自動的に判定させ、この制御器からの処理条件を自動的に受け入れさせることは、分散浄化システムの構成及び動作を非常に単純化する。任意の数の制御ユニットが相互接続されることを可能とすることは、ユーザにとって設置を単純化させる。
【0043】
過酸化水素及び水で構成される滅菌剤に関して本発明の好適な実施形態が説明されたが、本発明と関係して他の化学組成で構成される滅菌剤がまた用いられてもよいことが考えられることが、理解されるべきである。これらの他の化学組成は、次亜塩素酸塩、ヨードフォア、第四級アンモニウムクロリド(Quats)、アルデヒド(ホルムアルデヒド及びグルタルアルデヒド)、アルコール、フェノール類、過酢酸(PAA)、及び二酸化塩素からなる群から選択される化学物質を含むがこれらには限定されない、不活性化化学物質を含んでもよい。
【0044】
滅菌化学物質の具体的な例は、液体過酸化水素、過酢酸のような過酸、ブリーチ(漂白剤)、アンモニア、エチレンオキシド、フッ素含有化学物質、塩素含有化学物質、臭素含有化学物質、気化過酸化水素、気化ブリーチ、気化過酸、気化過酢酸、オゾン、エチレンオキシド、二酸化塩素、ハロゲン含有化合物、他の高い酸化力のある化学物質(すなわち酸化剤)、及びこれらの混合物を含むが、これらには限定されない。
【0045】
滅菌化学物質はまた、水、脱イオン水、蒸留水、アルコール(例えば第三級アルコール)、グリコール含有化学物質、及びこれらの混合物を含むがこれらには限定されない他の化学物質と組み合わされてもよい。グリコール含有化学物質は、これらには限定されないが、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリコールエーテル、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、脱イオン水の蒸気、蒸留水の蒸気、気化したアルコール(例えば第三級アルコール)、及びこれらの混合物を含む。これらの化学物質は、担体液体(キャリア液体)又は希釈剤として働いてもよい。
【0046】
過酸化水素の水性溶液から生成されうる気化過酸化水素(VHP)が、浄化剤として用いられてもよい。過酸化水素に溶解可能なアルカリ性ガス(例えばアンモニア)を加えることにより、浄化剤のpHが制御されてもよい。アンモニアガスと組み合わせて用いられた場合、VHPは修正VHP又はmVHPと呼ばれてもよい。VHP及び/又はmVHPは、破壊困難なバチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、炭疽菌(バチルス・アンシラシス,Bacillus anthracis)、及び天然痘ウイルスなどの芽胞のような、広い種類の病原性微生物及び病原性化学物質に対して広いスペクトラム(範囲)の活性を与えうるため、有効な微生物上及び化学上の浄化剤である。これらはまた、室温(例えば約15℃から約30℃)において、又はこの近くにおいて有効であるだろう。このことは、ほとんど加熱しないか又は全く加熱せずに浄化エンクロージャ10に用いるためにこれらを適したものとしている。VHP及び/又はmVHPは良好な材料適合性を有するだろう。このことは、電子装置、柔らかい部品、真鍮及びクロムの備品などの、様々な設備及び材料とともに用いることについてこれらを安全なものとしている。VHPは時間とともに分解するだろうから、VHPはその後に浄化エンクロージャ10に入る人にとって有害ではないだろう。浄化工程が完了した後に浄化エンクロージャ10に残るかもしれない低いレベルの過酸化水素(例えば約1ppm以下)は、エンクロージャに入る人への危険を生じるとは考えられないだろう。
【0047】
上述の記載は、本発明の特定の実施形態である。この実施形態は説明の目的でのみ記載されたものであり、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの代替及び変形が当業者によって実施されうることが理解されるべきである。クレームされた本発明又はその均等物の範囲に含まれる限り、すべてのこのような変形及び代替が含まれることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌システムであって、
液体滅菌剤源と、
気化した滅菌剤を異なるように調整可能な速度でキャリアガス中に独立に注入する複数の蒸発器と、を備え、
それぞれの前記蒸発器は、同時に、可変に、かつ独立に前記蒸発器への滅菌剤の注入速度を制御する個別の液体滅菌剤制御器を含み、
前記滅菌システムはさらに、
それぞれの前記蒸発器から、滅菌されるエンクロージャの別々の領域へと前記滅菌剤の蒸気を移送する、少なくとも1つの供給ラインと、
相互接続された制御器のネットワークと、を備え、
前記制御器のネットワークは、(a)複数の制御部と、(b)主制御部とを備え、
前記複数の制御部のそれぞれは、選択された濃度の滅菌剤の蒸気を前記領域のそれぞれへと提供するように、関連付けられた蒸発器が気化した滅菌剤を注入する速度を独立に調整するように前記関連付けられた蒸発器を制御し、
前記主制御部は、前記滅菌剤の蒸気の注入を全体として調整するように、前記ネットワークを介してそれぞれの前記制御部を制御するように構成されている
ことを特徴とする滅菌システム。
【請求項2】
前記主制御部は前記複数の制御部のうちの1つであることを特徴とする、請求項1に記載の滅菌システム。
【請求項3】
前記主制御部は前記複数の制御部とは別個のユニットであることを特徴とする、請求項1に記載の滅菌システム。
【請求項4】
前記エンクロージャの前記別々の領域のそれぞれにおける状況を検知する複数の監視器をさらに備え、
前記相互接続された制御器の前記ネットワークは、前記別々の領域において前記検知された状況に応じて、前記蒸発器のそれぞれが前記キャリアガスへと気化した滅菌剤を注入する速度を制御することを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の滅菌システム。
【請求項5】
前記検知される状況は、温度、圧力、相対湿度、気流速度、滅菌剤濃度、及びこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の滅菌システム。
【請求項6】
前記滅菌剤は過酸化水素を含むことを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載の滅菌システム。
【請求項7】
前記滅菌剤は気化過酸化水素及びアンモニアを含むことを特徴とする、請求項6に記載の滅菌システム。
【請求項8】
それぞれの前記蒸発器がさらに、前記蒸発器へのキャリアガスの流速を個別に制御するキャリアガス流れ制御器を含むことを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1項に記載の滅菌システム。
【請求項9】
気化した滅菌剤をエンクロージャへと供給する方法であって、
第1の場所において、第1の気化速度で、液体滅菌剤を蒸発させて滅菌剤の蒸気を形成する工程と、
第2の場所において、第2の気化速度で、液体滅菌剤を蒸発させて滅菌剤の蒸気を形成する工程と、
キャリアガスの流れを前記第1及び第2の場所に提供する工程と、
独立に調整可能な速度で、それぞれの場所において、気化した滅菌剤をキャリアガスに注入する工程と、
それぞれの場所から、滅菌される前記エンクロージャの別々の領域へと、前記滅菌剤の蒸気を移送する工程と、
複数の相互接続された制御部を介して蒸発を制御する工程と、を有し、
それぞれの前記制御部は、それぞれの前記場所に選択された濃度の滅菌剤の蒸気を提供するように、関連付けられた蒸発器がそれぞれの場所において気化した滅菌剤を注入する速度を独立に調整するように、関連付けられた蒸発器を制御し、
それぞれの前記制御部は、滅菌剤の蒸気の注入を全体として調整するように、前記相互接続された制御部のネットワークを介して、主制御部によって制御される
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記滅菌剤は過酸化水素を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記滅菌剤は気化過酸化水素及びアンモニアを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記主制御部は前記複数の制御部のうちの1つであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記主制御部は前記複数の制御部とは別個のユニットであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−506495(P2013−506495A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532096(P2012−532096)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/047469
【国際公開番号】WO2011/041065
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(302044247)アメリカン ステリライザー カンパニー (24)
【Fターム(参考)】