説明

分散液、膜の形成方法及び電気化学素子の製造方法

【課題】本発明は、均質な多孔質膜を形成することが可能な分散液並びに該分散液を用いる膜の形成方法及び電気化学素子の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】分散液は、一般式
HCF(CFCHOH
(式中、nは、0以上3以下の整数である。)
で表される化合物及び水を含む分散媒中に酸化チタン粒子が分散されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散液、膜の形成方法及び電気化学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示層に含まれるエレクトロクロミック化合物を酸化又は還元させることにより発色又は消色させるエレクトロクロミック表示素子が知られている。
【0003】
特許文献1には、表示電極と、該表示電極に対して間隔をおいて対向して設けた対向電極と、両電極間に配置された電解質とを備え、該表示電極の対向電極側の表面に異なる色を発色し、かつ、発色状態になるための閾値電圧または消色状態になるための閾値電圧または十分な色濃度に発色するための必要電荷量または十分に消色するための必要電荷量のうち少なくともいずれかが異なる2種類以上のエレクトロクロミック組成物を積層または混合して形成した表示層を有することを特徴とする多色表示素子が開示されている。このとき、エレクトロクロミック組成物を形成する際に用いる塗布液として、1−Benzl−1'−(2−phosphonoethyl)−4,4'−bipyridinium dibromideの水溶液に一次粒径が6nmの酸化チタン粒子を分散させた分散液が例示されている。
【0004】
しかしながら、表示層を形成する際に、酸化チタン粒子の水分散液を塗布又は印刷して多孔質膜を形成すると、多孔質膜が不均質となるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、均質な多孔質膜を形成することが可能な分散液並びに該分散液を用いる膜の形成方法及び電気化学素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、分散液において、一般式
HCF(CFCHOH
(式中、nは、0以上3以下の整数である。)
で表される化合物及び水を含む分散媒中に酸化チタン粒子が分散されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の分散液において、前記酸化チタン粒子の含有量が30質量%以下であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の分散液において、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム、アルミノシリケートからなる群より選択される一種以上を含む粒子がさらに分散されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、膜の形成方法において、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の分散液を基材上に塗布又は印刷して多孔質膜を形成する工程を有することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の膜の形成方法において、前記多孔質膜上に機能性分子を含む液を塗布又は印刷して該機能性分子を担持させる工程をさらに有することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、電気化学素子の製造方法において、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の分散液を、電極上に塗布又は印刷して多孔質膜を形成する第一の工程と、該多孔質膜上に機能性分子を含む液を塗布又は印刷して該機能性分子を担持させる第二の工程を有することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の電気化学素子の製造方法において、前記機能性分子がエレクトロクロミック化合物であることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載の電気化学素子の製造方法において、前記第一の工程及び前記第二の工程を複数有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、均質な多孔質膜を形成することが可能な分散液並びに該分散液を用いる膜の形成方法及び電気化学素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】水とTFPの混合溶媒の表面張力の測定結果を示す図である。
【図2】エレクトロクロミック表示素子の一例を示す断面図である。
【図3】実施例1の多孔質膜の光学顕微鏡写真である。
【図4】比較例1の多孔質膜の光学顕微鏡写真である。
【図5】実施例2の表示電極のレイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0017】
本発明の分散液は、一般式
HCF(CFCHOH・・・(1)
(式中、nは、0〜3の整数である。)
で表される化合物及び水を含む分散媒中に酸化チタン粒子が分散されている。このため、本発明の分散液を基材上に塗布又は印刷すると、均質な多孔質膜を形成することができる。
【0018】
一般式(1)で表される化合物の市販品としては、一般式
H(CFCFCHOH
(式中、nは1又は2である。)
で表されるフッ素アルコール(ダイキン化成品販売社製)等が挙げられる。
【0019】
図1に、水と2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール(TFP)の混合溶媒の20℃における表面張力をペンダントドロップ法により測定した結果を示す。水及びTFPの20℃における表面張力は、それぞれ72.75mN/m及び27.4mN/mである。図1から、TFPの含有量が増加すると、混合溶媒の表面張力が低下し、TFPの含有量が5質量%になると、混合溶媒の表面張力が50mN/m未満になることがわかる。
【0020】
一方、分散媒中のTFPの含有量が増加すると、酸化チタン粒子間の引力が増大して、本発明の分散液の粘度が増加する。
【0021】
本発明の分散液は、スピンコート法により塗布する場合、分散媒中のTFPの含有量が1〜15質量%程度であることが好ましい。
【0022】
一方、本発明の分散液は、スクリーン印刷法により印刷する場合、分散媒中のTFPの含有量が15質量%以上であることが好ましい。
【0023】
酸化チタン粒子の平均粒径は、通常、1〜100nmであり、3〜30nmが好ましい。
【0024】
本発明の分散液は、酸化チタン粒子の含有量が30質量%以下であることが好ましい。酸化チタン粒子の含有量が30質量%を超えると、分散安定性が低下することがある。
【0025】
本発明の分散液は、酸化チタン粒子以外の粒子がさらに分散されていてもよい。
【0026】
酸化チタン粒子以外の粒子を構成する材料としては、特に限定されないが、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ケイ素(シリカ)、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム、アルミノシリケート等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0027】
本発明の膜の形成方法は、本発明の分散液を基材上に塗布又は印刷して多孔質膜を形成する工程を有するが、多孔質膜上に機能性分子を含む液を塗布又は印刷して機能性分子を担持させる工程をさらに有してもよい。
【0028】
基材を構成する材料としては、透明であれば、特に限定されないが、ガラス;ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、これらのポリマーの共重合体等のプラスチック等が挙げられる。
【0029】
機能性分子としては、特に限定されないが、エレクトロクロミック材料、増感色素等が挙げられる。
【0030】
本発明の電気化学素子の製造方法は、本発明の分散液を電極上に塗布又は印刷して多孔質膜を形成する第一の工程と、多孔質膜上に機能性分子を含む液を塗布又は印刷して機能性分子を担持させる第二の工程を有するが、第一の工程及び第二の工程を複数有してもよい。
【0031】
機能性分子としては、特に限定されないが、エレクトロクロミック化合物、増感色素、等が挙げられる。
【0032】
本発明の電気化学素子の製造方法を適用することが可能な電気化学素子としては、電極上に機能性分子を担持した多孔質膜が形成されていれば、特に限定されないが、エレクトロクロミック表示素子、色素増感型太陽電池の電極材料等が挙げられる。
【0033】
図2に、エレクトロクロミック表示素子の一例を示す。エレクトロクロミック表示素子100は、表示基板110と対向基板120が、スペーサー130を介して、対向して設けられている。スペーサー130内の表示基板110上には、表示電極111、多孔質表示層112、多孔質絶縁層113、表示電極114、多孔質表示層115、多孔質絶縁層116、表示電極117、多孔質表示層118及び多孔質反射層119が順次積層されている。一方、スペーサー130内の対向基板120上には、対向電極121がパターン形成されている。さらに、スペーサー130内の表示電極111と対向電極121の間には、電解質溶液140が存在する。
【0034】
エレクトロクロミック表示素子100は、表示電極111(114又は117)と対極電極121の間に電圧を印加すると、表示電極111(114又は117)上に形成されている多孔質表示層112(115又は118)に含まれるエレクトロクロミック化合物が還元又は酸化することにより発色又は消色する。また、エレクトロクロミック表示素子100は、多孔質表示層118上に多孔質反射層119が形成されているので、表示基板110の側から視認できる反射型の表示素子となる。さらに、エレクトロクロミック表示素子100は、多孔質表示層112と表示電極114の間及び多孔質表示層115と表示電極117の間に、それぞれ多孔質絶縁層113及び多孔質絶縁層116が形成されている。このため、表示電極111(114又は117)と対向電極121の間に電圧を印加することにより、多孔質表示層112(115又は118)を選択的に発色又は消色させることができ、カラー表示が可能となる。特に、対向電極121として、アクティブマトリックスの画素電極を形成すると、アクティブ表示が可能となる。
【0035】
なお、多孔質表示層112及び115の電気抵抗が十分に大きい、具体的には、表示電極111、114又は117の電気抵抗の500倍以上である場合は、多孔質絶縁層113及び116を省略してもよい。
【0036】
多孔質表示層112、115又は118に含まれるエレクトロクロミック化合物としては、特に限定されないが、アゾベンゼン系化合物、アントラキノン系化合物、ジアリールエテン系化合物、ジヒドロプレン系化合物、スチリル系化合物、スチリルスピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物、スピロチオピラン系化合物、チオインジゴ系化合物、テトラチアフルバレン系化合物、テレフタル酸系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、ナフトピラン系化合物、ビオロゲン系化合物、ピラゾリン系化合物、フェナジン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、フェノキサジン系化合物、フェノチアジン系化合物、フタロシアニン系化合物、フルオラン系化合物、フルギド系化合物、ベンゾピラン系化合物、メタロセン系化合物等の有機化合物;ポリアニリン、ポリチオフェン等の高分子化合物が挙げられる。中でも、発色又は消色する酸化還元電位が低いため、一般式
【0037】
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数が1〜8のアルキル基又はアリール基であり、R及び/又はRは、カルボキシル基、ホスホン酸基(−PO(OH)2)又は一般式
Si(OC2k+1
(式中、kは、1又は2である。)
で表される基を有し、Xは、1価のアニオンであり、A、B及びCは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数が2〜20のアリール基又は複素環基であり、n、m及びlは、それぞれ独立に、0又は1である。)
で表されるジピリジン系化合物が好ましい。
【0038】
多孔質表示層112、115及び118に含まれるエレクトロクロミック化合物が発色する色の組み合わせとしては、特に限定されないが、イエロー、マゼンタ及びシアン等が挙げられる。
【0039】
多孔質表示層112(115又は118)は、本発明の分散液を表示電極111(114又は117)上に塗布又は印刷して形成された多孔質膜上にエレクトロクロミック化合物を含む液を塗布又は印刷してエレクトロクロミック化合物を担持させることにより形成されている。このとき、半導体の多孔質膜にエレクトロクロミック化合物が吸着又は結合されている。なお、エレクトロクロミック化合物は、固定されていると共に、電気的な接続が確保されていればよく、本発明の分散液にエレクトロクロミック化合物を添加して多孔質膜を形成してもよい。
【0040】
本発明の分散液に酸化チタン粒子以外の粒子がさらに分散されている場合、酸化チタン粒子は、発色又は消色の応答速度に優れる多色表示が可能であることから、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化インジウム又は酸化タングステンを含むことが好ましい。
【0041】
多孔質表示層112(115又は118)の厚さは、通常、0.2〜5.0μmである。多孔質表示層112(115又は118)の厚さが0.2μm未満であると、発色濃度が不十分となることがあり、5.0μmを超えると、多孔質表示層112(115又は118)にクラックが発生しやすくなったり、多孔質表示層112(115又は118)の着色により視認性が低下したりすることがある。
【0042】
電解質溶液140は、電解質が溶媒中に溶解しているため、イオン伝導度が高い。
【0043】
電解質としては、特に限定されないが、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、CFSOLi、CFCOOLi、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BF、過塩素酸テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0044】
溶媒としては、特に限定されないが、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類等が挙げられる。
【0045】
なお、電解質溶液140は、表示基板110の側から入射する光を反射するために、白色粒子141をさらに含む。
【0046】
白色粒子141を構成する材料としては、特に限定されないが、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、シリカ、酸化セシウム、酸化イットリウム等の金属酸化物が挙げられる。
【0047】
白色粒子141の平均粒径は、通常、100〜400nmである。
【0048】
電解質溶液140中の白色粒子141の含有量は、通常、10〜50質量%である。
【0049】
なお、多孔質反射層119により、表示基板110の側から入射する光を十分に反射することが可能である場合は、電解質溶液140は、白色粒子141を含まなくてもよい。
【0050】
また、電解質溶液140は、接着剤をさらに含んでもよい。
【0051】
多孔質反射層119と対向電極121の間の距離は、通常、0.1〜200μmであり、1〜50μmが好ましい。この距離が0.1μm未満であると、電解質の保持が困難になることがあり、200μmを超えると、電荷が拡散しやすくなることがある。
【0052】
なお、電解質溶液140の代わりに、イオン液体;ゲル状電解質膜、ポリマー電解質膜等の固体電解質膜等を用いてもよい。中でも、強度、信頼性及び発色の点から、固体電解質膜が好ましく、イオン伝導度と強度の点から、電解質と溶媒が樹脂中に保持されている固体電解質膜が特に好ましい。
【0053】
樹脂としては、特に限定されないが、ウレタン樹脂、ポリエチレングリコール、ポリプレングリコール、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、低温環境下、短時間でエレクトロクロミック表示素子を製造できることから、光硬化性樹脂が好ましい。
【0054】
多孔質絶縁層113(又は116)を構成する材料としては、特に限定されないが、絶縁性、耐久性及び成膜性に優れる有機材料又は無機材料を用いることができる。これにより、電解質溶液140が多孔質絶縁層113及び116に浸透することができるため、酸化還元反応に伴う電解質溶液140中のイオンの移動が容易となり、発色又は消色の応答速度に優れる多色表示が可能となる。
【0055】
多孔質絶縁層113(又は116)を形成する方法としては、特に限定されないが、樹脂粒子又は無機粒子に結着樹脂を添加して部分的に融着させる燒結法、溶媒に可溶な有機化合物又は無機化合物と溶媒に不溶な結着樹脂を含む層を形成した後、溶媒で溶解させる抽出法、樹脂を加熱や脱気により発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して樹脂の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等が挙げられる。
【0056】
多孔質絶縁層113(又は116)としては、特に限定されないが、シリカ粒子、アルミナ粒子等の無機粒子と結着樹脂からなる多孔質絶縁層、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂からなる多孔質絶縁層等が挙げられる。このような多孔質絶縁層上に無機絶縁層が形成されていてもよい。
【0057】
以下、無機絶縁層が形成されている多孔質絶縁層について説明する。
【0058】
無機絶縁層は、スパッタ法により、多孔質表示層にダメージを与えずに高速で成膜できることから、ZnSを含むことが好ましい。
【0059】
ZnSを含む無機絶縁層を構成する材料としては、特に限定されないが、ZnO−SiO、ZnS−SiC、ZnS−Si、ZnS−Ge等が挙げられる。
【0060】
無機絶縁層中のZnSの含有量は、結晶性を良好に保つために、約50〜90mol%であることが好ましい。このような無機絶縁層を構成する材料としては、例えば、ZnS/SiO(80mol%/20mol%)、ZnS/SiO(70mol%/30mol%)、ZnS、ZnS/ZnO/In/Ga(60mol%/23mol%/10mol%/7mol%)が挙げられる。
【0061】
無機絶縁層が形成されている多孔質絶縁層は、薄膜であっても良好な絶縁効果が得られるため、強度の低下を抑制することができる。
【0062】
多孔質絶縁層113(又は116)の厚さは、通常、0.1〜2μmである。多孔質絶縁層113(又は116)の厚さが0.1μm未満であると、絶縁性が不十分となることがあり、2μmを超えると、多孔質膜113(又は116)にクラックが発生しやすくなったり、多孔質絶縁層113(又は116)の着色により視認性が低下したりすることがある。
【0063】
なお、多孔質絶縁層113(又は116)の代わりに、絶縁層を形成し、多孔質表示層112(又は115)の形状を利用して、電解質溶液140を浸透させてもよい。
【0064】
多孔質反射層119を構成する材料としては、表示基板110の側から入射する光を反射することが可能であれば、特に限定されないが、白色粒子141が挙げられる。
【0065】
多孔質反射層119は、白色粒子141を含む分散液を多孔質表示層118上に塗布又は印刷して形成することができる。
【0066】
多孔質反射層119の厚さは、通常、0.1〜50μmであり、0.5〜5μmが好ましい。多孔質反射層119の厚さが0.1μm未満であると、光の反射が不十分となることがあり、50μmを超えると、強度が低下することがある。
【0067】
なお、電解質溶液140に含まれる白色粒子141により、表示基板110の側から入射する光を十分に反射することが可能である場合は、多孔質反射層119を省略してもよい。
【0068】
表示電極111(114又は117)を構成する材料としては、透明導電性材料であれば、特に限定されないが、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)等が挙げられる。中でも、スパッタ法により容易に成膜することが可能であると共に、透明性と導電性が優れることから、酸化インジウム、酸化スズ又は酸化亜鉛を含む無機材料が好ましく、ITO、ガリウムをドープした酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛が特に好ましい。
【0069】
このとき、表示電極114及び117は、それぞれ多孔質絶縁層113及び116上に形成されているため、多孔質絶縁層113及び116の形状を利用して、電解質溶液140が浸透される。
【0070】
対向電極121を構成する材料としては、導電性材料であれば、特に限定されないが、ITO、FTO、酸化亜鉛等の透明材料;亜鉛、白金等の金属;カーボン等が挙げられる。対向電極121は、真空成膜又は湿式コーティングにより形成することができる。なお、対向電極121として、亜鉛等の金属板を用いる場合は、対向電極121が対向基板120を兼ねる。
【0071】
このとき、安定した発色又は消色が可能であることから、多孔質表示層112、115又は118で起こる酸化還元反応の逆反応を起こす材料を対向電極121に形成することが好ましい。即ち、多孔質表示層112、115又は118が酸化反応(又は還元反応)により発色する場合は、還元反応(又は酸化反応)を起こす材料を、対向電極121として用いる、又は、対向電極121の表面に形成して用いることが好ましい。
【0072】
表示基板110を構成する材料としては、透明材料であれば、特に限定されないが、ガラス、プラスチック等が挙げられる。
【0073】
対向基板120を構成する材料としては、特に限定されないが、表示基板11と同様の材料を用いることができる。
【0074】
このとき、表示基板110及び対向基板120として、プラスチックフィルムを用いると、軽量でフレキシブルなエレクトロクロミック表示素子100が得られる。
【実施例】
【0075】
[実施例1]
平均粒径が約20nmの酸化チタン粒子分散液SP210(昭和タイタニウム社製)に、分散媒中のTFPの含有量が5質量%となるようにTFPを添加した後、十分に分散させることにより、分散液を調製した。
【0076】
40mm×40mm×0.7mmのガラス基板上にスピンコート法により分散液を塗布した後、120℃で15分間アニール処理することにより、厚さが約1.5μmの多孔質膜を形成した。図3に、落射光、暗視野で観察した多孔質膜の光学顕微鏡写真を示す。図3より、均質な多孔質膜が形成されていることがわかる。
【0077】
[比較例1]
平均粒径が約20nmの酸化チタン粒子分散液SP210(昭和タイタニウム社製)にTFPを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、厚さが約1.5μmの多孔質膜を形成した。図4に、落射光、暗視野で観察した多孔質膜の光学顕微鏡写真を示す。図4より、微細なクラック状のスジが存在する不均質な多孔質膜が形成されていることがわかる。
【0078】
[実施例2]
40mm×40mm×0.7mmのガラス基板(表示基板110)上に、スパッタ法により厚さが約100nmのITO膜(表示電極111)を形成した。次に、実施例1の分散液をスピンコート法により塗布した後、120℃で15分間アニール処理することにより、厚さが約1.5μmの多孔質膜を形成した。さらに、化学式
【0079】
【化2】

で表されるエレクトロクロミック化合物の0.8質量%TFP溶液をスピンコート法により塗布した後、120℃で10分間アニール処理することにより、多孔質膜にエレクトロクロミック化合物(1)を吸着させて、多孔質表示層112を形成した。このとき、多孔質表示層112は均質であった。次に、γ−ブチルラクトンと炭酸プロピレンの体積比が1:1の混合溶媒に、平均粒径が約30nmのシリカ粒子(NanoTek社製)を5質量%分散させ、ウレタン樹脂HW140(DIC社製)を5質量%添加した塗布液をスピンコート法により塗布した後、120℃で5分間アニール処理することにより、厚さが約500nmの多孔質膜を形成した。さらに、スパッタ法により厚さが約30nmのZnS/SiO(80mol%/20mol%)膜を形成することにより、多孔質絶縁層113を形成した。
【0080】
次に、化学式
【0081】
【化3】

で表されるエレクトロクロミック化合物の1.0質量%TFP溶液をスピンコート法により塗布した以外は、表示電極111、多孔質表示層112及び多孔質絶縁層113と同様にして、表示電極114、多孔質表示層115及び多孔質絶縁層116を形成した。このとき、多孔質表示層115は均質であった。
【0082】
さらに、化学式
【0083】
【化4】

で表されるエレクトロクロミック化合物の0.8質量%TFP溶液をスピンコート法により塗布した以外は、表示電極111及び多孔質表示層112と同様にして、表示電極117及び多孔質表示層118を形成した。このとき、多孔質表示層118は均質であった。
【0084】
次に、数平均分子量が200のポリエチレングリコール、ウレタンペーストHW140SF(DIC社製)及び過塩素酸テトラブチルアンモニウムの20質量%ジメトキシスルホキシド溶液をTFPに、それぞれ5質量%、3質量%及び17質量%溶解させた溶液を調整した。得られた溶液に平均粒径が約250nmの酸化チタン粒子CR50(石原産業社製)を30質量%分散させたペーストをスピンコート法により塗布した後、120℃で5分間アニール処理することにより、厚さが約1μmの多孔質反射層119を形成した。
【0085】
図5に、表示電極111、114及び117のレイアウトを示す。表示電極111、114及び117には、それぞれ駆動接続部111a、114a及び117aが形成されている。なお、図5においては、多孔質表示層112、115、118、多孔質絶縁層113、116及び多孔質反射層119の記載を省略した。
【0086】
なお、表示電極111、114及び117並びに対向電極121のシート抵抗は150Ω/sq.であった。また、表示電極111及び114の間の抵抗並びに表示電極114及び117の間の抵抗を、駆動接続部111a、114a及び117aで測定したところ、いずれも1MΩ以上であった。
【0087】
一方、40mm×40mm×0.7mmのガラス基板(対向基板120)上に、35mm×4mmの矩形のラインが35mm×1mmのスペースを介して6本形成されている厚さが約100nmのITOパターン膜(対向電極121)をスパッタ法により形成した。
【0088】
次に、過塩素酸テトラブチルアンモニウム1.2質量部、数平均分子量が200のポリエチレングリコール6質量部及びUV硬化接着剤PTC10(十条ケミカル社製)16質量部をジメチルスルホキシド5.4質量部に溶解させた溶液に平均粒径が約250nmの酸化チタン粒子CR50(石原産業社製)を20質量%分散させたペーストを多孔質反射層119の表面に滴下塗布し、対向電極121の表面と重ね合わせた後、対向基板120の側から紫外線を照射して貼り合わせて、エレクトロクロミック表示素子100を作製した。多孔質反射層119と対向電極121の間の距離は、電解質溶液140にビーズスペーサを0.2質量%混合することにより10μmとした。
【0089】
エレクトロクロミック表示素子100の消色状態の白反射率を分光測色計LCD−5000(大塚電子社製)を用いて、表示基板110の側から測定したところ、50%であった。
【0090】
次に、駆動接続部111a及び対向電極121に、それぞれ負極及び正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、多孔質表示層112がマゼンタ色に発色した。同様にして、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、完全に消色し、白色に戻った。
【0091】
次に、駆動接続部114a及び対向電極121に、それぞれ負極及び正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、多孔質表示層115が青色に発色した。同様にして、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、完全に消色し、白色に戻った。
【0092】
次に、駆動接続部117a及び対向電極121に、それぞれ負極及び正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、多孔質表示層118が緑色に発色した。同様にして、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、完全に消色し、白色に戻った。
【0093】
次に、駆動接続部111a及び対向電極121に、それぞれ負極及び正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加して、多孔質表示層112がマゼンタ色に発色した後、駆動接続部114a及び対向電極121に、それぞれ負極及び正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、多孔質表示層115が青色に発色し、マゼンタ色と青色の混色となった。同様にして、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、完全に消色し、白色に戻った。
【0094】
次に、駆動接続部111a及び対向電極121に、それぞれ負極及び正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加して、多孔質表示層112がマゼンタ色に発色した後、駆動接続部117a及び対向電極121に、それぞれ負極及び正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、多孔質表示層118が緑色に発色し、マゼンタ色と緑色の混色となった。同様にして、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、完全に消色し、白色に戻った。
【0095】
次に、駆動接続部114a及び対向電極121に、それぞれ負極及び正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加して、多孔質表示層115が青色に発色した後、駆動接続部117a及び対向電極121に、それぞれ負極及び正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、多孔質表示層118が緑色に発色し、青色と緑色の混色となった。同様にして、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、完全に消色し、白色に戻った。
【0096】
次に、駆動接続部111a及び対向電極121に、それぞれ負極及び正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加して、多孔質表示層112がマゼンタ色に発色し、駆動接続部114a及び対向電極121に、それぞれ負極及び正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加し、多孔質表示層115が青色に発色した後、駆動接続部117a及び対向電極121に、それぞれ負極及び正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、多孔質表示層118が緑色に発色し、マゼンタ色と青色と緑色の混色となった。同様にして、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、完全に消色し、白色に戻った。
【0097】
[比較例2]
平均粒径が約20nmの酸化チタン粒子分散液SP210(昭和タイタニウム社製)にTFPを添加しなかった以外は、実施例2と同様にして、エレクトロクロミック表示素子100を作製した。このとき、多孔質表示層112、115及び118は不均質であり、欠陥が見られた。
【0098】
次に、駆動接続部111a及び対向電極121に、それぞれ負極及び正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、多孔質表示層112がマゼンタ色に発色したが、欠陥と一致する発色ムラが確認された。同様にして、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、完全に消色し、白色に戻った。
【0099】
次に、駆動接続部114a及び対向電極121に、それぞれ負極及び正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、多孔質表示層115が青色に発色したが、欠陥と一致する発色ムラが確認された。同様にして、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、完全に消色し、白色に戻った。
【0100】
次に、駆動接続部117a及び対向電極121に、それぞれ負極及び正極を接続し、4.5Vの電圧を1秒間印加したところ、多孔質表示層118が緑色に発色したが、欠陥と一致する発色ムラが確認された。同様にして、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、完全に消色し、白色に戻った。
【符号の説明】
【0101】
100 エレクトロクロミック表示素子
110 表示基板
111、114、117 表示電極
112、115、118 多孔質表示層
113、116 多孔質絶縁層
119 多孔質反射層
120 対向基板
121 対向電極
130 スペーサー
140 電解質溶液
141 白色粒子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0102】
【特許文献1】特開2006−106669号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
HCF(CFCHOH
(式中、nは、0以上3以下の整数である。)
で表される化合物及び水を含む分散媒中に酸化チタン粒子が分散されていることを特徴とする分散液。
【請求項2】
前記酸化チタン粒子の含有量が30質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム、アルミノシリケートからなる群より選択される一種以上を含む粒子がさらに分散されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の分散液。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の分散液を基材上に塗布又は印刷して多孔質膜を形成する工程を有することを特徴とする膜の形成方法。
【請求項5】
前記多孔質膜上に機能性分子を含む液を塗布又は印刷して該機能性分子を担持させる工程をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の分散液を電極上に塗布又は印刷して多孔質膜を形成する第一の工程と、
該多孔質膜上に機能性分子を含む液を塗布又は印刷して該機能性分子を担持させる第二の工程を有することを特徴とする電気化学素子の製造方法。
【請求項7】
前記機能性分子がエレクトロクロミック化合物であることを特徴とする請求項6に記載の電気化学素子の製造方法。
【請求項8】
前記第一の工程及び前記第二の工程を複数有することを特徴とする請求項6又は7に記載の電気化学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−257474(P2011−257474A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129892(P2010−129892)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】